2003 年 度 資 料

 

日付 国会 会議名 内容
2003/7/16 156 憲法調査会 憲法と非常事態法制、安全保障について
2003/6/10 156 環境 特定産廃特措法案、廃棄物処理法改正案(第2回)
2003/6/4 156 環境 特定産廃特措法案、廃棄物処理法改正案(第1回)
2003/5/30 156 倫選特 公職選挙法改正
2003/5/14 156 連合審査会 食品安全基本法案
2003/4/22 156 環境 遺伝子組換え生物等の使用等に関する法律案(第2回)
2003/4/17 156 環境 遺伝子組換え生物等の使用等に関する法律案(第1回)
2003/4/15 156 環境 野生生物の保護とメジロ等の愛玩飼養制度について
2003/3/27 156 環境 公害健康被害の補償等に関する法律案
2003/3/26 156 環境 イラク戦争による環境被害、地球温暖化について
2003/3/11 156 予算 政治とお金の問題について
2003/1/29 156 予算 ハンセン病問題・人権擁護法案について

 

第156国会  参議院  憲法委員会2003年7月16日

憲法と非常事態法制、安全保障について

○福山哲郎君 民主党・新緑風会の福山哲郎でございます。
 参考人の先生方におかれましては、お忙しいところ貴重なお時間と御意見を賜りましてありがとうございます。よろしくお願い申し上げます。
 実は、私は村田先生とは同じ学びやで学びまして、同世代でございまして、同世代の国際政治学者として御活躍をされていることを大変うれしく思っておりまして、今日、村田参考人が来られるということも踏まえて今日は質問させていただきたいというふうに思います。
 まず村田参考人にお伺いをいたしたいというふうに思います。
 先ほど有事法制の評価をされましたが、国民保護法制がまだ決まっていないのでその評価はまだはっきりとはできないと、ただ全体としては良かったのではないかという評価でしたが、その重要な国民保護法制に当たって留意する点とか、我々がこれから国会で国民保護法制の議論をするに当たって考えなければいけない点というのはどのような点をお考えになられているのか。例えばで言うと、大規模な武力攻撃事態よりも例えば不審船の問題とかサイバーテロの問題とか化学兵器の問題とか、そちらの方が私はより可能性としては今の状況からして高くなっているというふうに思っておりまして、そういった点についてまず御意見をいただければと思います。

○参考人(村田晃嗣君) ありがとうございます。
 実は大変難しい問題でございますけれども、先ほど申し上げましたように、私は有事というのは想定し得ない事態が起こることが基本的に有事だというふうに思っておりますので、極めて厳密な法規定の網の目を作っても、多くの場合はそれはうまくいかないであろうというふうに思っております。しかしながら、言論の自由、思想信条の自由というようなことは今回の法律でも例示されたと思いますけれども、そういうどのような事態でも侵してはならない基本的人権というものをどう担保していくかということは極めて重要なことだというふうに思っておりますし、それからおっしゃるようなサイバーテロであるとか不審船の問題とかいうのも、確かに可能性といいますか、蓋然性としてはそういう危機の方が高いかと思いますけれども、今般の法整備によって、そういった問題に今後対処していくときのある種のそれは応用問題として用いられる枠組みというのが整備されつつあるのではないかというふうに思います。
 ただ、私は、一つ幸いだと思いましたのは、今回の有事法制の議論で、それこそ佐々参考人が有事法制の問題で第一線でやっておられたころには、有事法制と言うだけで何か極めて危険で反動的なものであるというようなネガティブなイメージが展開されたように思いますけれども、例えば今回の法律でも、いわゆる罰則規定というのは、私が記憶しているところでは六か月以下の懲役又は三十万円以下の罰金でございましたか、というような罰則規定しか含まれていないのであって、それも深刻であるといえば深刻であるかもしれませんが、しかし、このようなものを一部の人たちが言うように国家総動員法の復活であるとか治安維持法の回帰であるとかいうふうに論ずるのは正にアナクロニズムであって、そういう議論はもう国民には受け入れられなくなってきているというのは国民意識の大きな変化だというふうに思っております。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 また、村田先生は、改憲論の議論の中で、押し付け憲法だから改憲するべきだという議論に対して、戦後生まれの世代として、修憲、改憲等も含めて議論をされておられますが、憲法改正の議論に対する村田先生のお考えを御披瀝いただけますでしょうか。

○参考人(村田晃嗣君) ありがとうございます。
 憲法が制定されました経緯については、今後も歴史家や政治学者あるいは憲法学者が実証的に研究を進めていくべきことであろうと思いますが、私は憲法を改正する必要があるというふうに思っておりまして、今の憲法には不備がそれこそ幾つかあるように思っておりますけれども、しかし、憲法を改正する理由としてアメリカ合衆国に占領下に押し付けられたからという議論は、私はやや後ろ向きの議論であって、そのような議論でこれから二十一世紀を生きていく、そして、もし憲法が改正されたならば、その改正憲法の下で生きていくであろう若い人たちにアピールする力は私は非常に弱いのではないかというふうに思っております。
 それから、私は憲法に問題点が幾つかあるというふうに思いますが、しかし、この憲法が基本的に示した基本的な人権であるとかいう大きな理念は戦後日本の政治のバックボーンになってきたのであって、憲法がその原点において無効であるという議論は戦後の民主主義政治の発展を否定する議論につながるのではないかというふうに思っております。つまり、憲法は戦後日本の民主主義の発展に大いに寄与してきたし、国民の多くは今の憲法を受け入れてきたけれども、しかし、国際環境と国内環境の変化によってそれが部分的に必ずしも有効に機能しなくなっているところがあって、それについて前向きに改憲を考えるというのが私のスタンスでございまして、憲法の出自における正当性を問うということは、生産的、未来志向の改憲論ではないというふうに私は考えております。

○福山哲郎君 三つ目の質問なんですが、村田先生はアメリカの政策決定というかアメリカ内部の政策過程についていろんな論文等著作を出されているんですが、今回の大量破壊兵器が見付からない状況の中で、CIAの長官等があれは虚偽の報告だったというような話が出ていますが、こういった一連の状況についてはどのような感想というか、何か御意見をお持ちでしたらばお教えいただけますでしょうか。

○参考人(村田晃嗣君) ありがとうございます。
 大量破壊兵器がいまだに発見されていないということは確かに大変問題であると私も存じておりまして、イギリスでもブレア首相の支持率が低下をしておりますし、それからアメリカでも、イラクの占領統治が長引くにつれてブッシュ大統領の支持率が九・一一の前にほぼ戻ったというような報道がなされておりますし、御指摘のような情報レベルでの誤りというようなことが今指摘されているわけでありまして、これは懸念されるところであります。
 ただ、私は、開戦前にフランスが査察の延長を主張しておりましたけれども、あのフランスでさえ四か月の査察の延長を当初は主張しておりまして、後に一か月にそれを短縮いたしましたからフランスが主張した査察の延長期間に何の論理的根拠もなかったことは明らかなんですけれども、フランスでさえ四か月というふうに言っておりました。
 それで、まだ戦闘終結の宣言が発せられてから四か月がたっていない。私は、大量破壊兵器が出てこないということを断定するのはやはりまだ早いと、引き続き大量破壊兵器の発見に努めるべきであるというふうに思っております。これについては少し息の長い活動、調査が必要ではないかというふうに思います。
 これは、へ理屈をこねるようで恐縮でございますけれども、大量破壊兵器が見付かるということはありますけれども、大量破壊兵器が見付からないということは理屈の上ではないわけです。つまり、大量破壊兵器が見付からないというのはまだ見付かっていない状況が続いているということでありまして、まだ見付かっていないということが大量破壊兵器がなかったということの証明にはこれは必ずしもならないんですね。
 ですから、引き続きこの発見に努めなければならないというふうに思いますが、ただ、その大量破壊兵器が仮にあと半年とか一年にわたって発見されなかったとして、その場合、米英が取った軍事行動の正当性がどれだけ低下するかというと、それはやはり私は低下すると思うんです。大量破壊兵器というのを大きな理由にいたしましたから、それがいつまでたっても見付からないということはかなり信頼性が揺らぐと思いますけれども、しかし、イラクが本当に大量破壊兵器を持っていたかどうかということよりも、イラクがこれまで大量破壊兵器の国際的な査察に対して極めて非協力な態度を通してきたということが一つの問題としてあるということは指摘しなければなりません。
 それから、イラクのフセイン体制が、恐らく意図的に大量破壊兵器を自分たちが持っているのか持っていないのか分からないあいまいな状況を作り出していて、そのようなあいまいな状況の中で近隣諸国、サウジアラビアやあるいはクウェートに対して、自分たちが大量兵器を持っているかもしれないぞという前提である種の威嚇を行い、そして国内の少数民族に対しては、やはりこの体制が大量破壊兵器を持っているかもしれないぞというあいまいな状況の下で少数民族に対する、あるいは反体制派に対する威嚇を行ってきていて、しかし、持っていると明らかになれば懲罰を受けますから、持っているとも持っていないとも分からないあいまいな状況を意図的にイラクが作り出してきたと、そのような状況にアメリカやイギリスがもはや耐えることはできないというのが今回の武力行使であったというふうに思いますので、大量破壊兵器が長期的に全く見付からなかったとすれば、私はそれは見付かる方が大変好ましいと思いますけれども、しかし、そのことによって米英の行動の正当性が全くなくなるというふうに私は考えてはおりません。
 以上でございます。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 佐々参考人にお伺いをさせていただきます。
 実は同様の質問なんですが、日本で危機管理の専門家としてずっとやっておられた佐々先生から見て、国民保護法制について重要なポイントというのはどのように考えられているかということと、先ほど先生がおっしゃられましたその危機管理基本法なるものは、今回の有事法三法プラス国民保護法制ができても、先生の言われるA、B、C、Dにはまだ全くそこは足りなくて、それの上位として危機管理基本法なるものが必要だとお考えなのか、その必要な場合には一体どういう論拠が一番その危機管理法の肝になる点なのかというような点を、もし、教えていただければと思います。

○参考人(佐々淳行君) 実は、大変時間がなくて言えなかった問題を御質問いただきましてありがとうございました。
 まあ、広義の安全保障という議論をいたして、今、防衛の問題がずっとここまで来たわけでございますね。広義の意味での防衛と治安と二つあるんです。そして、政治あるいは行政の最高の任務は国民の身体、生命、財産の保護であると、これは皆さん共通の認識だと思います。そこへ持っていくための防衛の問題の議論は進みまして、周辺事態法というのは、安保条約第六条、日本は攻撃されないけれども、韓国攻撃されたという状況でしょう。これがこの間先にできちゃって、ようやく今度、日本が第五条、安保条約第五条事態、日本が攻撃されたときのができました。
 そういう意味で、防衛問題がようやく進み出したんですが、今御質問のA、B、C、D、E、F対策というのは、実は皆さん御記憶だと思うんですけれども、それぞれ何かあると時限立法的な、限定的な妥協の産物としての特別法ができているんですよ。
 例えばハイジャック問題、これ、だれもやってなかったんですけれども、昭和四十五年の三月三十日のよど号でもって突然六月で、二か月でハイジャック防止法、二十年の懲役ですよね、これができています。
 それから、火炎瓶テロも、全然爆発物でないというのでこれ駄目だったんだけれども、火炎びん取締法できるでしょう。そして、今度は爆発物取締罰則というのが取り残されているんです。太政官布告ですから、これは。これでもって、あの例の大爆弾事件を全部これでやっていたという、海外犯のやれないという、これ大きな欠陥がございます。
 それから、A、BのBは、厚生労働省が伝染病の問題は自分の任務だとようやく自覚をし始めたという段階でありますけれども、まだ完全な体制できておりません。
 それから、C、ケミストリーの方のサリン、これも罪にならなかったんだけれども、サリン特別法というのを慌てて作りまして、無期懲役まで入りました。
 そして、Cのもう一つ、コンピューター。これも不正アクセス防止法という法律ができているんですよ。アクセスという外来語をとうとう日本語にできなくて、アクセスという言葉が法制局で法律用語になっちゃった珍しい例なんですけれども、不正アクセス防止法というのができています。これは科学技術庁担当だったのが、今、文部科学省でございまして、警察には捜査官二十名しかおりません。これ、とてもどうにもならない。
 更に言いますと、Cのもう一つ、カルト。これに対しては、破防法駄目だということになって、新団体規制法と言われておりまするところの、大量殺人を犯した団体の視察に関する法律というのができているんですね。ところが、これはオウムと東アジア反日武装戦線と、そして連合赤軍と、この三つしか対象にならぬのです。だから、白装束出てくると困っちゃうわけですね。これもやっぱり欠陥でございます。
 そして、だんだんだんだん国民保護法という概念で、今度は空襲警報だれが出すの、避難誘導だれが出すの、緊急治療だれが出すのと、だんだんだんだん大きな概念が固まりつつあるところなんですが、そこには既に特別立法でもって時限立法をやったりなんかして、皆さん気が付かないうちにたくさんできているんです。これも全部後追いです。何かあると慌てて作るということで、しかも不完全なものでございます。
 今度は、国民保護法のときには、これを包括的に、役所の任務分担もきちっと決めて、例えば今の、十二歳の少年、児童社会復帰支援施設というんでしょう。どこにあるのかだれも知らないんですね。それで、そこはだれが所管しているんだと大騒ぎになっちゃって、法務省、全然関係ないんですよね。これは厚生労働省なんです。それで、四十日間の観察やって、三か月以内で何とか教育してまた元へ戻すというんでしょう。百日ぐらいするとあの少年出てきちゃうんですよね。
 これもやっぱり触法少年の収容施設というものを作らないかぬ。これの担当をやっぱり法務省の矯正行政の一環に入れなきゃいかぬという大きな改正がございます。こういうものをまず今度の国民保護法で全部やっていただきたい。
 それで、だれが担当するかと。さっきから議論出ておりましたけれども、危機管理庁というのを作りますと私の経験では屋上屋を重ねることに相なると思います。おっしゃったとおり、警察庁だとか法務省だとか、出てくる出身母体決まっているんですからね。それで、自分の省庁の省益図っちゃうからね。そのためにわざわざ昭和六十一年に中曽根総理、後藤田正晴さんが内閣五室長制というのを作ったんです。その中の一つが成長してきて、今、内閣危機管理監、さらかんになっています。機能していません。
 これを強化することによって、指揮権はやっぱり内閣法十二条、官房長官が総合調整権を持っていますから、内閣官房長官の下の内閣危機管理監にやらせると。危機管理庁を新たに作ってどこに置くんだとまた大騒ぎになりますから、今の存在している危機管理監を活用すること、これが国民保護法と、今までできちゃったそのA、B、C、D対策のこの法律とドッキングさせて国民保護の万全を期すると、これが治安だと思います。治安は私は最大の社会福祉であると信じております。

○福山哲郎君 済みません。先生、今、僕が聞き落としたのかもしれないんですが、今の御議論は、国民保護法制の中に今いろいろ言われたことを入れ込めというお話なのか、今の国民保護法制の議論というのはある意味でいうと有事三法案に関連して議論が出てきているわけですが、そこの別の枠組みとして危機管理法の中、危機管理法と国民保護法制を一緒にして今の御議論を入れ込めという議論なのか、どちらなんでしょうか。

○福山哲郎君 もうほとんど時間がなくなりましたので、水島先生、緊急権の濫用について大変御懸念をお持ちなのは大変理解をしましたし、私もそこは同意をするところですが、さはさりとて緊急権は必要で、そうなるとその濫用を防止するために日本ではチェック機能が働かないのではないかというような御意見があったと思うんですが、さはさりとて装置としてはどのようなものが有効だとお考えか、それだけお教えいただけますでしょうか。

○参考人(水島朝穂君) 先ほどから、自衛権の問題は法律でできるとか、集団的自衛権の行使は法律とか、緊急権を法律でという御議論ございましたが、やはり緊急権という国家権力の全体を言わば臨時的に編成する、そういう権能は憲法に定めるべきであります。したがって、本当にそれを入れるのであるならば、憲法改正の問題として正面から提起するのが筋であります、私の立場。
 ただし、現段階における憲法に緊急権条項を入れる必要もないし、他の様々な危機の類型、先ほどから議論ありますけれども、そういうのは現行法でできる部分もあるし、むしろ現行法を改める部分その他は、もし時間があればしゃべりたいですけれども、お尋ねのポイントについてはそういうことでございます。

○福山哲郎君 ありがとうございました。

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第156国会  参議院  環境委員会2003年6月10日

特定産廃特措法案、廃棄物処理法改正案(第2回)

○福山哲郎君 おはようございます。民主党・新緑風会の福山哲郎でございます。
 大変この法案の審議に関しては、委員長や与野党間の理事の先生方の大変な御尽力で参考人並びに現地視察をするということまでやっていただきまして、充実した審議ができることに対してまずは冒頭感謝を申し上げる次第でございます。参議院としてこういう審議ができることは大変いいことだと思っておりまして、今後の法案につきましても、与野党問わず、またこの環境委員会、しっかりやれればなというふうに思っております。
 私も青森と岩手の不法投棄の現場に行ってまいりました。一言で言うと、驚きと怒りと今後の廃棄物行政はどうなるんだろうという思いでごちゃごちゃになって帰ってまいりました。私のような素人が行くと、あの投棄の現場を歩くと、本当にこれが不法投棄をされている現場なのかどうか分からない部分がたくさんあります。普通の一般の住民の方も恐らく分からないところがたくさんあって、歩きながら県の職員の方に、指を指して、福山先生、ここの地下に廃油のドラム缶が一杯埋まっていますと言われると、えっ、この下にドラム缶が一杯埋まっているんですかという話とか、ここは実は産廃が全部地下に埋まっているんですけれども、上が土で盛られているので分かりにくいと思いますし、春になると草が生えてきて全く分からなくなります、秋から冬に掛けては雪が一面覆うと更に分からなくなりますと。怖い話ですが、その雪は全部解けて流れていくわけで、もう本当にひどいなと思いながら帰ってまいりました。
 まず冒頭、もう前の審議でもいろいろあったと思うんですが、この青森、岩手の県境の不法投棄問題の行政責任というか、青森、岩手が見過ごしてきたことに対しての責任はどう取られるのか。青森に至っては、平成三年から四年に月一、二回立入検査を実施して、不法投棄が確認されなかったというような報告も出ています。この青森、岩手の行政責任について、環境省としてはどのように今お考えなのかをお答えいただけますでしょうか。

○国務大臣(鈴木俊一君) 今回、参議院の環境委員会におきまして、青森、岩手不法投棄の現地を御視察をいただいたわけでございまして、この問題に対する御熱心な取組に環境省の立場からも感謝を申し上げ、敬意を申し上げたいと思います。
 私も、昨年の春に現地を見てきたわけでありますが、ただいま福山先生のこの印象と全く同じ気持ちを持ったわけであります。どうしてこういうものが出来をしてしまったのか、この間、何で気付かなかったのか、そういう思いを強くしているわけであります。
 一般論といたしまして、産業廃棄物といいますものは、その排出する事業者から見れば不要なものでありますから、それをお金を掛けて適正に処理するという動機付けがしにくいということがあろうと思いますし、一方におきまして、請け負って処分をする方も、きちっとするよりも何か不適正な処理をして不法な利益を得ようとする、そういう動機付けが付きやすいという、そういうことが一般的にあろうかと思います。
 青森、岩手、私も地元なものですからよく存じておりますけれども、大変に山の中でございまして、行政やあるいは一般の方の目にもやや目に付きにくかった点がある、そういう点もあろうかと思いますし、それから今、先生が御指摘になられました青森県、岩手県が行政として節目節目できちんとした対応をやはり抜かっていた点があったと、そういうことがああした不法投棄が出来をした原因であると、そういうふうに思っているところであります。
 青森、岩手両県におきましては、その行政責任を評価する検証委員会というものを設置をいたしまして、そこでも一定の行政責任があったということが指摘をされておりまして、今後の再発防止の対応を求める報告書が出されているわけでありますが、環境省といたしましても、その報告書を受けまして、青森、岩手両県が今後どのように対応していくのか、再発防止も含めて、そういうことを改めてきちんと報告を受け、これは青森、岩手に限らず、また、これが日本のどこかでまたこういうことが起こらないような、そういう一助にするような努力もしてまいりたいと思っております。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 今、大臣言われたように、あの細い道路を恐らくダンプが何台も何台も行き交ったんだというふうに思います。ああいう場所がほかに日本には全くないというのは、逆に言うと、あの現場を見れば見るほどほかにもあるんじゃないかなという危惧を持って私も帰ってまいりましたので、是非大臣、御答弁をいただいた点、しっかりとお願いをしたいと思います。
 それに関連して少し申し上げたいんですが、二〇〇〇年に廃掃法が改正をされた直後に、当時所管だった厚生省は、これで取りあえずの終着駅だという発言を当時の担当部長がされています。今回、二〇〇三年にまたこの廃掃法と特措法で、廃掃法に関しては改正の議論がされて、私は改正としては一段前に進んだと思って評価をしている次第でございますが、それでも、後で申し上げます拡大生産者責任の問題やマニフェストの義務化の問題やいろんな問題がまだたくさんございます。
 それから、今、大臣言われたように、今後の一助にするということですから、恐らくまだまだこの廃掃法の改正問題というのは日本のごみ行政の中ではずっと付いて回ると思っておりまして、いつまで続くのか、何とか早く日本の廃棄物行政に関してはめどを付けていただきたいなというのを本当に思っておりまして、住民の不信も含めて、頑張っていただきたいというふうに思っています。
 具体的なことを少しだけ詰めさせていただきたいと思います。
 まず、特措法についてお伺いします。
 この特措法は、平成十五年度から二十四年度までの間に平成九年の改正の施行以前に不法投棄された産業廃棄物を除去することを目的としていますが、十年の時限立法ですが、十年と定めた根拠についてお答えください。

