04/15

2014

第186国会 参議院 外交防衛委員会 2014年4月15日


日本・UAE原子力協定、日本・トルコ原子力協定
参考人質疑

○福山哲郎君 福山でございます。座らせていただきます。
今日は参考人の皆様におかれましては、お忙しい中、本当に大変貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。心からお礼を申し上げます。
御案内かどうか分かりませんが、私は三・一一の事故のときには内閣官房副長官として事故の対応に当たらせていただきました。原発政策についてはもういろいろな思いがありますし、その後、民主党政権で三〇年代原発ゼロをまとめさせていただいたときも、いろんな御批判をいただきながら、それは両方から批判をいただくわけです、原発をなくしたいという人から見れば二〇三〇年代ゼロなんというのは甘いと言われますし、原発を推進若しくは維持をしていきたい方向から言えば、そんなむちゃなことをして、民主党はだから現実離れをしているんだという批判を浴びながら、何とかまとめました。
ところが、我々の力不足で政権交代という形になり、今回、エネルギー基本計画ができたことに対して、当時、事故の直後には原発に依存しない社会というふうに言われていた自民党さんも公明党さんも、逆に今度はベース電源という位置付けの中でエネルギー基本計画をまとめられました。私自身としては非常に残念に思っておりますし、日本の方向としては私はいまだにゼロを目指すべきだと思っております。
そんな中でこの輸出の問題が、輸出というか原子力協定の問題が出てまいりまして、非常に今私も悩みながら質疑をしています。それはなぜかと言えば、我々の政権のときに、一定、原子力協定についての審議を野党の皆さんにお願いをした経緯があるからでございます。その政策の継続性と、そして今置かれている状況とを考えた上で、本当に我々も、本当に政治家一人一人が悩まなければいけないというふうに問題意識を持っているということを、まず自らの今の考えていることを申し述べた後、参考人の皆さんに御質問させていただきたいと思います。
まず、服部参考人にお伺いをいたします。
服部参考人から御覧をいただいた状況は多分ここのペーパーに出ているとおりだと思います。若干私がちょっと違和感を覚えましたのは、いわゆる電力供給のメリットということについては強調されているんですが、先ほどの宇都委員とも若干重なるかもしれませんが、電力の供給としてのメリットはよく分かるんですが、例えば、トルコでの使用済核燃料の問題がいまだに決定されていない問題だとか、政変のリスク、また事故のときの損害賠償のリスクというのは、実はこれは民間企業として海外に出ていくときに民間企業自身がリスクとして背負うことになります。
例えば、政変が起こっていわゆる再処理等をやるというような形で政策変更がされたときに、日本は今認めていないわけですから、そのときに出ていっている民間企業としてのリスクをどう考えておられるのか。それから、事故の損害賠償に関して言えば、一般的にはトルコの事業体だというのが日本政府の説明でございますが、実際、アメリカのカリフォルニアでは、三菱重工が供給した部品に対する水漏れ事故に対して非常に大きな損害賠償請求が行われています。
民間企業として、先ほど申し上げましたように、電力供給側のメリットを強調されることは理解をいたしますが、一方で、今私が申し上げたようなリスクについてどのように評価をされているのかということについてお答えをいただければ有り難いなと思います。
私は、実は悩んでいるのは、民間企業が民民の契約の中で自らのビジネスに応じて動かれることに対して政府がシャットダウンすることについては実は余りよしとしない立場です、私は。ただ、原発というのは武器輸出と同様で非常に神経質なものだから、これをどう扱うかというところが非常に難しいと思っています。例えば、自動車を輸出する民民の契約のところで政府が何らかの制限を加えたりするというのに関して言うと、私は非常に抵抗があります。
ただ、この問題は、原発の問題は非常に難しいので、そこについて民間で、なおかつ、どちらかというと今ポジティブに表現をされた服部参考人にまず御意見をいただければと思います。

○参考人(服部拓也君) ありがとうございます。
今先生の御指摘のように、原子力というビジネスは単なる民民のビジネスを超えた部分があるのは御承知のとおりでございまして、その一番代表的なのは核不拡散に関わるところでありまして、そういうところが国際的な規範、政府というよりももう国際的な縛りがあるというところがあります。
そんな中で、一私企業が海外に出ていくという場合には、当然のことながら、今御指摘のようなカントリーリスクといいますか、そういうものを考慮に入れた上で出ていくという判断をしているというふうに考えております。
海外のとりわけ新興国の課題というのは幾つもあるんですけれども、その最大の課題の一つが今御指摘の政府の安定性といいますか、政治の安定性というのが挙げられるところの一つであると思います。そのほかにファイナンスの問題だとか、それから人材も含めたいわゆるインフラの整備が十分ではないようなところなどなどありまして、それらを総合的に考えて私企業としてそういう判断をしていると。私企業もそれ以外のビジネスでいろいろ海外の経験をしておりますから、そういうものを踏まえて、原子力の特殊性を考慮に入れた上で、それで最終的にそういう海外展開というものを決定しているといいますか、判断をしているというふうに理解をしております。

