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第150国会  参議院  国土・環境委員会  2000年12月6日

○福山哲郎君 民主党・新緑風会の福山哲郎でございます。
 まずは、川口長官、再任おめでとうございました。きょうの委員会の前に長官がかわられたら、何を聞こうかなと思って非常に悩んでおりまして、長官が再任ということで、きょうの委員会、本当に再任の次の日にお疲れさまでございます。
 また、本番のオランダのハーグでも、私も二十二、二十三、二十四日と行かせていただいたんですが、後ろに座っていらっしゃる環境庁の役人の皆さんも本当に徹夜続きで、長官も徹夜続きで、お顔を見ればどれほど大変な作業をされているかというのはさすがに私どもでもわかります。一度だけお目にかからせていただいたんですけれども、一番佳境なときで、本当にお疲れさまでした。御苦労さまでございました。結果はともかく、本当に長官や環境庁の皆さんの御努力には心より敬意を表したいというふうに思います。
 という状況の中で、今、長谷川委員からの質問の中で一つだけちょっと長官が気になることを言われたので、ちょっと確認をしてから私の質問に移りたいと思います。プロンク・ノートの話、プロンク・ペーパーの話が先ほど長谷川委員から出て、長官は先ほど、根拠はよくわからないけれどもたたき台とする余地はあったと、日本が三・七%に固執したわけではないということをおっしゃられて、その後そのプロンク・ノートが出たので日、米、カナダで修正案を出したというふうにおっしゃられたと今のやりとりで私は承ったんですが、この日米加の修正案というのは十四日に出されたもともとの日米加の吸収源の提案ではない、別のものを出されたという理解でよろしいんですね。

○国務大臣(川口順子君) まず最初に、福山委員にはハーグまでおいでいただきまして、どうもありがとうございました。アメリカなどもかなり多くの国会議員の方がいらしていまして、その中で日本はたまたまそういう政治情勢であって御出席いただけた方が非常に少なかったものですから、大変にありがたく存じました。
 それから、ちょっと私、先ほど申し上げ方が悪かったのかもしれませんけれども、プロンク・ペーパー自体について我々がたたき台だと思ったということでは全くありませんで、プロンク自身がその紙の性格について説明をしたときに、これはこれから各国が交渉をお互いにするときの交渉の材料として使ってくださいということでございまして、たたき台という言葉はちょっと私も使ったような気がしますけれども、そういう意味で申し上げたのではありませんで、したがって自分はこのペーパーをディフェンドするつもりは全くない、擁護するつもりは全くない、自分を相手にこのペーパーをベースに交渉をしてこないでほしい、違う国々の間あるいは交渉グループの間で相互にやってくれ、この紙はそれの材料であると、そういうことを言っておりまして、したがって、そこに書いてあることを交渉の基礎として、そこから話をしていったというわけでは実際はございませんということをちょっと念のために申し上げたいと思います。
 それから、日米加の案ですけれども、これは交渉でございますので、実はかなり前から三カ国で議論はいたしておりましたけれども、その後も修正案というのは、したがいまして、そこからまたさらに別に出したというか、それをベースにまた考えて、柔軟に考えていって出したということでもあります。ということで、交渉の過程ですので、いろいろな相手の立場を考えつつ、相手の意見を聞きながら柔軟に対応していくと、そういうことでございます。

○福山哲郎君 これでまた追っかけていくともう全然段取りが狂いますから、済みません、とにかくもともとから始めたいと思います。
 まずは、長官はいろんな場面で、このCOP6に出席をされるに当たりまして、建設的妥協という言葉をよく使われまして、私とその出発される委員会でやったときも、妥協をそれぞれができるようなことが成功だろうと、そういうふうにまとめたいというふうなことを大まかにおっしゃられました。
 先ほど、まさにこれも重要なことを言われたんですが、日、米、カナダで吸収源についてはずっと時間をかけてやってきたものを十四日、出されたんだというふうに思いますが、出発前に長官にはどの程度の妥協するポジションを持たれてハーグへ立たれたのか、答弁いただける範囲で結構でございますので。

○国務大臣(川口順子君) 答弁できる範囲でとおっしゃっていただきましたので、これは実は、今まだ来年の五月、六月の再開期に向けて交渉が続いているプロセスでございますから、どこまで日本がおりることができるかとか、どこまでが交渉団が持っていった、マンデートという言葉を使いますけれども、その範囲かということをちょっと申し上げますと今後の交渉上問題があるかと思いますので、申しわけございませんけれども御勘弁をいただきたいと思います。
 ただ、申し上げられることは、最終的にパッケージでということで交渉がなされたということでして、これは各国がそれまでの、ハーグまでの間、私が来てからでも三回、国際会議があって、あるいはその間、往復でそれぞれの国で話をしたりということもありましたから、話し合いがあった過程で、それぞれの国がどこの点はもう全く譲れない点なのか、あるいはどこの点は柔軟性がありそうかということについては相互に感触を持ちながら、あるときには非常にはっきりそれを言いながら交渉をしていったということでございます。
 ということで、このあたりでは、例えば具体的な数字があとどれぐらい変わり得るかというようなことはありませんけれども、ここは妥協しなければこの国は仲間から抜け落ちてしまうというようなことについての感触は各国持っていると思います。

○福山哲郎君 交渉中であるから答えにくいということは僕も理解はできるんですが、逆に申し上げますと、COP6までは、日本のポジションについてはやはり交渉がこれからありますからということでなかなかお答えをいただけなかったと。
 合意ができなかったという結論になった時点で、国民に対する説明責任は絶対に政府としてあると思っておりますし、そのときに、どういうふうな交渉をするつもりで行ったかどうかということを、それでその結果、合意ができなかったと、それは国民理解してくださいと、もしくは我々国会に対して理解をしてくださいと説明するのは、私はある一定義務があるというふうに思っております。その合意に至らなかった結果責任というのは間違いなく政府には存在しているわけで、その次の交渉でどういうふうなスタンスでいくかはまた別の問題でございますが、そこについては、少しこれから先、続きでいろいろ聞いていきますが、すべてが交渉途上だということになりますと、これから何にも建設的に、国内措置の議論も、それから批准に向けてのいろんな具体的なお話し合いも、なかなか国会の場でできなくなりますので、そこは、私の意見ですが、そういうふうなつもりで次からのお答えをいただければと思います。
 では、十四日に提出されました日、米、カナダの吸収源の提案でございますが、この吸収源の提案についてお伺いをします。
 先ほど、そこそこ時間をかけて煮詰めていったということになりますが、これは新聞等にも出ておりますので明らかな数字ですが、環境庁の方からあえてお答えをいただきたいんですが、日、米、カナダの提案によると、アメリカ、カナダ、日本、それぞれ吸収量は何%になるのかお答えいただけますか。

○国務大臣(川口順子君) 日米加三カ国の提案によりますと、吸収量は、アメリカについては七・六%でございまして、これは本来アメリカが持つ吸収量の半分以下ということになっております。それから、カナダについては五%、日本については三・七%、それぞれ一九九〇年の排出量との比の数字でございます。

○福山哲郎君 先進国全体では幾つになるんでしょうか。

○国務大臣(川口順子君) 先進国全体では、実はそこまでこの提案に基づいて、この提案は一部オプションを、どちらかを選択するという選択肢を含んでおりまして、その選択肢のどちらをとると、それから片方をとったときにどういうような数字にするというところまで、最終的に議論がそこまで行きませんでしたので、先進国全体でどれぐらいになるという数字は申し上げることができないということでございます。

○福山哲郎君 アメリカの京都議定書における温室効果ガスの削減の約束のパーセンテージはこれはもう皆さん周知のことだと思いますが、長官、幾つでしたか。

○国務大臣(川口順子君) 三億トンでございます。

○福山哲郎君 何%でしたか。

○国務大臣(川口順子君) これは恐らく一七、八%ぐらいになっていたかと思いますが。済みません、ちょっと質問を吸収源の話かと思いましたので。七%がアメリカの数字です。

○福山哲郎君 七%ですよね、アメリカが約束したのは。今、長官がおっしゃられました、この提案によるアメリカの吸収量は七・六%とおっしゃいましたね。七%で世界的に京都議定書で約束したと。ところが、日、米、カナダがこの会議の始まる冒頭で提案したものによると、アメリカは吸収源だけ、森林だけで七・六%確保できる数字を提案したわけですよね。
 日本は確かに六%の削減で三・七%、全部のパーセンテージ、全部の排出量を吸収源でやるわけではないけれども、アメリカは七%と京都議定書で約束して、今回、日、米、カナダで提案をしたらアメリカがカウントすれば七・六%になった、つまりアメリカは国内措置を何もしなくても約束を果たせるような提案を日、米、カナダがしたという事実は、これは間違いないわけですね。

○国務大臣(川口順子君) そういうことではありませんで、先ほど日本について六%の三・七%ではないというふうに申し上げたわけですけれども、アメリカについても七%の七・六%ではありませんで、日本の場合にビジネス・アズ・ユージュアルでいったときに二一%の増加になるということでございますけれども、同じような数字がアメリカについていいますと、ちょっとはっきり記憶がありませんが、二五%から三〇%という数字でアメリカから聞いておりますので、そのうちの七・六%ということでございまして、削減以上の数字を吸収源でやるという提案をしたわけでは全くございません。

○福山哲郎君 いや、それは国内の事情としてはよくわかるけれども、京都議定書の意思からいうと、この提案はまさに京都議定書の中身を空洞化するという話になりますし、ビジネス・アズ・ユージュアルが二一%という話も、そのビジネス・アズ・ユージュアルの根拠、例えば日本の場合の根拠でいいますと、例えば経済成長率に関しては恐らくそのモデルで計算をしたときよりも経済成長率は落ちているはずですし、原発の予定も長期需給エネルギー見通しも今変更しかけている状況の中でこの二一%を金科玉条のごとく掲げて、そして三・七%を確保するんだと。
 もともと会議の冒頭にこの日、米、カナダの提案をしたこと自体で、吸収源についてアンブレラグループ、特に日本とカナダとアメリカはここから一歩も引かないよというふうに宣言をしたというふうに会議全体では映ったということは、私は別にNGO側にすべて偏る議論をするつもりは毛頭ございませんが、これは否定できない事実で、僕は長官を責めているのではなくて、逆に、長官は政府代表団として行かれました。環境庁だけの意思で行かれたわけではないと。日本政府の代表団として三・七%という吸収源の確保をしなければ批准ができないということを二十一日の会合で、長官はみずから会合の場でもおっしゃいました。つまり、日本は三・七%、それを死守しなければいけないんだと。
 僕は冒頭、建設的妥協の幅はあったのかと言ったときに、なかなかそれはお答えにくいとおっしゃいましたけれども、つまり建設的妥協の幅がないからこそ長官は三・七%以外の選択肢がない中で、言葉は悪いですけれども、丸腰で国際会議に出られて、そしてそれを主張せざるを得なかった。僕は、すごい長官は厳しい立場で行かれたんだろうなと思いますし、環境庁も苦しい立場だったろうなと思って、逆に言うともう少し幅を持たせるのが日本国内の、政府としての代表団に対する姿勢だったのではないかなというふうには思っているんですが、そういった点に対して、批判に対して長官はどのようにお考えでしょうか。

○国務大臣(川口順子君) ビジネス・アズ・ユージュアルで二一%の数字というのが本当にそうかどうかということについては、今はそう考えられているということでございまして、現に九八年時点で五%以上ふえているわけでございますので、そこからいっても一一%の削減になりますし、確かに今までのところ景気は想定されていたよりも伸び率、景気が足を引っ張った部分もありますけれども、二〇一〇年でございまして、これから十年あるわけですので、今の段階でどういう進展になるのか、あるいは現実問題として二一%以上にふえてしまうこともないわけではないでしょうし、今は二一%という数字が存在をしているということでございます。
 その二一%、この地球温暖化対策推進大綱ということにいろいろなデータと何をやって減らすんだということが書かれているわけでございまして、三・七%シンクというのはその京都議定書、九七年の議論の中から出てきた数字だと私は理解をしております。
 それで、これは交渉事でございますので、いろいろな言い方をしていろいろ自分が望むポジションに全体の議論を運ぶ、これをやることは日本にとって国益ですし、政府の代表団がそれをやらなければ代表団ではないということでございますので、それをやるのは仕事でありますし、使命であると思っております。
 先ほども申しましたように、ずっとハーグに行く前から日本が今までもう本当に七〇年代からエネルギーの使用の効率を高めるために非常な努力をしていること、その成果が現に上がっているということも御説明をいろいろな方にさせていただきましたし、それから省エネ法というのは私の所管ではありませんけれども、産業界に対しての省エネ法の強さといいますか、は各国、先進国が持っている省エネ法の中で一番厳しい省エネ法は日本にございます。日本がそれを持っております。それから、地球温暖化防止を目的とした法律を持っているという国も恐らく先進国の中では日本だけだと思います。
 というような努力を申し上げ、それから国内対策でほとんどやるつもりであるということを申し上げ、その中で吸収源というのは京都議定書で六%を受け入れた、これはアメリカにとっても全く同じような事情でございますけれども、時に非常に重要な数字であったということも申し上げ、そういう中で議論が、日本についての理解は非常にしていただけたということでございまして、可能な限りその三・七%を達成することが交渉団としては非常に大事な仕事だというふうに思っております。
 それから、もう一つ追加をさせていただきますと、国際的にこのシンクの問題のエッセンスというのはアメリカの問題でございます。そういう意味では、アメリカのシンクをどれぐらい減らしていくかということはヨーロッパにとっての最大の関心事と言ってもいいと思いますけれども、またその背後の理由にあるのは、アメリカが国内対策をやらないことによってアメリカの産業競争力がヨーロッパの産業の競争力に比べて強いものになるということは望まないということでございまして、そこからいきますと日本のシンクの三・七%ということは、国際的にそれが目くじらを立てられる種類の問題では全くなかったということでございます。

○福山哲郎君 目くじらを立てる種類の問題であったかなかったかはそれぞれの皆さんの主観が入りますから、そこはもう水かけ論になりますので、衆議院の委員会でもよく言われておりましたので、もうこれ以上は申し上げません。
 少し、事実だけお答えください。短目の答弁で。思ったより時間がたっておりますので、短目の答弁で結構でございます。
 二十三日の未明にプロンクから出されたペーパーがあります。この提案に対して、日本代表団は一体評価をどうしたのか。
 それから、そのプロンク・ペーパーに対する答え、意見というものを二十四日の夜の十時ぐらいに求められていると思いますが、それに対する意見はどのようなものを出されたのか、具体的にお答えいただけますか。
 それともう一点。プロンク・ペーパーによっての吸収量、吸収源は日本、カナダ、アメリカではどれほどのパーセンテージになるのかをお答えください。もう事実だけで結構でございます。

○国務大臣(川口順子君) まず、プロンク・ペーパーの評価ですけれども、私は先ほど申しましたように議長をしておりましたので、事前にそのプロンク・ペーパーを見ました。それで、私が議長をして、それで合意に達したところについて、これは議事録がちゃんとございますので、その議事録に基づいてプロンク・ペーパーのまとめはそれと離れているところがあるということはその場で指摘をいたしております。したがって、プロンク・ペーパー自体、その前に開かれた幾つかのテーマごとの会議の成果を反映していない部分があるということが問題だということです。
 それからもう一つは、プロンク・ペーパーのバランスがどちらかといえば途上国寄り、それから先進国の中ではEU寄りになっているということは否めなかったということでございまして、アンブレラのグループの中でその後で実は会議をしまして、アンブレラグループとしてのプロンク・ペーパーについての紙を出しております。プロンクあてに手紙を出しておる、議長あてに手紙を出しましたけれども、オーストラリアが中心になって出しましたけれども、その中にもそういうことが書いてあるということで、それがアンブレラグループとしての評価であるということでございます。
 それから、二十四日に反論といいますか、日本政府としてのコメントを出しまして、幾つかの部分は、例えばシンクのように日米加三カ国の対案として出しましたし、アンブレラ全体としての対案ということで出した部分もございますし、日本政府だけで出したということもございます。シンクの部分は三カ国の対案ということになっております。
 それから、お尋ねの数字のことでございますけれども、プロンク・ペーパーに示された算定方法を用いますと日本は百九十万トン、それからアメリカが四千九百七十万トン、それからカナダが三百十万トン、そういう数字になっております。

○福山哲郎君 パーセンテージで。

○国務大臣(川口順子君) パーセンテージでいいますと、アメリカは三%、カナダが一・九%、それから日本が〇・六%、そういうことでございます。

○福山哲郎君 先ほど、プロンク・ペーパーがちょっと唐突ぎみに出てきて、これまでの議論とは離れたところへ出てきたと言われた長官のお話と評価というのは、僕はこれはある一定の、そのとおりだと思います。変な話ですけれども、COP3から三年間かけて一体事務方は何を議論してきたんだというふうに疑問を持つぐらい唐突に出てきて、閣僚会合でも議論していないようなものも出てきたと、そこの印象は確かにぬぐえなくて、議長の、何というか議事の運び方も含めて、それは僕は今後のCOPの課題だというふうに感じてはいるんです。
 ただ、プロンク・ペーパーから出てきたのが、EU、途上国寄りという評価はありますが、日本は〇・六%しか吸収源を算入してくれない。アメリカは三%、カナダは一・九%。先ほどの日米加でいいますと、本当に開きがあるわけです。アメリカは七・六%だったものがプロンク案では三%、日本は三・七%だったのが〇・六%というのが現実でございまして、これだけ開きがあるということは、議長は、ある意味でいうと、まとめたいと、まさか決裂のためにこのプロンク・ペーパーを出したわけではないと思いますので、僕は、国際社会で見たときに、日、米、カナダの案というのは少しやっぱりどちらかというと否定をされた方向ではないかなと、ぎりぎりになって出てきたプロンク提案で、日、米、カナダのあれはちょっとしんどいですよと、そのかわり京都メカニズムについては、排出権取引についてはある程度アメリカの言い分を聞きますよというような状況だったような気がするんですが、そこら辺の長官の御感想はいかがですか。

○国務大臣(川口順子君) 先ほども言いましたように、プロンク・ペーパーはとにかく交渉の材料だということでございますので、プロンク・ペーパーとの比で日米加の対案が離れているから国際的にそれが否定される方向であるとは必ずしも言えないというふうに思っております。
 現に、その後合意寸前まで行ったEUとアンブレラの間の合意の案というのは、そういう意味でいえば、シンクのところについてはプロンクの案とはまた異なった扱いになっておりますので、プロンク・ペーパーはあくまで材料であるというふうにお考えいただきたいと思います。

○福山哲郎君 そこで重要な話なんですが、先ほどからシンクに関しては日米加で共同で対案を交渉のたびにやっていたというふうに長官はずっとおっしゃっておられたんですが、その長官がいつも言われています、明け方、二十五日の早朝まとまりかけたと言われている、EUとアンブレラの合意になりかけた案というのは具体的にはどのような数字なのか、教えていただきたいというふうに思います。

○国務大臣(川口順子君) パッケージの案ということでございまして、吸収源についてどういう数字にするかということが一つです。それから、京都メカニズムの上限をどうするか、これはEUは定量的にということをずっと言っておりまして、アンブレラ側は定性的にということを言っておりまして、これをどちらかといえばEUが歩み寄る形の文章になりかかっていたということでございます。
 それから、不遵守が生じたときにどういうような行動をしてもらうかという、どういう措置をとるかということですけれども、これについてもかなりアンブレラとEUが歩み寄る形で合意ができかかっていたかなと思います。
 それからもう一点、CDM、クリーン開発メカニズムの中におけるシンクの問題。これについては、これはアメリカとEUの間で大きな問題であったということですけれども、これについてもその時点では一つの合意がありました。いずれにしても、EUの代表の国々とアンブレラのかなり多くの国との間では、その案について一時的にせよ合意ができたということでございます。
 この細かい数字については、今まさにこれから五月、六月に向けて交渉が続いている過程でございますので、ちょっと申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。

○福山哲郎君 でも、それはまとまらなかった数字ですよね、長官、結果としては。ということは、この時点で、この状況でまとまらなかったというEUやアンブレラや途上国、この場合ではEUとアンブレラですが、のポジションについては結果としてそれはまとまらなかったわけですから、その数字については交渉途上とはいえここで御報告いただくことは差し支えないのではないかと私は判断するんですが。

○国務大臣(川口順子君) おっしゃるように、一時的に一部の国の間では合意された。しかし、最後に全部の国の中にそれを広げたときに合意しない国があったということでまとまらなかったということでございますけれども、これから後の五月、六月に向けての交渉の過程で、現にかなりの合意のベースとなり得た案ということでございますので、これは引き続きベースになるものだと私どもは思っております。私どものみならずかなりの国がそう思っているということですので、今の段階ではどういう数字かということは申し上げるのは御遠慮させていただきたいということです。

○福山哲郎君 今の御答弁は、委員長、私は納得できないんです。
 合意がまとまらなかったと。いろんな議論をしている中でいろんな数字が出るのはよくわかるんですが、その中でまとまらなかったと。一部が反対をしたと。それは今までの交渉の過程と一緒で、日米加も提案を出していますし、プロンクからのペーパーの提案も出てきているわけで、そういう状況の中でまとまらなかったものに対して一つの過程として、プロセスの中で国会で説明をしていただくのは私は道理だと思うんですが、委員長、御判断をいただけませんでしょうか。

○委員長(溝手顕正君) 中身につきましては、また別途理事会で話させていただきます。これが適当かどうか私は判断する能力がありませんし、できないと思います。

○国務大臣(川口順子君) 今の点についてもう一つつけ加えさせていただきますと、これは国際的に話をしている案でございまして、日本だけが持っている案ではないわけでございます。これはほかのどの国からもこの数字はオープンにはされていないわけでございまして、日本としても、この段階で数字がこうであったということを申し上げることは、日本のみならずほかの国の交渉の足場を崩すことにつながりかねませんので、ぜひこの点については御了解をいただきたいと思います。

○福山哲郎君 理事会で後で協議をいただくということで、次に移りたいと思います。
 結局、最終的にこれはまとまらぬという話の中でEUのある国がノーだと言ったということが巷間伝わっておりますが、これはだめだと長官が判断されたのはいつの時点でしょうか。

○国務大臣(川口順子君) だめだの意味ですけれども、だめだというその案をベースに議論をしていって合意ができないという判断は、いまだにいたしておりません。

○福山哲郎君 しかし、二十五日の朝十時に、長官は、今回の合意は決裂をしたと、だめだったという記者会見をされています。ですから、その会議の中の時点では、十時に記者会見を開くということを長官が政治的な判断をされたというところにおいては、どこかの時点で長官は、この合意はもう無理だと、決裂のまま日本に帰らなければいけないという判断をされたわけで、その時点がいつかをお伺いをしております。

○国務大臣(川口順子君) 十時に記者会見をいたしましたのは、それまでも記者の方と記者会見はいたしましたし、実は記者会見をするというお約束をしていて、私が会議でどうしても離れられなくて申しわけないけれどもと言って流させていただいたこともございます。そういう意味で、重要な節目でできるだけ情報を記者の方にはお伝えしたいというふうに思っておりました。
 それで、十時の時点で会見をやりましたのは、ずっと徹夜で続いていた、ちょっと十時かどうか私は時間は余りはっきり覚えてないんですけれども、いずれにしても、二十五日の午前中にずっとその前の日から徹夜でやっていた会合が一応終了をいたしまして、その一番最後の段階で各国といいますか各交渉グループで交渉のエバリュエーションといいますか評価をいたしまして、プロンク議長の判断として、これはその後二時に全体会合で最後議論をすると。それは、今後の進め方等について議論をするということがございまして、実はその前に一部の交渉グループに対してはもう少しインフォーマルな形でできないかという提案も議長はしたんですけれども、一部の交渉グループって、その全体会合の場でしたわけですが、一部の交渉グループがそれを拒否したというようなことがありまして、この段階で、まだオンゴーイングではあるけれども、とりあえず一つの区切りであるという判断もございまして、その状況を新聞記者の方々にお伝えするということでございまして、中断という形の言葉を使わせていただいております。今の時点ではまだ合意ができていないというふうに申し上げました。

○福山哲郎君 その時点でアメリカのロイとEUでフランスのデボアさんが交渉をしていた、それは多分インフォーマルな話だと思いますが、交渉していたということは長官御存じだったんでしょうか。

○国務大臣(川口順子君) それから後のプロセスで実は私自身も交渉をいたしましたし、各国ができるだけ残っている期間、残っている閣僚でそれを有効に使おうということでやっております。ということで、たまたま私がその記者会見をしていたときにアメリカがどこかの国とやっていたかどうかについては情報は私は持っておりませんけれども、その時点、要するに十時、ちょっとはっきり時間今覚えていませんが、から午後のプレナリーといいますか、全体会合までの間を利用して各国いろいろな話し合いをやっているということはございます。

○福山哲郎君 しかし、細かいことを申し上げるようですけれども、その記者会見で長官はおさまるところにジグソーパズルがおさまらなかったという表現をされておられまして、中断と、オンゴーイングだというふうに今おっしゃられましたけれども、ある一定のレベル、これはもう決裂で帰るんだと、合意ができないんだという判断をされたと思うんです。
 もう一度お伺いします。その記者会見でパズルがおさまるところにおさまらなかったとおっしゃられて、もうこれは無理だと判断されたのは一体いつの時点でしょう。

○国務大臣(川口順子君) ジグソーパズルという発言は、私は最後の全体会合でいたしまして、それはその全体会合のときに事務レベルで用意してもらった紙を少し変えた発言をしたいと思いましたので、その直前に自分の頭の中でこれは考えた表現でございまして、記者会見のときに、徹夜明けでもうろうとしていましたので、あるいは本当に言わなかったかどうかと詰められると、私は言わなかったという記憶しか今はないので、その時点ではジグソーパズルのことは多分考えてもいなかったというふうに思います。

○福山哲郎君 それでは具体的にお伺いしますが、長官は政府代表団の団長として行かれたわけです。今回の交渉の過程で、それぞれ官邸なり総理なりと必ず連絡を取り合って、ここでまとめるか、ここでまとめないかという話の中で、これは合意ができないという判断は長官一人でやられたのか、それとも官邸なり総理なりときっちりとある程度対応した上で、これは合意しなくて帰るんだというふうに決断をされたのか、その政治プロセスについて具体的にお答えいただきたいと思います。

○国務大臣(川口順子君) 官邸と、それから最後の段階で総理はシンガポールにいらっしゃいましたので、私はシンガポールにいらっしゃる総理と二回ほどお話をいたしております。それから、官邸には随時事務的にお話を申し上げておりまして、それが秘書官経由で総理にも伝わっているというふうに思います。
 それで、交渉のプロセスといいますかやり方といたしまして、これは日本とどこかの二カ国の会合の交渉でございますと、日本がこれでこれをやめるとかあきらめるとか、あるいはもっとやるとか、妥協を日本がおりてやるとか、そういう選択肢があるわけですけれども、これは多国間の会合でございますから、特に日本のポジションが足かせとなって交渉がだめになりそうだということではなかったものですから、全体としてこの会合は、十時か九時か、それぐらいに終わった会合と、それから午後二時ぐらいから開かれた全体会合と、それで終わったということでして、日本がこれをやめるとかやめないとかという、そういうプロセスではございません。

○福山哲郎君 しかし、先ほど長官が言われましたEUとアンブレラで最後の最後まで、具体的な数字はお示しをいただけませんでしたが、最後の最後まで、朝方まとまりかけた案という状況は、日本もその案には了承をして臨んでいたはずでございます。その案については官邸もしくは総理に了解を得ましたか。

○国務大臣(川口順子君) 交渉団として事前に行く前に、こういう範囲であれば交渉団の判断でという話がございます。それで、それを超えるときには、超えなければいけないような事態が生じましたら、その場合には改めて新たなる訓令を出してもらうということになるわけでございますけれども、交渉団の判断としては、それまでに議論されていたことは、これもちょっと申し上げて外国に余り知られたくはありませんけれども、その訓令の範囲だという、要するにマンデートの範囲であったというふうな判断を基本的にはいたしておりましたけれども、その合意案なるものについて一国一国がイエス、ノーということを言って合意に達したということではございませんでしたので、日本としては、日本政府としては正式にこれはこの時点では反対だとかあるいは賛成だとか、そういうことを言う局面ではなかったということでございます。

○福山哲郎君 聞けば聞くほどわからなくなったんですが、反対だとか賛成だとか言う場面ではなかったけれども、EUとアンブレラで交渉して合意が早朝まとまりかけたとおっしゃっているわけで、それが例えばまとまった場合は間違いなく日本はそれをのんでいたわけですよね、反対とか賛成とか言う前に。そうするとそれはある程度、先ほど言われたように、じゃこういうマンデートの範囲の中の合意案だったということですね。そういう受けとめ方で、理解でよろしいですね。

○国務大臣(川口順子君) 私はそういう判断をいたしておりました。

○福山哲郎君 逆に言うと、僕は一番最初に、建設的妥協という言葉を使われたがどういう妥協するポジションを持っていたのかと、冒頭長官に聞きました。今、長官はそこに対して余りはっきり答えられなかったんだけれども、今、こういう範囲であればというマンデートがあったと。これについては今も明らかにはしていただけないんですね、具体的には。どうでしょうか。

○国務大臣(川口順子君) これが表に出ることになりますと、日本のこれからの交渉相手のすべてが日本がどこまでおりられるということを全部知ることになりますので、そういう状況でございますので、今申し上げることは控えさせていただきたいと思います。

○福山哲郎君 官邸の連絡をずっとやられていた窓口は一体だれで、それはどういう資格の方が官邸の連絡で常に情報をやり合っていたのか、さらには総理と二回ほど話されたというのはいつといつの時点か、お答えください。

○国務大臣(川口順子君) 官邸との関係で、だれが窓口で、関係省庁幾つかございますから、どこのだれからそういうところに流れることになっていたかということについては、私ははっきり今ここで申し上げられる情報は持っておりませんが、きちんとそういうふうにルートは、ルートといいますか、どういう状況でどういう上げ方をするということは決まっていたということでございます。
 それから、総理にお電話しましたのは、二十五日のお昼過ぎの時間……

○福山哲郎君 現地時間ですか、ハーグの時間ですか。

○国務大臣(川口順子君) 済みません、オランダ時間です、ハーグです、の時間と、それから徹夜交渉のさなか、二十四日の、したがいまして二十五日の早朝と申し上げた方がいいと思いますが、夜中でございます。

○福山哲郎君 邪推でございますが、二十五日のお昼過ぎというのは会見が終わった後、二十四日の早朝というのは先ほど言ったいろんな合意案がまとまりかけているときの前後ですから、僕はどう見てもそこには官邸に政治的な判断を求めたとしか考えられないのですが、これ以上細かく申し上げてももう時間もありません。
 最後に、非常に重要なことなんですが、この六日、七日、オタワで会合が開かれています。今月の末にはノルウェーで閣僚級の会合が決まって、COP6の継続的な議論が進むという話になっているんですが、この会議に臨むときに、一体プロンク・ペーパーなのか、まとまりかけた合意案なのか、それとも交渉の途中に出てきた、何百ページにも及ぶ議長から出てきたテキストでスタートするのか。一体、五月に行われるCOP6・5というか、五月に行われることが決まった会合について、日本はどのポジションから交渉がスタートするのか、もしくは国際的にどのポジションから始めようという合意ができているのかということをお答えいただきたいということと、もう一つ申し上げますと、一月十五日にプロンク議長ペーパーに対して条約事務局に修正案を提出することになっていますが、これに対して日本はどのような修正案を出す用意があるのか。今の二点についてお答えください。

○国務大臣(川口順子君) オタワでの会合でございますけれども、先ほどちょっと申し上げましたように、プロンク議長が会合の最後の段階で、これからできるだけ政治的なモメンタム、動きをとめないように関係の国々の間でいろいろ議論をしてほしいということでございましたので、先進国でどうやったらそういうことができるだろうかということを議論するということで事務レベルで行っております。
 それから、閣僚ベースの会合というのは、まだ私の理解では正式に決まっておりませんで、むしろ私の気持ちとしては、そういう閣僚レベルの会合が可能になるような事態があれば、モメンタムの維持というのが非常に軌道に乗ってきているという意味で非常にうれしいというふうには思っております。
 それから、一月十五日の修正案でございますけれども、何百ページものテキストとおっしゃいましたけれども、実はプロンクのペーパーというのは十四ページでございまして、テキストはまた全然別な存在でございます。その十四ページのプロンク・ペーパーについての紙ですけれども、これはこれから相談をいたしまして紙をつくるということになると思いますし、その過程で、ハーグでもアンブレラのほかの国と共同で提案、修正案を出しましたし、プロンク議長もできるだけそういうことを勧めているということもございますので、日本だけで出すかどうかというのもまだ検討の余地があると思っております。

○福山哲郎君 どの議論から始めるんでしょうか、例えば始めるとすれば。

○国務大臣(川口順子君) これも日本国だけで決める話ではなくて、世界的に合意に達したところで議論を始めるということでございます。

○福山哲郎君 それはまだ合意ができていないということですね。

○国務大臣(川口順子君) 合意はできておりませんが、我々の希望は持っております。

○福山哲郎君 その希望はどこでしょうか。

○委員長(溝手顕正君) 時間がたっております。

○国務大臣(川口順子君) アンブレラグループとしては、それから今後の進め方の速さということからいいますと、合意ができかかったペーパーをベースにするというのが望ましいというふうにと思っております。

○福山哲郎君 済みません。ありがとうございました。

 

第150国会  参議院  国土・環境委員会  2000年11月30日

○福山哲郎君 民主党・新緑風会の福山でございます。よろしくお願い申し上げます。
 まず、事前の通告ではちょっと申し上げていなかったんですが、建設省にお伺いをしたいんですが、マンションストック戸数が建設省の資料によりますと、平成十一年末現在三百六十八・七万戸、約一千万人とあるんですが、この推計というのはどういうふうに出すものなんでしょうか。

○政府参考人(三沢真君) お答えいたします。
 三百七十万戸の推計につきましては、これは建築着工統計からいわゆるマンションという定義に該当するものを推計しているわけでございます。それに対しまして、マンションの住民は大都市圏が多いわけでございますが、特に都市部の平均世帯人員を掛け合わせまして約一千万人という推計をしているわけでございます。

○福山哲郎君 今おっしゃられましたマンションの定義というのは、具体的にどういったものになるんでしょうか。

○政府参考人(三沢真君) マンションの定義でございますが、まず区分所有であるということが一つでございます。それから、区分所有であっても、いわゆる事務所専用のものはこれは除くということでございますので、居住の用に供する住戸を有している区分所有の建物という定義でございます。

○福山哲郎君 別の資料を読みますと、千七百万世帯が非木造建ての集合住宅に入っていて、一世帯二・三人ぐらいだと約四千万人ぐらいがマンションに住んでいるのではないかという資料もありまして、若干、建設省の資料とは数字が異なるので、少し冒頭お伺いをいたしましたが、どうぞ。

○政府参考人(三沢真君) いわゆる集合住宅ということになりますと、区分所有の分譲の建物以外に賃貸が入っておるのかと思います。千七百万というのは恐らく賃貸も含めた集合住宅の住民の数ということかと思います。

○福山哲郎君 このマンション管理適正化推進法のポイントというのは、基本的にはマンション管理士を置く、マンション管理適正化推進センターを置く、それからマンションの管理業者を適切に管理するというのが大きな柱だと思うんですが、このマンション管理士について不明な点が実は大変まだ多い。仕事の内容がまず不明瞭であります。建築や運営や会計など、それなりに高度な資格だというふうに思いますが、一体どんな能力を求められるのかもわからない、報酬もどのような状況になるのかもわからない。どの程度マンション管理士という士業が世間に需要があるのかもいま一つわからないので、その辺の問題につきましてお答えをいただければと思います。

○衆議院議員(山名靖英君) お答えをさせていただきます。
 今おっしゃったマンション管理士の問題でございますが、この趣旨説明にも申し上げましたとおり、多くのマンションをめぐる区分所有者とあるいは業者、分譲業者を含めまして多くのトラブルがございますし、また区分所有者間のトラブルも一方で非常に多いわけでございます。ペットの問題、あるいは騒音の問題、共有部分のリフォームの問題等々、大変難しい問題が山積をしておりまして、今日までそういった意味ではマンションをめぐる問題点というのが大変行政的にも大きなウエートを占めていたわけでございますが、具体的にどこに相談に行ったらいいのか、こういうことも、その窓口も明確ではなかったし、十分な対応が図られなかったというのが実態でございました。
 そこで私たちは、マンション管理士という、こういう新たな制度を設けまして、当然、居住のルール、管理組合のそういった運営、こういうものをめぐるトラブルの発生をまず防いでいこうと。それから、管理組合の活性化といいますか、現実に居住者の総会をやりましても、総会に参加する居住者は全体の四割にも満たない、こういう問題もございます。あるいは、区分所有者の皆さんの要望にこたえまして、規約だとかあるいはルール、こういったものを見直そうという場合にアドバイザーとして相談に乗るとか、それから問題の長期修繕、こういう修繕計画や、あるいは修繕の積立金、こういった問題につきまして、企画あるいはその見直しのためのアドバイザーとして有効にこのマンション管理士が活躍をしていただける。居住者あるいは管理組合の皆さんの支援策としてこのマンション管理士制度というものを新たに創設した次第でございます。

○福山哲郎君 中身は一応イメージできたんですが、実際にはどの程度需要があって、どういうふうに、例えば七条二項によりますと、「国土交通省令で定める資格を有する者に対しては、国土交通省令で定めるところにより、試験の一部を免除することができる。」と言っていますが、一体どういう試験になるんでしょうか。
 今、山名先生がおっしゃられましたように、アドバイザー、規約、ルールという話になると法的な知識が必要ですし、修繕積立金の話になればある程度会計士というような資格も必要になりますでしょうし、かなりウルトラスーパーマンみたいなマンション管理士になるような気がするんですけれども、一体どういうふうな試験で、またどういう形だと試験の一部を免除できるようになるのかということを想定されているのか、お答えいただけますか。

○衆議院議員(山名靖英君) このマンション管理士になるための試験の中身の問題でございますが、先ほど申しましたように、極めて法律的、また実際の現場での体験等もしっかり踏まえなきゃならないということも言えると思います。
 詳しくは後ほどの政令でこれは定めるものとしておりますけれども、例えばマンション法、仮称マンション法ですね、それから区分所有法、こういったものも当然科目の中には入ります。それから、民法全般、あるいは中高層共同住宅標準管理規約関係、こういった問題も当然科目の中に入ろうかと思います。それから、管理組合の運営管理規約、規則、細則、そういった問題、長期修繕計画、建てかえ計画に関する問題、こういった極めて重要な中身を試験科目としては今想定しているところでございます。
 それからもう一点、どういった場合試験の免除になるのかということでございますが、例えば、この中に、本法の中にうたっております管理業務主任者、こういった人たちが当然管理士になるというケースも考えられます。それを規制はしていないわけでありまして、そういう意味では、この双方が共有する区分所有法だとかあるいはマンション管理適正化推進法、この本法そのもの、こういったものは当然共有するわけでありますから免除科目の対象となる、こういうふうに考えております。

○福山哲郎君 先ほどから申し上げたように、どのぐらいの需要があって一体何人ぐらい必要だとかいう話はどうなっているんでしょうか。

○衆議院議員(山本有二君) 潜在的需要があると考えられますものは、そもそもまず管理組合の役員の経験者が管理士になるだろうと。さらに、管理会社でマンション管理に携わった者、すなわち区分所有管理士、これは民間の資格でございますが、それで今度とり行われます管理業務主任者、こういった者がさらにマンションの管理士という資格に挑んでくるというように思われますし、もう一つ、民間非営利団体、マンションの管理に携わった者等で組織されるNPO、こういった方々が資格取得に意欲を持たれているだろうと。
 さてそこで、マンションのまず管理組合の数でございますが、約五万組合日本国じゅうにございます。さらに区分所有管理士という資格を持った方々が千七百名、また管理業務主任者、現在は国家資格ではないんですけれども業者の内部的な資格として一万四千名、さらに非営利団体でマンションのことに携わっておられる方々が百二十七組合というようなことでございますので、いわばこういった方々を潜在的管理士のニーズととらえることができようかというように考えております。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 それ以外に、もう時間もありませんので、私は今回の法案で一番評価をしているのは、実は大変トラブルのもとになっている修繕積立金の分別管理の問題です。これまで業者が倒産をしてそれが債権として持っていかれてしまうとか、そういったトラブルが多発していたことに対して、今回分別管理ということが明記されたことに対しては私はこれは評価をしておるんですが、分別管理を義務化すると、折しも二〇〇二年からペイオフ解禁を控えると。管理組合としては、管理組合が実際に巨額な修繕積立金を突如として管理して、ひょっとすると運用までしなければいけない、さらにはそれを使うというようなことも含めて、管理組合がその修繕積立金の運用をどのように行っていくのか、もしくはそれについてどのように管理をしていくのか等について認識をされているのか、お答えをいただきたいというふうに思います。

○政府参考人(三沢真君) まず、修繕積立金の現状でございますが、現状では平均で戸当たり三十七万円程度の残高でございます。ただ、これはかなりばらつきがございまして、十万円以下しかまだ積んでいないというのもございますし、五十万円以上というところもございます。おっしゃるとおり、この修繕積立金について管理組合としてどういう形で運用をされるかということは非常に大事な問題でございます。
 私ども、そういう意味からいいますと、それに対する一つの応援ということで、ことしの通常国会におきまして住宅金融公庫法を改正いたしまして、修繕積立金を住宅金融公庫が受け入れることができる、いわゆる住宅債券という形でそれを、住宅債券を活用すれば、それを積み立てていただいて後ほどの計画的な修繕にそれを充てることができると、そういう仕組みをつくっているところでございます。
 これにつきましては今十月から実施を始めたばかりでございますが、今後、またそういうことを活用することによりまして一方では運用の問題に対してニーズにこたえるとともに、それから、その計画修繕を推進するというためにもこういう制度をより活用していただきたいというふうに考えております。

○福山哲郎君 この修繕積立金の管理の方法についても、逆に言うと、マンション管理士というのは介入するというか、マンション管理士の指導、アドバイスを仰いだりということもあり得るわけですね。

○政府参考人(三沢真君) マンション管理士は、やはりその計画修繕というのは非常に管理の中の大事な部分でございますので、当然、その計画修繕の計画の立て方からあるいは修繕積立金の積み立ての仕方、あるいはどういう運用の仕方ということも含めていろいろアドバイスが可能だというふうに考えております。

○福山哲郎君 私は、この法案のいいところと悪いところがいろいろまざっているというふうに思っていまして、急にマンション管理士みたいなのが出てきたと思えば、今申し上げたように、積立金の分別管理についてはしっかりと義務化をしている。また、今まで把握をしていなかった登録の管理業者についてもしっかりと管理業者を把握しようという試みも含めて、マンションの住人が不利益をこうむっていることに対しては半歩ぐらいは前進だなというふうには思っておるわけですが。そもそも、マンションの管理組合に現実に皆さんが、住人がコミットメントしているかどうかが甚だ疑問なんですね。
 建設省の資料を見ても総会参加者が約四割と。管理組合、いわばマンションというコミュニティーが現実に日本で成り立っているかどうかというのは大変議論の余地があって、逆に言うと、隣近所、地域のつながりというのは嫌だからマンションに住んでいる人もいっぱいいて、隣の人も知らないというような人がいっぱいいると。管理組合に対してはそれなりの関心も余りない、もう勝手にやっておけばいいというような状況の中で、このマンションに対するコミュニティーをどうつくっていくのか。
 それは無理やりつくれといったってそういうものではなくて、きちっとやれる管理組合を持っているマンションもあれば、そういう全くみんながコミットメントしなくて非常に無関心な中で進んでいく管理組合もあって、そういう状況をどのように今建設省は認識をしているのか、また発議者の皆さんは認識をされているのか、ちょっとお伺いをしたいと思います。

○政府参考人(三沢真君) おっしゃるとおりで、そういう意味では現実の管理組合のあり方については、かなりいろいろな悩みがあるというふうに私ども承知しております。
 それが、特に戸建てで、隣近所と全く関係なく過ごすことができる建物であればそれがあるいは許されるのかもしれませんが、集合住宅、区分所有ということの中で隣同士でルールを守りながらやっていかなければならない、そういう必然的な制約の中でそういう管理組合なりを運営していかなければいけない。まさに先生がおっしゃるとおり、そこにマンションに固有のいろいろな悩み事なりトラブルが出ているということで、そういう意味では、当然その管理については自分の責任できちっとやるということを前提としながらも、そういう悩み事にきちっとこたえていくようないろいろな支援というのは必要なのではないかというふうに考えております。

○衆議院議員(原田義昭君) 今、行政の方からお答えいただきましたけれども、先生おっしゃるように、現在ある区分所有法、これに基づきますと、マンションのような形態の場合には当然に管理組合ができ、本来なら役員を選んで管理をするということになっておるんですけれども、実際は、今お話があったようになかなかそういうわけにいきません。
 むしろ、そういうわけにいっていないところにいろんな問題が生じてきておるわけであります、ペットの問題とか騒音の問題とか漏水の問題とか。そういう意味ではこの区分所有法の方は民事的な法律としてそれぞれの権利義務関係を調整しておるわけでありますけれども、やはりそれを放置しておったのでは、もう今や一千万人の住人がおるそのマンションという実態には到底対応できないというような意味から、社会的な法律として今回のマンション管理法ができ上がったと、こういうふうに理解していただきたいと思っております。
 この法律によって、まさに皆さんの意識もいよいよ高まってくるのではないかな、こんな感じもいたします。

○福山哲郎君 もうそろそろ時間なので、最後に一問質問させていただきます。
 これは、マンション管理士が新たにできる、それからマンション管理適正化推進センターが設置されるということで、やっぱり懸念されるのは、新たな士業ができる、新たな天下りや利権の温床になるのではないか、テストもあるわけですから。そういったことに対して建設省としてはどのような歯どめを考えているか、お答えをいただいて、私の質問を終わります。

○政府参考人(三沢真君) 管理士と、それからセンターの今後の運用についての基本的な考え方ということでございます。
 管理士につきましては、これは名称独占資格ということで、管理士という名前を用いる場合にはきちっとした試験を受かった方でないとそういう名前を用いてはいけないと、こういう仕組みでございます。したがいまして、その根幹は、やはり管理士という名前を用いる以上は管理組合なり区分所有者から本当に信頼できるような仕事をしていただくと、信頼できるアドバイザーというところに大変意味があると思いますので、この法律の中でもその信頼確保のために幾つかの法規制を置かれておりますけれども、今後の運用に当たりましても、その点は十分に留意しながら運営をしていきたいというふうに考えております。
 それから、センターにつきましては、これも御指摘のとおり、やはり行革の趣旨に反するということがあってはならないということはもう当然のことでございまして、これにつきましても、これからの問題でございますが、やはり基本は既存法人を活用すると。新しい法人をつくるということではなくて、既存の法人を活用しつつ、かつその具体の指定に当たっては最小限のできる限り効率的な組織、人員でというようなこととか、それからそういうことがまたきちっといろんな財務なり業務の運営につきまして透明性が確保されるような情報開示に努めると、こういうことは大変大事かと思いますので、そういう点に十分意を用いながら、この法律が成立した場合にはきちっと運用をしていきたいというふうに考えております。

○福山哲郎君 終わります。

 

第150国会  参議院  国土・環境委員会  2000年11月16日

○福山哲郎君 福山でございます。よろしくお願いいたします。
 今、我が党の北澤委員からるるいろいろな質問がございました。もともと用意をしていた、事前通告をしていた質問の順番を少し変えて、せっかく出てきた話の続きから行かせていただきたいというふうに思います。お許しをいただきたいと思います。
 先ほどから参考人質疑、それから今の質疑の中でも問題になっていました、不正行為があったときに談合があると疑うに足りる事実と認めた場合にはどういう要件かということで先ほど大変重要な御答弁がありました。
   〔委員長退席、理事松谷蒼一郎君着席〕
 投書にしてもいろんな通報にしても、客観的な事実があればそれは公取に通知をしなければいけないんだというふうなお話がありました。私もここをお伺いしたかったんですが、もう御答弁があったので、お伺いします。
 そうすると、公取へ各発注者がいろんな形で通知をしなければいけない機会が今までの多分数倍ふえていくんではないかというふうに感じるわけですね。例えば、投書といってもいろんな投書があります。わけのわからぬ投書から、報道がある程度裏をとって報道する場合、いろいろあるんですが、先ほどのお話だと結構そこは客観的事実だからそのままスルーして公取に通知をしなければいけないんだという話になるんですが、来られた、通知された公取はたまったものじゃないという状況の中で、まず、膨大な通知が行くのではないかということに対して建設省はどういうふうに見られているのか、お答えいただけますか。

○政府参考人(風岡典之君) 入札談合を疑うに足りる事実があるときということで、ただいま先生は通報が何かあればすべてスルーでという意味だというふうに御理解いただいているようでございますが、私ども、先ほど申し上げましたのは、通報内容をやはり見てということでありまして、単に談合があったというだけではなくて、どういう工事についてだれだれが受注するというようなある程度の特定性、そういったものがある場合にはその時点で公正取引委員会の方へ通知をさせていただく。その時点、そういう客観的なものがあればそれでやります、発注者の主観的な判断というのは入れないようにいたします、こういうふうに申し上げました。内容としてはそういうことで御理解をいただきたいと思います。
 こういう法律でルールとしてできますので、当然、そういうことにならないことが望ましいんですけれども、通報するケースというのが少なくとも今よりはふえてくるということを心配もしております。

○福山哲郎君 多少ふえるということも今お認めをいただいたわけですが、では、そういった通知が今まで以上に来た場合に公正取引委員会としてはどのように処理をされるおつもりなのか、お答えいただけますか。
   〔理事松谷蒼一郎君退席、委員長着席〕

○政府特別補佐人(根來泰周君) 見込みとしてはいろいろあると思いますけれども、ある面ではこういう法律ができて談合の抑止力になるというような面もあると考えれば、むしろこれから事件が減るということもあり得るんではないかということも考えられますし、おっしゃるようにまたふえるということも考えられると思います。
 ただ、この談合というのは、各一件一件の事件を処理していくということではなくて、やはり全体を通じて談合があるかどうかということを慎重に検討してやるものですから、一件一件件数がふえたからそれだけ業務量がふえるということではなくて、そういう端緒を我々が得て、全体的に見られるという機会を与えられたものと考えますので、事件がふえたから業務がふえたというような、直接的にはつながらないんじゃないか、こういうふうに考えております。

○福山哲郎君 ということは、各発注者が疑いを持ったときにそれを公取に通知をする。通知をするけれども、それはふえても、それぞれ一件一件に関しては公取は調査をしないということですか。

○政府特別補佐人(根來泰周君) これはもう従来からそうでございますけれども、例えばAという会社がこちらの事件に関与しているというだけで直ちにやるということになるとなかなか証拠がつかみにくい。それから、今度はそのAという会社が違う事業にも何か談合に関与しておるというような二つの話がありますとここで調べるタイミングかなというような話になるわけでございますから、各一件一件があったから直ちに調査権を発動するということにならないというふうに私は一般的に思うわけであります。

○福山哲郎君 ということは、公取としてはいろんな通知が来た、見た通知の中でいろんな状況を総合的に判断をして、これは根が深い、これは完全に談合があるんだということをストックとして持って、それに応じてその場その場の判断で調査をしていくというふうな状況でございますね。

○政府特別補佐人(根來泰周君) おっしゃるとおりでございまして、調査のタイミングあるいは証拠の積み上げというようないろいろな見地から判断して、具体的に職権を発動するかどうかを決めるものと考えております。

○福山哲郎君 建設省としては、これを公正取引委員会に通知しなければいけないという義務規定にしたということと、今の公正取引委員会の答弁等に対して建設省自身のねらいということとのずれはないんですね。

○政府参考人(風岡典之君) 私どもは、先ほどのような状況のものがあれば、この法律に基づいて通報を必ず行うということにしております。そこを受けてどうされるのかにつきましては、今、委員長からお話があったようなとおりでございます。
 私どもとしましては、いずれにしましても、これは発注者がそういった情報があった場合には毅然として対応する、このことに非常に意味があるというようにも理解をしております。

○福山哲郎君 一件一件通知が行くということで、先ほど委員長が言われたように、談合に対する抑止力が逆に働くということも僕は十分あり得ると思いますので、そこに関しては評価をさせていただいているつもりです。
 一つ、これも細かい話で恐縮なんですが、いろんな通報が来たと、あそこで談合があるんじゃないか、どうじゃないかという話が来たときに、その中に官製談合が含まれる可能性があると思うんですね。
 先ほど言われたように、官製談合というのは発注者全体でやっているわけではなくて、例えば発注者の中のどこかの課のだれかがやっているとかいうような個人的な関与みたいな話があって、通知だとか投書だとかで、これは官製談合の疑いがあるのではないかというふうに例えば首長が判断したときに、それは自分の責任にそのまま返ってくるわけですよね。それを公取に通知をするというのは非常に実は考えにくいのではないかなと。
 情報の中には、官製談合の疑いがある、その官製談合は自分の役所の部下がやっていると。それは首長は自分が責任を問われる可能性があるわけですから、それを公取へ通知をするというのはちょっと考えにくいなというふうに思っておりまして、そこに関しては建設省はどのように判断しているんでしょうか。

○政府参考人(風岡典之君) 私どもとしましては、公正取引委員会への通知という義務が発生するものは、これは例えば官製談合というようなものも含めて、あらゆるものについてそういう形で通報の義務が発生するというように考えております。したがって、官製談合の場合も発注者は当然、法律上の義務として公取の方へ通知をする責任があるということです。
 先生おっしゃるように、そうはいっても今のような御指摘のケースではなかなか通報されないんじゃないかというような御指摘だと思います。
 それにつきましては、仮に私どもの方でそういうようなことがあったというようなことを承知すれば、それはその辺の状況を確かめるなり指導するなり、そういうようなことは当然行うべきであり、もう少し厳密な法律論を言いますと、それでも行わないというようなときであれば、これは地方自治法に基づいて改善要請というようなところまで最終的には行くと、こういうような法律上の組み立てになっております。

○福山哲郎君 地方自治法上では改善要請はできるという話ですが、私はここで一番懸念するのは、例えばその首長さんが非常に正義感があって、これは通知をした方がいいんじゃないか、自分のところの、例えば役所の中で何かあってもこれは通知をしてやるべきではないか、粛正するべきではないかと判断したときに、変にマスコミとか周りの世論が首長の責任論だというような話になって、思っていたものと、目的と全く違う方向に行っちゃう可能性があるなというふうに私は思っていまして、ここの運用に関しては慎重な必要もありますし、実効性に関しては多少僕は今の局長の御答弁だと納得できない部分があって、だからといって、もし首長が正義感を持ってやられたときに、その首長に逆に責任論が行くようなのも本意ではないなというふうに思って、大変難しいと思っているんですが、そこは局長いかがですか、くどいようですが。

○政府参考人(風岡典之君) 法律的な手当てとしては、そういった事情が発生した場合も、これは当然十条に基づいて通知をしなければならないと、こういうように法律上は言わざるを得ないというふうに思っております。
 あとは、仮にそういうような状況が期待できないような場合、これは何もいきなり地方自治法に基づく改善要請をするというわけではなくて、その間の状況についてもいろいろお聞きをするというようなこともできるわけでございますので、その辺は個別状況を見ながら、全体としてどういう方法がいいのかということを判断していくことではないかなというように思っております。

○福山哲郎君 そうしたら、現実にでは官製談合の通知が来たというふうに仮定をしていただいたときに、公正取引委員会としては、官製談合に対しては現状の法的な措置ではどのような対応が可能なのでしょうか。

○政府特別補佐人(根來泰周君) 常々御説明しておりますように、私どもは、官製談合と言っていいか発注者談合と言っていいか、その辺言葉を選ばせていただきますけれども、発注者が責任のある場合、これはまあAから最後までいろいろ態様があると思いますけれども、深く関与している場合とか、あるいはもう少し注意をしてくれればこういう談合は起こらないというような場合、いろいろあると思いますけれども、私どもの方は、要請文ということで発注者に対してこういう点は注意してくれというお願いというか要請をしているわけでございます。
 また、非常に目に余る場合は、これは個人責任になるわけでございますが、これは検事総長に刑事事件として告発するというときに、やはり幇助犯、従犯ということで個人の責任を問うということもあり得ることだと考えております。

○福山哲郎君 公取の中に、自民党さんが議員立法でという新聞趣旨も出ていますが、この官製談合について法的な措置が必要だというような話もるる飛び交っておるわけですが、これに関しては、公正取引委員会としては現状、どのような御認識でいらっしゃいますでしょうか。

○政府特別補佐人(根來泰周君) 先ほど申しました要請というのは、一つの事実行為といいますか、それこそ言葉どおり要請ということでやっているのでございますけれども、これについて法的な裏づけがありますればもっと効果があるのではないかという考え方をしております。
 先ほどお話しになりました本法案の発注者からの通知につきましても、一つは私どもが情報を得られるということもございますし、一つはやはり抑止力という問題も起こってくるということで、私どもは非常にありがたいと思っておるのでございますが、そういう意味を絡めて申しますと、やはりそういう要請について法的措置、法的根拠が与えられますと、さらに効果が発揮できるのではないか、こういうふうに考えております。

○福山哲郎君 今、委員長が法的措置があればより効果があるのではないかというお言葉は重要に受けとめ、立法府の方としても検討していかなければいけないのではないかなというふうに思っております。
 ではその中で、実は今、発注者が公取に直接通知ができるような状況になった中で、入札監視委員会というのが現行ございます。この入札監視委員会の現実の機能が、今のお話でいうと、発注者は通知ができるわけですから、この監視委員会の機能自身について少し、必要性があるのかどうか、それから、これがどのように今後活用していかれるのかということについて若干疑問が残るわけですが、政務次官、お答えをいただけますでしょうか。

○政務次官(田村公平君) 建設省には八つの地方建設局がありまして、そこに入札監視委員会をそれぞれ設置しております。
 この委員会の構成メンバーは、法律を専門にやっておられる大学の先生だとかあるいは弁護士さんだとか、あるいは建築、土木の大学の先生とか、そういう方々で構成をしておりまして、八つの地建にとりましては独立したまさに公正な機関というか委員会であります。それで、大体年四回開催しておりまして、二時間半から三時間ぐらいそういうことで審議をしていただいております。現在までのところ、八つの地建に対しまして、不正があったとか、いわゆる答申というか、こういう点が悪いということは通達をされたことはありません。
 ただ、しかし、この法律案ができていくことによって、より機能の強化、現在、全部の建設省直轄で発注しております工事の約一・三%を八つの局の入札監視委員会で取り上げておりますけれども、もう少し機能の充実を、この法律ができた場合に、公正取引委員会に発注者が言うだけじゃなくして、やはり談合とか不正が行われないために、より機能の強化、それから審査対象の工事もふやしたいと、このように考えております。

○福山哲郎君 今回の法律により、この八つの入札監視委員会よりも、各市町村並びに連合体としてかもしれませんが、広域連合として入札委員会がつくられるというふうに承っておるんですが、そうなったときに、今の有識者等も含めてですが、各小さい自治体とか市町村に対してこの入札監視委員会が実際機能するのかとか、設置が本当にできるような状況にあるのか、その辺の御認識はいかがですか。