○副大臣(弘友和夫君) お尋ねのなぜ十年の時限立法かということでございますけれども、この本法案は、循環型社会形成の阻害要因となっております過去の不適正処分に起因する支障の除去等を時限法によって、財政支援等により計画的かつ着実に推進するための特別法でございまして、そういうことから、本適用期間については、実態を踏まえつつできるだけ短期間に設定する必要があるというふうに考えておりまして、この対象となる案件のうちの最大級と考えられます青森、岩手県境の事案、それからまた豊島の事案については、その処理に要する期限をいずれも現地における事業の着手からおおむね十年間というふうに予定されておりまして、その最大級が十年でございますので、本適用期間を十年としたということでございます。

○福山哲郎君 この特措法の対象になる不法投棄の場所というのは、大体今全国で四百三十か所ぐらいあるというふうに環境省からは御報告を受けているわけでございますが、その四百三十か所のうちどれぐらいの場所について、廃棄物の撤去、浄化といったいわゆる法文上に言う支障の除去が行われるというふうに見積もっておられるんでしょうか。

○政府参考人(飯島孝君) 先生御指摘になりました四百三十か所というのは、環境省が平成十三年に実施した調査の結果そういう報告があったわけでございますけれども、実際に原状回復に着手されるものにつきましては、この中で生活環境保全上の支障が実際に生じており又は生ずるおそれがあると都道府県が判断したもの、さらに都道府県が代執行するものということでありまして、現時点ではまだ確定したことは申し上げられませんが、おおむね二分の一から三分の一が対象になるのではないかというふうに想定をしております。

○福山哲郎君 二分の一から三分の一ということは、二百か所から百五十か所程度ということですか。

○政府参考人(飯島孝君) そのとおりでございます。

○福山哲郎君 これは自治体にもう実際に問い合わせた数字なのか、そうでなければ、この百五十か所ぐらいだというのはどのような根拠で今おっしゃられているんでしょうか。

○政府参考人(飯島孝君) 今、委員御指摘のありましたように、私ども、この法律が成立した後、都道府県に対して更に調査を掛けたいと思っているところでございますが、現時点では別途、毎年の断面の調査をしております。その断面の調査の中で、都道府県に対し生活環境保全上の支障があるかないかという問いをしておりますが、そのうち実は支障があると答えているのは三割程度で、支障がないというのは七割程度ございまして、そういった数字を参考にしております。もちろん、それよりも大きくなる可能性もあるのではないかということで、三分の一から二分の一という推定をしているわけでございます。

○福山哲郎君 国内最大級がいわゆる青森と岩手の県境であり豊島だというふうにおっしゃいましたが、残りの、そうすると今言われた三割から五割、百五十か所から二百か所程度のものは青森や豊島ほどではないので、トータルで十年あれば支障の除去ができるという判断でございますでしょうか。

○政府参考人(飯島孝君) 先生御指摘のありましたように、現在我々がつかんでいる最大級の不法投棄事案というのは青森、岩手事件、豊島事案でございまして、これらは、それぞれ今、豊島も含めまして県においてその処理に関する検討を行っておりますが、いずれもちょうど十年ぐらいこれから掛かるという検討結果になっておりまして、それを踏まえまして適用期間を十年としたわけでございますが、それ以外のものについてはそれほど大規模でないということもございますし、できるだけ迅速にこの不法投棄の原状回復措置を取るべきである、こういう考え方から十年と定めたわけでございます。

○福山哲郎君 現状の御説明では多分そうなるんだと思いますが、青森と岩手では一か所だけで八十二万立米にも及ぶ広さだったわけです。豊島のときも、豊島は国内最大で、こんなことが起こるのかと言われて大騒ぎになったら、今度青森、岩手が出てきました。
 今、都道府県から、いろんな調査をして、平成十三年度の調査をした結果、四百三十か所ぐらいだと。そのうちの恐らく百五十から二百か所が支障の除去が必要だという判断は、現状では僕はそうだと思います。ただ、例えばこの青森、岩手の例を見ても、調査に乗ってこない可能性のある不法投棄の現場というのはこれから先出てくる可能性がたくさんあると思いますし、今回この特措法と廃掃法の改正をしたおかげで未遂や疑いや立入りがしやすくなるということは、それだけ発見される可能性が、別に多く可能性としては出てくるということだと思うんですね。
 それはそれで僕はいいことだと思っているからそこは評価しているんですが、ということは、豊島や青森、岩手は十年でほぼいける、ほかのはそれよりも今のところ分かっているところは規模が小さいので十年でいけるとおっしゃられましたが、逆に同様のでかいものが出てくる可能性もこの改正によって出てくるので、あえて十年というのが、区切ると本当にいいのかなと。そこの根拠があいまいだと、次また環境省さん御苦労されるんではないかなというふうに思っておりまして、そこは少し懸念をするところでございますが、もし政府委員の方、何かあれば、それに対して。

○政府参考人(飯島孝君) 先生御指摘のありましたように、今後、これまで分からなかった大きな事案が出てくる可能性というのは否定できないわけでございますけれども、豊島があって、青森、岩手があって、またそれと同じ程度のものが、環境省も十三年に調査は掛けておりますし、出てくるということは現在は想定をしないで先ほど言ったような試算をしているわけでございます。
 いずれにしても、それが何年もたって出てくるということもおかしな話でございますし、この特措法を契機としてきちんと調査をしていただくことによって早期に、そういうものがもしあるならば早期に発見して、これは十年じゃなくて九年でやらなきゃいけないというような話になるかもしれませんが、そういう形で速やかに除去を行っていく必要があるというふうに考えているところでございます。

○福山哲郎君 そこは是非、この廃掃法の改正がうまく機能するように願っています。
 同様のことなんですけれども、平成十三年に全国実態調査が行われて、それによってこの法案の基の資料が、数が出てきているわけですが、参考人質疑の中で、大橋参考人も、情報漏れが多く、法案の対象となる不適正廃棄物の数量は環境省の調査結果よりもはるかに大量だろうと考えられると指摘をされています。
 先ほど私が申し上げた点で、隠れているというか、表に出ていない不法投棄の現場というのがまだあるような気がします。あの青森と岩手を見れば、あれでとどまるとは到底思えないという状況の中、経年の調査や全国の実態調査についてもう少し精度を高めるとか、環境省の中で何らかの形で全国実態調査の制度設計についてもう少し改善を加えようとか、そういうような議論は行われているのか。もし行われているんだったら御紹介をいただきたいと思いますし、課題を検討されているんだったらその点についても御答弁いただければと思います。

○国務大臣(鈴木俊一君) ただいまの先生の御指摘は大変重要な点であると思います。今回の産廃特措法を御審議お願いしているわけでありますが、これをきちんと動かすためにも産業廃棄物の不法投棄の実態というものをしっかりと把握する必要がある、こういうことでございます。
 先生も、今も御質問の中でお触れになられましたけれども、平成十三年度に都道府県に対するアンケート形式の調査をいたしました。それからその後、経年ごとの変化を調べる調査、これを毎年毎年行っております。これは地元の方々の通報でありますとか、それから監視パトロールということで地元の市町村が確認をしたものでございますので、これも現状で可能な限りの不法投棄の実態をとらえているというふうには思っておりますが、しかし投棄量不明というものもあるわけでありまして、必ずしもすべてを網羅していない可能性もある、そういうふうに認識しております。
 今後、そういう問題意識の下で更に調査の精度も高めて、そしてこの実態をきちんと把握する努力を環境省としてもいたしていくわけでありますけれども、そのためには、都道府県が行います監視体制の強化、それから不法投棄情報の通報体制の整備、こういうものに対して支援を行おうと、そういうふうに思っております。こういうことを通じまして、さらに実態調査の方法についても検討を行いまして、不法投棄の実態が更に正確に把握できますように努力をしてまいりたいと思っております。

○福山哲郎君 そこは是非早急に制度設計をしていただいて御努力をいただきたいというふうに思います。
 同様のことなんですけれども、産廃の数のデータの件なんですが、これは前回の質疑のときに高嶋委員からも出たかもしれませんが、産廃のデータを見ると、年々の最終処分量は平成八年の六千万トンから平成十二年の四千五百万トンというふうに減少していますが、現実の排出量は四億トンでほぼ横ばい、この五年間のリサイクル率も余り変わっていない、そういう状況の中で産廃の中間施設が廃業しているところもたくさんあると。
 何で最終処分量だけが大幅に減少しているのかとか、産廃の量とそれから残余容量とのずれみたいなものとか、最終処分量と残余容量のずれみたいな話とかも出てきておりまして、この産廃の量等についての統計についての信憑性を高めるというか、信頼性を高める必要性については環境省としてはどのようにお考えでしょうか。

○政府参考人(飯島孝君) 先生御指摘になりましたように、環境省が毎年実施しております産業廃棄物の排出・処理状況の調査でございますけれども、これは、基本的には都道府県が五年に一回きちんとした調査を行うわけでございますけれども、その都道府県が行う排出事業者を対象とした産業廃棄物の排出量、それから再生利用、最終処分量の処理状況に関する調査結果を基に推計をして行っているものでございます。
 これは、委員から御指摘ございましたけれども、全国の産業廃棄物の全体的、経年的な傾向をつかむための調査でございまして、より詳細には先ほど申し上げました各都道府県ごとに五年に一回地域における詳細な状況を明らかにする調査がございますし、さらには、問題となるような施設につきましては個々の施設における詳細な実態解明などのそういった目的の調査も必要と考えておりまして、その目的に応じてやはり調査方法が異なってくる。また、調査の内容も、推計で済むものから全部積み上げなきゃいけない膨大な作業が必要なものまで出てくると思います。
 いずれにいたしましても、その目的に合わせまして、より精度の高い実態を反映したものとなるよう都道府県の協力も仰がなければいけないわけでございますが、調査、推計の方法については合理的なものに見直していきたいというふうに思っております。

○福山哲郎君 少し確認ですが、合理的な方法に見直していき、実態把握ができるような形にはしていきたいというお気持ちは環境省の中にはあるわけですね。

○政府参考人(飯島孝君) はい。例えば、多量排出事業者について、その処理実績を都道府県が取ることになっておりまして、こういったものを活用するとか、あるいは処理業者に報告徴収を、これは悉皆にはいかないと思いますが、報告徴収を行ってその処理実績をきちんと把握すると、こういう方法によって精度は上がっていくだろうと思っておりますので、そういった方法を、いかに都道府県の負担が大きくならない範囲内で協力を仰いでいけるかというポイントがあると思いますが、先生御指摘のとおり、改善をしていきたいというふうに思っております。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 この処理の実態を把握するためにも、マニフェストの電子化等、後で御質問しますが、必要だと思います。
 特措法について、もう二つぐらいお伺いします。
 この法案が成立した後、今年度の予算としては三十億円がこの特措法、計上されています。今年度は一体何か所の除去にこの三十億円が行われるというか、使われるというふうに見積もっておられるのかということと、もし予算不足等が生じた場合にはどのように対応されるおつもりなのか、お答えいただけますか。

○副大臣(弘友和夫君) 三十億というのは、先ほど来議論がございますように、この十年間で大体総事業費が九百から千億、そしてまた国庫補助額の総額はそれによって三百から四百億ということでございまして、十五年度の、十か年計画の初年度として三十億ということでございます。
 これであれの場合は、従来の補正予算で措置してまいりました基金の残額がまだ四十八億ございます。それも充当できるという部分もございますし、今後、法律の施行段階において都道府県の取組予定等を把握いたしまして効率的に予算を執行するとともに、引き続き必要な予算額の確保に努めてまいりたい。
 本年度何か所かというのは、ちょっとまだ計画が出ておりませんので、それを見ながらやっていきたいというふうに考えております。

○福山哲郎君 ということは、今年度に関してはほぼ何とかいけるだろうということですね。
 そうしたら、もう一つちょっと気になること、細かいことですが、お伺いします。
 この特措法の対象は、平成九年に改正された廃掃法の施行日以前、つまり平成十年の六月以前に不法投棄された地域が対象になっているわけですが、この平成十年六月より以前と以後をまたいで不法投棄をされているような場所があるというふうに思うんですが、もしこういう、以前と以後をまたいで不法投棄をされているような場所についてはこの特措法の対象となるのかどうか、お答えいただけますか。

○副大臣(弘友和夫君) この支援対象は、一応今お話しのように平成十年六月以前の不適正処分、それから生活環境保全上の支障が生じ又は生じるおそれがある、そして原状回復等が処分者等の無資力により履行されない場合、都道府県が代執行すると、これが支援対象となるわけでございますけれども、ここで言う事案というのは、処分者との同一性、それから地理的一体性、それから事件の経緯を総合的に判断しまして一つの事案とみなせるものであり、同一の処分者等が同一の土地で断続的に不法投棄を行っていた場合、これは着手時点が平成十年六月以前であれば、またいでいても着手時点が六月以前であれば今回の特措法の対象となるというふうに考えております。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 もう一つ、支障の除去についてなんですが、二条の二項に「支障の除去」というのがありますが、これはどの程度、どの範囲のことを考えておられるのか。例えば、当該投棄地があって、その隣の土地に汚染が例えばしみて進んでいたような状況の場合に、その支障の除去というのがその隣の土地まで及ぶのかどうか、対象となるのかどうか、お答えいただけますか。

○政府参考人(飯島孝君) 支障の除去等の範囲に関する御質問というふうに受け取ります。
 基本的には、その投棄地、投棄された土地の中における対策が中心になると思いますが、御質問ありましたように、その投棄地と密接一体となっているような土壌が汚染されているとか、そういった場合、その支障の程度とか、それから投棄地内の対策で汚染の拡大が防止できるかとか、そういった可能性も勘案する必要があると思いますけれども、基本的には本法案の支障の除去等にぎりぎり必要な範囲内で該当するというふうに判断をしたいと思っております。

○福山哲郎君 ということは、該当するということですね。

○政府参考人(飯島孝君) ケース・バイ・ケースになると思います。その支障の程度とかそういったものを勘案する必要があると思いますが、初めから該当しないという考えではなくて、該当する可能性があるということで判断をしていきたいと思います。

○福山哲郎君 例えば、そのときに、この土壌が、隣の土地の土壌が汚染をされていたときの除去、支障等に該当するかどうかを判断する基準というのは、何をもってそこは判断をされるんでしょうか。

○政府参考人(飯島孝君) 基本的には、不法投棄された廃棄物によって、それが原因で汚染されているということが、当たり前の話でございますけれども、当然そういう判断になると思います。

○福山哲郎君 その汚染の基準は何によってされるんですか。やっぱり土壌環境基準とかを照らして、それよりも悪化をしているような場合には隣の土地もそこは支障の除去の対象になるというふうに判断すればいいんですか。

○政府参考人(飯島孝君) そういった基準については今後検討する必要があると思いますけれども、基本的には生活環境保全上の支障という言い方を、客観的な言い方をしておりますので、その支障として考えられるかどうか、あるいは支障が生じるおそれがあるかどうか、こういった形で、具体的な基準というのは個々のケースごとに見極めていかなければいけないと思いますが、現時点では土壌環境基準と決めているわけではございませんけれども、そういうものを参考にして検討したいと思います。

○福山哲郎君 青森、岩手で遮へいをするというふうに準備をされているんですが、遮へいをするのは見付かった以降の話でございまして、これまで本当に、さっき申し上げたように雪とかが流れているようなことも、解けて流れているようなこともあって、その当該投棄地の周辺ということに対しても非常に僕は気になったもので今の質問をさせていただきました。是非そこは弾力的に対応していただきたいと思います。
 それから、当該都道府県が実施計画を作ることになっています、この特措法によると。実施主体は都道府県ですし、都道府県が実施計画を策定して予算措置を行い、国から補助金を受けて除去作業を行うことになっていますが、この実施計画の策定に対しては環境大臣の同意が要ることになっています。
 そうすると、環境大臣の同意をするには、都道府県が実施計画作るわけですが、一体その同意、大臣が同意をする基準というのは、一体どういうことならば同意をされるのかと。都道府県としても、環境大臣に同意されないようなものを作ってもしようがないわけですから、その環境大臣の同意をするに当たっての基準というのは今どのようなものをお考えなのか、お答えいただけますか。

○政府参考人(飯島孝君) この支障除去等の事業というのは、基本的には事業主体が都道府県等でございますので、国の関与につきましては最小限のことということで協議規定を設けているわけでございます。
 現実に、その基準でございますが、同意する場合の基準でございますが、これにつきましては、今後、環境大臣が策定する基本方針、これが基準に当たるものではないかというふうに考えておりまして、これについては総務大臣にも協議の上、同意をするという手続を取ることになります。
 具体的に基本方針でどういうことを書くかということでございますが、まず、先ほど御質問ございましたけれども、支障の除去を行うべき事案はどういうものであるかという限定をいたします。これは、平成九年改正法の施行前の不適正処分であるということとか、生活環境保全上の支障が生じる又は生じるおそれがあるもの、さらに、早期にすべての事案について問題解決を図る必要があるというようなことを基本方針に書こうと思っておりますし、また、産業廃棄物の処分の行為者あるいは関与者に対する責任追及がきちんとなされているかということも基本方針で触れたいと思いますし、さらに、支障の除去の内容、どういった対応を取るのか、工法であるとか事業の実施期間であるとか、さらに、処分の行為者に対して行ってきた指導の状況、これまでにどういう行政指導あるいは行政処分を行ってきたか等々につきまして基本方針で定める予定としておりまして、それに該当しているかどうか、当たっているかどうかというのが同意の基準になるというふうに思っております。

○福山哲郎君 今、随分具体的にお答えいただいたので大変有り難いんですが、青森、岩手の事例ですと、この基本方針ができて都道府県が実施計画を作るわけですが、現実に今、青森も岩手も幾つかの案を検討しているわけです。この法案が通って基本方針ができないとそれをスタートできないわけで、この法案が、今日採決されると思いますが、参議院で採決をされた後、基本方針は多分、一日も早く環境省に策定をしてもらいたいというのが青森、岩手の、都道府県の意向だと思いますが、これ、済みません、事前通告しておりませんのでお答えにくければ結構でございますが、基本方針はどの程度の期間でまず環境省はお作りいただくおつもりなのか、お答えいただけますでしょうか。

○政府参考人(飯島孝君) 期間をここで具体的に御答弁するのは困難なわけでございますが、現実に、今申し上げたような基本方針の内容につきましては、青森、岩手両県、あるいは非常に心配をしております香川県等についてもお話をしているところでございまして、もうできるだけ速やかに、これ手続が、当然手続の日数が要ると思いますけれども、できるだけ速やかにこの基本方針は策定、公表したいと思っておりますけれども、中身につきましては、もう事前に実施計画を策定中、準備中の都道府県ともよく相談して行っていきたいというふうに思っております。

○福山哲郎君 済みません、もう少しだけ聞かしてください。
 できるだけ速やかにというのは、もう数か月のうちぐらいでということでいいんですね。

○政府参考人(飯島孝君) もちろんそのつもりでおります。

○福山哲郎君 これは速やかに基本方針をお作りをいただきたいと思います。
 もう一つでございますが、今の青森と岩手のケースですと、青森県側の除去計画と岩手県側の除去に対する実施計画ができてくるわけですが、同一事案で二つの県から計画が出てきます。これはやり方が、御案内のように多少違ってきています。このような状況のときに、別に青森、岩手の県に私は特定をしてお伺いするわけではないのですが、環境大臣は調整を行ったり、若しくはその計画の見直しが基本方針に沿っているか沿っていないかによって見直しを求めたりすることはできるのかできないのか、お答えいただけますか。

○政府参考人(飯島孝君) 特別措置法法文上で環境大臣が勧告をするとかそういった規定はございませんけれども、実際に判断する、支障の除去を、実施計画を策定するかどうか、支障の除去を行う必要があるかどうかを判断するのは、やはりこれは一義的に都道府県であるというふうに考えております。
 関係都道府県で実施計画の内容が異なる場合というのは、現実に青森、岩手でもあるわけでございますが、これは地理的条件等によって全体の高さが違ったりすることから、当然その撤去の方法とか、あるいは処理の方法が変わってくるというのは当然あると思いますが、これは全体として整合が取れるように十分な調整を図っていく必要があると思っておりまして、環境省の立場としては、法的な権限としてということではなく、実質的に技術的な助言、支援というものを行っていきたいというふうに考えているところでございます。