○福山哲郎君 潔く総合的に考えてカントリーリスクを踏まえてとおっしゃることが、実はそのリスク評価が本当に正当で合理的なのかという議論に僕はなってくるんだと思います。
それはなぜかというと、今回の原発事故のときも、結果として今汚染水対策について国がお金を出すようになりました。結果として、民間企業が自らの体力以上のもののリスクを背負うようになれば、国が一定の今回も対応をしなければいけなくなりましたし、我々も原子力賠償機構をつくる中で何とか賠償金の確保ということをしました。今の、現状の本当にそのリスクの判断が合理的かどうかということについて、逆に、ある意味、今のお話を承ると、少し積極的な分だけその分については見ないようにしているというふうに印象を受けることもあるので、そこについては若干の懸念をまず表しておきたいと思います。
田辺参考人にお伺いをします。
先ほど宇都委員の他の国が出ていくのではないかということに対して、チェコの例とかいろんな例を出されました。しかし、国際社会は非常に冷徹でございまして、例えばロシアなどは軍艦をある程度供給するというのとセットで例えば原発を出すんだとか、例えば日本が原発を出さないという話になったときには、今度は韓国とかロシアは極端な話でいえばダンピング競争をしてまでも取りに行くような可能性も出てきて、そこで、それぞれの国が本当に原発のリスクというのみで判断をするとは限らない中での総合的に日本の原発をどう考えるかって、すごく僕は重要だと思っております。
先ほどの田辺参考人のお話は一定僕は理解をするつもりですが、しかしそれだけでは済まされない部分もあるなというふうに考えていまして、例えば中国、ロシア、韓国がそこに乗じて入っていく、そのときにどの程度のリスクを、そこに比べれば日本はまだ真面目だ、勤勉だ、長年の能力がある、そう言われるところに対してのなかなか際立った反論ができない部分もあります。ましてや、安全や不拡散の問題の担保が要ると言われると、実はダブルであながち否定をできない部分があるので、そこについてもう一度御答弁を、重なって恐縮ですが、いただけませんでしょうか。

○参考人(田辺有輝君) ちょっと私うまく理解しているかどうか自信が今ないんですが、私の理解では、ロシアなり中国なり韓国が日本が引いたときに入って、日本よりも安全性の低いものが入ってしまうんじゃないかということだと思うんですけれども、私は原子力産業界の者ではないので、日本が本当に安全性が高くてロシアが低いかというと、そこは分からないところです。
高いというふうに言われているので、仮にそういう高いということだったとしても、じゃ、果たしてそのロシアと日本の企業の技術力の差でどのぐらい差があって、このプラントを造ったときに、先ほど私が申し上げた事故のリスクというのは、プラントが幾ら耐震性の高いものであったとしても、その総合力、つまり周辺インフラ、それから、その国の人材も含めて総合力で結局事故が起こるかどうかというのは決まるわけですから、事故がどれぐらいの、何でしょう、過酷なものになるかどうかというのは決まってくるので、仮に、じゃ、その日本とロシアの間で技術力の差があったとして、その差がどのぐらい過酷事故に対して影響を与えるかどうかという点から考えると、私自身としてはそこは分からないということですね。