○政務次官(田村公平君) 正直言いまして、私の田舎にも人口が六百三十人の村があります。そこに設置しろといっても、これは人手も足りませんし、それからそれほど村発注の工事もはっきり言って過疎のところではありません。
 そういう意味では、大変近い将来かもしれませんが、広域行政をやっておる地域もありますし、やっていないところもあります。そういう中で、力があるといったら語弊があるかもしれません、まずそういうことができるところから、隗より始めよじゃないんですが、そういう中で我々の方から、ましてや地方分権の時代で、あなたこういうふうにしなさいよというふうに言うわけにもいきませんので、いい意味でのお手本ができて、広域的なところでやっていけるようになれば非常にいい方向になっていくんじゃないかというふうに考えております。
 はっきり言いまして、小さなと言っては悪いですが、地方自治体に無理強いをしてできるというふうに甘いものではないと思っております。

○福山哲郎君 大変真摯にお答えをいただき、ありがとうございます。
 この法案の中で、先ほど北澤委員からも御指摘がありましたように、やっぱり小さい自治体に対する負担が過重にかかるのではないかと。今の入札監視委員会にしてもそうですし、毎年度の発注見通しの公表にしてもそうですし、それは逆に言うと、これも難しい問題ですが、逆に実効性を上げないことがこの法案の不信感につながることも非常に逆効果だというふうに思っております。
 ということは、今の政務次官のお答えからいうと、入札監視委員会と公取へ通知をすることは全く別建てだ、これは第三者機関として存在をするんだというふうな受けとめ方でいいわけですね。逆に言うと、投書や通知があったときに、発注者側が入札監視委員会に例えばこれを調べてくれみたいな機能は有しないということですね。

○政務次官(田村公平君) 入札監視委員会というのは、それぞれ八つの局に対してこういうことをアトランダムに、先ほど申し上げましたように今のところ全発注の一・三%でございますが、その中に不正とかおかしなことがあるかどうかというのを調べていただく制度でございます。
 それに対して、地建局長に対して、もしあった場合ですけれども、こういうことがおかしい、不正があると。それを受けて、今度は発注される局が受注者の業者さんに、こう言っているけれどもどうだと。それがまた公取に行ったり、あるいは明らかにいわゆる談合とかあるいは談合金の受け渡しがあったとかいうことになると、これは当然検察なり警察が出てくる話でありますので、趣旨はちょっとそういう意味では違うというふうに御理解いただきたいと思います。

○福山哲郎君 それと、これも先ほどから出てきているお話ですが、発注者側の毎年度の発注見通しの公表、入札、契約にかかわる情報の公表についてですが、建設省としては今最低限をどの程度というふうに御判断をされているのか、お答えをいただけますでしょうか。

○政府参考人(風岡典之君) 毎年度の発注計画、年二回公表するということであります。すべての発注情報を公表するということにつきましては、やはりちょっと業務量の関係があります。少額工事の場合にはそういうものから、例外として公表から外したいと。
 現時点で、少額工事につきましては、最終的には政令で定めさせていただきますけれども、二百五十万程度のものをもって少額かなというように今の時点では考えております。

○福山哲郎君 私には、小さい自治体にとっての二百五十万という金額が多いのか少ないのか、実はすごく判断しにくくて、そこは政令で御検討いただくのと、各自治体の声をやっぱりしっかりと聞いていただいて、少額工事の規模についてもしっかりと、一律に二百五十万が本当にいいのかどうかということに対してはちょっと御検討いただきたいと思うんですが、局長、いかがでしょうか。

○政府参考人(風岡典之君) 具体の範囲はいずれにしましても政令で定めさせていただきますけれども、先ほど私、二百五十万ぐらいのものは少額工事というふうに申し上げましたが、これは現在、会計法で随意契約によることができる金額ということで、少額なものは随意契約でも構わないという規定がありまして、それが二百五十万ということでありますので、現時点ではそういうように考えております。
 いずれにしましても、自治体にも絡む話でございますから、よくいろんな御意見も聞きながら最終的に決めていきたい、このように思っております。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 それから、先ほども参考人にお伺いをした件なんですが、建設省の御意向もちょっとお伺いをしたいと。
 前回の委員会でもほかの委員の方が質問されたやに覚えておりますが、中小建設業許可業者数が非常に増加をしていると。公共事業並びに建設投資の額というのはマーケットが小さくなっているのにもかかわらず、中小の許可業者が増加していることについては、どういった理由で増加をしているというふうに御認識か、お答えをいただけますか。

○政府参考人(風岡典之君) 業者数については、平成十二年三月末で全国で約六十万社ということであります。これは前年に比べまして二・五%増加をしておりまして、趨勢的には平成九年以降、毎年伸びているわけです。しかし、ことしに入りましてからのデータを調べてみますと、四月以降は少し減少傾向になってきているということであります。
 いずれにしましても、かなりの業者数になっているわけでございますが、業者数が伸びている基本的な要因は、いろいろあるわけでございますが、一つは、平成六年のときの建設業法の改正によりまして許可の有効期間が従来の三年から五年に延びまして、少しその影響がまだ残っているというようなこともあります。
 また、いろんな団体でも調べているわけでございますけれども、現在、建設業の許可は一件当たりの工事が五百万未満のものにつきましては許可を要しないのですけれども、そういった業者が最近許可をとるような傾向が非常に強くなっていると。もう少し大きな工事にも参入したいというような意向があるんでしょうか、そういうこともありますし、また倒産等をした業者が、またその中の人が独立して建設業の許可を取得するというようなことも許可の増加の要因の一つではないかというように思っております。
 いずれにしましても、もう少し正確に実態を把握したいということで、今私どもとしても建設業の許可業者数の増加要因についてのいろんな調査をしておりまして、もう少し時間をかけてしっかりとした分析をしていきたい、このように思っております。

○福山哲郎君 そのうちで、いわゆる不良不適格業者数というのは一体建設省はどの程度だというふうに今御認識をされているのか、お答えをいただけますか。わからない場合にはわからないで結構でございますが。

○政府参考人(風岡典之君) 不良不適格業者という言葉を私ども使っておりますけれども、これはどういうものをもってそういうふうに言うかという明確な必ずしも定義があるわけではなくて、私どもとしては、技術力とか施工能力を全く有していないようなペーパーカンパニーとか、あるいは経営を暴力団が支配しているような企業とか、あるいは技術力はあるんですけれども既に仕事をいっぱい受けて新しい仕事について技術者が立てられないようなケースとか、いろんなケースがあります。全体を不良ないし不適格業者というふうに判断をしておりますが、こういう形での具体的な調査をしているわけではありませんので、全体の中でどれぐらいだということについては、数字上お示しすることはできません。
 ただ、不良不適格業者の一例としまして、直近の例としては平成十一年で、これは独禁法の入札談合に関しまして処分がありましたのが年間三十五件というようなケースもありますが、そういったようなところは少なくともこういう不良不適格業者だというようには言えようかと思います。

○福山哲郎君 ありがとうございました。
 大臣、大変お待たせをいたしました。もう質問の時間も終わりに近づいてまいりました。この法案が大臣の強い決意のもと出されたことも承っております。
 先ほどありましたように、談合、丸投げ、上請等の不正行為排除に対して、この法案が第一歩としては大変評価をできるものだと私も思っていますが、それについての大臣の決意、それから過剰業者を抱えているとか過剰労働者を抱えているとか言われているこの建設業者の二十一世紀への形、この法案を第一歩にこれから先どういった形の建設業界をお考えいただいているのか。談合、丸投げ、上請等の不正行為の排除についての決意と、将来の建設業界のイメージをどのように考えられているのか、大臣、お答えをいただけますでしょうか。

○国務大臣(扇千景君) 今、るる御質問等々を拝聴しておりまして、我々は、少なくとも公共工事は建設省のみならず大小の差違はありながら全省庁に及びます。けれども、少なくとも私は、建設省としてこれは一番大事なことであるということで、建設省が主になって提案をさせていただきました。そして、冒頭に、さっきも北澤委員がお話しになりましたように、世間で言われております、今、福山先生もおっしゃいました談合、丸投げ等々言われるようなことをいかにしたら排除できるのか、その方法論をやはり私どもとしては少なくとも考えていくということから、私はこの法案の立案の原点に立っているわけでございます。
 御存じのとおり、公共工事、国民の税金によって賄われているわけですから、いかに公明で正大で、なおかつ国民に喜ばれる公共事業をしていくかというその基本理念に立った上では、こういう法案が今までなかったことの方がむしろ不思議だと私は大臣就任以来考えたわけでございますから、私はこれによってすべて一〇〇%なくなるということは保証できません。それは法案にしろ何にしろ完璧なものというのは、まず私は今の時代に沿っては今少なくともできる範囲の中ではベストであろうということで提案させていただいておりますので、ぜひこの法案を施行した後の業界のあり方、また社会に対するこの法案によってどの程度是正されるかということも、二十一世紀を迎えるからこそ私は重要であるというふうに考えております。
 今おっしゃいましたように、この法案によって、るる討論がございましたように、少なくとも不適格業者というものを排除でき、真に国民のための公共事業になるその基礎になれば、私は大変、今世紀最後の国会で皆さん方に御審議いただいたことが意義があるものになるであろうと思っております。

○福山哲郎君 終わります。

○加藤修一君 公明党の加藤修一でございます。
 私は、法案審議に入る前に、前回の委員会で取り残した質問について確認をさせていただきたいと思います。
 平成十一年の七月八日でありますけれども、内閣法の一部を改正する法律案等中央省庁等改革関連十七法案に関して、それに附帯決議がついておりまして、その附帯決議の一つとして、「省庁再編に伴う人事については、適材適所を旨として行うとともに、将来の人事に影響を与えるような既存省庁間の合意等は一切行わない」というふうに明示されているわけでありますが、この文言は極めて重要な意味がありますし、かつ十分効力のある重要なものである、そういうふうに私も考えておりますし、これに違背することがあってはならないものであるというふうに考えておりますけれども、これは推進本部の方にちょっとお願いしたいんですけれども、イエスかノーかということで簡単にお答えください。

○政府参考人(松田隆利君) お答え申し上げます。
 先ほどの十七法案の際の附帯決議につきましては、当然各省も十分承知いたしておりまして、重く受けとめるべきものと理解しております。

 

第150国会  参議院  国土・環境委員会  2000年11月9日

○福山哲郎君 おはようございます。民主党・新緑風会の福山でございます。
 本日は、川口環境庁長官に対しまして、十三日、来週から始まることになりました気候変動枠組み条約第六回締約国会議、いわゆるCOP6について集中的に質問をさせていただきたいというふうに思います。
 川口長官におかれましては、ノルウェーでの非公式の閣僚会議とか、オランダでの閣僚会議とかに本当に精力的に御出席をいただいて、最近ももう本当にこの十三日からの会議に向けて精力的に御精励いただいているということで、心より敬意を表する次第でございます。
 また、市民グループ等との対話も積極的にされているというふうに伺っておりますし、あちらこちらのマスコミでの精力的な発言等も含めて本当に一生懸命取り組まれているということに関しては本当にありがたいなというふうに思いますし、ぜひCOP6の成功に向けてさらに御努力をいただきたいとまず冒頭申し上げておきたいと思います。
 それで、きょう、実は冒頭はアメリカの大統領選挙の結果について、共和党か民主党かによってアメリカの対応が変わることもあるということで長官にコメントをいただこうと思ったんですが、御案内のような状況で、まだはっきりしていないというようなことでコメントのもらいようがなくなってしまったんですが、長官、きのうの大統領選挙の開票をごらんになられてでもいいですし、共和党、民主党、両大統領、どちらかになったときの対応を含めてでもいいですし、簡単にもし御見解をいただければと思います。

○国務大臣(川口順子君) 昨日のアメリカの大統領選挙の結果は、民主主義社会で選挙制度がどういうものであるか、どういう機能を果たすのかという観点からも非常に私は興味深く実は見ておりましたけれども、COP6との関係で言いますと、前々からアメリカの行政府の人たちは非常に一生懸命にクリエーティブに取り組んでいらっしゃいまして、それから大統領選挙で仮に今の時点でどちらかの党ということで結果が出ていたとしましても、実際にポリティカルアポインティー、政党によって任命される行政機関のトップの、幹部の人たちが新しく任命されて仕事につくというのは早くても半年ぐらい先ということでございますので、結果が出ていない、あるいはどちらかの形で結果が出るということにかかわらず、今度の大統領選挙の結果はCOP6の交渉におけるアメリカの態度にそれほど影響は及ぼさなかったんではないだろうかというふうに感じております。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 では、本題に移りたいと思います。長官は所信的あいさつの中で「COP6の成功のために最大限の努力を尽くしてまいります。」というふうに述べられておられますが、具体的によくCOP6を成功、成功と。私も先ほど申し上げたんですが、成功というのは一体具体的にどういうことなのか。今、長官が、十一月二十四日の明け方か夜かわかりませんが、その段階でどういった状況がCOP6の成功だというふうに思われているのか、具体的に御答弁をいただきたいと思います。

○国務大臣(川口順子君) 大変にお答えしにくい問題、御質問でございまして、といいますのは、COP3、京都で開かれた締約国会議の性格と今度のオランダにおける締約国会議の性格とかなりそもそもが違っているということでございます。
 京都の場合は非常に外から見ていましてわかりやすくて、それは、先進国がある数値で削減を約束するかどうか、そのときの数値が何になるかというのはもう非常にはっきり、それで成功、失敗というのがよくわかったわけでございますけれども、今度のは全くその性格が違うというのは、京都の議定書を実際に運用を可能なものにし、発効することができるようなものにするためにかなり多岐にわたる点について合意をしなければいけないということでございます。
 それで、なおかつ、その多岐にわたる点の合意というのが、お互いに連携をした形で合意が成立するということでございまして、今いろんな国が自分の国のポジションを述べておりまして、これから妥協に向けて、合意に向けての歩み寄りが始まるということでございますけれども、どの国も一〇〇%自分の国が言っていることで合意ができるということは論理的にあり得ない話でございまして、そういう意味でどういう形のパッケージができるか、どういう形の妥協ができるかということも、これもさまざまな選択肢といいますか、さまざまな組み合わせがまたあると思います。
 そういう意味で、できたパッケージ、妥協し合った結果のパッケージがどういう顔をしているか、その顔を見たときに参加国が実際に、特にそれを批准して責任を持つことになる、義務を持つことになるアネックス、附属書Tの国々、それからそれの議論に非常に影響を与える途上国たちが大きく不満足感を持つかどうかということではないかなというふうに感じております。

○福山哲郎君 本当に率直にお答えいただいて、ありがとうございます。
 確かに、参加国が不満足感を持って批准に対して二の足を踏むような形ですとやはり成功だとは言えないと思いますし、結果として批准に至るプロセスがどの程度スムーズに行くかというのも十一月二十四日の時点では判断できないわけですから、一概に成功失敗というのは言えるとは思わないと私も思っておりますが、今まさに長官がおっしゃられました妥協でも合意に至ると。それぞれの国が妥協でもやはり合意に至らなければいけないということと、それから途上国の問題に対してどういうふうな道筋ができるのかという、ここは非常に大きな論点だというふうに思っておるんですが。
 環境庁長官は、途上国問題でオランダのプロンク環境大臣から、先進国の中での途上国の問題について多少そのパッケージを含めて汗をかいてくれというふうにボールを投げられたというふうにあちらこちらでおっしゃられているように伺っておるわけですが、十月に先進国を招いて途上国問題についての意見交換をしたというふうに伺っておりますが、その中身についてちょっとお披瀝をいただけますでしょうか。

○政府参考人(浜中裕徳君) 御説明を申し上げます。
 そもそもワシントンで実は会合が開かれたわけなのでございますが、先月、オランダのアムステルダムの近郊でございますマウデンという場所で開催をされた非公式の閣僚会合、COP6に向けての非公式の閣僚会合におきまして、プロンク大臣から途上国支援については先進国の共通の回答を作成する必要がある、そういう要請を受けまして、我が国やカナダ、フランスなどが中心となって準備を進めまして、主要な先進国が参加をして非公式に開催をされた会合でございます。我が国は、この会合にその技術移転とか人材育成など、先進国が協調して効率的で実効ある形で支援策を打ち出すということが必要だという認識に立って会合に参加をいたしました。
 この会合におきましては、非常に率直な意見交換が行われました。やはり途上国支援の具体策をつくっていくということがCOP6の成功を左右するかぎであるという認識では共通でございまして、何が必要かつ実施可能な支援策であるかということについて熱心に議論をいたしました。
 しかしながら、この種の会合は実は初めてなのでございまして、そういう意味で、具体的な合意がどこまでできたかという点になりますと、もう少し話し合いを続ける必要があるということでございますが、ただいま申し上げましたとおり、やはりこれはCOP6の成功を左右する大変重要な問題であって、先進国としてこれに真剣に取り組む必要があるという点ではほぼ一致をしたわけでございます。
 現に、一昨日になりますでしょうか、EUとしての環境相理事会が、COP6の対処方針を議論する会合が開かれて既に声明が発表されておりますが、その中にも一つのパラグラフで、やはりCOP6を成功に導くためには欧州連合としては他の加盟国、特に発展途上国と密接に協力することを希望しているということで、具体的に能力の育成だとか技術移転だとかそういったことなどについても言及をしておりまして、EUとしても真剣に取り組むんだということを表明しております。
 また、アメリカも、いろいろな御主張はございますけれども、やはり途上国問題の解決が必要だと、COP6を成功に導くためには必要だという点においてはやはりEUや我が国と共通する認識を持っているというふうに受けとめております。
 したがって、せっかく始まったプロセスでございますので、COP6での合意に向けまして、引き続きこのワシントンでの会合、協調のための会議、これをさらに先進国が協調して検討を進めるということが合意されたわけでございます。

○福山哲郎君 一つだけ確認させてください。
 今のその十月の会議、ワシントンで行われた会議にはアメリカも当然出てこられたわけですね。アメリカも出てきたんですね。

○政府参考人(浜中裕徳君) 出席をしております。

○福山哲郎君 今、浜中さんから技術移転それから人材育成等の話があったんですが、日本としてこの途上国支援に対して何か具体的なアイデアとかこういうものの提示をCOP6でしようというようなものは今何か、交渉事ですから今お披瀝いただけるかどうかはまた別でございますが、何か具体的なアイデア等は今お持ちでございますでしょうか。

○政府参考人(浜中裕徳君) これは先進国で協調してCOP6で途上国側に対して先進国の真剣な姿勢を見せようということでございますので、まだそういう意味での具体的なアイデアが固まっているというわけではございません。
 ただ、先生も御案内のとおり、我が国としては、アジア太平洋地域を中心に既に京都会議のときから京都イニシアチブという形で、我が国のODAを活用して途上国の地球温暖化対策への取り組みを支援するということで現在既に相当の実績を積み重ねてきております。例えば人づくりとかそういうことでですね。それから、環境庁といたしましても、エコ・アジアという会議でございますとか、あるいは地球温暖化アジア太平洋地域セミナーというような会合をもうこの十年ぐらいずっと積み重ねてきております。そういう実績を踏まえまして、そういう経験を生かしまして、実効ある支援策に貢献をしていきたいというふうに考えております。

○福山哲郎君 そこで問題になるのは、アメリカの問題だというふうに思っています。
 アメリカが途上国の問題、支援に関しまして新たな対話ということを言い出しておりまして、それに対して資金援助も含めて新たな対話にのると。これはもともとアメリカが主張している途上国の参加ということにかかわる問題なんですが。
 今、浜中部長がおっしゃられたように、アメリカもその途上国支援については解決に向けて努力をしたいと言われていますが、しかし、この新たな対話等が出てきて、このアメリカ側の言っている新たな対話というのには途上国は多分まないたにのってきそうにないだろうというふうに思っておるんですが、このアメリカのポジションについては今どのように御認識されていますか、長官。

○国務大臣(川口順子君) まず、その途上国の参加の点でございますけれども、アメリカも、それからそういう意味ではEUも基本的に途上国がどこかの時点でこの温暖化防止のための温暖化ガスの削減に何らかの形で参加をするということは非常に重要なことだと思っております。それは日本もそういうふうには思っております。
 というのは、二〇一〇年に、IPCCの調査ですと、途上国の温暖化ガスの排出量が全部合計しますと先進国のそれを超えるということになっているわけですね。ですから、どの時点でという話はちょっとおきまして、地球温暖化を抑制するというそういう観点からは全地球の国が参加をしていくということは大変に必要なことだというふうに考えているわけです。
 それは例えば、そういうことになりませんと、企業が温暖化の抑制義務を持っていない国に移転する、資本移動する、あるいは工場がそこにできるということにもなりますし、そういうことになれば、むしろ途上国でそういうことをやる方が全体として温暖化、温室効果ガスの排出がふえてしまうということにもなりかねないということで、どこかの時点ですべての国がかかわるということが望ましいということはみんなが共通して考えているわけですし、途上国も温度差はありますけれども幾つかの国はそういうふうに思っているということです。
 それで、アメリカの話ですけれども、多少その差がございますのは、アメリカとEUを比較した場合に、どの時点でどういうように途上国と話をしていくかということについての現実的なアプローチという意味で考え方が違うということでございます。
 そういう意味で、差は全くないということではありませんけれども、これは現実的に国際交渉の場で議論をしていくという過程で調整が可能になる話でございますので、このCOP6の場所で、この場で何らかの話し合いが、途上国問題というのは非常に大きな問題でございますので、話し合いが行われている過程で何らかの調整がなされるのではないだろうかというふうに思っております。

○福山哲郎君 私の理解が正しいかどうかわかりませんが、今の長官の御発言は結構重要なポイントだと思っていまして、COP6を合意に至らしめるというときに、途上国の参加問題について、今長官はどこかの時点で参加をしてもらわなければいけないと。しかし、それはある意味でいうと原則論に戻るわけで、そういう議論をこのCOP6の中で日本はポジションとして今とられるということですか。そこは非常に実は大きなポイントではないかなと思うんですが、長官いかがですか。

○国務大臣(川口順子君) 私が前段で申し上げましたことは、COP6の場でということではございませんで、したがいまして、どこかの時点でというふうに申し上げましたのは、歴史のどこかの時点でということでございまして、COP6の場所でそれについての合意を得るということを日本の方針としているわけではない。ただ、温暖化防止という観点からいうと、先進国だけが義務を負っているという状況で、しかも二〇一〇年になると実質的に排出ガスは発展途上国の方が大きくなるということを申し上げているだけでございまして、今の時点であるいはCOP6の場でそれがメーンの議論になるということを申し上げたわけではございません。考え方でございます。

○福山哲郎君 私は、今アメリカのCOP6に向けてのスタンスと日本のポジションについてお伺いをしています。
 今の長官のお話は、確かに原則論としては非常に重要なポイントだと思います。しかし、それを持ち出すことによってCOP6の合意というものは、最初、冒頭に長官の言われた重要な合意というものがとんざする可能性があると。じゃ日本は議定書の交渉の中でその話は出されるんですか。短目にお答えください。たくさんお伺いしたいことがありますから。

○国務大臣(川口順子君) 今度のCOP6について限定して申し上げますと、COP6の場では、途上国にかかわる議論とそれから京都議定書についての意見の相違を埋めるというのと二つの柱があって、二つが非常に重要だということを申し上げております。
 そのときに、途上国の部分がなぜ重要かといいますと、条約において、技術移転ですとか、先ほど浜中部長から御説明を申し上げましたような点について先進国は途上国に対して支援の約束をしているにもかかわらず、それをやっていない。それから、途上国から見た場合に、先進国が今削減の努力を積極的にやっているというふうに必ずしも見えないということに途上国の大きな不満があるわけでして、ここの解消を何らかの形で努力をして途上国にそれを理解してもらうということが今度のCOP6の議論の中で非常に大事である。これは非常に大事なことなんです。
 ということでございまして、それをぜひやりたいというのが、この間のワシントンの会合等でも先進国の足並みをそろえるということで、日本が足並みをそろえる努力を裏方で一生懸命しているということの理由でございます。それが、今度のCOP6に向けての途上国との関係でいえば日本政府の考え方です。

○福山哲郎君 なかなかよくわからない、釈然としないところもあるんですが、次へ行きます。
 その中で、アメリカが途上国に対して非常にかたいポジションを崩していないと。特に、九七年アメリカ上院のバード・ヘーゲル決議にありますように、途上国の参加がなければこの議定書は批准をしないんだという決議がアメリカ議会にはあります。アメリカ議会の批准するしないにかかわらず、日本としては合意をした後、このCOP6で合意が得られれば、日本としてはアメリカの批准、非批准にかかわらず早期批准に向けて動き出すという認識でよろしいんですね。短目にお答えください。

○国務大臣(川口順子君) なかなか短くお答えするのが難しい御質問でございまして、アメリカの上院の決議はございまして、それからきのうの選挙の結果を見て上院の力関係がそれほど変わっているか、全然変わっていませんし、それからあれはそもそも超党派の決議でございますので、依然としてそういう実態はアメリカには存在すると思っております。
 それで、議定書の発効要件からいいますと、アメリカがそれを批准しないということと発効要件とは別な話でございますので、だからといって議定書が発効できなくなるわけではないというふうに思っております。
 ただ、実際上アメリカは世界最大の排出国でございますから、アメリカがそれに参加してくれないという状況ではどれぐらいその効果があるかという意味でアメリカの参加は非常に重要だと、環境保全という意味から重要だというふうに考えておりますので、私どもとしては、これはうんと先の本当に仮定の話でございますので、選挙の結果もわかっておりませんから、そういうことは余りはっきり申し上げない方がいいんですけれども、仮にそういうようなことが将来あるとしたら、私どもとしては一生懸命アメリカに参加を働きかけていきたいというふうに思っております。

○福山哲郎君 今私の質問にお答えいただいていないんですが、アメリカに批准してもらうことが重要だということは私も本当にそのとおりだと思います。それができる合意がこの二十四日に必要なこともわかっているつもりでございます。しかし、アメリカの批准いかんを問わず、長官が今まさにおっしゃられたとおり、アメリカの批准に関係なく議定書の発効要件というのはあるわけですから、日本はアメリカの批准を問わず早期批准に向けて、COP6後は早期批准を目指すということでよろしいんですね。

○国務大臣(川口順子君) COP6の場でまず大事なことは、国際的に不満足な国が出ないような合意にまず達するための最大限の努力をすることだと思っております。それを踏まえて日本の国内制度の構築に一生懸命に力を尽くすということが大事だと思っておりまして、それをまずやるということが当面の目標でございます。

○福山哲郎君 余りお答えいただいていないんですが、それは国内制度の整備に努めるのはもちろんで、その後に批准という話があるわけですが、お答えいただけないみたいですが。
 少し懸念をするのは、先ほどの途上国に対するポジションも、いつかは参加をしていただかなければいけないと長官が御発言になった。今、アメリカが批准するかしないかにかかわらず、日本はこれに対してCOP3の議長国として批准をする用意があるのかと言ったら、それも明言をいただかなかった。これに関しては、これから交渉に当たるに関しては少し懸念をすると。余りアメリカ追随ではない方が、僕はこういう議論は余り好きじゃないんですが、これは日本が議長国として積極的に早期批准を求めていく、日本自身もそれに向けて頑張るということが必要だというふうに思っているんですが、もう一言だけ長官、いかがですか。

○国務大臣(川口順子君) 委員の全くおっしゃるとおり、私は、今度のCOP6での私の発言の中には、二〇〇二年の発効を目指してということを言うことが非常に大事だというふうに思っております。

○福山哲郎君 またうまく答えられて、二〇〇二年発効に日本が参加するかしないかということは、まあ、いいです。では、これも短目にお答えください。
 京都議定書は、長官、法的拘束力があるものだとお考えですか、お考えではありませんか。

○国務大臣(川口順子君) これは短くお答えできますが、答えはおっしゃるとおりということです。あると思っております。

○福山哲郎君 法的拘束力があるという状況の中で、日本は条約事務局に出しているペーパーで、不遵守に対して、要は第一約束期間に守らなかった国に対する不遵守に対して政策措置の勧告ということを日本は言われています。政策措置の勧告でございますから、私としては、法的拘束力があるというふうに今、長官がお認めになって、日本が出しているペーパーでは不遵守のところに対しては政策措置の勧告をしましょうという話でございまして、法的拘束力と政策措置の勧告という形がどうこれが合理的に説明できるのか、ちょっと理解ができないんですが、そこは御説明いただけますでしょうか。

○国務大臣(川口順子君) 日本が遵守についてずっと国際会議で言っておりますことは、実効性があってそれで遵守を促進し、不遵守を未然に回避するということを申し上げているわけです。それで、不遵守、例えばコミットメント、六%のコミットの削減の約束が守れないということがあった場合に、じゃどうすればそれを次の段階で守れるようになるだろうかということが一番大事でございまして、日本が政策的に、例えば政策の話をしておりますのは、まさにそういう政策で何をやるかということ、何が理由でできなかったかということが明らかになって、それに対応するための新たな手が打てるようなことにその国がなるということが一番、次に約束を守られないような状態がなくなるという意味で大事だということが一つの理由でございます。
 それからもう一つは、これも私はたびたびあちらこちらで申し上げている話でございますけれども、京都の議定書、今度の会議では京都の議定書の意見の相違を埋めることが、しかもできるだけ早く埋めることが大事でございまして、京都の議定書自体は九七年に大変な、時計をとめての議論の末、微妙なバランスの上に成り立っている議定書でございまして、その議定書の内容を改正するというようなことをやりますと、パンドラの箱をあけるといいますか、ほかのここを変えたいというふうに思っている、ほかの場所についてこれを変えたいと思っている国がたくさんあるわけですから、そういうものが一遍に出てくるおそれがあるということでございまして、京都の議定書の改正につながるようなことはやらない方がいいだろうというのが日本のポジションでございます。これは、できるだけ早く京都の議定書を批准可能なものにして発効させるという観点からの議論をしているわけです。
 それで、もし不遵守の結果、例えば罰金ですとかそういうような強制的な措置が必要になるという場合には、京都の議定書ではこれは改正が必要だというふうに書かれておりますので、したがってそれを必要とするような不遵守の措置というのを考えるということは、早期の発効に向けての努力という観点から言うと問題ではないだろうか。その二つの理由で今、日本がとっているポジションをとっているということでございます。

○福山哲郎君 今のことで二つのことをお伺いしたいと思います。
 そうしたら、政策措置の勧告はいいと。だけど、政策措置の勧告でもし第一約束期間に不遵守の国が出てきたときに、その不遵守の国が、遵守していない、守っていないときには未達成の数量分は一体どうなるのか、どのように日本政府はその未達成の部分を考えておられるのかということが質問の一つ。
 それから二つ目は、早期発効のために改正を伴う罰則規定はだめだということならば、発行後なら法的措置、法的拘束力を有する措置を考えるポジションはあり得るのか、発行後なら、あり得るのかという二点についてお答えいただけますか。

○政府参考人(浜中裕徳君) 御説明を申し上げます。
 我が国がこれまで提案して主張してきておりますのは、数値目標の不履行に対してその公表、ある国が実際に守れなかったんだよということを公表していく、そしてそれを是正するための政策措置を勧告をする、こういうことでございます。
 それで、実際に守れなかったらどうするのだということでございますけれども、実際問題といたしまして、これは民間の法人なり個人を対象とする制度ではございませんで政府を対象とするもので、これまでの国際協定においてもなかなか罰則などの強制的措置を伴う国際協定というのはほとんど例がございません。環境条約についても同様でございます。モントリオール議定書などもそうでございますけれども、それでも実効を上げてきているということでございますから、やはり我々はそういう我々の提案しているようなものがやはり現実には国際間の協定としては実効があるものではないかというふうに考えているところでございます。
 それから、実は発効してからそうしたらいいじゃないかというお考えをお示しになられたわけでございますが、これはそうなりますといわば強制力を伴う遵守措置の必要性からもう一回改正をするということになりますと、改正前の議定書に加盟する国と、それから改正をされた後の議定書に加盟をする国、これが一致するかどうかというような問題がまた出てまいりまして、前の議定書、改正前の議定書にはこれは締結し得るので批准をしたと。しかし、その不遵守の際の措置について、改正をされたその改正後の議定書の内容については我が国としては同意できないので批准できないというような国が出てくる可能性は理論的には十分あり得るわけでございまして、そうした場合にその運用がなかなかうまくいかなくなるおそれもあるという、いろんな難しい問題がございます。
 そうした複雑な法的に非常に面倒な事態になりその発効がおくれると、実施がおくれるということになるのではないかということを懸念しているということでございます。

○福山哲郎君 もう時間がございませんので、あと二つぐらいお伺いをしたいと思います。
 八月九日、日本が条約事務局にいわゆるシンクのポジションを、算定方式をFAOのアクティビティーベースで提出をされました。これが新聞等でも、委員会等でも言われておりますから余り繰り返しませんが、実際の本番のCOP6の議長のテキストからこの日本の提案をしているFAOアクティビティーベースの算定方式というのが落とされているということに対してどのように長官は評価をしているのかということと、八月の九日、私がこの委員会でFAOアクティビティーベースとIPCCベースについてのシミュレーション、日本の数字を、今出している数字を挙げてくれと言ったら、浜中部長が検討させていただきますというふうにおっしゃられましたので、できればもうCOP6が目の前でございますから、恐らくもうその数字を持っていかないと交渉成り立ちませんので、その数字について御披瀝をいただいて、二点いただきたいというふうに思います。特に、伐採後の再植林に対して何%の削減の数値を持っているのかについてお答えをいただければありがたいと思います。

○国務大臣(川口順子君) それでは、最初の御質問だけ私の方からお答えをさせていただきます。
 吸収源の現在のテキストに、FAOの三条三項についてですが、FAOの方式が入っていないということは事実でございます。
 ただ、吸収源というのは三条三項とそれから三条四項と一体として評価をすべき話ということでございますので、日本は三条三項、三条四項一体として考える、その日本の考えている定義というのはIPCCの定義と同じになるということでございますので、それは三条四項の議論を引き続き、もし三条三項が議長のテキストということに仮になるということがありましたら、それは三条四項の議論も含めて一体として考えたいというふうに思っています。

○政府参考人(浜中裕徳君) 数字の関係について、お答えを申し上げます。
 京都議定書三条三項につきまして、FAOの定義とIPCCの定義があるわけでございますが、我が国が提案しておりますFAO活動ベースの定義を用いました場合には御案内のとおり温室効果ガス排出量、基準年排出量に対しまして年平均〇・三%という吸収量が見込めるわけでございますが、一方、IPCCの定義を用いますと〇・二%の排出になるというふうに推定をしております。
 したがいまして、その差でございますのはいわゆる伐採後の再植林、これが実は〇・五%分の吸収というふうに考えておりまして、これが抜けますとその他の部分というのが〇・二%の排出になると、こういう結果になるわけでございます。
 なお、FAOには土地ベースT、土地ベースUという算定方法がIPCCの報告書には出ておりますが、これらにつきましてはその算定に必要な土壌中の炭素に関する科学的なデータが我が国では不足しておりますので、現在のところちょっと算定することができないという状況でございます。

○福山哲郎君 ありがとうございました。
 もう本当に駆け足の質問になりまして大変失礼いたしました。とにかく来週から始まりますので、私はどちらかというと、こうやって質問させていただいておりますが、応援団のつもりでおりますし、こんなところで言うと怒られますが、私は長官に行っていただきたいと思っている方のうちの一人でございます。これはあくまでも個人的な意見でございますが、ぜひ御奮闘をお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。

○広中和歌子君 民主党の福山議員からCOP6についての御質問があったわけですけれども、私は、地球温暖化一般について、建設大臣並びに環境庁長官に御質問させていただきたいと思っている次第でございます。
 地球温暖化による異常気象、それによる災害が地球規模で各地に起こっているわけでございます。長雨による浸水、それから大雨による洪水、片や砂漠化も進行しているわけでございます。
 ここに御本がございますが、「人類は80年で滅亡する」と、ちょっとショッキングなタイトルの本でございますが、立派な学者が書いていらっしゃる。東北大学の西澤潤一先生と上墅勲黄先生、このお二人の書いていらっしゃる本でございますけれども、ともかくこの温暖化問題というのは本当にゆゆしき問題になっているわけでございます。
 四方を海に囲まれております我が国、その海岸線は非常に長いわけでございますけれども、その海岸線の護岸、もう既に半分ぐらいされているわけでございますけれども、その護岸を幾ら高くしても、あるいはダムを幾つつくったとしても、やはり自然の威力には結局はかなわないのではないかと。少なくとも、二十一世紀までの日本あるいは世界がどれだけ温暖化防止に真剣に取り組むかということが今世界的に問われているんではないかと思います。
 環境問題というのは、省庁の壁を越えて、環境の視点から政策も予算の獲得も行われるべきであるというのが私の持論でございますけれども、環境庁は来年から省になります。省庁の壁を越えて環境の視点からいろいろ政策を行っていただくという点で、今総理府のもとにあり各省庁と連携をとりながらやっていくというスタイル、それは今までその実力が十分にあったかどうかということは別といたしまして、そういうスタイルから離れて省として今度は独立するということになりますと、二十一世紀に向けて本当に環境庁のリーダーシップが求められているときにどれだけのコーディネーションパワーというのでしょうか、調整力が発揮できるのか、そのことについてお伺いいたします。
 時間の制約もございますから、この委員会についてでございますけれども、省庁再編の後には環境委員会ということになるんだろうと思いますが、現在はむしろ幅広く建設省、国土庁、北海道開発庁なども参加していろいろここで討議が行われているということは大変結構なことだと思っているわけですが、この委員会におきましてどのような成果が上がってきたのか、それについても御意見をお伺いいたします。

○国務大臣(川口順子君) 広中委員は、環境庁長官としては私のもうはるか先輩の方でいらっしゃいますし、それから環境に関する知見、それから当然人生の先輩ということでいらっしゃいますので、環境庁の今までの実績なりあるいは実力なりあるいはこの委員会の成果なり、多分私なんかよりもはるかに御存じの委員の方に御質問をいただきますと、非常にどういうふうにお答えしようかなと迷うわけでございます。
 環境省になるに当たりまして、環境政策という意味では、今まで持っていなかった権限といいますか、仕事が環境省のところに来るということでございます。それは単に仕事の範囲がふえるということではなくて、例えばリサイクルで共管になるとか、廃棄物行政を実際に持つということでございますので、足場というとちょっと言葉が悪いかもしれませんが、を持つ官庁として政策面の企画立案ということも当然でございますし、それから実際に政策を実施に移していくという観点、両方の観点から、まさに一生懸命に引っ張っていくということが期待されていますし、それをやっていきたいと思っております。
 それ以外にも、今後二十一世紀を考えますと、いろいろな分野ですべて環境を抜きには語れないということでございますので、幅広く日本において行われていることに注目をして、環境の観点から発言をすべきことがあれば発言をどんどんしていくべきだというふうに思っております。
 それから、この委員会はもう今まで数々の法律、非常に基本的な法律も含め大変にいい仕事をしていただいたというふうに、私はずっと政府の外におりましたけれども、外から見ていてもそういうふうに拝見をいたしておりまして、今後ともその環境庁を、あるいは環境省を引き続き御指導、御鞭撻をいただきたいというふうに思っております。

 

第149国会  参議院  国土・環境委員会  2000年8月9日

○福山哲郎君 おはようございます。民主党・新緑風会の福山でございます。岡崎委員に引き続きまして質問をさせていただきます。
 まずは、大臣、長官並びに政務次官の皆さん、御就任おめでとうございます。大変難しい時期にというか、省庁再編の前の大変な時期に御就任をされまして、特に扇大臣におかれましては、公共事業の見直しや国土交通省の設置や中尾元大臣の逮捕等、大変なときに大臣に御就任されまして、御苦労さまでございます。この半年によって、大臣の歴史的な評価もかなり決まるのではないかと思っておりまして、御期待を申し上げておりますので、ぜひよろしくお願い申し上げます。
 時間もありませんので、早速質問に入らせていただきます。
 先ほど、岡崎委員からもありました中尾元建設大臣の贈収賄事件についていろんなことが言われています。上申書をとられて厳重注意をされたということも伺っております。上申書を今出せないという話も今の質疑の中で伺いました。少し細かいことでございますが、二、三、もう少し、次の臨時国会やこれからの我々が建設省の贈収賄について調査をしていく中で必要だと思われる点についてお伺いしたいと思います。
 いろんな報道によりますと、まず五月に大臣の就任祝い、二カ月後の七月には藤井元事務次官の退官祝いという宴席が設けられた。複数の幹部が出ていたことはもう明らかなわけですが、衆議院の審議の中で、竹下元総理が出席をされていたということは御答弁を小野事務次官からいただきました。それ以外に政治家の方が御出席をされていたということはあったのかどうか、お伺いできますでしょうか。

○政府参考人(小野邦久君) お答えを申し上げます。
 平成八年の五月と七月の宴会の件でございますけれども、衆議院の方でもお答え申し上げましたけれども、平成八年五月のものは、これは大臣の祝賀会をやりたいという形でお誘いがございまして、それに私ども幹部が出席をした。また、七月の宴会の方は、新旧事務次官の交代と新三役の人事がございまして、あわせてお祝いを大臣がおやりになるということで出たわけでございますが、平成八年五月と七月、いずれも私の記憶では竹下元総理は出席をしておられました。
 それ以外に政治家が出席していたかどうかという点でございますけれども、私の記憶では、竹下元総理と、それから当時の中尾建設大臣、このお二人のほかには当時の政治家の出席という記憶はございません。

○福山哲郎君 大臣にお伺いします。
 上申書、八人とられたというふうに伺いました。それぞれがばらばらだったと。ばらばらの上申書の中でこのお二人の政治家以外の出席の名前があったことはございますか。

○国務大臣(扇千景君) ございません。

○福山哲郎君 ということは、その二回の、五月と七月に関しては竹下元総理と中尾建設大臣だけだったということでございますね。
 では、次に行きます。
 そのときに、先ほどからも話がありますが、参加者がみずから進んで出席したのではなくて、小野事務次官もおっしゃられていますが、就任祝いをするから参加してほしいと大臣から声がかかり、参加せざるを得なかったというようなことをあちこちでいろんな方が言われている。先ほどちょっと大臣も言われましたが、小野次官に関しては直接大臣からお声がかかったんですね。

○政府参考人(小野邦久君) 私の記憶では、直接中尾大臣からお話があったわけではございませんで、恐らくはこれは一部推測もございますけれども、当時の次官あるいは官房長といった三役から、こういうお話だから出るようにということだったというふうに記憶をいたしております。
 それと同時に、私の記憶では、中尾建設大臣の後援会の方々といいますか、親しい経済界の方が自分の就任のお祝いをしてくれるということだから幹部も出るようにと、こういうことだったというふうに私は理解をしているんでございますけれども、当時出ましたメンバー、一人故人となりましたけれども、八人の中では、いやそうではなくて竹下元総理が中尾建設大臣の就任のお祝いをする、ついては幹部も出るようにというお話で出たというふうに記憶している者もございます。
 これは記憶の問題でございますので、若干ちょっとその辺、メンバーによって多少の差異があるということでございます。

○福山哲郎君 少し気になったのは、言葉じりをつかまえるようですが、推測というのは変な話で、御本人がどう伺ったかを私は聞いているわけですから。じゃ竹下元総理がやられるから来るようにと言われた人間もいると。それは、だれがだれにどういう通達の仕方をしたんでしょうか。つまり、先ほど言われたように、官房長からそういう話が流れてきたと。じゃ何かさりげなくふわっと流れてきて、みんながじゃおれらも行かなあかんのやなと言って出ていくのか、それともちゃんときっちり、おい、こういう会があるぞと、だから出るようにと言われたのか、そこはいかがでしょうか。

○政府参考人(小野邦久君) 私の記憶では、直接ではなくて、まあ次官か、あるいは官房長から出るようにというお話が私自身にあったか、あるいは私の秘書にそういう連絡事項として伝達をされたか、どちらかだと思うんでございますけれども、事大臣のお話ございますので、恐らくは当時の三役から私にそういうことで、こういうことだから何月何日あけておいて出席するようにというお話があったものというふうに思います。

○福山哲郎君 ということは、次官自身ははっきりと御記憶はないということですね。

○政府参考人(小野邦久君) 私自身の現在の記憶では、だれからどういうふうにいつ、いつごろ言われたのかという明確な記憶はございません。

○福山哲郎君 ペーパーが回ったということは絶対ありませんね。

○政府参考人(小野邦久君) 全くございません。

○福山哲郎君 大臣、ほかの八人の方の上申書はどういう形でこの会合の通達があったか報告がございましたか。

○国務大臣(扇千景君) 先ほども岡崎先生に申し上げましたように、その当時の役職、事務次官、技監、官房長、局長、等々の役柄によってそれぞれの伝わり方が違うというのが私の実感でございます。
 ですから、先ほど申しましたように、だれがだれというんじゃございませんけれども、やっぱり一番偉い人は竹下先生がお祝いしてくれると聞いたようでございますし、その次の人は、いや自分の後援会がやってくれると聞いた人もあるし、もっと下の人は官房から大臣のお祝いがあるからおまえも出ろよという、そういう伝達の仕方でございまして、先ほども岡崎先生に申し上げましたように、八人が八人とも上申書によって、呼び出された、それに参加したときの状況は全部違うということを申し上げましたとおりでございます。

○福山哲郎君 それは聞きようによればわかりやすい話なんですが、別の見方で言うと、だれが主催をする会かわからない、だれが呼んでいるのかもわからない。にもかかわらず、建設省の幹部がぞろぞろと出ていくと。これはやっぱり普通はどういう趣旨でやるのかということをお互いの中で確認し合うのが普通で、小野事務次官はあれですか、そのときに仲間同士では、大臣から言われたのでもうそのままという形になるわけですか。

○政府参考人(小野邦久君) 一般的に、祝賀会にしろあるいは新旧の事務次官の交代等のああいう会合にいたしましても、大臣からお話があればやはり出ていくのが通常だと思います。
 ちょっとよろしゅうございますか。

○福山哲郎君 いや、もう結構です。
 そうしたら、一回目が九人の出席、二回目が四人に減っているんですが、これはどういう理由だったんでしょうか。

○政府参考人(小野邦久君) これは私の記憶では、祝賀会とそれから主として新旧事務次官のお祝いということで、余り大臣とされても対象を広げないでというようなことがあったのではないかというふうに思いますけれども、いずれにいたしましても大臣からのお話ということですから、その辺の詳細はちょっとよくわからないというのが実情でございます。

○福山哲郎君 非常によくわかるんですが、大臣から言われたら出席せざるを得ないと。しかし、一回目の五月に行ったらいろんな方がいらっしゃったわけですね。七月に同じように呼びかけがあったらやっぱりそういう会だということはある程度推測はできたんではないですか。一回目は大臣から呼ばれたから行った、そしたらいろんな方がいらっしゃったと。二回目も大臣から呼ばれたけれども同じような流れだったと。そういうことで、例えばそこでブレーキがかかったりということはあり得ないわけですか、建設省の当時の状況は。

○政府参考人(小野邦久君) 確かに今から考えますと、あるいは当時としても、より以上にやっぱり慎重に対応すべきだったということを私率直に思います。
 当初の平成八年五月の会合は大臣の就任祝賀式ということで、通常幹部と申しますと局長以上ということになるわけでございまして、それが声をかけられたということになるわけでございますが、七月の方は、七月二日に新旧事務次官の交代あるいは新三役の任命等がございまして、実はこれは四日にやっているんだと思います、これはその後明らかになったことでございますけれども。大臣の方からいい機会だからということでお話があって、数が限定をされたんじゃないかということを先ほど申し上げましたけれども、そのときもいずれも、五月も七月もそうでございますが、どういうメンバーが出席になるのかということははっきりしていなかったのでございます。
 それがもっとはっきり大臣にお尋ねした上でより慎重に対処すべきでなかったかという、これは反省でございますが、行ってみて私ども建設行政と密接な関連のある利害関係者と申しますか、特定業界の方が一人か二人おられたということで大変驚いたということでございますけれども、同じようなメンバーが七月にも出てくるのではないかと、あるいはその時点としてはそう考えて、例えば大臣にお尋ねをするとか問いただすとかいうことをすべきではなかったかとも思うわけでございますが、七月の方はあくまでも人数も少なくて、自分がやるというような感じでのおっしゃりようだったんじゃないかというふうに思うのでございます。
 直接私言われてないからわかりませんけれども、恐らく当時の次官、新次官にしろ新官房長も、私だったわけですけれども、私自身はそういう記憶はございませんけれども、そういう中で結果的にそういう状況になってしまったということだと思います。

○福山哲郎君 中尾建設大臣の当時というのは、こういう建設大臣がおい会合をやるからちょっと出てこいという会は結構頻繁にあったんでしょうか。

○政府参考人(小野邦久君) 頻繁ということはございません。
 現実に中尾大臣の祝賀式も、御就任は一月でございますから、五月にやっている。北海道の豊浜トンネルの大きな事故とかいろんなことがあってこういうことになったのかもしれませんけれども、現実に大臣在任中の祝賀式あるいは新旧の幹部のお祝いというのはこの二回ということでございまして、それ以外に何か個人的にいろいろ、大臣に御就任いただきますと、あるいは総括政務次官等に御就任いただきますと、各局の、例えばたまに一杯飲もうよと言っていただくこともあるわけでございますけれども、本件はちょっとそういうものとは違いまして、より幹部を集めて正式にというような感じで開かれたんじゃないかというふうに思います。

○福山哲郎君 より幹部を集めて正式に、だれが主催するのかわからなくて、ペーパーも回らなくて、それが幹部を集めて正式にという話というのはなかなか納得できないんですが。私は、委員会でこういう質問をするのは実は余り好みではないんです。
 もう少し建設的な質問をしたいと思っているんですが、先ほど大臣が言われるように、なかなか疑問にははっきりと見えてこない部分がありまして、上申書も結局は出していただけないというような先ほども御答弁でございますし、私たちは司直が入っていようが憲法に基づく国政調査権で今こういう審議をしているわけでございまして、それは司直が何らかの形で事情聴取をした人間に捜査に及ぶから何らかの形で余りしゃべるなというようなことがあるかどうか、それは司直の捜査の問題でございまして、私たちは国政調査権に基づいて国民の知る権利、それからおかしなことをおかしいと言っていくために国会で審議をしているわけで、そこの司直から何らかの形があるからといって国会の大臣の答弁が私は拘束をされるとは思わないんですが、大臣、いかがですか。

○国務大臣(扇千景君) それは司直の話で、私が答弁することではないと思います。捜査の進行上という条件がついておりますし、司直の結果というのは必ずこれは皆さんの前で裁判で出てくるわけでございますから、もうしばらくお待ちいただくと私は裁判できちんと状況というものは判断されると思っておりますので。
 それで、国政調査権があるとおっしゃるのであれば直接検察の方におっしゃるべきであって、私が大臣の権限でと言われましても、私はでき得る限りのことをお調べした、それを公開しているという現状でございますので、それ以上司直のことを気にしないでおまえは言えとおっしゃられても、それは司直は司直の態度でございましょうから、私としてはできる限りのことを皆さんにお答えしているという現状でございます。

○福山哲郎君 その司直があるから答弁に限界があると言われているのは建設大臣の御判断でございますから。ではどこまでが答えられてどこまでが答えられないかというのは、司直が判断しているのではなくて、建設大臣が今御判断をされているわけです。それは司直の問題ではございません。建設大臣の問題で、私はそれがどれほど拘束があるのかということを申し上げているんです。

○国務大臣(扇千景君) 今、司直の方で調べております中に、参考人として多くの皆さん方がいろんなときに、これは日時はわかりませんけれども、何度も呼ばれている。大変失礼ですけれども、名前は言えませんけれども、私に十四回呼ばれているという方もいらっしゃいます。その人たちは自分たちが司直の方に、検察で申し上げたことに関して他言するなと。例えばその人の言ったことによってみんながそういう意識を持つということは捜査上お互いに困るというのが司直の話でございますから。
 私は何も司直の邪魔をしようなんて思っていませんし、これは必ず鮮明にしなければ、国民の疑義というものを晴らさなければいけないというので私この立場に立っていると。それが第一条件の、大臣になった私は、まず国民の皆さんに開示するということであろうと思いますので、私は司直の方から、私がお呼びした八人の皆さんも、それを言いながらも私に正直に今言えることは必ず申し上げますと言っていただいたことでございますので、私はやっぱりそれぞれの人権がございますから、八人の皆さん方は起訴されているわけではございませんので、参考人として呼ばれていらっしゃいますので、私はその段階では言えることと言えないことはおのずとあろうと存じます。

○福山哲郎君 わかりました。
 次に移らせていただきます。もう時間がございませんので、大臣、簡潔に御答弁をください。
 徳島で住民投票が一月二十三日に行われました。今、公共事業の見直しがいろいろ言われているわけでございますが、まずは簡潔に、住民投票の制度について大臣はどのように思われているか、それからこの徳島の住民投票の結果についてどのようにお感じになられているか、御答弁願います。

○国務大臣(扇千景君) 現段階で大臣としてお答えしろということでございますと、これは総理の諮問機関でございます地方制度調査会において住民投票をどのようにするかということを検討中であるという紋切り型の答弁しかできなくなります。

○福山哲郎君 では、個人としての見解を御披瀝いただければ。

○国務大臣(扇千景君) 個人ではございませんで、私、保守党の党首でございますので、党首として選挙中に申し上げましたことは、住民投票というのは政策を実行する上に参考として大変重要な位置を占めるというふうにお答え申し上げてまいりました。

○福山哲郎君 徳島の住民投票の結果についてはどのような見解をお持ちですか。

○国務大臣(扇千景君) これは御存じのとおり、吉野川第十堰に関しましては二市六町の範囲にわたっておりますので、一市だけで住民投票が行われまして、結果においては反対というのが多数を占めたと伺っておりますけれども、私のもとにはその二市六町全部の村会、市会等々からはこれを推進してくださいという地方自治体としての決議は全部上がっております。けれども、私はそれを尊重して、川というのは両岸あるわけでございますから、二市六町の中で一市だけで住民投票が行われましたけれども、残りの一市六町の住民の御意見も聞かなければ私は判断できないということを大臣就任以来申し上げてきております。

○福山哲郎君 ということは、今のところはまだ御判断をしていないと、その方たちのお話を聞いて判断をするということでございますね。

○国務大臣(扇千景君) 住民投票なすった方はなすったこととして、私は先ほど申しましたように参考にはしておりますけれども、川の両岸は二市六町あるわけでございます。二市六町と、それから吉野川の上流の皆さん方はこれに入っていないわけですね。ですから、そういう意味では、公平な考え方をしなければ、一つの住民投票だけであとの二市六町の市町村あるいは市議会の結果というものを覆すということが那辺にあるかということは考えたいと思っております。

○福山哲郎君 先日、森総理が広島の記者会見でこのようにおっしゃっています。みずからリーダーシップを発揮して政府・与党一丸となって抜本的な見直しを行いたい、吉野川可動堰も当然洗い直しの対象とすると、このように述べておられますが、この総理の、リーダーシップを発揮して吉野川可動堰も当然洗い直しの対象とするということに対して、大臣はどのようにお考えですか。

○国務大臣(扇千景君) 私は、吉野川だけではなくて公共事業全般に対してこれは見直すべき時期に来ていると。政府・自由民主党の中でもやっておりますけれども、今度は与党三党でもこの公共事業に対する是非というものは検討しておりますので、私は、今世紀に問題があるものは今世紀中に解決して、新しい二十一世紀の公共事業のあり方というものを基本的に考えていきたいと思っております。

○福山哲郎君 ということは、当然今の御答弁だと吉野川の可動堰も見直しの対象になるということですね。

○国務大臣(扇千景君) そうです。

○福山哲郎君 それでよろしいんですね。

○国務大臣(扇千景君) そうです、結構です。

○福山哲郎君 では、もう一つですが、これは建設省にお伺いをしたいんですが、与党・自民党が公共事業の見直し論を検討会で議論しているんですが、その中で十年以上事実上進展していない事業を報告させたそうなんですが、この中でこの吉野川の可動堰の計画が入っていなかったというふうに聞いているんですが、本当でしょうか。短目にお答えください。

○政府参考人(竹村公太郎君) 事実関係を御説明させていただきます。
 この吉野川第十堰は、平成三年、九年前に治水と利水の両方の目的、いわゆる多目的事業として多目的ダム法に基づく事業採択がされました。その後、事業審議委員会で、新しい利水、新しい水を開発するパートナーとしてはその利水者がいなくなったということで、残ったのは治水だけでございます。この吉野川の固定堰をどうやって安全にするかという治水だけが残りましたので、平成十年に多目的ダム事業は中止いたしました。そして、新たに平成十一年度から今度は河川法に基づく河川事業としての調査を行っているわけでございます。
 現在、吉野川第十堰の過去の経過をお話し申し上げました。

○福山哲郎君 今のは、その可動堰の公共事業見直しの十年以上事実上進展していないということに入らない理由ですか。

○政府参考人(竹村公太郎君) 自民党の方から、採択後十年以上たっても着手していない大規模事業を出しなさいということでございましたので、平成三年に一度採択され、九年前でございます、そして平成十年に一度その事業は一たん中止し、新たな形、治水だけの形で平成十一年度から調査が始まっているということでございますので、該当していないと私ども判断させていただきました。

○福山哲郎君 いいですか、治水と利水の二つあって、片方の利水が要らなくなった、だから事業計画が変わったからこれは十年たっていないと、こんな詭弁は正直言って認められないと思いますよ。
 ここに実は吉野川の第十堰の建設省四国地方建設局発行の「第十堰改築事業に関する技術報告書 治水編」というのがあるんですよね。治水編ですよ。利水がなくなったとさっきおっしゃったんですが、そこには、第十堰を改築する必要があると考え、昭和六十三年、これは一九八八年です、六十三年度より事業に着手していますというふうに、四国地方建設局長の名前でこういう資料が出ています。今、治水と利水の利水がなくなったから、事業が変わったから十年たっていないというのは、これは詭弁以外の何物でもないと思うんですが、いかがですか。

○政府参考人(竹村公太郎君) そのような御疑問があるかと思いまして私は丁寧に言ったつもりでございますが、平成三年に多目的ダム法により建設事業着手をされました。これは法的にそういう手続になってございます。平成三年というのは九年前でございます。このときは新しい利水者としてのパートナーがいたけれども、その途中でいなくなったということで、社会情勢の変化によりまして当然事業というのはどんどんフレキシブルに見直すべきだと考えております。残ったのは治水だけでございます。治水上の観点からこの第十堰をどうするかということを平成十一年度から調査に入ったということでございまして、隠しているとかそういうことでは全くないと私どもは考えてございます。