○福山哲郎君 そこは、逆に言うと都道府県任せというか、国としてもしっかりと助言をしていただきたいと思いますし、もう一つは、例えば先ほど話がありました百五十か所から二百か所の他の不法投棄の現場で、なかなか都道府県が、例えば予算不足だからといって実施計画を遅らしていたり、除去になかなか踏み切れないような場合がある場合に、環境大臣の方からここについてはもう早く実施計画を作って支障の除去をしろというような、法文上は勧告権はないんでしょうが、そういう指導等は行われるつもりはあるんでしょうか。

○政府参考人(飯島孝君) 先ほど申し上げたところでございますが、一義的には都道府県が判断すべきものだと思っております。この判断というのは地域の環境保全の立場から行われるものでございまして、財政上の理由などによって支障除去事業を実施しないということはおよそ地方自治の本旨からいっても考えられないというふうに思っているわけでございますが、実際にその問題が生じる場合もございます。そこにつきましては、基本方針、環境大臣が策定する基本方針の中で、生活環境保全上の支障が生じる、あるいは生じるおそれがあるものについては早期にすべての事案について問題解決を図るべきということを基本方針に明記したいというふうに考えております。

○福山哲郎君 分かりました。ということは、想定としては余りそういうことはないと、速やかに都道府県も実施をするはずだというふうにお考えですね。──それで結構です、はい。それで、そうあっていただきたいと思います。
 それともう一つですけれども、この都道府県が策定する実施計画ですが、これは一回だけ実施計画を提出するのか。言葉は悪いんですが、私は青森とか岩手へ行って感じたんですけれども、想定以上に実は不法投棄の量が多かったとか、今調査して、ボーリング調査とかしているよりも実はもっと奥深くにいろいろあったとか、そうすると、予算がそれ以上に掛かったり、修正計画なりをしたり、実際に支障の除去の作業を始めたけれども、思った以上にその不法投棄は大変で、時間が掛かり過ぎて、予定をしている年月日よりも、要は予定時期が多少ずれ込んだと、作業がずれ込むようなことがあった場合に、この実施計画の届出の変更や、もう一回実施計画を出し直すというようなことは都道府県は可能なのか、またそれを環境省は受け入れられるのか、その辺に関してはいかがでしょうか。

○政府参考人(飯島孝君) 都道府県が定める実施計画というのは、環境大臣が定める基本方針に即していろいろなことが定められるわけでございますが、その根幹にかかわる部分についての変更、例えば区域の変更、それから具体的な処理方法や期間の変更、それから費用の額の変更、こういったものがあった場合には法文上も実施計画の変更が必要になります。したがいまして、実施計画の変更は初めの実施計画と同じ手続が必要になりまして、審議会等の意見を聴取したりあるいは環境大臣と協議をする、こういった手続が必要になってまいりますので、それは当然、そういう根幹に触れる部分についての変更がございましたら変更という手続を行っていただくことになります。
 なお、変更があるかないかを待っているだけではなくて、私どもも、毎年の予算措置がございますので、環境省としても、都道府県の取組状況、実施計画に即した事業の実施状況、これをヒアリングして計画的な実施を促進していきたいと思っております。

○福山哲郎君 それともう一つ、この法案の中には、実は住民、地域住民ですよね、実際に被害に遭う可能性のある地域住民の参加のプロセスが少し欠けているのではないかなというふうに思っています。恐らく審議会等でという話、実施計画策定に対して審議会等でそういう住民を入れるんだというお答えが出てくるのかもしれませんが、都道府県の実施計画の策定の前の、例えば事前公表だとか公聴会の実施だとか住民に対して地域での環境破壊についてのヒアリングをするとか、そういったことに対してどのように担保されるおつもりなのか、お答えをいただけますでしょうか。

○国務大臣(鈴木俊一君) 実施計画策定に当たっての住民の参加のプロセスをどうするかということでございますが、この産廃特措法に規定されております都道府県が策定する実施計画におきましては、その策定に当たって、都道府県等に設置されております審議会あるいは地元市町村の意見を聴くことということにいたしております。
 そして、先生が御指摘になりました事前公表でありますとかあるいは公聴会等の具体的な策定プロセスをどのように行っていくのかということにつきましては、これは一義的には都道府県の判断によって決められる、そういうふうに思います。
 しかし、不法投棄された産業廃棄物の原状回復を図る事業といいますのは、やはりその地元住民を始め関係者の理解というものが十分得られて進めていくということが大切なことであると、そのように思いますので、国といたしましても、審議会や市町村の意見聴取といった手続の過程できちんと実施計画の内容を住民に対して説明をする、そういうことを基本方針においても示してまいりたいと考えております。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 実は、私も、基本方針に住民参加のプロセスについて何らかの形で明記をしてほしいということを申し上げたいと今思っていたら、大臣がおっしゃっていただいたので実は大変ほっとしまして、正に住民は不安な中でこの現場を見詰めているわけでございますから、実施計画策定に当たって住民参加のプロセスを確保できるように、是非そこは積極的に基本方針に明記をいただきたいと思います。
 次に、廃掃法の改正について幾つかお伺いをします。
 これは前の審議の中でも出てきましたので繰り返しになるかもしれませんが、例の中環審から出た「今後の廃棄物・リサイクル制度の在り方について」の意見具申では拡大生産者責任について記載がありますが、今回の改正では盛り込まれなかった。なぜかというような話はありましたが。
 環境省にお伺いをしたいのは、今後、じゃ、拡大生産者責任を導入をしていくとしたら、導入の見通しはどういう状況なのかということと、この廃掃法に拡大生産者責任を盛り込むためには、どういう条件が整えば産業界を納得というか環境省が説得ができると思われているのか。
 つまり、どういう我が国の中で条件整備が行われれば拡大生産者責任が盛り込まれた廃棄物処理行政が行われるのかについて幾つか条件を提示していただかないと、我々自身としても、今回、拡大生産者責任が盛り込まれなかったことに対して、ああ、この部分が足りないから入らなかったんだというようなことは分かるんですが、今のままですと、産業界から反発があってというような話があるのでは、ある種抽象論で分からないので、今後、その環境整備をしていくためにどのようなものが必要だと思われているのか、環境省さん、お答えいただけますでしょうか。

○国務大臣(鈴木俊一君) 私からちょっと、全体の話をさせていただきまして、具体な話、必要であれば飯島部長の方からお答えをさせますけれども、今、先生が御指摘になりましたような適正処理困難物の一般廃棄物、これに拡大生産者責任の制度的拡充をしていこうということにつきましては、関係者、具体的に言えば産業界でありますけれども、どういう品目を対象にするのか、それから、あるいは生産者とそれから市町村の責任をどこまで認めるのかというようなところにつきまして、結局話がまとまらなかったということでございます。
 しかしながら、私といたしましても、この拡大生産者責任、特にその適正困難物にかかわる問題につきましては、これは重要な問題だと思っておりますし、それから、話合いをしてまいりました経済界の方とも、そちらももう重要な問題だということで、これについては継続して話合いをお互いやっていこうという合意もあるわけでございますので、そうした方面との協議も進めなくちゃなりませんし、それと併せて、実態としてその適正処理困難物がどういう形で出ているのか、どういうものがどういう程度出ているのか、そういう実態把握等も進めながら、早い機会にこれが実現できるような努力を継続して行いたいと思っております。

○福山哲郎君 じゃ、具体的に、部長、何かあれば。

○政府参考人(飯島孝君) 先生の御質問の中のどういう条件のときということについてお答えするならば、基本的には、その対象となる品目についての実態、排出状況あるいは処理の状況、この実態をきちんと調査してあることが必要だと思います。さらには、それに関係する生産者、いわゆる拡大生産者責任の、そういう製品の製造者等、それから、もちろんこれまで適正処理困難物であれば市町村が処理することになっていたわけでございますので、市町村も含めて十分な議論を行って、そして理解をお互いに得るということが必要な条件だというふうに考えているところでございます。

○福山哲郎君 済みません、細かいようですが、その実態調査というのはどこがやるんですか。
 つまり、実態調査しなきゃいけないとはいいながら、どこがやるのかが決まらないと多分いつまでたっても前に進まないと思うんですけれども、環境省としてはどこが、環境省が、よっしゃ、わしのところがやると、それを産業界に示すんだという決意でいるのかどうかも含めて、お答えいただけますか。

○政府参考人(飯島孝君) 今回、この適正処理困難物の拡大生産者責任制度を検討しているときも行ったわけでございますが、基本的に環境省が当該自治体、全国の市町村にお願いをいたしまして、そして実態を把握していただくということでございますので、これを環境省がイニシアチブを取って調査をしていきたいというふうに思います。

○福山哲郎君 経産省さん、今日お呼びをしていますので、今環境省が、環境大臣が拡大生産者責任の導入について議論を深めていきたいと、実態把握も導入も含めてというふうに大臣がおっしゃっているんですが、業者官庁である経産省は前向きにこのことについては御協力をいただけるのかどうか、お答えいただけますでしょうか。

○政府参考人(中村薫君) お答えいたします。
 廃棄物リサイクル問題の解決に当たりましては、製品における設計・製造段階での環境配慮の能力と技術力を有する製造事業者の役割は今後ますます重要になっていくというふうに認識しております。
 これまで、政府としては、廃棄物としての発生量が多いもの、また市町村における適正処理が困難なもの、資源の有用性が高いものを中心に拡大生産者責任に基づくリサイクル法制の導入を図っており、回収・リサイクル段階での措置としては平成七年に容器包装リサイクル法を、また平成十年には家電リサイクル法、また平成十四年には自動車リサイクル法を制定したところであります。また、さらに、平成十二年には設計・製造段階での三R配慮の、設計から回収・リサイクル段階までをカバーする資源有効利用促進法を制定し、これまでパソコンや二次電池などの六十九品目を指定することによって製造事業者の三Rに係る取組を促進しているところであります。
 なお、製品ごとに製造、流通、消費の廃棄の実態は異なっておりますから、一律に論ずるというよりは製品ごとの実態、特性を十分に踏まえて、製造者、消費者、自治体、国の役割を整理しつつ、実効のあるリサイクルシステムの構築を図っていくということが重要であるというふうに認識しております。
 経済産業省といたしましては、今後とも環境庁とも連携しつつ、市町村が適正に処理できない一般廃棄物といった緊急性の高いものの品目や量などについて実態を調査し、対応の在り方について検討し、製造事業者を始めとする関係者間の適切な役割分担を図りながら必要な措置を講じてまいる所存であります。

○福山哲郎君 協力する意思があるのかどうかについてはよく分からぬ答えでしたが、まあ協力していただけるんだろうなというふうに私は前向きに取りたいと思います。
 誤解をしていただきたくないのは、私は別に産業界がいいとか悪いとかという、何か二元論みたいな議論をする気はありません。私も企業の中でゼロエミッション工場とか作っているところも見に行ったことも何回もありますし、そこで本当に涙ぐましい努力を企業としてされて頑張られるところもあれば、先ほどから出ている不法投棄をしたり、そういうほかのトップランナーの企業が頑張っているのに関して、景気も悪いこともあるんでしょうが、フリーライドしている企業もあるわけで、それを一概に論ずることの危険性があるということは私自身も理解をしているつもりです。しかし、現実に排出量抑制が行われない状況で、この廃棄物行政というのはいつまでたってもイタチごっこで延々と続くわけで、そういう点でいうと、この拡大生産者責任の導入というのはもう絶対に必要だと私は思いますから、そこは環境省と経産省、どうか協力をし合って、早い導入に向けて御努力をいただきたいと思います。
 廃掃法の少し細かい話に行きます。
 今回、都道府県の立入検査については、廃棄物であると疑いがあれば立入検査が可能になりました。例えば、これまででも廃タイヤを有価物だと言って長年放置しているケースなどもあるわけです。この疑い、廃棄物の疑いがあるということが一体どういう判断基準なのか、疑いというのはどの程度なのかということによって、僕はこの法の実効性というのは大分変わると思っているんですが、廃棄物の疑いというのは今どういう定義で想定されているのか、お答えいただけますか。

○政府参考人(飯島孝君) 先生御指摘になりましたように、これまで有価物であると偽って立入検査を拒み続けて不適正処理を続けると、こういった悪質な例が見られていること、これが背景にございまして、今回この疑いのある物という条文追加をしたわけでございます。
 その定義といいますか、具体的判断基準ということでございますけれども、現実に処理業者などがこれは廃棄物ではありませんと主張をしたとしても、その物の性状、それから通常それがどのように取り扱われているか、要するに、ほかのところに行けばそれが廃棄物として処理されているのが通例なのか、それとも有価物として取引されているのが通例なのか、こういった判断をいたしまして、社会通念に照らして地方公共団体の職員が廃棄物である可能性があると判断したものというふうに言うことができると思いますが、もっと具体的に基準をということになりますと、逆に、非常に悪質な人間はその基準をもってまたそこで言い逃れをするということになりますので、これは社会通念上、地方公共団体の職員が判断できるものというふうに解釈をしているところでございます。

○福山哲郎君 それから、もう一つお伺いをします。
 この法律で立入検査というのは十九条に規定されているんですが、その対象として列記されているものは処理施設や事業場だというふうに書いてありまして、私有地は特に明記されていません。しかしながら、青森とか岩手は実際に私有地に投棄されている場合がありまして、疑いのある場合に私有地に対しても立入検査は可能かどうか、お答えいただけますでしょうか。

○政府参考人(飯島孝君) 廃棄物の処理が行われている場所であれば、それが施設の中であろうとあるいは私有地というようなところであろうと、廃棄物の処理が行われているということでございますれば、立入りを行って物件を検査することができるという解釈でございます。
 なお、この青森、岩手の場合はそうなんですが、行政処分の目的だけでなく、立入検査、報告徴収というのは、広く廃棄物の処理に関する指導監督、こういう目的のためにもできるということを付言させていただきます。

○福山哲郎君 青森の場合で、それ私有地だったのでなかなか分かりにくかったというような議論がよく出ているのは、やっぱり立入りの制限があったからなんでしょう。これ、済みません、事前通告していないので、お答えいただければ、お答えいただけなければそれはそれでいいんですが。

○政府参考人(飯島孝君) ただいま私が御答弁をいたしました、私有地であっても当然に廃棄物処理が行われている場所であれば可能であるということにつきましては、平成十三年の行政処分の指針ということで環境省が明確にしたものでございまして、この青森、岩手事件の当初におきましてそこまで明確化していたかというと、必ずしもそうでなく、それは判断が分かれるようなところがあったわけでございます。それは事実でございます。ただ、現在はしっかりとできるということでございます。

○福山哲郎君 私有地であること、私有地であっても疑いがあれば立入検査は可能だということで、更に不法投棄の現場が発見される可能性というのは高まると思いますので、是非そこはよろしくお願いしたいと思います。
 ではもう一つ、細かいことですが、お伺いします。
 今回、不法投棄又は不法焼却の未遂行為を罰すると定められています。未遂を摘発できるというのは評価ができるというふうに思いますが、どんな準備行為が未遂に当たるのか、これ前の審議でも出てきたんですが、取締りを行う者にとっては現場ではなかなか未遂で、ここは、これは未遂だけれども、これは未遂ではないというのは大変難しいと思うんですが、現状における未遂の定義はどんなものか、お答えいただけますか。後でちょっと具体例お伺いしますが。

○政府参考人(飯島孝君) 未遂罪というのを加えたわけでございます。未遂罪というのは犯罪の実行行為に着手してもこれを遂げずに結果が発生しなかったために犯罪は成立しないと、こういったケースについても処罰をすると、こういう意味でございます。
 今回改正に盛り込まれました不法投棄、不法焼却の未遂罪は、行為着手の段階で警察官等の監視に気付いてこれらの行為が完遂に至らなかった、そして処罰を免れるということがこれまで起きていたことにかんがみて設けたものでございまして、具体的に幾つか例を挙げますと、不法投棄の場合は、例えば不法投棄するダンプカーの荷台の操作等一連の行為を始めた直後に警察官に制止された場合、あるいは監視に気付いて行為を打ち切った場合というのが該当いたしますし、不法焼却の場合は、廃棄物を焼却する目的で点火をしたけれども廃棄物が燃焼するに至らなかった場合、あるいは焼却の目的で廃棄物にガソリンをまいた場合、こういったものが該当すると考えられます。

○福山哲郎君 済みません。じゃ具体的にお伺いします。
 例えば不法投棄をするつもりで穴を掘っていたと。横にはちゃんと穴があったと。そこに、要は、ごみが満載されたトラックが来て横付けされたと。横付けされた時点では未遂じゃないんですね、穴が横にあっても。さっき部長がおっしゃられた話でいえば、荷台が要はずうっと上がってごみが落ち掛けている状況でストップで未遂だという話なんですが、穴があって満載されたトラックが横付けした場合は未遂は成立しないんですね。

○政府参考人(飯島孝君) 今のお話ですとその他の周辺の条件も加味して司法が判断することになると思いますけれども、今、先生御指摘になったものだけ、その行為だけ、横付けしたという行為だけで未遂罪を構成するというのは一般的に言って難しいと思います。

○福山哲郎君 それでも未遂罪にならないんですね。僕なんかは岩手、青森見てきたので非常に印象が強いんですけれども、不法投棄の現場からちょうど車で、もう行かれた先生方はよくお分かりだと思いますが、行かれた現場から、そうですね、車で五分ぐらい手前のところに駐車場みたいなところがあって、そこで計量して、トン幾らで計量してトラックがそこでずっと待機をしていると。夜中になると、ずうっとがあっと、そこへ五分ぐらいの不法投棄の現場、夜中になると、そのトラックが移動して穴に入れて、その日の夜じゅうに土をかぶせて帰ったという話を現場でお伺いをしたわけですね。
 僕なんかでいうと、そこの駐車場のところで計量してトン当たり幾らでお金の受渡しをして待機をしている時点で未遂じゃないかと思うんですが、そうじゃないですよね。今の、だって、今の話でいうと。

○政府参考人(飯島孝君) 先ほども御説明いたしましたように周辺の条件によって変わってくると思います。今の先生のような場合、もう一つ加えれば、それは前に同じような行為をした者であるということを同定した上でその者がそのようなことをすればこれは未遂罪が成立する可能性は高いと思いますけれども、ただダンプが穴に横付けしたからこれを未遂罪というのは司法の判断ですが難しいのではないかという一般論を申し上げたわけで、その周辺の状況を加味して考えれば当然そういった未遂罪は成立する場合もあり得ると思いますし、あるいは未遂罪というよりも正にそれは不法投棄をしたという方で、あるいはほかの廃棄物処理法違反で取締りができるのではないかと思います。

○福山哲郎君 済みません、もう一つだけ。細かいようでごめんなさい。
 積替えのために一時保管をしているというような名目で長い間保管をしていると。一時保管ですよと言って置きっ放しの例があるわけですが、その場合には僕は未遂にならないと思うんですけれども、先ほど部長が言われたように、別の廃掃法違反が適用されるんだと思うんですが、ただ、一時保管で長い場合に、どのくらい期間を保管をしておいたら一時保管で、そうじゃない場合は一時保管じゃないと、これはもう不法投棄だというような、その境目というのはあるんでしょうか。

○政府参考人(飯島孝君) その期間の問題だと思いますが、これは既に具体的な事例としてそういう問題が廃タイヤとか廃パチンコ台で起こっておりまして、それについては要するに保管者に説明責任があるといいますか、契約書がちゃんとあるのかどうか、そういったものを説明させる必要がございますし、それから期間の目安といたしましても、例えば六か月とかそういったことを通知で出しているわけでございますが、基本的には積替え保管の基準でございます産業廃棄物の処理基準、これで改善命令ができますのでそういったことを行うし、それに従わないで長期間放置してあれば、これは正に不法投棄そのものではないかということで、みだりに捨ててはならないというこの条文で取締りができるというふうに考えております。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 さらに、二十四条の三の緊急時における環境大臣の報告徴収、立入検査というのがありますが、これまでは一般廃棄物だけが対象だったわけですが、これはなぜか、今回対象を産廃にも拡大した趣旨はなぜか、お答えいただけますでしょうか。

○政府参考人(飯島孝君) これは産業廃棄物に関する事務事業の在り方に関係いたします。
 昨年十月に、地方分権改革推進会議が「事務・事業の在り方に関する意見」で、現在、暫定的に法定受託事務とされている都道府県の産業廃棄物にかかわる事務については、産業廃棄物対策が国の環境政策における全国的な問題となっていることを踏まえ、国の責務や総合的な責任強化の方向の明確化などを図った上で、法定受託事務と位置付ける方向で検討するとされたところでございまして、私どもはこれを受けまして、この法案におきましては国の責務として、これは国の責務規定でございますが、広域の見地からの調整ということを明記いたしました。また、国の責任の強化の一環として、今御質問のございました生活環境の保全上特に必要な場合には国も自ら立入検査などを行えるようにしたものでございます。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 その次、この二十四条の三で言う緊急な事態というのはどのような事態を想定をしているのか、お答えをいただけますか。
 国が緊急だと言って立入りとかをするということは、もう実際その時点では、私などの想定で言うと、もう都道府県が緊急だと思っているはずなわけで、それを飛び越して緊急だと国が認めるというのはどういう事態なのかということについてお答えいただけますか。