○福山哲郎君 今、田辺先生、分からないと言われたのは非常に私は誠実な答弁だと思っていて、具体的な指標なり評価なりの基準があるのかと外務省や経産省に聞いても、実はそこは余りないんですね。
ただ、原発のいわゆる使用済核燃料のリスクや事故のリスクを考えたときには、実は日本がいいのか、ロシア、中国がいいのか悪いのかというよりか、もう少し上の次元で考えないと、結果として原発が導入されることによって使用済核燃料のリスクは、今は各国の自己完結という形に条約上なっていますが、将来的には恐らくそれをどういうふうに国際的に管理しなければいけないのかというような時代が必ず出てくると思うんですね。そのときに、どういう形の評価をしていくのかというのが僕は一つの課題だと思っていて、今、田辺参考人が分からないとおっしゃった、つまり分からないままでこの原発の輸出をどう判断するのかというのも僕は難しい課題だと思っております。
舩橋参考人にもお伺いしたいと思います。
意思決定の在り方として、社会学的に、政策決定の日本の在り方の特殊性や個人の主体性の未熟さ、道理性、合理性に対する鈍感さという厳しい御指摘をいただきました。
私は、そのエネ環会議を官邸でやっていたときに、意図的に時の文書に原発推進と反原発の不毛な二項対立の議論を超えた議論をするために客観的な数字を国民の皆さんに提示をして、その中で判断をしていただこうということで、例のコスト検証を初めて実は経産省の枠を取ってやり、舩橋参考人からお話があった大島先生にも入っていただきましたし、さらには国民対話ということで、メリット、デメリットを提示をしながら全国で国民の対話をして、実は脱原発が圧倒的に多かったというのが現実です。
しかし、今、このエネルギー基本計画、新しいものの中でいうと、元の状況に意思決定の仕方としては逆戻りをしたような状況があって、なかなか実は日本は決めたことを引き返すということに対してできにくい意思決定の仕組みになっています。先生の御批判は僕は一定理解をしますが、これをどう乗り越えたらこの国では仕組みとしてできるのか。別に先生の言われていることに対して僕は批判をするつもりではないんですが、実は我々も意思決定の仕方として非常に悩んでおります。
すぐに二項対立の議論になり、あっちはこうだ、あっちはこうだと言って、レッテルを貼って物事を判断しようとすると。そういった限りでいうと、実は両方の間に合意形成のプラットホームができ上がらないんですね。一定の共有した議論ができ上がらないんです。それが実は、これから先、この原発だけではありません、TPPにしても、例えば集団的自衛権にしても、いろんな場合でこういう状況が日本で起こってくるというのは、国民の間に分断がどんどん広がるということで、私は実は非常に懸念をしております。
そういった意味で、舩橋参考人の問題提起について、若干、この国で、じゃ一体どうしたらいいんだということの御示唆があれば、お答えをいただければ有り難いと思います。

○参考人(舩橋晴俊君) とても大事な質問をいただいたと思います。
まず、二〇一二年の夏にエネルギー政策を根本的に考え直すためのいろんな新しい試みをなさいました。パブリックコメントもありましたし、選択肢を示して討論型世論調査もやりました。あのプロセスを、私は社会学者としては非常に高く評価しています。本来、政策決定はああいうふうにあるべきなんですね。
そもそも、政策決定に際して、いい政策、合理的な政策決定するためには、複数の政策選択肢を示し、それぞれどういうメリットとデメリットがあるか、それを公表する、そのメリット、デメリットについては科学的な研究をちゃんとやる、総合判断は国民の総意を仰ぐと。
そういう点からいうと、二〇一二年の夏の一連の政策プロセスは、単にエネルギー政策の改革の選択の問題だけじゃなくて、日本の政治システムでどういうふうにもっといい政策をつくっていくかということに非常に貴重な一石を投じたというふうに高く評価しております。是非、そういう方式を引き続きエネルギー政策でもやっていただきたいし、ほかのいろんな政策領域でも是非やっていただきたいというふうに思うんですね。そこが第一のコメントです。
あと二点、ちょっと手短に申しますと、日本の場合、問題は政策判断の前提となる事実認識についての共有がなかなかできていない。そこは、事実認識というのは、利害関係でゆがめちゃいけないんです。事実なんだから、科学的に調べてこれが事実ですねと。そこから共有して、次に考えると。その事実認識の場と、政策判断なり利害調整の場が無反省にごちゃ混ぜになっちゃっていることが多過ぎるんですね。そこのところをもっと切り離した方がいいということ。これ第二点。
それから第三点は、その点から見ますと、諸外国の国会の政策形成能力の高さというのは、専門調査会、委員会というようなものをすごくたくさんつくっているわけです。今回国会が国会事故調をつくったのを私は非常に高く評価していまして、画期的なとてもいいことだと思っているんですね。そういうことを継続的にやっていただきたいし、それからほかの問題でもやっていただきたい。
ドイツとかフランスとかイギリスとか、アメリカもそうなんですが、国会の政策形成能力が非常に高い。それを何で支えているかというと、国会の下に専門家と国会議員が一緒に勉強する専門調査会がたくさんあるわけですね。国会議員の方々がとても忙しいことはよく分かるんです。それだけに、国会の下に専門調査会をもっとたくさんつくってほしい。そうしないと、政府、行政組織主導型の政策になってしまう。だけど、行政組織の審議会というのは行政組織の失敗を批判できないんですね。
ですから、国会の下に是非専門調査会をつくるということが日本の政策形成能力をアップする非常に大事な要点であると。是非お考えいただきたいと思います。

○福山哲郎君 もっと議論したいことはたくさんありますが、時間ですのでこれで終わります。
ありがとうございました。


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