○福山哲郎君 大臣、いかがですか。

○国務大臣(扇千景君) これから見直される公共事業、すべからく私は当てはまることだろうと思いますけれども、公共事業がむだなものあるいはしなくてもいいものに国民の税金を投入する、私はここが問題だろうと思うんですね。
 ですけれども、この吉野川も水害があったときには二市六町に水害があるので、皆さんの暮らしの安全とそして皆さんの財産を守るために、約二千六百億だったと思います、それを使って安全を保障しようというけれども、要らないとおっしゃるのであれば、もっと重要な公共事業というのはたくさんございますから。まずスタートに皆さん方の地元の意見を聞いて、そして、私がそれをなぜ言うかといいますと、全国の公共事業マップをつくろうと思っているんです。そうしますと、全国の皆さん方が、自分のところは次に順番が来るな、これは必要だな、二百五十年たっていても大丈夫なものは大丈夫と。そのかわり地方自治体では何かあったときには建設省に異議を申し立てないよという地方議会の私は保証もするべきだと思うんですね。
 ですから、国民の、住民の皆さんの安全とそして財産を守るために税金を使って、そしてよくしてさしあげようといっても、要らないとおっしゃるのであればこれはまた話は別でございまして、公共事業のむだというものをどうして判断していくかということを私は基本的に考えていきたいと思っております。

○福山哲郎君 もうおっしゃるとおりなんですが、よくしてさしあげようというのが本当に何か国が国民に対して施しをするような話で、それは、税金は国民からいただいているものでございますから、そのスタンスはちょっと私はなかなか納得ができないんですが。しっかりと見直して要らないというものは、もっと使うところがあるということに関してはまさに私もそのとおりだと思いますが、しっかりとそういう作業をしていただきたくて、一日も早くそのマップをつくってください。でも、要らないからそのままやらないというのも、逆に言うと国としての主体性もないと思いますし、非常に微妙な発言なのですが、もう時間がありません。
 あと、一言でお答えください。地元の話を伺うという話ですが、前任の建設大臣が、住民投票の会の方には逮捕者がいるというような話で、対話を重視だというふうに言われましたが、結局その犯罪者の、逮捕歴がある人間とは会わないということで意見交換をされなかったということですが、扇大臣はこの徳島の可動堰の市民グループの皆さんと意見交換するおつもりがあるかないか、簡単にお答えください。

○国務大臣(扇千景君) 現段階ではございませんということは申し上げております。

○福山哲郎君 その理由を簡潔にお答えください。

○国務大臣(扇千景君) 今、先生がおっしゃいました、前任の大臣が、犯罪者がいるとかいないとか、私はそういうことは全く関係がございませんで、私は人間を尊重しておりますので、そういうことによって私は区別は一切するつもりもございません。ただ、先ほど申しましたように二市六町ございますので、二市六町の皆さん方全員に会わなければ私は不公平だと思いますので、そういう意味で現段階ではという申し上げ方をしております。

○福山哲郎君 ということは、その二市六町の皆さんとお話し合いをされる段階の中で対話を持たれる可能性もあるということですね。

○国務大臣(扇千景君) まず、今、公共事業の見直しということで、与党三党で連立を組んでやっております。そして、自民党の亀井政調会長を筆頭にいたしまして与党三党の代表がこの吉野川に関しましても視察に、多分二十一、二日ごろ参ると思います。私は、与党三党の党首の一人といたしましても、保守党からも代表者を出しますので、与党三党で現地に参ります結果をまず聴取させていただきたいと思っております。

○福山哲郎君 ありがとうございました。またこれからもよろしくお願いします。
 環境庁長官、よろしくお願いいたします。
 早速、実は地球温暖化の問題についていろいろお話を伺いたかったんですが、もう時間がありません。簡潔にお答えをいただきたいのは、実は、温暖化防止の条約事務局に日本がCO2の吸収量、森林による吸収量について八月一日までに日本政府の見解を出さなければいけないというのが、通産省と環境庁の意見がなかなか合わなくて、結局きのうの未明ですか、それともきょうなのかな、に出されたというふうに伺っておりまして、それが通産省案の三・七%と環境庁案の三・二%の両論を併記されたというふうに伺っておりますが、この両論併記についての理由を簡潔にお答えください。

○政府参考人(浜中裕徳君) 私の方から事務的に御説明を申し上げたいと思います。
 この対象となっておりますのは京都議定書三条四項でございますけれども、この三条四項に基づきます吸収源の炭素ストックに、炭素蓄積量に変化を与える人為的活動、これが対象でございますけれども、どのような活動が人為的活動に当たるかということについて、これを決定して対象となる土地を特定する必要がございまして、その際に検討をいたしましたのは、森林における間伐ですとか下刈り、こういったことなどが行われております育成林につきましては三条四項の対象となるものと考えられたわけでございますけれども、他方、天然林においても伐採の禁止などの何らかの人為的活動が行われているというふうに考えられるわけでございます。
 こうしたことから、我が国からのデータ提出においては、全森林を対象とした三・四%に相当する吸収量と育成林を対象とした二・九%、これはいずれも一九九〇年の排出量に対する比率でございますが、それに相当する吸収量を併記する、こういうことにした次第でございます。

○福山哲郎君 それを調整して一本化する作業が実は国内では必要で、この八月一日までには実は一本化する作業を当然通産省と環境庁としてはしておくべきことなのではないんでしょうか。
 COP3のときも基本的に通産省と環境庁の意見が対立して両論併記で日本の意見は言われたという経緯がありますが、そこについては長官いかがですか。

○国務大臣(川口順子君) 初めに、通産省と環境庁が対立をしてというふうにおっしゃられましたけれども、これは別に通産省と環境庁だけで仕事をしているわけではございませんで、林野庁ですとか外務省ですとか、日本政府のほかのところも関係をしておりまして、先ほど委員おっしゃられたような対立の図式であったというふうに私は理解しておりません、というのがまず一つです。
 それから、八月一日までに一つの数字にまとめるかどうかということは、一つの数字で出すというのも一つの考え方でございますし、この提出は定義とそれに基づいての考え方という二段構えになっておりまして、日本が今後国際的に交渉をしていく中でどういうあり方が有利であるかという判断に基づいて各省と相談をした結果でございます。

○福山哲郎君 IPCCの特別報告書によりますと、その三条三項の関連でいうと四つ算定方式がありますね。この四つの算定方式のうちの日本の場合にはFAOの活動ベースでやられていると思うんですが、四つの算定方式についてはそれぞれやはり環境庁としてはシミュレーションはされたんですよね。

○政府参考人(浜中裕徳君) 御説明を申し上げます。
 我が国といたしましては、議定書の、おっしゃられておりますのは第三条三項に該当するものでございますが、我が国は既存の森林におきます伐採、再植林のサイクルを対象とすべきである、そういうことによりまして既存の林業活動に適切なインセンティブを与える必要があると、こう考えておりまして、FAOの活動ベースが望ましい、こう考えたわけでございます。
 もともと条約事務局からは吸収源のデータ提出におきましては各国で主張する考え方に基づいてデータを提出するというふうにされておりますので、我が国の実情を踏まえまして最も適切と思われますFAOの活動ベースのみ試算をしておるわけでございまして、他の方式については試算をしておりません。

○福山哲郎君 今のは申しわけありませんが全くおかしな話で、我が国の主張をするために四つの算定方式のうちで我が国の主張するものだけで試算をしたというのはおかしな話で、ほかの三つも試算をしてみなければどれが我が国の現状に合うかというのはわからないわけで、主張するための根拠としては四つの算定方式についてそれぞれシミュレーションをしないと判断できないと普通には考えられると思うんですが、長官いかがですか。

○国務大臣(川口順子君) 算定の考え方ということを見ていけば、それに応じて一つ一つ数字をつくってみなくても、日本の国際会議における主張に照らして、あるいは今後の戦略といいますか、国際会議における方針に照らしてどういう考え方が有利であるかということはおのずから出てくるということでございます。
 吸収源の計算の仕方というのは、やはりこれから吸収源をふやすということにインセンティブを与えるような定義ということが望ましいと考えております。

○福山哲郎君 わかりました。そうしたら、例えば百歩譲って、そこで算定はしていないということならば、この国会の場で四つの算定方式に従って環境庁に算定をしてくれ、それで我々も判断をしたいと、十一月のオランダのハーグまでに我々自身としても判断をしたいので算定をしてくれということになれば、じゃそれは可能ですね。

○政府参考人(浜中裕徳君) お答えを申し上げます。
 私どもといたしましては、先ほど来申し上げておりますとおり、FAOの活動ベースが最も適切と考えておりますので、その方式に従った算定のみ行っております。他の方式についてどのような計算過程を経てどういう結果を出すことができるか、これについてはまだ詳細実際にやっておりませんので今直ちにこの場でお答えすることは難しゅうございますけれども、その点について検討を行うことはできると思います。

○福山哲郎君 最後の、検討ですか。

○政府参考人(浜中裕徳君) どのような具体的な算定を行うことができるか、そういった点について今この場でいついつまでにこういう形で算定をするということは申し上げられませんけれども、少なくともそのことについて、何と申しますか試みてみるということは可能であろうかと思います。

○国務大臣(川口順子君) 今の点についてちょっと一点補足させていただきますと、私が補足するのも変なんですけれども、国際会議でいろいろ議論をするときに、どういう定義であればどういう数字であるということは、それがほかの国に知られますと今後の日本の手を縛る形になるということを御認識いただきたいと思います。これも非常に重大な重要な要素でございます。

○福山哲郎君 ありがとうございました。いろいろ宿題をいただきまして、ありがとうございました。またよろしくお願いいたします。

○国務大臣(扇千景君) 先ほどお答えしました中の数字で、吉野川、約一千億でございます。数字の訂正をさせていただきます。失礼いたしました。

 

第147国会  参議院  国土・環境委員会  2000年5月25日

○福山哲郎君 お疲れさまでございます。
 民主党・新緑風会の福山でございます。
 きょうは、参考人、廃掃法、循環社会基本法と盛りだくさんでございまして、どうかよろしくお願い申し上げます。
 この間、本会議で長官に質問させていただきましたけれども、きょうも多少その関連も含めて、よろしくお願いいたします。
 まず、本会議の私の質問で、循環型社会の構築に向けて、今後ふえ続けていく有害化学物質をコントロールしていくことが重要ではないかと、そう私が清水長官にお尋ねをしましたところ、長官は、「廃棄物の処理やリサイクルに伴う有害化学物質の環境中への排出を抑制する、それは循環型社会を構築する上での極めて重要な原則の一つだと考えております。」「本法案では第二十一条におきまして、廃棄物の処理やリサイクルに伴う環境の保全上の支障を防止するため、公害の原因となる物質の排出の規制等の措置を明確に位置づけております。」と御答弁をいただきました。
 そこをもう少し詳しくお伺いしたいんですが、この二十一条におきます排出の規制等の措置というのは具体的にどのようなものなのか、御答弁をいただけますでしょうか。

○政務次官(柳本卓治君) 廃棄物の処理やリサイクルに伴います有害物質の排出につきましては、第二十一条におきまして、廃棄物処理やリサイクルの際に生じる環境の保全上の支障を防止するため、公害の原因となる物質の排出の規制等の措置を位置づけているところでございます。
 今先生御指摘の本規定に基づく具体的な措置といたしましては、第一に基準に従った廃棄物の処理の義務づけ、廃棄物処理法第六条の二、第十二条及び第十二条の二、そして第二に廃棄物処理施設の設置に対する許可制度、これは廃棄物処理法第八条及び十五条でございます。そして、ばい煙の発生、汚水の排出、化学物質の製造等に関する規制等が挙げられるところでございます。

○福山哲郎君 そういう御説明をいただいたわけですが、それでは一つ事例を挙げてお尋ねしたいと思います。
 先ほど、我が党の岡崎委員からも御質問させていただきました、例の神奈川県の藤沢市で起こりました荏原製作所のダイオキシン汚染の件についてなんです。
 私ごとなんですが、私は松下政経塾というところで学んでまいりまして、政経塾は茅ヶ崎にありまして、毎朝そこをランニングしようという話がありまして、毎朝毎朝その茅ヶ崎の海岸でランニングをしていました。そこのすぐ近くに江の島がありまして、私にとっては大変思い出深いところなんです。
 その藤沢の地元の皆さんが今ダイオキシンの汚染について大変苦慮されていて、サーファーの皆さんとか、それからそこの商店街の皆さんや海水浴場で御商売をされている方々が今大変不安な状況に陥っているということで、きょうは基本法案についての審議なんですが、基本的には循環型基本法案というのは環境に対する、先ほど申し上げましたように化学物質の問題も大変重要だということですし、国会も大分終盤を迎えておりますので、少し事例についてお伺いをしていきたいというふうに思います。
 もうこれは皆様も御存じだと思いますが、藤沢にある荏原製作所の工場内にある廃棄物の焼却施設からダイオキシンで汚染された大量の排水が引地川に流れ込み、水質のダイオキシン濃度の環境基準というのは一リットル当たり一ピコグラムと定められているんですが、ことし一月から二月にかけて、この荏原製作所の排水が川に流れ出る排水口の付近で何と三千二百ピコグラム、それから八千百ピコグラムという汚染が検出をされています。
 人体への影響は御案内のようにすぐにはあらわれないわけですが、河口に近い相模湾では魚介類の売り上げが激減したり、鵠沼海岸への観光客の足が遠ざかったり、既に多大な風評被害というか、実質的に被害が発生しております。
 先ほど申し上げましたように、地元の方々は大変御苦労をされているということで、このダイオキシン流出事故、荏原製作所藤沢工場の流出事故について、環境庁としてはどの程度の原因究明が進んでいるのか、まずは御答弁いただけますでしょうか。

○国務大臣(清水嘉与子君) 今先生御指摘の引地川の水系で高濃度のダイオキシン類が認められたということがわかって以来、直ちに環境庁は神奈川県、藤沢市、三者によりまして引地川水系ダイオキシン汚染事件対策連絡調整会議というのを設置いたしまして、原因究明でありますとか周辺の環境調査等を進めておりまして、また、今後の汚染防止対策についての検討を行っているところでございます。
 この間、神奈川県、藤沢市が、ダイオキシン類対策特別措置法その他の関係法令によりましてこれまでに九回、荏原製作所藤沢工場に立入検査を実施しているところでございます。また、環境庁、神奈川県、藤沢市、それぞれ同工場に対しまして汚染原因の解明等に必要な事項の報告を求めてきているところでございます。
 こうした一連の作業、今作業中でございまして、それをできるだけ早く終えまして原因の全貌解明と事業者に対します行政措置の方針を固めてまいりたい、今こういう段階でございます。

○福山哲郎君 早速いろいろ動いていただいていることは大変感謝申し上げますが、今の長官の御答弁ですと、立入検査を九回した、連絡調整会議をつくった、環境調査も行っているということで一生懸命やっている、中途だということですが、現状わかっている範囲での原因はどういったことなのでしょうか。

○政府参考人(遠藤保雄君) 高濃度の汚染原因、直接的な原因は、やはりスクラバー排水の排水管が雨水管に誤って接続していたということが主たる原因であるというふうに考えております。

○福山哲郎君 雨水管の配管とダイオキシンに汚染された汚水の配管を間違えてつなげてしまったと、大変初歩的なミスなわけですが、それが何と七年間も気づかれずに放置されていて、排水口からダイオキシンに大変高濃度に汚染された水が流れ込んでいってしまった。
 この会社は実は環境推進企業として大変有名なところでございまして、私などもよく存じ上げていて、ISO14000も取得をされているということで、大変ショックというか、どうしてなのかなというのがまず最初に疑問に出るんですが、それにしても、七年間も放置をしていた、間違いに気づかなかったというのはなかなか納得できない。
 一つ気になるのは、三月二十三日、工場の廃棄物焼却施設が閉鎖をされました。閉鎖をされた処置というのは大変よかったと思うんですが、二十三日に閉鎖をされて三十一日の検査でもまだ百二十ピコグラム汚染されている。二週間たった四月六日でも三十八ピコとか二十六ピコとか検出されている。確かに冒頭申し上げました三千二百ピコグラムから見ればそれは減っているとは思うんですが、環境基準が一ピコグラムなわけですから、それでも三十八倍、二十六倍も基準を超えている。
 操業停止をしてきっちりその焼却場は停止しているにもかかわらず、一週間、二週間たってもなかなかその排水の、排水というかダイオキシン濃度についての汚染が減らないというのは、これはどういった理由なんでしょうか。

○政府参考人(遠藤保雄君) 私ども行政当局といたしましては、廃棄物焼却施設の稼働を停止しました後の四月四日から七日にかけまして連続調査を実施いたしました。
 それによりますと、稲荷雨水幹線、これは引地川に入る直前の幹線でございますけれども、その水質においては一・六から二百八十ピコグラムのダイオキシンが検出されました。その原因といたしましては、高濃度のダイオキシン類を含むスクラバー排水が流れておりました工場内の雨水管あるいは稲荷雨水幹線の中に残存していたダイオキシン類が流出したもの、こういうふうに考えております。特に四月五日には高い値が検出されておりますけれども、これは降雨がありまして、そしてダイオキシン類の流量が増大したんじゃないか、こう考えております。
 いずれにしても、その後、県、市が指示をいたしまして、四月十四日から五月六日にかけましてこの雨水管と稲荷雨水幹線について清掃を実施しております。

○福山哲郎君 ということは、多少残量というか残っていたものがあって流れ出たというふうに承ります。先ほどから言われておりますスクラバー排水が汚染をされているところなんですが、スクラバー排水になる前に実はバグフィルターを経由しているわけですね。バグフィルターを経由して洗浄塔に入ってスクラバー排水として出ていくわけですね。バグフィルターというのは、私が理解をしているところによりますとダイオキシンの除去装置だというふうに思っておりまして、今回の汚染というのは、バグフィルターを通ってそして洗浄塔へ行ったものがスクラバー排水として出ていっている。
 バグフィルターを通過して本来ならダイオキシンが除去されているはずだった水が、確かに雨水管と汚水管を間違えたということはよくわかるんですが、なぜこんなに高濃度に汚染をされていたのかということを御説明いただけますでしょうか。

○政府参考人(遠藤保雄君) この廃棄物焼却施設の排ガス処理方法でございますが、先生御指摘のようにバグフィルターを通って、そして通った煙等が要するに湿式処理いわゆるスクラバー排水を吹きかけまして、それでそのスクラバー排水の中に高濃度のダイオキシンを閉鎖的に入れてその水を循環利用する、こういう構造になっております。
 それで、本来的にそのバグフィルターでかなり汚染物質はとるようにしておりますけれども、やはり非常に微量なものにつきましてはフィルターを通しまして抜けてまいりますので、それをスクラバー排水でもって洗浄する、こういうことでございます。
 それで、こういうスクラバー内の濃度でございますけれども、これまで環境庁が行った全国調査では数十万から二百万ピコぐらいにも及ぶというふうな結果が出ております。今回の廃棄物処理施設のスクラバー排水中の濃度は九万八千ピコでございまして全国調査の範囲内でございましたので、こういうことはあり得ないものではない、こういうふうに見ております。

○福山哲郎君 今局長がおっしゃられたことで一つ気になったのは、洗浄塔というのはこれは基本的にダイオキシンを除去する目的でつくられているものではありませんね。
 基本的には、私の理解で言うと、酸性のものを中性にして洗浄排水として流すというものであって、あくまでもダイオキシンの除去はバグフィルターの中であるわけですが、そのバグフィルターを通したもののスクラバー排水自身が、今まさに正直におっしゃられたように九万八千ピコグラムだったと。これが汚水管と雨水管を間違えたから流れ出たということで、確かにそこが直接的な原因なのかもしれませんが、現実問題の本質的な話としては、バグフィルターを通ったものが九万八千ピコグラムだったということ自身が実は本質的には問題なのではないかなというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

○政府参考人(遠藤保雄君) 今御指摘のありました点なんかも含めまして現在調査中でございますので、その過程において種々専門家の意見を聞きながら、検討結果を今後発表していきたいと思っております。

○福山哲郎君 いや、そこが実は大変問題なんですよ。
 雨水管と汚水官と間違えたから問題だとよくおっしゃるんですが、そうじゃなくて、バグフィルターを通ったものがそもそも九万八千ピコグラムだったこと自体が問題で、先ほどもっと大きい濃度のものが九万八千になっている、全国的に見ればそれはそんなに図抜けて大きいものではないという話ですが、ではなおさら九万八千ピコグラムのものを洗浄塔へ通して、洗浄塔へ通したものをそのまま、例えばこれは雨水管と間違えたのではなくて汚水管に行ったとしたって、それが汚水管に行っていること自身が大変問題なのではないかと思うんですが、そこはどうですか。

○政府参考人(遠藤保雄君) ダイオキシン類の発生量でございますけれども、これは焼却条件とかあるいは焼却された廃棄物の種類によって変化するのでございます。したがいまして、仮にバグフィルターを通過後であったとしてもどういう数字になるか、これはなかなか一概に申し上げられるものではございません。
 したがいまして、今回原因究明のため一連の調査をやっておりますので、御指摘の点につきまして留意して原因解明、問題解明に努めていきたい、こう思っております。

○福山哲郎君 もう一つ申し上げます。
 ここに荏原製作所の広報室が出している「引地川ダイオキシン汚染の疑い濃厚であること判明の件」というところの「対応策」というのがあります。この「対応策」の「藤沢工場焼却炉設備の改善。」というところで、三項目目の一番目、「現施設のバグフィルタ入口側に」、入口側ですよ、バグフィルターに入る手前の入口側に、「活性炭噴霧設備を設置し、乾式にてダイオキシンを除外します。」と書いてあるわけです。これは対策としてそうしたということです。
 もともとバグフィルターというのはダイオキシンを除去するためのものにもかかわらず、対策をするときに、荏原製作所自身が現施設のバグフィルターの入口に乾式のダイオキシンを除外するものを置きますと言っているわけです。ということは、これはイコールこのバグフィルター自身が、これまで七年間確かに間違いがあったのかもしれないけれども、ある意味でいうと機能を果たしてこなかったということ自身は荏原製作所も認めているのではないか。
 もしこういうものが全国の施設にあちこちであって、先ほど言われたみたいに平均的にはこんなものだとかいう話は実は大変危険な問題だというふうに思っているんですが、そこはいかがですか。

○政府参考人(遠藤保雄君) 先生御指摘のバグフィルターの使い方でございますけれども、御指摘のように乾式で排ガスを処理する方法として一般的に使われているということでございます。それに並びまして電気集じん機などがございます。
 それで、今先生から御指摘のありましたような点につきましては、私どもやはり今各方面から、各角度からいろいろ点検を行っておりまして、その中でいろいろ考え方を整理してまいりたいと思っております。

○福山哲郎君 調査もわかりますし、なかなか今御答弁しにくい事情も理解はします。理解はしますが、これは実は本当に大問題で、例えばバグフィルター自身の機能に問題があったとしたら、これは雨水とか汚水管につながったという話は二次的な話なわけです。
 では、例えばこれが汚水管にきっちりとそのまま接続されていたとしたら適正に処理されていたかどうかも実は非常にあいまいなんですね。これが例えば今このまま雨水管と汚水管がきちっとまともに接続をされていたとしたら、この七年間のダイオキシンの汚染については、きっちりと被害が避けられたというふうにはお考えですか。そう言えますでしょうか。

○政府参考人(遠藤保雄君) 雨水管でなく、きちんと汚水管に接続されていた場合には、先生御指摘のように当然のことながら汚水管を通りましてこの排水は総合排水処理施設で処理される、こういうことになると思います。
 それで、ここで一つデータがございますけれども、この当工場においては、この廃棄物焼却施設以外に化学分析棟とか総合研究所、あるいはガス化溶融炉といった施設の排水も行われておりまして、それは汚水管を通じて総合排水処理施設で処理されておるのでございますけれども、この排水が入る前の濃度は十八から九十八ピコでございますが、処理後は六・七から八・六ピコ、こういうデータを私どもは得ております。したがいまして、仮にスクラバー排水がこういう形で総合排水処理施設で処理されていればこういった処理がなされていたのじゃないかということは一つの参考になるのじゃないかと思います。

○福山哲郎君 とにかく、余り汚水管と雨水管を接続をミスしたということで原因を片づけることなく、このバグフィルターの能力の話も含めてしっかりと調査をして、これは発表を早く情報公開としてしていただきたいと思いますので、ぜひそこはお願いをしたいんですが、それはいかがでしょうか。

○政府参考人(遠藤保雄君) 御指摘の点も含めまして、種々問題の解明に努めてまいりたいと思います。

○福山哲郎君 次に、厚生省さんにちょっとお伺いをします。
 これは、非常に高濃度に汚染された汚泥をこの会社は自社内に埋めているんですね。自己処理の原則ですから自社内の土地に埋めるのはそれは合法的だと思うんですが、こういう高濃度に汚染をされた汚泥を埋め立ててしまうと、私はここはちょっと技術的なことなのでなかなか理解できないんですが、例えば土壌汚染が広がるとか、ダイオキシンというのはもともと土壌への吸着率が高いというふうに私どもは承っておりまして、そう簡単には、この汚染が確定をしてしまうというような気がしますし、さらにはこれは七年間にわたってこういう状態で高濃度の土壌の、土壌というか汚泥が埋め立てられているということなのですが、このことについては何か対策なり対応なり調査なりということは厚生省さんは行っているのかどうか、お聞かせいただけますでしょうか。

○政府参考人(岡澤和好君) 神奈川県が現地に立入検査をしておりますけれども、その結果によりますと、荏原製作所は過去に自社の排水処理施設から発生する汚泥を自社敷地内に埋め立て処分していたという事実がございます。これは、今高濃度に汚染されたというふうな先生の御指摘でございますけれども、排水処理施設からの汚泥でございまして、高濃度かどうかはちょっとその時点でわからないということでございます。
 そのために、神奈川県は荏原製作所に対しまして、生活環境保全上の支障がないかどうかというふうな観点から、埋め立てられた汚泥に有害な重金属やダイオキシン類が含まれていないかどうか、つまり有害な汚泥であったかどうか、あるいはその結果、地下水への影響がないかどうかについて調査をさせているところでございます。これまでボーリング調査と地下水調査の結果が大半が出ているわけですけれども、その結果では、埋め立てられた汚泥の溶出試験結果及び地下水水質の水質結果ともに環境基準以下ということで、そのときに埋め立てられた汚泥に特に大きな有害物質が入っていたということでもなさそうだし、あるいはそれによって地下水汚染を行っているというわけでもないというふうな状況だというふうに聞いております。
 ただし、地下水のダイオキシン類関係の調査結果についてはまだ分析が完全に終わっておりませんので、間もなく、六月中旬ぐらいだと聞いておりますが、に結果が出るというふうになっておりますので、その結果を見まして、厚生省として、荏原製作所が何らかの措置をとる必要があれば、これは厳正にとらせるように県を指導したいと思っております。

○福山哲郎君 わかりました。ぜひ早く調査結果を公開していただくようによろしくお願いいたします。
 次に、別の観点から質問させていただきます。
 今回の事故で、川が流れ込む相模湾では魚介類が汚染をされたりして、大変市民が不安な状況になっているわけですが、実際に相模湾でとれた魚や貝などが売り上げが激減をしている。この魚介類の汚染については測定をされているのか、また測定をされているとすれば結果はどうなっているのか、安全性についてはどうなのか、この点についてお答えをいただけますでしょうか。

○政務次官(柳本卓治君) お答えいたします。
 神奈川県の調査によりますと、引地川の魚介類からは、一グラム当たり一・一から三十ピコグラム、平均値で十ピコグラムのダイオキシン類が検出されているところであります。この水域では漁業の実態はございませんけれども、念のため釣り等で捕獲した魚は食べるのを控えるよう藤沢市が広報等により呼びかけまして、万全を期しているところでございます。
 一方、引地川河口周辺の相模湾の魚介類につきましては、一グラム当たり〇・二〇から八・一ピコグラム、平均値で一・六ピコグラムが検出されております。これは、平成十年度環境庁調査の全国平均値二・一ピコグラムを下回っております。かつ、バランスのとれた食事をとれば特に問題ないという厚生省の見解の前提となりました平成十年度食品中のダイオキシン汚染実態調査の魚介類濃度の範囲内、すなわち最小〇・〇〇三、最大二十五・七二ピコグラム内でございまして、これらのことを踏まえまして、相模湾の魚に関しては冷静な対応をお願いいたしたいと考えているところでございます。

○福山哲郎君 申しわけありません。私が聞き漏らしたかもしれないんですが、それはいつの調査でしょうか。

○政務次官(柳本卓治君) 本年の四月でございます。

○福山哲郎君 それは、この事故における問題意識の中で行われた調査なのか、例年行われる環境庁の全国一斉調査の結果なのか、どちらですか。

○政府参考人(遠藤保雄君) 今回、高濃度汚染が発見されまして以降、県、市と連携いたしましてこの調査を実施いたしました。その結果についての今御報告でございます。

○福山哲郎君 私のいただいている資料にも、例えば江の島沖ですと、タチウオで八・一ピコ、ナガラミでいうと辻堂先で二・一ピコ等の数字が出ておりまして、平成十年度の環境庁の緊急全国一斉調査でいうと、大体平均が二・八五でございまして、物によっては八・一とか二・一、物によっては〇・四四ということで結構ばらつきがあるわけですが、これはダイオキシンの特性上、ばらつきが出てくるのもいたし方ないと思っているんですが、こういう状態の中で今のところはということは、環境庁は安全だというふうな認識を持っているということでいいわけでしょうか。

○政府参考人(遠藤保雄君) 今回の調査結果ですと、引地川河口周辺の相模湾の魚介類でございますけれども、平均値が一・六ピコでございました。それで、それは平成十年度の環境庁全国調査の平均値二・一ピコグラムを下回っている。そういうことから考えまして、冷静な対応を安全面でお願いしたいと、こういうふうに考えておるということでございます。

○福山哲郎君 例えば、これは引地川水系でいいますと、コイ六・三ピコ、フナ十二、富士見橋でいうと、コイ十三、フナ三十、ボラ五・八というような数字が出ていますし、藤沢市の広報紙でいうと、これは数値としては少ないんですが、「相模湾のシラスは、一グラムあたり〇・四ピコグラムと極めて低く、その他の魚も相模湾の水質のダイオキシン濃度が十分に低いので問題はないと考えておりますが、念のため調査を行っています。」と書かれています。
 ところが、シラス一グラム当たり〇・四ということは、すぐがっと百グラムぐらい食べちゃうと四十ピコグラムになってしまいますし、この間もある方が来られて言っていたんですが、シラスはこうやってがっと食ってしまう、一匹について〇・四というのは実はすごく大きいんじゃないかと。食べた後に、これはどこのシラスだといったら相模湾でとれたものだといって、うわ、僕は何十倍も食べてしまったという人がいたというような話も伺っているんです。
 これはどうなんでしょう、安全なんでしょうか。僕も技術的なこととかはわからないんですけれども、シラス一匹当たりというと、すぐ百グラムぐらい食べちゃうと思うんですが、これで安全だと言えるのかどうか、ちょっとお知らせいただくのと、あとフナ十二、コイ六・三とかが出ているので。

○政府参考人(遠藤保雄君) 私どもで調査いたしましたのは三月二十八日から四月三日にかけてでございますが、そのデータといたしまして、先生御指摘のように藤沢市沖、あるいは鵠沼の地先なんかで〇・五六ないし〇・七ピコの値が出ておりますが、これは可食部分一グラム当たりのピコグラムでございまして、可食部分一グラムに対しまして〇・五六ピコないしは〇・七ピコということでございます。そして、魚というものにつきましては、一日で百グラム弱食べておりますので、そういう中のシェア等なんかを考えてみた場合に、冷静な対応をお願いしたい。
 さらにまた、魚の全国平均のダイオキシン含有量を調査したものがございますけれども、これですと約二ピコ前後でございます。このシラスにつきましてはそれを下回っているということ、これも私どもこの問題が発生した直後にデータとして解析結果が出ておりますので公表して、皆様に冷静な対応をお願いしているというところでございます。

○福山哲郎君 一日八十グラムなんでしたか、平均が。

○政府参考人(遠藤保雄君) 百グラム弱です。

○福山哲郎君 百グラム弱ですね。ということは、これは〇・四、シラスだけ百グラム食べると四十ピコになる。その数字を言われた後局長が、そういう事実ですが、安全だともおっしゃらないで冷静に対応いただきたいという意味は、表現しにくいのはよくわかるんですが、聞いていてさっぱりわからない。
 その冷静に対応願いたいという意味はどういう意味なのか。

○政府参考人(遠藤保雄君) 今先生、まず二点ございます。
 一つは冷静な対応の問題、あともう一つ、先生がおっしゃった四十ピコの件でございますけれども、これにつきましては、私どもはTDI等比較する場合には体重五十キログラム、人によって違いますけれどもこういうふうに考えております。したがいまして、五十で割り戻して得られた数字で御判断願いたいと思います。四十ピコそのものじゃございません。
 それで、冷静な対応といいますのは、魚は全国平均で二ピコ前後のダイオキシンを含有している。それを反復継続的に私どもは食べておるわけでございますけれども、そこで食生活上大きな問題は今まで出ていないという今までの知見に照らしまして、冷静な対応ということでございます。
 ここで私どもがなぜそういうことを言うかといいますと、一つの価値判断を加えますとまたいろんな形で報道されますので、こういう表現を使わせていただいているということでございます。恐縮でございます。

○福山哲郎君 済みません。意地悪を言うわけではないんですが、同じ問題を聞かれたときに衆議院では、汚染された魚の数値は基準値以下であり、安全だと答弁されている。今は冷静な対応をお願いしたいと答弁されている。
 そうすると、逆に、ああやっぱりちょっと安全だとは言いにくい状況なんだなということでうがった見方をせざるを得なくなってしまうんですが、そこは何で衆議院の答弁と変わったのかも含めてお答えいただけますでしょうか。

○政府参考人(遠藤保雄君) 今御指摘ございましたように、私ども今のデータに照らしてみれば安全性というものは十分あると考えております。

○福山哲郎君 私は、別にこれでかえってパニックを起こしたりとか不安を駆り立てたりというつもりは全然ないんです。
 要は、こういう問題が起こるたびにこの議論が出て、いつもいつも水かけ論みたいな話になって、住民だけがどこかへ置いてきぼりになって、そして調査をしております調査をしておりますという話が繰り返される。これではやっぱり本質的な解決にならないのではないかなというふうに思っているのでお伺いをしたわけです。
 もう一つ、これは私もかかわらせていただきましたので何とも申し上げにくいんですが、ダイオキシン類対策特別措置法というのがこの一月から施行されています。この措置法について、附則の二条三項、これは公明党さんも一緒に御検討いただいて、この附則を何とか入れようというふうに議論させていただいたところなんですが、ダイオキシン法の附則二条三項に、「ダイオキシン類に係る健康被害の状況及び食品への蓄積の状況を勘案して、その対策については、科学的知見に基づき検討が加えられ、その結果に基づき、必要な措置が講ぜられるものとする。」というのが加えられました。
 実際にこういう事故が起こってしまっているわけですが、この附則も含めてどのような運用をされる予定があるのか、お聞かせ願えますでしょうか。

○国務大臣(清水嘉与子君) 先生方の御努力によりましてできたダイオキシン類対策特別措置法でございますが、この一月にその施行に伴いまして、環境の基準、排出基準等の各種の基準が定められたところでございます。これらの基準の定め方にいたしましても、やはり法施行時点において得られております最新の科学的知見に基づいて設定されたというふうに理解しております。
 これらの基準につきましては、今先生御指摘の附則の第二条第三項、第二条そのものが「検討」という項目になっているわけでございますけれども、こうした基準を設定された後でも科学的知見に基づいて検討が加えられるべきであるというふうに理解しておりまして、今後とも最新の科学的知見の集積に努めまして、そして基準の妥当性について不断に検討を進めていきたい、こういう趣旨でございます。

○福山哲郎君 検討も結構なんですが、現実にはもう事故が起こっているわけです、長官。確かに法が一月ですから、そんなにすぐにできるわけではないのはわかるんですが、やはり今回の循環型社会基本法の経済的措置についても、国民から調査をし意見を聞きと言いつつ、本会議でも申し上げましたように環境基本法で言われてから七年間、具体的な問題はないわけです。現実には事故が起こっていて、食品に関しては先ほど僕がやりとりをさせていただいたような問題がいつも起こるわけです。
 逆に言うと、ここに行政に対する不信感なりが国民の中には根づいている部分があって、せっかく附則二条三項で「その結果に基づき、必要な措置が講ぜられるものとする。」という話がありますので、ぜひガイドライン、明確な基準なりというものを一刻も早くつくっていただいて、ダイオキシンに対する不安というのは全然消えていないわけで、法律ができたからといってダイオキシンがすぱっと消えれば問題ないですが、いかに法律を現実の状況に合わせて運用していくかというのが行政の責任だというふうに思いますので、そこは何とかお願いをしたいというふうに思います。
 そんな中で、これは神奈川新聞なんですが、「濃度の最大値 今なお基準の二百八十倍」、水質調査速報というのがありまして、「「影響分からない」」というふうに荏原製作所の工場長らが会見をしているんですが、相模湾自身には問題ないということで、神奈川県が今月末にも安全宣言を出すというような記事が出ています。
 この安全宣言を出すという記事について、今調査中だとか今検討中だとか数値を見てというふうに、環境庁さんから先ほどの私の質疑の中で何回も何回も出ているにもかかわらず、神奈川県は安全宣言を出そうというような話をされている。
 別に安全宣言が悪いと言っているわけではないのですが、現実問題として安全宣言をしてしまっていいのか、まだ調査中のことはいっぱいあるではないかという気もしておりまして、環境庁としてはこの点についてどのようにお考えなのか、御答弁をいただけますでしょうか。

○政務次官(柳本卓治君) 福山委員御指摘のように、住民不安の解消とか行政に対する信頼というものを取り戻す意味においても、きちっとした形の数値等の公表というものが待たれるところであろうと思いますが、これまで環境庁、神奈川県及び藤沢市により実施されました各種の周辺環境調査につきましては、これまで速報値として一部の結果を公表したところでございまして、現在その取りまとめを急いでいるところでございます。これらの調査結果について、専門家の意見をも十分に聴取した上で、連絡調整会議の場において周辺環境の安全性について入念かつ迅速に評価する予定であります。
 環境庁といたしましては、引き続きまして神奈川県、藤沢市と密接な連携を図りつつ、間もなくでございますけれども今月末をめどに最終的な取りまとめを行いまして、その結果を公表すべく努めてまいりたいと考えております。

○福山哲郎君 安全にこしたことはありませんが、その会なりその取りまとめが、あえて安全宣言を出すための会ではないことを本当にお願いいたします。そこは冷静かつ客観的に御判断をいただかないと、例えば今安全だと言って、目先はいいのかもしれないけれども、地域の住民の方が僕がこうやって国会で取り上げることを逆に望まれたというのは、その方たちも自分の地域の観光客やいろんな問題が起きてくるのは百も承知の上でいろいろ言われてきたということも含めて、そこは長い将来のことですし、冷静に客観的に御判断をいただきたいというふうに思います。
 そしてもう一つ、この事故によって流出したダイオキシンというのは、当然引地川や鵠沼海岸の底には汚泥となって堆積をしていっていると思うんですね。その底質についての汚染状況、それから底質の除去の必要性については、環境庁としては今どのようにお考えでしょうか。

○国務大臣(清水嘉与子君) この底質につきましては、神奈川県の調査によりますと、引地川の底質は検出範囲の中では一グラム当たり二・六から二十一ピコグラム、平均八・二ピコグラムというふうになっております。環境庁が平成十年に全国調査をいたしましたときは、検出範囲で〇・一〇から二百六十ピコグラムというふうに幅がございます。そして、全国平均では八・三ピコグラムというふうなことでございまして、そういう平均からすれば同程度であるというふうに判断しております。
 また、鵠沼海岸を含みます相模湾沿岸の底質でございますけれども、これが一・一から四・六ピコグラム、平均いたしますと二・四ピコグラムということで、全国平均を今下回っているところでございます。
 したがいまして、現在得られているデータからは特に問題はないというふうに考えているわけでございます。ただ、引地川につきましては、地元自治体がさらにこれから調査を実施するということでございまして、その結果も踏まえまして今後の対応を判断してまいりたいというふうに思っております。
 したがいまして、先生おっしゃいました除去するという必要はまだないんじゃないかというふうに考えております。

○福山哲郎君 汚染状況は今承りました。ただ、藤沢市がつくっている広報紙のQアンドAとかでは、「引地川で遊んでも大丈夫か。」という質問に対して、「念のため、川から出た後は水道水で体を洗い流してください。」となっている。
 また、引地川が相模湾に流れ込む地点では、例えば鵠沼海岸のある鵠沼橋では三月二十三日、サンプルで二十一ピコグラムが検出されているわけです。その後、これは再検査ということになっているんですね。
 今、除去の必要がないと長官がおっしゃられたんですが、底質に対する環境基準は実はまだないんですね。底質に対する環境基準がないということは、危険かどうかも判断できないし、除去の必要についても対策を講ずるべきかどうかの客観的な今基準が設けられていないわけです。
 これは、実はダイオキシン法の中で、底質についての環境基準をつくるようになっているわけですが、今まだ検討中ということで、まだできていない。できていないにもかかわらず、今の状況ですと除去する必要はないと。その判断の根拠というのを、ではどういう根拠になるのかも含めてお答えをいただけますでしょうか。

○国務大臣(清水嘉与子君) おっしゃるように、今はまだ底質の環境基準ができていない、今検討しているところだというふうに申し上げるしかないわけでございます。
 しかし、これまで得られています調査の結果、先ほども御紹介申し上げましたけれども、今回の引地川の底質の状態が、環境庁が十年に調べましたときと同程度ということもありまして、そういう意味では平均的なレベルの底質濃度の地域でございますから、特に今、底質の除去は必要ではないんじゃないかというふうに考えているわけでございます。
 しかし、先ほども申しましたように、この引地川に関しましてはまたさらに調査をするとなっておりますので、もう少し判断については留保したいというふうに思いますけれども、今後さらに検討を進めてまいりたいというふうに思っております。

○福山哲郎君 先ほどの食品もそうですし、今の底質もそうですし、まだ基準がないと。ですから調査を進めるという話で、でも現状は安全だろうという話でございまして、もう全部その繰り返しになるわけですので、もう少し、もう一歩前へ出ていっていただけるようなことを早急に望みたいと思います。
 次に、少し僕はわからないのでお伺いしたいんですが、このダイオキシン法の第五章に「土壌に係る措置」についての指定があります。二十九条によると、土壌の汚染に対して除去をするための対策地域を指定して計画をつくるという状況になっているんですが、この「土壌」という表現と川の底の「底質」という表現は、これは別扱いなんですね、局長。

○政府参考人(遠藤保雄君) 土壌と底質の問題でございますけれども、私ども土壌につきましてこのダイオキシン汚染で一番懸念いたしますのは、土壌を私どもは口から吸うなり皮膚接触しまして体に吸収すると、こういう問題でございます。
 それに対しまして底質の場合は、人間が接する機会というのは頻度として非常に低うございます。それで、一番問題となりますのは、やはりそこに住んでおる魚でございます。特に底を魚がつっつきまして、要するに底質から魚に移行するというような問題も考えられますので、そこの相関関係をいかに把握して、それで魚を介して食物連鎖で人の健康にどういうふうな形で影響が出てくるかという観点からアプローチしなきゃいかぬと、こういう問題でございます。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 今回の場合には工場からの排水の汚染が原因なわけですから、当然川の下の底質に汚染をされている可能性がある。そこについて、例えばこの法律の「土壌に係る措置」によると、いろんな形で指定に対して住民が申し入れをするということも出てくるんですが、底質に対して、例えば具体的に調査なり検査をすることに対して指定をするということを住民の方が都道府県知事に申し出をするというようなことは可能なんでしょうか。

○政府参考人(遠藤保雄君) 底質につきましては、今回、水質の環境基準を設定するに際しまして底質についても設定できないか、最先端の専門家の方々の知見を総結集して検討したわけでございますけれども、残念ながらデータの制約性、さらには底質と水との間のダイオキシン汚染の相関関係、さらには底質と魚との間の汚染の相関関係、ここのデータが得られませんでした。したがいまして、今後検討課題と、こうなっております。
 したがいまして、そういう形でまだ基準がございませんので、非常に今のような問題についてはなかなか対応しにくい現状にはございます。
 ただ、私ども調査をいたしまして、全国的なレベルよりも極端に高濃度で汚染されているとかそういう問題に直面するならば、これはきちんと個別的な問題といたしまして対応していかなければいかぬ、こういうふうには考えております。

○福山哲郎君 この藤沢の場合には、個別的な問題として対応していただける可能性はあるんでしょうか。

○政府参考人(遠藤保雄君) データ的にちょっと申させていただきたいと思います。
 引地川本川でございますけれども、今回調査いたしましたところ底質は八・二ピコでございました、平均値でございますが。それで全国平均値が八・三でございますので、全国平均とそう大きな変化がない。その次に相模湾、これは一つは引地川河口周辺でございますが、底質は二・四、それで全国は八・三でございます。あと、海水浴場で辻堂海岸、あるいは片瀬西浜、これが恐らく鵠沼海岸に該当するものと考えますけれども、片瀬東浜、これにつきましては底質が〇・六八でございました。
 したがいまして、私どもといたしましては、この底質の汚染状況でございまするならば今大きな問題にはならないんじゃないか、こう判断しております。
 なお、一点申し忘れましたけれども、神奈川県でこれからいろいろダイオキシンにつきまして調査測定を実施するというような際には、住民からいろいろその際に御意見が出ましたならば、調査測定の仕方あるいは地点なんかにつきまして内容を検討し、採用が可能なものにつきましては住民の方々の意見を取り入れていきたい、こういう方針でございます。

○福山哲郎君 ぜひそこはよろしくお願いします。
 それと、あと今の御答弁に関連するんですが、ダイオキシン法の二十七条は、都道府県知事は調査測定をするという規定がありまして、恐らくことしの四月からスタートしてもう予算もついていると思うんですが、これは事故が起こったからとにかく調査をするということではなくて、毎年毎年これは調査をするという状況の中で、このような問題のある地域を含めて重点地域に指定して、きっちりと都道府県がする調査を、このような地域を、もう一度言いますが重点地域に指定して調査してくださいということを住民が申し出ることも可能なわけですか。

○政府参考人(遠藤保雄君) 神奈川県といたしましては、調査測定内容を検討する段階におきまして、住民から意見が出された場合には、その内容を検討して採用可能なものは取り入れていきたい、こう言っております。
 したがいまして、その中で対応していけるものと考えます。

○福山哲郎君 例えばその住民の申し出ですが、具体的にはどういう形で申し出をすればいいんでしょうか。

○政府参考人(遠藤保雄君) ダイオキシン法二十七条にはそういう規定はございません。
 したがいまして、今回、これはこのケースに限りましての神奈川県の運用方針でございますので、その点につきましては、私ども神奈川県とも連携をとりながら、十分に対応できるようなことにつきまして意を用いたいと思います。

○福山哲郎君 議員立法に携わった者の立場で言うと、具体的にこういう問題が起こって法案を見ると、足りない点とか、逆にああこれがあってよかったなと思う点とか、非常に何というか身につまされて感じまして、もうぜひ、余りいい表現ではありませんが、一月に施行されているこの法律をもとにして、ぜひこの藤沢の皆さんの不安を取り除いていただきますようにお願いを申し上げます。
 もう大分時間が経過をしてしまいまして、若干だけ基本法について質問します。
 まず、長官と政務次官にお伺いをします。
 お二人の循環型社会というのは一体どういうイメージなのかを、お二人のお言葉でお聞かせいただけると非常にありがたいというふうに思いますので、お願いします。

○国務大臣(清水嘉与子君) 一言で言うのはなかなか難しいかもしれませんけれども、私ども本当に資源のない日本で、特に戦後の生活を考えてみますと、何もなかったところから物だけはあふれかえるというくらいにあると思います。よその国からたくさん持ってきた資源を利用して、そして豊かにはなりましたけれども、それを大量につくり大量に使い大量に捨てるということを繰り返してまいったわけでございますけれども、そのことについてこれでいいんだろうかという反省を多くの人たちが持っていると思いますし、私自身もそういうふうに思います。
 この社会をこのままではやはりいけないのではないか。資源を何とか循環させるような社会をつくる、そのことを、ちょうど新しい世紀を迎えるこの年に、環境庁が環境省になるというときに、このことを立ち上げようということに対して、私は大変意味があることだというふうに思っているわけでございますけれども、日本のやっぱり今までの社会のシステム、経済システムを大きく変える転機になるんじゃないかというふうに思っているところでございます。

○政務次官(柳本卓治君) 私は、二十一世紀に残す最大のものは、美しい自然と美しい環境、心である。そのために二十一世紀は環境の時代である。終戦後の高度成長過程の時代は既に終わり、新しい時代の息吹が今動こうとしている中において、足りるを知る、自然を残す、そういう新しい世紀の胎動が循環型社会の構築であると、そういうような認識を持って考えております。

○福山哲郎君 もうこれ以上は申し上げませんが、それぞれのイメージがあると思いますし、循環型社会というのはそんなに単純な話でもないと思いますが、やはりきょうの参考人の午前中の質疑でも、なかなかこの法案の不備な点というか足らない点、確かに一歩一歩階段を上がっていくことは必要だとは思うんですけれども、ではどれほどの実効性を伴ってこの法案が二十一世紀にひとり立ちしていくのかということに関して言うと、大変疑問の声も出ています。
 特に重要なのは、やっぱり十五条の基本計画の中身という話なんですが、この基本計画について一体どの程度の実効性が担保されるのかというのが重要なことになっているんですが、もう一度お手数ですが、長官、この基本計画について実効性をいかに担保されていくおつもりなのか、お答えをいただけますでしょうか。

○国務大臣(清水嘉与子君) 確かに、基本法の中で一番重要な点だというふうに思っております十五条の基本計画でございますけれども、これは環境大臣が、中央環境審議会が意見を述べる指針に即してかつ審議会の意見を聞いて基本計画の案を策定し、閣議決定を求めるというふうになっているわけでございますから、計画の具体的な内容についてこうと言うことはなかなか、審議会の御意見を待つ必要があるということを前に置いた上でお話を申し上げたいわけですが、今環境庁として考えているというレベルでは三つのことを申し上げられると思います。
 一つには、循環型社会の形成に関する施策の基本方針について。それについては、まず我が国が目指す循環型社会のイメージ、さっきも御質問がございましたがそういうイメージ、そして関係個別法及び個別施策との総合的、有機的な連携の基本的な方向、循環資源の発生、循環的な利用及び処分の目標量というのをやはり基本方針の中に含めたい。
 そしてさらに、循環型社会の形成に関しまして政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策につきましては、国、地方公共団体、事業者、国民が果たすべきそれぞれの役割について、また主要な循環資源ごとの個別の施策、施設整備の基本的な方針、国が率先して実行しようとする行動、こういったものが挙げられると思います。
 三つ目には、その他循環型社会の形成に関する施策を総合的かつ計画的に推進するための必要事項についてということで、計画のフォローアップ等のあり方、あるいは関連施策との有機的な連携の確保のための留意事項、こういったものが計画の中に盛り込めればというふうに今私ども考えておるわけでございまして、では実際に計画の実効性をどう担保するのかという肝心の御質問でございます。
 これは、まずこの計画が閣議決定によって策定されることになっているわけでございまして、政府が一丸となった取り組みを確保するという仕組みがとられている。そして、さらに他の計画はこの計画を基本としてつくらなきゃならないということになっているわけでございます。
 それから、計画がおおむね五年ごとに見直されるということ、そして毎年年次報告によりましてフォローアップされるというようなこと、そういうことからこれらの際に施策の効果でありますとか、問題点の分析が行われるのであろう。さらに、本法案と一体的に整備されます個別法におきましては、環境大臣が主務大臣等としてその位置づけを確保しているということも大きいことではないかというふうに思います。
 さらに、計画の策定あるいは年次報告によりますフォローアップというのは国会に御報告することになっているわけでございまして、その際には当然必要な御審議がいただけるということでございますから、こういった点から計画の実効性を担保する仕組みが幾重にも準備されているというふうに理解しているところでございます。

○福山哲郎君 大変御丁寧にお答えいただきましてありがとうございます。そこまで準備をされている目標、基本計画ですが、私たちは大変そこに疑問を持っています。それはなぜかというと、地球温暖化の問題について言うと、行動計画というのがもともとありまして、それに沿っていくという話だったのですが、なかなかそのとおりにいっていないという実態がございます。
 例えば、去年、CO2の排出量の速報値が発表されましたが、約三億九百万トンということで、実は九八年に比べて一・八%もふえている。これだけ温暖化でCO2を削減しなければいけないという中で、去年もふえてしまった。ふえてしまったというこの数値について長官はどのようにお考えで、またなぜこんなに大きく増加してしまったのか。これは、いわゆる行動計画をもとにやってきたはずなのに、目標値もあったはずなのに、こういう実態になっているということも含めてお答えをいただければと思います。

○国務大臣(清水嘉与子君) 一九九九年のエネルギー起源の二酸化炭素量というのが、これは民間の機関が発表されたデータだと思いますけれども、発表されたことを承知しているところでございます。
 環境庁といたしましては、環境庁としてのデータもきちんと把握したいと思っているわけでございますけれども、今先生がおっしゃったこのデータを拝見いたしますと、やはり産業部門におけるエネルギー消費の伸びがほかの部門に比べて特に多いわけでございます。そういうわけで、この産業部門において排出量が増大した原因についてはよく分析しなきゃならないというふうに認識しているところでございます。確かに、今後とも二酸化炭素排出量の動向をきちんと把握しながら、京都議定書の目標の達成に向けて長期的、継続的な排出削減を進めることを目指さなきゃいけないわけでございまして、地球温暖化対策をより一層推進してまいりたいというふうに思っているわけでございます。
 何はともあれ、この産業部門の排出量の増大要因について、もう少し分析をしながらチェックしていきたいというふうに思っているところでございます。

○福山哲郎君 私は、この十五条にある基本計画にしても今回の温暖化の行動計画にしても、行動計画自身が悪いと言っているわけではありません。しかし、目標があってやろうと思っていたら結果として増加をしてしまった。そうしたら、原因を見たらこうこうこうだった。今は産業部門だと言われた。産業部門だと言われてこうだった。そうしたら、なぜそうなったのかまた分析しなければいけない。それで、結果としては京都議定書の目標に対してやっぱり頑張っていかなければいけないと言われる。
 それは頑張らなきゃいけないのは当たり前でございますし、それをお題目のように目標値がありますからと言っても、結果として事実が出てきたらそれは全くその目標値とは違った結果になる、そうしたらそれをまた分析して頑張らなければいけない、そんなイタチごっこみたいなことをしていて本当に間に合うのか。この循環社会基本法の話にしても、基本計画をつくること自体を否定しているわけではないのですが、この温暖化防止の行動計画とやっぱり同じ轍を二度踏むのではないかという懸念が我々にはあるわけです。
 では、現実にはその行動計画のどこが足りなくて、どこが不十分で、その行動計画をつくるときに一体何が足りなかったのかということを分析することが実は問題で、出てきた結果を見て、そこで分析しまして頑張りますと言ったって現実には全然前へ進んでいないという実態があります。その点については、では温暖化防止行動計画の一体どこが足りなかったのか、そして循環社会基本法の基本計画でも二の舞になることについてどのようにそれを回避するお考えなのか、その辺の決意のほどを長官にお伺いしたいと思います。

○国務大臣(清水嘉与子君) 地球温暖化防止行動計画というのは、政府として地球温暖化対策の方針あるいは広範な施策等を明らかにしたものでございまして、これに基づきまして温暖化対策に対する多くの取り組みが実施されているわけでございます。行動計画の目標の内容につきましては、一九九〇年レベルで二〇〇〇年以降おおむね安定させるという方向が出されているわけでございます。
 これが達成できなかった、実際一九九九年のデータから見て達成できなかったではないかという御指摘なのでございますけれども、やはり私どもとしては、まず二〇〇〇年の排出量が推定された時点で総合的に評価をしたいと考えるわけでございます。そして、確かにいろいろ難しい点はございますけれども、今後の対応のあり方でございますが、今環境庁におきまして環境基本計画の見直しが行われているわけでございまして、中央環境審議会に今諮問いたしまして御審議いただいているわけでございますが、その一環といたしまして、地球温暖化対策のあり方について精力的に御検討いただいているところでございます。
 検討に当たりましては、各種の温暖化対策の実施による効果を確実に担保する措置といたしまして、規制的な手法、税だとか排出量取引などの経済的な手法、あるいは自主的な取り組みをどのように活用することが適切かといったことについて議論を深めているところでございます。こうした議論あるいはCOP6等の国際交渉の進展も踏まえながら日本は六%削減をしなきゃいけないわけで、六%削減の目標に向かってそれを確実に担保する総合的な国内制度を確立したいと、こういうふうに考えているところでございます。

○福山哲郎君 この法案については拡大生産者責任の件、経済的措置に対する件、そして各省庁間でそれぞれがまた動いて一元化をはっきりと明確にしていない点、多々不備な点があるというふうに思っております。
 確かに第一歩なのかもしれませんが、今長官が言われたように、検討して検討していつの間にかよくわからないうちに環境が悪くなってしまう。いつになったらやるのか、いつやってどこでどのような決断でやるのかというのはこれから環境省になられます環境庁のやっぱり大きな役割だと思いますので、いつも最後の締めは私は同じようなことで終わっているんですが、ぜひ頑張っていただきますように御期待して私の質問を終わります。
 どうもありがとうございました。

 