○政府参考人(飯島孝君) 基本的には、生活環境保全のために迅速な措置が求められる事案でございまして、個々の都道府県のみでは迅速な対応に限界があるのではないかと考えられる場合でございます。
 具体的には、一つの県でなくて複数の都道府県にわたって大規模に行われたような場合、今回の事件もそういうわけでございますけれども、個々の都道府県でそれぞれ対応しようと思ってもなかなか迅速に対応できない場合があるだろうということで、そういう場合に国が緊急と考えて都道府県と連携して立入検査ができるようにするということでございます。

○福山哲郎君 そうすると、広域的な都道府県で不法投棄がされている場合だということですが、実際にこれをやる場合には、言葉選ばないで言うと、両都道府県がお互い動きにくいと、お互いのいろんなメンツとかいろいろあるのかもしれませんが、そういう状況のときにこれではいけないということで国が動くということですが、実際的には土地カンも含めて動くのは都道府県になるわけですから、それはもう実質的には国が都道府県に対してもう早く動けよというふうに勧告をするようなことだというふうに思えばいいわけですね、解釈としては。

○政府参考人(飯島孝君) 勧告というよりも、複数県にまたがる場合にその複数県の対応の調整を行う。先ほど国の責務で申し上げました広域的な調整というのが、広域的な調整の一環として国も連携して報告徴収や立入検査ができるというふうに考えております。

○福山哲郎君 それから、環境省がホームページで、産廃の不法投棄や不適正処理を行った業者の行政処分情報について、八月をめどにホームページで掲載、公開するとしています。現実に、二〇〇一年度の産廃処理業の許可取消し件数が百八十五件、二〇〇〇年度の二・三倍に達しているわけですが、この八月のホームページでの公開というのは一体どういう内容のものを公開する予定なのか、お答えいただけますでしょうか。

○国務大臣(鈴木俊一君) 今御指摘の環境省のホームページで公開をしようとしておりますのは、各都道府県それから保健所設置市が産業廃棄物処理業者等に行った許可の取消し、それから事業停止等を予定をいたしております。
 まずは、先ほどから出ております行政処分指針、これは平成十三年六月に出したわけでありますので、それ以降の産業廃棄物処理業の許可の取消しにつきまして、取り消されました処理業者の氏名、それから許可番号、またその取り消された理由等を公開をしようと思っております。
 そして、将来的には、都道府県の協力をいただきまして、五年をさかのぼって、過去五年間の産業廃棄物処理業者の許可の取消し、事業停止、処理施設の許可の取消し、改善命令、また措置命令ということまで公開の範囲を広げていきたいと、そういうふうに思っています。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 そういう情報公開は非常に重要だと思います。排出業者、排出事業者にとってはやっぱり優良な業者を知るということは非常に重要だということをこの間の審議の参考人もおっしゃっておられました。
 そういう点で環境省にお伺いをしたいのですが、環境省は産業廃棄物の格付調査、手法検討調査報告書というのを昨年の八月にまとめられて、この調査で産廃処理業者の格付のモデル的手法を取りまとめられていますが、こういった格付導入について、調査報告書までまとめられているわけですけれども、現在の環境省の見解はどのような見解かお答えいただけますでしょうか。

○国務大臣(鈴木俊一君) 排出業者、これが産業廃棄物処理業者を選定するという行為は、他の普通の経済行為と同様で、事業者の自己責任の下でマーケットにおける公正な競争を通じて行われるものであると、そういうふうに思っております。そして、そのための情報の一つであります格付につきましては民間のビジネスとして展開されるべきでありまして、そうした民間の取組が公正な市場競争というものを通じまして格付の情報というものの質が高まる、あるいは情報の信頼性が向上されていくということになろうかと思っております。
 公的部門がどの処理業者にどの程度信頼性があるかという格付を行うことになりますと、これはあたかもお墨付きを与えたとも取られかねないわけでありまして、排出事業者の自己責任を損なって、また、これからこの格付といいますものが民間で行われるという方向になりますと、そのビジネスの妨げにもなるということで、必ずしも適切ではないと、そのように考えております。
 環境省の役割といたしましては、格付自体を行うのではなくて、格付という手法によるものも含めまして、処理業者の信頼性、それから優良性に関する情報、これが流通しやすくするような枠組みを整備することにあると、そのように考えておりまして、その一環として、今、先生御指摘になられましたが、格付の方法論の提案を昨年夏に行ったところでございます。
 また、その都道府県行政が保有いたします処理業者に対する行政処分の情報につきましては、都道府県において情報公開が進められていることも踏まえまして、これを環境省で集約をして広く一般に提供していくこととしておりますが、このことも枠組み整備の一歩になるものと考えております。
 さらに、枠組み整備の一環といたしまして、適正処理推進センターが実施しております産廃ネットにおきましても、今後の取組強化の方向として、ISO14001の認証取得の有無あるいは財務諸表等の経理的情報、環境報告書などの情報公開の取組の有無などにつきまして、処理業者の選択に当たって有用と考えられる情報を追加して産廃ネットを拡充強化していくことも考えてまいりたいと思っております。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 それからもう一つですが、これも委員会で出ましたが、紙のマニフェストは年間四千五百万件、電子マニフェストがそのうちの百分の一の四十一万件、何か事件が起こった場合、四千五百万件もの紙のマニフェストを一枚ずつチェックすることができるのか正に疑問ですし、青森、岩手の県境の問題では、三栄化学工業は紙のマニフェストを全部焼却処分をしていたというひどい話がありまして、この処理業者がマニフェストを焼却処分した場合の罰則はどうなっていますでしょうか。

○国務大臣(鈴木俊一君) 先生の御指摘のような焼却という行為がこの青森、岩手の事案で発生したということは私も承知をしているところであります。
 排出事業者につきましては、マニフェストの保存義務違反という、保存義務というのがあってそれを処罰する罰則もあるわけでありますけれども、処理業者については、保存義務はあるものの罰則はなく、マニフェストに記載された事項を帳簿に記載し保存する義務についてのみ罰則を科しているという状況でございます。
 マニフェストや帳簿を保存する義務に違反して破棄する行為を始め、法に違反する行為を防止するためには、一つとして、現在、環境省で作成中の不法投棄問題への対応の手引におきまして、都道府県がマニフェスト等を入手するための迅速な対応の方法等を盛り込むことといたしております。また、二つとして、マニフェスト等の入手又は内容確認を行うべきことについて、地方自治法に基づく法定受託事務の処理に当たり、よるべき基準として定めることなど、現行法を厳格に運用することがまず大切であると思いますが、しかし、その上で、こうした義務違反に対する罰則の創設あるいは強化等、制度的な対応についても検討をしてまいりたいと思っております。

○福山哲郎君 そこは帳簿に対する転記の義務違反はあるかもしれませんが、今、大臣おっしゃられたように、マニフェストの焼却処分等については、義務はあるけれども罰則ないということで、是非その罰則強化についても、今言われたように積極的に検討していただきたいと思います。
 同様で、これも前に質問が出ましたが、電子マニフェストの導入について、義務化という議論があるんですが、義務化まではなかなか厳しいという議論がすぐ出てきます。最近では携帯電話からの接続も可能になっていて、よりマニフェスト導入については環境整備ができていると思うんですが、電子マニフェストのより広い浸透に向けて義務化しろというのが僕らの思いですが、そこについてはどのように積極的にお考えなのか、お答えいただけますでしょうか。

○国務大臣(鈴木俊一君) マニフェストの電子化につきましては、当委員会においても御指摘、質問の中で受けているわけでありまして、このマニフェストの電子化といいますことは重要な課題であると、そのように認識をしているところであります。
 しかし、先生が今御指摘のように、いまだその普及といいますものは一%足らずであるということでございまして、現段階では、これは法で強制的に義務化するといいますよりも、もう一段の普及促進を図っていくことが大切ではないか、そういう段階ではないかと思っております。御指摘のとおり、平成十四年二月から携帯電話からも接続ができるようになったということもその普及を促進する一つの取組であると、そのように思っているわけであります。
 今後も、電子マニフェストの普及拡大のため、特定の地域等でのモデル事業の実施、それから廃棄物処理センターなどの公共関与の処分場に産業廃棄物を搬入する中間処理業者等の導入促進策の検討、また電子マニフェストの利用しやすさの向上のためのシステムの改善、こういうものを検討いたしまして、今後、計画的、総合的に取り組んでまいりたいと思っております。
 まず普及拡大を図って、これからの普及状況というものも踏まえまして、義務化についても選択肢の一つとして視野に入れまして電子マニフェストの利用拡大の検討を行ってまいりたいと思っております。

○福山哲郎君 是非そこは積極的にお願いしたいと思います。
 また、前回の参考人で北村参考人が言われたことについて、三つほどあるので、簡単にお答えいただきたいと思います。
 産廃行政というのは、元々自治事務にするはずだったのが、結局、制度全体にわたる見直しが必要だということで暫定的法定受託事務というふうに言われたのがそのまま法定受託事務になっています。自治事務にする必要があるのかないのか、それからいまだ法定受託事務である根拠、それから法定受託事務でも各都道府県は条例制定、横出し、上乗せの条例制定が可能かどうか、そこの三点について簡単にお答えいただけますでしょうか。

○政府参考人(飯島孝君) 先ほどの御質問にもお答えした中で申し上げたわけでございますけれども、地方分権改革推進会議におきまして、先ほど、産業廃棄物行政の在り方に関する意見が出ておりまして、その意見を踏まえまして国の責務を明確化し、国が広域的な見地から調整を行うことを国の責務として規定する、こういった改正案になっているわけでございます。
 これは、どうあるべきかというのは、それは学識経験者の先生方からいろいろ御意見があったところかと思いますが、私どもはその地方分権改革推進会議の議論を踏まえてこういう措置を取ったわけでございまして、今年の五月でございますけれども、地方分権改革推進会議が先ほどの意見のフォローアップを出しておりまして、そのフォローアップ、会議の意見の実施状況ということを述べているわけでございますが、廃棄物処理法の改正案において国の責務が明確化された内容及びそれに伴って都道府県の産業廃棄物許可等の事務については法定受託事務として整理されているところでございます。
 このように、今回の改正案の内容及びそれに伴う法定受託事務とする事務区分の整理というのは、地方分権改革推進会議の意見を反映したものでございまして、意見の実施状況としてこの会議においても確認されているということで、私どもはこの産業廃棄物問題、構造改革の途中であると申し上げているわけでございますが、これがきちんとなされるまでは法定受託事務として整理されているというふうに解釈しているわけでございます。その後、自治事務にすべきではないかということは、そのときにまた議論をされるべき話であると思います。
 それから、条例が制定ができるかどうかということでございますが、これは、地方自治法によれば、自治事務あるいは法定受託事務、いずれにおきましても法令に違反しない限度において条例を制定することができるとされておりまして、条例の制定権限というものは、自治事務、法定受託事務、区別がないところでございます。しかしながら、当然、法定受託事務というのは国が本来果たすべき役割にかかわる事務でございまして、国において、法律だけでなく政省令あるいは事務処理基準においてその処理の細目が定められていることが多いわけでございますので、法令に違反しないという制約条件が自治事務に比べて強くなるということは否めないと思っております。
 いずれにいたしましても、自治事務、法定受託事務のいずれであっても、法令の趣旨がいわゆる上乗せ、横出しを認めていない事項については条例とすることはできないということになります。

○福山哲郎君 ありがとうございました。
 最後にします。長くいろいろ質問させていただきましたが、とにかく課題の多い産廃行政、是非環境省は頑張っていただきたいと思いますし、やっぱり東京や埼玉のごみを青森や岩手に持っていくというのが本当に正常な姿なのかどうかというのは、私もちょっと考えました。やっぱり域内というかブロックぐらいで中間処理やリサイクル処理施設を造って、そこには公的な関与も含めて、造ることによって、積極的にその域内である意味処分ができるような体制がやっぱり必要なのではないかというふうにも思いましたし、そのためには、実態把握の問題、不法投棄の実態把握の問題、それから冒頭申し上げました産廃の量の実態把握の問題、環境省にはやっていただかなければいけない課題が、責務がたくさんございますので、是非、大臣始め御努力いただきますことをお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

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第156国会  参議院  環境委員会2003年6月4日

特定産廃特措法案、廃棄物処理法改正案(第1回)

○福山哲郎君 民主党・新緑風会の福山でございます。
 参考人におかれましては貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。時間もありませんので早速本題に入りますので、よろしくお願いを申し上げます。
 まずは、北村参考人にお伺いをさせていただきます。
 先ほど少し話が出ましたが、廃棄物処理法の措置命令の中で市町村や都道府県を措置命令の対象から除外をされているということになっているわけですが、私ども民主党は、他の民間事業者とのバランスからいっても市町村や都道府県にも措置命令の対象とするべきではないかというふうに考えておりますが、先生はどのように考えておられるかお聞かせをいただきたいというのが一点目。
 二点目は、先ほどもありましたが、先生が岩手県の県境の不法投棄の検証委員をやられているという御経験上、明日、私も、この委員も何人か現地へ参りますので、どういった点に注目をして、余り付き添っていただく役人にごまかされないようにするにはどういう留意点で視察に行ってくればよいか。
 二点、お聞かせをいただければと思います。

○参考人(北村喜宣君) 二点目はこういう場で申してよろしいのかどうかは迷いますが、お答えいたします。
 まず最初の点、自治体は自治体に措置命令が出せるかという点でございます。
 これは、現行法では、例えば一般廃棄物を処理する市町村、これを命令対象から除外する十九条の四という規定がある、それが妥当かどうかという御質問であろうかと考えます。同種の規定は十九条の五第一項一号にもございます。
 これは、一般的には命令と申しますのは行政が私人に対して出すものだというのは大半の場合でございますから、それとの類推で、上下関係だから命令が可能なのであって、対等関係といいますか、水平関係にある自治体同士でそういうことを考えるのはできないのではないかという考え方もございます。
 ただこの辺は、典型的には確かに私人が多いのでありますが、それだけではないわけでございます。すなわち、一般廃棄物処理事務という自治事務を担当するということと具体の処分行為をするというのは別の次元のものというふうに考えるべきだというふうに思います。すなわち、自治体にも法令遵守義務があるわけでございまして、遵守をしなさい、違法なことをしたら下ろすようにしますというのは、これ事務の在り方に関する干渉ではないわけでございます。自治体には違法行為をする自由はございませんから、そういう意味では、適用除外というのはある意味で自治体性善説に立っているものではないかという気がいたしております。
 ですから、これは、何らかの立法政策上除外している話であって、法理論上できないのかというような性格のものではないということが私の理解でございます。あとどうするかは国会の御判断ということにはなりますが、法理論上の支障は私はないというように認識しております。
 ただ、刑罰をかける、命令違反の刑罰は若干微妙でございまして、市長さん牢屋かという話になりますから、そこはちょっと考える必要はあろうかとは思います。
 あと、明日の話でございますが、一番聞かれて大変だと思うのは、廃棄物処理法の権限って本当に行使できるんですか、十分に、という単純な質問でございます。私がその委員として検証の対象になった職員の方にこういう公の場でそういうお話をしたことがございますが、当時においては無理でしたというのが正直なお答えでございました。これは立法者としてあられる先生方にとっても非常にショッキングな事実じゃないかというように考えます。
 そこで、先生方におかれましては、そこからどういうふうに考えていくのかということを是非とも、明日、御認識賜ればというように考えるわけでございます。

○福山哲郎君 もう一つお伺いしたいんですが、青森県では処分の仕方が三通りケースが上がっていて、岩手県もケースが上がっています。それを決定する要件というか、そこの説得材料みたいなものは現地ではどのような議論がされているのか、簡潔にお答えいただければ有り難いなと思うんですが。

○参考人(北村喜宣君) 私、この点に関しては残念ながら十分な知識を持っておりません。明日行かれまして、だまされないようにお聞きいただければと思う次第でございます。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 次、大橋参考人にお伺いをしたいんですが、大橋参考人の言われた平成十三年六月の全国実態調査はまだまだ、何というか、甘いというか、それよりもまだ大量にあるだろうというようなお話をいただきました。環境省としては経年別にこの調査をしているわけでもないですし、大橋参考人が言われたように、私も実態はこれよりもっと多いと思います。
 ただ、環境省のやり方というのは、市町村に調査票を回して上がってきたものを集計をしているというふうに私は承っておるんですが、大橋参考人が考えられる、より実態に近い調査をする方法というか、これから僕は毎年毎年やはり環境省もこういう調査をしていかなければいけないと思っているんですが、実態により近くなるような方法というのが何かあれば教えていただきたいと思います。

○参考人(大橋光雄君) 私は、やはりちゃんとした仕組みを恒常的に設けなければいけないだろうというふうに思っているんですね。
 残念なことです。残念なことではありますけれども、負の遺産はだれも本当のところよく知らないんですね。私自身が昭和五十年以降の厚生省の、最初は五年に一度の発表だったのがそのうち毎年になりましたけれども、そこに出てくる埋立て量をずっとトータルして、それ以前、昭和四十五年からこっちのことを書いてあるんですけれども、しかし、もっとそれより前からもうえたいの知れない処分が行われてきたというのは業界の人たちからたくさん聞いておりますので、そういうはるかかなたに忘れ去ったようなものまで含めていくと、もうどれだけあるか本当のところだれも分からないという、そういう恐ろしい状況なんですね。
 それは、土に還元される廃棄物なら別にまあまあというところなんですけれども、もう今から恐らく四十年や五十年前から土には還元されないものがどんどんどんどん年々ウナギ登りに埋め立てられてきているということを考えますから、そこで、やはりきちんとした実態調査システムを都道府県ごとに、市町村と都道府県が協力して、それからさらに住民の協力を得ないと、特に古老の人たちからはもう亡くならないうちにどんどん聞き出すとか、そこまでのことをしないと、草が生えたり、上、駐車場にしたり、いろんなことをやっていると分からないわけですね。そういう非常に手間の掛かることをやるだけの必要性、意味はあると。国土を回復するのに、これは回復しなきゃいけないわけですから、回復するのにはそれだけの手間、お金掛かるということですね。
 だから私は、ちょっと環境省さんには酷かもしれないけれども、十年でできるという法案を何でそういう言い方で出すのかなというふうに思うくらい非常に軽くこの問題を考えているかあるいは逃げているというふうに、つまり、どんどんほじり出したらもう手の付けられないような、アメリカのスーパーファンド法みたいなものでもなかなか簡単にいっていないというぐらいですから、だから恐ろしいことなんです。
 しかし、私は、都道府県と市町村が協議機関を持って、次から次へと忘れ去られているところまでを含めた不法投棄、あるいは不適正処理ですね。不法投棄というのは割と目立って騒ぎになるから見付けやすいんですが、一応許可取っているとか、これは許可取らなくてもいいんだ、自社処分場とか、こういうやつが非常に怖いんですよ、私らが全国回っているところでは。そこが逆に目がそらされちゃっているんで、不法投棄に目を奪われているともっと大きな魚が潜んでいるということから目がふさがれますから、やはり相当なシステムで、私は、そのために国がマニュアル作ったり、助成金、補助金を出したりして、調査システムというものはもう負の遺産を解消するには仕方のないことだということで、システム化するべきだと思います。

○福山哲郎君 大橋参考人、もう一つお伺いしたいんですが、北村参考人に聞いたのと同様なんですが、現場、現地をよく見られている大橋参考人、あした我々が行くのに何を注意したらよろしいでしょうか。

○参考人(大橋光雄君) 私も二度あそこへ行って、それぞれ関係の人と会話もして、不十分ですけれども、してきているんですが、新聞や何かに報道されていない、それから今度行政責任検証委員会が両県ともレポートを出されている、ああいうところからもはっきりつかめないような、言うに言われない話が地元にあるんですね。
 もう一つ、そういうことになりがちな理由が二つ三つあるんですけれども、一つは、地元の、田子町の地元の人たちが最盛時六十人も三栄化学工業に勤めていたんですね。そうすると、地元による告発というのは非常に困難だったわけです。で、九年かそこら前に千葉市の一般ごみが行って大騒ぎを起こして、そのときに本来、青森県は謙虚な気持ちで、そしてまた業者を甘やかしてきたことを反省して、びしっとした決着を付ければよかったのに、結局あれは埋め殺しにしちゃっているんですね、千葉市へ持って帰らせなかった。
 もう一つは、私も今度分かったんだけれども、青森県も岩手県も、下水汚泥とかし尿とかいろんなものを三栄化学工業とその関連会社に出入り業者として委託してきているんですね。そうなると、そういう業者を積極的にたたくということは、役所にとって非常に困るんですね。何とか事業団というのがあるんですよ。だから、そういう表に余り露骨に出てきていないようなそういう癒着構造というのを、特に青森県について私は徹底的に追及すべきだと思うんです。あの検証委員会報告では私は納得できないですね。岩手県はむしろ、とばっちりを受けて、青森県の何倍もしゃかりきになってやっておられるんじゃないかなというふうに一応思います。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 では、次、庄子参考人にお伺いをいたします。
 庄子参考人の読売に書かれた「論点」等もお見受けをしているんですが、マニフェスト等の厳格運用とか、それから適切な業者、優良業者の情報公開等のお話が書かれていました。
 ただ、マニフェストの実態を見ると、紙のマニフェストが今四千五百万件、電子マニフェスト化されているのがわずか四十一万件、一%なんですよね。現実に、青森、岩手の例でいうと、このマニフェストが全部廃棄処分されているという状況の中で、これなかなか厳格な管理というのは難しくて、ましてや四千五百万件の紙をこれ一々チェックするなんというのは大変な作業なわけですね。こういったことに対して、もし何かアイデアをお持ちでいらっしゃるなら教えていただきたいと。
 それからもう一つは、これなかなかお答えにくいかもしれないんですが、今回は見送られましたが、結果としては生産者責任というか製造者責任みたいな話は入れ込んでいかなければいけないような時代の流れになると思うんですが、どういう条件整備や環境整備が整えば経済界としては製造者責任について導入が可能になるとお考えいただいているのか、お答えをいただけますでしょうか。