第147国会  参議院  本会議  2000年5月19日

○福山哲郎君 私は、民主党・新緑風会を代表して、ただいま議題となりました本法律案に対し質問をさせていただきます。
 去る十四日御逝去されました小渕前総理は、私にとっては議員として初めて接していただいた総理大臣でございました。予算委員会等で、私のような若輩者にも慎重に言葉を選びながら真摯に御答弁をいただき、多くを学ばせていただきました。志半ばで病に倒れられたことは痛惜の念にたえません。心から御冥福をお祈り申し上げます。
 さて、森総理のいわゆる神の国発言は、我が国の根幹にかかわる問題であり、一昨日の参議院本会議での答弁は、国民には到底納得できるものではありません。
 総理は、一昨日の答弁の中で、誤解を生じたとすれば申しわけないことであり、おわびを申し上げたいと述べられました。一体だれが誤解をしたとお考えなのでしょうか。国民は総理の発言をそのまま受け取り、そして素直に総理の資質、適格性に疑問を感じているのです。
 また、総理はだれに対して陳謝をされたのでしょうか。もし総理が国民に対して陳謝をしたと言われるなら、それではなぜ発言を撤回されないのですか。一国の総理が明らかに憲法違反の発言をされ、国民に陳謝をされたにもかかわらず、発言を撤回されないとすれば、総理の胸のうちにある思想、信条はまさにあの発言のとおりであると判断せざるを得ません。撤回をされない真意についても明快に御答弁ください。もし、国民に対してではなく、ある特定の方々に陳謝をしたとすれば、それは一体だれに対してなのでしょうか。
 さらに総理は、神の国という表現は特定の宗教について述べたものではないと言われましたが、本当にそうなのでしょうか。かの神道政治連盟の会合でのあいさつの後段の部分で、総理は、神社を中心にして地域社会が栄えていくということを、みんなでもう一遍そのことを勇気を持ってしっかりとやることが二十一世紀がまた輝ける時代になるということではないかなと思うのですとはっきり述べられています。神社を中心、もう一遍勇気を持ってしっかりとやるという言葉が特定の宗教について述べたものではないと幾ら言い張っても、だれが納得するのでしょうか。
 日本の地域社会には、仏教を信じる者、キリスト教を信じる者、無神論の者、もちろん神道を信じる者を含め、あらゆる人が地域を構成し、生活を営んでいます。それを総理は、国家権力で神社を中心にしたものに戻そうというのでしょうか。まさにこの発言は憲法二十条に抵触するものと断ぜざるを得ません。神社の方々こそ迷惑な話です。総理の見解を求めます。
 私は、戦後世代で戦後教育を受けてきた人間です。このたびの森総理の発言には耳を疑うばかりでした。私たちの受けた教育の中には一度も天皇を中心とした神の国という文言は出てきません。総理の発言は、戦後教育を受けてきた私たちの生きてきた道を否定しているばかりか、我が国の戦後の歩みをも否定されているのです。そのような権限や資格など総理には断じてありません。国民主権を標榜し、民主主義国家である我が国が、このような発言をされる人物を総理にいただいていることに強い憤りと悔しさすら覚えます。
 各国でも、総理の一連の発言に対し次々と報道がなされ、不快感の表明や、総理の資質に対し疑問視する声が上がっています。国際社会における我が国の信用を失墜させたという点でも総理の責任は極めて重大であります。
 青木官房長官にもお尋ねいたします。
 官房長官は会見で、今後は首相としての立場を考えて、十分場所柄をわきまえて発言していただくようにしないといけないと表明されたと伺っています。では、青木官房長官御自身は、総理の神の国発言に対してどのような見解をお持ちなのでしょうか。お聞かせください。
 また、総理経験者というお立場を踏まえ宮澤大蔵大臣、そして通産大臣、環境庁長官にも、総理の発言に対する御見解をお伺いしたいと思います。
 それでは次に、本法案についてお尋ねします。
 レイチェル・カーソンが化学物質汚染の恐怖について告発した「沈黙の春」から約四十年、ローマ・クラブが「成長の限界」を発表し、環境問題が人類の存続にかかわる重大な危機であることを警告してから三十年近くがたちました。その間、これら先駆的なメッセージを私たちはどう受けとめ、対応をしてきたのでしょうか。
 残念ながら、私たちの認識や判断には時間的、空間的な限界があります。
 例えば、地球の裏側で起こっている環境破壊の状況をみずからの問題として引き受けることや、将来世代のために目先の利益追求を抑制することを私たちは好みません。また将来、新しい技術が何とかしてくれるという根拠のない楽観的な期待から、早急に対応すべきことを先送りしかねません。そこに大きな落とし穴があり、こうした価値観と現在のライフスタイルに縛られた私たちは、ついぞ有効な対策、問題の本質的な解決に向けた施策をとることができないまま今日を迎えてしまいました。
 その結果、温暖化問題やオゾン層の破壊、ダイオキシン汚染などの環境問題は、人類の生存そのものに対する脅威となり、既に私たちの日常生活を脅かす存在となっています。さまざまな現代文明の利便性を受けながら暮らす私たちにとって、大量生産、大量消費そして大量廃棄というライフスタイルを改め、持続可能な循環型社会を構築することは不可欠であります。
 こうした視点から、私は本法案について、総理並びに関係大臣に対し、以下の点について質問をいたします。
 まず、日本における廃棄物やリサイクルの具体的な問題点について総理にお伺いします。
 豊島の産廃不法投棄、栃木の古タイヤ火災、フィリピンへの廃棄物の違法輸出など、記憶に新しいものだけでも枚挙にいとまがありません。今、廃棄物やリサイクルの何が問題となっているのか。なぜ解決の方向に向かわないのか。現状について総理はどのように認識をしておられるのでしょうか。お答えください。
 また、かつてOECDは、我が国の環境政策について、熱意はあり予算措置も多いが、政策がばらばらで調整がとれず、効果に乏しいと評価をしました。日本の廃棄物行政は、今国会に提出されている法案を見ても、環境庁、通産省、厚生省、農水省、建設省とまさに縦割り行政そのものであります。こうした現状を改め、施策を総合的かつ一元的に進めることが必要だと考えますが、総理の御所見をお聞かせください。
 この法案を見てまず残念に思われるのは、環境先進国ドイツの循環経済法と比較して大きく見劣りすることであります。
 例えば、ドイツの循環経済法では、二十二条においてリサイクルしやすい製品設計、使用済み製品の引き取りなど、生産者の責任が明確に規定された後、二十三条において、流通における用途の制限、再使用やリサイクルの義務化が規定され、さらには有害または適正な処理が不可能な製品の流通禁止まで明示されています。そしてさらに二十四条では、製品について返却の引き受けを製造者または販売者に義務づけたり、引き取りシステムやデポジットなどの方法によって返却を促進したりする具体的な規定があります。
 しかし、この拡大生産者責任について、本法案にあるのは、極めてあいまいな生産者の責務規定だけであり、この二十三条や二十四条に該当する規定はどこにも見当たりません。効果を上げている先進的な事例があるのに、なぜこうした規定を全く設けていないのか、その理由を環境庁長官にお尋ねします。
 さらに、昨年三月に中央環境審議会から出された報告書よりもこの法案の内容が後退していることも問題です。例えば、有害性に応じた環境保全措置の確保、有害物質やリサイクル不可能な物質の使用制限などの提言に対する措置がこの法案には全く盛り込まれませんでした。
 循環型社会を実現する上で、蔓延している化学物質のコントロールは極めて重要であると考えますが、環境庁長官並びに通産大臣の認識を伺います。
 そして、なぜ有害化学物質の管理に関する規定がこの法案には存在しないのか、あわせて環境庁長官にお尋ねします。
 さらに、化学物質をコントロールする法律である化審法は、この基本法の下に位置すると考えますが、いかがでしょうか。通産大臣の明快な答弁を求めます。
 そして、この法案で最も不明瞭かつ不十分なのが、いわゆる環境税などの経済的措置に関する部分であります。循環型社会の構築のために適切な経済的措置の導入を積極的に図っていくことは、国際社会では既に当然の流れになっています。
 しかし、本法案における経済的措置の導入については、九三年に制定された環境基本法の規定とほぼ同じであります。ことしは西暦二〇〇〇年、既に当時から七年を経過していますが、ほとんど前進しておりません。
 ちなみに当時の質疑では、この経済的措置について、その効果が経済に与える影響を勉強し、さらに国民の理解を得て、政策として結実するように十分努力してまいりたいとの答弁がありました。では、経済的措置について何か具体的な政策として結実したものがあるのでしょうか。環境庁長官の答弁を求めます。
 このように、本法案には循環型社会の形成推進という耳ざわりのよい名前がついていますが、実際には現状の大量生産・大量消費・大量廃棄型社会から脱却するための具体的な効果を持つ法律であるとは思えません。将来に向けた第一歩という説明もありますが、多くの有識者や市民団体からは、これでは一歩前進するどころか逆に持続可能な循環型社会の構築にとってむしろ障害になるという指摘すらあります。
 我々民主党は、廃棄物とリサイクルを統合した資源循環・廃棄物管理法案を発表し、広く国民からパブリックコメントを求めています。私たちは未来への責任を果たすべく、地球環境問題に積極的に取り組むことを国民にお誓い申し上げ、本法案においても、問題先送りではなく、より実効性が上がるよう修正を強く求め、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣森喜朗君登壇、拍手〕

○国務大臣(森喜朗君) 神道政治連盟国会議員懇談会における私の発言に関連して御質問がございました。
 私は、一昨日の参議院本会議におきまして、私の発言の中で真意が伝わらず誤解を招く表現があったので、発言を直接間接に聞かれた方々、また国民の皆様方に対して素直におわびをしたものであります。
 一昨日の答弁で御説明申し上げましたとおり、私の発言は神道政治連盟国会議員懇談会の活動の経緯を紹介する趣旨で申し上げたものでありまして、決して天皇が神であるという趣旨のものではありません。また今回の発言は、特定の宗教を念頭に置いたものではなく、少年が関与する人の命を軽視するような事件が相次ぎ、教育についてさまざまな問題が指摘されている中で、信教の自由を前提とした上で、命の大切さへの理解や宗教的な情操を深める教育の大切さ、地域社会の重要性について述べたものであります。
 さらに私は、国政のあり方として神社を中心として我が国の将来を形づくっていこうという考え方を有しているわけではなくて、森内閣は今後とも憲法の定める政教分離の原則を踏まえ、国政に当たる所存であります。
 我が国における廃棄物・リサイクル問題の所在についてのお尋ねでありますが、今日我が国は、廃棄物の発生量が高水準である、リサイクルが不十分である、廃棄物処理施設の立地が困難になっている、不法投棄が増大している等の課題に直面いたしております。これらの問題への対処は一刻の猶予も許されないとの認識から、循環型社会の形成を推進する基本的な枠組みとなる本法案の制定が必要と考えております。
 循環型社会に向けた施策を総合的かつ一元的に進めることについてのお尋ねがございました。
 本法案は、政府に循環型社会形成推進基本計画の策定を求めております。この計画は、循環型社会の形成に関しては、国の他の計画の基本となるものですが、閣議決定により策定されるので、これにより政府全体として施策の一体的な推進が可能になるものと考えております。
 また、今回の行政改革においては、環境省を設置し、廃棄物行政を環境省に一元化した上で、リサイクル行政についても共管の形で環境省が所管することとし、環境省がリーダーシップをとって環境型社会の形成を総合的に推進できる体制を整備することといたしております。
 これらの取り組みを通じて、循環型社会の形成に関する施策が総合的かつ計画的に進められるものと考えております。
 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
   〔国務大臣清水嘉与子君登壇、拍手〕

○国務大臣(清水嘉与子君) 初めに、神道政治連盟国会議員懇談会におきます総理の御発言についてのお尋ねでございますけれども、総理の御説明がありましたとおり、日本国憲法に定める主権在民、信教の自由の考え方に反することを発言されたものではないと私は理解しております。そこで問題はないと考えます。
 ドイツ循環経済法第二十三条、二十四条のような規定が基本法にない理由についてお尋ねがございました。
 ドイツ循環経済法第二十三条及び二十四条におきましては、同法第二十二条に規定いたします製造物に関する責任を具体化するために制定される法規命令において定めることのできる事項を細かく定めているところでございます。これは、法規命令への委任の範囲を限定するものでございます。
 他方、御提案申し上げております本法案は、循環型社会の形成に関する施策の基本的な方向を明らかにする基本法でありますことから、国として講ずべき基本的な措置を広く明らかにすることにしております。
 国により法律に対する考え方が異なりますので、厳密に比較することはできませんけれども、ドイツ循環経済法第二十三条及び二十四条に規定された事項の趣旨は、本法案におきましては第十八条、二十条、二十一条等で規定されているところでございます。
 循環型社会を構築する上での化学物質のコントロールに関するお尋ねがございました。
 廃棄物の処理やリサイクルに伴う有害化学物質の環境中への排出を抑制する、それは循環型社会を構築する上での極めて重要な原則の一つだと考えております。必要な規制等の措置を今後とも強力に推進してまいりたいと考えているところでございます。
 有害化学物質に対する規定に関するお尋ねでございますけれども、本法案では第二十一条におきまして、廃棄物の処理やリサイクルに伴う環境の保全上の支障を防止するため、公害の原因となる物質の排出の規制等の措置を明確に位置づけております。
 また、第二十条第一項におきまして、製品に含まれる有害化学物質の量等につきまして、製造事業者等がみずから事前に評価をし、その結果を踏まえて製品の設計等の工夫を行うよう国は技術的支援を行うこととしているところでございます。
 これらの規定の趣旨を踏まえまして、有害化学物質の排出が抑制されるよう、取り組みを進めてまいります。
 最後に、経済的措置に対する取り組みについてのお尋ねがございました。
 経済的な助成措置につきましては、例えば低公害車に対する自動車取得税の優遇措置の拡充などの必要な措置を講じてまいりました。また、一方、経済的負担措置につきましては、環境保全上の効果や経済に与える影響等に対しまして調査研究を重ねましたけれども、昨日、環境庁から環境政策における経済的手法活用検討会の検討成果が公表されたところでございます。
 今後、さまざまな立場から御意見をちょうだいいたしながら、国民的な議論のもとで、さらに経済的措置についての検討を進めていきたいと考えているところでございます。(拍手)
   〔国務大臣青木幹雄君登壇、拍手〕

○国務大臣(青木幹雄君) 福山議員にお答えをいたします。
 五月十五日の神道政治連盟国会議員懇談会における森総理の発言についてのお尋ねでありますが、本発言につきましては、五月十七日及び本日の参議院本会議において森総理御自身が答弁で説明されたとおりであると承知しており、私としては、本発言につき、その答弁を踏まえた上で、問題ないものと考えております。(拍手)
   〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕

○国務大臣(宮澤喜一君) 我が国は、神の国ではなくて、国民主権の国と考えております。
 この点では、森首相も同じ御意見と思います。(拍手)
   〔国務大臣深谷隆司君登壇、拍手〕

○国務大臣(深谷隆司君) 総理の御発言についてのお尋ねでございますが、総理みずからその発言の趣旨について、主権在民、信教の自由を定めた日本国憲法に反する趣旨で述べたものではないとお答えになっておりますので、私もそれを正しく理解をしたいと思います。
 次に、化学物質に関するコントロールの重要性に対する認識いかんという御質問でございますが、化学物質は、産業分野のみならず、日常生活においてもさまざまな形で使用されている有用基礎資材であり、国民生活の利便及び質の向上に大きく貢献しているものと思います。
 循環型社会を構築する上で、このように広範に用いられている化学物質について、その生産から流通、消費、廃棄に至るまで適切に管理することが重要であると認識しています。
 このため、昨年七月に制定された法律に基づきまして、化学物質の性状に応じた事業者による化学物質の適切な管理の促進を図ってまいりたいと思っております。
 次に、化審法との関係についての御質問でありますが、循環型社会形成推進基本法案においては、公害の原因となる物質の排出の規制等の措置を講ずることとされております。
 一方、化審法においては、環境の汚染を防止するため、新規化学物質の製造、輸入に際する事前審査制度を設けるとともに、PCB等の有害化学物質の製造、輸入及び使用等について必要な規制を行っているところであります。
 両法律が相まって、化学物質の製造、輸入から使用を経て再資源化に至る過程において、有害化学物質による環境の保全上の支障を防止する措置が適切に実施されるものと考えております。(拍手)
    ─────────────

 

第147国会  参議院  国土・環境委員会  2000年5月18日

○福山哲郎君 おはようございます。民主党・新緑風会の福山でございます。よろしくお願いいたします。
 大臣、先ほど岡崎委員から、冒頭、森総理の神の国発言についての質問がありました。私も一つだけお伺いをしたいと思います。
 先ほど大臣が、神道政治連盟の場で申されたことだと、行政の場ではいかがなものかというような御発言をされたというふうに承ったんですが、場所によってはあの発言はいたし方なかったというような御認識なのかどうか、大臣、御答弁いただけますでしょうか。

○国務大臣(中山正暉君) どうも、私なんかも昭和七年生まれでございますので、アバンとアプレ、両方に足をかけておりまして、郷愁があるみたいなところがあるんですね。
 しかし、政治家は、政というのは、神と人の心の間をつる、祭りというのはそれが語源だと言われていますが、神様に近づいてもいけないし、人に近づき過ぎてもいけない。神様に聞かれても恥ずかしくないことを人のためにするというのが私は宗教だと思っておりますが、これは行政の場に持ち込んじゃいかぬと。
 政治家が神を信じているかどうか。だから、閣議の前に私は総理にも言ったんです。家の中にもおかみさんがいるだろうと、日本は山の神というのが一番大事な神様だということを最後につけ加えておけばよかったのになと言って、閣議が始まる前に、森総理と私は同期なものですから、若いときから、我、おれでやってきていますので、そういう私は言い方をしました。
 先生はお若いですから、また余計なことを申し上げて恐縮でございますが、明治維新に、余り一般の民衆は天皇のことを知らなかったようでございます。
 歴代天皇、今まで百二十五代の天皇がおられます。私は、昔、建国記念日をやるときに神社本庁三十五団体に呼ばれまして、何としても二月十一日に建国記念日をやるのならば、ここで神武天皇を言え、それから天皇陛下万歳をやれと言われましたので、私はそのとき言いました。神武天皇にはお父さんもおられたでしょうし、おじいさんもおられたから、神武天皇で切るわけにはいきませんと。
 大分県の国東半島から出た「ウエツフミ」の話を聞いたことがありますが、その「ウエツフミ」の中には、神武天皇以前の七十二代の天皇の名前が隠されているという話も聞いたことがございました。今から二千六百六十年前に橿原宮で神武天皇が即位されたということですが、確かにそれまでの先祖がいらっしゃるはずでございますから。
 しかし、やっぱり英国とかフランスに明治維新は影響されたようで、伊藤博文はドイツに憲法を習いに行っているようでございますが、そのとき、ウィッテに明治維新後の日本をどうして統一したらいいだろうということを相談しております。そうしたら、ドイツの人が、あなた方のところには氏神様というのがあるじゃないか、その氏神様の集中した中心が天皇だと言ったらどうだと。これが大きな間違いにつながった。
 つまり、明治憲法ができる四年前に内閣制度ができておりました。明治憲法の中には総理大臣という名前が一切ありません。今でも大臣と言いますが、大きな臣というのは天皇の臣ということになっておりました。ですから、首相という名前が明治憲法では一切出てきておりません。
 内閣が軍縮会議に影響を与えたときに、それは統帥権の干犯だと、こういう話につながったのは、明治憲法の欠陥は総理大臣という名前が憲法の中に一字も出てこなかった、首相という名前が一字も出てこなかった。これが現人神ということで、天皇陛下のために死ぬと、天皇陛下のためならば何で命が惜しかろうなんという歌にもつながってしまったと。私どもはああいう話を聞くと頭の中をそれがよぎるわけでございます。
 私は、そういう神道の方ばかり寄っていらっしゃるところで、そういう郷愁の発言がああいうことになって、森総理も多分反省しておられると思っております。ですから、何であの大東亜戦争につながったかということを考えるならば、先生のお答えに、私はそれを政治家として反省の材料にしなきゃいかぬと。
 私は、そういう意味で今度の発言は、政治家としての神様の存在というものを意識して、神様に聞かれても恥ずかしくないことをするのが政治だ、信仰というのは一人一人が持っていればいいわけでございまして、総理大臣にも信仰の自由はあると思いますが、それが行政の場としての総理大臣の場に入ってくるといろいろ問題があるんじゃないかなと、そんなふうに、御質問に対して答弁が長うございますが、これは御辛抱いただきたいと思います。
 そういう国会になったと思いますので、政治家としての考え方をはっきり言う時代が来たと思いますので、(「ここは法案を通すためなんですから短くしてください」と呼ぶ者あり)御指摘をいただきましたが、そういう意味で、御質問でございますので、これはお答えをさせていただきたいと思います。

○福山哲郎君 私もさらっといこうかなと思ったんですが、大臣が大変御丁寧にお答えいただいて、もうこれ以上余り大臣には御質問はしませんが、氏神が間違いのもとだったとおっしゃいましたが、それが森総理が逆に鎮守の森の話をずっとされたということもありますし、郷愁で物事を発言して、その郷愁でいいことも悪いこともあると思いますし、さらには、反省の材料にするべきだというお言葉もいただきまして、私はこれについてはもう結構でございます。
 なかなか私ら戦後世代にとってあの発言は衝撃的でございまして、私たちが生きてきた過程を逆に言うと否定されたような気もしておりまして、私は天皇に対して親しみを大変持っておりますけれども、やっぱりああいう表現で天皇を表現されると我々の世代は大変抵抗があって、逆に宮内庁も含めて困っているのではないかな、天皇との距離間について逆に国民が混乱するのではないかなというふうに率直に思っています。
 済みません。法案の審議に入りたいと思います。
 大深度の地下の利用につきましては、都市部で地上平面利用が限界に来ている以上、制度的に進めていくことに関しては反対するものではありません。また、人口の集中している都市部の住民にとっても有益な公共事業ならばそれは必要でございますし、我々もすべての公共事業がだめだと言っているわけではございませんので、この大深度の特別措置法についても基本的には評価をしているつもりでございます。
 ただ、いろんな形でこの大深度の地下利用についてはメリットという面がかなり強調されているような状況でございまして、先ほどからの委員の質問で大臣もかなり御答弁いただきましたけれども、まず今回提出された大深度地下使用法案の目的と意義について簡潔にお答えをいただけますでしょうか。

○国務大臣(中山正暉君) 今回の意義でございますが、我が国の大都市地域において社会資本を整備する場合には、土地利用の高度化それから複雑化が進んでおりますことから、事業によっては地上で実施することが困難を増す傾向にございます。一方、社会資本整備のための用地を取得するには地権者との交渉、合意を経て権利を取得することが基本であるが、その際に地権者と権利調整に要する時間が総じて大変長期化をいたしております。
 そういう傾向にありますので、権利調整の難航等のために効率的な事業の実施が困難となっております。それらの理由から大都市地域における社会資本整備に当たっては道路等の地下を利用することが多うございますので、道路のルートに従うために合理的なルートの設定が困難となる場合があります。道路の地下を中心に浅い地下の利用はふくそうしているところでございますから、公共の利益となる事業を実施する場合には、地上及び浅い地下に加えて、地権者等による通常の利用が行われない地下空間である大深度地下を、国民の権利義務に留意しつつ、円滑に利用するための制度を導入する必要が高まっているということでございます。
 本法案は、こうした状況を踏まえまして、地権者等による通常の利用が行われない空間であるという大深度地下の特性に応じた合理的な権利調整のルールを定めるものでございまして、大深度地下の適正かつ合理的な使用とともに、公共の利益となる事業の円滑な遂行を目的といたしております。
 以上でございます。

○福山哲郎君 先ほど大臣、細かく年次を追って流れを御説明いただいたのですが、少し私も申し上げますと、今から十二年前、一九八八年六月に閣議決定された総合土地対策要綱の中で、「大深度地下の公的利用に関する制度を創設するため、所要の法律案を次期通常国会に提出すべく準備を進める。」と書かれておられたということであって、一九八八年というとまさにバブルの絶頂でございまして、そのときに大深度地下の利用を閣議で決定された。
 それから十二年たちまして、今は逆に言うと不況の真っただ中で大変国民は苦しんでおるわけですが、そのときの大深度の地下の利用というのとは、恐らく意義も環境も変わっているのではないかなというふうに感じておりまして、十二年前に法案提出が検討された当時の状態と今とはどのように異なっているのか、またそれにもかかわらず今回出されたというのは、先ほどの意義で、権利調整の難航ということで、そのためにということはよくわかるんですが、そこら辺の時間の変遷についてどのようにお考えか、お答えいただけますでしょうか。

○国務大臣(中山正暉君) 今、大深度を使っておりますが、関西電力が地下七十メートルを使っております。私は大阪でございますので、梅田層というのは十二メートル、天満層というのは二十七メートル、淀川の堆積平野にできたところで軟弱な土地でございますから、その深度の問題というのはいろいろ問題があると思います。
 先般、神田川の下に通っておりますいわゆる放水路、神田川があふれましたときにどっと四十メートルぐらい下へおろして、東京都がやっております十二メートルの直径のものを見てまいりました。それから、新宿にございます東京電力の二十七万ボルトの高圧電力をこの大都市東京に送電するための施設を見ておりまして、私はこれは大変有効な利用が今でも行われているなと。ただし、それが道路沿いに敷設されておりますものですから長時間かかったものが、今度はそれがこういういわゆる投資対効果というものが問題になってきておりますときには非常に有効に、これは経費の節減にもなる、時間の短縮にもなるということでございます。
 昭和六十三年に閣議決定されました総合土地対策要綱においては、「大深度地下の公的利用に関する制度を創設するため、所要の法律案を次期通常国会に提出すべく準備を進める。」こととされておりまして、今回の法案提出までに十二年が経過してしまいました。今おっしゃるようにバブルが花盛りのころだったという感じでございますが、これはかえって土地に対する感覚というものがバブル崩壊の後私は国民の意識の中で変わってきたと。そういう有効な大深度を利用するのは、御指摘のような社会経済情勢には大きな変化がありましたから。我が国が大都市地域において社会資本を整備する場合には、土地利用の高度化それから複雑化が進んでいる等のことから、事業によっては地上で実施することが困難を増すような傾向にある、環境の問題その他いろいろございます。
 そういう意味で、大都市地域における社会資本整備に当たりましては、道路等の地下を利用することが多い現在の事情を考えますと、道路のルートに従う合理的なルート設定が困難になる場合がありまして、先ほど地下鉄もカーブが多いなんという話がございましたが、道路の地下を中心に浅い地下の利用はふくそうしておりますので、地権者による通常の利用が見込まれない空間ということで、大深度の特性に応じた合理的な権利調整のルールを定める必要性はむしろ高まっているところでございます。
 また、大深度地下利用に関する法制度について十年前に議論されておりましたときには、事業を所管する官庁や土地収用法を所管する官庁がそれぞれ別々に検討を行い、一つにまとまることがなかったという今までの時間の経過の中での問題がありました。
 今回、平成十年五月に取りまとめられた臨時大深度地下利用調査会の答申を踏まえまして、関係する十三省庁からなる大深度地下利用関係省庁連絡会議、これは内政審議室にあったのでございますが、と調整を行ったところ、土地所有権等の関係という基本的な問題に加えまして土地収用法や公物管理法との調整も整いましたので、使用権の設定は一元的に国土交通大臣が行うことで合意が得られました。
 法案を提出するに至りましたのは、来年の一月六日から国土交通省というものが発足をいたしますので非常に時宜を得たものと、私は閣法として提出を決断いたした次第でございます。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 では、次に伺いたいんですが、地権者との権利調整の合理化、それからバブルのときから土地利用についていろんな国民の認識も変わったということですが、現実にこの大深度地下を利用することで建設コストはどのようになるのでしょうか、お答えいただけますか。

○政府参考人(板倉英則君) 大深度地下施設を設置する際の建設コストについてのお尋ねでございますが、この法律によりましてルールをつくっていただければ合理的なルートの選定が事業者にとりまして可能となりますので、公共の利益となる事業の円滑な実施に資するという面と御指摘のコスト縮減にも大きく寄与することが期待されているわけでございます。
 具体的に申しますと、個別の事業によって異なりますが、大深度地下の場合、浅い地下と比べまして縦方向の掘削量は確かにふえますので、それはコスト増の要因になるわけでございますが、横方向のトンネルの掘削について見ますと、大深度地下というのは非常によりかたく引き締まった地層でございますので工法的に容易な面があるというようなこと、さらにA地点、B地点が最短距離で結ばれるというようなルート短縮効果も考慮いたしますと、私ども事業費全体として一割程度のコストダウンは可能ではないかというふうに考えているわけでございます。
 また、事業期間の短縮効果、さらに用地費が要らないという用地費の軽減効果も考慮すれば、さらにコストダウンが可能であるというふうに考えております。

○福山哲郎君 その一割縮減というのは衆議院でも御答弁をいただいているんですが、ただ、平成十年五月二十七日に出されました臨時大深度地下利用調査会の答申によりますと、コストはトンネル径、深さ、地盤条件により異なるが、先ほど言われた浅い地下と比べると微増から五割増し程度と、それから、今局長が言われました最短ルートの選定、短縮効果を考えると微減から四割増というふうに書かれているわけです。
 そういうふうに言われていまして、衆議院でも何回もお話としては事業費全体として一割程度のコストダウンというふうに言われているわけですけれども、現実に調査会の答申では微減から四割増とかなり幅のある表現をされておりまして、この違いはどういうことになるんでしょうか。

○政府参考人(板倉英則君) 私どもは答申後さらにコスト面での検討を進めてまいっておりまして、私どもが今現在この法律で想定いたしております超高圧送電線とか上下水道、そういったライフライン施設を中心に事業者からいろいろヒアリングをしてまいったわけでございます。
 それでわかりましたところは、コスト面で建設コストが若干下がっているということもございますし、答申後のその他のそういった要因もございまして精査して、工法の技術革新、シールドマシンが非常に進歩しているというようなこともございまして、工法的にはむしろ横方向についてはコストダウンが可能であるというようなことを聞いておりまして、事業によって多少異なるところはあるかと思いますが、総体として一割程度のコスト削減は可能であるというふうに考えているところでございます。

○福山哲郎君 ただ、地域の違いもありますよね。東京では一三%のコストを削減できるとなっていますが、大臣の地元である大阪では逆に四割以上、四四%もコストがふえるというような結果になっています。
 確かに、一割縮減というのが調査会の後のいろんな調査、工法等でというお話はわからないでもないのですが、ちょっとコスト削減を先ほど言われましたようにメリットとして挙げるにしてはこの一割縮減というのは余りにも大ざっぱな数字でして、余りにも根拠があいまいだというふうに思うんですが、そこはいかがですか。

○政府参考人(板倉英則君) 先ほど申しましたように、私ども身近な生活系のライフライン施設をつくっております事業者、電力会社等からいろいろヒアリングを続けておりまして、先ほど言いました工法の進展、それから最近の建設コストの低下の傾向等を総合的に勘案して考えますときに、確かに軟弱地盤とかいろんな地層によって工法に難易度が出てまいりますので一概には言えないわけでございますけれども、総体として見まして、先ほど来申し上げておりますように一割程度のコストダウンは可能であるというふうにお伺いしております。
 さらに、私どもコスト削減に向けましてはいろんな研究を重ねまして、それが本当に実際に実現するように努力してまいりたいというふうに思っております。

○福山哲郎君 ぜひ頑張っていただきたいと思います。
 次に、大深度地下の使用権を設定する手続の問題ですが、先ほどから委員の方々がかなり質問をされていますので詳しいプロセスはもう結構でございます。
 一つ、大深度地下における使用権設定で住民の参加する機会、先ほどからも出ました公聴会ということがあるんですが、この公聴会の開催は事業者の義務になるのでしょうか、それとも単に必要に応じて開催できるというふうになるのでしょうか、どちらでしょうか。

○政府参考人(板倉英則君) この公聴会の開催につきましては、必要に応じて開催することができるということでございますが、その必要に応じてという場合をどういう場合を想定しているかということを申しますと、既存物件等が多数存在するというようなことはあらかじめわかりますので、そういったような場合には公聴会を開催する。あるいは、非常に地形的に難しいようなところを通過するルート設定をせざるを得ないというようなときに所要の専門家を招致いたしまして公聴会を開催するというようなことが考えられるかと思います。

○福山哲郎君 では、すべての場合に公聴会が開催されるとは限らないわけですね。

○政府参考人(板倉英則君) さようでございます。

○福山哲郎君 それで本当に使用権をめぐっての住民参加の機会の保障ということになるのか。
 先ほど言われた既存のものがある場合に対してということになると、それは一体だれがどういうふうに公聴会を開催するかしないかの判断をするのかによって、逆に言うと恣意的な判断がされるとそこで住民が機会を得られないこともあるのではないか、それによって地権者が不利益を生じるようなこともあるのではないかと思うんですが、それはいかがでしょうか。

○政府参考人(板倉英則君) 地権者等を含めまして周辺住民にこの大深度地下施設の設置に当たりまして十分周知徹底を図っていく必要があるということはもう御指摘のとおりでございまして、先ほどからの御質疑の中でも、まず一つは、説明会を前広にさせていただくと。説明会につきましては、通常の場合必ず実施されることになるだろうと思います。そういった説明会、それからいろんな広報、チラシ等を通じて事業の中身を周辺の住民の方に十分承知していただく。そして、関係住民の方々から意見がある場合には提出できるような機会を十分とっていきたい。
 公聴会につきましては、収用法の例も同じような規定ぶりでございますけれども、先ほど申しましたように、既存物件等が非常に多数あるとか、あるいはそのルート設定上ちょっと通常と違う場合とか、そういったことが典型的には想定されるわけでございますが、必要に応じて開催するように私どもも指導してまいりたいと思っております。

○福山哲郎君 済みません、非常に単純な疑問をお話ししますので、お答えいただきたいんですが、例えば大深度地下に使用権を設定しようとしていると、地権者が、わしの地下に何らかのものが建てられるなんてかなわぬ、何を言ったってわしの土地なんや、四十メーターだろうが百メーターだろうが二十メーターだろうがわしは知らぬ、そんなもの気持ち悪い、嫌やと言ってあくまで反対をして使用権を認めへんぞと言っている場合にどのような対応が考えられるんでしょうか。

○政府参考人(板倉英則君) 今回大深度地下を定義するに当たりまして、深さでいいますと原則として四十メートル以下ということで一つの線を出させていただいているわけでございますが、これまでも地下四十メーター以下につきましては、使用貸借とか起工承諾とか御存じのとおりでございますが、というような形式によりまして無償で使用させていただく例が収用実務の実例あるいは用地買収の実例でも多うございます。
 したがいまして、経済的な面では御理解がかなりそういった実例の積み重ねの中でいただけるかと思いますが、今度はその感情の問題でございますけれども、これは今回御提案するようなルールを、これは確かに私権の制限にかかわることでございますので、施行前に十分な周知期間をとりまして、国民の皆様方に啓蒙活動を一生懸命させていただきまして、こういった社会生活上必要不可欠な施設のために皆様方の大深度地下を公共のために使わせていただきますが、どうぞよろしくということを啓蒙活動として十分やっていきたいというふうに考えております。

○福山哲郎君 ということは、啓蒙活動をしっかりやって説得をするということですね。それだといろんな人が嫌やと言い出すのと違うんかなと思うんですけれども、まあわかりました。
 では、次に補償の問題についてお伺いします。
 大深度地下利用においては補償すべき損失が発生しないという推定で基本的には制度設計がされていると思うんですが、発生すると想定される損害とはどのようなことを考えられているのか、簡単にお答えください。

○政府参考人(板倉英則君) 大深度地下施設を設置する場合に発生が予想される損失につきましては、大きく分けて二つあるかと思います。
 一つは、いわゆる既存物件と称されるものでございまして、大深度地下にわたる井戸とか、先ほど御議論のありました温泉とか、そういったものがございます場合には、これは土地収用法と同様に事前に補償手続をとっていただきまして、それの明け渡しを受けてから大深度地下施設をつくる。その場合、当然事前の補償が必要になります。
 それからもう一つは、そういった既存物件以外の土地そのものの、つまり大深度地下の使用のことでございますけれども、これは収用法の原則と異なりまして、個別に同意とかを得ることなく公法上の使用権の設定の手続を先行させていただきまして、実際に損失が生じたという場合には事後的に請求を待って補償する、こういうことをやっております。
 どういう場合に事後的に補償するのかという例につきましては、大深度地下利用を土地の所有者が考えていて、もう既に事前の準備をするために機械を購入していたとか、あるいは地下水の水質調査をしていたとか、そういうような準備行為にかかっていたというような場合が想定されるわけでございまして、それは実際に費用がかかっているわけでございますので、そういう場合には事後的に請求を待って補償をするという手続になろうかと思います。

○福山哲郎君 今の準備をしていて水質調査とかしている場合が事後というお話になりますが、現実には深いところを掘るわけですから、何年かたってそこの生態系が変わったとか水質が変わってしまったとか、そういうふうな事後的な損害みたいなことは想定されていないんでしょうか。

○政府参考人(板倉英則君) 今、福山先生の御指摘の点は、損失補償の場合と損害賠償の場合があろうかと思います。大深度地下施設が設置されることに伴いまして、ある種の井戸がれとか水質の悪化というようなことが仮にあった場合、これは民法の一般原則、七百九条とか工作物の設置責任というのがございます。御案内のとおりでございますが、一種の無過失責任で補償するという、それは損害賠償の世界で通則に従ってやっていただく、こういうことになろうかと思います。

○福山哲郎君 そうですよね。事後に損害が認められた場合、民法七百九条の不法行為責任の損害賠償でやると。そうすると、事後に何か損害が出てしまった場合に、地権者はその損害と大深度に建設されている施設との因果関係をみずから証明しなきゃいけなくなりますよね。大深度ですから、地下四十メートルで起こっているそれを証明すると。その蓋然性を証明するだけでもかなり困難を伴うと思われるのに、こういう大深度で起こったことを、一年というスキームですが、一年以降に出てきたものに関して民法七百九条の損害賠償の問題があるということは、地権者が協力をして地下を使わせてあげたのに、出てきた問題、それは一年ぽっきりで、先の話に関しては自分で四十メーターのことについてある意味でいうと証明責任があると。
 これは地権者にとってかなり不利なんじゃないかと僕は思うんですけれども、そこはいかがですか。

○政府参考人(板倉英則君) 確かに御指摘のとおり、例えばある地下水脈がはっきりわかっていてそこを大深度地下施設が仮に通るというような場合に井戸がれ等が予想されるというような一つの典型例で申しますと、そういった場合は、地下水の調査を通じまして私ども、事業者に対しては、いわゆる賠償ということでございますけれども、事前に賠償をするように指導することも可能でございますし、そういった対策は協議会等でも関係省庁が入る中で事前に前広にやっていただくような指導も可能でございます。
 それからもう一つは、事後的に七百九条に基づいて損害賠償をするときにも、これまでの裁判実例でございますと、起こった損害と行為との関係につきましては、因果関係の蓋然性を確定できるような明確なある種の蓋然性が認められれば、挙証責任を事実上転換いたしまして工作物設置者の方に責任を負わせるというような裁判実例の積み重ねもございまして、そういったことで今のような御指摘の点は救済が可能であろうと思っております。

○福山哲郎君 ということは、一方的に判例上は地権者が挙証責任を負うというわけではないということですね。それは少し安心をいたしました。
 それから、例えばJRのトンネルのコンクリート落下事故などが起こっているわけですが、大深度の地下に対する安全性、建造物の質の低下が年月を経れば当然起こるわけでして、それがさらにいろんな副作用として出てくるような状況もあると思いますし、四十メートルですから何が起こっているかわからなくて、それが将来的にそこの住民や地権者にとって不利益になる、もしくは健康、生態系上の問題になるようなことも十分想定されているんですが、この建造物の質の低下、四十メーターに対しての安全性やそういったものについての基準についてはどのように今確保される御予定でしょうか。

○政府参考人(板倉英則君) 地上の建築物の荷重との関係で大深度地下構造物が十分な強度と耐性を持つように設計されなければならない、それは政令で基準をきちっと書きたいと思いますし、またその設計の指針になるようなことは現在技術検討委員会で細部を検討いたしておりますので、その中で明らかにさせていただきたいと思っております。

○福山哲郎君 冒頭申し上げましたように、基本的には大深度地下利用に関しては必要性は認めます。しかし、この法律の持つ意味合いというのは非常に大きくて、事が地下四十メーターの話でございますから、我々が直接それにしっかりと、因果関係が出てくるまではっきりしないということで、その間にいろんな問題が出てくることをやっぱり懸念しておかなければいけませんので、地権者の損害に対するフォローも含めて、そこは十分慎重に運用していただきますことをお願い申し上げまして、質問を終わります。
 ありがとうございました。

 

第147国会  参議院  国土・環境委員会  2000年5月11日

○福山哲郎君 民主党・新緑風会の福山哲郎でございます。
 本日も九日に引き続きまして質問をさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 先ほど緒方委員、また今も大臣からお話がありましたように、午前中の参考人の質疑が大変充実しておりまして、私も大変勉強になった午前中でございます。ところが大変勉強になったのはいいんですが、きょう伺おうと思っていたことをほとんど参考人の方が言われて、答えまで言われて帰られた。こういうことを申し上げると大変いけないんですが、先日局長さんとかから返ってきた答えよりもずっと明快に答えておられまして、困っちゃったなというふうに思っております。私も質問する回数は多いんですが、こんなに困っている質問は初めてでございまして、それだけ参考人の質疑が充実していたということで、いろいろ重複する質問もあると思いますが、お許しをいただきたいと思います。
 ちょっと都計法から離れて、大臣は先日も言っておられましたけれども、ドイツに行かれて美しい町並みを見て大変うらやましく思ったというふうに述べておられます。私もフライブルクという環境では有名な都市と、首都でありましたボンを訪れたことがありまして、大変町並みがきれいですし、いわゆるパークアンドライドですか、周辺に駐車場があって町に車が入ってこれないようになっていて、そこが非常にショッピングも含めて栄えていたり、教会がありまして、そこがドイツの人に言わせると、我々の町のシンボルの教会であると。その教会の聖堂の高さに合わせるようにみんな屋根の高さを決めているからこれだけ一様な屋根の高さで、なおかつ色もある程度教会の聖堂と同系色で町をつくっているからこれだけ整然としているんですというような説明を市の方から伺って、私などは、この間も申し上げましたけれども京都でございますから、中心にお寺とかがあって町並みをどうするかというのが大変課題でございまして、ああいいなドイツはと思って、大臣と同じ感想を持ってきたわけです。
 もう一度、ではドイツの一体どういう政策的なものとか、ドイツの政治の考え方、建設行政の考え方などでどのように大臣が参考にされている、もしくはどんな感想を持たれたか、もう一度お聞かせいただければと思います。

○国務大臣(中山正暉君) えらいことを覚えておいていただいておりまして、恐縮でございます。
 確かに、私も四十三日間ぐらいハンブルクからずっとラインガイドを下りましてオランダの方へ出て、それから今度はマインツへ出て、マインツから今度は列車に乗ってヨーロッパ四十三日間、先生ぐらいの年齢のときに行ったことがございます。
 それで、その町々へ行きますと、土曜日、日曜日なんかには観光客のために昔の衣装を着て出ることまで条例で決めていましたり、ケルンにはケルンドームというのがあります。六百年かかって教会をつくっております。六百年かかるためには、しっくいの技術とかステンドグラスの技術とか、それからいろんな石積みの技術、それをつくるためにロッジというのをつくって、日本でライオンズクラブとかロータリークラブが一業種一人というのはあの伝統を守っているのだそうです。ですから、ロッジとよくライオンズクラブで、ロータリークラブのロッジと言いますが、そこに一業種一人だけメンバーに加えるというのは、その伝統が狂わないようにと。
 これは、もうケルンドームなんというのは六百年かかってつくっている。あれは、キリストが生まれたときに三聖人が東方から行って、これは聖者だということを決めた人がお祭りしてある。しかし、ドイツを爆撃するときにはケルンドームをシンボルにして、あれはつぶさないようにして周りを、爆撃のシンボルにした。
 いろんな悲劇とか、いろんなヨーロッパの歴史を見ておりますと、ライン川というのは、北から蛮族が入ってくるのをとめる。だから、ライン川の両側にはお城がずっと建って、北から蛮人が入ってくるのをどうとめるかという、そういう平たんなヨーロッパ。ポーランドなんというのは、ポーリアというのは平たなところというふうな意味で、平たなところというのがポーランドという意味だそうでございますから、そういうところにどんどん外敵が入ってくるのを、いかに城郭を築いてその中に町づくりをするか。それには大変な私は強制力があったと思うんです。どこに何をつくっちゃいかぬとか、こうしろああしろと。
 日本は島国でございますから、日本が外国から侵略をされたことがないのは百万の軍隊に海が匹敵しているということもありますから、そういう町の中核として城をつくったというのと、その違いかなと。それから、平たんで川も急流ではない。まるでとうとうと流れる川といいますか、日本の川みたいにしゃっと浅くて岩の間を水しぶきを立てながら流れていく川と違って、その意味での差が、やっぱり自分の本当の都市国家としての地域地域をつくり上げた。それが我々から見たら、全くエキゾチックに見えてうらやましいと思うもとなのかなというふうに考えております。
 AIPHという国際造園家協会がありますが、国際造園家協会なんかでも、いわゆる城の庭づくり、教会の庭づくり、それから大地主の庭づくり、庭づくりの伝統というのを守ったのがAIPHという国際造園家協会だと。そういうヨーロッパ同士の暗黙の、何かそういう都市づくりみたいなもののすばらしいルールがあるみたいで、そこにそれぞれワインのお祭りとか、いろいろな伝統のお祭りが絡み合って落ちついた現代のEUに発展していく。ローマ帝国の私は再現だと思っております、あれは。三億五千万のアメリカより大きな国家ができる。
 そのときに、今ボンというのは十万人しか人口をふやしちゃいかぬ、ここは首都ではない、首都はベルリンだという、その根性が、ボンという田舎の小さな町に首都を移したドイツ人の気概みたいなものがあります。それを今度はベルリンに変えるわけですが、ベルリンは僕は首都にならないと思っております。国際都市としてベルギーのブラッセルが私はEUの首都になると、こう見ていますけれども、その意味での、私は新しい都市国家がそれぞれ統合したEUという大国家に対する期待みたいなものも、アジアからの人間として、いわゆるヨーロッパ的な町づくり、それに今度はアジアの日本の伝統を守りながらどんなふうに町をつくっていくかということが日本にこれから課せられた、そして向こうから見て今度は日本がエキゾチックに見えるように。
 アジアへ行ったら日本は中国と違うんだなと。人によっては日本と中国と韓国と見分けがつかないような、ヨーロッパの人から見るとそう見えるようでございます。アメリカ映画なんかを見ましても、すぐに最初の場面でバーンとどらが鳴ったりして、ああ中国と間違っているなという気がしますので。勝手に演説をして申しわけございません。さっき緒方先生が演説してくださったので余り答弁しなかったものですから。
 先生みたいなお若い方に私は期待をしておりますので、どうぞひとついろんな意味で、京都御出身の日本の歴史と伝統。私はこの間の予算委員会でも申しましたが、戦後は戦争反省の時代、わだつみの時代、その次が経済繁栄の時代、今落ちついて伝統見直しの時代、それから新しい国家目標を見つける時代が私は先生の使命だと思っておりますから、どうぞひとつ、そういう意味ではよろしくお願いします。

○福山哲郎君 御期待までいただいたので、もう質問を終わらなければいけないかなと思いながら、大変御丁寧にお答えいただきましてありがとうございます。私が質問に困っているというふうに申し上げたので、かえってお気遣いをいただいて御答弁をいただいたというふうに大変感謝をいたしております。
 ケルンの制度は本当にそうですね。私もあのとき行ってもうぶったまげて、六百年かかって一つのものをつくるという時間のタームで都市がつくられている。それを納得している市民がいる。では職人さんは全部引き継ぎがあるわけですねと言ったら今大臣がおっしゃったようなことを御説明いただいて、本当に時間の感覚が日本とは違うなと。やはりヨーロッパはストックの文明だと言われておりまして、日本ももともとはストックの文明のところだったはずなんですが、だんだんフローでスクラップ・アンド・ビルドというような話になってまいりまして、やっぱりそこはきちっと今大臣が言われたように残すものは残すというような形をつくっていかなければいけないなと私も思っております。
 それで、きょうは二問だけ。運輸省さんにも来ていただいたんですが、ドイツには路面電車が走っておりまして、ライトレールと言われる最新型の電車で、約三十都市ドイツでは走っています。これはもちろんフライブルクでもボンでも走っておるんですが、このライトレールというのは、温暖化や大気汚染など環境問題が出てきて、CO2や大気汚染物質を出さないクリーンな交通手段として大変今注目をされているんです。
 もう一つありまして、この間交通バリアフリー法案というのが運輸省さんの御努力で、こちらはまだこれからですけれども、法案ができているわけですが、道路に路面電車を走らせるわけですから要は高齢者とか障害者にとって大変利用しやすい状態でございますし、駅にエレベーターやエスカレーターをわざわざ設置する必要もないということで、財政難に悩む地方自治体にとっては道路にある程度ライトレールを走らせるということは非常に簡便なわけです。おりてすぐそのまま町の中に入れる。
 これは実は、この都市計画法で何回も各委員の先生が問題にされた、いわゆる郊外にいろんなものが出ていってしまって、市街地にいるお年寄りがほとんど、さっきの参考人の話にもありましたけれども、お年寄りが古くからのコミュニティーを守っているけれども現実にはそこがどんどん寂れていってしまうという状況の中の移動の手段とかいうことも含めてライトレールというのは少し注目してもいいかなと。熊本とか広島では熱心に自治体が取り組まれているようなことがあるわけですが、このライトレールについて政府はどのように評価をしているのかということについて、運輸省さんに来ていただいていますので、御説明いただければと思います。

○政府参考人(安富正文君) お答えいたします。
 先ほど先生の方からも御指摘がありましたように、ライトレールトランジット、これはエネルギーあるいは環境問題ということが非常に世間的に関心を集めておるわけですけれども、そういう観点からしましても、いわゆる都市内の交通として非常に有意性を持った乗り物であると我々は考えております。特に、先ほどの指摘にもありましたが、高齢者あるいは身体障害者といったようなバリアフリーという観点から見ましても非常に利用しやすい、特に最近では低床式の車両というものが開発されてきておりますので、そういうLRTの開発導入ということを考えますと、今後非常に見直されてくるんではないかと我々も非常に期待しているところでございます。
 しかしながら、実は我が国でも路面電車というのは昔は六十五都市八十二事業者が実際に走っていたわけですが、残念なことに現在においては二十都市二十事業者というふうになってきております。これは、いわゆる自動車交通との関係がございまして、自動車交通の問題によって路面電車が外されてきたという歴史を持っております。
 そういう意味で、この路面電車の導入拡充を進めるためには、既に自動車が普及している市街地において、この道路の中でどういう導入空間を確保していくかということが不可欠になってまいります。このためには、当然地域における町づくりといいますか、そういう取り組みの中でこのライトレールトランジットをどう組み込んでいくのか、車優先の町づくりというものを軌道修正してこのライトレールを生かした町づくりというものをどう形成していくかということが非常に重要ではないかと考えております。
 そういう意味で、運輸省としてもこのような地域の取り組みが少しでも円滑に進みますように、特に低床式の車両、LRTの導入に対しては助成措置を講じておりますが、この助成措置を効果的に活用しながら今後建設省とも十分に連携を図って路面電車事業の活性化を支援してまいりたいというふうに考えておるところでございます。

○福山哲郎君 私は、路面電車について別に、どうしてもこれを導入していかなければ我が国の町づくりや都市がうまくいかないというような議論をする気は毛頭ございませんし、先ほど言われましたように自動車の普及ということがあるわけですけれども、ただ自動車が障害を持った方やこれからふえていくお年寄りの町中の移動に対して本当に適切なのかどうかということも含めて、人口密集地域で車がたくさんあるところでこの路面電車を入れるのがどうかは別問題として、いろんな形でひとつ柔軟性を持って選択肢としては考えられるのではないかなというふうに思っています。
 ただ、そこで一つ気になることがありまして、この路面電車やライトレールというのは軌道法という法律で定めてあるんですが、これは何と大正十年にできているんですね。大正十年ではるか昔にできているんですが、その法律に基づいて軌道運転規則というのが定められている。それを見ますと、車両を連結して運転するときは全長が三十メートル以内でなければならないというふうに、三十メートル以内というふうに書かれているんですけれども、それは路面電車が自動車交通の妨げになるからという理由なんですが、それはよくわかるんです。最高速度四十キロ、平均速度三十キロなんですね。
 しかし、山手線の車両は通常一両が二十メーターなわけです。山手線というのは一両は二十メーターなのに、最新式のライトレールでも今だと山手線一・五両分ぐらいしか走らせられないわけです。これはやっぱりさすがにちょっと、人口もふえていますしいいのかなということもあって、一つだけ、これはいろんな規則のただし書きの運用を解釈していろいろなところで数字の変化は起こっているんですけれども、この辺の規則の妥当性、それから今後の必要性みたいなことを先ほどちょっと評価されるような御答弁をいただきましたので、評価をされるということはこの辺についても何かお考えがあるのかどうか、お知らせをいただければと思います。

○政府参考人(安富正文君) お答えいたします。
 先生御指摘のように、現在、軌道法に基づきまして軌道運転規則に規定しております併用軌道における連結車両の長さというのは三十メートルということで規制されております。それから、運転速度についても時速四十キロメートルという規制がございます。これは、先生の方からもお話がありましたように、いわゆる路面電車が他の道路交通と競合するということから、道路交通上の安全性を確保するという観点から定められているものでございます。ただ、道路以外の場所、いわゆる占用といいますか新設の軌道につきましては、これらの制限を受けることはございません。
 しかしながら、道路上に併設される場合にはこういう制限を受けるわけでございますが、ただこの規定の中にも特別の事由がある場合には、その線区の道路状況あるいは交通量等を勘案して、軌道運転規則の定めによらないことを許可する取り扱いというのができる形になっておりますので、まだ少のうございますが、現にそういう特別な許可をした例もございます。
 したがいまして、いわゆる最新型の路面電車であるライトレールというものが実際に導入される場合には、我々としても現行の軌道運転規則を適切に運用するという形で何とか対応できるような措置がとれるのではないかというふうに考えているところでございます。

○福山哲郎君 わかりました。積極的にいろいろ考えておられるみたいなので、具体的な話とかはまたお伺いをしたいと思います。運輸省さんはこれで結構でございます。どうもありがとうございました。
 都市計画行政に戻りたいと思います。
 先ほどから出てきています市町村のマスタープランと都道府県のマスタープランの整合性等についての議論が、はっきり申し上げて先ほどから出ていますように参考人の方の思いがほぼ同じようなベクトルだったということもあるので、そこについてだけもうしばらくしつこいようですが伺っていきたいというふうに思います。
 現実には、この都計法の改正につきまして、やはり地方分権ということをかなり念頭に置いた上で改正をされているように思っているんですが、大臣、そこのところはもう一度確認をさせていただいてよろしいでしょうか。

○国務大臣(中山正暉君) 当然そういう時代の風潮といいますか、いわゆる地方分権で中央省庁も一府十二省という形になるわけでございますし、そういう日本の地方分権的な民主主義も育ってきた。地方自治制度というものに戸惑いがだんだんなくなってきて、私は地方の個性を尊重する時代が来たというような意味で受け取っておりまして、国、地方公共団体それから民間事業者、地域住民など町づくりにかかわるさまざまな主体が緊密に連携を講じながら取り組んでいくべきものでございますけれども、中でも地方公共団体とか、特に住民に最も近い市町村が中心的な主体となるべき時代の風潮を私は先取りしたものだと思っております。
 こんな考え方の中で、既に施行済みの地方分権に係る都市計画法、これは平成十年、十二年と改正を二回にわたってやっておりますけれども、都市計画の決定等に係る事務を地方公共団体の自治事務とし、また従来都道府県が定めることとされていました用途地域や市街地開発事業等の一部を市町村が定めることとするなど、市町村の都市計画決定権限は大幅に拡充をされたものと思っております。地方分権による改正の前後で、都市計画決定の件数に占める市町村の役割は約六割から約四分の三に増加をした、七五%になったという認識でございます。
 今回の改正におきまして、この考え方を踏まえながら、新たに創設する特定用途制限地域に関する都市計画及び準都市計画区域について定められる都市計画はすべて市町村決定としているところでございまして、さらに従来すべての都道府県決定であった風致地区に関しましても、小規模なものについては市町村がきめ細かな規制を行えるよう必要な措置を講じようとするものでございます。また、都道府県が定める都市計画に対しましても、住民に最も近い市町村の意向がより反映されるように、今回の改正によりまして市町村からの案の申し出ができることとするものとする。
 それからまた、今回の改正は、地方公共団体が主体となって地域ごとの課題に的確に対応し得るものとなるように、都市計画の現場において必要な都市計画が柔軟に決定し得る透明性の高い制度を目指して現行制度を大幅にそういう意味で見直したものでございまして、地方分権の実が上がることに私どもは大きな期待を寄せての改正案と考えております。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 そこで、しつこいようなんですが、都道府県のマスタープランに即して市町村のマスタープランを、案の申し出はできるというような話がありますが、この間、同僚の佐藤先生への御答弁の中では、即して市町村のマスタープランをつくるというようなことを局長は御答弁いただいたんですが、その即するというのはどういうことなんでしょうか。

○政府参考人(山本正堯君) 都道府県の都市計画区域のマスタープランは、都道府県の都市計画区域全体についての線引きをするかどうかといったような是非でありますとかその都市計画区域についての将来の姿、あるいはその都市計画区域の中におきます都市計画あるいは市街地事業、土地利用規制等々についての基本的な方針を書くということでございます。
 それに対しまして、今一方で先生おっしゃいましたように市町村のマスタープラン、これは平成四年に制定されたわけでございますが、市町村マスタープランは原則市町村が決定する都市計画に関する基本的な考え方について書く、市町村の区域についての将来像等についてもこういうところで書く、こういうことでございます。したがいまして、一市町村がつくります市町村マスタープランにつきましては、都道府県都市計画区域、広い都市計画区域のマスタープランと十分整合性を保ち、その中で市町村のマスタープランはそれに適合するように、整合性があるようにつくっていく、こういうことでございます。
 したがいまして、都市計画区域のマスタープランで都市計画区域全体の基本的な土地利用のあり方でありますとか都市計画区域の用途地域でありますとか、そういったような点についての基本的な方針を書いてあるわけでございますが、それに適合した市町村のマスタープランの中身が必要である、こういうことでございます。

○福山哲郎君 既にマスタープランを作成している市町村というのはどのぐらいありますか。

○政府参考人(山本正堯君) 平成四年から大体五十から百、ずっとやってまいりまして、今順次やっております。
 全体で六百八市町村が市町村のマスタープランを今策定済みでございます。

○福山哲郎君 先ほどの参考人も言われていましたけれども、一生懸命市町村のマスタープランをつくっているところがあって、間違いなくその市町村の能力というかマスタープランをつくる力というのは上がっていて努力をしているというような話がありましたが、このもうできている六百八のマスタープランと新たな都市計画区域についてのマスタープランということに対する整合性はどうなるんでしょうか。

○政府参考人(山本正堯君) ただいま申し上げましたように、既存の市町村マスタープランは六百八あるわけでございますが、今回の都道府県のマスタープランを定める際には、都市計画として都道府県マスタープランを定めるということでございます。したがいまして、都市計画手続の中で必ず関係市町村の意見を聞く、こういう手続が必要になってございます。
 そういう点で、市町村は、市町村マスタープランとの整合性の観点から、自分がつくりました市町村マスタープランの中身について都道府県マスタープランの策定に当たって都道府県に対して意見を述べる中で、自分がつくった市町村マスタープランについて都道府県マスタープランに十分反映させることが可能であるということであります。
 また、今回の改正によりまして、都道府県が定める都市計画の案の内容となるべき事項につきまして市町村が申し出をすることができる、都道府県の都市計画の案に対して市町村から申し出ることができる、こういう規定を入れさせていただいておりますが、そういう点からも都道府県マスタープランについても、必要に応じて市町村が市町村マスタープランの内容を踏まえてその案の申し出を行うことになるということでございます。したがいまして、その内容を踏まえて、都道府県はその市町村の意向をできる限り尊重して都道府県マスタープランを定める、こういう格好になろうかと思います。

○福山哲郎君 少し具体的な話をします。
 都道府県が都市計画区域としなかった、つまり一定の開発を認めた土地について当該市町村がやっぱりそこは規制してほしいと。例えば、保全をしたいと思ってみずからのマスタープランの中に今回のメニューで加わった準都市区域に指定し開発を厳しく規制するということは、都道府県が都市計画区域としなかったところに対して、市町村がやっぱりそこは規制をしていきたいので準都市区域に指定をしていきたいというようなことは可能なんでしょうか。