○参考人(庄子幹雄君) まず一つはマニフェストの問題でございますけれども、マニフェストが御承知のように完全に仲立ちでというふうに言われてきましたのはごくこの三年ぐらいなんでございます。従前からあったわけでございますけれども、一部不良業者におかれましては、マニフェストを形だけのものとして取ってしまう、あるいは、それの処理ということにおいては、最終業者と何かこう悪い意味で結託してしまって、正しい運用がされていなかったというようなことがございます。この三年間は環境省の指導が非常に厳しく、環境庁、環境省の指導が厳しかったということもございまして、現在はこのマニフェストは完全に産業界で行き渡っております。
 ただ、御指摘のように、これ全部、ワンライティングみたいな格好に最初なっていたわけですね。ですから、それを四千五百万もまとめるということできないというんで、それの電子化というんで、電子マニフェストということで今盛んに進めております。そのために、環境省はそのための財団のような形のものも作りまして、その運用体制というのをしっかりしようじゃないかというんで今進めておりますので、これは先生の御指摘の形のものがほどなく電子マニフェストという格好で完成していくんじゃなかろうかというふうに思います。それに伴いまして、マニフェストの間違った運用というのもなくなっていくだろうというふうに思っております。日本経団連といたしましても、そういうところにも関与してございますので、我々としても見守っていきます。
 それからもう一つ、環境整備といいますか、こういうものが行われないようにするためにはということは、先ほどもちょっと申し上げていたんですけれども、一つは罰則の強化ということもございましたけれども、やはり産業界自体がこういうものは駄目なんだと、末代まで悪さをするんだということを完全に納得しなくちゃいかぬだろうということで、実は現在は、大手のところ、あるいは大きな団体というところはすべて環境というものに対しては十分なる体制を取っているんですけれども、しかし、そうはいってもほとんどが中小というような産業界があるわけです。日本経団連にも参画していないわけです。
 ですけれども、一つの流れを日本経団連が作って、そしてそれに従っていただこうということで、実はまだ完全な意味での環境整備というのはなっていないんですけれども、そういう雰囲気作りといいますか、それをやりまして、各都道府県の例えば処理業者とか、そういうような方たちに対しての会合などには積極的に出ていきまして、一緒にやりましょうという格好で今やっております。それに対して環境省も非常に協力的といいますか、環境省からも出席してくださいましてやっております。それもよろしいかと思います。
 それから、環境省が地域ヒアリングをやってくれております。これも非常に、地域での実態把握という意味では、ただ単に紙で環境省に報告するというんじゃなくて地元の声ということで出ておりますので、これも今役立っているんではなかろうかというふうに思っております。

○福山哲郎君 済みません。私の質問の仕方が悪かったみたいで、申し訳ありません。二番目の質問は、拡大生産者責任についての導入について、どういう条件なりどういう環境整備が整えば、導入なり、こういう法案の中に盛り込むようなことが可能になるのか、お考えか、もし御指導いただければと思います。

○参考人(庄子幹雄君) 現行法でも適正処理困難物の規定はございます。しかし、実際に市町村が何をどう困っているのかというようなことにつきましては不明な点が多いので、実態調査を徹底して行いまして、解決策につきましては関連業界と率直な話合いの機会を持つべきで、これを一律に法律によって規制強化というようなことは実態にそぐわないのではないかというふうに思っております。
 企業はすべての形での廃棄物の収集には責任を現実的には持てませんので、一般廃棄物である限りは市町村が収集責任を持ちまして、企業は例えば収集されたごみの資源回収というものには責任を持っていく。これは、現状でもそういうことは全く実行可能でございます。

○福山哲郎君 細田参考人にお伺いをさせていただきたいと思います。
 細田参考人の論文も読ませていただきましたが、いわゆるリデュース、リユース、リサイクル、三Rについて日本では道が始まったところだというような表現がございまして、先ほどのお話によっても、廃棄物の定義の問題とか、一廃と産廃の区分の問題とかおっしゃられましたが、もう少し御専門の、先ほどのお話は恐らく法案に沿って述べていただいたんだと思うんですが、御専門の経済から見て、私はやっぱり、マーケットメカニズムもまだまだ先ほど言われたように静脈産業として全然育っていないと思いますし、消費者側の意識もリサイクル製品とかについてはなかなか意識が広がっているようで広がっていなくて、グリーン購入の法案とかようやくできてきましたが、社会全体としてはなかなかそこのマーケットが大きくならないような気がしておりまして、もう少し大きい意味でのこの三Rが日本の社会に定着するための条件等が、何かお考えあれば教えていただきたいと思います。

○参考人(細田衛士君) 時間もありません。簡単に申しますと、先ほどの若干繰り返しになりますが、日本経済には、その静脈の経済のマーケットというのは非常に小そうございます。例えば、家電リサイクル法でようやく千八百万台ぐらい出るかなと思われたものが、恐らく今年は千百万台ぐらいです、去年、昨年度は。ようやくそれができて、法整備ができて初めて、それではリサイクルプラントを作ろうと。
 そして、重要なことは、静脈経済ではまずは輸送ですね、ロジスティックス。これが非常に未整備でございまして、動脈側は非常によくできているんですけれども、静脈側で集めたものを、どこへ行き次はどこに持っていこう、それが不透明になるから訳の分からない処理、すなわち不法投棄になってしまうんですね。その静脈経済の整備ということを今真剣にやらないと、私は、今御質問のあったことができない。
 なぜかといいますと、ちゃんとした経済ができますと、一体それにコストが幾らになるんだということが明示化されます。ところが、一般廃棄物に関しましても産業廃棄物にしましても、コスト意識というのは非常に低うございます。一般廃棄物の場合は、これはほとんど税金処理ですから、ごみはただだとみんな思っています。産廃の場合もなかなか費用が出にくい。悪い言葉しますと、経団連のような大きなところは別でしょうけれども、買いたたいてしまう、もっと安くしろ安くしろということで。私の実際インタビューしてきた例は、大手産廃業者も物すごいダンピングをさせられている羽目になっています。これだと、本当にごみに幾ら費やしたのかという、そういう信号がマーケットから伝わってきません。これでは、静脈市場というのは生成できずに静脈優良業者も育ちません。悪い業者しか出てこない。
 それを今、法整備、個別リサイクル法、そして案外利いているのが資源有効利用促進法でございます。これを組み合わせることによって、まず静脈のコストを表側に出してやる、そして企業にはそれをやはり負担していただく、コンシューマーにもその負担していただいたお金は必ず自分に跳ね返ってもらう、捨てる費用も作る費用と同じなんだということをやはり明示することが必要だと思います。
 これをほうっておいても、実際、普通の市場ではできません。それを、例えば個別リサイクル法あるいは廃棄物処理法等々の組合せによって静脈の市場をもっと育ててやるという視点が私は国として必要ではないかと思っております。

○福山哲郎君 ありがとうございました。

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第156国会 参議院  政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会         2003年5月30日

公職選挙法改正

○福山哲郎君 おはようございます。民主党・新緑風会の福山哲郎でございます。
 今日は、私は二十五分という短い時間ですので、簡潔に質問していきたいと思います。
 今回の公職選挙法は、不在者投票制度の見直しと在外投票制度の見直しと小選挙区の区割りの修正というところでございまして、幾つかの点で、投票ができやすいというか、投票しやすい環境を整えるためにということで、私は評価をしておる次第でございます。ただし、幾つかの点で問題がありますので、まず質問させていただきます。
 まずは、期日前投票制度の導入でございますが、これは、これまでの不在者投票のやり方が少し変わるということで、公示日当日の不在者投票ができなくなります。これまでのケースで、公示日に、告示日に候補者が出そろってないときに投票が行われるというのも、ある意味でいうと理屈としてはおかしい状況でして、例えば、この統一地方選挙で、京都で右京区と山科区という市議会議員選挙がありましたが、これ結局、無投票だったんです。無投票だったにもかかわらず、当日に不在者投票数が、右京区で二百三十二票、山科区で百四十九票ありまして、これはある意味で、総務省さんが、今回、候補者が出そろってないにもかかわらず一日不在者投票をやるのはおかしいというのは、僕はある意味でいうと正当性があると思うんですが。
 ただ一方で、今回の統一地方選挙で告示日に投票しに行った方をちょっと総務省に調べてもらいました。例えば、市長選挙で、指定都市以外の市でいうと、これ一週間、ちょうど七日間しか投票日がありませんが、そのうちの初日の告示日は、何と不在者投票の中の七・三四%の方が初日の告示日に不在者投票行かれているわけです。それから、市議会議員選挙のやはり指定都市以外の市は、これも七日間しか選挙がないので、告示日に何と、日曜日だということもあるんでしょうが、八・二五%の方が実は初日に不在者投票に行かれているわけです。
 ということは、この改正で初日に行けなくなるということを知らないと、日曜日だから先行っておこうかといって多くの方が不在者投票行ったら、投票できないといってシャットアウトされる可能性というのは出てきますので、是非、政府としては周知徹底、これは衆議院でも議論ありましたが、周知徹底をしていただきたいと思うんですが、どのような方法で、今、総務省はこの点に対しての周知徹底を図るつもりなのか、その具体的な方法についてお答えいただけますでしょうか。
○副大臣(若松謙維君) ただいま右京区のお話等ございまして、これは、長年のいろんな御指摘もございまして今回の制度改正になったわけでありますが、何といっても、今、委員御指摘のいわゆる告示日初日の七、八%の有権者ができないと、これも大変重要な課題でありますので、そのために、総務省としても是非国会での議員の先生方の議論をしっかりしていただきたいと、こういう手続を踏まえさせていただいて、今回の法改正の結論となった次第でございます。
 さらに、その上で、この新しい制度の周知徹底というのは非常に重要な課題であると、このように認識しておりまして、現在、総務省におきましては、まず改正法の公布後速やかに都道府県の選挙管理委員会の事務担当者会議、これを開催して、制度の内容を説明させていただくことにしております。また、新聞広告、これも使いまして制度の内容を周知徹底、さらには、新しい制度の分かりやすい内容のチラシ、またパンフレットを作成して、幅広く配布を考えております。
 さらには、地方公共団体にも御協力をいただきまして、それぞれの地域での広報誌を通じての徹底、このようなことも考えておりますし、さらに、選挙に際しての臨時啓発ということで、テレビスポット、新聞広告、さらにはホームページ、こういったあらゆる伝達手段を活用して周知を図っていきたいと考えております。
 いずれにしても、内閣府、地方公共団体及び明るい選挙推進協会、こういった方々が全国津々浦々啓蒙していただいておりますので、そういった方々と連携を図りながら、あらゆる工夫を凝らして、その制度の周知徹底に努めてまいりたいと決意しております。
○福山哲郎君 ありがとうございます。
 是非、その周知徹底は積極的にというか、頑張っていただかないと、日曜日に投票行ったけれども投票できないと、そしたらもうやめたというのが有権者の感情としては出てくる可能性がありまして、是非そこは、告示日は投票、不在者投票はできなくなっているよ、ただ、ほかの日は投票幾らでもできるというような話で、是非お願いしたいと思います。
 二つ目は、在外邦人の選挙人の皆さんが投票しやすいように、郵便投票を創設をしようという件でございますが、これも、在外選挙人の投票率の低さから見て、非常に僕は時宜を得た政策だと思うんですが。
 例えば、私の政策秘書がついこの間までミャンマーに行っておりました。二年間行っておりまして、選挙があったんですが、これまでの方法ですと在外公館まで投票しに行かなければいけないと。私の政策秘書が投票しに行ったときは、何と、今までだれが投票しに来られましたかと聞いたら、うちの政策秘書唯一、一人だったそうです。一票だったそうで、それをまた在外公館の方がまた運ぶというのは、大変お金も手間も掛かる方法なんですが、ただそれ以前に、今回そうではなくて、郵便投票も可能になったというのは、私はいいことだと思うんですが、それ以前の問題なんですね。
 最近の国政選挙の在外投票率を見ると、平成十二年の衆議院選挙、平成十三年の参議院選挙、どちらもともに投票率は約二九%なんです。二九%というと国内の約半分だと思われるかもしれませんが、実はそうではありません。この二九%というのは、選挙人名簿に登録をしている方の二九%です。要は、在外邦人は有権者登録をして初めて投票することになります。現実に、約六十万とか七十万人ともいわれる有権者の中で、登録をしている方がその十分の一の約七万人、そのうちの二九%ということは、全体で言えば約一割しか投票していないことになるんですが。
 今回制度が改正されたので、その状況が改善されることを願っているんですが、まずはこの選挙人登録の数を増やすことが、私、先決ではないかと思っておりまして、その選挙人登録を増やすためにどのような施策を考えられているのか。それから、これまで何で余り増えなかったのかということも含めて、お答えをいただきたいと思います。
○政府参考人(高部正男君) お答えを申し上げます。
 委員御指摘のございましたように、大体我々、在留邦人対象者約六十万人と推定しているところでございますけれども、登録者は約七万人という状況になっているところでございます。国内と違いまして、国内は住民基本台帳が整備されておりますので、住民基本台帳に載っていることに伴って職権で登録されるということになっているわけでございますが、在外邦人の場合は申請登録ということで、申請をいただいて登録されるというようなことになっておりまして、国内とはそもそも仕組みが違っているわけでございますが、それにいたしましても、約七万人ということでございますので、登録の方々の数が非常に少ない状況にとどまっているというふうに認識しているところでございます。
 必ずしも統計のデータではございませんけれども、在留邦人の方々等とお話しした中で我々お聞きしておりますのは、一つは、海外に非常に長く住んでおられますと、大変日本に興味持っておられる方もおられるんですが、一部ではやっぱりだんだん興味が薄れていくというような傾向のある方も見られるというふうな傾向がございます。それから、企業の海外派遣なんかで期間が限られていますと、もうしばらくすると帰るんだからといったような事情があって、なかなか登録をいただけないというような状況もあろうかと思っております。
 それから、先生、今度の制度改正にもお触れいただきましたけれども、一つは、投票方法につきまして、これまで比較的、比較的といいますか、在留邦人の多い地域でございますニューヨーク等々で公館投票しておりませんでしたので、なかなか投票の方法についても制度的な課題があったようなことも一つの一因になっているのかなというふうな気がしておりまして、制度的には今回、投票方法について改めさせていただきまして郵便投票を選択もできるようにいたしますし、これまで、これは法律改正そのものではございませんけれども、これまで公館投票しておりませんでした公館も、治安上の理由があるところ等々以外はもう基本的にはすべてやっていただくような方向で外務省と調整させていただいているところでございます。
 そういうことでできるだけ登録いただけるようにというふうに考えておりまして、私どもこれまで外務省さんに御努力いただきまして、私どもも啓発、いろんな周知には努力しておりますし、外務省さんの方でも現地でのいろんな啓発でございますとか、日本人会を通じてのいろんな周知等々も図っているところでございます。
 それから、さらに加えまして、外務省の方で移動登録といいますか、いかんせん海外広いものですから公館へ来て登録というとなかなか登録いただけないというふうなことのために、地域を回りまして登録するというふうな努力もしているところでございます。
 先生御指摘のとおり、まだまだ低い数字でございますので、私ども更に外務省と協力しながら努力して登録者を増やしていかなければいけないなと、かように思っているところでございます。
○福山哲郎君 ありがとうございます。
 是非そこも努力を更に一層続けていただきたいと思います。
 もう一点申し上げますと、平成十年、九八年の公選法改正時の附帯決議において、実は在留邦人について、衆議院小選挙区の選挙それから参議院の選挙区選出の選挙についても在外投票制度の対象とするように、投票の対象とするようにという附帯決議が五年前に決議をされています。
 ところが、いまだに在留邦人に対しては選挙区制度の投票という形の制度は実施をされておりません。これも、先ほどのお話にありましたように、例えば在外公館に投票しに行くにしても、郵便投票するにしても、まず選挙人登録を申請するのは旧住所で選挙人登録を私は申請するというふうに承っています。日本にいるときの住所でと。
 ということは、元々投票するときに申請するときに旧住所でやるわけですから、実務上でいえば小選挙区選挙や参議院の選挙区選挙に対しても私は投票する方法というのは可能だと思うんですが、なぜこの附帯決議から五年間こういった制度ができなかったのかと、今後の見通しについてお答えをいただけますでしょうか。
○政府参考人(高部正男君) 在外選挙制度が創設された当時におきまして比例代表選挙に限って認めるとされましたのは、衆議院小選挙区選挙及び参議院選挙区選挙はいずれも候補者個人名を記載して投票する制度でございますことから、投票に当たって候補者の政見等が周知されることが必要であるわけでございますけれども、選挙運動期間の十二日ないし十七日の間に海外の有権者に周知することは困難な状況にあることが一つ理由になっているところでございます。
 いま一つ、在外公館は選挙事務に精通していないことから、比例代表選挙から始めて在外公館の事務処理体制を見極める必要があるといったようなことも理由になっていたところでございます。
 こういうことから、在外選挙につきましては、まず比例代表選挙から実施して選挙情報の具体的な状況や在外公館の体制を見た上で、次の段階として衆議院小選挙区選挙及び参議院選挙区選挙の実施を図ることが適当だというのが当時の議論でございました。
 衆参一回ずつやったわけでございますが、先ほど申し上げましたような登録の状況の中で私ども今回、投票方法等について改正をお願いしているところでございまして、私どもも附帯決議で速やかに実施するというのは十分認識しているところでございまして、今回の改正の実施状況等々も踏まえながら附帯決議の趣旨に従って今後検討していかなければならない課題だと、かように認識しているところでございます。
○福山哲郎君 これまた更に一層の努力をお願いをしたいところでございますが、今おっしゃられました選挙区選挙の場合に候補者の情報が取りにくいという話は、私はある意味でいうと、五年前の時点からこれまで二回選挙をやったところでいえば、ある意味でいうとそこは合理的な理由にもなり得たと思います。ましてや、先ほど申し上げました私の秘書の経験からいっても、海外では新聞もなかなかすぐに入手できないような場所もあって、なかなか情報が入りにくいんだということもよく分かります。
 しかし、だからこそ、また次の話題につながるんですが、これだけ世界でインターネットが普及をし、いろんな形で情報が行き交う状況になった場合、総務省の例えばホームページ上に政党や候補者の選挙公報を載せるぐらいのことは、僕はこれは可能だと思っておりまして、今の段階では確かに候補者自身のホームページにおける選挙運動というのは禁止をされています。しかしそこは、総務省でそれこそ一軒一軒選挙公報というのは国内で配られているわけですから、その選挙公報等を総務省のホームページ上に掲載をして在留邦人の方が見れるような状況、環境を整えるということは、これは五年間の時代の変化で随分進んでいると思いますし、私、実務上もそんなに不可能なことではないというふうに思っておりまして、今言われた情報提供の問題ということに関してはハードルは限りなく低くなっているのではないかと思っています。
 それから、在外公館の投票に対する仕組みの問題というのは、これは確かに実務上煩雑になると思いますが、それは有権者の投票する権利を守ることですから、そこはしっかりと逆に御努力をいただきたいと思うんですが、もう一度御答弁いただけますでしょうか、その辺の環境変化も含めて。副大臣に御答弁いただいても結構ですし。
○副大臣(若松謙維君) まず、いわゆるインターネット時代、その時代におきますいわゆる選挙制度等の啓蒙、これは格段に利便性が高まったと認識しております。そういう意味で、今後とも総務省のホームページ等を通じてもっと周知徹底をさせていただきたい。また、ホームページの中身の充実、これも考えていきたいと考えております。
 あわせて、投票、やはりこれについて一番御関心があろうかと思いますが、この投票につきましては、やはり自宅で投票するということになりますと、御存じのように、いろんなまた不正も考えられると。そういった利便性と、あと、いわゆるその反面での不正というんですか、これをどうバランスを取っていくかというのがやはりインターネット時代の選挙の在り方として大変難しい課題であるわけでありますが。
 これは昨年でしたか、IT時代の選挙運動に関する研究会、この報告書を世に出させていただきまして、その議論を是非進められることを期待しているわけでありますが、ちょうど今年の四月に統一選がございまして、このIT時代の選挙運動の報告書、これ、実は私もこの当委員会で是非ともいろんな御議論をいただいて、何といってもやはり選挙制度をお決めいただくのは国会の場が先行すべきではないかと思っておりますし、そういった意味からのこの報告書の活用というものを、また御審議というものを是非お願いしたいと思っております。
 いずれにいたしましても、総務省としては、そのような新しい時代に対応した選挙制度、これからも真摯に対応してまいりたいと思っておりますし、また、先ほどのいわゆるインターネットを通じた投票、これもいよいよ昨年末のオンライン三法、こういったことも成立を受けまして、認証制度、そういったところも新しいまた時代のインフラの整備になったのかなと。そういうことも含めまして、引き続き議論をしっかりとしてまいりたいと考えております。
○福山哲郎君 大変誠実にお答えいただいたのはいいんですが、多分それは私の質問で三つか四つ先の、副大臣、答弁だと思います。
 私は、今、在外邦人が選挙区選挙で投票する際に情報がないというから、最低限選挙公報ぐらいは総務省のホームページに載せて情報提供できれば海外でも見れるんじゃないかということに対しての答弁を求めましたので、随分先回りして御答弁をいただいたので困るんですが、どうぞ。
○政府参考人(高部正男君) 海外における国内の事情というのは、私も選挙方法なんかの指導といいますか、やり方の説明で伺って、いろいろお聞きしましたところ、やはり地域によって大分差がございまして、日本人の多い、在留邦人の多いところでは結構地元で日本人向けの新聞があるとか、コミュニティーテレビがあるとかということで、かなり情報があるところはありますが、一方でかなりそういうものから離れているような地域もあるように思います。
 委員御指摘ございましたように、インターネットというのが非常に広い範囲で情報伝達する、安い値段で伝達するというのは非常に有効な手法でありまして、かねてから、この在外選挙に関連して、インターネットの利用というものをもう少し考えたらいいじゃないかと御指摘いただいているところでございます。
 現在、総務省では、総務省のホームページに政党名と候補者名等々について掲示させていただいております。
 委員の御指摘は、選挙公報もやったらいいのではないかという御指摘でございますけれども、若干硬いお答えになるので恐縮なんですが、現行の選挙公報も公選法に基礎を置きまして、掲載方法等もきっちりした仕組みで載せておりまして、やっぱり選挙公報を載せるとなりますと、何といいますか、便宜供与の範疇の中で適宜載せるというのにはなかなかなじみにくいものなのかという気がしておりまして、今、委員の御指摘いただいたような御指摘を他でもいただいておりまして、またなおかつ、インターネットの選挙運動への、何といいますか、導入方法、導入の在り方等々もいろんな課題になっておりますので、こういうものも含めまして、私ども検討してまいりたいというふうに考えておりますし。
 また、先ほど副大臣から御答弁申し上げましたように、インターネットの研究会の御報告、私どもも研究しなけりゃならない課題でございますけれども、併せて各党で御議論いただいて、いろんな議論の参考にしていただくというシステムを作らせていただいておりますので、各党間の御議論もいろいろお願いできたらと、かように思っている次第であります。
○福山哲郎君 もうインターネットホームページの選挙への解禁、選挙運動への解禁等については、今、副大臣も政府委員の方もお答えをいただいたので、二度のお答えには、二度の質問はしませんが、ちょっと大臣にお願いをしたいんですが、大臣、衆議院の委員会での答弁の中で、インターネットの普及率が四十数%になっていて、これで、これがインターネットホームページの解禁に妥当かどうかということは検討が要ると。それから、研究会も作ったので、更に検討を重ねていきたいというような、前向きなのかどうかよく分かりませんが、まあ前向きだというふうに私は受け取っておるんですが、前向きに御答弁をいただいたんですが、今年の三月の数字で言うと、インターネットの人口普及率というのはもう既に五四%を超えてきています。
 要は、普及率の数字でどうのこうのということを言い出すと、大臣自身も、じゃ、どこまでだったら解禁していいんだと、インターネットの選挙運動解禁していいんだという数字の遊びみたいな話になるので、僕はそういう意図で言われたのではないというふうには承っておるわけですが、研究会の報告書も私も拝見しましたが、まずは導入をしろというようなことがもうざっと書いてあるわけですね。
 そういうことから言うと、選挙も近くなってきておりますし、現実問題としては、大臣、ホームページを選挙運動の方法として認めることについて、大臣自身、今どのような御見解なのか、少し突っ込んでお答えをいただければなと思うんですが。
○国務大臣(片山虎之助君) 衆議院では四六%ぐらいらしいからと言いましたが、今、福山委員お話しのように、平成十四年末のインターネット人口普及率は五四・五%だそうですね。過半数は超えたんですね。
 ただ、選挙運動に使うとなると、ある程度国民的な合意が要るんですね。やっぱりお年寄りの方やなんかにはかなりアレルギーがありますね、まだインターネットに。だから、そういうのでは行く、時期尚早かなと思いますけれども、同時に、これだけホームページが普及して、議員さんもほとんどやっていますよね。これを全く使わない、別のものだというのもいかがかなと、こう思うので、私はホームページは選挙運動に使ったらいいと思うんです。
 ただ、これについても議員さん方にいろんな意見があるものですからね。やっぱり選挙運動だとかこういう選挙制度の仕組みというのは、ある程度与野党通じて、まあまあしようがないなと、わしは本当は不満なんだけれども、まあしようがないと、こういうところまで行かないとなかなか難しいのかなと。
 私個人に言わせれば、メールはいかがかなと思いますけれども、ホームページぐらい、一杯やっているんですから、しかもあれは文書図画には該当しないので、本当はあれをうんと使っちゃいかぬのですけれども、それもあるものですから、見ているのはしようがないんですね。結果としては運動になっているんですよ。そういうことも私が言うのはいかがかと思いますけれども。
 そういう意味で、私個人はそう考えておりますが、まあやっぱりひとつ各党各会派で御議論いただいて、まあ行こうかと、こうなっていただければ制度化できるのかなと、こう思っております。
○福山哲郎君 大臣が非常に前向きだというのは今のお言葉で承りましたし、各党会派で話し合えということですから、どういうふうな話し合う場を作ればいいのか、私もまだまだぺいぺいですから分かりませんが、そこは本当に前向きで御検討いただきたいというふうに思います。
 あと、もう一分になりました。実はもう一個聞きたいことがありました。これも聞いていくと切りがないんですが、例のマニフェストの問題です。
 統一地方選挙の中でマニフェストを配布できないという話があって、これこそ文書図画の規制の問題、出てくるんですが、このマニフェストの配布とか選挙への使用について、もう時間がないので、大臣、個人的な見解でも結構でございますので、今は公選法上無理だということはよく私も承知をしておりますが、一言御答弁をいただければと思います。
○国務大臣(片山虎之助君) マニフェストというのがよく分からないんですよ。もう横文字でありゃいいというものじゃ実はないんですけれども、ただ、あれなんですね、今の選挙法からいうと、限定的なんです。福山委員、もう十分御承知だと思いますけれどもね。だから、いわゆるマニフェストですね、今は。これはやっぱり今の制度じゃ無理ですね。
 だから、そこはこれからどう考えるかですね。選挙運動というものをどうとらえるか、このマニフェストというものをもっときっちり定義して、どう位置付けるか。そういう上で選挙制度に取り組むことは、私、可能だと思いますけれども、ちょっと今の段階では、なかなかこれも各人各様、各党各様でございまして、まとまっていないのかなという感じはしております。
○福山哲郎君 確かに、おっしゃるように、マニフェストの定義すら、実はそれぞれのイメージが違いますから、それも各党のイメージも使用方法も変わってくるでしょうし、そこは大臣の御指摘のとおりだと思います。
 ただ、マニフェストというものが新たな選挙、政治の道具としてこれだけ注目をされているということは、我々政治の場にいる者としてやっぱり無視はできないというふうに思っておりますので、そこも是非前向きにこれから政党間で議論をさせていただければというふうに思っております。
 それでは、谷委員に代わります。
 どうもありがとうございました。

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第156国会  参議院   内閣委員会、厚生労働委員会、農林水産委員会連合審査会2003年5月14日

食品安全基本法案

○福山哲郎君 おはようございます。民主党・新緑風会の福山哲郎でございます。
 今日は連合審査ということで質問をさせていただきます。
 谷垣大臣におかれましては、地元でいつもお世話になっておりまして、初めて大臣とこうやってやり合うことになりまして、よろしくお願いいたします。
 私は、食の安全の確立と強化を目指すこの法律の意義というのは非常に大きいと思っておりますし、食品安全行政については大きな前進だというふうに思っています。
 ただ、大臣もよく御案内のとおり、地球上では約十万種類以上の化学物質、そして農薬、さらに添加物がいろんな形で販売をされ出して、また開発もされています。また、遺伝子組換え技術など高度な科学的技術が日々高度に、何というか、開発されているわけで、私は、絶対的に安全だというようなことというのはもう今の時代はあり得ないと思っておりまして、本当に重要なのは、この食品安全基本法を中心に、国民が一人一人自分で、これは自分は納得して食べるんだと、表示の問題にしてもそうですし、成分の問題にしてもそうですし、それを国民一人一人が納得した上で選んで、そして食べるんだというような形のやっぱり情報開示と自己決定が私は安心と納得への第一歩だというふうに思っておりまして、今日、私にいただいた時間二十分ということなので、限られていますので、そういう観点で幾つか質問をさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。
 この法案のまず十七条、「食品の安全性の確保に関する施策の策定に当たっては、国民の食生活を取り巻く環境の変化に即応して食品の安全性の確保のために必要な措置の適切かつ有効な実施を図るため、食品の安全性の確保に関する内外の情報の収集、整理及び活用その他の必要な措置が講じられなければならない。」というふうに法案になっています。
 この法案の中の内外の情報収集、整理、活用というのは、具体的にどのようなもの、何をするつもりなのか、まただれが主体となって行うのか、大臣、お答えいただけますでしょうか。

○国務大臣(谷垣禎一君) 御指摘のように、十七条、大変重要な規定でありまして、ここで内外の情報として言っているのは、食品の安全性に影響を及ぼす危害要因に関する科学的な知見、あるいは国際機関とか外国政府、それから地方公共団体などが安全性の確保のために講じた措置と、こういった、関する情報ですね、そういったものが想定されているわけです。
 それから、情報の収集あるいは整理、活用というのは、関係行政機関幾つもありますので、それぞれが様々なルートを通じて行うことを想定しておりますが、その際に相互に連携して重要な情報の共有を図る、それから政府全体としてのアンテナを高く張って、情報収集体制の確立を推進していかなきゃならない、そういった趣旨がこの十七条には込められていると思うんですが、その際に、特に食品安全委員会では事務局に情報の収集、分析を担当する課を置くことを考えております。
 そして、そこではいろいろな外国、国内学術雑誌、あるいは学会誌などから最新の科学的知見に基づいた危害やリスク評価に関する情報、それから先ほど申し上げたようないろいろなリスク管理機関、あるいはマスコミ、インターネットですね、こういうようなものから危害情報を集めてくるということも必要だろうと思います。それから国際機関ですね、諸外国の関係行政機関などから海外における危害発生情報、あるいは食品リスクに関する科学的見解、こういうものを集めてくる。それを整理、分析してリスク評価や緊急時対応に役立てていくということだと思います。
 それで、先ほども一回申し上げましたが、関係機関との情報の共有とか的確なリスクコミュニケーションを活用していくということを特に考えていかなければならないと、こう思っております。

○福山哲郎君 かなり具体的にお答えをいただきましてありがとうございました。私もそのような点を大変注意しておりまして、今までは、役所同士が勝手にそれぞれ集めているけれども、それを抱え込んで全然お互いが情報開示しないような傾向もありまして、この食品安全委員会にそういう具体的な課を置いていただけるということは第一歩だというふうに思っています。
 ただ、具体的な話でちょっと一つだけ、今の大臣の言われた国際機関や外国の状況ということで言うと、日本は御案内のように約六割が、日本の食卓に並ぶ食物のうちの六割が海外からの輸入品になります。自給率の問題、低い自給率の問題、今日の議論ではないのでやめておきますが、輸入食料の安全性の確保というのもやはり僕は非常に重要な問題だと思っていまして、一九六二年にFAOとWHOの合同設立した国際政府機関でコーデックス委員会というのがあります。このコーデックス委員会というのは、いろんな形の各国における食品の農薬、添加物、そういった食品の基準を定めている委員会でございまして、恐らく我が国のこの食品安全基本法なり食品安全委員会にとっては非常に重要な情報源になるような国際機関だと思っておるんですが。
 文科省にお伺いをします。このコーデックス委員会の、どなたでも結構ですが、このコーデックス委員会の今の日本側の窓口はどこでしょうか。

○政府参考人(林幸秀君) お答えいたします。
 現在、コーデックスの国内の窓口は文部科学省の私の局の資源室というところで担当しております。

○福山哲郎君 このコーデックス委員会の文科省の担当者の数は、何人の方が担当者で頑張っておられるんでしょうか。

○政府参考人(林幸秀君) お答えいたします。
 先ほど申し上げました資源室で担当しておりまして、資源室の職員三名が、それぞれほかの業務を処理しつつ、併せましてコーデックスの関係業務を分担しておるということであります。

○福山哲郎君 文科省では、食品安全についてのリスク調査や研究分析の実務は行っているのでしょうか。

○政府参考人(林幸秀君) 文部科学省におきましては、コーデックスのコンタクトポイントとしまして三つのことをやっておりまして、具体的には国際機関の事務局から書類を受け取りまして、それを関係の担当の省庁に送る、それから逆に関係省庁から受け取ったいろんな書類を事務局の方にお渡しする、それから国際会議がございますので、その国際会議の出席者の登録といったことを行っております。

○福山哲郎君 大臣、今聞いていただいたとおりなんですが、このコーデックス委員会というのは非常に国際的には重要な役割をしています。ただ、ここのコーデックス委員会の作った食品基準がそのまま日本の食品基準になるかどうかは別の問題です、それは途上国との関係もありますから。ただし、こんな状況だということを、世界の動きを把握しているところとしては大変大きな機関で、その担当窓口が今文科省で、他の業務との兼務で今三名の方がやられていると。基本的にはコーデックス委員会から来たものを必要に応じて各省庁に書類を振り分けていると。
 それはそれで科技庁との絡み、これまでの関連上そこに置かれていると思うんですが、正にこういったコーデックス委員会の担当窓口等は私は食品安全委員会に持ってくるべきではないかと思いますし、例えばそれが今すぐできない場合にも、そのような形の想定をしていただいて、なるべく食品安全委員会はこのコーデックス委員会からの資料をダイレクトに、なおかつ直接コンタクトが取れるような仕組みを作っていただくこと自身が、先ほど正に大臣が言われました十七条の、何というか、趣旨に合うのではないかなというふうに思っています。
 また、もう一つ申し上げると、二十三条の八項では、この法案では、食品安全委員会の所掌事務として、「関係行政機関が行う食品の安全性の確保に関する関係者相互間の情報及び意見の交換に関する事務の調整を行うこと。」ということがもちろん入っておるわけですから、このコーデックス委員会のようなものの担当窓口が食品安全委員会に置けるように、それは文科省との交渉になるんだと思いますが、そこについて是非大臣、前向きにお答えをいただきたいと思っているんですが、いかがでしょうか。

○国務大臣(谷垣禎一君) コーデックス委員会は、おっしゃったように食品の国際的な規格、基準を科学技術的見地から検討している機関でありまして、私も今の職をいただいてからこの委員長とは何度か意見交換もさせていただいて、食品安全委員会としても重視していかなきゃならない機関だと思っております。
 先ほど文部科学省局長が御答弁いたしましたように、現在は文部科学省がコンタクトポイントになっているわけですが、これはかつて科学技術庁がコンタクトポイントになりましたのは、やはり現在産業振興の役割も担っている農林水産省、それから食品衛生を担当する厚生労働省双方に関係するものではあるけれども、このコーデックス委員会が科学的あるいは技術的視点で検討されているので科学技術庁、そして現在はそれを引いた文部科学省ということになっているわけですね。
 そこで、コーデックス委員会がやっておりますことは、もちろん食品の安全性ということも非常に大きなウエートでやっておられると思っておりますが、それだけじゃなく、品質とかいわゆるリスク管理に含まれている仕事がむしろ多いのではないかというふうに私は思っておりまして、そうしますと評価と管理を分離するというリスク分析の手法に立って食品安全委員会というものを作ったわけですから、直ちにコンタクトポイントが食品安全委員会ということがいいのかどうかというのは、私はやや慎重に考えなければならないんじゃないかというふうに思っております。
 しかし、先ほどから委員が御指摘になりましたように、私どもはやはり情報や諸外国の機関がどういう、何というんでしょうか、食品の安全性にとって対応を取っているかというのは、常に耳を長くしてアンテナを張っておかなきゃなりませんので、食品安全委員会、コーデックス委員会の活動というもの、あるいはそのコンタクトポイントである文部科学省との連携というものは当然意を用いていかなきゃならぬと、こう思っております。

○福山哲郎君 今のは谷垣大臣にしてはちょっと歯切れが悪かったと思うんですが、例えば、こんなのは余りいい例ではないんですが、各省庁のホームページ上でコーデックス委員会、情報検索すると、厚労省は七十三件、農水省は四十八件、文科省に関しては民間の研究論文二件が掲載されていただけだったわけですね。
 私は、文科省がコンタクトポイントであることが殊更に悪いと申し上げているわけではありません。やはり歴史的な経緯もあるでしょう、大臣がおっしゃられたとおりに。ただし、こういう食品安全委員会のようなものができ上がってきている時点で、現実に法案の中身で各国の、正に大臣が先ほど言われたように、国際機関とか外国の状況を判断する中に、先ほど大臣言われたように、リスク分析を行っていることもコーデックス委員会やっているわけですから、正にこの安全委員会でコンタクトポイントとして持って、大臣が委員長ともお会いになっておられるというなら、なおさらそういう省庁の縦割りを、ましてや三人で兼務してやっているような状況はもういい加減に、文科省が欲しいと思っているかどうかは別なんですが、そこは少し御英断をいただいて、コンタクトポイントはしっかり食品安全委員会でやるんだというようなことは御答弁いただけませんでしょうか。

○国務大臣(谷垣禎一君) 委員から突っ込んで御質問がありましたが、私は、現在の段階でただ直ちに、何というんでしょうか、このコンタクトポイントの見直しを検討しなければならない状況だというふうには考えておりません。
 これは、新しい食品安全行政というのがこれからスタートをするわけですから、これからいろいろまた実績を積み重ねて、いろいろ議論があると思います。そういう中で必要があれば今おっしゃった点も検討されることがある、あるとは考えておりますが、今直ちに答えよと言われても、ちょっと今お答えすべき段階ではないと、こういうふうに思っております。

○福山哲郎君 私も、すぐに移管をしてほしいと言っているわけではなくて、よりこういう現実があるということを踏まえて、食品安全委員会の方できっちり建設的に文科省と議論ができて、より時間等が掛からないようにしていただきたいと思いますので、是非善処というか前向きに検討いただきたいと思います。
 と思っていると、あともう三分ぐらいしかなくなってきまして、ほとんど自分の予定していた質問ができなくなったんですが、今度は遺伝子組換え食品の表示の問題についてお伺いをしたいと思います。
 これは農水省にお伺いしたいんですが、二つお伺いします。
 食用油やマーガリン、マヨネーズ、しょうゆなど、遺伝子組換え生物を原料として使用していてもそれを表示しなくていい食品が日本の場合にはたくさんあります。その理由はなぜか。これは、EUは基本的にすべての食品について表示義務を課そうと今しています。
 それから、遺伝子組換え生物が混じって入っている場合に、混入されている場合に、五%までの混入は日本の場合容認されていて、遺伝子組換えと表示しなくてもよくなっています。安全であるか危険であるかはともかく、私は先ほど申し上げましたように、遺伝子組換え生物の入っている食品を食べたいか食べたくないかというのは消費者が判断することであって、それを選択するためにはそういう表示をして、消費者がきちっと判断できる環境を整えるのが私は重要だと思っています。ちなみに、EUではその混入率は一%という厳しい数値を採用しているのに、なぜ日本は五%なのか。
 先ほどの表示義務が必要と必要でない食品の問題、それから混入率が五%と一%とEUで差がある理由、この理由について、農水省、お答えいただけますでしょうか。

○国務大臣(亀井善之君) 遺伝子組換えの食品の表示、今委員御指摘のコーデックスにおきます議論等を踏まえまして、平成九年から十一年までに掛けまして約二年にわたりまして、消費者、生産者、流通業者及び学識経験者から成る食品表示問題懇談会遺伝子組換え食品部会におきまして議論をしてきた結果、科学的、技術的な観点から表示の信頼性及び実行可能性を確保することが重要と考え、DNAやこれによって生じたたんぱく質が残存しない油やしょうゆについては義務表示の対象外と、このようにしたわけでありまして、この義務表示の対象品目については、組み換えられたDNA等の検出方法の進歩等に、進歩等に関する新たな知見、消費者の関心等を踏まえて、毎年見直しを行うこととしておるところでもございます。
 それから、EUとの問題。EUは一%というようなこと、我が国は五%とこういうようなこと、最大五%程度の混入と、こういうことでしておりますが、これもバルクで輸入される農作物について分別生産流通管理が適切に行われた場合、遺伝子組換え農産物の意図せざる一定の混入が避けられないと、こういう問題があるわけでありまして、この混入率五%以下を目安とした取引、また輸入につきましてもそれぞれ証明書をそれぞれの段階で取って添付をしておるわけであります。
 EUの関係につきましては、そのようなことが現在目安として規則案、新規則案と、このようになっておるということは承知をいたしております。混入率を定量的に把握するための検出方法が具体的に示しておられないところもありますし、原料に遺伝子組換え農作物が含まれているかどうかを社会的に検証する手法について具体的に明らかになっていないという面もあります。
 この問題、先ほど申し上げましたとおり、バルクでの輸入と分別生産流通管理とこういう点からいろいろ努力をしておりますが、そういう状況にあるということを御理解いただきたいと思います。