○政府参考人(山本正堯君) 今申し上げましたように、都市計画法上、市町村マスタープランは都道府県が定める都市計画マスタープランに即して定めなきゃいかぬ、こういう格好になってございます。都道府県のマスタープランを定める際は、また都市計画手続の中で、先ほど申しましたように必ず関係市町村の意見を聞くということ、その場合に、先ほども申しましたように市町村は都道府県に対して案の申し出をできるという格好になってございます。
 今具体的な例をお示しになりました準都市計画区域、これは市町村が定めるものでございますが、市町村がそういうことを定めたい、こういうことでございますと、市町村が都道府県マスタープランに、そういう格好がつくられるとき、あるいはそういうときについては意見を言うということで整合性が保たれる。
 あるいはまた、今申し上げましたように、市町村マスタープランは都道府県マスタープランに即してつくらなきゃいかぬ、こういうことになっておりますので、そこのところについては整合性が図られる必要がある、こういうことでございます。

○福山哲郎君 だから、簡単な話、意見を言うこともわかりますし、都道府県マスタープランに即して市町村マスタープランをつくらなきゃいけないのはわかるんですが、例えば都道府県が都市計画区域としなかったところについてある市町村が、いやそこは準都市計画区域にしてほしいんだ、規制をしたいんだといって意見を申し出たときには、その市町村はそこを準都市計画区域に指定を現実にできるのかということです。

○政府参考人(山本正堯君) 大変失礼いたしました。
 準都市計画区域は都市計画区域の外について定めるということになってございます。したがいまして、準都市計画区域につきましては、今も言われておりますマスタープランとの整合性の問題は出てこない、こういうことでございます。

○福山哲郎君 ただ、都道府県の意見をそれでも聞かなきゃいけないんですよね。

○政府参考人(山本正堯君) 準都市計画区域につきましては市町村が決められるわけでございますが、準都市計画区域につきましては都市計画でございますので、市町村の都市計画につきましては都道府県の同意つき協議がかかっております。
 したがいまして、準都市計画区域につきましては都道府県の同意が必要である、こういうことでございます。

○福山哲郎君 ということは、やっぱり都道府県の同意が要るわけでしょう。要は、都市計画区域からは外れたところであっても、市町村がいや私のところはそこは準都市計画区域にしたいんですよといった場合には、都道府県の同意が要るんですよね。

○政府参考人(山本正堯君) 先生今御指摘のとおりでございます。
 準都市計画区域の中について、開発許可でありますとか、あるいは建物が建つときの建築確認とか、そういう点が準都市計画区域の中でいろんな開発行為が行われるときには必要でございます。そういう点から見まして、市町村の都市計画につきまして都道府県の同意が要る、こういうことでございます。

○福山哲郎君 都道府県が反対したらどうなるんですか。同意しなかったらどうなるんですか。

○政府参考人(山本正堯君) 一般論でございますが、市町村が行います都市計画について、都道府県が同意つきの協議をやるわけでございますので、一般的にはそこは調整が図られるというふうに考えております。
 先生がおっしゃるような反対したということは基本的には都市計画決定のときにはない、十分調整が図られるというふうに思っております。

○福山哲郎君 十分調整が図られるということは、最終的には市町村は準都市計画区域に指定ができるということをおっしゃられているんですか。

○政府参考人(山本正堯君) 基本的には市町村が行う都市計画でございますので、これにつきましては市町村が即地的に第一義的には意向が尊重されるということであろうかと思います。
 したがいまして、準都市計画区域を市町村が決めるに当たりましては、基本的には今も言われましたように準都市計画区域が決められる、尊重される、こういうことであろうかと思います。

○福山哲郎君 そうすると、市町村が最終的にそれで指定ができるんだったら、都道府県マスタープランに即して市町村のマスタープランをつくる、即するということに対してどうなるのかよくわからないんです。
 だって、都道府県マスタープランに即して市町村のマスタープランはつくれと言われているんですが、今の話だと、最終的には市町村の言うとおりに調整するということは、最終的には市町村の判断で指定できるとおっしゃられたわけですから、それはなぜそういう結果になるんでしょうか。

○政府参考人(山本正堯君) 先ほどから申し上げておりますように、準都市計画区域につきましては、都市計画区域外で行われる行為、区域指定でございます。したがいまして、都市計画マスタープランの中とは関係ございませんということでございます。

○福山哲郎君 要は、もともとの都道府県のマスタープランの中からは外れているということでしょう。
 それだったら、何で同意づきが要るんですか。

○政府参考人(山本正堯君) 先ほどもちょっと御説明がまずかったかと思いますが、準都市計画区域につきましては都市計画区域の中からは外れているわけでございますが、準都市計画区域の中のいろんな建築行為あるいは開発行為につきましては、建築確認とか開発許可とか、そういうことが必要でございます。建築確認とか開発許可という事務は、基本は都道府県の事務でございます。
 したがいまして、準都市計画区域を定めること自体は都市計画外であり市町村が定められるんですが、建築確認とか開発許可、そこで行われるそういうようなものについては都道府県の事務でございますので、市町村は都道府県の同意つき協議が必要だ、こういうことでございます。

○福山哲郎君 では、もう一つお伺いします。
 産廃施設を例えば自分のところにはつくりたくないと思っている市町村があったとします。そうしたら、自分のところの土地を特定用途制限地域に指定して、産廃施設の建設を規制することは可能ですか。

○政府参考人(山本正堯君) 産廃施設といいますのは都市に必要な施設でございます。そういうところで特定用途制限地域等をかけられるかどうかといったような点でございますけれども、線引きを廃止した場合には特定用途制限地域を必要に応じてかけられるということでございますが、これは市街化調整区域であった区域の環境の悪化を防止するといったような、良好な環境を確保するといったような観点から創設されたものでございまして、都市に必要な施設を都市全域から排除するといったような制度の趣旨ではないということでございます。
 仮に、市町村が特定用途制限地域によって都市において必要な施設の立地を制限しよう、産廃施設等について立地を制限しようというようなことがありましても、都道府県知事が公益的観点からそれを不適切、不適当と判断すれば、その同意を与えないことによって都市計画は決定できないということになるわけでございます。このため、産廃施設など都市において必ず必要な施設が都市全域で排除されるといったようなことはあり得ないというふうに思っております。
 先生がおっしゃいますような都市にとって本来必要な施設につきましては、廃棄物行政等々とも関連をとりながら積極的に都市計画決定をしていく必要がある、そういうふうに国としても地方公共団体に対して技術的な助言等々を積極的に行っていく必要があると、こういうふうに考えております。

○福山哲郎君 ということは、迷惑施設が必要なことがあるから、市町村としては、それを目的として特定用途制限をする場合に都道府県が同意を与えない場合があるということですね。市町村のマスタープランをつくる際に、同意を与えないということがあるということですね。

○政府参考人(山本正堯君) マスタープランとの関係ということではございませんが、今申し上げておりますのは、例えば特定用途制限地域をかけた場合に、その特定用途制限ということで迷惑施設を産廃ということで排除できるか、こういうことでございます。
 マスタープランとの関係で申し上げますと、今申し上げましたように廃棄物施設等については都市として非常に必要な施設である、都市計画決定も積極的にやっていくべきであるというようなことでございますので、そういう施設については今後積極的に都市計画の中で位置づけ、そういうことの整備を図るべきだといったような基本的な方針をマスタープランの中には書き得るということであろうかと思います。それに基づいてといいますか、それの基本方針を踏まえて、今申し上げましたように産業廃棄物処理施設について積極的に都市計画決定をする、あるいはまた特定用途制限地域から排除するようなことはない、こういうことで整理させていただいております。

○福山哲郎君 そうすると、そこは都道府県の判断だということですね。ちょっと具体的な話をさせていただきます。
 一九七〇年代、古い話で恐縮なんですが、栃木県で準工業地域指定をめぐる市と県の争いというのがあって、市がある地域に対して準工業地域指定を望んだのに対して、県は住居地域指定を提案して対立したということがありました。市町村と都道府県の方針が対立したと。それで、結果としては、市側の要望が通って準工業地域に指定されたわけです。これは、県側の住居地域指定が負けたというか、おりたわけです。つまり、広域的な見地から県は住居地域指定にしようと思ったんですが、市は準工業地域を指定したと。この一九七〇年のこの二つの対立、この事件については建設省はどのようにお考えですか。

○政府参考人(山本正堯君) 今の具体的な点について、十分承知しているわけではございません。
 基本的な考え方でございますが、栃木県の今御指摘の準工業地域、これは市が決める用途地域だと思います。そのときに、県と市が対立していたといいますか、異なった意見になっていたということでございます。それと、そのときには県がいろんな都市施設でありますとか、あるいはいろんな土地利用についての規制を県として決める都市計画がございます。それと、今申し上げました市が決める用途地域との調整ということになろうかと思います。
 そのときに、市が決める用途地域は市が権限を持っているわけでございますから、基本的には市の方が尊重されるということになろうかと思いますが、ただ、具体的なケースのときに、どういう場合にどういう立場でどういう状況の中で県が住居専用地域を主張していたのかというところについて具体的に承知をいたしておりませんが、基本的には今申し上げたような整理をさせていただく必要があるということだと思っております。

○福山哲郎君 今ので言うと、市側のが尊重されるんだというふうに言われたんですね。

○政府参考人(山本正堯君) 今申し上げましたように、基本的には県と市の調整の問題でございます。
 もう少し一般論で申し上げますと、市の方は、市が具体的にその地域について決める都市計画、それの利害の中で決めるということでございます。県が決めるのは、広域的な観点、広域的な利害を有する観点から決める、こういうことでございます。一般論としてはそういうような観点からそれぞれの立場で調整を図ると、こういうことであろうというふうに考えております。

○福山哲郎君 要は、この場合には県側の広域的な観点が優先されなかったというふうに判断していいわけですか、調整の結果。

○政府参考人(山本正堯君) 具体的な理由につきましては詳細に承知しておりませんが、今先生がおっしゃったような方向での判断だったというふうに思っております。

○福山哲郎君 別に重箱の隅をつつく気はないんですが、要は、このような市と県が別々のときのようなことが今回の制度設計では起こるのではないかなということを危惧しているわけです。
 この栃木のときには、地域住民は大変抗議をしたわけです。そうすると、市は県が決定したことですと言って言い逃れまして、県は県で市の要望だから県としては手がありませんと言って両者とも意思決定の責任をある意味でいうと回避した。住民は市の決めた準工業地域に指定したことに対して裁判にまで持ち込んだんですが、結局勝てなかったわけです。
   〔委員長退席、理事市川一朗君着席〕
 私は、市が準工業地域に指定したことが正しいとか正しくないとかいう判断をしていることが言いたいわけではありません。それはそれでよしなんですが、今のような状態が起こるようなことというのは、今回の制度設計上可能性はどうなんでしょうか、局長。ないと言えるんでしょうか。

○政府参考人(山本正堯君) 先ほども申し上げましたように、市と県がそれぞれの観点から調整を行うということになっております。したがいまして、今申し上げましたように対立して指定ができない、最終的にそういうことがないようにということでございます。
 今申し上げましたように、例えば先ほども先生から御指摘がございましたように、市町村のマスタープランは都道府県のマスタープランに即してつくらなきゃいかぬというようなこともございます。市町村が決定する都市計画につきましては都道府県の協議つき同意が必要である、こういうことでございます。都道府県の協議つき同意の観点も、今申し上げましたように広域的な観点でありますとか地域全体の観点からの同意ということでございますので、それぞれの観点、それぞれの立場からそういう格好での調整が図られるということであろうかというふうに思っております。

○福山哲郎君 今も言われました、同意が必要だ、それから都道府県のマスタープランに即してつくらなければいけないと、はっきり二つ言われたわけです。
 最初に僕が地方分権についてと言ったら、大臣は本当に御丁寧に地方分権の先進的なこととしてこの法律をというような話をされた。先ほど大臣は、特にその中で、僕がさっき質問した準都市計画区域については地方分権の目玉として取り上げていると。でも、今の局長の話を聞けば、都道府県の同意が要る、もしくはマスタープランに即さなければいけないという話を聞くと、きょうもあった話なのであれなんですけれども、何か制度設計がちょっとうやむやで、これでは結局市町村は常に都道府県の方を向いてしか仕事をしないんじゃないかなと。本当に市町村の独自性とか市町村がそこでつくりたい町づくりではなくて、結局都道府県がどういう意向なのかなというふうに、県の意向を見ながらしか物事が動かないんじゃないかなということを非常に懸念するんですが、そこは局長いかがですか。

○政府参考人(山本正堯君) 先ほども御答弁を申し上げましたが、町づくりの主体はあくまでも私は市町村だと思います。
 広域的な都市計画については、例えば国道の都市計画決定でありますとか大きな公園の都市計画決定でありますとか、そういったものについては都道府県が行う。ただ、市町村が行う都市計画決定のものにつきましても都道府県が広域的な観点から調整を行う、こういう格好であろうかと思います。そういう点で、基本的には町づくりについては市町村が主体である。しかも、今回改正をさせていただき、あるいはまた新しいツールとして導入させていただきます例えば準都市計画区域の指定でありますとか特定用途の指定でありますとかいったような基本は、市町村が決めるということでございます。
 したがいまして、市町村が自主性を持って決めるものについては、今申し上げましたように非常に地方分権の流れの中で今回の制度設計をさせていただいている。ただ、公益的な観点から調整を図るとかあるいはそういったようなものについては、従来の制度の中で協議つき同意といったようなことの整理をさせていただいている、こういうことでございます。

○福山哲郎君 少し観点を変えます。
 もう皆さんも御案内の真鶴町まちづくり条例というのがありまして、これはさまざまな建築の規制基準を数値ではなくて美という主観的な基準でつくっています。条例の第十条には、「まちづくり計画に基づいて、自然環境、生活環境及び歴史的文化的環境を守り、かつ発展させるために、次の各号に掲げる美の原則に配慮する」となっていて、場所については、「建築は場所を尊重し、風景を支配しないようにしなければならない。」とか、「調和 建築は青い海と輝く緑の自然に調和し、かつ町全体と調和しなければならない。」とか、「材料 建築は町の材料を活かして作らなければならない。」とか、「眺め 建築は人々の眺めの中にあり、美しい眺めを育てるためにあらゆる努力をしなければならない。」というような規定があります。それぞれにデザインコードが定められている。こういう独自色の強い取り組み。
 私は前から言っていますように京都でございますので、美とか景観とかという非常に主観的なもので町がもめます。建築基準法や都計法ではそういう規制手法を取り入れる余地がありません。だから、逆に言うとこのまちづくり条例にも強制力は持たせられない。だから、この真鶴では違反があった場合、水道法違反になるのを承知で、例えば高層マンションとかには水道の水を供給しないというようなことを言って高層マンションが建たないような状況をつくっているわけです。そんな本筋の話じゃないわけですね、マンションを建たせるのをやめさせるための一つが水道供給停止なんというのは。これは、水道法違反で訴えられるのを覚悟して町長は現実に真鶴の町並みを守ろうとしているわけです。
 これが財産権の問題とか制限の問題とかからいって、本当に私はどちらがいいのかがよくわからないからちょっと最後にお伺いをしたいんですが、この都計法の改正や建築基準法の改正も含めて、そういうこの真鶴の美とかいうような価値に対して今どのような評価をされているのかということについて、お答えをいただければと思います。

○政府参考人(山本正堯君) 真鶴町の条例でございますが、これは平成五年につくられた条例でございまして、大変ユニークな条例、先生の御指摘のように美の原則でありますとか美の基準というようなものをつくって、それを保全する区域であるとか誘導する区域であるとか決めておるわけでございます。それについて、そういうところに建築をするときに規制がかかっておりまして、それに違反をした場合には氏名の公表であるとかそういうところの制度であるというふうに理解をしております。
 こういうまちづくり条例は全国いろいろなところでつくられておるわけでございますが、この真鶴町まちづくり条例においては、今申し上げたような事前届け出制あるいは美の基準というようなものへの適合を求める、そういう規定が設けられているわけでございますが、一方、都市計画法に基づく開発許可とか建築基準法に基づく建築確認といったようなものとは、これは地方自治法に基づく条例でございますので連動していないわけでございます。強制力を持つものではない、こういうことでございます。
 こういうことでございますので、こういう条例について都市計画法あるいは建築基準法に基づくそういう強制力を持たせるような格好で今回の措置の方に移行しようということであれば、またそういう格好で可能性がある。ただ、そこまで強い行政の指導力を発揮するのではなくて、氏名の公表とかそういったような点ぐらいのところで全体の町の美の基準に基づくいろんな町づくりを推進しようといったようなところであれば、この条例そのものを今後引き続き推進していくということであろうかと思いまして、この条例そのものについては私どもとしてはもちろん有効であるというふうに考えておるところでございます。

○福山哲郎君 済みません、これで最後にします。
 これは質問通告していませんが、先ほど野口先生とお話をしていていろいろな御示唆をいただいたんですが、例の容積の話なんです。答えられるかどうかは、事前通告しておりませんので結構でございますが。
 商業地域の中での関係権利者の合意に基づいて容積率の移転ができるという話なんですが、京都は多分商業地域のところにお寺がいっぱい建っていまして、お寺に高いビルが建つことはあり得ないんです。そうしたら、お寺が、自分のところは高く建てないからといってどこかに移転をして、お寺は絶対上は建たないからみたいな話で商業ビルとかにそれを移転して必要以上に高くなるようなことというのは、今回これは可能なんでしょうか。
 済みません。今本当にただ申し上げただけなんで、答えられなければ後でまたお調べいただければ結構なんですが。

○政府参考人(那珂正君) ただいま御指摘の特例容積率適用区域制度の運用でございますが、この制度の根幹は、まずその対象地域を、先生ちょっと御指摘でもありましたけれども、十分な公共施設がきちっと整っている商業地域という一定の枠が決められております。そういうところで未利用容積率を活用して、区域全体として土地の高度利用を図っていくんだという基本的な目的があるわけです。
 それで、実際、御指摘のような歴史的な町並みあるいは保存すべき景観があるような地域が仮にその商業地域の中にあったとしてどうかという御質問だと思います。一般的には、容積の有効利用を図る区域と景観やそういうものを保存していく区域とが基本的にはダブるということはないと思いますが、ただそういう地域が隣接しているような場合というのは大いに考えられるわけでありまして、その上でさらに保存すべき地域の保存措置をきちっとするということ、かつその未利用容積率を有効に利用するということが矛盾しないでその区域全体として配置されるようなことも考えられると思います。
 それは特例容積率制度だけではちょっとあれだと思いますが、例えば高度地区とか美観地区とかを併用することによって、こちらの保存すべき地域の容積をきちっと低く抑えて、かつその未利用容積率を高度利用すべき地区の方で有効に活用するという措置が観念的には考えられると思います。

○福山哲郎君 ということは、可能だということですね。

○政府参考人(那珂正君) 可能でございます。

○福山哲郎君 わかりました。
 僕は、今、可能だという前提でまたいろいろ悩んでお伺いしたいと思います。

○政府参考人(那珂正君) 若干補足させていただきますと、いずれにしても先ほど申し上げました一定の区域の中で可能だということでありまして、とんでもないところに飛んでいくということではございません。一定の区域の中で提供するということでございます。

○福山哲郎君 もちろんそうです。
 では、お寺がおれの空間の容積率を渡していいよと言ったらそれは売買可能なんですか、その一定の区域では。

○政府参考人(那珂正君) まず二つ問題がありまして、売買が可能かどうかということについては、この制度としては、これは容積率というのはそもそも公的規制値でありまして、直接に容積率自体に権利性があるわけではありませんので、売買ということを、私どもはそういう概念を用いていないわけでございますが、特例容積率の適用ということがお寺を含んだ地域でできる、それは可能だと思います。
   〔理事市川一朗君退席、委員長着席〕
 ただし、それについても、全体の区域については都市計画決定という手続がございますし、特例容積を複数の敷地で適用するわけですが、それぞれについて、こちらは下げた方がより合理的だ、こちらは上げた方がより合理的だという個々の敷地の審査はございます。それぞれに交通上、安全上、防火上、衛生上支障がないかどうかという特定行政庁の審査はございますけれども、そういった意味で、そういう一定の要件を満たせば特例容積をすることは可能でございます。

○福山哲郎君 済みません、よくまだ頭が整理できていないんでわからないんですけれども、そこはちゃんと運用状況を監視していただかないと、売買という概念はないのかもしれないですけれども、現実には起こり得る可能性というのがある。だって、お寺なんて絶対そこを上に上げることはあり得ないわけですから、お寺とは限りませんが、そういうことは十分起こり得ますし、新たな問題が出てくる可能性がありますので、ぜひそこはしっかりと運用状況を見ていただいて、また機会があればいろいろお伺いしたいと思います。
 きょうはちょっと早いですが、これで終わります。

 

第147国会  参議院  国土・環境委員会  2000年5月9日

○福山哲郎君 おはようございます。民主党・新緑風会の福山哲郎でございます。
 本日は、都市計画法及び建築基準法の一部改正案についての質問をさせていただきます。
 私は、都市計画や建築行政については余り詳しくございませんで、先ほど御質問されました上野委員を初め、本当に専門家の委員の方がいらっしゃる中で、私はこの法案をずっと見させていただいて、連休をつぶして勉強したんですが、なかなかイメージがわかない、本当に難しい。言葉の使い方も含めて、同じような言葉だけれども、線が引いてあるとか非線引きだとか、準都市だとか都市だとかいう話で本当に難しいなということを、自分の能力の不足を反省しながら感じておりまして、次の委員会では参考人も来られるということですし、また質疑もあるということで、徐々にイメージをしていきながら、より深い審議ができるように頑張っていきたいというふうに思っておりますので、きょうは若干そもそもの話も含めて大臣にお伺いをしていきたいと思いますので、どうかよろしくお願いします。
 私がまず直感的に都市計画と建築基準法の一部改正をされると伺ったときに──私の地元は京都でございまして、京都でいろいろ問題になっている、木屋町に風俗店がいっぱい出ている。京都の人間は非常に悲しんでおるわけですが、一時期だけ来られる観光客の方にとっては、京都で文化も観光も見られて風俗店もあるということで逆に喜ばれている方も多いみたいなんです。ですから、それなりにお店としては営業としては営業としていいのかもしれませんが、我々としてはそれで本当にいいのかなと思っていることがあったりとか、御案内だと思いますが、つい先日も、俵屋旅館という大変昔から有名な旅館のすぐ横にマンションができる。ある日突然高層マンションの計画が立って、俵屋旅館の前が象徴的ですが、実は京都の祇園祭のいろんな周辺に高層マンションの予定というのはまだ幾つかありまして、それに対して住民が反対をする。ただ建築基準法にかなっているからということで計画は進められる。
 僕は単純なもので、この法案の改正があったときには、こういったことが少しでも是正される方向なのかなということをまず願ったわけです。ですから、本当にこういうことが是正される第一歩なのかどうかということを大臣に後でまた御答弁をいただきたいというふうに思いまして、一つまず、そもそもの話をお伺いします。
 とにかく第二次世界大戦後、日本はゼロからスタートしました。経済発展に伴う工場立地用地の確保や住宅の確保、それから過疎の問題、農地の荒廃、いろんな問題の中で建設省さんとそれなりにずっと政治に携わってきた方々が御苦労されてこの都市計画法をつくられて、役割としては非常に大きかったと思うのですが、今回三十年ぶりの改正になった。
 まず、これまでの都市計画法の果たしてきた役割について大臣はどのようにお考えなのか、御所見をお伺いいたします。

○国務大臣(中山正暉君) この法律が四十三年ぐらいから考えられ始めた。五十四年前に戦争に負けて、海外におられた二百万人ぐらいの人がどんどん日本に帰ってきて、住むに家なく働くに職なしというところから、もう本当に戦後のいろんな荒れた時代がありました。それから、権利をやたらに主張して公共の福祉というものを余り考えない時代とか、そんなところから、これは何とかしなきゃいけないというのが最初のこの法律ができたところじゃないかと思います。
 今先生のおっしゃっているように、私もイメージ、いろいろ先生と同じ気持ちでございます。京都の町を見ると、ろうそくだと言われればろうそくのような感じがするのですが、京都のど真ん中にでっかいタワーみたいなのが建ちましたり、それから、京都の駅を通ると、何となくどうしたのかなというふうな気持ちになりましたり、率直に言いまして、個人として言いましたらいろんな思いがあります。だから、石原知事にも吉原を見せて江戸だと言うなという話をしたんです。
 そういう都市計画にこれから合致していくまでには、まだまだ皆さんの一致したコンセンサスで町をどうしようかと。この間、明日香村へ行きましたら、明日香村の中にセメントをミックスするようなタワーが建っていましたり、村長さんは、もう全部みんな立ち退いてもらうような明日香村にしてもいいですよというようなことをおっしゃいましたので、私は、それこそコンセンサスじゃないかと。
   〔理事市川一朗君退席、委員長着席〕
 ですから、昭和三十年代以降の我が国の人口、産業が急速に都市に集中して都市が拡大する状況から続いてきたものを、どんなふうにこれから、いわゆる既成市街地の再構築とか都市間の連携とか、それから経済活動の活性化に寄与する都市整備とか、環境問題など新たな潮流にどう対応していくか、それに対するだんだん積み上げていく国民のコンセンサスの一里塚と、こう思っております。

○福山哲郎君 そうですね。そういった話の中で今回、都市計画法の改正があったわけです。今の一里塚の流れの中で、一里塚といっても大変大きな流れが来ていまして、基本的には、少子高齢化の中で住宅の需要が本当にこれまでのように伸びるかどうかというのが大変疑問でありますし、地価がどんどん下落していますから団地やマンションの需要も本当に起きるかわからない。それから、一軒家に需要がシフトするかもわからない。そこら辺についてはまだ不透明な部分がある。
 そうかというと、例の女性の社会進出の問題やマイカー、非常にモータリゼーションが進んでいることによって、核家族化とマイカーと女性の社会進出ということは、いいこともたくさんあるわけですが、非常にライフスタイルを変えて、女性が働いているわけですから、なかなか毎日毎日買い物に行けないから休みのときになると郊外の大きいショッピングセンターに車で出かける。そこで全部終わらせて一週間分の買い物をしていく。それはある意味でいうと、便利なのかもしれないですけれども、現実にはその発展に伴って市街地にある商店街とかが寂れて、実はふえているはずのお年寄りにとっては、そういったところの需要が、車でお年寄りは移動できないわけですから、お年寄りは逆に言うと、そこでどんどん商店街とかが寂れていくと自分らの行き場がなくなるみたいな話で非常に両極化の現象が起こっている。
 そういった社会の現状や将来像から見て、今大臣は一里塚だと言われましたけれども、この法改正の意義をどのようにお考えなのか。

○国務大臣(中山正暉君) 私は、やっぱり戦後の日本経済が発展したのは、地主が一人であと小作人が九人いたところが全部地主になった、それから労働組合の解放と女性の解放、これがもとだったと思います。それだけに、地主が一遍にふえましたから、その人たちのコンセンサスを得ていない部分でいろんな乱開発とかにつながって、今お話しのありましたような一軒の大きな店へ行って何でも買える、いわゆる衝動買いをするぐらい、歩いていたらこれも欲しいあれも欲しいというようなところと単品を売っている商店街、これが今は先生の御指摘のようにそれぞれ使命が分かれてきてしまっています。
 そんなものをどういうふうに、全体の地域を見て地方自治体が、地方分権でいろんな権利を地方に考えていただく。それは、地元に密着しているんですからその人たちに考えていただいたらいいんですが、先ほどもちょっと申しましたように、地元と密着した地方自治体はやっぱり選挙というものがありますから、それに対して、住民の反応に敏感に反応してしまって動きがとれなくなる。そういうものをどう調整していくかで建設省の責任が重い。地方自治体との話し合い、住民との話し合い、そんなものでみんなが目的にするような新しい町づくりを規定していく、それへの示唆を与えるのがこの法律の意義ではないか、こう思っております。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 先ほど申し上げた郊外にいろんなショッピングセンターとかができることもあながち悪いことではないですし、大臣も言われましたように選挙のこともございますから、それが乱開発だといってなかなか否定もできない現状でして、その分逆に今回の改正で、都道府県にマスタープランをつくれと言って、都道府県の全体のコンセンサスをとっていけというような趣旨なんだろうというふうに私も受けとめさせていただいています。
 そういう状況の中で少し具体的な話をさせていただきますと、今までの流れからちょっと変わって、高齢化やライフスタイルが多様化してきた、そういう状況の中で都市計画を再構築していかなければいけないというときに、現在の土地利用規制のあり方というのは大変複雑だと。私が冒頭難しいと申し上げたのもまさにその点でございまして、例えば、御承知のとおり都市計画法のほかに農業振興地域整備法、森林法、自然公園法、自然環境保全法など、とりあえずさまざまな法律によって日本全国の土地が個別に縦割りで色分けされて規制されているわけです。もちろん、所轄の官庁も農水省や林野庁、環境庁とさまざま。
 ちなみに、資料によりますと、都市計画法による都市地域は日本全体の二七%、農業振興地域整備法による農業地域というのは四六%、森林法による森林地域は六八%、自然公園法による自然公園地域は一四%、あと自然環境保全法による自然保全地域は〇・三%で、足し算すると一五〇%を超えてしまうわけです。
 つまり、いろんな法律が地域を指定して、重複されて土地の利用がある。これはある意味でいうと、当然環境のことや保全のことですからダブるのは仕方ないと言うんですが、大変典型的な縦割り行政のもとで今回の改正の新しい都市計画、大臣が今言われたような趣旨で全国一律じゃなくてあちこちで柔軟にそれぞれやってくださいとメッセージを出したとしても、現実に都市計画法だけではできない。ほかの法律がいっぱいあるわけですね。この都市計画法だけでは逆に言うと難しい部分も出てくるのではないかというふうに思っております。
 これは他の省庁とのこともありますから大臣の御一存で御発言できる問題ではないのかもしれませんが、そういった状況の中の日本の国土利用について大臣はどのように今お考えでしょうか。

○国務大臣(中山正暉君) 今御指摘がありましたように、本当に土地利用につきましては、都市計画法とか農振法、森林法、いろんな土地規制が行われておりますけれども、都市計画法は、都市の健全な発展と秩序ある整備を図るために農林漁業との健全な調和を図ることを基本理念といたしまして必要な土地利用規制を行っていかなければならないという基本的な現段階における私はある意味の指針だと思っております。
 今までにいろんな法律がありますのでそれを調整しなければなりませんが、例えば線引きにおいても、優良な集団的農地やすぐれた自然の風景を維持し、都市の環境を保持すべき土地の区域は市街化区域に含まないこととして、都市的土地利用と農業的土地利用と自然的土地利用の調整を図っているところでございます。
 また、今回の改正では、個別の都市計画の決定に当たりましては、自然環境の整備または保全に配慮すべきことを都市計画基準に追加をいたした。ここが、追加をしたというところが重要な点だと思いますが、そういう意味で、今後地方公共団体が都市計画を定めるに当たりましてこうした趣旨が生かされるように、後は政令によりましていろんな基準を示していきたい、具体的な運用指針等の技術的助言というものをしっかりとつくり上げていく必要があると。
 先生の御指摘、これから省庁も統合されて、国土庁と建設省も一つになって国土交通省という名前になっていきますので、私は、その意味でいわゆる縦割りの欠点からいかに調整が可能な役所の機構の中での指針を、後発の法律でございますので、先に施行されております法律との調整をする役割も大きなものだと思っております。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 そうなんですね。つまり、調整をしていかなければいけないという大臣の今まさにおっしゃられた御認識のとおりで、まだ調整もこれから多々出てくるということだというふうに思います。
 さらに申し上げますと、今回の法改正で、都市計画区域に指定されたエリアについては、先ほど申されたように線引き実施の有無を自治体にゆだねるとか、都市計画区域に指定されていない地域を必要に応じて準都市計画区域に指定するとか、またピンポイントで大規模な開発行為について許可制度を適用するとか、都市部での容積率の移転とか、さまざまなメニューが講じられているわけです。
 これは、地方分権の時代ですし、それぞれの自治体が選択できるためのメニューを都市計画法の中で提示することによってそれぞれ皆さん判断してくださいということで私は大変評価をしているんですが、ただ先ほども申し上げましたように、土地が縦割りでいろいろ利用されている、そういう状況の中で、例えば具体的に先ほど大臣が言われた調整をしなければいけないという点は、一つのこれからのデメリットというか、時間がかかる点も含めて、こういう新しくメニューを入れたことによって一体どういう問題が自治体を含めて起こり得るのか。
 やっぱり、法律をこれだけ大きく改正するからには、言いにくい話かもしれませんが、デメリットの部分も考えておかなければいけないというふうに思うんです。これだけメニューがそろうことは、選択の自由といういいことはありますが、自治体にとってはひょっとすると混乱ということもあり得るわけで、デメリットについて、ちょっと言いにくいかもしれませんが、大臣、どんなふうなデメリットを想定されているかお答えいただきたいと思います。

○国務大臣(中山正暉君) おっしゃるとおり、政治というのは想像力、空想力、いかに将来を想像するか、いかに予測するかということが私は要諦だと思いますので、お若い先生のそういう意味でのそういう感覚に敬意を表したいと思います。
 特に、デメリットというのを予測しておかないと、効果だけを考えておいちゃいけないと思います。確かに、地方公共団体がいつどこでどの制度を使うべきか判断がつきにくいのではないか。また、住民の理解が、先ほど申しましたように民主主義国家で一人一人の有権者の意見というのが政治の根幹の部分に反映してくるということがございますので、その辺の住民との関係というのは難しくなるんじゃないか。それから、制度を知らないために制度が使われずに都市の土地利用などに関する問題が引き続き放置されるおそれがある。デメリットを予測せよとおっしゃれば、そんなことが予測できるんじゃないかと思います。
 建設省といたしましては、制度の趣旨を説明いたしまして、その的確な運用の確保と、先ほどから申しております政令でできるだけ事細かにそういう面での指針をつくって、デメリットを少しでもメリットに転換していくような具体的な運用の指針など技術的助言、実際には中央は企画行政で実施行政をやるのは地方公共団体でございますから、その辺の難しさはありますが、地方公共団体にそういう意味の資料を提供いたしまして制度の円滑かつ積極的な活用を図りたい。
 今改正でございますが、国及び地方公共団体が都市の住民に対し都市計画に関する知識の普及、それから情報の提供に努めることを責務にいたしたい。都市計画のすそ野を広げまして円滑な運用を図るために自治体との一体感をどうつくっていくかということで先生方の御指導を仰がなければならないと思っております。

○福山哲郎君 大変言いにくいことを本当に率直に御答弁いただきましてありがとうございました。
 本当に大臣がおっしゃられたように、その辺のデメリットが出てくる可能性は十分あって、先ほど大臣が言われた情報の提供等は、絵にかいたもちではなくて、末広先生も言われましたようにやっぱりしっかりとやっていただきたい。せっかくこれだけのメニューがあるわけですから、その技術的なことも、自治体によってはまだまだそこまで行っていないところも中にはあると思いますので、ぜひそこは御配慮いただきたいというふうに思います。
 少し具体的なことになりますが、都市計画区域全体の中で線引きされているエリアというのが半分ちょっとだというふうに思いますが、今回この線引きが選択制になりました。選択制になったことによって線引きされていない非線引き区域というのはふえるのか減るのか、どのように予測をされていらっしゃいますでしょうか。

○政府参考人(山本正堯君) 線引き制度の選択制によりまして、地方公共団体が線引きを廃止するかあるいは新たに線引きをするかということの選択をするわけでございますので、基本的にはその地方公共団体の意思によりましてふえる場合もあるし減る場合もあるということでございます。
 現在、この制度の改正を検討していただいておりますが、線引きにつきまして廃止の方向でいろいろ検討したいということで従来からやっておるところもございますし、あるいはまた、線引きをさらに、現在のところは線引きの義務化はやっておりませんけれども、この選択制によりまして選択したいというところもございます。

○福山哲郎君 どっちかよくわからないんです。要は、全然予想がつかないということですか。
 それは、あくまで自治体にゆだねることですから、もちろん自治体の判断に任せなければいけないので、今建設省さんがふえるとか減るとか言う話ではないということはよくわかるんですが、大体各市町村の状態を見ればおわかりいただけると思うので、もしよろしければいかがでしょうか。

○政府参考人(山本正堯君) 現在、私どもで具体的に要望を取りまとめているわけではございません。
 各市町村によりまして、各市町村の状況によって線引きを廃止しようというところ、例えば人口が非常に減少してきておるといったようなところ、例えば炭鉱の都市等でだんだん人口が減ってきている、あるいはその周辺の地域であるといったようなところについては人口圧力が大変減少してきておるわけでございますので、市街化区域、市街化調整区域といったようなスプロールの対応に資するような制度については線引きを廃止してもいいのではないかということで地元でいろいろ協議をされているというようなところもございます。
 あるいはまた大都市圏の周辺で、三大都市圏という格好で線引きはされていないわけでございますけれども、そういう周辺のところで市街化圧力が強い、将来大きな開発構想があるといったようなところ、やはり人口の圧力が依然として高くなってくるというようなところにつきましては、地元で線引きを新たに導入しようと具体的に検討を始められているといったようなところも見受けられます。
 したがいまして、全体としてふえる方向なのか減る方向かということにつきましては、私ども現在の段階ではにわかには申し上げかねますけれども、全体としては、選択制にすることによりまして、人口圧力が非常に減少しているといったようなところについては、全国的にはそういうところもかなりあるわけでございますので、そういう意味では減少の傾向にあるのかなと、こういうふうに考えております。

○福山哲郎君 減少ということは、非線引き地域は減るということですか。

○政府参考人(山本正堯君) 人口圧力が減ってまいりますところについては線引きが非線引き地域になる、こういうことでございます。
 全体として非線引き地域がどれだけふえて、あれがどれだけふえるのかといったようなことについては、地元の調整でございます。

○福山哲郎君 そんなに難しいことを聞いているつもりはないんですけれども、要は、線引きの選択制によって、今でも線引きしなさいと言われているのに利害関係などの調整がつかなくて線引きしていない地域が半分近くあるわけですから、それは今おっしゃられた話も含めて常識的に考えると、非線引き地域というのはやっぱりふえるんじゃないかなというふうに思うんです。
 そうすると、逆に非線引き地域がふえるということは、冒頭申し上げましたいろんな農用地やほかの土地利用、そういった話の中で調整しなければいけないところがたくさん出てくると。市街化調整区域もそうなんですが、都市計画区域に指定しながら線引きしなかったエリア、言いかえれば他の土地利用の法律との調整を全くと言っていいほど行っていない、だから簡単に言うと、線引きを選択制にすると恐らくいろんなところとの調整をしなければいけないいろんな土地利用と重複するエリアがどんどんふえていくと。他の法律との調整、規制のかけ方、それが複雑になる。先ほど大臣がまさに言われたように、自治体にとっても混乱し大変だ、土地を利用しようとする住民にとっても大変だということを大変懸念しているわけです。
 さっき大臣は、デメリットの方でもそのように言われましたし、調整をしていかなければいけないということを言われていましたけれども、この辺について、政府参考人で結構でございますが、非線引き地域がふえて、いろんな土地との調整がふえてきて自治体とかがかえって混乱するというようなことは想定されているのかされていないのか、そこら辺について御答弁いただけますでしょうか。

○政府参考人(山本正堯君) 非線引き地域においても都市的な土地利用が見込まれる地域につきましては、用途地域でありますとか、今回改正で法案に盛り込んでいただいております特定用途制限地域などの指定によりまして適切にその土地利用の整序が図れるということであろうかと思います。
 この際、農地や森林などの土地利用を積極的に守るべきようなところでは農用地や保安林が具体的に指定されておるわけでございますので、本来建築敷地として利用されることはそういうところは予定されないということでございますので、その意味では、非線引き地域のそういう農用地とか保安林に指定されているというようなところについては用途地域や特定用途制限地域と重複することはないということであろうかと思います。
 なお、いわゆる農業振興地域内でも農用地に指定されていない地域、農振白地といったようなところにつきましてはいろんな土地利用の可能性があるわけでございまして、建築物の敷地として利用されることも当然想定されるということでございます。したがいまして、そういうところにつきましては農業施設用地等、農業上必要な土地利用との調整が必要な場合が当然出てまいります。その調整に当たりましては、具体的な運用指針を定め、技術的助言として地方公共団体に提供することとしたいというふうに考えております。
 すなわち、線引きが行われておりますと市街化調整区域ということでございますので、市街化調整区域では非常に厳しい規制がかぶっている、こういうことになるわけでございますが、それが非線引き地域ということになりまして非線引きの白地地域ということになりますと都市計画の市街化調整区域の厳しい規制がなくなるということで、それと重複してかぶっております農振法とか森林法とか、そういうようなところはそういう法律でもろにその規制が出てくる、こういうことでございます。
 ただ、そういう白地の中でも、農振法等で農振白地という格好で、農用地、優良な農用地とかそういうようなところが指定されていないところについては都市的な土地利用と農業的土地利用についての調整が必要な場合が出てくる、こういうことであろうかと思います。

○福山哲郎君 やっぱり難しいですね。難しいんですが、次に行きます。
 都道府県が今回マスタープランをつくれることになっているわけですが、このマスタープランについて、市町村からの提案の申し出については、都道府県のマスタープランに市町村の提案をかなり尊重してもらう必要があるのではないか。
 それからもう一つは、都道府県のマスタープランについて、市町村のマスタープランの作成のように公聴会など住民参加の機会をある意味でいうと義務化をしていく必要があるのではないかというふうに思っているんですが、その件についてはどのようにお考えでいらっしゃいますでしょうか。

○政府参考人(山本正堯君) 都道府県のマスタープランと市町村のマスタープランの関係ということをも含めての御質問と思いますが、都市計画法上では、市町村マスタープランは都道府県が定めるいわゆる今回お願いした改正で加えさせていただいております都市計画マスタープランに即して市町村マスタープランを定めなければならないという規定になってございます。
 都道府県が都市計画マスタープランを定める際は、都市計画手続の中で都市計画決定をするわけでございますので、必ず関係市町村の意見を聞くという格好の手続になってございます。そういう点では、市町村は、都市計画マスタープランとの整合性の観点から都道府県に即して定めるということでございますし、また現在の状況から見て都道府県に意見を述べるということが可能でございます。
 また、今回の改正によりまして、先生今も御指摘ございましたように、都道府県が定める都市計画の案につきまして市町村がその内容の申し出をすることができるということになっております。必要に応じまして市町村が市町村マスタープランとの整合性の観点から都道府県マスタープランの内容の申し出を行うことを可能としている、こういうことでございます。
 それから、都道府県のマスタープランにつきましては、これは一つの都市計画ということでございます。したがいまして、都市計画決定という手続を経るわけでございますので、当然住民の意見を聞くと同時に、必須の手続としまして、公衆の縦覧、それから意見書の提出というふうな手続が当然義務づけられておる、こういうことでございます。それからまた、必要に応じて公聴会を開催することができるということになっておるわけでございます。
 こういう措置を通じまして、都道府県マスタープランに住民の意見が的確に反映されるというふうに考えておるところでございます。

○福山哲郎君 今お答えいただいたこととちょっと重複するかもしれませんが、市町村というのは自治法に基づいて基本構想とか基本計画を定めています。その基本構想や基本計画と今回の改正にあります都道府県のマスタープランがある意味異なっていたり対立をしているというような状況は想定しておられないんでしょうか。

○政府参考人(山本正堯君) ただいまお答えを申し上げましたように、都市計画法上は、市町村マスタープランについては、今先生御指摘の地方自治法の規定に基づいて定められます市町村の基本構想に即して定めなければならない、こういう格好になっておるわけでございます。
 この規定の趣旨に沿いまして各市町村が市町村マスタープランを定める際には、当該市町村の基本構想とか基本計画と整合性を図って定めるということになっておるわけでございまして、その整合性はその中で十分保っていく必要がある、保たれるものであるというふうに考えております。

○福山哲郎君 例えば、横浜市などの都市計画区域が、横浜市一つの市で市町村のマスタープランと県のマスタープランというのが出てきたときに、一つの区域に対して二つのマスタープランが存在することになってしまうというような状況になれば、恐らく住民も混乱するでしょうし、そこの整合性という話で、県は全体を見る、県全体の調整の中でここの指定区域のマスタープランをつくりますよと言っている。ただ、そこの当該市町村は、その市町村の住民のニーズやいろんなことを考えてマスタープランをつくったときに、県は全体を見ているから、こことここは取り入れるけれどもここは取り入れないみたいな話の中で、市町村と県のマスタープランが対立したりそごを来したりする可能性は僕は、今いろんな調整をしながらとおっしゃられましたけれども、起きてくる可能性があるんじゃないかなというふうに思うんですが、もう一度御説明いただけますか。

○政府参考人(山本正堯君) 県のマスタープランにつきましては都市計画で決めることになっております。したがいまして、県の都市計画を決めます場合に市町村の意見を聞くことになってございます。そういう意味では、そこで十分市町村の意見を尊重して決めるということになると同時に、そこで調整が図られるということが一つでございます。
 それから、市町村のマスタープランの策定でございますが、市町村のマスタープランは県のマスタープランに即して定めなければいかぬ、こういうことに規定上なっております。即してということは、そこで十分調整が図られるということが前提だというふうに考えております。

○福山哲郎君 時間がないのでこれで終わりますが、また少し私も勉強して、より審議を深めていきたいと思います。
 どうもありがとうございました。

 

第147国会  参議院  国土・環境委員会  2000年4月27日

○福山哲郎君 おはようございます。民主党・新緑風会の福山でございます。
 長官並びに政務次官におかれましては、先日の滋賀での環境大臣サミット、大変お疲れさまでございました。私も滋賀の地に行かせていただきまして、長官や政務次官が頑張られている姿を拝見しました。これからCOP6に向かってさらによろしくお願い申し上げます。
 きょうは、悪臭防止法の改正案ということで質問させていただきます。
 悪臭というのは、いわゆる環境問題の中では余りなじみがないというか、いろんなところでは出てきていたと思うんですが、現実に日本の公害問題の中では、いわゆる七大公害、大気汚染、土壌汚染、水質汚染、騒音、振動、地盤沈下、そして悪臭というような七大公害として指定されているわけですけれども、余りなじみがない方がいいに決まっているので大きくクローズアップはされていないんです。
 私も勉強不足で、今回の法案の改正に当たりまして大変びっくりしたんですけれども、九八年度の日本全体の苦情件数を見ると、この七つの中で悪臭が騒音を抜いてワースト一位になっている。それで、九八年度の苦情件数が二万件、もうウナギ登りでこの悪臭に対する苦情がふえている、過去最悪だった一九七二年にほぼ並びかけている。これは、先ほど私はなじみのない問題だと言いましたが、なじみのない問題などと言うと、それで苦労されている住民の皆さん等にとっては大変失礼な済まされない話でございまして、深刻に受けとめなければいけないというふうに思います。
 今回、この改正案を出していただいたことに対しては大変感謝をするわけですが、まず長官にお伺いします。この悪臭に関する苦情件数が急増している原因、理由をどのようにお考えか、そして今回の改正の意義について、まずはお答えをいただきたいと思います。

○国務大臣(清水嘉与子君) 先生御指摘のように、近年悪臭の苦情が非常にふえているわけでございまして、平成十年で二万件を超えるというようなものになってきているわけでございます。その要因でございますけれども、野外焼却に係ります苦情がふえていること、あるいはやはりこういった問題に対する国民の皆様方の意識が高まってきているということもあるのではないかというふうに思っております。
 今回の改正でございますけれども、このような悪臭苦情の増加に対応いたしますために、悪臭を伴う事故への対応、それが一つ。そしてもう一つは、臭気指数の測定体制の整備を図る、この二点が改正の主な点でございます。
 まず、事故時の措置のことでございますけれども、例えばよく例に出されますのが、中古タイヤの集積場の火災でありますとか、あるいは工場におきます化学物質が漏れ出してきている、そして悪臭が出てきているという事故を見ますと、応急措置が適切に行われない。もしそれが行われませんと、一時的に大変な悪臭物質が出て、そして国民の皆様方にも非常に被害が及ぶということでございます。また、特に何が原因物質なのかということもはっきりいたしませんと、余計住民の皆様方の不安も高まるということでもございますし、行政の対応もおくれるというような問題がありますために、この事故時の措置について対策の強化を図ろうということがあります。
 そしてまた、もう一つ申しました臭気指数の測定体制の整備という点でございますけれども、臭気測定業務従事者、いわゆる臭気判定士という職業の方々がおられるわけでございまして、このちょうど四月から悪臭防止法の規制だとか測定に関する事務が市町村長の自治事務になりました。そういうこともありまして、市町村の測定体制の整備が求められておりますものですから、市町村長が測定業務を円滑に実施することができますようにいわゆる臭気判定士に関します制度を今度は法律に規定しよう、こういうものでございます。
 悪臭の苦情件数につきましては、こういった悪臭防止法の改正で事故時の措置が強化されることとあわせまして、今国会には廃棄物処理法の改正におきまして悪質な廃棄物の野外焼却の禁止を盛り込んでいるというようなこともありますので、これらが成立、施行されますことによって苦情件数も減ってくるのではないだろうかというふうに思っているところでございます。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
   〔委員長退席、理事市川一朗君着席〕
 今お話しをいただいて、一つ長官のお話で非常に関心というか興味を持ったのは、国民の意識が高まった。国民の意識が高まって苦情件数がふえたというのは非常に逆説的な表現なんですが、ダイオキシンも含めて、逆に言うと今までは変なにおいがしていてもまあいいだろうとうっちゃらかしていたものが、これはやっぱりダイオキシンの問題とかいろんな問題があって自分の体に害があるかもしれないから一応届けるなり、こんなものだよと言って知らせておかなければいけないのではないかという、そういうどちらかというと肯定的な意味で今長官がとらえられたということに対しては僕もそのとおりだと思います。逆に言うと、それはイコール国民のチェックがそれだけ厳しくなってきたということでございますから、そこもしっかりと我々は認識しなければいけないなというふうに思っています。
 実は、ごく当たり前の話なんですが、これだけ苦情件数がふえていまして、業種で見るとサービス業が圧倒的に多い。中でも野焼きによるものがずば抜けて多いわけです。その中で問題は、どのような物質による悪臭が一体多いのか。悪臭防止法で規制されている化学物質というのは二十二種類なわけですが、どの物質による苦情が多くて、実態は、その苦情の中で一体どのぐらい規制基準をオーバーしていて、苦情はあるけれども数値的には基準内におさまっているのかどうかとか、その辺のことがちょっと今の現状わかりにくい場合があります。
 だから、苦情は来ているけれどもその本質的なものは一体何なんだ。苦情としてはわかるけれども、それは先ほど申し上げましたように、ある一定のレベルよりも低いのか上なのかということで考えますと、そこら辺は実はこれから規制をするに当たっても重要なことだと思うんですが、そういった実態については環境庁は把握をされているんでしょうか。

○政府参考人(廣瀬省君) 苦情の実態についてですが、これについては毎年報告をしていく形でおります。そして、先ほど先生がおっしゃいましたように、昭和四十七年のピークがありましたが、今回それに近い形での、今まで漸減してきまして平成八年から増加の傾向をたどっているという形をとっているわけでございますが、その中で特に物質については現在二十二の物質を決めておりまして、その二十二の物質についてはそれぞれ規制基準というのを持っております。
   〔理事市川一朗君退席、委員長着席〕
 そして、その規制基準にかかわって具体的にどのような形でどのようなものが一番多いかということをおっしゃられておりますが、それについては具体的にどのような形で処理しているかと申しますと、具体的な測定という形では平成十年度百四十八、平成九年度百二十九という形で、そのうち基準を超過しているものというのが平成十年度百四十八のうち二十六という形でございます。そして、立入検査というのは四千八百五十五しております。
 そういう中で考えていきますと、この法律の現在の運用というのは、苦情があったことに対して具体的にどう処理をするか、そして具体的にどう改善をしていくかということを主眼に置きながらしているということだというふうに思っております。
 それから、内容的に、先生がおっしゃいましたように野焼きの問題ということにかかわっては、一番大きいのは、ダイオキシンの問題が発生したこととあわせて八年から増加しているということは、間違いなく煙に関して大変敏感になってきている。そして、特にその中で産業廃棄物にかかわるような問題に強く国民の関心が行っている。それからもう一つは、自宅の中で燃やすことについても大変神経質になってきているということが今回反映されている部分というふうに思っております。
 そして、先ほど大臣が申したとおり、その反映をもとにして今回の法改正も行ってまいりたいというふうに考えたわけでございます。

○福山哲郎君 済みません、私が今聞き逃したのかもしれませんが、平成十年百四十八、平成九年百二十九と言われたんですが、これは何の数字でございますか。

○政府参考人(廣瀬省君) 先ほど先生の御質問の中に、悪臭に関してどういう基準を設けてどのような形で把握をしているかということに関して、具体的に問題になった苦情のことに関してどのような形で測定をしたか、その測定回数が、立入検査は四千八百五十五しておりますが、具体的に測定しているのは百四十八という形で、そのうちの超過しているのが二十六という形です。
 ですから、対応としての問題は、大変深刻な状況を迎えているものに関しては測定をし、それに基づいて改善勧告もするような形に持っていこう。それからもう一つは、具体的な改善対策を業者にお願いしていくという形で問題解決を図っていくというやり方をしているということになっています。
 ただ、問題は、先ほど申した産業廃棄物とかそういう煙に関しての問題というのがなお大きな問題として残り、それについて具体的な対応がなされていなかったという反省を踏まえていますということでございます。

○福山哲郎君 今の百四十八、百二十九というのが多いか少ないかという議論はまたしていかなければいけないんでしょうが、要は苦情が二万件ぐらいある状況の中で、百四十八、百二十九に関して言うと測定をした。立入検査は二万件のうちの四千八百五十五ですから、立入検査は行ったけれども、現実問題として測定に当たられたのに関して言うと百四十八とか百二十九というような受けとめ方でよろしいんでしょうか。

○政府参考人(廣瀬省君) 具体的に悪臭問題はその程度をどう把握するかという考え方です。それから、具体的に原因になっていることが最初からはっきりしていて苦情がある場合には指導をし、具体的に立入検査をすることによって改善がなされるということのために事前にかなり、苦情に基づいて測定しない前に入るというやり方もします。
 ですから、そういう意味では対話を中心にしながら悪臭の処理に当たっていくというのが基本でございまして、そういう形でやってきました。それで、測定をしなきゃならないケースというのが具体的に百四十八ございましたという形でございます。

○福山哲郎君 測定をされた場合には、原因化学物質がどのようなものであって、それの数値がどうであるということは、その百四十に関してはきっちり持っておられるということでございますね。

○政府参考人(廣瀬省君) そのとおりでございます。

○福山哲郎君 二万件について測定をしているのが百四十八で、その数が多いか少ないかという水かけ論を今ここでしても仕方がないというふうに思っていますが、私は、本質的には一体どのような物質が苦情の対象として非常に多いのかとか、その測定値みたいなものが現実問題として人体もしくは付近の生態系に対してどのような影響を及ぼすのかというのをやっぱりある程度理解していかないと、法案の改正の趣旨がなかなか実効性が伴わないような気がするわけです。
 それで、環境庁さんの人員的な問題、予算の問題も含めて限界があるのも重々存じているわけでございますが、ここは苦情を言ったからといって現実の中身、先ほど申し上げた物質がどんな状態でどのぐらいの量出ているのかということがわからないと、これは住民の不安とか、苦情として言ってきた人たちの思いというのはなかなか晴れないということもあると思いますので、ここは少し前向きにというか積極的に対応を図っていただきたいというのは、まず要望をさせていただきます。
 これを言っているともうあれなので、先にとりあえず進みます。
 現在の悪臭防止法で規制されているのは、規制対象地域に指定されているエリアがありますが、その中で規制対象事業に指定されている事業者が悪臭を放っている場合だけです。もしそれが規制対象地域に指定されていなければ網にかかりませんし、ましてや対象事業でなければだめなわけです。つまり、地域と業種の両方の要件に当てはまらないと規制がかからない。
 そうすると、この要件に当てはまる苦情というのは事業者が原因となっている苦情の全体の七割で、残りの三割はこの要件から外れて規制の対象外になるという状態だと私は今見ているんですが、この件についてはどのようにお考えでしょうか。

○政務次官(柳本卓治君) 福山委員御指摘のように、事業活動に係る悪臭苦情のうち悪臭防止法の規制対象外の苦情割合が約三割を占めていることにつきましては承知いたしております。
 悪臭防止法の規制地域外で悪臭苦情が生じている地域につきましては、地域の実情に応じまして都道府県知事が速やかに指定地域を拡大するなどの適切な対応を講じるものと考えておりまして、この指定地域の拡大によりまして問題の解決が図られるものと認識をいたしております。

○福山哲郎君 今の話の流れでお伺いしますと、地域指定状況を見ますと、市町村の中で、市レベルでは九〇%以上が指定をされている、それから町になりますと五〇%以下、村になりますと二割そこそこで、結局トータルでは五〇%ちょっとなわけです。要は、逆に言うと約半数の市町村は地域指定を全く行っていない。
 今政務次官が、速やかに各首長なり自治体が指定をすればということを言われているんですが、現実問題としては約半数の市町村は地域指定を行っていないわけですが、こういう実態についてはどのようにお考えでしょうか。

○政務次官(柳本卓治君) 悪臭防止法の規制地域に関しましては、当該地域を管轄する都道府県知事が地域の実情に応じまして順次規制地域を拡大してきたところです。
 福山委員御指摘のように、三千二百七十七の市区町村数のうち千七百十九、約五二%が規制地域を有する市区町村数でございまして、今回の悪臭防止法の改正とともに臭気指数に関する規制基準の設定作業が間もなく終了することによりまして一層苦情の実態に即した対応ができるようになる、法に基づく悪臭苦情への対処が速やかになると考えております。
 このことから、現在、規制地域を持たない市町村におきましては、都道府県知事に対し新たに規制地域の指定を希望するケースが増加すると見込んでいるところでございます。

○福山哲郎君 ぜひそこはしっかりとお願いをしたいと思っています。
 もう一つ申し上げると、先ほど政務次官言われたように三千二百七十七のうちの千七百十九指定地域があるとおっしゃっていますが、これは半分の市町村で全部の地域が指定地域になっているわけではなくて、いろんなエリアがあって、ひょっとするとカバーをしている面積、エリアの範囲でいうと一体どの程度なのかが全くわからないわけです。しっかりと苦情の件数をチェックされることも作業としては大変だと思いますけれども、苦情の中身を精査していただいて、そこはきっちり規制地域に指定していって、先ほど言われました規制外、蚊帳の外にならないように積極的な御配慮をお願いしたいというふうに思います。
 次に移りたいと思います。
 私は、先ほども申し上げましたように環境庁さんの人員的な問題、そして予算の問題も含めてなかなか全部が全部カバーするのは大変だというふうに思っているんですが、冒頭申し上げましたように悪臭の質的な変化、六〇年代からこの九〇年代にかけて悪臭の質的な変化というのはかなり変わってきていて、それまではいわゆる家畜とか動物臭というような形で、あそこのふん尿が臭いとか、あそこで家畜を飼っているから臭いとかいうのがあったわけですが、今はやはりそういう肥料や家畜というよりは、先ほど長官も言われましたようにばい煙、それから化学物質、そして先ほども出てまいりましたダイオキシン、それから産廃の焼却、そして今回もいろいろ問題になっています古タイヤの火災など、苦情の原因というのは大変多様化をしています。
 要は、それぞれが一筋縄ではいかないような問題で多様化しているわけで、その原因というのは先ほどから何回も申し上げていますが、化学物質でございます。そういった化学物質による悪臭が出ていることに対して、人体への被害も含めて、この悪臭の質的な変化ということに対して現在環境庁はどのような御認識でいらっしゃるのか、お答えいただけますでしょうか。

○国務大臣(清水嘉与子君) 先生御指摘のように、以前は確かに畜産業でありますとか、あるいは化学工場からのアンモニアでありますとか、そういった物質があったわけでございますけれども、今はかなり複合的なといいましょうか、一つのにおいだけでない、いろんなにおいがまざったようなもの、例えば飲食店などから発生するようなものが非常に苦情としても多くなっているというふうに考えております。そういったいわゆる複合臭というようなものが事業場に係る苦情の四割を占めているというような状況でございます。
 においというのは、これは人によってはいいにおいに感ずる人もいるし悪いにおいに感ずる人もいる、いろいろな難しい点があるわけでございますけれども、全体的には苦情の中身を見ますと、今申し上げたような複合的なにおいが非常に圧倒的に多くなっているということがございます。今回の法改正によりまして、これらの悪臭苦情に対しましても適切な対応が図れるというふうに考えているところでございます。

○福山哲郎君 適切な対応がなされるようにと。ということは、余り対応としては質的な変化について具体的に今のところ何か、適切なことで今回改正が行われたとは思うんですが、そこは具体的にはいかがですか。何かございますでしょうか。

○国務大臣(清水嘉与子君) 今の改正の中で出しておりますことでございますけれども、もしそういうことになりますと、当然事故の発生したときに直ちにその事故についての応急措置ということが講じられなきゃいけないわけでございまして、そういう問題が起きますと当然市町村長にその事業者が通報しなきゃならない、そしてまたそれに対して応急措置を講ずることを市町村長は命ずるというようなことが今度はきちんと規定されることになっております。そのことに対して臭気測定業務従事者、いわゆる臭気判定士でございますけれども、そういった方々が活躍をしてその臭気に対してきちんとした評価をして、そして対応を図れるようにするというようなことを規定したわけでございますので、それがまた市町村の事務になったということもございます。
 つまり、そういう臭気の苦情があって、問題が出たときに早く対応することができるようになったということを申し上げているわけでございます。

○福山哲郎君 今のお話もそうなんですが、例えば事業者が悪臭を発生することを防止するような責務規定、中央環境審議会が、「事業者が悪臭の発生の防止に努める責務の明確化を図ることが必要」だというふうに言っているんですが、今回の改正では盛り込まれなかった。
 今環境庁長官がおっしゃられましたように、起こったことに対して応急措置をするということは、これはもうはっきり申し上げて、先ほど言ったように質的な変化をしているわけですから、人体にも生態系にも影響が起こる可能性がある、そこで応急措置をしていかなければいけないというのはもちろんなんですが、起きる前の予防的な措置としてもこの悪臭防止という点に関してはそろそろやっぱり積極的に対応していかなければいけない時代になってきているのではないかというふうに私は思っております。
 今回の事業者に対する悪臭の発生をしないための責務規定等が今回外されたわけですけれども、こういった点についてはどのようにお考えでしょうか。

○国務大臣(清水嘉与子君) 中央環境審議会からの御答申もいただきまして、今回の改正案に事業者の責務規定を設けるということについても私ども実は検討したわけでございます。
 しかし、あらかじめ指定した地域において規制を行う制度をとっております現在の悪臭防止法の体系でございますと、必ずしもすべての事業者に対する責務を規定するということに対して、それとはちょっと整合しないというような法制上の判断がございまして、今回の改正案には盛り込まれなかったわけでございます。

○福山哲郎君 非常に私としてはそこは不満な点なんですが、さらにもう一つは、やはり審議会でもそうですし、今大変問題になっているのは野焼きの問題ですね。その野焼きを防止するために規制を強化するということは大変必要だというふうに思うんですが、実はこの改正案を見ると野焼きの文字はどこにも見当たらない。これも先ほど申し上げた事業者の悪臭を放つことを防止する責務ということと、この野焼きに対する対応ということは非常に重要なことだったんですが、残念ながら今回、野焼きの字が入っていなかった。
 これは一体どういうことだったのか、御答弁いただけますでしょうか。

○国務大臣(清水嘉与子君) この野焼きの問題もいろいろ問題になったのでございますけれども、廃棄物の野外焼却につきましては、既に今国会に提出されております廃棄物処理法の改正案におきまして一定の廃棄物の焼却行為の禁止が規定されております。そしてまた、その違反者に対する直罰の適用も規定されておりまして、これで廃棄物の野外焼却は相当程度カバーされるというふうなことでございまして、今回は入れていないわけでございます。
 悪臭防止という観点からの野外焼却の規制ということにつきましては、現行の悪臭防止法の規制措置が改善勧告でありますとかあるいは改善命令などございますので、そういうことで対応することにしているわけでございまして、今相当程度、廃棄物処理法の改正案によりまして、この廃棄物処理法におきましては十六条の二におきまして、「何人も、次に掲げる方法による場合を除き、廃棄物を焼却してはならない。」という規定がございまして、幾つかございます。そして、その廃棄物処理法の第二十六条には、八号におきまして、「第十六条の二の規定に違反して、廃棄物を焼却した者」に対しては「三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、」というようなことが記載されておりまして、こういったところで廃棄物処理法と相まってこのことをきちんとしていきたいというふうに考えているわけでございます。

○福山哲郎君 恐らくそう御答弁されるだろうというふうに思っておったんですが、廃掃法の改正はまだ通るかどうかわかりませんね。まだ法案が通るかどうかわからないし、さらには廃掃法で野焼きを全面禁止しているのも存じているんです。
 廃掃法というのはあくまでも廃棄物の処理について定めたものでございまして、これは燃やしているものが廃棄物ではないと言われたらどうしようもないんです。それから、この悪臭防止法でも住宅密集地域の野焼きしか禁じていませんから、結果的には、地域的にもそうですし、燃えている物質的にもそこからこぼれ落ちるものが何個も出てくる。
 それは野焼きをする人間が悪いわけで、それを全部環境庁に面倒を見ろということも僕は余り言いたくはないんですけれども、その辺では法律的には今抜け穴が少しできているのではないかなというふうには思っているんですが、そこはいかがでしょうか。

○国務大臣(清水嘉与子君) 例えば古タイヤなんかにいたしましても、これが廃棄物であるのかあるいは有価のものであるのかという問題はいつも起きているわけでございますけれども、大体は廃棄物のものが多いわけでございます。しかし、そういったところで問題が起きているということもよく承知しているわけでございます。あとは、例えば電線等を焼却したり金属を有価物として回収する事業というのはあるわけですけれども、今は有価物を野外焼却しているというようなことについては余り行われていない実態だというふうに聞いているところでございます。
 先生の御指摘ではありますけれども、これも重ねての御答弁になりますけれども、有価物を野外焼却する場合には、やはり現行の悪臭防止法の規制措置で対応することにしたいというふうに考えるわけでございます。

○福山哲郎君 もう時間がありませんのでこれで終わりにしますが、来年環境省となって、廃棄物行政も厚生省から引き取って環境省でやられるとなると、廃掃法もこの悪臭防止法も両方環境省の所管になるわけでございます。そういう点も含めて、今回の改正については私は大変評価をするものではございますけれども、いろんな時代の変化さらには法律的な抜け穴の点も含めて、より一層しっかりと対応していただきますことを強く要望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。

 

第147国会  参議院  国土・環境委員会  2000年4月20日

○福山哲郎君 私は、ただいま可決されました河川法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・保守党、民主党・新緑風会、公明党・改革クラブ、日本共産党、社会民主党・護憲連合、参議院クラブ及び二院クラブ・自由連合の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
    河川法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、本法の施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講じ、その運用に遺憾なきを期すべきである。
 一、政令指定都市への河川管理権限の委譲に当たっては、国は関係都道府県及び関係政令指定都市と十分連携をとるとともに、政令指定都市の財政負担の緩和に努めること。
 二、政令指定都市への河川管理権限の委譲により、関係政令指定都市がその発意に基づき、速やかに浸水対策を推進できるよう努めること。
 三、市町村工事制度の運用に当たっては、水系全体における一貫性のある河川事業が行われるよう、河川管理者及び市町村長は十分協議するとともに、地域の創意工夫が十分反映されるよう努めること。
 四、都市河川が都市における貴重な水辺空間であることにかんがみ、その整備に当たっては、生態系に配慮するとともに、利用者である市民に親しみやすい河川環境が創出されるよう努めること。
 五、河川整備を行うに当たっては、本年一月の河川審議会答申「川における伝統技術の活用はいかにあるべきか」を踏まえ、伝統技術の知恵を現代に合わせて活用し、環境や歴史的風土との調和に努めること。
   右決議する。
 以上でございます。
 何とぞ御賛同いただきますようお願い申し上げます。

 

第147国会  参議院  国土・環境委員会  2000年4月4日

○福山哲郎君 佐藤委員に引き続きまして福山でございます。どうかよろしくお願い申し上げます。
 まずは冒頭、佐藤委員も言われましたけれども、有珠山の火山活動に関しまして、国土庁長官並びに国土庁におかれましては大変迅速な対応をしていただきまして、おかげさまでけが人も負傷者もないような状況でございまして、大変感謝をいたしております。今後も引き続きまして万全の対策を期していただきますように、まずは心よりお願い申し上げます。
 今回、この住宅金融公庫法の改正ということでございまして、住宅金融公庫がこれまで住宅政策に大きな役割を果たしてきたのは大変評価に値する。日本の住宅事情が悪いということをずっと言われ続けてきたわけですが、悪いと言われている住宅事情をよりよくするためにも金融公庫がいろんな面で役割を果たしてきた。しかし、別の方面で見ますと、土地神話や持ち家奨励という別の意味の役割も果たしてきたというふうに考えております。
 後で質問させていただきますが、今、土地が下落したり賃金がカットされたり失業が起こったりというような状況の中で、やはり住宅政策も、今回の改正に見られるように、少し曲がり角というか、転換点を迎えているような気がしております。
   〔委員長退席、理事市川一朗君着席〕
 ましてや、先国会では良質な賃貸住宅の供給促進法が可決されて、賃貸住宅とのバランス等も建設省がお考えをいただいているところだというふうに思いますけれども、先ほど山下委員も聞かれましたが、これまでの住宅金融公庫の存在意義と将来に向けて建設大臣がお考えになります公庫の今後の役割について、これまでとは違った役割も出てくるかと存じますが、ぜひ、まずはその点についてお答えをいただきたいと思います。

○国務大臣(中山正暉君) 福山先生にも有珠山のことで大変御配慮をいただく御発言をいただきましたことを、対策本部一同に成りかわりましてお礼を申し上げたいと思います。
 今の先生の御質問でございますが、住宅金融公庫の基本的な役割というのは、広く国民に対して長期で固定的で低利の住宅資金を安定的に供給するとともに、その融資を通じて住宅の質や居住水準を向上すること、それから我が国の住宅事情、ウサギ小屋とかなんとか外国から批判を受けたこともございますが、大都市圏を中心にした狭小な借家、それから高度成長期に形成された劣悪な住宅ストック、そういうものの存在を解決すべく、課題が多いところでございます。
 少子高齢化の進展に伴いまして、特に子供を産んでいただけるような環境の基本は住宅だと思いますから、それの進展、また省エネルギーそれから省資源型社会への移行、それから良質の住宅をいかにストックするかという、そのストックの形成に当たって新たな政策課題にも直面していかなければならないと決意を固めております。
 今回の公庫法の改正では、こうした政策課題を踏まえまして、一つには、新築住宅について一定の耐久性を要件化することとあわせて償還期間を三十五年に一本化して、いつから借りられるかということでは、八十歳までを限度として償還をしていただけるようなことを考えております。二番目には、良質な中古住宅に対する融資の充実、これは償還期間の延長を考えております。それからまた、計画的な共同・協調建てかえを支援する都市居住再生融資の創設、こういうものを行いたいと思っております。
 今後とも、住宅政策の諸課題の解決に向けまして住宅金融公庫が大変重要な役割を果たすものであると私どもも確信をいたすところでございます。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 そういった中で、大変私ごとで恐縮なんですが、私、今三十八歳でございまして、私の同年代の仲間は、サラリーマンをしている人は、早い人で三十とか二十代の後半でマンションとか家を買われてローンを組まれた。早い人はそのぐらい、次の波が実はちょうど僕の時代に来ていまして、この一、二年に私たちの友人とかが土地、住宅、マンションを買おうという動きが出ています。
 そのときに、私はこういう仕事をさせていただいている関係で、土地の値段が下がっているから、福山君、今買いどきなんやろかという話が来たり、でも買って下がったら困るなとか、そうかと思うと、給料がある程度上がってきたのがこの不景気でちょっと横ばいになりかかっているのが多いんですね、私たちの世代。本来だったら、一生のライフプランをつくるときに、ここから上がるはずがちょっとその上がり方の角度が弱くなっている。
   〔理事市川一朗君退席、委員長着席〕
このときに長期のローンを組んでほんまにえんやろかという相談事とか、どうやろうという見通しをよく聞かれるわけです。
 私もそこで軽々な判断ができないという状況の中で、十日ほど前、国土庁から公示地価の九年連続下落と、住宅地が四・一%、商業地が八・〇%と下げ幅拡大というような発表がありまして、新聞にもそれが大きく出ていた。
 これは、単に建設省だけではなくて、現下の経済状況、金融の状態、いろんなものが含まれて土地の価格に反映するわけですから今見通しをいただくのは厳しいのかもしれませんが、現在の下げどまらない地価の下落傾向について大臣はどのようにお考えをいただいているのか、また今後の見通しについて、もし伺えることがあればお伺いをしたいと思います。

○国務大臣(中山正暉君) 大変難しい御質問をいただきましたが、私ももう六月が来ますと六十八歳でございます。先生は三十八歳と、希望に満ちた日本国になってくれればいいなという気持ちから、土地の問題というのはなかなか難しい問題でございまして、百三十年ぐらい前には、大名でも、きのう福島にいたかと思ったら四国へ改易させられるといいますか、個人の所有というものはなかった時代がありました。
 こけんにかかわるなんというのは、武士がある程度土地を持っていて、こけんというのは武士が持っていた土地のことらしいんですが、それを手放すのが武士のこけんにかかわったというそういうものもあったようでございます。
 棟割り長屋といって、大家といえば親も同然、たな子といえば子も同然、落語のまくらによく出てきますけれども、そういう感覚でいきますと、土地の値段というのは、不動産関係の業者にしてみたら、何とか土地の値段が上がってくれるようにということをおっしゃいますし、家を買うまでの方には、先生の今御質問の中にありましたが、土地の値段が下がったら今買いどきだなと。しかし、一遍買った人は、今度は資産価値が下落しますから土地は下がらない方がいいとか、土地に対する思いというのは本当にいろんな思いがあります。
 そもそもは、神様からいただいた地球上の土地というのは、地球と言っていますが、私は七割が水ですから本当は水球と言うのが本当だと思っているんですが、地球というこの限られた場所をどういうふうにみんなが価値を尊重するか。
 私は、貸し家の感覚、いわゆる定期借家制度が発達していくことは、お若いときには借りて、ある程度の年齢になったら自分の家を持って、そしてまたそれが、相続税の問題なんかありましていろいろ難しい。御主人が死んで第一次相続から今度は二次相続のときの方が、奥さんが今度は亡くなって子供に渡すときも、二次相続のときの土地の問題というのは、相続分というのは残された方にありませんから、そういう土地の問題というのは、相続の問題なんかに関しても、税制の問題なんかに関しても大変いろんな問題があると思います。
 とにかく、今回の地価公示による昨年一年間の地価動向を概観いたしますと、地価は住宅地それから商業地ともに全体としては下落が続いておりますけれども、特に大都市圏では、前回の公示とは異なりまして下落幅が縮小した地域が多く見られたことが特徴だと思います。
 それから、下落幅が縮小した地域につきましては、住宅地では一連の住宅需要喚起策の効果によりましてマンションを中心に需要が顕在化してきたこと、商業地では緩やかな景気の改善がオフィス需要に反映したことなどがその要因と考えております。
 それから、今後の地価動向でございますが、現在と同様に基本的には実需を反映して推移すると見られておりますが、用途別に見ますと、住宅地については、一連の住宅需要喚起策によるマンションなどへの需要の顕在化が地価に反映された動きが持続的に推移するところが注目されているところでございます。
 それから、商業地につきましては、全体として景気動向を反映して地価は推移しますが、二つに分かれていく、二極分化といいますか、そういう二極的な動きをいたしておるというのが現状ではないか、これからの動向もそういう形で続いていくのではないかと思っております。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 こういうことはもうこれ以上はあれなんですが、ただ、今大臣がおっしゃられたように、土地のそれぞれの収益性において土地の価格が一部は上昇しているところがあって、あとは一般的には下落傾向だと。今大臣がまさにおっしゃったように二極化ということで、どうも収益性という観点で見ると、土地に対する見方が少しずつ、やっぱりそれは変化のあらわれではないかな、土地の評価に対する状況が少し変わっているのではないかなというふうに私は思っております。
 先ほど申し上げましたこれから買おうかと思っている私の友人の方は、まだ買おうかなと思っているだけいい方でございまして、次の質問は、逆にもうローンが厳しくなって、賃金も減ってリストラされてという状況の中で、今回この公庫融資にかかわる延滞債権というのが平成八年度、九年度、十年度、かなりの率で上昇している。それから、公庫保証協会の代位弁済も、平成九年度から十年度にかけて大体一・五倍ぐらい、それに伴う競売の状況も、平成九年度から十年度にかけては六千八百件だったものが九千三百件ということで約一・五倍にふえている。バブルと比較すると余り意味がないのかもしれませんが、九〇年のバブルが来る直前と比べると、住宅ローンの破綻は三倍ぐらいに膨れ上がっている。これはやはり大変問題だと思います。
 この問題点について、この住宅ローンの破綻が急増している現状について金融公庫の総裁はどのように御認識をされているのか、まずお伺いしたいと思います。

○参考人(望月薫雄君) 先生が先ほど来るる御発言のような経済環境の中で私どもが御融資申し上げている住宅金融に関してだけでもかなりの破綻状況が進行しているということは、率直に言って事実でございます。
 トータル的に見ると、私ども住宅金融公庫の債権は、いわゆる破綻率、数字で言いますと十年度末でもって〇・四七というようなパーセントでございます。他に比べますとかなり優良な状況にはありますけれども、問題は、その一人一人の公庫を御利用いただいている方々の返済の状況がどうかとなりますと、お話しのように厳しい状況になっている。
 これは、もう言うまでもありませんが、その間におきます企業リストラ、倒産あるいは勤務時間の短縮等々もろもろの要因がかかわっているわけでございまして、御利用いただいている方々が長期の返済計画に大きな狂いが出ているということの証左であろうと存じます。
   〔委員長退席、理事市川一朗君着席〕
 私ども、こういった方々に対してどういうふうな対応をするかということが実は今大変に大きな課題であると認識しております。正直言って、だれにしましても、持ち家をお持ちになるまでの間に大変な御苦労もなさり、あるいはやっとの思いで我が家を手に入れられた。それが、給料も上がらない、あるいは場合によってはリストラを食う等々の中でこういうことが出ているわけでございます。
 そうなると、人によってさまざまな事情がございますけれども、私どもとしては、できる限り最大限の力を傾注して、金融機関にもお願いしながら、いかにこの方々にこの数年間を頑張っていただけるのかいただけないのか、その間に私どもの融資の返済条件をどう変えたらその道が開けるのかというようなことを相談し、見きわめながら、今個別の対応に精力を傾注しておる、こういう状況でございます。
 余り数字のことを言ってもいかがかと思いますけれども、端的に言って、平成十年四月からこの十二年一月までの数字をちょっと見てみますと、そういう格好で返済方法を変更した案件が七万件になっております。
 七万件というとかなりの数であるわけですが、私ども、その中で、とりわけゆとり償還利用者に対する条件変更だとか、あるいは平成十年に閣議決定されました方針に基づいて新しい特別措置を講じていますけれども、こういったもの等々を合わせますと一万八千件。
 いずれにしましても、こういった数字が出ているということは、そういった個別の相談、対応の中で何らかの条件変更をしながら頑張っていただくと、こういうふうな次第で努めているということでございます。
 なお、今先生御指摘の代位弁済。こういった努力を重ねながらも、どうしてもそれにうまく乗らない、対応できないという方々も正直言ってございまして、おっしゃるように、平成十年度の公庫融資保証協会による代位弁済の件数は一万四千件余りということになっております。金額で二千億円ということで、御指摘のとおり、これも前年に比べ、あるいは前々年に比べてもふえているということは事実でございます。
 こういったこと等を見ますると、私どもは、公庫融資をお貸し申し上げるときにも、やっぱり余り衝動的にお借りいただくということ、そういうことは、大変失礼かもしれませんけれども、やっぱり自分の長い生活設計というものを考えながらどうだろうかということについての我々の相談というものも、単に審査というレベルでなくて、相談業務も非常に大事だということで努力させていただいているさなかでございます。

○福山哲郎君 大変誠実にお答えいただきまして、ありがとうございます。
 公庫で借りて住宅を建てる方は、今総裁がおっしゃられたように、ある意味でいうと、長年の夢を実現させる状況で公庫を使って家を建てた。ところが、社会情勢、経済状況の厳しい中で、今のようなどちらかというとつらい状況が起こっているということですので、先ほどの条件を変更することも含めて、ぜひ今後も引き続きそういった方々に対する対策を積極的に講じていただきたいと思います。
 そこで心配になるのは、公庫保証協会の代位弁済の額がどんどんふえていった状況の保証協会の財務状況でございます。現状では一体どのような状況になっているのか、お教えいただけますでしょうか。

○政府参考人(那珂正君) 保証協会の財務といいますか経営の基本は、今先生御指摘になりましたように、近年大変ふえております代位弁済に対してどういう収入で収支相償うかという問題でございますが、一つには利用者から徴収する保証料、それから担保物件の競売等による処分代金、この二つで収支相償ってきているわけでございます。
 しかし、御案内のとおり、代位弁済も近年、毎年少しずつ金額はふえてきておりますし、一方で、例えば競売価格が下落しているというようなこともありまして、保証協会の財務、経営を取り巻く状況は大変厳しいものがあるというふうに理解しております。

○福山哲郎君 余り具体的にはお答えいただかなかったんですが、今まさにおっしゃられたとおりでございまして、利用者にとって、例えば万々々が一手を上げて競売にかかったような状況の場合でも、思っている以上に土地の価格が値下がりし、住宅に対する評価が低くて、残っているローンよりも競売価格がずっと低くて残るは借金ばかりなりと。出ていかなければいけない状況の中で困っているという状況が大変あるわけです。
 私は、これはある意味でいうと自己責任の問題もあると思うんです。無理なローンを組んで無理な住宅を購入したという自己責任の問題は、これからの日本の社会においてはかなり問われてくると思います。すべてその住宅購入者に過失がないとは言えないと私は思っています。
 ただ、欧米なんかでお伺いをしますと、抵当権の設定の分だけ住宅ローンを組むと。ですから、その抵当権の分だけ、ある程度いけばもう残らないというような状況があるということも伺っておりまして、この住宅ローン破綻者を救済する、今の状況もそうですが、将来にわたってセーフティーネットの必要性みたいなものを私は感じております。
 これだけ経済も不透明な状況でございますし、終身雇用も崩れ出しておりますし、賃金の右肩上がりの上昇というのもちょっとクエスチョンマークがついているという状況の中で、今回、ローンの期間を延長したり金利を優遇したりするという住宅金融公庫の法案を改正しますけれども、それだけの長期のローンを組むというようなことに対するリスクというのは間違いなく高まっているわけでございます。
 そういう住宅ローン破綻者を救済するセーフティーネットの必要性等について建設大臣はどのようにお考えなのか、御答弁をいただきたいと思います。

○国務大臣(中山正暉君) 確かに、先生御指摘のございましたずさんな人生設計からいいかげんに手を出した人は別のことといたしまして、ちゃんとまじめに計画を立てて、人生設計を立てていましたが世の中の変動についていけなかった人に対する配慮というのが、私はこれは大事なことだと思っております。
 特に、バブル崩壊後の今の失業率四・九とか、きょうも閣議で労働大臣から、いわゆる情報産業なんかは三〇%ぐらい伸びているけれども、それについていく技術者が一〇%ぐらいで、ミスマッチが起こっているという話がありました。それから、介護保険なんかの社会福祉関係、これも三〇%ぐらい伸びているけれども、それについていくそこで働く人が半分以下というふうなことで、期待できるような部門にもなかなか期待が持てないような社会情勢の中で、公庫の住宅ローンのいわゆる返済困難者対策というのは重要なことだと思います。
 公庫の住宅ローン返済が困難となった方々については、自力で返済を継続している多くの方々との公平性の問題も配慮しなければなりませんし、現在の公庫において最大限の措置を講じているものと。
 今、公庫の皆さん、この間も私、金融公庫を視察に行きましたが、事細かにそれに対応していらっしゃる姿を窓口で見せてもらいました。
 具体的には、返済が困難になった方々に対しまして返済期間の延長、これは最長十年を行うとともに、失業者等に対しましては元金の据置期間の設定、最長三年、それから元金の据置期間中の金利引き下げ、五%超えを五%に縮小するということでございまして、そういうことをやっていただいているようでございます。
 さらに、個々の住宅ローン利用者の延滞の原因は家計ごとにその事情が異なりますので、現在講じております枠組みの最大限の活用をして家計の実情に応じたきめ細やかな対応、それぞれの個人の状況というのは本当にミクロの世界に私は入り込んで御相談に応じなきゃいけないと、そういうふうに考えております。
   〔理事市川一朗君退席、委員長着席〕
 長期延滞者には六カ月間の猶予をするとか、いろいろ対策を立てておりますところでございますが、今後も、そういうことにきめ細かな対応を私どもは金融公庫に期待いたしております。

○福山哲郎君 将来に向けてさらに具体的な方向を指し示していただきたいと思います。
 そういう中で、先ほどの質問で建設大臣が、景気回復の根幹が住宅政策だったというお言葉がありました。それは私もあながち否定する気もございません。堺屋経済企画庁長官は二番バッターだというふうにずっと就任以来言われておられまして、現実問題として昨年度のローン減税も含めてそういう政策をとってこられた。
 しかしながら、住宅ローンの返済負担率というのを家計調査で見ますと、昭和五十六年から五十九年、六十年代ずっと実収入における住宅ローンの返済の支出割合というのは大体一一%ぐらいで推移していたんですが、平成十年一三・九、そして平成十一年は一四・九と急拡大をしております。平成十二年一月の家計調査の速報を見ますと、実収入でマイナス二・五%、可処分所得は実質マイナス一・五%ということで、恐らく平成十一年の家計調査報告の一四・九%よりも返済負担率は、ことしに入ってまだ比率は上がっていて、有史以来というとオーバーですが、多分最高の返済負担率になっている。
 地価は下落している、リストラがあちこちで聞かれる、それぞれの返済負担率が過去最高になっているということになると、間違いなく消費というか、家計の中でほかのものに使おうというモチベーションは落ちるわけです。そうすると、二番バッターが住宅政策、三番バッターが消費だと言われて、二番バッターがそこそこ活躍をして消費に向くんだともともと政府が言われていた景気対策の中で、この住宅対策が逆に言うと消費を減退させているのではないか、住宅政策と政府の景気刺激策ということに対して多少矛盾した結果が起こりつつあるのではないかという問題意識が私の中にあります。
 この点に関して、建設大臣に御意見を御答弁いただければと思います。

○国務大臣(中山正暉君) おっしゃるとおり、非常に当を得た御発言だと私は思います。
 特に、消費というのが経済の中で六五%、二番バッターが住宅という御指摘がありましたが、こうしてもう肥大化してしまって、世界第二番目の経済大国、そのうちのGDPに土地の値段が入って、それは何か上げ底のお菓子箱みたいな感じに、私は日本経済というものの底が、底の厚みだけ、そのお菓子箱の厚みだけ本当にお菓子が入っているかしらという思いをするのが先生の御指摘のようなお話で実感を持つわけでございます。
 しかし、タンカーのような大型の日本経済が、これは小回りがききませんので、今おっしゃったような急激な経済変動についていけないそういう状況を、まさしく先ほど御答弁申し上げましたように、きめの細かな配慮で。
 国というのは、これだけのまだ金融資産千三百三十三兆ある。制度は変わりましても、外国からお金を借りるんじゃなくて国民のお宝を借りながら金融公庫の政策を財投債のようなもので運営していくというのは、まさにそこは国民の皆さん方にしばらく辛抱してくださいということで私は対応していくような背景が先生のお話に対する、確かにそれもミスマッチだと思います。
 家計で消費に使う、旅行にでも行こうかとか思っていたものがみんな住宅のローン払いに回っていくようなそういうお若い家庭、子供さんに楽しみを与えてあげられるような御家庭への配慮というものが私は大事なことだと思います。
 これまで厳しい経済状況の中において、自己の投資額のみならず耐久消費財を拡大するなどの大きな経済効果を有する住宅投資の拡大を図ることは経済新生のために重要な課題と認識をいたしておりますので、住空間の拡大を図ること、それから二十一世紀の豊かな住生活を実現する上でも御指摘の点は重大な課題でございます。
 住宅投資についても、国民の適切な負担のもとでその持続的拡大を図るために、住宅ローン控除制度の延長とか、それから住宅金融公庫融資の大きな改善等の措置を講じてきたところでございますけれども、今後とも、これらの施策の積極的な推進を図るとともに、安定経済成長への移行に対応して、賃貸住宅市場それから中古住宅市場等の活性化を通じた居住水準の向上に努めていかなければならないと思います。
 堺屋経済企画庁長官のお話を聞きましても、六月ごろになってきたらと。大分設備投資もふえてまいりました。そういうものに期待をしながら、総理大臣の御不快はありますけれども株の値段も下がっておりませんし、そういう面でこれからの日本経済の回復を図ることが、そういう住宅問題という国民の基盤をつくり上げるために我々国会それから行政におります者の大変大きな使命だと思っております。

○福山哲郎君 大変誠実にお答えをいただきまして、ありがとうございます。
 実はもう少したくさん質問を用意していたのですが、もう時間がほとんどありませんので、あと二つだけお伺いをして、大臣に御答弁を。
 今回の法案改正で中古住宅に対してかなり優遇措置をして、ストック重視だと。これは、住宅宅地審議会等で出てきた市場重視、ストック重視という住宅宅地政策の転換についての提言が背景にはあると思うのですが、私は一つだけ先ほどの話と同様の矛盾を感じております。
 新築住宅をやはりある意味で言うと一定の方向で政策としては打っていかなければいけない。新しいものがどんどん建って、例えばローン減税も含めてやろうとしているのに、中古を幾らリフォームを推進して優遇したからといったって、これはマーケットで言えば、やっぱり中古のマーケットというのは、新車のマーケットがどんどん出てきて大きくなっている状況の中で中古のマーケットを拡大して価格を上げようというのは、これは審議会で言われている市場重視という観点で言うとちょっと僕は難しいんじゃないかなと。そのためには、やっぱり最低限必要なのは、その中古住宅に対する評価の仕組みをもっときちっとつくらなければいけないのではないかと。
 今回も中古住宅に対する融資の中で規格みたいなのがあって、維持管理状況とか新築並みの基準とか維持管理体制というのがあるんですが、こういう画一的なものではなくて、もう少し中古住宅に対する評価の仕組みが整わないことには、審議会の言っている市場重視で中古をそこそこマーケットとしてでかくしようというのは、それは逆に言うと僕は非常に難しいのではないかなというふうに思っております。
 中古住宅を大切にしよう、ストックを大切にしようというのは、私はヨーロッパの町並みは好きですから大変いい政策だとは思うんですが、ちょっとマーケットを重視するとここは厳しいのではないかなというふうに思っているので、ぜひ中古住宅の評価システムを早急に建設省で御検討いただいて、国民に広くやっぱり御通知をいただきたいというふうに思っていることに対して御見解をいただきたいということと、先ほど申し上げた私が感じている矛盾についてどう思われるか、御答弁をいただきたいというふうに思います。

○政府参考人(那珂正君) 先生おっしゃるとおり、中古住宅の市場、ストック重視というようなことも含めまして、その前提としては中古住宅の適正な評価システムの確立が絶対の条件だと思います。
 そこで、私どもとしても、まず新築時における住宅の性能評価をきちっとやっておいて、それがそのまま中古住宅として使われるということが一つと、その後、新築された住宅が経年変化とともに適宜リフォームされたり修繕されたりします。そういう修繕履歴をきちっとまた蓄積していく、この二つが基本になろうかと思います。その上で、一定のマーケットがあれば適正な評価は行われるということになると思うわけでございます。
 新築時の評価につきましては、この四月から発足いたしました性能評価法で対応できることになると思いますし、また修繕履歴についてどういうふうに蓄積していったらいいだろうか、すべての住宅についての客観的なデータをだれがどういう形で保管していくのかというようなことも含め、現在早急にこれは検討を進めていくべき課題だと、こう思っております。
 その上で、もしそういう評価システムが確立されて健全な中古住宅市場が活性化されてくれば、私どもは、冒頭に先生が矛盾だとおっしゃったストック重視の一つの柱である中古市場の活性化というものは進むと思います。
 しかし、ストックについては、やはりマーケットに新しいいいストックが投入されるということと、その投入されたものが適切に維持管理されて適切に円滑に流通されるということはいわば車の両輪であります。
 そういう意味で、戦後間もないころから高度成長期に、どちらかというと資材不足の中で余り丈夫なものが建たなかったというような背景のもとで、更新期を迎えているそういう膨大な良質とは言えない住宅ストックの更新を建てかえという形で、これは新築になりますが、建てかえという形になるわけでございまして、そういう更新時期を迎えたストックについて新しいいいものを加えていくということと市場の活性化ということはまさに車の両輪だと、こういうふうに思っております。

○福山哲郎君 もう時間ですから。
 ありがとうございました。

 

第147国会  参議院  国土・環境委員会  2000年3月30日

○福山哲郎君 民主党・新緑風会の福山哲郎でございます。
 きょうから同僚の岡崎委員にかわりまして理事という大役を務めさせていただきます。まだ未熟でございますが、どうかよろしくお願いいたします、ピンチヒッターでございますが。
 二階大臣に際しましては、大変お忙しいところありがとうございました。私は恥ずかしながら運輸行政に関しましては大変勉強不足でございまして、幾つか的外れなことも言うかもしれませんが、どうかお許しをいただきたいと思います。
 まず、今回、港湾法の一部改正案ということで、この港湾法というのは、制定されたのが昭和二十五年、今からもう五十年も前でございまして、そういう時代背景ですからアメリカの影響も大変強く受けておりまして、一説によりますと、地方分権の色合いが非常に強い法案だというふうに伺っています。
 今回、その法案を五十年ぶりに大きい改正をするということで大変重要な意味を持つと思っておりまして、二十一世紀を目前に控えまして恐らく運輸省としては相当な決意を持って今回の改正に臨まれたというふうに思っておりますので、この改正の意義、そして目的の大臣の御所見をいただきたいと思います。

○国務大臣(二階俊博君) お尋ねのとおり、近年、この港湾につきましては相当グローバル化が進んでおりますし、経済社会の構造の変化が急速に進行しておる。時あたかも港湾法ができて五十年という区切りのときでございますが、経済構造改革等の取り組みを進めていこうということで、港湾におきましても、国際競争力を備えた活力のある社会の構築、国民生活の向上等を図るとともに、環境の保全に対する国民意識の向上等の時代背景といいますか、そうした状況を的確にとらえて、これにこたえていく必要があろうというふうに考えております。
 今回の改正は、こうした背景を踏まえて、全国的、広域的な視点から効率的でなお重点的な整備を、そしてその適正な管理運営を推進していくとともに、港湾における環境施策の充実により、より積極的にこれに取り組んでいく上で必要となる措置をこの法案で講じようといたしておるところでございます。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 まさにグローバル化、そして効率的な運営、そして重点的な整備と、大臣のおっしゃるとおり大変重要な視点だというふうに思います。
 そこで、この港湾法の改正に至った背景について少しお伺いをしたいと思います。
 この港湾法の改正は、港湾審議会でずっと議論をされたというふうに伺っておりまして、昨年の七月、中間報告が出され、その後、最終答申を経て今回の改正につながったというふうに思っています。
 実は、私、中間報告を取り寄せましてずっと読んだところ、大変いいことがたくさん書いてありまして、これまでの港湾行政の反省を踏まえた上でのいろんな御議論が展開をされたんだなというふうに推察ができるような状況で、その中で非常に特徴的なことは、「国は、将来貨物量の見通し、効率的・効果的な港湾の配置・機能・能力等を明らかにしたグランドデザインとしての全国計画を明確に示すべきである。」というふうな文言がこの中間報告ではなされていました。
 ところが、全国的なグランドデザインをつくるというのは、御批判があるような、いわゆるばらまき行政ではないかとか、きょうも午前中に同僚委員の方から話がありましたが、非効率な整備が行われてしまうのではないかという反省に立った上での議論だと思うんですが、残念ながらこのグランドデザインという言葉が今回の法改正には反映をされていなかった。
 五つの今回の改正内容というのは、港湾の分類の定義、国の負担割合の見直し、それから広域的な連携、そして港湾環境政策、それから放置艇の対策ということがあったわけですが、このグランドデザインに関しては表現がされなかったというふうに思っております。
 私は、午前中、高野委員の方から戦略がなかなか見えないというふうに言われ、それが実は去年の中間報告には必要だというふうにうたわれていたのがなぜ今回の法改正に反映をされていなかったのかということからまずお伺いしたいと思います。

○政務次官(鈴木政二君) 福山委員は去年の七月の港湾審議会の中間報告をお読みになったということでありまして、私ども運輸省としましても、今回、港湾の配置、機能、能力、今お話のありましたようなグランドデザインを明確にすべきだという提言も港湾審からいただいておりますので、この提言を受けまして、今回の改正においては、運輸大臣が作成します基本方針の記載事項にそうしたものを踏まえた港湾相互間の連携に関する事項を追加させていただきました。
 そして、法の改正後できるだけ早く、一刻も早く基本方針を改正することとしておりまして、その中で、今お話しをしましたように、全国的、広域的な視点から港湾の配置、機能、能力に関する基本的な事項について記載をさせていただきたいと思っております。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 確かに、基本方針はあります。基本方針はあるんですが、もともとの港湾法の三条の二、これは大臣も政務次官ももう百も承知のことだと思いますが、「運輸大臣は、港湾の開発、利用及び保全並びに開発保全航路の開発に関する基本方針を定めなければならない。」と。もともとこの港湾法の第三条の二に基本方針を定めなければいけないというのがありまして、その基本方針は、「交通体系の整備、国土の適正な利用及び均衡ある発展並びに国民の福祉の向上のため果たすべき港湾及び開発保全航路の役割を考慮して定める」となっているわけですね。
 今の連携をつけ加えられるというお話はごもっともとは思うんですけれども、この中間報告で言っているグランドデザインというのは、単に連携を深めて広域的な、効率的な運輸行政をするということだけではなくて、後でまた御議論させていただきますけれども、今ハブ港湾としての日本の国際的な地位が低下をしているという状況の中で、日本がどういう位置づけでこの港湾行政を今回、特定重要港湾等々を定めるに当たってしていくかという、もともとのグランドデザインが必要だという問題意識の中でこの中間報告で私は出てきたんだと思っているわけです。
 今政務次官がおっしゃられたような、基本方針に連携をつけ加えるような、申しわけありませんが、そういったたぐいのレベルでこの中間報告にグランドデザインが必要だとは。ここにはしっかり書いてあるわけです。「将来貨物量の見通し、効率的・効果的な港湾の配置・機能・能力等を明らかにしたグランドデザインとしての全国計画を明確に示すべき」と書いてあるわけであって、連携、効率だけに特化をした話ではないわけでございますので、今もおっしゃられた基本方針でそれを充当するという御意見は、確かに承りますけれども、少し足りないのではないかというふうに思うんですが、いかがでございますでしょうか。

○政務次官(鈴木政二君) おっしゃることはよくわかっております。
 ですから、今言いましたように、配置、機能、能力、やはりきちっと的確に把握をさせていただいて、もちろん先ほど言いましたように連携もきちっとさせていただきながら、そういうものを十分踏まえながら基本方針を改正させていただきたいと思っております。

○福山哲郎君 私、別にここで余りこの議論をたくさん続ける気はないんですけれども、能力とか配置とかいうのは、私はあえて中間報告に書いてあるから申し上げたのであって、五カ年の整備計画ももともと九六年につくられているわけですし、現実問題として、この十年来日本の港湾の国際競争力が落ちているということは、逆に言うと運輸省は百も承知だったわけで、その能力や配置や適性というものに関してはしっかりと知り得る立場にあったのが多分運輸省だと思う。というか、運輸省しか知り得る立場になかったわけで、私は、昭和三十六年に緊急措置法ができて、そして我が国が高度経済成長をしてどんどん物が入って物を出していかなきゃいけない、それが我が国の経済を発展させるためだということで港湾を整備しなければいけないということで九次にわたって港湾整備計画をされてきたことに関しては、もう甚だそのとおりだと思っています。
 ただ、そこがどこか曲がり角に来ているからこそ、今回五十年に一遍の改正をしていこうという流れの中で去年中間報告でグランドデザインを書けと言われたと。もともと基本方針は既存の法案の中にあるわけですから、そこに対してグランドデザインを今回省かれたということに関しては、甚だしつこいようでございますが、ちょっと残念だなというふうに思っておりまして、大臣、いかがでございましょうか。

○国務大臣(二階俊博君) 港湾は我が国にとっても極めて重要な公共施設でございますが、これらの港湾につきまして近年、東アジア諸国等が相当伸ばしておりますので、比較いたしますと、我が国は東アジアあるいは近隣アジア諸国の港湾に比べて相当見劣りがするような状況になりつつあります。
 したがいまして、荷役の問題等につきましても、だんだんと香港だとかシンガポールだとかが発展をしつつあり、我が国の港湾はそれだけやや競争力を落としておるわけでありますので、これらの問題について、改めて我が国の公共事業全体の中で考えるだけではなくて、もっと全国的な、いわゆる広域的な視点に立った取り組みをする必要があるというふうに認識をいたしております。
 既に提言をされておりますグランドデザインの提示につきまして、私どもも、先ほど政務次官が答弁申し上げましたとおり、基本方針を改正することといたしておりますので、その基本方針の中において御指摘のようなことに十分対応していきたいと考えております。

○福山哲郎君 わかりました。
 今のグランドデザインに関して細かく言うと、実は中間報告から最終答申の間で抜け落ちているんです。これはいろんな流れの中で抜け落ちたんだというふうには思いますが、そこの意図はあえて詮索をしないことにしておきます。
 では、もう一つ聞きます。
 これは中間報告にも最終答申にもあった話でございますが、昨年十二月十七日に最終答申が出されました。その中に、港湾行政の透明性と効率性を確保することということが大きな項目として提言をされています。透明性と効率性というのは非常に重要なことだというふうにありますが、これも残念ながら今回の法改正の重要な柱という形では表現がされなかった。
 これはどうしてなのかをお示しいただけますでしょうか。

○政務次官(鈴木政二君) 今お話しの中で、大変そのとおりだと思います。透明性、効率性というのは大変重要なことだと思っております。
 事業の透明性の確保については、御案内のように、事業採択後の一定期間を経過した事業についての再評価のシステムとか新規事業についての採択時評価は既に導入しておりまして、実施しております。
 福山委員御案内かもわかりませんけれども、十一年度の再評価の結果、事業を休止するものが、全国で三つの港がありました。これは具体的には述べませんけれども、一点だけ挙げるとするなら、採択を決めて五年経たところでもまだ着工ができていない地区があったわけであります。これは、千葉県の防波堤の問題もありまして、それも休止をさせていただきましたし、採択後、工事を十年間継続しましたけれども、これもやっぱり今の時代で見直して、途中で事業の採択というものを、中間でもう一つ残っている事業もやめさせていただいた事例もあるわけであります。
 そういう面で、さらに事後評価についても早期導入に向けた検討を現在進めておりまして、客観性、透明性の確保に十分努めているつもりでございます。
 今回の法律改正において、重複投資を避けまして効率的な整備を促進するため、港湾相互間の連携の確保に関する基本方針の記載事項の追加を先ほど言いましたようにして、重点投資を行うための重要港湾の配置の見直し、そして国庫負担率の見直しなどの措置を行うこととさせていただいております。
 これらの施策におきまして、港湾整備における透明性そして効率性を十分向上することができると考えております。

○福山哲郎君 今政務次官がお答えになられたことで、これは少し細かくなりますので、今お答えいただいたことなので局長にお答えいただければ結構なんですが、事業を採択したにもかかわらず五年間未着工のところがあったというふうに今政務次官がお答えになられました。これはなぜ未着工だったんでしょうか。

○政務次官(鈴木政二君) ちょっと落ちました。
 未着工になったんです。これを休止したということですから、確認をしていただきたいと思います。
 理由は、今局長の方からさせます。

○政府参考人(川嶋康宏君) 事業計画について認めておりますものにつきましても、いざ実際に現地で事業を実施いたしますときには地元でのいろんな調整が必要になってくるものがございます。そういった関連で、調整がつかない場合には着工するということができない場合もあるわけでございまして、例えば公有水面の埋め立てに関連いたしましても、漁業者の皆さんの御理解を得られない場合には実際には埋立免許を取得するということもできないわけでございまして、そういった社会的な事情等も含めて、事業が実施できないというものは全国に例はたくさんございます。

○福山哲郎君 今局長がまさにおっしゃられたんですが、事業計画を決めたけれども地元の事情とか社会情勢の問題があって未着工になって休止になってしまったと。それは逆に言うと、今私が問題にしている透明性の確保等について甘かったからこそ事業計画を決めて採択したけれども着工できなかったという事実が残っているんじゃないんですか。
 そこで、社会事情や地元の意見の反映があるからこそできなくて、そこは考慮しましたと言うのは、それは裏返しですが、おかしな話でして、そういうことが起こらないために透明性を確保しましょうというのが、中間報告にしろ最終答申にしろ審議会が出された趣旨なのではないでしょうか。

○政府参考人(川嶋康宏君) 委員御指摘のことについては理解をさせていただきますが、それぞれの事業についてはそれぞれの事情がございますので、それが着工に移されないということによってそれが透明性がないというふうなことではないというふうには理解をしております。

○福山哲郎君 いや、ですから、そういうことを申し上げているんじゃない。それぞれの事情があるからこそ透明性を確保しましょうと。審議会で透明性と効率性を確保することと両方、答申にも出されたものが、今までの既存のものがあるから結構ですといってこの法改正では入れなかったわけでしょう。
 それでは、何でこの法改正で入れなかったんですか。それぞれの事情があると今局長がお認めになって、事情があって事業を採択していたけれどもやらなかったものがある、そうだからこそこういうことが必要だと審議会では言われたんじゃないんですか。
 では、法改正で入れなかった明確な理由をお答えください。

○政府参考人(川嶋康宏君) 先ほど政務次官の方からお答えをいたしましたとおり、既にその制度を導入して実施しておりますので、港湾法の中に入れるということではなしに運用として実施しているということでございます。

○福山哲郎君 では、具体的な制度を、申しわけありません、御紹介いただけますか。

○政府参考人(川嶋康宏君) ちょっとメモがありませんので若干正確性を欠くかもしれませんが、私どもの組織の中に、出先も含めましてそれぞれのところで評価委員会というのを設けております。そして、それぞれのところで各事業について評価をいたしまして、それについて、継続すべきである、あるいは事業計画を変更すべきである、あるいは休止すべきであるといったことについて結論を出すことにいたしておりまして、最終的には運輸省の評価委員会にそれを諮りまして、結果として休止あるいは継続、そういったものを決めているものでございます。

○福山哲郎君 今までの既存の仕組みでは足りないからこそ私は審議会で出たんだというふうに思っていまして、この問題は先ほどのグランドデザインの問題、それから透明性、効率性確保の問題も含めて、今度は審議会のあり方そのものが問われてくるんです。
 例えば、審議会がしっかりと答申を出したにもかかわらず、取り入れやすいところだけ入れて、運輸省が自分の都合で取捨選択をして、例えばそれによって法律を改正する。私は、審議会の答申を一〇〇%すべて反映しなければいけないなんて、そんな頭のかたいことを言っているわけではないんですが、例えば効率性や透明性の確保やグランドデザインとして国が全体計画を出せということは、私はそう簡単に捨てていい話だとは思わないんです。
 もっと極端な話で言うと、国際競争力が落ちているということを運輸省自身が午前中の議論の中でもお認めになられているわけです。国際競争力が落ちているということは、単に整備をするだけではなくて我が国の国益上の問題が非常に重要であるわけです。
 その国益に関して言っても、国が全体としての港湾について、どういうふうな形で開発を進めていくのか、整備を進めていくのか、役割をどうしていくのかというのは、実は大変重要な問題で、もう一度申し上げますが、昭和三十六年に緊急措置法をつくって、このままじゃ日本の経済成長にそごを来すといって先人の知恵で一生懸命港湾を整備されたというのは、私は国益上の戦略があったんだと思います。
 ところが、それがなくなってきてこの十年間落ち込んでいるからこそこの改正をするということで、我々も、よし、この改正ならば頑張ろうということでこうやって審議をしているわけです。それにもかかわらず、グランドデザインはない、効率性、透明性はもう既存の制度であるから構わないじゃないかと言われると、私たちとしては非常に納得ができない。
 最近はやっておりますパブリックコメントでも全く同じで、パブリックコメントをとるはいいが、聞くだけ聞いてこんな結果でしたよと。でも、結果としては、取捨選択でいいところだけをとって、都合のいいところだけつまみ食いするような状況だと、やっぱり審議会のあり方やパブリックコメントのあり方、先ほど申し上げた透明性の問題というのはずっとつきまとうのではないかなというふうに私は思っているわけです。
 余りしつこく言ってもあれなんで、次に移ります。
 では、別の観点からいきますと、この港湾法というのは、先ほども申し上げましたように、明治以来もともと国家主導型であった港湾行政がこの港湾法の制定で大きく戦後変わった。いわゆる港湾というのは、管理者、地方自治体でございますが、地方自治体に管理責任をゆだねて、管理者が地域の発展に資する港湾計画を作成して運営するというスタイルがとられたわけです。極めて地方分権的であった。
 ところが、先ほどから事情を申し上げていますが、昭和三十六年から、これではだめだ、国策としてしっかりやらなければいけないということで、港湾整備緊急措置法が昭和三十六年に制定をされて、三十七年から五カ年計画がつくられたわけです。昭和三十七年は私が生まれた年でして、この法律と私は同い年になるわけです。要は、そういった社会情勢の変化に伴ってこの措置法が制定をされた。
 僕はこの間の明日香村と同じことを言っているんですが、何でこれがいつまでも緊急措置法なのかと。国として五カ年計画をきっちり定めてやっていこう、国策に基づいてやっていこうというものが、いつまでたっても緊急措置法だということに対して私は大変おかしいなというふうに思っておるのと、もう一つは、この港湾法と緊急措置法が、片一方は国が決めてやりましょう、予算の事業づけをしましょうという話で、片一方は港湾管理者が地域の中で自分たちで責任を持ってやりましょうと。
 この二つの法律の位置づけ、関係性というのはどういうふうなものになっているのか、お示しをいただけますでしょうか。

○政府参考人(川嶋康宏君) 港湾法につきましては、先生先ほど来の御指摘にありますように、港湾計画の制度でありますとか港湾管理者の設立の手続、その港湾管理者自身の業務、あるいは港湾区域と臨港地区の管理、港湾工事の費用負担、その他港湾の秩序ある整備と適正な運営を図るための全般的な事項を定めているものが港湾法でございます。
 一方、これに対しまして港湾整備緊急措置法と申しますのは、港湾整備事業を緊急かつ計画的に実施することを目的といたしまして、基本的には港湾整備の五カ年計画を定めて、その中で港湾整備事業の投資規模等を定めるその根拠になっている法律でございます。緊急かつ計画的にということで、先ほど来グランドデザインのお話もございますが、そういったものを含めて、港湾の整備の考え方、そういったものをこの計画の中で定めるそのバックボーンになっているのが緊急措置法ということでございます。

○福山哲郎君 でも、港湾法の中では、管理者が現実に整備計画等をつくることができるわけですよね。

○政府参考人(川嶋康宏君) まず、施設等の整備につきましては、港湾計画で定められているものについて施設の整備が行われるというのは基本であろうかと思いますが、そのときに、その施設整備の計画については、港湾管理者が発議してみずから計画をつくって運輸大臣に提出して意見を求めるというような制度になっているものでございます。
 港湾管理者自身は、みずからその事業を実施することもできますし、一方、国は港湾管理者との協議によりまして直轄事業を実施することができるようになってございます。そして、でき上がった施設については、港湾管理の一体的管理という趣旨に沿いまして、国は港湾管理者に施設の管理委託をして、国の施設についても港湾管理者に一体的管理をお願いしているものでございます。

○福山哲郎君 すると、港湾整備五カ年計画と港湾管理者がつくる整備計画との関係はどうなるんですか。

○政府参考人(川嶋康宏君) 港湾の整備計画の中には、先ほど申し上げましたように、港湾管理者がみずから実施する事業の計画と国が実施する事業の計画、その二つが含まれておるものでございまして、それらを包含した形で緊急かつ計画的に実施する計画として定められたものが港湾整備五カ年計画でございます。

○福山哲郎君 でも、現実には予算づけをするのは国ですし、各管理者がつくる港湾整備計画というのは、国の五カ年計画のある一定の縛りというか、枠の中でやらなければいけないということになるわけですね。

○政府参考人(川嶋康宏君) ある港湾におきます国と地方の実施計画というものは、大きな港湾整備五カ年計画の枠の中に入っているというふうにお考えいただいて結構かと思います。

○福山哲郎君 ということは、基本的には五カ年計画の中にあって、その中で各港湾管理者、いわゆる自治体が港湾計画をつくって、それがその五カ年計画、国のつくった枠組みの中ならオーケーということだというふうに私は今受け取らせていただいたんですが、そうすると、それに対して国のグランドデザインがない。港湾整備をするときには、あるときには管理者が自分たちでつくったんだと言う。でも、現実には五カ年計画の枠の中に入っているということで、そこら辺の位置づけが非常にはっきりしない。
 それから、先ほど申し上げましたように、もう三十八年もたっている法律がいつまでも緊急措置法であるという位置づけ等については非常におかしな感じがしているんですが、政務次官か大臣、お答えいただけますでしょうか、その辺に関して。

○政務次官(鈴木政二君) 先ほど、何遍も繰り返しになって恐縮でございますけれども、既にきちっとやっているものについてはなお一層努力をさせていただく覚悟でございますし、今お話しのように、地方分権の問題もありましてやはり地方の声も十分承らなきゃならない。そして、国は、先ほど言いましたように大所高所に立って、国益をもちろん中心として頑張らなきゃならない。そういう面で、私どもも先生の御意見を貴重な御意見と受けとめながら、また一生懸命やっていきたいと思います。

○福山哲郎君 では、少し具体的なお話に移りたいと思います。
 先ほど高野委員の方からもありましたが、日本の港湾施設の現状について数字で具体的にお教えをいただきたいと思います。
 例えば、コンテナ貨物の輸送量はここ数年どのような伸びをしているのか。そして、国際的に見た場合の競争力、特に、先ほど大臣もおっしゃっていただきましたが、東アジア圏で比較したときの日本の港湾施設、横浜や神戸などの貨物の取扱量はアジアの他の港、釜山や高雄やシンガポールと比べて十年余りでどうなっているのか、少し具体的な数字でお示しをいただきたいと思います。

○政務次官(鈴木政二君) 午前中もこういうお話が出たというふうに承っております。
 今お話しのように、平成十年における我が国の港湾の利用状況は、全体の貨物量が約三十一億六千五百万トン、そして外貿貨物量は約十億六千四百万トン、内貿貨物量は、当然でありますけれども、外国から十億六千四百万来れば内貿は当然ながらそこで承ってまた違うところへ、国内へ行きますから二十一億百万トンであります。そのうち、全国におけます外貿のコンテナ貨物量の取り扱いは、実績として約一億五千八百万トン、二十フィートのコンテナでいきますと一千六十万個になるわけであります。
 競争力についても、非常に港湾施設、またサービス、港湾コスト等のいろんな要因で競争力がおくれているということも聞いておりますけれども、私どももそういう面でなお一層頑張りたいと思っております。

○福山哲郎君 具体的に香港やシンガポールや釜山、高雄等と比較してどうなのかの数字はございますでしょうか。

○政務次官(鈴木政二君) はい。細かい数字でありますので、ちょっと局長の方から。

○政府参考人(川嶋康宏君) コンテナの取扱貨物量について、TEU、先ほど申し上げましたが、二十フィートのコンテナに換算いたしました取扱個数でございますけれども、横浜につきまして、ここにデータがございますのは八六年の実績と、九六年は暫定値でございますが、八六年が百三十一万個でございます。それに対して一九九六年の暫定値は二千四百万個という数字でございます。
 それに対しまして、お尋ねの香港、シンガポールでございますが、香港については八六年が二百七十七万個、九六年が千三百二十八万個、シンガポールは二百二十万個、千二百九十五万個というふうな数字になってございます。

○福山哲郎君 今の数字だとなかなかわかりにくいんですが、資料集を見ると、伸び率にしても実際の絶対量にしてもかなり日本は負けているという数字が出ていまして、先ほど高野委員も何倍かという御指摘があったと思いますが、高野委員は非常に紳士的に言われたんですが、なぜこの十年来日本はこんなに国際競争力で東アジアの国々に比べて衰えてしまったのか、低下をしてしまったのか。先ほどお答えがあったんですが、私はちょっと納得しかねましたので、理由についてもう一度はっきりとお答えをいただきたいと思います。

○政務次官(鈴木政二君) もう一度ちょっと言わせていただきますけれども、もちろん東南アジアの経済成長が著しいということは委員御案内のとおりでありまして、そういう面では、我が国と比べましてその経済成長の著しいところに貨物量が行くのは当然の話でございます。
 しかし、競争力については、先ほども言いましたように、港湾のまず施設、そしてサービスの水準、港湾コスト等のいろんな要因が考えられますけれども、結果として、我が国港湾への基幹航路の寄港の減少は、輸送コストの増大、強いて言えば、当然ながら人件費の問題もございますし、産業競争力の低下を招く、経済活動の沈滞、空洞化をもたらすなど、生活全般への影響を懸念しております。
 そういう面で、例えばフィーダー輸送、御存じだと思いますけれども、香港が今発展しておりますので、我が国が本当に一千個ぐらいのコンテナを持って、残念ですけれどもそういう形をすれば、余計に時間と、そして信用力とか信頼性も失うので、そういう部分も非常に私ども現実の問題として深刻に受けとめております。