○福山哲郎君 今のお話ですと、五%で切っているのは流通上の理由だという話なわけですね。バルクで移動して、そこの中で多少混入してしまうのはしようがないと。
 この議論は実はBSEのときにも聞いた議論でして、肉骨粉の飼料を食べているか食べていないかというときに、実は肉骨粉の飼料は上げていないはずだけれども、前のバルクには、そのものを飼料で使っていた場合に、全部を掃除するわけにはいかないので、多少入ってしまうかもしれないからというような議論が実は肉骨粉のときもありました。
 流通が理由で五%ということは、それは安全性が理由ではないということでして、そこは非常に私は問題だと思っています。
 もう時間がないので、もう私の今考えていることをちょっとだけお話ししてもうやめますが、日本の大豆の自給率は御案内のように三%、約三%、年間三百六十万トンもアメリカから輸入しています。そのアメリカで生産されている大豆の何と約七割が遺伝子組換え生物です。そうすると、どう少なく見積もっても年間百万トン以上の遺伝子組換え大豆が日本に輸入されている計算になります。
 しかし、平成十三年に農水省が発表した調査結果では、遺伝子組換え表示義務の対象となっている五千六百六十一点の食品のうち、何と遺伝子組換えでないと表示されていたものは、表示されていたものが、組換えではないですよ、それが三千二百三十八点、何も表示もされていなかった商品が残りの二千四百二十三点、つまり五千六百点以上も調べてただの一点も遺伝子組換えとか遺伝子組換え不分別と表示されているものはないんです。でも、現実に大豆、百万トン以上の大豆は遺伝子組換え生物で日本には輸入されているにもかかわらず、五千六百点の食品に何ら遺伝子組換えの表示がされていないわけです。
 確かに、それは五%以下だから構わないだとか、表示義務のない食品だから構わないというようなことはあるのかもしれないですが、それはある意味で言うと役所側の論理であって、国民、消費者から取れば、それが遺伝子組換えの大豆を使っているのか使っていないのか、それを食べたいのか食べたくないのか、それを食べてもいいと思うのか思わないのかを選択するのは、私は消費者の問題だと思っていまして、そういう選択権のことも含めて、しっかりとそこは、表示の在り方自身についても食品安全委員会では検討されるというふうに法案にも書かれていますので、しっかりとここも検討し直すことも含めて、前向きに対処していただきたいとお願いをいたしまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
 どうもありがとうございました。

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第156国会  参議院  環境委員会  2003年4月22日

遺伝子組換え生物等の使用等に関する法律案(第2回)

○福山哲郎君 おはようございます。民主党・新緑風会の福山でございます。よろしくお願い申し上げます。
 段本委員、それからツルネン委員、それぞれの質問はなかなか厳しくて、そして共通していると。要は、リスクに関して非常にまだあいまいではないかという話がありまして、ひとえにこれは、前回の参考人質疑で、委員長並びに与野党の理事の皆さんの御努力であの参考人質疑が行われたことは大変貢献をしていると思っておりまして、僕は、今回のこの法案の審議に当たってもやっぱり参考人質疑の重要性というのは実は大変感じておりまして、今後もこの委員会は参考人の先生方の意見を聞きながら審議を進めていくような習慣が付けばいいなというふうに、最初は感想として申し上げておきます。
 一つ目、私も重複することがあると思いますが、段本委員やツルネン委員のように私は人が良くありませんので、もっと嫌なことを言うかもしれませんが、お許しをいただきたいと思います。
 まずは、このカルタヘナ議定書を批准をすることに際して担保法としてこの法律が出てきたと。これに関しては私も評価をしているんですが、現実には、遺伝子組換え生物が輸入されてきたのは九六年の終わりか九七年ぐらいから入ってきているわけですね。これ、議定書に伴って法律が整備をされているという形ではなくて、本来これほどリスク管理が分からないというか、まだ科学的知見があいまいな状況のままの、ままということは、実は主体的に我が国としてもう少し前からきちっとこういった形の法律の議論はされるべきではなかったのかというふうに私は思っておりまして、そこについては環境大臣、どのように思っておられますか。

○国務大臣(鈴木俊一君) 確かに先生が御指摘のとおりに、遺伝子組換え生物、そういうものが以前より行われていた、また入ってきていたということでございますから、もう少し早い取組があってしかるべきであったという御指摘は、それはそのまましっかりと御指摘を受け止めたいと思っております。
 ただ今までも、遺伝子組換え生物につきましてはそれぞれ各省庁でガイドラインというものを作って、そのガイドラインで一定のしっかりした対応はなされてきたと、そういうふうには認識をいたしております。ここにまいりまして、そうしたガイドラインでやってまいりました規制というものを通じて様々な知見も蓄積をされたことでございますし、今、福山先生が御指摘になりましたカルタヘナ議定書もいよいよ世界で四十五か国が批准をして、間もなく五十か国というその発効への要件が整いつつあるという、そういう一つのきっかけも確かにございますが、そういう中で、今回こうしたそれに対応する国内法をお願いしているということでございます。

○福山哲郎君 もうこれ以上この話はしませんが、やはりもうこの委員会で度々出ています予防原則の議論をやはり二十一世紀我が国の行政の中で定着をさせていくためにも、こういった例はなるべく早く対応していただくように環境省さんには御努力をいただきたいというふうに思いますし、農水省並びに厚労省も、私、今日来ていただいているわけですが、同様にお願いをしたいと思います。
 具体的中身に入っていきます、時間がありませんので。
 この法案では、遺伝子組換え生物を使用したい者が自らリスク評価を行って主務大臣に申請することになっています。要は、当該遺伝子組換え生物を使用したいと思っている人間がリスク評価をするわけです。その申請が、余りいい例ではないんですが、最近の例の牛乳の偽装表示やBSEの偽装工作など、企業側のモラルが大変低下をしていて、食品に対する信頼性が落ちていることは、行政に対する信頼性も落ちているのかもしれませんが、やっぱりこの食品を扱う企業のモラルの信頼性の低下というのが国民にとっては大変不安の僕は元凶になっているというふうに思っておりまして、このような状況において事業者が申請をするということに対して、そのリスク評価の透明性だとか、そのリスク評価の正当性だとか信頼性をどのように担保するおつもりなのか、この法案の中にあります評価項目や、更に言うとその試験内容、その事業者が行う試験内容についてどのような形で行われるおつもりなのか、お答えをいただけますでしょうか。

○政府参考人(岩尾總一郎君) 先生御指摘のように、今まで各省ガイドラインに基づいて審査を行ってまいりましたが、本法の規定によりまして、今後は法律上の義務として生物多様性影響評価書を提出し承認を受ける。虚偽の申請をすれば承認を受けた場合の罰則も規定されております。主務大臣の承認を受けるに際して、主務大臣が定める評価項目ごとに後々、後々といいますか、主務大臣が定める評価項目というものを作るわけでございますが、必要なデータを収集し、それらのデータを基に生物多様性影響評価を行うことになります。こういう具体的な方法は、学識経験者ほか広く意見を聴くということで学問上も担保したいということを考えております。
 さらに、承認に当たっての個別審査では、これら学識経験者の意見を聴きながら生物多様性の影響を評価し、データの整合性に疑義が生じた場合、必要に応じて追加情報を求めるということにしております。
 こういうような仕組みを通じて遺伝子組換え生物等の開発企業から信頼性の高いデータを確保することが可能になると考えておりますので、適切な評価ができるというように考えております。

○福山哲郎君 済みません。私はさっき申し上げましたように嫌らしいので少しお伺いしますが、虚偽の申請かどうかは一体だれがチェックするんですか。どこの時点で分かるんですか。

○政府参考人(岩尾總一郎君) 申請自体はその書類に基づいて行われますので、それが少なくとも学問上の知見と合っていないということであればリスク評価を行う、つまり専門家の意見によってそれが虚偽であるということが分かるだろうというふうに考えております。

○福山哲郎君 評価の項目はどのような項目を今想定されているんでしょうか。

○政府参考人(岩尾總一郎君) 先ほど申し上げました、ツルネン委員に申し上げましたが、一つは、その生物が侵入することによって既存の生物を駆逐するということ、侵襲性ということですね。それから二つ目は、既存の生物と交配して新しいといいますか雑種ができてしまうという交雑性の有無。それから三つ目としては、その新しく持ち込まれる生物の毒素とかいうようなものによって既存の生物が駆逐されるというようなもの。そのようなものと、あと、これはあと専門家の意見を聴くということになるかと思いますが、参考人の方からもいろいろな意見をいただいておりますので、そういうものに加えて幾つかの項目でリスク評価をしていくということになるかと思います。

○福山哲郎君 実は、そのリスク評価の中身が分からない状況で実はこの法案の賛否を議論するのも非常に実は危険だと思っているんですね。後で項目が出てきてそれが本当にリスク評価できるかどうか、僕らの手にはもう分からなくなるわけですから。ただ、それはもう言っても仕方のないことなので、よりこのリスク評価の項目についてはしっかりと慎重に御検討いただいて、より正当性、信頼性の高まるものにしていただきたいというのは一つの希望です。
 じゃ、その次に、これも先ほどから話が出ていますが、主務大臣が判断するときに学識経験者の意見を聴いて判断するということになっています。しかしこれ、学識経験者の意見を聴くという状況しか法案には書いていません。これは先ほど段本委員が聞かれましたので重なりますが、学識経験者とはどのような専門家でどのような基準によって選任するのか。また、意見を聴く場はどういう仕組みの場で聴いていかれるのか。例えば審議会みたいなのがあるのか諮問委員会みたいなものがあるのか、個別に、その事業者の申請した中身によって個別にその学識経験者に直接聴きにいくのか、そういう、何というか、仕組みの部分が実はこの法案ではまだ何にも分かりません。今どのような形で想定をされておられるのかお答えいただけますでしょうか。

○政府参考人(岩尾總一郎君) 先ほど申し上げました学識経験者としては、生態学の分野の知見のある方、その他生物工学、動物・植物学、農学などの分野においてこの組換え生物に関する知見を有する者を想定しているということでございます。
 人選についても先ほど申し上げました。その審査に必要とされる知見が異なるということが大変多いと思われます。そして、今まで各省がガイドラインを運用するに当たって意見を求めてきた専門家という方々もおられるかと思います。そういうような方々によりまして適切な生物多様性の影響評価は実施できるよう運用していきたいと考えています。
 それから、なかなか専門家の数、数というか質の問題も言われるかと思いますので、活動、日本生態学会などの活動が強化するということも聞いておりますので、そういう方々、新しい研究者などの発掘も努めてまいりたいと考えております。
 それから、進め方、審査の進め方ですが、先ほど言いました第一種使用規程の審査などの方法は、今までのガイドラインの、各省のガイドラインによる組換え生物の審査による経験も活用したいということと、関係各省の連携を図るということで、先生御指摘の審議会というのが通常考えられるわけですが、今回の法律、六省庁で出しております。それぞれでやっていくということは非常に非効率だというふうに想定しておりますので、正に今後検討したいところでございますけれども、十分関係省庁の連携を図れるような主務大臣が委嘱した学識経験者による審査のための会合というものを作って、できる限り的確、効率的に運用していきたいというように考えております。

○福山哲郎君 今の範囲ではできるだけ答えていただいたんだということは評価をいたしますが、主務大臣の委嘱した学識経験者の会合みたいなものという形は一体どういう場なのか。任意の場なのか。例えば、じゃ、申請が上がってきたら、一回一回、一件一件それをその会合に持っていくのか。それから恐らく、さっき言われましたように、それぞれのガイドラインに沿って、農水省関係なのか厚労省関係なのか、それぞれの関係によって多分申請の中身も変わってくると思いますが、その辺はどういうふうにされるおつもりなのでしょうか。

○政府参考人(岩尾總一郎君) 正に先生御指摘のとおり、私ども、法律ができた暁にどのような数の審査申請書が出てくるかまだつかみ切れておりません。各省庁ガイドラインに基づいて現在やっているところはおおむね承知しておりますが、新しいこの法律ができた暁に、制度を運用していくに当たって、例えば年間あるいは半年で一つとか二つであれば、どのような形、委員会を開くのがいいのか、先生方に一つ二つであればあるときに集まっていただくというようなこともできるかもしれませんし、月に十も二十あるいは百も出てくるようなときにはとても処理できないということもございます。
 したがいまして、あらゆる可能性といいますか、考えられる程度の状況の中で、今申し上げましたきちんとした形の諮問、答申を受けるような組織の方がいいのか、それともある程度数をこなして危なそうなもの、危なそうなものについてよりきちんとした形で見ていただくようなものにするのがいいのか、それは法律が通った後早急に詰めていきたいというふうに考えております。

○福山哲郎君 正に、今おっしゃられたとおりなんですね。科学的知見の蓄積も不足している、人材も不足していると。
 その仕組みについては、法案が通ってから具体的に申請件数にも応じて考えていただけるというのはより現実的だと思うんですが、この専門家の数や科学的知見の蓄積の不足については、環境省としてはどのように体制を整備して今後そういった体制を充実していくおつもりなのか、何かお考えはございますでしょうか。

○国務大臣(鈴木俊一君) この分野におきます専門家の数が少ないという御指摘、これが先般当委員会で行われた参考人質疑のときにも御指摘があったということを承知をしているところであります。
 それで、まず生物多様性への影響評価に関する分野の研究がまだ十分進んでいないというのが私は一つあるんであると、そういうふうに思います。それは、遺伝子組換え生物が生態系に与える影響のみならず、こうした生物の多様性を維持するシステムがどうなっているのか、あるいはこの生物といいますものが、その種類が絶滅に至るプロセスがどうなっているのか、そういったような幅広いこうした分野への研究というのはいまだ行われて、十分進んでいないというような感じがしております。
 そして、したがいまして今後こういう分野の研究を進めて、また人材も増やしていかなければいけないと、こういうことでございますので、今後関係する分野に研究費を重点的に配分をいたしますとか、あるいは生態学に関係する学会に対しまして生物多様性への影響評価にかかわる研究の促進を働き掛けると、こういったことを通じて研究の促進とまた専門家の育成を図ってまいりたいと思っております。

○福山哲郎君 大変、大臣には今前向きな御答弁をいただきました。是非新しい予算と本当に早急にそういった体制を充実させていただきたいと思います。
 さらに申し上げれば、この法律は主務大臣が財務、文科、厚生労働、農水、経産、環境と六人、六つの共管ということになります。分担関係も不明であるわけですが、生物多様性の影響を評価するということになると、どういう状況の申請が出てきたとしても、私は、そこには必ず環境省が僕はやっぱり関与するべきだと思っているわけですね、生物の多様性の影響評価という重要なこの法律の眼目があるわけですから。
 そのときに、環境省としては文科や農水や厚労など、そういったところに対しての申請が出てきたときに、どのように環境省としては判断にかかわるつもりなのか、また判断にかかわることがこの法律でできるのか、担保されているのか、お答えいただけますか。

○国務大臣(鈴木俊一君) 本法律の実施に当たりましては、生物多様性に対する影響を防止する観点から、これまで各省に蓄積されてまいりました知見を最大限に活用いたしまして、各省の機能とそれから持ち味を生かした役割分担を行うこととしているところであります。
 第一種使用規程の承認につきまして学識経験者の意見を聴く場合にあっては、六大臣すべてが聴取するのではなく、生物多様性影響に関する知見を有する環境大臣と各分野に係る遺伝子組換え生物の正常使用等に関する知見を有する当該生物等の所管大臣が連携共同して実施する体制を検討しているところでございます。したがいまして、環境大臣は常にかかわりを持っていくという体制を検討をいたしているところであります。
 具体的な体制の整備に当たりましては、事務の重複やそごを排除いたしまして、連携して効率的な行政運営が確保されるように留意をして対応してまいりたいと思っております。

○福山哲郎君 これまた前向きな御答弁をいただきましたが、検討している最中でございますから、各省庁に押し切られないように是非環境省、頑張っていただかなきゃいかぬと思います。
 私、済みません、本当に自分で嫌な性格だなと思うんですが、そのときに農水大臣と環境大臣の間で意見が分かれた場合どうするかとか、それから学識経験者の中でも、それぞれのガイドラインに基づいての決定に携わってきた学識経験者がそれぞれ例えば違っていて議論が分かれた場合とか、その判断基準はどういうふうに考えておられるのか。それは現場見ないと分からないとか申請の内容を見なければ分からないというのはよく分かるんですが、そういった点はどのように想定されていますでしょうか。

○国務大臣(鈴木俊一君) 審査に当たりましては、関連する様々な分野の専門家の意見を聞くこととなっております。御指摘のとおり、学識経験者の意見が一致しないということもあり得るわけでありますけれども、必要に応じまして追加的データを求めるなど、議論が尽くされるよう努めてまいる所存でございます。最終的には、科学的に不確実な要素がある場合には行政が総合的に判断することも必要になると、そういうふうに考えております。
 また、遺伝子組換え生物を所管する大臣など関係省庁との間においても、こうした学識経験者の意見を取りまとめていく過程で十分議論を尽くして、最終的には法の目的が十分担保されるか否かの観点に立ちまして協力してまいりたいと思っております。

○福山哲郎君 実は先ほど学識経験者がどういう仕組みの中で決定をするのかとか、申請書をどういうプロセスで決めて許可をしていくのかということは、実は今の話にかかわってくるわけですね。つまり、意見が分かれた場合だとか、どのように決定をしていくのかというのが、その仕組みが分からない限りはやっぱり正当性が見えなくなるので、今の大臣の御答弁のように、是非議論を尽くしていただきたいということと。
 そうすると何が重要になるかというと、先ほどツルネン委員からも言われたみたいに、要は情報公開とその公表、審議の過程の公表と聴取した意見がどんな意見だったのかということと、申請の中身はどういったことだったのかというのが非常に重要になってくるわけです。つまり、科学的な知見が完全に確立していない以上、長期的に見れば国民一人一人に何らかの影響が及ぼす可能性を秘めているということです。だからこそ、先ほど言った仕組み、それからそれに対するどういう申請書類が出て、それに対してだれがどういうことを意見を言って、それによって決定はどのような手順でされて、どういう理由だからそれが承認をされたか、承認をされなかったかというのが私は非常に重要な点だというふうに思っているわけですが、先ほどもお答えいただいたと思いますが、その事業者の申請書類、それから大臣が聴取した学識経験者の意見や審議の過程というのは公表される予定はあるのかどうか、お答えいただけますか。

○政府参考人(岩尾總一郎君) 先ほどもお答えいたしましたが、この遺伝子組換え生物等は企業の創意工夫の結果生み出されるものでございますので、具体的な審査情報の中には知的所有権に深くかかわるものも想定されるので、審査の過程そのものを公開することは困難であると考えております。
 ただし、法で定める第一種使用規程について公表すること、それから環境中で行う使用については、承認に際し、その内容について知的所有権を侵害しない範囲で必要な情報は公開するということにしてまいります。

○福山哲郎君 知的所有権の問題があると思いますから、そこはできるだけ公開をしていただくと、公表していただくということでないとやっぱり国民にとっては不安が募ると思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
 それから、これは、この法律は当然カルタヘナ議定書に基づいている担保法だというふうに思っておりますが、このカルタヘナ議定書ではリオ宣言第十五原則を再確認するということが議定書には書かれています。このリオ宣言第十五原則というのは、いわゆる先ほどから議論になっている予防原則です。
 したがって、この法案によってリスク評価を行う場合には当然このカルタヘナ議定書のリオ宣言第十五原則を再確認する、いわゆる予防原則的な判断基準、すなわち安全性が確認されていないものに関しては承認はしないんだという基準を採用するべきだというふうに考えますが、政府の見解はどのようなものでしょうか。

○国務大臣(鈴木俊一君) 福山先生から御指摘のとおり、このカルタヘナ議定書にはいわゆるリオ宣言の原則十五に規定される予防的な取組方法に従うということが明記をされております。したがいまして、その国内担保法であります本法におきましても、その考え方というものが踏まえられたものになっているということであります。
 で、具体的にどのように反映をされるのかということでございますが、本法における承認の過程につきましては、一例でありますけれども、例えば生物多様性影響が生じるおそれのある環境中での使用を目的とする遺伝子組換え生物等について、その使用に先立って生物多様性への影響評価を行い、承認を受けることが義務付けられていること、また生物多様性への影響評価に必要とされる科学的知見が必ずしも十分に得られていない場合にあっては、試験的な使用を行い情報を収集した上で使用を拡大することとしていることなどに予防的な取組の考えというものが示されているわけでありまして、こういうことを通じまして未然防止というものに努めてまいりたいと思っております。