○福山哲郎君 今、ソフトもハードも両方の面が足りない、不足をしている、フィーダーに関しても基本的にはもう負け続けているというお話がありましたが、本当に残念至極なところでして、衆議院運輸委員会で同僚の民主党の奥田先生が、日本の港湾施策はこの十年間眠っていたと発言をされています。
 運輸省のお役人にとってはそんな失礼な話はないというふうに思いますが、現実問題として、十年間このハードやソフトが明らかにおくれていたことはわかっていたはずですが、なぜ国際競争力がつくような状況に政策のチェンジをするに至らなかったのか。そういった理由は何かあるんでしょうか。

○政府参考人(川嶋康宏君) けさほども申し上げましたが、世界の船舶の大型化というようなことが一つの大きな要因でございまして、それに対応した港湾整備のおくれというのがけさからも御指摘をいただいているところでございます。
 ただ、先ほども申し上げましたように、港湾整備そのもの、バースを一バース整備するということについてもかなりの懐妊期間があるわけでございまして、けさほど御答弁申し上げましたように、平成十二年度末には十五メーターのバースを十四バース供用することができるような状況になったということでございまして、そういった意味では、施設の整備も追いついてまいりましたので、競争力の回復というのは図れたのではないかというふうに思います。
 現七カ年計画、これは最初は五カ年計画でございましたが、その五カ年計画の発足のときから国際競争力の回復ということを掲げて努力をしてまいったわけでございまして、私ども眠っていたということでは決してございません。

○福山哲郎君 もう大変専門家に失礼ながら、今どんな原因でこれがこれだけおくれたのかという話をされたときに、政務次官はソフトやそれこそ先ほど言われた港湾施設の問題、コスト、サービスの水準、いろいろ言われました。でも、今局長が何と言われたかというと、船舶の大型化についていけなかったからだとおっしゃるわけです。こういう御答弁をされるから逆に納得ができない部分がいっぱい出るわけです。
 では、十五メーターバースが十四できるかもしれないけれども、十五メーターのバースが要る船というのは香港とかシンガポールとかに一体どのぐらい入ってきておるわけですか。日本には今十五メーターのバースで現実にどのぐらいの船が入ってきていて、それが日本の貨物量について一体どのぐらいの比率なんですか、十五メーターのバースで入ってくる量は。

○政府参考人(川嶋康宏君) 今、手元にそのデータを持ち合わせておりませんし、それから、例えば今世界でトップクラスのコンテナ船というのは、六千個から八千個ぐらい積めるコンテナ船が就航しているわけでございますが、今の私どもの統計の中ではその船がそれぞれの港で何個おろしたかというような形での把握をちょっとしておりませんので、何%というふうな形では御答弁を申し上げることができないわけでございますが、就航してそこに入港している船というふうな形では、バースの大きさということで先ほど御説明をさせていただいたわけでございます。
 それから、先ほどバース数のことについてお話し申し上げたのは一つの例として申し上げたわけでございまして、政務次官が答弁申し上げましたとおり、EDI化その他についてもソフト面での整備もやらせていただいているもので、私の答弁にそれが入っておりませんでしたことについてはおわびを申し上げたいと思います。

○福山哲郎君 一番巨大なものでいうと、一体どのぐらい、何メーターぐらいのバースが要るんですか。今、世界の最先端の巨大な船というのはどのぐらい要るんですか。

○政府参考人(川嶋康宏君) 世界のトップクラスの船ということで申し上げますと、水深が一応十五メーターでほぼ大丈夫かと思われますけれども、ピッチング、ローリング等のことを懸念いたしますと、最大水深でいえば十六メーターがあれば安心できる水深かと思います。

○福山哲郎君 では、その十六メーターの、巨大な船籍というか船というのは世界で今一体何隻あるんですか。

○政府参考人(川嶋康宏君) 現在就航している船は二十四隻ということでございます。

○福山哲郎君 ここが問題なんです。大型の施設がないから日本の国際競争力が落ちたんだと言う。ところが、現実問題として十五メーター、十六メーター級の水深のバースが要る船というのは世界に二十四隻しかない。その世界の二十四隻に合わせて日本が、例えば今回出てきている中核や中枢港湾でそのバースをつくるといったって、日本全体でもう七港あるわけです、二〇〇〇年一月現在で。韓国八、台湾三、中国四、シンガポール十一、確かに十一でシンガポールは多いのかもしれないけれども、日本全体で七あるわけです。二〇〇〇年以降の見込みでいっても日本全体で十四になる。
 ところが、今こうやって議論していたときに何が足りないんだと言うと、局長からは十五メーター級のバースが足りないから、だから国際競争力が落ちたと。こんな原因だというふうに本当に認識しているんだったら、全くもって僕はおかしいと。それじゃ納得できないです。
 それで、本当にこの十年間、これだけ日本の国際競争力が落ちた原因がそれだけなのか。水深十六メーターとか十五メーターの必要な船が動き出したのが本当に九〇年の頭とか八五年のあたりから動き出しているのかというような点を考えたときに、僕は、申しわけないですけれども、もう少しやっぱり誠実に御答弁いただかないと納得できないんです。
 そうしたら、やっぱりまず初めに整備計画、施設ありきといって、きょう午前中にもありましたばらまきじゃないかと言われる批判があったって、これは言われたって仕方ないじゃないですか。いかがですか、政務次官。

○政務次官(鈴木政二君) 先ほど局長がお話ししましたように、一つの要因として水深の十六メーター、十五メーターのバースだと言っておるわけでありまして、これだけでとらえるということは、非常に委員おっしゃるとおりでありまして、先ほども午前中の交通情報委員会におきまして、大臣からも港湾運送法、平たく言いますと需給調整でございます規制緩和の問題等、やはりこういうものも踏まえて総合的にやはり新しい、今まで競争に勝てなかった部分になお一層国際的にも競争力をつけていこう、ソフト、ハードの面で両方やっていこう、こういうことでございます。

○福山哲郎君 では、全国十一カ所の中枢港湾、八つの中核港湾というのは、日本の港湾行政の中でどういった位置づけでいらっしゃいますか、それから、どのぐらいの荷物をその中枢港湾と中核港湾で扱われるのか、お示しいただけますでしょうか。

○政務次官(鈴木政二君) 今の量はどのくらいだということでありますので、ちょっと局長の方からその量のことを先に。

○政府参考人(川嶋康宏君) 中枢・中核港湾につきましては、中枢港湾それから中核港湾、それからその他の港湾というところでコンテナ貨物を取り扱っているというふうにお考えいただければと思いますけれども、大体全国の九割以上が中枢港湾のところで扱われているというのが現状でございます。
 それに対しまして、将来、二〇一〇年ごろには、想定でございますけれども、中枢港湾については全体の八割程度、それから中核港湾については全体の一五%程度、これは現状では全国のコンテナの大体六%ぐらいを扱っておりますが、これを一五%程度、そして、その他の港湾におきまして、現状では三%程度でございますけれども、それを五%程度を取り扱うというふうな形で整備をしていきたいというふうに考えております。

○福山哲郎君 ということは、十一の中枢港湾で九割、二〇一〇年には八割、八つの中核港で今は六%ですけれども将来一五%ぐらいの見通しだということですね。
 そうすると、現状では六%しか扱っていないのですが、八つの中核港湾で、今はアメリカとかに輸送する場合に、先ほど政務次官が言われたように国内の輸送費や陸上輸送料が高かったりソフトの面だとかいろんなものがあって、例えば釜山とかに運んで、そこを中継地点として先ほど言われたように持っていっている。中核港が今回の法案で整備が進めば進むほど、逆に言うと横浜や神戸のようないわゆる中枢港が釜山やシンガポールや香港との競争力でいうと弱まってくるわけです。そういうジレンマを抱えているわけです。これは恐らく政務次官も百も承知の話で、どこでも議論されている話だと思います。
 そういう状況に置いたときに、中核港を整備します、中枢港も整備しますという話、なおかつ中枢港については十五メーターバースをみたいな話が出てくるけれども、中枢港で幾ら十五メーターバースをたくさんつくったとしたって、中核港は全部安い釜山とか香港を経由して輸送していくという実態があるわけです。
 中核港を整備すればするほど横浜、神戸を中抜けして逆に日本が相手にしているところを中継して運ぶという実態があるわけですが、こういった実態については、政務次官、どのようにお考えですか。

○政務次官(鈴木政二君) 委員御承知のとおり、先ほど局長が言いました十五メーター、十六メーター、なぜ必要かというこの部分的な話をさせていただきますけれども、御存じのようにコンテナはそこの港だけでおろすわけじゃないわけです。ですから、どうしても先ほどの御心配のとおり、我が国にそういう大型のコンテナの船が入れるようなものを整備しないと、やはり先ほど言いましたように釜山やシンガポールに負けてしまう。そこに入れて順番に荷物というのは置いていくわけで、やっぱりそういう面で中枢国際港というのは充実しなきゃならないし、それに伴う連携的な中核国際港もつくらなきゃならない。やはり一カ所でぽんとおろすわけじゃないので、そういう部分はきちっきちっと一つの中心的なものをおろさないとそういう体系的なものができないというふうに承知しております。

○福山哲郎君 では、ちょっと別の観点でいきます。
 そういう話の中で、九六年の五カ年計画では、二〇一〇年にコンテナ需要が倍増するというふうに出ています。このコンテナ貨物が二〇一〇年までに倍増するという根拠は一体どこにあって、算出はどうしているのかをお示しいただけますでしょうか。

○政務次官(鈴木政二君) 基本的には、過去の貨物量だとか将来のGDPとか国際的な分業化をトータルしまして、国際間の競争もきちっとしながら推測したわけであります。この推測の基準、ちょっと私には、大変細かい専門的な知識が要りますので、ちょっと局長の方からこの予測数字をさせますので。

○政府参考人(川嶋康宏君) 現行の五カ年計画をつくりましたとき、一九九六年に推計を行ったものでございますけれども、二〇一〇年のコンテナ取扱量につきましては、二十フィートのコンテナ換算で約二千万個というふうに推計をいたしております。

○福山哲郎君 根拠。

○政府参考人(川嶋康宏君) ちょっと言葉で御説明することをお許しいただきたいと思いますけれども、この貨物量の予測につきましては、我が国からの輸出について、貨物の需要国であります主要の輸出相手国の経済の発展、そういったものについても考慮をいたしますとともに、輸入につきましては、我が国のGDPとかそういったものを配慮に入れて相関を行いながら推計をしたものでございます。
 また、先ほど政務次官の方から申し上げましたように、アジアの中での貨物流通につきましては、製品、半製品の状態での動きというものについても現状と変わってきておりますので、そういったものについても貨物量の推計に一つのモデルを構築いたしまして、そのモデルによって推計をしたものでございます。

○福山哲郎君 例えば、我が国の経済成長率、GDPは大体どのぐらいで想定されていますか。

○政府参考人(川嶋康宏君) その推計の基準といたしまして、基準年を一九九二年といたしまして、それで二〇〇〇年までのGDPの我が国の伸びを経済企画庁が設定をいたしました三%、それ以降については二・七五というような数字で推計をしております。

○福山哲郎君 今の実態の日本の経済成長率からいうとかなり高い見積もりだというふうに言わざるを得ないんですが、そこに関しては局長はどのようにお考えですか。

○政府参考人(川嶋康宏君) その点につきましては委員御指摘のとおりかと思います。現在、GDP等の見直しに基づいた推計について見直しを行っているところでございます。

○福山哲郎君 その見直しはいつぐらいに終わる予定でございますか。

○政府参考人(川嶋康宏君) 今の事務方の作業の進捗状況からいきますと、本年の五月か六月ごろに出るということでございます。

○福山哲郎君 要は、私が申し上げたいのは、せっかく五十年に一度の改正にもかかわらず今のような状況で、根拠もいま一つあいまいであるし、先ほど言ったグランドデザインもできていない。そして、国際競争力が落ちている原因についても正直言って余り明確な答弁がないということで、非常に残念に思うわけです。
 そんな状況の中で、少し具体的な話で、これもまた私、現地へ行ってきたのですが、和歌山県に下津港というところがありまして、ここで十四メーター水深のバースを二つつくるという話があります。
 和歌山の下津港というのは、先ほど言われた中枢でも中核でもなくて一応特定重要港湾なんですが、ここで十四メーターのバースが二つも要るというのがやっぱりよくよくわからない。そして、同港のコンテナの貨物需要の将来予測が二〇一〇年で四万一千百TEUと非常に大きな値になっているわけです。二〇一〇年で四万一千百TEUです。ところが、九六年に実際に運ばれたのは約四千、九七年が約四千二百、九八年は三千百と四千前後ということで、二〇一〇年のもともとの需要の将来予測の四万一千に比べると十分の一の数字なわけです。
 そこで、先ほど十五メーターバースが要るか要らないかというような話がありましたが、十四メーター級のバースを二つつくるという計画がある。こういった議論をもとに、例えば幾ら地方が港湾計画を出してきたからといっても、私はつくるなと言っているのではないのですが、そうしたら国は何と言うかというと、それは地方分権の先ほどの港湾法の話ですと言う。でも、国は先ほど言ったように五カ年計画で枠をはめている。
 国の需要予測にしてもこの地域の需要予測にしても到底想定不可能な数字になっているという状況で納得しろと言う方が非常に難しいと思っているんですが、その辺についてはいかがお考えでしょうか。

○政務次官(鈴木政二君) 和歌山県のことでありますので、大臣のふるさとでありますから私からしゃべるのも何か恐縮をしますけれども。
 今先生のお話のように、現地へ行かれてという話でありますので、ここには周りが鉄鋼業だとか石油精製の基地だとか火力発電とか、そういうものの条件は結構あるようであります。私は残念ながら現地へ行っておりませんで、先生の御通告をいただいてすぐにいろいろ調べさせていただきましたけれども、今御案内のとおり特定重要港湾でございます。
 今お話しのように将来約四万個を見込んでいる。これは、県が管理者でありますから、いろいろと地元の皆さん方、特に関係の皆さん方や、そして特にこれは一和歌山県だけではありませんで、当然ながら奈良県とか大阪とかいろいろな背後もこれから、港というのは充実するに従ってその需要も多くあるわけでありますから、当然県の見ておる四万個も私は、今は低調でありますけれども、この港が充実すれば恐らく利用者がいろいろたくさんいらっしゃると思います。
 特にここにつきましては、韓国や中国等の近海航路のものも結構需要を見込んでおるようでありますし、また港湾計画の中で十四メートル、ツーバース、船舶の大型化に対応する目的も、地元の関係者の方々のヒアリングもしまして十分対応を、やはり十四メーターバースが二つ要るのではないかというようなことも県の方もしっかりと把握をしているように聞いております。

○福山哲郎君 実は、ここは前に計画があった十三メーター級のバースがまだ計画中なんです。それで、まだ計画中のままで残っているにもかかわらず十四メーター級のバースを二つつくると。先ほど言われたみたいに、大阪があるからこそ、大阪は中枢としてやってもらわなければいけない。それなのに、十四メーター級のバースをつくってそれだけの大型船が和歌山の下津港に来るかというとなかなか理解しがたいことがあるんですが、それは余り繰り返しません。
 しかし、ここについてはもう一つ問題があって、今回の港湾法の改正で大きなテーマになっている環境の問題があって、九九年七月の港湾審議会の答申で、計画部会において、この下津港の港湾整備計画について地元住民の理解を得るよう努めることという異例の附帯条件がつけられました。
 それは、万葉の歌に読まれたという大変景観のすばらしいところだということと、今の計画性のところでなかなか理解しがたい部分があって部会でそういうふうな異例の附帯条件をつけたんですが、この附帯条件について運輸省は今どのようにお考えになっておりますでしょうか。

○政務次官(鈴木政二君) ちょっと答弁が長くなって恐縮でありますけれども、大事なところでありますので。
 今、福山委員おっしゃったように、私も調べてきました、万葉集。「紀伊の国の雑賀の浦に出で見れば海人の燈火波の間ゆ見ゆ」と、大変きれいな美しい万葉集でありまして、それだけ当時から景観のいいところだというふうに把握をしております。
 和歌山県の下津港の港湾計画については、平成九年十一月、埋立面積百十七ヘクタールの計画が港湾管理者である和歌山県から運輸大臣に提出され、港湾審議会で審議をした上、運輸大臣から景観の保全に配慮するよう意見を付しました。これも把握させていただいております。この意見を受けて和歌山県では、景観の保全のため、埋立面積を七十四ヘクタールに縮小するとともに、埋立地の位置を変更する変更案を策定し、地方港湾審議会に諮った上で運輸大臣に提出があったと聞いております。
 これに対し運輸省としては、平成十一年七月に開催された港湾審議会に諮問し、慎重な審議を行った結果、港湾計画を承認するとともに、先ほど言いました修景効果の配慮、そして先ほど委員おっしゃった地元関係者の理解、これは女性の方や旅館業の方や市民の方々からいろいろお話をいただいたそうでありますが、の二点について意見を付したところでありまして、運輸省としては、今回の計画により景観への影響は改善されていると認識していますが、今後、事業の実施に当たって景観への影響について十分なアセスメントを実施することが非常に重要だと考えております。

○福山哲郎君 そこで、地元住民の理解を得るよう努めることという計画部会の附帯条件に対して何らかの行動を運輸省並びに県は起こしておられるでしょうか。

○政務次官(鈴木政二君) こういう時期ですので、当然ながらこういう住民の意見を聞かないということはもってのほかでもありますし、今お話しをしましたように、これから住民の意見をしっかりと聴取して具体的な方策を今後進めていくというように運輸省としても考えております。

○福山哲郎君 政務次官、大変恐縮でございますが、昨年の八月に出た附帯条件でございまして、要は半年間結局まだ何もやられていないということでしょうか。

○政府参考人(川嶋康宏君) 雑賀崎の整備計画を実行しますためには、これから埋立申請等の手続に入るわけでございますけれども、それに先立ちまして環境アセスメントの手続に入るわけでございます。県はその環境アセスメントに入るための調査を今開始しているところでございまして、環境、景観に配慮するようにということについていかなる形でそれを反映させた形で埋立申請のアセスメントとして持ち込めるかということについて検討しているところでございます。

○政務次官(鈴木政二君) 途中の御質問でしたから後ほどそれを言おうと思っておりましたけれども、今言いましたように、もう一つ、特に修景効果というのが非常に御地元の強い要望であるというふうに聞いております。
 そういう面では、もちろん環境アセスメントの問題もありますけれども、普通の護岸ではなしにやはり全体的な景観を十分踏まえた護岸をきちっとするように、それから緑の問題、すべての今度の港湾計画で新しく検討させていただいたそういう景観の中できちっとした具体的な緑、背景、そしてもちろん先ほど言いました公有水面の埋め立てについての環境アセスメント、そういうものを十分配慮して指導しております。

○福山哲郎君 いや、ですからお答えいただいていないんです。地元住民の理解を得るように努めることという計画部会の附帯条件について、何らかの形で九九年の八月から何かの行動は起こされたのですかと伺っています。

○政府参考人(川嶋康宏君) アセスメントのための調査に入っておりますので、それが行動に入っているということでございます。

○福山哲郎君 済みません。私には到底理解しがたいんですが、もう一度御説明いただけますでしょうか。

○政府参考人(川嶋康宏君) 環境に配慮をする形で、先ほど政務次官の方からもお話がございましたが、どういう形で景観について配慮をするかということについて検討しなければ埋立申請、そういったものにもつながりませんので、現状では、今どういう形でそれを反映させて計画をつくり上げていくかということについて地元で調査をしていただいているということでございます。

○福山哲郎君 私の質問には全然答えていただいていないような気がするんです。
 ですから、具体的に行動に移ったのか、審議会の答申を受けてということについて全く答えていただいていないんです。

○委員長(石渡清元君) 質問者の真意はわかりましたか。

○政務次官(鈴木政二君) やはりきちっとした調査をさせていただく、それには当然ながら住民の皆さんの御意見を賜って、きちっとした結論が出たときに具体的な方法等をやはり地元の住民の声が反映できるような形で進めていきたいと思っております。

○福山哲郎君 それは、事業計画をするに当たって環境アセスを、今回埋立計画が七十四ヘクタールになるということで、五十ヘクタール以上の埋立規模になるからそれは環境アセス法の適用を受けるから制度としてやるという話です。それは当たり前のようにある話でございまして、そうではなくて、審議会では附帯条件として地元の住民の理解を得るように努めることということであって、今、鈴木政務次官や局長が言われたことは、環境アセスメント法の適用があれば当たり前のようにやるあくまでも制度上の話でございますから、私が伺っている審議会で出た附帯条件に対しての行動を起こされたかということに対する答えにはなっていないと思います。

○政府参考人(川嶋康宏君) 私の申し上げようが悪かったのかもしれませんが、地元の理解を十分に得られるように地元で調査をしているということでございます。

○福山哲郎君 まだ答えておられない。
 ということは、要は審議会のこの附帯条件についてはやっていないということですね。それはお認めになるんですね、局長。

○政府参考人(川嶋康宏君) 審議会、運輸大臣の意見を受けて地元ではその作業に入っていただいているということでございまして、まだその結論は出ておりませんけれども、現在その検討をしていただいているということでございます。

○国務大臣(二階俊博君) 実は、和歌山和歌山と出ておりますが、私の地元ではないわけであります。
 先ほど来政務次官や港湾局長が答弁を申し上げておりますが、この件に関しましては、私が大臣就任以前のことでございますが、環境庁等で問題が提起されておる、あるいは新聞等にもそういうことが掲載されておる、特にこのことに関しまして民主党が大変御熱心に再々現地等での調査等をなさっておられる、国会等でもお取り上げになっておられる、そういう状況を承知いたしておりましたので、環境庁に真意を伺いますと、まず和歌山県と和歌山市が協調してこうした問題に対して対応されることが望ましいというお話のようでありましたから、私は、和歌山県知事及び和歌山市長に対して積極的に対応されるようにということを申し上げたことがございます。当然、今そうしたことに対して知事及び市長の方で対応されておるものと信じております。

○福山哲郎君 大臣のお言葉はありがたいと思いますが、現実にはお答えをいただいていないですし、その審議会で出た附帯条件に沿って行動はしていない。
 私が言いたいのは、実は、先ほどから中間報告や最終答申で僕は省かれたところがあるというふうにお話をしましたが、最終答申には市民参加による港湾行政という部分があって、市民が参加意識を持てる港湾行政の推進ということを提言しているわけです。提言をして、今回これまた法案の改正には抜かれていまして、現実には、審議会で地元住民の理解を得るように努めることという大変異例な附帯条件がついたことに対して去年の九月から何にもやっていない、こんなばかな話は僕はないと思うんです。あげくの果てには、答申から市民参加の港湾行政づくりというのを抜いてこの港湾法の改正をしようとしている。
 そんなつまみ食いだけして、自分のところの都合のいいところだけとって、私は港湾の整備をするのがだめだと言っているのではないのです、先ほどから再三再四申し上げているように。ただ、グランドデザインはない、国際競争力は落ちっ放し、あげくの果てには大きなバースをつくりますという話が出てくる。そして、審議会で出てきたこの聞けという話も結局やっていない。
 一体これでどうやって港湾行政が、これから二十一世紀信頼されて、国民が運輸省にお任せすると。私は国益だと思っています、正直言って。そういうふうな姿勢ではやっぱり私は信用されないというふうに思っていまして、今回環境保全が目的として入れられたことに対しても、これは一つ間違えると廃棄物の処理に対する埋め立ての正当性に使われる可能性もあると私は危惧をしています。
 そうではなくて、私は必要なものは必要でいいと思うんですが、もう少し真摯に透明性のあるしっかりとした行政の運営をしていただかないと、今のような審議で、この港湾法に私どもは賛成をするつもりではいますが、賛成しろと言ったって逆にこうやってお話ししていると賛成するのが嫌になる。もう少し誠意のある御答弁をいただかないとどうしようもない。
 最後にもう一つお伺いしますが、これは環境庁と運輸省、両方にお伺いしたいのです。
 では、この和歌山の雑賀崎の下津港につきましては、七十四ヘクタールということで環境アセスメント法を適用するんですね。そこだけ最後、御確認をお願いします。

○政府参考人(太田義武君) お答えいたします。
 七十四ヘクタールということでございますれば、当然対象になるものと考えております。

○国務大臣(二階俊博君) 先ほど、再々何もやっていないということを言われておりますが、運輸省としては当然県を指導して、対策を講ずるように指導しているわけでありますから、何もやっていないということだけは少しお言葉が過ぎるんじゃないかと思います。
 言われておりますのは、環境対策に対して万全を期せ、こういう御意見だと思いますので、現状、きょう現在どうなっているかということを十分調査して、また後ほど回答を申し上げたいと思います。

○福山哲郎君 これで質問を終わります。
 ありがとうございました。

 

第147国会  参議院  国土・環境委員会  2000年3月28日

○福山哲郎君 民主党・新緑風会の福山哲郎でございます。
 官房長官におかれましては、大変お忙しい中、お疲れさまでございます。きょうは、明日香村整備特別措置法の審議ということで若干御質問させていただきたいと思います。
 明日香村はもう委員の先生御案内のとおり、いわゆる明日香村を含んで飛鳥という地域がありまして、この地域は今から千三百年前にほぼ百年間、一世紀にわたりまして都が置かれたところで、百年にわたりある特定の地域に都が置かれて、そこにいろんな旧跡が残っている。我が国が統一国家として初めて成立をしたという、大変歴史的に重要な土地だというふうに思っております。
 私ごとながら、私は松下政経塾というところで学んでまいりまして、松下幸之助さんは私たちに、とにかく現地現場だ、机の上で勉強しているよりもとにかく現地現場に行ってこいということを教えていただきまして、土曜日に明日香村に行ってまいりました。
 それで、明日香村の教育委員会の教育長さん、それから文化財課の埋蔵文化室長さんにお話を伺って、役所の方がいらっしゃるとなかなか向こうも気を使われると思うので、その方たちにお目にかかる前にちょっとぶらぶらと一人で明日香村を歩かせていただいて、学生のころから大変好きな場所だったので二回三回は行ったことがあるんですが、この立場になって行きますとやはりちょっと景色が変わりまして、なるほどなと。今までは、橿原神宮前というところから明日香村に行くときに余り感じなかったんですが、土曜日に行きますと、橿原市の風景と明日香村の風景は間違いなく異なっていまして、橿原市はいろんなビルやマンションが建っていてホテルもあるけれども、明日香村に行くとない。それはやはりこの法律が機能をしてきた結果だというふうにも思いまして、大変感銘をして帰ってきたわけです。
 そういう点も踏まえて、まず官房長官にお伺いをしたいのは、官房長官御自身この明日香村に対しましてどのような思いをお持ちなのかということと、最近、官房長官は明日香村に出向かれたことがおありかということをお聞かせいただければと思います。

○国務大臣(青木幹雄君) 今議員が、明日香村をよく知るためには何といっても現地現場だ、そういうことをおっしゃいましたが、その点では私も恥ずかしい話でございますが、以前には一回行ったことがございます。しかし、官房長官に就任してから、私自身も責任を持った立場でございますので、一回はぜひ早くという考えを持っておりますが、時間的になかなか行けませんでしたので、政務次官が、そのかわりに私がよく行っていろんな問題を研究してきましょうということで、先般わざわざ明日香村へ行ってきていただきました。そのいろんな様子を聞きながら、私もやはり一回は現地に行ってみて、直接この目で見ながらやっていかなきゃいかぬなと思っておりまして、できるだけ早い機会にそういう機会を設けたいと考えております。

○福山哲郎君 では、せっかくでございますので、政務次官、わざわざお出ましをいただいたということで、行った御感想をお聞かせいただければと思います。

○政務次官(長峯基君) 一月の末の寒い日でございましたけれども行きまして、村長さんから大変御熱心な御指導やら御意見を拝聴しました。
 もちろん歴史的にはもう先生御案内のとおりの場所でございますが、ちょうどそのときに村道をつくる準備をして、たまたまカメの遺跡が出たということで、一遍それを見てくれとおっしゃいました。大変感動的な場面でございました。
 それからたしか二週間ぐらいしてからマスコミに出たと思いますけれども、そのときはまだそのような重要な価値があるということについては村長さんも認識はしておられなかったようでございます。しかし、大変日本の財産であると思っておりますので、積極的に明日香村の今後のあり方については取り組むべきである、そのような認識をいたしております。

○福山哲郎君 今政務次官が言われたのが酒船石遺跡だと思いますが、本当に形が全く壊れていない遺跡が残っておりまして、私も歩いてまいりましてびっくりして、この表記がまさに日本書紀に載っている表記で、日本書紀には宮の東の山の石垣という表記があるらしくて、その石垣のところにこういうものがあって、日本書紀の記述が全く正しい記述をしているという証拠にもなるというようなことを現地の方が言われていまして、大変感銘を受けて帰ってきました。
 また、観光客というか、この遺跡を見に来ている方も多くいらっしゃいまして、立入禁止の区域になっていまして、私は厚かましく腕章をして中へ入らせていただいて、観光客の皆さんがうらやましそうな顔で、何であんな若いのが入れるんだというような顔をされていまして、皆さん入って生で見たいんだろうな、生でさわられたいんだろうなと思いながら行ってまいりました。
 そんな中で、この法案が今審議をされているわけでございますが、二十年間この法案が制定されています。先ほど申し上げましたように、その規制がかかってきたおかげで今の明日香村の景観、それから保全がなされている。ただし、その分、住民等がやはりその規制のおかげで開発もできず大変厳しい生活もあるという両面を伺っておりますが、まず官房長官にお伺いしたいのが、この明日香法の二十年間についてどのように総括をされているかということについてお聞かせをいただきたいと思います。

○国務大臣(青木幹雄君) 明日香村は、議員御指摘のように五十五年に法律制定以来今日まで、まさに村全域にわたって行為規制と二次にわたる整備計画の実施によりまして、近隣地域の開発から逃れて、依然として新しい歴史的遺産が発見されるなど、本当に長年にわたって文化的遺産に加え、田園風景等が一体となった歴史的良好な保存が図られてきているところでありまして、私はこのことを高く評価いたしますとともに、この状態を私どもはこれからも守っていかなきゃいかぬと思っております。
 ただ、それについては今議員もおっしゃいましたように、そのために住民の皆さんがどういう苦労をされたか。また、住民の皆さんがこの事業に今後一生懸命協力していくためには我々がどういうことをすべきか、そういうこともあわせ考えていかなきゃいけない問題だと、そのように認識をいたしております。

○福山哲郎君 官房長官がおっしゃられたとおりだと思いますが、ただ、現実には第一次の整備計画にうたわれた農業を中心とした村づくり、第二次の整備計画にうたわれた観光を中心とした村づくりというものが、実は農業も衰退傾向にありますし、観光客も年々減っているという実態がございます。
 私は、一つ原点みたいなことをお伺いして恐縮なんですが、一体この歴史的風土、明日香村というのはだれがだれのために保存をするのかという理念が少し私は国の政策として見えてこないような気がしておりまして、一体だれがだれのためにこの歴史的風土や明日香村を保存するのかという点について、もしよければ官房長官にお答えをいただきたいというふうに思います。

○国務大臣(青木幹雄君) これは議員が冒頭におっしゃいましたように、日本の長い歴史の一つの大きな場所であろうと思っておりまして、それはただ場所が明日香村にあるから明日香村のためにこれを保存するということでなくて、日本の長い間の文化、習慣、そういうふうなものを私どもが認識することによって、基本的には国のあり方、また我々の将来に対する考え方、そういうものをすべてこの明日香村が含んでいる、そういう認識に立っておりまして、これは国として全力を挙げてこの問題に取り組まなきゃいかぬ、一明日香村だけの問題じゃない、そのように私どもは認識をいたしております。

○福山哲郎君 そうすると、ある意味でいうと国が、国民が長い文化や習慣、我々の歴史というものを認識するためにこの法律をつくって、歴史的風土として明日香村を保存していくんだということでよろしいでしょうか。

○国務大臣(青木幹雄君) はい、結構です。

○福山哲郎君 そうすると逆に言うと、実は中途半端なところがたくさん見えてくるという気が私はしております。
 まず、少し細かいことになりますが、今回、負担や補助、補助率の問題も含めて基金の問題、財政的支援を明日香村だけに特別にされる例えば具体的な根拠、理由というのはどういったものでございますでしょうか。今の保存しなければいけないというのはわかります。ただ、それに対して例えば村の人たちが非常に不便、犠牲をこうむっているというお話はよく伺うわけですが、具体的にこういう点で明日香村の人は問題なんだというような、何か論拠や理由があればお示しをいただきたいと思います。

○政務次官(長峯基君) 明日香村の歴史的風土の重要な構成要素である田園風景や集落環境などの自然的、人文的環境は、そこで暮らす人々が生き生きと暮らすことによって初めて成り立ち得るものであると思っております。したがいまして、明日香村の歴史的風土を保存していくためには住民生活の安定向上、地域産業の振興等、地域の活性化のための施策を幅広く展開していくことが必要であると思います。
 一方、明日香村は、御指摘のように歴史的風土保存のため、村全域にわたり厳しい行為規制がしかれた結果、村の財政基盤が脆弱であることから、生活環境及び産業基盤の整備等のための事業を行う主体である明日香村に対しまして財政支援措置を講じてきたものでございます。

○福山哲郎君 では、具体的に、明日香村の村民の平均所得を教えていただいて、そして奈良県の各市町村の平均所得との対比をしていただくとどんな数字が出るのか、お教えいただけますでしょうか。

○政府参考人(坂東眞理子君) お答えいたします。
 住民の平均所得に関する調査は、奈良県の場合は県レベルまでしか行われておりませんので、個別の市町村のデータがございません。明日香村と他の市町村との比較は困難でございます。

○福山哲郎君 私は奈良県のすべての市町村がどういう状況にあるのかをちょっと調べさせていただいたんですが、道路の舗装率、それから下水道の普及率に関してもあながち明日香村が際立っておくれているということはございません。なおかつ住民に対して大変厳しい、先ほども財政的基盤が脆弱だというようなお話もありましたが、今の政府参考人のお答えにもありますように、明日香村の平均所得等についての数字も国としては把握をしていないという状況にあるわけです。
 私は、この措置法で明日香村に対していろんな特別な措置をすることを否定しているわけでは全くございません。そこは誤解をしていただきたくないんです。逆に言うと、そこの論拠をはっきりしていないと未来に向かってどういった支援をしていくのか、どういった措置をしていくのかということについての絵が実は描けないのではないかなというふうに思っているわけです。
 そして、先ほど申し上げましたように、観光についても実は減っている、農業についても実は衰退をしているという状況の中で、この一次整備計画、二次整備計画において旗を掲げたものがなかなかそのとおりにいっていない。そして、現実問題として十年間この法律を延長するということに一体本当に先が見えているのだろうか、明日香村を一体どういうふうに国はしたいのか、一体国民から見ても明日香村をどういうふうにしたいのか。
 確かに住民はしんどい思いをしているのかもしれない、規制がある。でも、住民はある程度、私は地元で聞きましたけれども、開発か保存かということで争点になって、選挙とかでいろんなもめごととかが起こることはあるんですかと言ったら、それはない、住民は明日香村に住んでいることに対してある意味で誇りを持っているし、保存をすることによる便益が不便なこと等についてはある意味でいうと納得した上でやっているから、政策的に論点になるようなことは余りないんだと。ただ、問題は、外部の遺跡に対して大変関心のある方とか歴史学者が、この明日香村について非常に重要だからまあ保存をしてほしい、開発は勘弁してくれというような議論はあるかもしれないけれども、住民自身で村の中でいろんな形でいがみ合ったり戦ったりするような状況はないとおっしゃっていました。
 では、そういう中で単純に十年間これを継続した、それで次に明日香村は一体何が見えるのかというふうに考えたときに、私は少しわからないというか、納得のできないところが幾つか出てきたわけです。そして、先ほどもお見せをしました酒船石遺跡、ここを見たときに、資料にもありますけれども、一体どのぐらいこれで明日香村の遺跡は出てきたんですかと言ったら、五%ぐらいです、それはわからぬけれども五%ぐらいだと。明日香村というのは掘れば必ず出てくるようなところですと言われたので、では何か掘って緊急に出てきたからやらなきゃいけないという話ではなくて、きちっと学術調査として明日香村全体のこの遺跡をどうやって発掘して調査するのかみたいなことというのはどうなんですかと言ったら、それは文化庁の問題でありますとおっしゃられるわけですね。
 そうすると、では今回もこれが出てきたのは、あちこち話が飛んで恐縮ですが、万葉ミュージアムというものをつくって、ある意味でいうと一定の地域は開発していこうという話の中で掘ったら出てきた、残り九五%あると。この特別措置法ができてもその十年後どういうふうに明日香村をしていくのかというのがなかなか部分的に私は見えないところがありまして、そういった点について、先ほど言われた評価はもちろんなんですが、官房長官はどのようにお考えなのか。ちょっと抽象的な質問で恐縮なんですが、お答えをいただければと思います。

○国務大臣(青木幹雄君) 今あらわれているものが五%で、あと九五%が眠っている、これをどうするかという問題なんです。
 実は私も、ついこの間だったんですが衆議院のこの委員会に出たんです。それから、ちょうど総理といろんな打ち合わせがあって、打ち合わせができなくて、総理は、あなたきょうはどうしたと言うから、いやきょうは衆議院の明日香村の委員会に出ておりましたと言いましたら、総理が言ったのは、明日香村はこういういわゆる文化財がずっとあるんだから、国の予算もとにかく五年、十年かかってやるんじゃなくて、本当に一遍にある程度のものはぶち込んできっちりやる方法にしなきゃいけないよということを非常に総理は強く言うんです。それがあったものですから、私も役所の人にそのことを言ったんです。とにかく予算の心配は要らないからきっちりやりましょう、来年から。
 ただ、これは難しい問題で僕も技術的にわかりませんが、ただ予算をつけただけではどうしようもないと。ただ、どんどん掘り上げていく、それで済むという問題ではないと。そういうことをやる専門の人がやはりこつこつとやっていくところに本当のあれがあるので、ただ予算が足りなくてどうこうという問題じゃありませんと、そういう回答が返ってきたんです。だから、その辺はひとつ今後考えていかなきゃいかぬ大きな問題だと考えております。
 それからいま一つは、明日香村の人がこれを一生懸命誇りを持って守ってくれている、協力してくれている、その人たちが安心して生活できる基盤をどうするかという問題なんですが、こういう場所でございますので、工場誘致したりいわゆる環境破壊につながるようなものはできません。そういうことになると、環境とか農業とか、それからやはり今後考えていかなきゃいけないのは、明日香村そのものを歴史的教育の場として我々が十分にそれに対応していく。地元の若い人が明日香村に住みながら、明日香村と一緒になって、しかも生活はきっちりできる、そういうふうな環境整備というものも一方では必要じゃないか、そのように考えております。

○福山哲郎君 今のお話はもう大変ありがたいお話で、今のお言葉をいただくと、もうこの法案の審議はあれなのかなと思うぐらい大変重要な重いお言葉をいただいたと思います。また、それを総理のお言葉であるというふうに言われたところが、気配りの官房長官という本当にお人柄が出ているなというふうに思っています。
 もう余り長くは繰り返しませんが、質問時間がございますので申し上げますと、五十五年から始まった一次整備計画、二次整備計画で最も大きなお金が投じられたのが、道路、河川、上下水道という社会インフラの整備だったわけです。全体の六割から七割のお金が投じられています。私は、インフラの整備はもちろん否定をする気はありません。しかし、先ほど申し上げましたように、観光や農業を中心にすると言いながら、道路整備と比較するとやっぱりお金のかかり方が全然違う。特に、観光に関してはほとんど進捗をしていない。そういった配分の仕方がなぜ行われたのかがまず大変大きな問題だ。この根本的な問題は、今、官房長官が言われたように、明日香村の貴重な遺産を継承していこうという村のあり方のグランドデザインがないからこそ、とにかく道路だ、とにかく下水道だという話になるわけです。
 しかし、例えば、自然と景観を守るために、観光客は村の入り口までは車で来られるけれども、そこから先は車を置いてあとは電気自動車やシャトルバスや馬車で移動するとか、明日香村は自転車がたくさん走っています。また、遺跡部分だけはしっかり保存するけれども、町は普通に活用しようと。建物の色や高さや何かは少し指定するけれども、原則としては町の中の遺跡と共存させようと。ローマなんかはそういったやり方だと思うんですが、いろんなやり方があって、そこのコンセプトが明日香村の場合にはまだ実は大分ぼやけているんじゃないか。
 それが住民の方の意見を聞いてという、ある意味でいうと非常に重要なことなんですが、では住民の方の意見を聞いてそれが出てくるかというと、それはやはり先ほど官房長官が言われたように、国策としてこの地域を子供たちに教育や歴史や、我が国の本当に伝統を伝える場所としてどういうふうに国が位置づけるかということが非常に重要なのではないかというふうに私は思っているわけです。
 文句を言うわけではないですが、道路の舗装率は約七〇%でして、奈良県内では決して見劣りする数字ではございません。山が多い村の数字としては、逆に言うと普通なわけです。道路改良率はほとんどまだ七%ということになります。ただ、道路改良率というのは、基本的に交通量が多いから幅員を拡張しようという話でございまして、では明日香村に対してこういった道路改良を高めていくことが必要なのかどうかというのは大変大きな論点になりまして、例えば総理府から出ている資料を見ると、道路改良率はまだまだ少なくて各県から比べると平均的に低いんですというようなことが書いてあるわけです。でも、本当に改良で幅員を広げることが明日香村にとっていいのかどうかというのはやっぱり議論をしていかなきゃいけない。それはグランドデザインがないからであって、そのグランドデザインを、今、官房長官が言われたとおり総理ともどもお考えいただければ大変ありがたいというふうに思います。
 今の官房長官の言葉を聞かれて、文化庁にお伺いをしたいと思います。
 文化庁の場合には、発掘をして緊急に出てきた場合には新たな事業費としてお金を出す、そしてそうではなくて保全目的の調査費としても出すけれども、この明日香村に対して文化庁としては、今後九五%残っているという遺跡に対してどのようなお考えでいらっしゃるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

○政府参考人(近藤信司君) お答えをいたします。
 明日香村におきます発掘調査の問題でございますが、国と奈良県、明日香村、三者の協力のもとに昭和三十一年度から奈良国立文化財研究所、これは文化庁の機関でございますけれども、ここが発掘調査を実施しておりますし、昭和三十五年度からは国庫補助によりまして奈良県それから明日香村が発掘調査を実施してきている、こういう状況にあるわけでございます。
 明日香村全体を発掘調査することにつきましては、開発事業計画のない場所でも調査を実施するということになるわけでございまして、地元住民の生活への配慮でありますとか地権者との調整など解決すべき課題もあるんだろう、このように考えております。
 いずれにいたしましても、奈良県及び明日香村からの要望を十分伺いながら、今後とも奈良県、明日香村とよく連携を図りまして、計画的な発掘調査、それから遺跡の保存整備に努めてまいりたい、かように考えております。

○福山哲郎君 残念ながら、今の話だと何にもわからないわけです。今の話だと、要はこれまでと全く変わらないと。住民や奈良県の意見を聞いて保存をしていきたいと思いますと。
 では、どういう形で明日香村を将来にわたって保存していって、先ほど官房長官が言われたとおり、日本の歴史的な風土の保存、子供たち、教育も含めてやっていくおつもりが文化庁にあるのかということをもう一度お聞かせいただけますでしょうか。

○政府参考人(近藤信司君) お答えをいたします。
 委員御指摘のとおり、明日香村は我が国の本格的な国家体制の始まりとも言える律令国家が形成された時代におきます政治及び文化の中心的な地域であり、明日香村内の遺跡は歴史上も学術上も大変重要なものである、こういうふうに認識をいたしております。
 文化庁といたしましては、こういった認識のもと、文化財保護の観点から、これまでも明日香村内の遺跡につきまして調査をし、重要な遺跡につきましては史跡に指定をいたしますとともに、土地の買い上げあるいは史跡の整備を行ってきたわけでございます。
 例えば飛鳥池遺跡、酒船石遺跡につきましてもそれぞれの遺跡の歴史、性格があるんだろうと思っております。そこらはまた、文化庁といたしましては奈良県、明日香村とよくお話をしながら、歴史上、学術上大変貴重なわけでございますから、そういった性格に十分配慮いたしまして、明日香村の中の文化財の保存整備に今後とも努力をしてまいりたい、かように考えております。

○福山哲郎君 まだよくわかりませんが、ただ、今のお話ですと、例えば開発をしましたと。開発計画ができて、掘ったら出てきましたと。そうしたら、行き当たりばったりで、出てきたからとにかく調査費をつけてやらなければいけないと。そうすると、本来だったらその出てきたものとの関連でもっと重要なものがその近くにある可能性もあるし、まだまだ発掘をするべきものがあるのかもしれないけれども、それを能動的に、受動的ではなくて能動的に国として発掘していくという姿勢が全く見えないわけです。
 これは特別措置法ですけれども、本当に世の中の動きとか財政上の問題とかがあるから特別措置法で十年ごとで区切っていくというのは、これは法律のあり方としてはわからなくはありませんが、本来、官房長官が言われたとおり国策としてやるんだとしたら特別措置法というような枠を超えて、明日香村に対する特別立法のような形で、やっぱり国として十年のたびに修繕を繰り返すような法律ではなくて、もっと理念のきっちり通った法律に私はある意味でいうと書きかえていかなければいけないのではないかなというふうに思っているわけです。
 大変こういうことを言うと生意気ではございますが、ひょっとすると十年前の国会の審議で十年延長するといったときにも議員から同じような指摘があって、二十一世紀を十年後に控えて明日香村をどうするつもりなんですか、それがなければどうしようもないではないですかという議論が僕は恐らくあったんだと思います。ひょっとすると、このままでいくと十年後もう一回改正をするときに、そのときに議員をしていて、そのときに私がしているかどうかわかりませんが、そのときに同じ議論をするのを非常に私は忍びなく思いますし、逆に住民も、そこのグランドデザインやコンセプトがあればある意味での納得もできるのではないかと思うんですが、今の文化庁の姿勢だと、あくまでも受動的で、行き当たりばったりで、出てきたらその場で考えますと。とにかく住民に不便を与えている部分に関しては財政的にしますというような話になるような気がしまして、甚だそこが残念でなりません。
 大体私の言いたいことはこういったことなんですが、官房長官、いかがでございますでしょうか。

○国務大臣(青木幹雄君) 私も今の議論を聞いておりまして、やはり一番大事なのはグランドデザインをどうするか、絵をどうしてかくかということが一番難しい問題だと思います。
 ただこれは、とにかく絵をかくのに予算さえつければいいという絵ではいけないし、といって地域の開発発展のために、今おっしゃったように本当に近代的な道路ができてもいけないと思うし、だからこの絵のかき方そのものが一番僕はこれからの大きな課題じゃないかなと考えます。本当にいい絵がかければ、国としては予算的にはこういう十年ごとのことはしなくても、これは恒久的にやっていかなきゃいかぬ問題だと、そういう認識をしております。
 やはりどんな絵をかくかということが、この問題が将来続いていく中での一番大事な問題だと、そういうふうな認識をいたしております。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 それで、この法律が通るとその絵をかく作業がなかなか進まないというようなことも懸念されますので、ぜひ官房長官、この法律が通った後も絵をかく何らかの形の行動を国として起こしていただきたいというふうに思います。
 もう瑣末な話になりますが、保存基金に対する運用益が少なくなるということで、今回、一億円を交付することになります。これも私は全然否定はしませんが、では一体この一億円という交付がことしから始まっていつまで続くのか。金利が上がって運用益がそこそこ上がればそれでいいのかみたいな話になるとそれこそ行き当たりばったりで、この一億円の使い道についても、来年もらえるかどうかわからないという話の中で、もらうとしたって使い方に非常に苦慮しなければいけないわけですね。それがやっぱり長期的な視野に立っていけば、そのお金の使い方もより有効性が高まると思います。
 今、官房長官が言われました絵をかく作業もぜひとも継続をしていただいて、この十年の法案が次の十年のときには絵がかけて先ほど言われた別の恒常的な法律になるような、それで明日香村の住民も納得をし、また国民も明日香村に対してきちっと位置づけができるような、そういう形にしていただきたいということを本当に心から祈念申し上げまして、私の質問はこれで終わります。

○森本晃司君 公明党の森本晃司でございます。
 今、福山先生から、大変我が明日香村に対する熱い思い、さらにまた官房長官から熱いお言葉をいただきまして、私は大変うれしく思っておりますが、同時に課題もたくさんあるのではないかなと思っております。
 明日香村といえば日本の心のふるさとでもありますし、同時に律令国家が形成されたその一番歴史的発祥の地であるということはだれもがよく御存じのことかと思いますし、これはだれも否定をしない。
 私は、ついこの間までは明日香村から十分のところの橿原市というところに住んでおりまして、小学校の遠足等々は明日香村の、まだ石舞台に垣根ができていないところに弁当を持って、あの石の上に上って食べたとかという、もうごく近所におりまして大変幸せな生き方をやってきたなと思います。それだけに、明日香村に対する思いは私は強いものでありますし、同時にまた、この激しい国政の中で、大和の国へ帰ったときは絶えず明日香村を訪ねて、自分自身をまた取り戻させていただいているところでございます。
 「大和は国のまほろばたたなづく青垣山ごもれる大和し美し」、これは古事記に書かれた大和の姿であって、今もその姿を大和の国は保ち続けています。その大和の国の一番根本となったのがこの明日香村であるだけに、私はこの明日香村についてより大事に、国民の共有の財産として、それから日本人のアイデンティティーを育てるものとして残していかなければならない。福山先生が、単に明日香村の人のためではないとおっしゃっていましたが、私はまさにそのとおりでございまして、それだけではなしに国民全体が考えなきゃならない問題だと思っているんです。
 私の住んでいました橿原市、ここは奈良県第二番目の都市でございます。大阪までもう三十分でございます。どんどん開発が進んでいます。この間、私も千三百年の眠りから覚めたカメ形石造物を見ようと思って明日香村へ行ってまいりました。つい数年前よりも、また明日香村との接点の開発が橿原市内においてはどんどん進んでいっています。
 それで、そのときに私は思ったんですけれども、古都法から始まって、そして二十年前にこの明日香立法ができた。よくぞこの明日香立法ができるときに、私たちの先輩諸氏もいろいろと御苦労をいただいたなと。これがもしなかったら、今ごろあのカメ形石造物やいろんなものも全部開発されてわけがわからなくなっていっているんではないかなと。同時に、この明日香立法ができるときに、村の人たちが本気になって自分たちのこの明日香を、生活は不便になるけれども一生懸命守っていこうという、そういうものがなければ今日のこの明日香立法も二十年間生きてこなかったなと思います。単に国がいろんなことをやったから明日香立法が生きてきたというものではなしに、そこにはこの村人の大変な苦労があった。
 私の友人もたくさんいます。農業を営んでいる者も何名かおります。その農業を営んでいる者は、自分の息子、次男、三男等々の家をまた建てるときには、分家を建てるときには、それはそれで彼らもまた悩み、また明日香立法があるから協力しようという気持ち。
 しかも、その農業は、十年前に私は衆議院時代にちょうどこの改正のときにそのことも取り上げて申し上げたんですが、全国と同じように全国一律で減反政策がかかっている。明日香村ぐらいは、そのすばらしい景観を保つために減反政策の枠から外してはどうかということを農水省に申し上げたら、いやそれは県で決めるものなんです、村で決めるものなんですという言い方をする。そうでなしに、国でもっと考えたらいいんじゃないかなとそのとき訴えさせていただいたんですけれども、そういう農業の問題、後継者の問題があります。それから、どんどん高齢化になっています。全国平均一四%ですから、既に明日香村の人々はもう二〇・二%の高齢化の時代に入っています。
 私は、そういう中で頑張ってくれている明日香村の人々の強いこの財産を残そうという思いがあったなればこそ、今日までこの偉大な日本の財産を保ち続けられた、またこれからも保ち続けていくことができると思うんですが、官房長官のお考えをお伺いしたいと思います。

 

第147国会  参議院  国土・環境委員会  2000年3月16日

○福山哲郎君 民主党・新緑風会の福山でございます。
 昨日の委員会に続きまして、本日も長官、よろしくお願いを申し上げます。連日お疲れさまでございます。
 先週の委員会で長官の所信を伺いました。その中で長官は七つの柱を重点施策としてお示しいただきまして、その一つが、第一に循環型社会の実現、そして第三の柱は温暖化対策、きのう若干御質問させていただきまして、きょうも温暖化について御質問させていただこうかと思ったんですが、きょうは同僚議員の方から幾つか出ましたので、全くきょうは別件で、第五の柱であります「多様性のある自然の積極的な保全」ということに関連した質問をさせていただきたいというふうに思います。よろしくお願い申し上げます。
 まず、昨年ですか、皆様も御記憶があると思いますが、絶滅の危機にさらされていたトキの赤ちゃんが昨年の五月に佐渡で生まれて、環境庁が募集をして優優という名前がつきまして、ワイドショーも含めて大変話題になった。こうした絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する条約、いわゆるワシントン条約ですが、その締約国会議が来月、四月にケニアで開催をされます。
 日本の今の現状を少し御説明しますと、この絶滅のおそれがある条約で保護の対象となっている野生生物を何と日本は年間で約三万六千件も輸入をしている。今から十五年ぐらい前はその数が二、三千件だったということで、この十数年で十倍以上輸入の件数が伸びている。そして、この件数というのはアメリカに次いで二位なんですけれども、一人当たりの件数でいうと、これは世界一になります。そういった絶滅に瀕している動植物の世界第一位の輸入国が我が国だということですので、このワシントン条約に対する日本の姿勢が非常に重要であることは言うまでもないというふうに思っております。
 当然、今度の会議は我が国としても重要な会議でございますので出席をされると思うのですが、長官御自身も出席をされる御予定があるのか、それからこの会議での議題のポイント、それからそれに対して日本の政府はどういった姿勢でこの会議に臨まれるおつもりなのか、その辺についてまず冒頭御説明いただけますでしょうか。

○国務大臣(清水嘉与子君) 今のワシントン条約の締約国会議でございますが、実はこれは実務者の会議なものですから、私は出席いたしません。
 この四月十日から、先生御指摘のようにケニアのナイロビで開催いたします。本会議は、国際取引の規制対象を定める附属書の見直しを初め、条約を実施する上でのさまざまな問題について議論される会議でございます。具体的には、南部アフリカ諸国からアフリカゾウに係る提案、象牙を少し規制を緩和してほしいというような提案でありますとか、あるいはタイマイに係る提案などにつきまして議論される予定でございます。
 環境庁といたしましては、関係省庁と協調しつつ、科学的な根拠に立脚し、種の保存と野生生物の持続可能な利用という原則を踏まえまして議論に臨む所存でございます。
 なお、今次の会議に向けて、我が国に対しましてはトラの骨等を原材料とします医薬品等の国内流通規制が要請されておりましたけれども、昨年の十二月に種の保存法施行令を改正いたしまして、トラの骨でありますとかトラの生殖器及びこれらを材料として製造されました医薬品でありますとかあるいは健康食品等の取引を原則として禁止するという措置を講じたところでございます。
 会議では、今申しましたように、世界的にも絶滅が危惧されるトラの保護について、このような我が国の取り組みをアピールしていくということも考えているところでございます。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 ぜひ積極的に会議をリードして、野生生物の保護を推進していただきたいと思います。
 そして、ちょっと御記憶に新しいと思いますが、お手元に新聞記事を配らせていただきました。先月、二月十八日の新聞でございますが、町田でトラがアルバイトの飼育の方をかみ殺したという事件がありました。
 東京の町田の動物プロダクションでトラがそういった形で従業員を死亡させた、そのトラも薬殺されるという事件が起こったわけです。この従業員の方は本当に若いアルバイトの方で、大変お気の毒なことだったと思いますし、心から御冥福をお祈りしたいと思っていますが、ただこれが人間をかみ殺した、けしからぬ、成敗してやるという形でトラを成敗したというような単純な問題ではございません。このトラの問題というのは根本的に日本の野生生物に対する行政のあり方、管理のあり方等が問われてきている問題だというふうに思いまして、ぜひ再発防止に対して必要な対策を講じていただかなければいけないというふうに思っております。
 そこで、お聞きしたいんですが、この問題について長官はどのように御認識をされているか、そしてこのトラが結局薬殺処分をされたというふうに承っておりますが、その薬殺処分をされるまでの意思決定、つまりどのような経緯でトラが薬殺処分に決まったのか、まずは御答弁をお願いします。

○国務大臣(清水嘉与子君) 希少野生動植物でありますトラが違法に取引されておりまして、しかもそのトラによりましてこの若い飼育担当者が亡くなられたということは本当にお気の毒なことだというふうに思っておりますし、本当に心から御冥福をお祈りしたいというふうに思っております。
 環境庁といたしましては、事件直後担当者を、これは町田警察署でございますが、警察署に派遣いたしまして、情報交換を行う等警察の行います違法取引事件の解明に協力してまいりました。
 また、今回の事件を通しまして、一部の動物取扱業者あるいは動物商等におきまして種の保存法に基づく規制が必ずしも遵守されていない状況、また都道府県におきます動管法担当部局と種の保存を担当しております環境庁との連絡が必ずしもスムーズにいっていなかったということも指摘されているわけでございまして、私からは事務担当の当局に対しまして、その動管法を所管しております総理府、都道府県担当部局、そして十分情報交換を行いましてトラの飼育等の実態把握をまず行うということ、それから動物の所有者、占有者に対しまして種の保存法の規制の趣旨を徹底するというようなことを指示したところでございます。
 もう一つ、そのトラが薬殺された経過についてのお尋ねがございました。実は、私もそこまで存じませんので申しわけございませんけれども、後でそれは説明してもらうことにいたしますけれども、とにかくこのようなことで取り決めを強化いたしまして違法取引の未然防止を図るということと、それから捜査当局とも連携いたしまして取り締まりを強化していきたい、そして希少野生動植物の違法取引の根絶に向けて努力したいということをまず申し上げて、あと具体的に今のトラの薬殺の件については自然保護局長から御答弁させます。

○政府参考人(松本省藏君) トラの薬殺処分の経緯などについてでございますけれども、警察当局の発表によりますと、町田のトラが薬殺をされましたのは二月三日の午後五時五十二分、こういうことでございますが、事件の際にこのトラの取り扱いについて環境庁に事前の連絡はございませんでしたし、また具体的にそういう経過、背景等について承知をしていない、また環境庁としてそのトラの薬殺処分に関して法令的にも関与する立場に実はないということであります。
 トラのずさんな飼育管理の結果、犠牲者が出たということは大変遺憾なことでございますし、その結果として多分トラが薬殺されざるを得なかったということは、法律に違反するということではないのですけれども、動物愛護の点から見ても大変残念なことであるというふうに認識をしております。

○福山哲郎君 これは一つ誤解をいただくと困るんですが、トラを殺したことももちろん問題なんですが、今おっしゃられていました、まず環境庁に事前の連絡がなかったと。ということは、薬殺の処分については警察の方の判断で緊急避難的にやられたと。それは危険を伴うということですから、多少緊急避難的なことは仕方がないのかもしれません。
 では、もしここで警察の方から環境庁に対して、このトラの処分はどうしましょうと言って相談があったら、環境庁はどう答えていたんですか。

○政府参考人(松本省藏君) 種の保存法の仕組みを少し御説明させていただきたいと思うのですが、種の保存法は国際的にもあるいは国内的にも大変希少な野生動植物を守っていくということですが、トラのように本来日本にはいない希少動物、これはもともと例えばインドとか中国の南部とかシベリアとかいろいろなところにまだいるんですが、そこのところにそもそもいるというのが望ましい形。したがって、そこから日本に入ってくるときには特別な環境庁長官の許可が必要ですよ、それもしかも学術目的でなければいけませんよ、こういうような制約がかかっているわけです。
 そして、日本国内でトラが、純粋に学術目的だけでなくて、例えば動物園とかいろいろなところで現におります。その中で、日本の中でもいろいろな繁殖で日本産のトラも実はいる。そういうようなトラについてはきちっと環境庁長官に登録をしていただいて、ここにこういうトラがいますということを手続上とっていただくということになっているわけでございまして、このトラのように国際希少野生動物種をそもそも殺処分にするということの是非について、種の保存法というのは規定をしていないということなのであります。
 それで、むしろ今は総理府の所管になりますけれども、動物愛護法、そういうような系統の中で様々の規制が自治体レベルの条例でなされているわけでございまして、そういうようなところでいろいろなこういう取り扱いについてその是非というのが判断されることは十分あると思います。

○福山哲郎君 私が御説明をするまでもなく、今局長に御説明いただいたわけですが、おかしいですね。日本に入ってくるわけがないんですね。学術目的で、日本には生育をしていないトラが現実にはいて、それは種の保存法の枠外で環境庁は関与ができないとおっしゃったわけですね。
 では、今、警察からこのトラについてどうしましょうと言われた場合には、環境庁さんは私のところの法律の範囲外なので判断しかねるというふうにお答えになられるわけですか。

○政府参考人(松本省藏君) 今申しましたように、まずこのトラというのがどういう経緯それから事情があってこういう事件を起こしたのかというようなものをきちっと把握した上で、その次の処分、対応というのがなされるのが望ましいというふうに環境庁としては答えることになると思います。

○福山哲郎君 余りお答えになっていないんですが、ではこのトラは環境庁に登録されていたんでしょうか。

○政府参考人(松本省藏君) このトラにつきましては、環境庁長官に本来ですと登録をしてもらうべきものである、あるいは許可を得るべきものであったわけでございますが、その手続がとられていなかったということでございまして、現に今、警察署におきまして、まさしく種の保存法違反という刑事事件として捜査が行われている、こういう段階でございます。

○福山哲郎君 そうすると、環境庁に対して未登録の状態で、全く実態を把握していない状態で放置をされているこの種の野生生物等が現状日本には幾つもあって、そういった実態のデータというのは全く環境庁は手にしていないということでしょうか。

○政府参考人(松本省藏君) 先ほど申しましたように、種の保存法に基づいて例えばこのトラというのに着目してみますと、環境庁長官の許可あるいは登録という手続をとりますときちっと把握ができるということでございます。その数値は数値として持っているわけでございますが、現実に今回のケースと同じように正規の手続を経ない形で現に日本の中にいるというのは事実だろうと思います。そして、その数が実は何頭いるのかというのは今の時点では環境庁として把握していない、正直言って把握する手だてがないということでございます。
 ただ、先ほど清水長官がお答えをいたしましたように、長官の方からそういう趣旨も踏まえて私ども事務当局の方に、まず関係の総理府、あるいは動管法と言われますけれども動物愛護法の実態把握を実際上一番よくやっております都道府県、そういうようなところあるいは警察当局とよく連携、連絡、情報交換をした上で最大限その実態把握に努めるようにという指示がございますので、許可、登録以外の部分でどれだけそういうトラなどがいるのかというのを現在可能な限り調査しているところでございます。
 また、その結果が出ましたら、それなりの形で公表させていただくということになろうかと思います。

○福山哲郎君 今の問題は、大変大きな二つの問題を抱えていると思っています。
 まず一つは、やみで完全に入ってきたトラだった、だから環境庁が把握をしようがなかった、非合法で入ってきていますから、そのトラに対してはチェックが不可能だと。では、ここにも書いてありますが、たまたまこれは雄と雌が二頭、民間の動物園から出てきて動物販売業者に来たんですが、その未登録のトラが何かの形の繁殖で、また日本で子供を産んだりすると、環境庁が把握していない状態がどんどん続いて、未登録の野生動物がふえていってもそれがわからない。
 それから二つ目は、それに対して希少な野生動物を警察は緊急避難的に、私は仕方がなかったと思いますが薬殺をするという処分になって、世界全体でもトラというのはわずか五千頭から七千頭しかいない絶滅品種にかかわらず、日本ではそういうことが起こると簡単に薬殺をしてしまうというような世界的な問題が生じるということ。
 それからもう一つ、これは非常に危機管理の面で問題なんですが、こういったやみ動物というのは恐らく劣悪な環境で飼育をされ管理されている、今回の場合もそうだったと思います。劣悪な環境で飼育や管理をされているということは、それだけ危険も多いということですね。ということは、その危険が国民に対してどこで降りかかるのか全く環境庁は把握をしていないという状況にある。これは、実は大変問題だというふうに思っているわけです。
 ワシントン条約の批准に対して、この種の保存法というのができたんですが、現実にワシントン条約ができてそれを我が国が担保するという形で種の保存法をつくったにもかかわらず、こういった、ある意味でいうと環境庁も今お認めいただいたように法の不備がはっきりしているというのは非常に私は問題なのではないかなというふうに思っているんですが、長官、いかがですか。

○国務大臣(清水嘉与子君) 幾つかの事件が起きて、そしてその実態を見ますと本当にいろいろ問題が出てきたということでございます。
 この国際的な違法取引を防止するためには、まず水際できちんと違法な持ち込みを禁ずる、チェックするということが基本になるわけでございますけれども、しかしそこをすり抜けて税関の網をくぐってきてしまうものがいるわけでございまして、そして持ち込まれた希少野生動植物、そういったものをどうやってチェックしていくか、規制していくのかということでございます。
 ワシントン条約で商業取引が禁止されている希少野生動植物につきましては、その国内取引を規制していく、そしてコントロールしていくということが当然重要なことでございますので、環境庁といたしましては、この種の保存法におきまして、ワシントン条約附属書Tに掲載された種についてその国内取引を規制しているわけでございますけれども、今般のトラの事件あるいは大阪でオランウータンもありましたけれども、こういった種の保存法に違反する事件が相次いで摘発されているということにかんがみまして、やっぱり法規制についても改めて徹底を図っていく必要があるというふうに認識しております。
 環境庁といたしましても、まず関係行政機関、総理府、警察庁と十分連携しつつ、先ほどから申しておりますように飼育の実態の把握、飼育者への種の保存法の徹底といったことについてもまずいたしていきたいというふうに考えているところでございまして、悪質な事案については、どうしても捜査当局と連携を図りながら徹底していかなきゃいけないんじゃないかというふうに考えているところでございます。

○福山哲郎君 では、もう一つお伺いします。
 もし違法に希少動物を所持していたとして、それが見つかったとします。たまたま希少野生動物を違法に所有をしていた、たまたま国内のやみで入れたものがその人の手に渡ったと。そのときの所有に対して今の法制度上何か規制がありますか、所持に対して。短目にお答えください。

○政府参考人(松本省藏君) 必要な登録ないしは許可の手続を速やかに求めるということになろうかと思います。

○福山哲郎君 ということは、それを持っていること自体に対しては所持の規制はできないということですか。

○政府参考人(松本省藏君) 今の種の保存法の体系で、そもそも日本国内で、例えば附属書Tという一番規制の厳しいトラなど、そういうようなものについてでも所持そのものを禁止するという仕組みにはなっておりません。

○福山哲郎君 今のも大変問題でございまして、違法に取引をされた、やみで入ってきたものをたまたま持っていて、それが見つかってもそれに対して何ら規制する手段がないというのも実は大変な問題でございまして、これも僕は法律の不備だというふうに思っています。
 大げさだと思われるかもしれませんけれども、国際的に見ると野生動物の違法取引というのは麻薬や武器と同様の重みを持つような大きな犯罪です。それを日本がこういった形で法の不備をある意味でいうと放置をしながらいるというのは、国際的なやっぱり日本の存在や環境庁の責任の問題等も含めて大変大きな問題だと思いますので、早急にこの問題については、法の不備を何とか埋めていただくことも含めて御検討いただきたいと思います。
 時間がないので、もう一点だけ申し上げます。
 先ほど長官から水際の話が出ました。水際でいいますと、つい昨年の五月に大阪でオランウータンが四頭マンションから発見されました。これは完全に違法で、オランウータンもワシントン条約上で言うと附属書Tの動物でございまして、これが水際でチェックができなくてどんどん入ってきた。
 では、例えば日本に輸入をされるときに、税関ないし我が国に入るときに、この希少野生動物に対してチェックというのはどういうふうにかかるのか、簡単に御説明ください。

○政府参考人(中村利雄君) ワシントン条約の対象動植物につきましては、附属書のカテゴリーに従いまして輸入の管理をしているわけでございます。附属書Tのものにつきましては、輸入割り当てをいたしまして、その後輸入の承認をするという手続をしまして、それを税関で確認する。それを受け取っていないと違法な輸入になるということでございます。そこでチェックをいたしております。

○福山哲郎君 そこで、それを例えば今おっしゃられた手続をしないで違法に入れようというような状況があって、怒られるかもしれませんけれども、オランウータンか猿かわからなくて、これは違法かどうか税関でチェックできるような体制はあるんですか。

○政府参考人(中村利雄君) 通常は、まず附属書Tというものに当たるかどうかということを私どもで判断するわけでございますし、その際には環境庁にも協議をして、そのものが該当するかどうかをチェックいたしますし、また税関においてチェックをするわけでございますが、わからないときには私どもに相談があるということになっております。

○福山哲郎君 だれがチェックするんですか。

○政府参考人(中村利雄君) 輸入の場合は、その輸入許可を得ているかどうかということについては税関がチェックをすることになっているわけでございます。

○福山哲郎君 税関にはそれに対する専門家がいらっしゃるんですか。

○政府参考人(中村利雄君) ですから、輸入承認に書いてあるものかどうかということについて、税関で判断をしかねる場合には私どもに相談があるということに相なるわけでございます。

○福山哲郎君 では、判断しかねる場合に、わからない場合にうやむやに入ってきちゃう可能性というのはあるということですね。

○政府参考人(中村利雄君) 私どもはそういうことがないように努力をいたしておりますし、引き続き税関ともよく連絡をして、そのようなことがないように最大限の努力をしたいと思っております。

○福山哲郎君 では、現実には専門家はその場にはいないわけですか。税関でこれは危ないのかもしれないなと思ったら、初めて通産省や環境庁に相談が税関からあるということですか。

○政府参考人(中村利雄君) 基本的には、手続的にはそのような形になるわけでございますが、例えばオランウータンでございますとかトラでございますと、通常は税関当局でもかなりわかるのではないかと思っております。

○福山哲郎君 では、何で入ってきているんですか。説得力ないじゃないですか。もう去年入ってきているわけですから。
 それと、もう一つ申し上げると、もし税関でそれが附属書Tの違反だということがわかったときには、その種の保存法違反ということで、その動物、個体は強制的に没収とかができるんですか。

○政府参考人(中村利雄君) 通常の場合でございますと、税関で発覚した場合には、これは違法な輸入ということになりますので、通常は輸入者がその場で所有権を放棄いたしまして、任意放棄という形で税関当局で押さえるということに相なるわけでございます。

○福山哲郎君 その任意放棄というのはどういうことですか。

○政府参考人(中村利雄君) つまり、輸入をしたということは、何らかの契約関係があって、所有権をその輸入者が違法であっても持っているわけでございますので、その輸入者からその所有権を放棄していただくということでございます。

○福山哲郎君 輸入者が放棄するのを拒否したらどうなるんですか。

○政府参考人(中村利雄君) 基本的には、この現在の外為法上は没収はできないわけでございますけれども、放棄しない場合には、直ちにそれは違法行為として我々としては制裁、制裁といいますか罰則を適用するということで、その任意放棄を促しておるということでございます。

○福山哲郎君 いや、簡単に言うと、外為法違反で告訴して、罰則をしなきゃいけないという話なんですが、違法で輸入してきているのがわかっているにもかかわらず、その動物に対して没収するのは任意放棄しかない。任意で説得をするという話になる。
 今の話で、水際のところでと長官はおっしゃられましたけれども、水際のところでは専門家がいなくて、これは違反かどうか微妙なところは全部相談をする。相談をしたはいいが、それが違反だとわかったときには、それも没収する権限もないと。そうしたら、税関にしてもそんなわざわざ一々苦労して、本当にそれだけの手続をやるのかと。現実にオランウータンが入ってきている事実もあって、先ほどからおっしゃられたように環境庁は環境庁で、やみの取引に関しては全くノーケアだとおっしゃっているわけです。
 本当はもっと言いたいことがいっぱいあるんです。やっぱりこれはどう考えても、先ほど冒頭申し上げましたように若い男の方は本当にお気の毒だったと思います。お気の毒だったけれども、トラが人間を殺して、けしからぬ、成敗してやるなんという単純な問題ではなくて、本当にこのワシントン条約の問題、我が国にある種の保存法の問題、それから水際、税関でやみ取引なり違法取引をどう管理するかという問題、そして間違いなくやみ行為をするような方は、先ほども申し上げましたように非常にずさんな管理で環境の悪い中で野生動物を育てるわけですから、それが近隣や国民に対してどれだけの危険を及ぼしているかという問題、そして国際的に見れば、そういったずさんな管理の中で野生動物に対してひどい状態をつくっているという問題、本当にたくさんの問題をこのトラの問題一つで抱えているわけです。
 私は、もう時間が二分しかありませんから、もうこれ以上、本当はほかにも聞きたいところはいっぱいあったのですけれども、また今後もこの件についてはいろいろ質問をしていきたいというふうに思いますが、ぜひこれは長官、通産省さんとも共管なわけですから、本当にリーダーシップをしっかり持っていただかないと僕はまずいと思いますので、もう一度か二度でもこういった問題があると、やっぱり国民が危険だと思いますし、国際的にも信用をなくすと。オランウータンも、僕はよく知りませんが、生育をしていくと四十キロも五十キロにもなって大変実はどうもうな動物だというふうに聞いています。トラやオランウータンだけに限らない問題ですので、ぜひここは積極的に環境庁がリードしていただいて、水際の件、警察との件、そして種の保存法の不備な件、こういった点について前向きに取り組んでいただきたいと思いますが、最後にちょっと御決意をいただきたいと思います。

○国務大臣(清水嘉与子君) 今いろいろと御議論いただきましたけれども、種の保存法、そしてまた動物愛護及び管理に関する法律、これはきちんと、環境省に来るわけでございますから、今それの実際に問題が起きていることについては十分問題を洗い、そして対処していきたいというふうに思っております。

○福山哲郎君 ありがとうございました。

 

第147国会  参議院  国土・環境委員会  2000年3月15日

○福山哲郎君 おはようございます。民主党・新緑風会の福山哲郎でございます。
 本日は、平成十二年度予算案についての委嘱審査ということで、よろしくお願い申し上げます。
 今も長官から御説明がありましたとおり、環境庁は来年の一月六日、環境省になられるということで、昨年に比べると当初予算で一四・三%の伸びの予算案になっている。これは、裏返しは、やはり国民の皆様の環境庁もしくは来年の環境省に対する大変大きな期待のあらわれだというふうに思っておりまして、私もいつも厳しいことを言うんですが、実は環境庁の応援団の一人だと自分では自負しておるんです。きょうはそういう点も踏まえてよろしくお願い申し上げます。
 私ごとで恐縮なんですが、私は、まだ議席をいただく前に、ドイツに環境の問題を視察に行きたいということで、自腹でお金をはたいてドイツに行ったことがあります。そのときに泊まっていたホテルで、バスタオルとかタオルを一日使っても連泊の場合には何回も使い直してください、もしタオルやバスタオルをかえてほしいときだけ床にタオルを落としておいてください、それ以外は水資源や洗剤を流さないことも含めて環境に対してあなたは貢献をしてくださいというメッセージがちゃんとホテルのおふろ場にありまして、私は、なるほどな、こうやってお客さん一人一人のサービスに対しても環境というメッセージを与えることによってみんなが気づいていく、そういう積み重ねによって循環型社会ができるんだなということを非常に痛切に感じた経験がございます。
 このたび、与党三党でいわゆる循環社会基本法を出すという政策合意をされて、現在、各省庁間で法案作成作業を進められているというふうに伺っておるんですが、決して僕は悪いことではないと思っていますし、逆に日本での動きが余りに遅過ぎたと思っているぐらいなんですけれども、ただ、現実にその法案作成の中身とか内容とかが余り表に伝わってこない部分があって、いろんなNGOやNPO、市民グループの皆さん、そして私たちも、一体どういう具体的な循環型社会を目指しているのかと。
 ドイツは同様の法案がもう既に九四年にできているんですが、それは循環経済法という名前になっておりまして、やはり経済的な仕組みとともに、先ほど申し上げた国民の意識の徹底も含めて大変いい仕組みができている。
 今回、この法律を制定される意義を長官はどのようにお考えなのか。また、どういった背景でこういう循環型社会という法案を出そうという動きになってきたのかをまず冒頭お教えいただければと思います。

○国務大臣(清水嘉与子君) 非常に環境問題にお詳しい先生からの御質問でございます。
 御指摘のように、今、日本の国で、これまでのような大量に生産し、大量に使い、そして大量に捨てていたような経済社会の仕組みを変えなきゃいけないという意識が随分広がってきていることも事実でございます。
 環境庁におきまして、かねてから中央環境審議会等におきましてもこのことをずっと研究してきて答申も出ているわけでございます。ちょうどこの内閣が発足いたしますときにも、三党合意の中でこの循環型社会、平成十二年を循環型社会元年として必要な法制をまとめるようにという方向が出たわけでございますけれども、私たちが持っている問題意識をやはりこの機会に法案としてまとめたいということで今作業をしているわけでございます。
 その制定の意義とか内容にちょっと触れたいと思いますけれども、今申し上げたような、これまでの経済社会の仕組みを、やはり物質の効率的な利用だとかリサイクルを進めて途切れのない物質循環の輪をどうしてもつくりたいという意識が強いということ、それから、廃棄物・リサイクル対策を中心にいたしまして、施策の総合的、計画的な推進を図るということがやっぱり急務だというふうに考えております。
 具体的には、今環境庁が考えております、そして政府の中で取りまとめております中心的な考え方は、循環型社会の構築に関する基本理念を明らかにすること、それから国、地方公共団体、事業者、国民の責務を明確にすること、あるいは計画の策定とそのフォローアップをすること、国が講じようとする施策を明らかにするということをいたしまして、そして今の循環型社会の構築に関する基本的な枠組み法案をつくろうということでございます。
 他方におきまして、各関係省庁におきまして廃棄物あるいはリサイクル関係法案が幾つか考えられているわけでございますが、そういうものと一体として循環型社会の構築に向けた取り組みを実効的に推進すること、そういうことを可能とするような法案をつくりたいと考えているところでございます。

○福山哲郎君 今の御説明も、理念としてはよく私もわかります。長官のおっしゃりたいことも理解をしているつもりですが、そうすると、今のお話ですと環境基本法と一体どこが違うのか。
 その大枠の枠組みならば、わざわざ慌ててこの循環型社会基本法を本当に今すぐに、まだ国民もこういう準備が進められていることを知らない方が多分多いと思いますし、先ほど申し上げましたように、ドイツは随分時間をかけてこの循環経済法というのをつくり上げた経緯があります。私は作業されることに関しては先ほども申し上げましたように全然否定はしておりません。しかし、やっぱりもう少し国民の意見を聞くなりパブリックコメントを広く集めるなり、製造者責任等を明確にするなりという前提の中でこの法案の策定というのは実は慎重にやっていただきたいなというふうに思っております。
 個別の法案の中身については、まだ出ているわけではございませんし、今日は詳しくお尋ねする気も毛頭ないんですが、ただ、この間お伺いをした長官の所信においても、循環型社会の実現のために草の根活動等に対する支援の充実強化を図っていくと述べられているわけです。
 実は、私、NGOや市民グループにとどまらず、これからの社会が循環型になっていくためには、多分、問題意識のあるNGOやNPOではなくて、本当に環境ってどうなんだろうと思っているような国民に対してきちっとメッセージを伝えないと、法律をつくっても、仏つくって魂入れずではないですが、枠組みだけできてもなかなか循環型社会にはならないと。そのために、今回いろんな方が法制化の動きについて、気がついたら何やら法律がつくられている、情報も来ないし意見もなかなか聞かれないと。それは、自分たちが知らされなかったとかいう狭い了見の話ではなくて、私はもっともっとこの問題に関しては国民に広く意見を聞いて意識を高めていかないと現実に長官の言われている目的が達成できないというふうに思っているわけです。
 そういった意味で、今の事態についてどのようにお考えなのかということと、この循環社会基本法について、その策定過程、プロセスについて何らかの形で今お考えになられていることがあるかということをちょっとお伺いしたいんです。

○国務大臣(清水嘉与子君) まず、先生は、環境基本法があるじゃないかと環境基本法のことをおっしゃいましたけれども、環境基本法は、確かに環境の保全に関するすべての施策分野を対象に環境基本計画、これにおきまして環境の保全に関する総合的かつ長期的な施策の大綱を定めることとされているわけでございまして、長期的な視野に立った着実な取り組みが求められております。
 当然そうでございますけれども、今考えております仮称でございます循環型社会基本法、これは、これとは別に、社会におきます今緊急な問題でございます物質循環の確保、そして環境負荷の低減を図るという観点から新たな法律をつくりたいというふうに考えているわけでございます。
 ただ、先生は、少し拙速じゃないか、国民の意見を聞いていないんじゃないかという御意見でございますけれども、先ほどこの内閣発足に当たりまして三党合意でその法案の提出のことが求められたということを申しましたけれども、決して国民の皆様方は循環型社会というのを初めてここで取り組んだというふうには受けとめていらっしゃらないんじゃないかというふうに思います。
 ここに至るまで、先ほどちょっと環境庁の取り組みも申しましたけれども、実は平成八年十一月に、中央環境審議会に対しまして「廃棄物に係る環境負荷低減対策の在り方について」ということを諮問いたしました。
 そして、この諮問に対しまして審議会が非常に慎重に御審議いただきまして、平成十年七月には総合的、体系的な廃棄物・リサイクル対策の基本的な考え方のたたき台を取りまとめていただきました。そして、このたたき台をもとに、全国的な活動を行っております団体からのヒアリング、あるいは全国を三ブロックに分けましたヒアリングでありますとか、あるいは電話、郵便、ファクス、電子メールによる意見公募を行ったわけなんです。かなり多くの方々から御意見も聴取しているわけでございまして、そして平成十一年三月には「総合的体系的な廃棄物・リサイクル対策の基本的考え方に関するとりまとめ」を公表したところでございます。
 実は、今の検討されています法案の議論の背景にはこういうことがありまして、こういう御専門の皆様方の御意見あるいは国民の御意見も十分踏まえたものとして法案の作成に当たっているということを御理解いただきたいというふうに思います。
 いずれにいたしましても、政府といたしましては、やっぱり喫緊の課題でございます廃棄物・リサイクル対策推進に向けまして政府・与党一体となってできるだけ早く成案を得たいということで作業をしているところでございますので、ぜひ御理解をいただきたいと思います。

○福山哲郎君 ということは、今国会の上程を前提とした法案策定作業で、法案が出てくるということは今の段階では変わらないというふうに受けとめてよろしいわけですね。

○国務大臣(清水嘉与子君) そういう方向で努力しております。

○福山哲郎君 では、別の問題に移らせていただきます。
 長官も御承知のように、昨日も建設省に対して我が党の岡崎委員の方から吉野川の住民投票について質疑がございました。
 ことしの一月二十三日、可動堰に対する住民投票が行われたわけでございます。この住民投票についてはもう委員の先生方、長官もよくよく御存じだと思いますので、余り繰り返す気はございませんが、何とか五〇%の投票率というのをクリアして、可動堰の建設反対が九〇%を超えたということなんですが、これは建設省がよく注目されているんですけれども、現実には、今住民投票というのは全国で条例制定の要求が三十四連敗をしておりまして、ほとんど各地方議会で否決をされている。そして、この問題については、いろんなイシューがございますが、実は環境庁にかかわる、地域の環境にかかわるものが大変多いというふうに私は伺っておりまして、今回は吉野川の可動堰だということで建設省ばかりがどちらかというと注目を浴びましたけれども、今のこういった状況に対して、まず一問目は、吉野川の住民投票の結果について長官御自身はどのように御判断をされているのか、お伺いをしたいと思います。

○国務大臣(清水嘉与子君) 吉野川について環境庁から考えましても、ここは渡り鳥の飛来地でもあります干潟を河口部に持っているというようなことで、良好な環境を有している河川だというふうに了解しております。
 この一月の徳島市におきます住民投票、この関係地域でございます徳島市の住民の方々のこの問題に対する関心の高まりがあらわれたものというふうに私は了解しております。
 こうした国が公共的利益のためにある特定のところの住民の方に犠牲を強いるというようなことに対して住民の方々が意見を述べる一つの方策かと思いますけれども、一面におきましてもっと広い国民の利益ということもあるわけでございますので、この問題に関しては建設省が、やはりこれだけの住民の方々の意見でございますので、十分引き続き御理解をいただくような努力をするべきではないかというふうに思っているわけでございます。
 建設省におきましても、この結果については十分御理解を得るような努力をするというふうに言っておられるわけでございますので、ぜひそういった議論が進むことを期待しているところでございます。

○福山哲郎君 長官としては言いにくいことでしょうが、吉野川の住民投票については、国民の理解、徳島の住民の皆さんの理解を得るように建設省に努力をしてほしいというふうな御意見だというふうに受けとめてよろしいわけですね。

○国務大臣(清水嘉与子君) そういうことでございます。

○福山哲郎君 では、次にその住民投票についてなんです。
 今、吉野川の話をお伺いしたんですが、中山建設大臣の民主主義の誤作動だという話がございました。私もいつかどこかで中山大臣にこのことをお伺いしたいと思っているんですが、現実には、あれは間接民主主義によって選ばれた市議会の構成員の皆様の多数決によってあの条例案は、修正をされましたけれども、結果として徳島市議会で可決をされてやることが決まったわけです。
 そこを経て住民投票が行われたわけで、よく間接民主主義の誤作動だとか、間接民主主義を冒涜するものだという議論がありますが、私は、憲法上の手続も含めて、しっかりと間接民主主義の手続を経た上であの住民投票はされたというふうに思っています。もっと極端な話でいえば、その直前の市議会議員選挙に当選した議員がその条例案を出したということも含めて、私はあれを間接民主主義の誤作動だと言うことは非常に乱暴な議論だなというふうに思っているんです。
 長官御自身の御意見で結構でございます、これは環境庁の意見というのは出しようがないと思いますので。長官御自身として住民投票についてどのように御見解をお持ちなのか。環境庁というのは、環境省になれば恐らくこれからこういった問題が出てくるときにいろんなところで矢面に立たされると思いますので、長官の御意見をお聞かせいただければと思います。

○国務大臣(清水嘉与子君) 先ほど申しましたように、私は、住民投票というやり方に対しては、やはり住民の方々の御意見が直接反映できる一つの方法であるというふうにもちろん理解をしているわけでございますけれども、ただ、どういう事項に対してそういうことが有効であるのかどうかということは問題があるだろうと思います。
 そういう意味では、さっきも申しましたけれども、公共的な事業に対しての問題あるいは公共的な利益のために決することに対しての御意見が特定のところで決められる、御意見をどこまで反映できるかということは、やはりたくさんの問題があるんじゃないかというふうに思います。
 ただ、吉野川のときでも出されましたけれども、こういった個別の御意見を十分反映しながら政策を進めていくということは当然のことでございますから、それはそれなりの意見を反映させなきゃいけないだろうというふうに思っておりますけれども、現実問題としては、一体どういう問題、事項が住民投票になじむかという選択等の問題についてもこれから十分検討されなきゃいけない問題ではないかというふうに思っております。

○福山哲郎君 環境庁の中で住民投票について今、長官は検討していかなければいけない問題だというふうにおっしゃられましたが、今後、住民投票についていろんな検討なり議論なりを積み重ねていく御予定はございますか。

○国務大臣(清水嘉与子君) 今、先生の突然のお尋ねなんですけれども、特に今環境庁の中でそういうことについて検討しようという体制をつくっているわけではございませんけれども、一つの問題提起として受けとめていきたいというふうに思います。

○福山哲郎君 私も、今議席をいただいている議会人として、間接民主主義を否定する気も毛頭ございませんし、直接民主主義、住民投票が一〇〇%正しい選択をされるというふうに思っているわけでもありません。
 ただ、今余りにも地方議会と住民の意見の乖離や国の政策とたまたまそこの地域の住民との政策判断の乖離がある中で、私は補完的な装置としての住民投票というのは大変実は重要ではないかと。それは行政や議会人や住民、国民のお互いが緊張関係を持つために実は大変重要な装置だというふうに思っております。
 できれば政務次官にも、住民投票についてどのようにお考えなのか、御意見をお披瀝いただければというふうに思います。

○政務次官(柳本卓治君) 個人的に発言をさせていただきますが、住民投票というのは憲法上、法律上、肯定も否定もされておらない状況でございますが、重要な判断材料といたしまして、法的な拘束力を持つものではございませんけれども、実施をなされたところでございます。
 この問題は、地元の行政が住民の要望を受けて住民投票を行ってあのような圧倒的な投票結果が出たということ、これは国政にある政治家として厳粛に受けとめる必要があると考えております。
 というのも、建設行政のみならず、ある重要案件を計画立案して実施する際、地元住民に対して説明責任というものが必ずあるわけであります。これまでは、よらしむべし知らしむべからずというような傾向があったと否定できないところがあると思います。これはややもすれば閉鎖的、一方通行であったとも言われておりますが、事前にきちんと情報開示を行って、そして関係住民に対して説明責任を果たすことが行政として一番大事なことだと考えております。しかし、住民の方も理性的、建設的な議論に参画していくことが大切であるようにも考えております。
 いやしくも行政を担う立場といたしまして、このような問題に対し、住民投票によってしか意見表明ができないような状況をつくらないように政治家として努力をしていきたい、かように考えております。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 もう余りこれもしつこくは突っ込みません。
 続きまして、別の問題に行きたいと思います。
 前回の臨時国会でも長官とちょっと質疑をさせていただいたんですが、例の温暖化防止の六%削減について、地球サミット、いわゆるリオ・プラス10、リオ・サミットから十年の開催の予定が二〇〇二年ということで、大変重要な地球サミットがもう目の前にやってまいりました。
 この地球サミット、リオ・プラス10をどこで開催するかという問題がことし国連で議論されていくというふうに思うんですが、実は私の地元の京都ではCOP3が御案内のように開催をされました。それで、京都の中では環境問題について京都市民、京都府民の関心が大変高まった。ことしのお正月の経済四団体の賀詞交換会で、商工会議所の稲盛会頭が、ぜひこのリオ・プラス10を京都でやりたいというような御意見の表明がありました。京都市もそれをやりたいというふうに思っておりまして、私も地元の議員としては、京都でCOP3もありましたし、このリオ・プラス10があれば大変京都としてはいいなと思うんです。
 反面、環境問題に関心を持っている議員としては、私としては日本ばかりでやるのもどうかなと。逆に言うと、途上国でやることによってこの温室ガス効果について途上国にも一歩中に入ってもらう。要は、先進国の議論だけではなくて途上国についても一歩中へ入っていただくということで、例えば途上国でやる。これからの環境問題に対して非常にキーになる十数億という人口のいる中国、あそこの環境問題というのは恐らく世界でこれから大変な影響力がいい意味でも悪い意味でも出てくる。そうすると、こういう問題について前向きに進んでもらうために中国あたりでやる方がよりいいのではないか。私個人としてはいろんな考えがあるんですけれども、ただ、京都でやるのも悪くはないなというふうに思っております。
 今、環境庁としては、このリオ・プラス10について、開催地域についてはどのような見解をお持ちなのか、また開催地の選定についてはどういった状況なのか、お教えいただければと思います。

○国務大臣(清水嘉与子君) 先生御指摘のように、二〇〇二年に予定されておりますリオ・プラス10、二十一世紀最初の地球規模の環境会議でもございますし、その成功というのは世界の環境政策の飛躍にとっては非常に重要であるというふうに認識しております。
 最初の会議についての検討というのは、リオ・プラス10のあり方につきましては、本年四月の国連持続可能な開発委員会第八回会合におきまして最初の議論が行われるというふうに伺っておりますけれども、私といたしましては、やはりこの問題に非常に関心を持っておりまして、各国の環境大臣などの意見も伺うことが大事だというふうに考えております。
 ちょうど、先月でございますけれども、二月二十六、二十七と北京で日中韓の環境大臣会議がございました。そこで中国、韓国の大臣にその開催の場所等につきましてもお尋ねしたわけですけれども、中国の解振華国家環境保護総局長からは、アジア地域の開催について大変関心がある、そしてリオ・プラス10への積極的な参加の準備をしている、今後も日本あるいは韓国と十分議論していきたいというようなお答えをいただきました。韓国の金明子環境部長官も、リオ・プラス10のアジア開催には非常に意義深いものがあるという御意見でございました。もちろん、私の方からアジア開催についていかがかということに対しての御意見でございますけれども、そんなことでございます。
 そのほか、その問題について、まだ十分なあれじゃないかもしれませんけれども、幾つかのところでお話し合いがされているようでございますが、先生おっしゃるように、途上国での開催に意義を求める方も随分いらっしゃるように伺っております。
 私といたしましては、リオ・プラス10につきましては、どのようなテーマを取り上げ、どこで開催されるかということにつきまして、これからまた四月にはG8の会議もございますし、いろいろなところもございますので、いろいろ各国とも意見を交換しながら政府としての対応を固めていきたいというふうに考えているところでございます。

○福山哲郎君 中国と韓国の環境大臣は大変アジアでの開催に関心があると。長官御自身はいかがですか。

○国務大臣(清水嘉与子君) 今申しましたように、私もアジア開催について関心があるということでお二人の御意見を伺ったところそういう御返事が返ってまいりましたということを申し上げました。

○福山哲郎君 現実にはどういう段取りで開催地というのは決まっていくんでしょうか。

○国務大臣(清水嘉与子君) まず、開催場所の検討の手順でございますけれども、四月二十四日から五月五日まで国連の持続可能な開発委員会第八回会合というのがございます。そこで最初の議論が行われるのではないかというふうに思っております。次には秋に開かれます第五十五回の国連総会でございまして、ここで具体的な開催場所については討議、決定される見込みというふうに考えております。

○福山哲郎君 ありがとうございます。非常に私も複雑なのですが、京都でやりたいという気持ちもありますので、ぜひまたお力をおかしいただければというふうに思います。
 それで、もう時間もなくて、あっという間に時間がたってしまって予定の質問がほとんどできていないんですが、二〇〇二年にそのリオ・プラス10でいわゆる京都議定書を発効させるというお話がありまして、我が国としては、これも昨年ちょっとお伺いをしたんですが、その二〇〇二年までにやはり批准をしておかなければいけないだろうという議論がございまして、二〇〇二年批准の見通しについて長官の御意見をいただければと思います。

○国務大臣(清水嘉与子君) 前回のときにも先生から御質問いただきましたけれども、我が国が京都でCOP3をやったということもありまして、二〇〇二年までには京都の議定書を発効させようということを昨年のボンでもそういうふうに表明したわけでございます。そのためには、ことしの十一月に開かれますCOP6での各国の議定書締結の引き金となります合意を確実に取りつけるということがどうしても大事になってくるわけでございます。とりわけ、京都メカニズム、遵守、吸収源等につきまして明確な決定が行われなければならないということでございます。
 こうしたCOP6の結果も踏まえまして、地球温暖化対策推進法に基づきます国内対策の一層の充実を図るとともに、さらに二〇〇二年までの議定書の締結を目指して総合的な国内体制を整えていかなきゃいけないというふうに考えているところでございます。

○福山哲郎君 またこの質問の続きはゆっくりやらさせていただきます。
 最後に一つだけ。今の批准の見通し、何とかしたいという長官のお言葉なんですが、その前提となる原発の問題について、十日ですか、小渕総理並びに深谷通産大臣がこれまでの二十基の増設計画については疑問で見直さなければいけないという発言をされました。これはもう大変根本的な我が国のエネルギー政策に対する転換というか、これまでの前提を変化させることになります。
 この中身また詳細はいろいろこれからお伺いをしていきますが、そういった発言に対する現状の環境庁の見解をお聞かせいただけますでしょうか。

○国務大臣(清水嘉与子君) この原発、原発と言わずに現在の長期エネルギーの需給見通し策をこれから見直しするということでございまして、この原発がどういうふうになるかはこれからの問題だというふうに思いますけれども、特に原発についてのお尋ねでございますので、今の段階では、この京都議定書の六%削減目標を達成するためには今この原子力立地の推進というのがやっぱり大きくこの中に入っているわけでございます。ですけれども、今見直しがされるとすれば、それはこれからの六%にもいろいろ影響が出てくるのは当然のことでございます。
 現在、中央環境審議会におきまして環境基本計画の見直しをしておりますけれども、そういう作業の一環といたしまして、通産省からのヒアリングだとかエネルギー分野の有識者と意見交換をする予定でございますので、こういったところから、エネルギー政策の観点も踏まえ、この温暖化対策のあり方を検討してまいりたいというふうに考えているところでございます。

○福山哲郎君 今、長官の六%の削減計画についても影響が出てくるかもしれないというお言葉は、実は大変重要なお言葉だというふうに受けとめさせていただきまして、きょうのところはこれで質問を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。

 

第147国会  参議院  共生社会に関する調査会  2000年3月1日

○福山哲郎君 民主党・新緑風会の福山哲郎でございます。
 きょうは、五十嵐参考人並びに岡澤参考人におかれましては、大変お忙しいところ貴重なお時間をいただきましてありがとうございました。
 また、私ごとでございますが、私は京都が選挙区でございまして、スウェーデンで岡澤先生に御指導いただきながら学んできた山井和則君は私の仲間でございまして、今一生懸命京都で福祉の問題を含めて山井君と頑張っておりまして、きょうこのような場で岡澤先生のお話を伺えて大変光栄に思っております。よろしくお願い申し上げます。
 まず第一点、大変興味深いお話をたくさんいただいたんですが、きょうは政策決定過程への女性の参画というお話で、岡澤先生からは二十七のマトリックスの御提示がありました。これを多分女性それぞれにどのぐらい参加をしているのかというのは大変おもしろい分析ができるなというふうに非常に興味深くお伺いしたんですが、後の議論は、五十嵐先生も岡澤先生も含めて、ある意味で言うと政治の場への進出というふうにきょうは収れんをされていったのではないかというふうに承っておりまして、その点についてまず両参考人にお伺いをしたいんですが、私は、政治の場への参加ということに関して言いますと、女性に限られた話ではないのではないかということを問題意識として持っています。
 日本の特に地方議会における恐らくジェンダーバランス、これは性別もそうですが、職業もそうですが、それから世代もそうです。これは非常に実は偏っているような気がしておりまして、それこそ五十嵐先生の言われたインタレストポリティックスがまだ残っていることの大いなる証左なんでしょうが、私はこれは女性に限らないだろうと。その阻害要因というのは、実は女性に対しての阻害要因、例えば家父長制度みたいな話は多分女性に特化した要因だと思いますが、事政治参加ということに関して言うと、私は根元的にこの国の地方に対する政治参加については非常に偏っていて、ここが問題だと思っています。
 サラリーマンの地方議会の参加というのは、これは物理的に今は不可能な状況になっています。そうでなければ労働組合というある利益団体の代表としてしか参加できない。
 また、年代別に言うと、私は年代の高い政治家が悪いと言うわけでは毛頭ないんですが、若い人の参加は全くないに等しい。先ほどの十八歳の高校生が議会に出ているなんというのは日本にとっては考えられない話でございまして、二十歳代で議会に立候補するなんというとほとんどひよっこ扱いされるという状況の中で、確かに国政は非常に政党の色合いが議院内閣制ですから強いわけですが、地方議会というのはある意味でいうと広範な市民の合意形成をし、チェックをする場だとすると、そこに対して私は非常に改革をしていかなければいけないという問題意識を持っておりまして、今の女性の問題とあわせて、その辺についての問題意識をどうお感じになられているか両参考人にまずお伺いをしたいと思います。

○参考人(岡澤憲芙君) 日本の制度と北欧、特にスウェーデンの制度で決定的な違いというのが、国、県、市町村議会に押しなべて非常に男性支配の傾向が日本は強いということ、そして高齢者支配の傾向が強い、これが決定的な違いだと思います。
 北欧は、どちらかといえば六十五歳以上の議員はまずほとんどいなくなる。それは何かというと、自分たちがつくった年金制度というのはある程度自慢できるものだということで、どちらかというと年金年齢になることを非常に楽しみにして人生を送っている人が多うございますので、六十五歳になると、もう七十になるとほとんど政界から引退されるというのが現実になっています。
 そして、組閣をするときも大体二十代、三十代、四十代で半数、六十代も少しいるんですが、五十代、六十代で半数というぐらいの比率でありまして、世代間のバランスは非常によくとっています。これは何かというと、やはり少子高齢化が進んで負担がふえていますけれども、負担というのはどうしても世代間でつないでいくという、例えば年金なんか完全にそうですね、世代間で連帯していかないと年金資金ができない。そうすると、どうしても年金を受ける側により近い人たちが過剰に支配していると年金の供給源になる層の意見がなかなか通らない。そうすると、世代間連帯ができないと年金制度なんか維持できなくなるという可能性があります。
 そういうふうな高負担社会というのは、やっぱりそういう意味では世代間で負担とサービスをどう分け合うかという連帯感をつくっていかないと、間接税だけで二五%の国というのはもたないわけです。その意味では、世代間バランスをとっていこうということと、世代間で連帯をつくるためには議会構成はどうした方がいいのかという発想をやっぱりそれぞれの政党が考えているんです。
 それと、もう一つは女性の問題なんですが、やっぱり平均寿命が長い分だけ総人口でも有権者でも女性の方が過半数の国なんですから、とすると、女性が意思決定過程にいたから政治がいいとか悪いとかということではなくて、そこで決まった決定に対する有権者の納得度は高くなるだろうという発想なんです。だから、女性議員がふえたから一気に何々がなくなるとかということではない、それほどはないんです。ただ言えるのは、福祉であるとか女性環境であるとか環境問題に対する関心は非常に高くなるという特徴はありますけれども、基本的に大きく変わるわけではない。
 ただ、そういう意思決定のメカニズムで決まったものに対する有権者の納得度が高くなる。その有権者に対する納得度が高くなければ少子高齢化の負担社会に耐えられないんです。結局、ポイントはそこだと思うんです、北欧の政党政治を見るときには。どうしたら有権者が意思決定に対して納得してくれるだろうか。つまり、意思決定のメカニズムにどう参加型デモクラシーの要素を入れていくのかということに非常に苦労をしている。
 それの具体的な例が、先ほど四ページに挙げておきましたけれども、選挙権年齢を十八歳にし、被選挙権年齢を十八歳にし、郵便投票制度を導入し、投票期間を長期設定し、在外選挙権を導入するという形で、意思さえあればこの地球社会のどこに住んでも参加できるんだというメカニズムがそこでできた決定に対して納得度を高めている。
 そういう意味で、今御指摘がありましたように、男女間の連帯であるとか世代間の連帯というのは、そういうふうに議会の持つ決定の説得力を拡大するために非常にそれぞれの政党が工夫して考えていると考えていいかと思います。

○参考人(五十嵐暁郎君) さっき、末広議員の選挙制度についてのお答えの中で少し漏らしたことがありました。それは、地方議会、特に市議会議員選挙は大選挙区です。全市一区で選挙をやります。だから、女性の当選率も高まるというところはあるんだと思います。
 今の御質問ですけれども、いろんな複雑な問題があって、確かに私は、地方議会がある意味で、端的に言えば住民の意思を代表するものになっていないという感じは切実にするんです。例えば、住民投票の動きがこれだけ激しくて、しかもそれが次々に否決されていく。死屍累々たる請求否決です。これも住民とそれから議会との乖離、ギャップの大きさの一つのあらわれです。
 どういうところからそういうことが生じるのかというと、先ほども少し触れたんですけれども、議員で生活するということはなかなか難しい。それは、選挙が民主主義を保障するためにあるわけですから、それもまず一つのネックです。
 私は、政治学科で教えていて、学生が政治家になりたいと言うと、ちょっと待ってくれというふうに、婚約者なんか連れてこられると、それで本当にいいのかというふうに思わず言ってしまうんですけれども、やっぱり職業としての政治というのはリスクを伴うものだということがあります。それを補って政治家になられるというのは、一種の政治的な情熱の問題、使命感の問題だというふうに思って、それは社会的に見れば敬意を表さなければいけないところだというふうに思います。
 もう一方では、特に地方議会のレベルになると、たとえ当選してもそれだけでは生活できない報酬になっているということなんです。例えば五十万都市の市議会議員の報酬を見ても、やっぱり聞いてみると、その年齢にしてみると、いろんな年齢があるかもしれませんが、それだけで一家を養っていくには苦しいんです。もちろん選挙も待っているということなんです。
 それで、どうすればいいのか。いろんな方法があるわけですけれども、議員の数を減らす、そして報酬を多くするというのも一方ではあるんです。むしろこの方が大勢を占めている流れかもしれないんですけれども、私は逆なんじゃないかなというふうに思うんです。そうなっていくと、やっぱり女性議員は減るというふうに思います。
 そうではなくて、議員の数をふやしちゃえというふうに思うんです。これだけ社会の意見や利害関係というものが多様化したら、もっとふやしちゃう。そのかわり、もちろん報酬は減ると。それで、さっき言いましたように、それを主たる収入源としなくてもいいように、夜間、週末に持っていったらいいということなんです。企業とか、非常に近代的、合理的な組織で働いている人であれば、そういう限られた時間の中で十分やっていけるはずだというふうに思うんです。
 そういうふうに開放して、収入でいえばある意味では副業的なものとして位置づけられるような、そういう働き方のスタイルにすればいろんな人が入ってこられる。いろんな人というよりも、住民の構成を忠実に反映した議会というものが生まれるんだというふうに思うんです。これが日本政治の一つのポイントだというふうに思うんです。これは地方レベルだけにとどまる問題ではなくて、国会議員選挙についてもこれが一つの土台になって選挙をやるわけですから、この影響というのは地方だけにとどまるものではないというふうに思います。

○参考人(岡澤憲芙君) レジュメの四ページをちょっとあけていただきたいんですが、今の五十嵐さんのコメントに対してちょっと違う、逆の発想なんです。
 実は、スウェーデンで女性が意思決定過程に参加した理由の数多くある変数の一つに政治がペイしないということを挙げました。これは、そこに政治家の歳費、首相の歳費から国会議員、大臣、知事、市長と全部年収を書いておきましたけれども、それプラス注意しないといけないのは、地方議員はその日の日当と通勤費だけなんです、原則として。そして、フルタイムの政治家になると丸々政治家としての歳費はもらえるんですが、その人たちはごく少数で、圧倒的多数は兼業をしながら、ある意味でパートタイムで社会に対する参加意欲で参加している。その人たちには日当と通勤費ぐらいしか出ないという現実があります。これが大きな特徴です。
 その政治家を経験しながら、自分はフルタイムの政治家になっていこうとする人は政治家の道を選ぶでしょうし、例えば、先ほど紹介しました十八歳の女子高校生が地方議員をやっていたことがあるんですが、その人は高校に通いながら市会議員もやっていて、その日の日当だけはもらうという形をとる。そして、フルタイムの政治家になるかどうかはまたその後の判断で考えていけばいいという形です。
 逆に言うと、そうすると、政治というものを一つのビジネスとして考えてきた多くの人たちは、余り魅力的なビジネスではないなということで出ていく。そして、その部分に女性が非常にたくさん参加していったという要素もやっぱり否定できないと思います。だから、日本の国、県、市町村の歳費の問題と北欧型の歳費の問題はちょっと違って、スウェーデンでは地方議員は基本的には兼業をベースにしたパートタイム業である。そのために、参加しやすいようにウイークエンドとか夕方に体育館で開きましょう、そしてそれに市民が参加できるようになっていくという形です。その辺はちょっとつけ加えておければと思います。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 今の話に関係するんですけれども、先ほど女性が政治のキャリアに歩むような学科選択をしないというお話がありました。私は政治教育という言葉は余り好きじゃなくて、どちらかというと民主主義教育という言葉を使いたいなというふうに思っているんですが、要は、日本の場合には余り民主主義の教育が行われていないし、そういう現場を見せる機会もない。それが二十歳になっていきなり投票して合理的な判断で自分が選びなさいみたいに言われても、その判断をする基準も尺度も与えられていない。ましてや、被選挙権があるからといって、いきなり自分が議会に出ていくということは、それは二十歳でもらって二十五までの五年間に急激に養成されるようなことというのは僕はよっぽどでない限りないというふうに思っておりまして、それが今の話にずっとつながってくると思っていまして、岡澤先生の、県議会が例えば健康と医療等のものをやる、そこからすそ野が広がったと。
 今の日本の市民が各市議会、県議会でどんな議論がされているか本当にどのぐらいのことを知っているか、もしくは関心があるかというと、大変私は疑問だというふうに思っております。そういう点で、スウェーデンでどのような形の政治教育が子供のころから行われているかというのを簡単にお答えいただきたいのが一点。
 もう一点、スウェーデンに関して言いますと、私はやはりイメージとしては大きい政府の国だと思っておるわけです。パブリックセクターに女性の進出が大きいというのは、ある意味でいうと制度上の確保がされているからだと。パブリックセクターの労働者の層が厚いわけですから、女性の進出ができる。女性がパブリックセクターに多ければ多いほど、それを監視するための議会に女性が私も監視に行こうというのはこれは非常に出ていきやすい状況になっているのではないかなというのを私はお話を伺って感じたわけです。
 日本の場合には、役所の組織もほとんど男ばかりです。その状況で、じゃそれを監視する役割としての議会に、それがどんな大きい小さいを含めても、じゃ女性が行こうかというなかなかそこはモチベーションが上がらない。それは、スウェーデンの政府の大きさのあり方、そのパブリックセクターが大きいからこそ逆に女性を雇用として抱えられるスタンス、それが制度上保障されている、そういった点が非常に環境としては大きいのではないかなという感想を持ったんですが、今の点について。

○参考人(岡澤憲芙君) 二点あるんですが、一点目の政治教育の部分なんですが、これは北欧でほぼ共通しているんですが、非常に印象的な光景があります。
 選挙になりますと、各政党が選挙小屋というのをつくるんです、街角に幾つも。そして、義務教育の生徒たちが先生に連れられて、さあ皆さん、今から何時間か自由にしますから、自分たちの判断でいろいろな政党に行って意見を聞いてきなさい、これは恐らく日本では信じられない風景だろうと思うんですが、そして各党ともその小学生や中学生が質問に来たときのために丁寧に答えるように、また非常にわかりやすいパンフレットも用意しているんです。
 そうすると、小学生や中学生がいろいろ、なかなか憎い質問をしたりして、この政党は環境党なのに再生紙を使っていないよ、このポスターはとか、そういう質問をしていったり、そしてそれぞれの政党は選挙小屋にあめなんかを置いてあるんですね。ところが、幾つかの政党は、小さいときにあめを与えて虫歯になることを防ぐために私たちの選挙小屋ではあめは置いていません、それを有権者に対する一つのメッセージにしているという、やっぱりそれぞれが知恵と工夫で小さい有権者、それは何かというと、将来の有権者だし将来の負担者なんですからという、その辺の風景は日本とは随分違う。
 日本で恐らくそういうことをやったらちょっと大きな問題になってしまうかもしれませんが、これはほぼ北欧共通しているんですが、選挙のときは一番民主主義教育にいいということで先生方が率先して生徒を連れていって選挙小屋を訪問させる、そしてその後生徒たちにディスカッションさせる、そうするといろいろな意見が出てくるという形だろうと思います。
 それと、あと地方自治体の問題と大きな政府の問題ですが、スウェーデンの政府というのは非常にわかりやすく言えば、比較的小さな中央政府、とてつもなくでかい地方政府と考えればいいと思うんです。地方政府は非常に大きゅうございます。それは何かといいますと、県は医療、保健、健康と言いましたけれども、一番下の小さな単位はコミューンと言うんですが、そのコミューンレベルがそれ以外のことをほとんど守備範囲にしています。だから、学校教育であるとか福祉であるとか、そうすると福祉国家ですので基本的には公的な機関で福祉をカバーするということになりますから、非常に大きな地方自治を持ちます。そして、それは今度は女性が社会参画したいと言ったときに非常に入りやすかった領域でもあったわけです。
 つまり、それまでは家庭内のアンペイドワークのボランティアとしてやっていた仕事を家庭内介護、地方公務員として、ペイドワークとしてプロフェッショナルな仕事に切りかえていったわけです。そして女性が社会参画の道を開いている。つまり、女性が社会参加するときの一番手っ取り早い方法としては、今まで在宅でやったアンペイドワークのボランティアの仕事をペイドワークの地方公務員の仕事の領域として確立した。そして、女性が社会参加するときに地方公務員になっていったわけです。そして、自立して経済的な単位となった人たちが自分たちの代表を送り始めた。だから、議員御指摘のとおりでありまして、大きな自治体というものをベースにして女性が社会参画した、だからパブリックセクターを中心として女性が社会参画した一つの典型的な例だと思うんです。
 それの対比にあるのが、アメリカなんかが今度はプライベートセクターに女性が参画して、大きな企業の社長に女性がいるというのはアメリカ型であると思うんですが、北欧の福祉国家というのはどちらかというとパブリックセクターを一つの突破口として女性が社会参加していった。
 それで、先ほど言いましたが、そういう動向が一つ定着すると今度税制で変えて、一九九〇年代から今度は税制を改革し、所得税の重心を地方税に置いていった。だから、ほとんどの有権者は、所得税と言えば地方税のことなんです。つまり、地方自治体に権限とともに財源もおろしていくという形をとっていったと考えるべきだと思います。
 以上です。

○参考人(五十嵐暁郎君) 政治教育のことなんですけれども、岡澤先生は先ほど女子学生が政治・社会科学系の学部に来ないとおっしゃった。多分、早稲田のイメージだと思うんですけれども、私も早稲田の卒業生ですけれども、立教は全く違いまして、最近は法学部では女子学生がもう半数近くになっています。数年前は、我々は女子大の教師になっていくのかというふうに思ったぐらいです。
 恐らく女子大は志願者が減って大変なんだろうというふうに思いますし、学部の中でも、これは一つの就職のことが頭にあって非常にそのことを意識するせいもあるんだと思いますけれども、法学部、経済学部の志願者がふえているんです。それが一つ。その意味では下地はかなり広がってきているというふうに思います。
 それからもう一つは、福山議員のように若くして政治家を志される方もいらっしゃって、だけれども政治を志すというのは人生のいろんな経験が発端になってきていることだと思うんですね。いつ、何がきっかけになって政治を志すかというのは恐らく御本人たちにも予想もつかなかったことじゃないかと思うんです。そのときに、どういうふうにして議員になる、あるいは選挙に出て議員として活動するトレーニングができるかという問題だと思うんです。
 特に、男性議員の場合は、いろいろなケースがあると思いますけれども、比較的今までの社会的な経験を生かすことができたり、あるいは組織というものに支持されることがあるかもしれませんし、女性議員の場合はそれがちょっと難しいかもしれない。その意味では、この間の統一地方選挙や、数年前から行われているようないろんな女性議員の進出のためのセミナーというものがもう少し広がってなきゃいけない。
 これは大学についても言えることなんですけれども、少し宣伝ですけれども、社会人入試というのを我々の学部で日本で初めてやったわけです。そこに来る女子学生、といっても私よりも年齢の多い人もいっぱいいるんですけれども、そういう人たちはかなり地方議会議員選挙に関心を持っています。それをサポートしたり自身が立候補したり、それはなかなか意欲に満ちた光景であるんです。
 こういう政界進出を支えるようなそういう教育の場というものが一つのポイントにもなるんだというふうに思います。

○福山哲郎君 もう余り時間もないので、まず五十嵐先生には、NGO、NPOが日本ではかなり今おくれているとは言いながら存在として大きくなってきておりまして、そのNGOやNPOのリーダーが地方議会に出ていくというようなことも多々見受けられるんですが、今のお答えと重なってくるかもしれませんが、NGO、NPOが政治的に出ていくときへの、広がるための何かきっかけとか方法とか、なかなかNGOのリーダーも自分が政治家になることに関しては抵抗がある方がたくさんいらっしゃって、それは今までの日本の政治がやってきた逆に負の遺産だと僕は思っているんですが、そこに対してどういったアプローチがあるのかということ。
 岡澤先生にお伺いしたいのは、北欧の三カ国が女性が働きやすいと。それは、先ほど言われたパブリックセクターのことが中心になって働きやすいという話なのか、北欧ならではの何らかの特別な特殊性みたいなのがあるのか、ではなぜ民間セクターに関してはスウェーデンでは余りまだ進んでいないのかというようなことをもし教えていただければと思います。

○理事(南野知惠子君) 手短にお願いいたします。

○参考人(五十嵐暁郎君) 短くいたしますけれども、NGOのような特定のイシュー、問題、課題というものを地域の中で考えている、活動しているグループというものがネットワークをどれだけ築けるかというのが地方議会を変える一つのポイントだと思うんです。押し出していく力を持てるかどうか。
 それからもう一つ、おっしゃったように、政治観の転換というもの、政治というものをもっと自分たちに身近なものであり、自分たちが担うべきものであるというような政治観の転換が、政治についての観念の転換が必要だというふうに思います。

○参考人(岡澤憲芙君) 北欧三国、四国と言ってもいいんですが、北欧で女性がパブリックセクターを一つの突破口にしたということは、やはり法律が成立すれば、一番それが実体化できるのはパブリックセクターの部分で、プライベートセクターの場合は、そうはいっても過激な激しい国際競争に勝つために、残業であるとか突然の出張であるとかという形でなかなか女性が参加しにくいという要素がある。ところが、パブリックセクターの場合には法律が制定するとそれがすぐ実体化するというメリットがありますので、そこが北欧でパブリックセクターで女性が参画していった大きな理由だと思うんです。
 プライベートセクターは、今述べましたように、どうしても国際間競争に勝たないと、ああいう小規模な国というのは財源確保ができませんので、そうするとどうしても、ある程度の突然の出張であるとか休みの返上であるということになると、少し市民生活、家事生活、職業生活と地域社会の生活のバランスを欠く要素が出てくる。そのためにそれをどう確保していくかというのが今課題になっていると言ったとおりであります。恐らくプライベートセクターについては知恵と工夫を今から出していくんだろうというふうに思います。