○福山哲郎君 さらには、先ほども少し出ましたが、モニタリングの仕組みでございます。その使用が承認された後何年かたってから例えば悪影響や被害が発見される可能性もこれないとは言えません。前回の参考人質疑でもそういう話も出てまいりました。ですから、使用を承認をした遺伝子組換え生物の利用状況についてやっぱり継続的にモニタリングを行うことが私は必要だというふうに思っているんですが、この法案では残念ながらモニタリングについてはっきりとした明確な状況というか規定はないというふうに思っているんですが、この点について政府はどのようにお考えでしょうか。

○政府参考人(岩尾總一郎君) 生物多様性影響評価を的確に実施していくためには、この遺伝子組換え技術によって作成された生物による影響についての知見のほか、影響を受ける生物、生態系に関する知見を一層今後とも調べていくということが必要です。評価時に、評価する時点では最新の科学的知見に基づいて行われますけれども、評価時に予測できなかった環境の変化、科学的知見の充実によってその後にこの影響が生ずるおそれがあると認められるに至ったというふうな場合は当然あるわけでございますので、この承認を行った遺伝子組換え生物についても必要に応じその使用による影響というものについてデータ収集を行うということは重要だと私たちも考えております。
 法律の第六条第二項において承認取得者に対して情報の提供を求めるように措置をしております。環境省としては、この規定を活用して承認取得者に対して自らの開発した遺伝子組換え生物等の使用状況についてのデータなど必要な情報の収集、その提供を求めることとしております。その情報に基づいて実際の使用者から直接報告を徴収することも可能でございます。必要な場合にはこれらの措置を組み合わせて実施し、正確なデータの確保に努めてまいりたいと考えております。

○福山哲郎君 そこは分かるんですが、一つ気になるのは、そのモニタリングなりデータを収集するのはその承認の取得者からだということです。ということは、承認の取得者というのはその使用をすることによって利益を得ている者でございますから、その利益を求めている者が例えばモニタリングをするときに、例えば悪い影響や被害が出てきたときにそれをちゃんと即座に、例えば環境省なり申請省庁なりに言ってくるというふうには限らなくて、正に今おっしゃられましたように必要に応じて、例えば情報、データをよこせという話は必要に応じたということを、例えば環境省側が認知をしたときというのは、ひょっとしたらもう相当悪影響が起こっている可能性があって、そこの部分に関しては承認を取得した者以外の部分で、場所でとかモニタリングをしていくような仕組みというのは考えられないのか、そこはいかがですか。

○政府参考人(岩尾總一郎君) 先生御指摘の点、もっともでございますが、環境省として環境改変があったかないかということは当然調べなきゃいけないというふうに思っています。私どもの今持っております行政として、客観的なモニタリングをやるべきデータとしては、緑の国勢調査と言われているような自然環境保全基礎調査、それからレッドデータブックなどでございます。生物多様性に関する知見というものも積み重ねてきておりますけれども、今年度予算が新しく付きましたモニタリングサイト一〇〇〇とか、日本全国にわたって一応網の目を掛けているつもりでございますので、こういうのにいつ影響が出ても分かるようなものにはしていきたいというふうには考えております。

○福山哲郎君 いや、だからそこが問題で、我が国の場合には何らかの形の影響や悪影響が、被害が出てから慌てて後手後手に回ってという例がやっぱり最近では非常に多くて、そこは非常に気になっているところです。
 それから、もし承認後影響が判明した場合、原状復帰に対して責任がどこにあるのかと。例えば、そこに、その承認を取った事業者が違反行為がない場合です。承認をしたと、でもそれは承認をしたのは、その事業者も全く違反行為をしていない。それでただ、たまたまその科学的知見が足りなくて、何か被害や違反、被害や悪影響が起きたとき、一体その被害の原状復帰責任とか、その遺伝子組換え生物の回収や、そういったものに対しての責任は一体どこが取るのか、今どのように想定されていますか。

○政府参考人(岩尾總一郎君) まず、そのような事態が生じないように未然防止に努めるということが一番でございます。万一かかる影響が生じた場合には、販売先などにおいて環境中に放出されず保管されているものの使用の中止ということで、まず影響の拡大を防ぎたいというふうに考えています。次に、環境中に放出されたものであっても、例えば栽培中のものを刈り取るなどの措置によって効果が上がるというふうに考えています。
 それから、原状回復ということでございますが、承認された使用規程に基づいて正しく使っていった場合に生じた生物多様性影響に関する原状回復については、もちろんその使用者に使用の中止を求めるということですが、使用者のみならず、遺伝子組換え生物等につき知見を有する開発者などの承認取得者にも協力を要請することになると考えています。そして、行政としても応急措置を講ずることが求められる場合であれば、既存の制度、組織を活用しながら、適切に対処してまいりたいと考えております。

○福山哲郎君 この法律はまだ本当に科学的知見が足りないところがあって、不明確な点がたくさんあるんですが、そこは運用上しっかりと対応していただかないと、やっぱりBSEの問題や薬害エイズの問題は、やっぱりそれぞれの長期にわたって国民に影響が及ぼす可能性がありますので、是非慎重に対応していただきたいと思います。
 農水省と厚労省さん来ていただいたんですが、時間がなくなったので簡単にお答えください。表示の件です。
 まず、食用油やしょうゆなど、先ほど段本委員の質問にもありましたが、これに対して表示義務がない理由。それからその混入、許容混入率ですね。遺伝子組換えの混入率がEUでは一%という厳しい数字なんですが、日本は五%と、これが日本の場合に高い理由。それから、不使用や不分別や、使用や、あと表示がないものとか、その表示方法が非常に消費者にとって分かりにくくなっている理由についてお答えをいただいて、最後に済みません、こういったことに対してどのように今後対応していただくつもりなのか。もう時間ありませんが、簡潔にお答えをいただきたいと思います。

○政府参考人(山本晶三君) お答えいたします。
 日本において、油やしょうゆにつきましては遺伝子組換えの表示の対象外となっておりますが、これはEUと違いまして、食品においてDNAや、これに基づきまして生じたたんぱく質が残存しないもの、これにつきましては表示の対象外とすることにしておりまして、これは平成九年から十一年に、二年間にわたりまして食品表示問題懇談会遺伝子組換え食品部会というのを作りまして、消費者を含めます生産流通業者、いろんな方々から御議論をいただいた結果でございまして、平成十三年からこれをやっている結果でございます。
 そういう意味で、今、日本の混入率五%ということでございますが、現在日本においていわゆる分別、生産、流通、管理、これを行っておるわけでございますが、そうしておきましても、例えばバルクで輸入されるような農産物の場合につきましては、どうしても最大で五%程度の混入する流通実態ございます。そういう意味でこの五%という数字が出ているわけでございまして、それはEUの場合とは流通の状況が違うんではないかというふうに考えております。
 また、その表示につきまして、先生御指摘のような表示にしております。これにつきましても、先ほど申し上げました食品流通の懇談会でいろいろ御議論いただきまして、パブリックコメントを含めまして幅広い国民参加の下で取りまとめられたわけでございます。
 しかしながら、いずれにせよこの遺伝子組換え食品の問題、国民的な関心も高うございます。そういう意味で食品の表示全般につきましては、厚生労働省と共同で設けました食品の表示に関する共同会議においても議論をしておりますし、また、いずれにいたしましても、この表示対象品目につきましては毎年見直しを行っているところでございまして、新しい農産物が開発された場合や分析技術の精度が向上されました場合につきましてはこの対象品目に追加することにしておりますので、そういうことから、この表示制度というのをしっかり運用してまいりたいと考えております。

○政府参考人(遠藤明君) 厚生労働省におきましても、農林水産省と協力をしつつ遺伝子組換え食品の表示制度について、消費者の皆様に分かりやすく説明をしてまいりたいと考えております。

○福山哲郎君 終わります。

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第156国会  参議院  環境委員会  参考人質疑 2003年4月17日

遺伝子組換え生物等の使用等に関する法律案(第1回)

○福山哲郎君 民主党・新緑風会の福山と申します。よろしくお願い申し上げます。
 今日は、参考人の皆様方におかれましては本当に貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。次の法案審議に大変参考になりまして有り難いと思っています。
 先生方のお話を伺うと、共通をしたことが幾つかあるというふうに承りました。それは、一つはやっぱり不確実性というか、非常に科学的な知見の問題にしてもまだまだ分からないことが多いと、だから安全性の評価等についても非常に慎重にやってくれと。岩槻先生がおっしゃられました、科学はどれだけのことを知っているのか、我々がどれだけのリスクをチェックできるのかというお言葉は大変重たいと思いますし、天笠先生は科学的な知見を含めて予防原則を取り入れてほしいというようなことを言われましたし、加藤先生におかれましてもリスク管理で絶対安全ということはないので安全を図りつつ発展を目指していかなければいけないと、鷲谷参考人に至っても基本的に生物多様性の確保のために分からないことが多いというようなことをおっしゃられて、それぞれの参考人の皆さん、表現は違いますが内容的には僕は随分共通をされたことを言われたなというふうに承りました。
 じゃ、この法律をどう評価するかということの場合に、私、非常に重要なのはやはり第三条の、主務大臣が基本的事項を決めなければいけないんですが、そしてこれを公表することになっているんですが、この中身がこの法律ではまだ分かりません。
 それから、例の事業者が輸入をしてきたときに事業者自身がリスク評価をしてそして主務大臣に申請をするわけですが、それを主務大臣は有識者、学識経験者に意見を聴くということになっていますが、それも一体どういうリスク評価が事業者によってされていくのかとか、どういう学識経験者によってその申請が諮られるのかということも分かりません。
 ですから私は、法律のスキームとしてはカルタヘナの議定書を担保するための法律としてこういうことができたことは非常に評価できると思いますが、本来的にこの法律が機能するかどうか、先ほど鷲谷参考人も言われました運用次第かどうかというのは正にここからの中身に懸かっているというふうに思っておりまして、そういう点において幾つかお伺いをしたいと思います。
 まず岩槻先生にお伺いしたいんですが、先生は、私ちょっと論文を読ませていただいたんですが、今日の話の中では生物多様性で我々はどのぐらい分かっているのかということを言われたんですが、先生自身は生物多様性の危機だということをはっきりとおっしゃっておられます。危機の認識が日本人は足りないし政策決定者も足りないというようなことを論文で書かれておりまして、具体的にどのような点が危機だというふうに思われていてどういう状況に今あるのかということを、簡単には言いにくいと思いますが、教えていただけますでしょうか。

○参考人(岩槻邦男君) 最初にお断りしますけれども、科学的な知見が非常に乏しいという言い方をしましたけれども、それは、一方では二十世紀に科学が飛躍的に進んでいるというのが常識になっているというそういうベースで申し上げているんで、科学者がサボって何にもしていないと言われたら困りますので言っておきますけれども、すごく科学が進んでいる側面もあるわけですよね。例えば遺伝子組換えというようなことも、私どもは進化を研究するときに遺伝子組換えのような技術を使うというのが非常に有効に機能しているということもありますから、そういう意味でうんと進んでいるけれども、進んだ進んだといってもこの程度だということを申し上げているんだということを御理解いただきたいと思うんです。
 ですから、生物多様性についてもう最近いろいろな施策が行われているというのは非常にいいことだと思うんですけれども、それでもまだ生物多様性に対する対応からいいますと非常に遅れている部分がある。例えばですよ、例えば絶滅危惧種の問題というのは、絶滅の危機に瀕している種の問題というのは、日本でも、多少欧米から後れましたけれども、様々な手当てがされるようになったんですけれども、しかし絶滅が危惧されている種というのが非常にたくさん挙げられているうちで実際の施策が行われているのはごくごく一部だけというのが現状ですよね。
 しかも、こういう生物多様性に対する様々な人為の影響というのが現れるのは実は子や孫の世代なんですよね。今、我々が手当てをしておかないと子や孫の世代に非常に厳しい状態が出てくる。子や孫が気が付いたときにではもう既に手後れでどうしようもないわけですね。
 そういうことに対する認識が、研究者もですけれども、政策決定者も、それから様々なところで非常に欠落しているんじゃないかということに危機的なことを感じているということをあちらこちらで申し上げているということでございますけれども。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 それに対して、その危機的な状況に遺伝子組換え生物の科学的な技術が進んでいるということ自身はどのように影響を与えると岩槻先生自身はお考えなんでしょう。

○参考人(岩槻邦男君) 先ほどもちょっと申しましたように、資源に対する要求というのは、人口が増え、それから人間生活が多様化してくるということになりますと、これは徐々に増えていくんじゃなしに急速に増えてくるということを覚悟しないといけないということなんですよね。
 本当は、私どもは実は学術会議でもつい最近そういうことで報告を出させていただいたんですけれども、二十世紀的な、エネルギーに非常に偏った、エネルギー志向に偏ったような生き方をしておったんではとても二十一世紀は生き切れないですから、今言われる持続的な社会、サステーナビリティーというのを維持するためには生き方自体を変えるということを考えないといけないということを強く主張させていただいているんですけれども、ただそれが今すぐグローバルに変わっていくとはとても期待できませんので、そうするとやっぱり二〇二五年には九十億になるというその予測に従った様々な対策をしていかないといけないということになるかと思うんですけれども、その場合には、資源に対する取り合いで戦争が起きないようなことをするとしますと、しようとしますと、やはり今の科学的知見を最大限有効に利用してどういうふうに確保していくかということを考えざるを得ないわけですよね。そういう対策が例えば遺伝子組換えで新しい作物を作り出そうということにも生かされている。
 例えば、砂漠の緑化ということが言われますけれども、そこで稲を作ろうとしても耐塩性の強い稲がないと育たないわけですけれども、そういうものを作るというのはやっぱりこれまでやってきた細胞遺伝学的な手法だけによる育種ではとてもできないことなんで、やっぱり進んでいる部分を活用した部分というのがどうしても必要になってくるわけですね。
 そうやって資源に対する対応を科学者としては対応していくということになりますと、先ほどからも議論されている今度はリスクのことが出てきますので、一〇〇%分かっていないことに対する対応ですから、それに対する保障をどうしていくかということを例えばカルタヘナ議定書のようなことで裏打ちしていかないといけないということだというふうに理解しておりますけれども。

○福山哲郎君 天笠参考人にお伺いします。
 先ほど私が申し上げました、主務大臣が公表をしなければいけない基本的な事項の中身が重要だというふうに私は感じているんですが、天笠参考人も先ほどのお話の中で情報の開示の在り方とか市民の意見を反映できる仕組みが必要だと言われましたが、もう少し具体的に、こういったことがこれから先必ず必要だと、表示の問題もあると思うんですが、何かもう少し御示唆をいただけるようなものがあれば教えていただければと思います。

○参考人(天笠啓祐君) 情報公開なんですけれども、今まで私たちといいますか、いろんな市民団体が情報公開というのを求めてきました。例えば遺伝子組換え作物の環境への影響ですとか、食品の安全性に対する影響について、審議の過程が一切公開されておりません。ですから、審議会でどういうふうに安全性を評価したかとか、あるいは問題点は何かなかったのかといった点が一切公開されてきませんでした。ですから、そういう審議の内容自体を公開してほしいというのがまず一つあります。
 そうしなければ、いわゆるブラックボックスの中で結果だけが出てきてしまうという、そしてそれでパブリックコメントを求めるという形になってきますと、結局パブリックコメントを求めて出しても、最初にもう結論ありきでありまして、変更されたケースというのはほとんどありません。ですから、結局、情報が公開されないということは、結果的にも結果が変えられないということにもつながってきます。
 ですから、そういった意味でいいますと、やはり安全性評価というのは、食品の安全性にしろ、環境への影響の評価というのは、この生物多様性条約でもうたわれているように非常に重要な問題ですので、国民生活や私たちの健康、あるいは自然を守るためにも大変重要なポイントですから、その過程が逐一公開されるような仕組みにしてほしいというのが一番大きな点であります。

○福山哲郎君 加藤参考人にお伺いします。
 先ほどの段本委員の質問にもちょっと共通をするんですが、恐らく最初は文科省、厚労省、農水省、経産省が持っている遺伝子組換え生物にかかわるガイドライン、いわゆる指針が元々のスタートでこれ始まると思うんですが、先ほど加藤参考人は、新たな科学的知見を取り入れる柔軟なシステムが必要だというふうにおっしゃられました。
 それともう一つ、この法律は生物多様性を確保するための法律です。
 この現状のあるガイドラインは、生物の多様性を確保するのにこれはまだまだ改善の余地がたくさんあるのか。各国の状況とかも加藤参考人はいろいろごらんいただいているようなので、もっと改良する余地があって、そのための柔軟なシステムとしてどういうふうな仕組みがあれば、ガイドラインが途中で変わったり、生物多様性がより確保できたり、また海外との関係も含めてバランスが取れるようになるのか。その辺のことについて、具体的に何かお考えがあればお教えいただけますでしょうか。

○参考人(加藤順子君) 今、環境中で利用される遺伝子組換え生物の審査をやっています、審査というか安全確認をやっておりますのは、農水省の指針とそれから経産省の指針と、二種類かというふうに理解しております。文科省の部分については個別審査になっていますので、具体的にどういう項目ということが見えておりませんので、と理解しています。ちょっと私、不確実かもしれませんが。ですから、産業利用に関しては農水省と経産省ということかと思います。
 それで、項目自体については、基本的には、カルタヘナ議定書の中にリスク評価の項目というのが、やり方と項目というのが附属書に入っておりまして、そこに書いてあるような項目は基本的には入っているかと思います。ですから、もうちょっと改善の余地があると思いますのは、先ほど鷲谷参考人がおっしゃいましたように、もう少し生態学の専門家が審査にかかわるということが一つは大事な点かなというふうに思います。
 それからもう一つは、新しい科学的な知見というのが出てきたときに、それに対して迅速に対応して、どういうスタンスに持っていくか、それをどういうふうに解釈するか、それをどういうふうな審査に反映させるかということはもう少し迅速にできるといいのかなというふうに思いまして、それは例えば情報の収集ですとか、それからその収集した情報に対して審議会あるいは審査にかかわる学識経験者のレベルでディスカスをもう少しするとか、そういうような体制が組めるかなというふうに思います。
 それからもう一つは、やはりこの問題はどの国でもぶつかっている問題でして、ですから、そういう意味では、研究ですとか知見を国際的に共有して、国際的な協力でもって一番弱いところの研究をやっていくとか、そういうような国際的な協力体制を取るというのも一つの方法かと思います。
 以上でございます。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 鷲谷参考人にお伺いします。
 先ほど大変詳しく御説明をいただいたのであれなんですが、鷲谷参考人の話で、短期的には遺伝子組換え作物によって食害抵抗性や病害抵抗性を発揮するかもしれないけれども、でもそれは、結果としては一時的な結果しか続かなくて、社会全体としては、実は害虫が抵抗性が増したりとかして社会的なコストは実はそっちが掛かる可能性があるとおっしゃられました。
 先ほど岩槻参考人が言われた、人口増大をして、なおかつ資源が必要な状況の中で、短期的にはそういう話は出てくるんでしょうが、結果としては社会コストが掛かるという鷲谷参考人が言われた話の一体どこに接点を見いだせばいいのかというのは、僕らはお話を聞いていてもすごく難しいなと思うんですね。それを政策決定の場では判断をしなければいけないし、なおかつそれを国民に安全だということを説得もしなければいけない。でも、安全だということはひょっとしたら五十年とか百年先にしか分からないというような話も今日の参考人の皆さんのお話でありました。
 こういう状況の中で、我々は一体、難しい質問なんでお答えにくいかもしれませんが、一体どこに力点を置いて判断をすればいいのかとか、今日お話聞いていて本当にどうしようかなと思っているんですが。鷲谷参考人、もし、済みません、こんな抽象的な質問で怒られるかもしれませんが、お答えをいただければ。

○参考人(鷲谷いづみ君) 遺伝子組換え生物の利用に限らず、同じことをたくさんやって単純なシステムで効率を上げようとすると、一時的には大変効率が上がるんですけれども、でも長期的に見るとそのシステムがまた崩壊してしまって、それと同時に環境の健全、生態系の健全性が失われるということをかなりこれまでも経験してきていると思います。
 それは、遺伝子組換え作物などの利用に限ったことではないものですから、そういうやり方というのは多少危険だという認識が広まってきていると思いますけれども、それを何で判断していくかということなんですが、そこで生物多様性という視点を持って、生物多様性が失われないということをしておけば、生態系が不健全化して持続性がもう失われてしまうというようなことは避けられるんではないかという、一つの今の時代の生物多様性を保全、そうですね、そのときには短期的には生物多様性を保全するということは非常にコストが掛かることかもしれませんけれども、そういうことをしておくことによって後の世代の生活なり生産を守るという視点があると思うんですね。生物多様性影響評価と今言われていることは、そこまでをすることができる、不確実性もありながら。
 それで、じゃ、どういう手法で、例えば食物の増産、食糧の増産をどうしていくかということを決めるのは、そういう生物多様性にはこういう影響があるかもしれないということを踏まえた上で、それはリスクに関する、不確実ではあるけれども、ある情報ですね。それとそのことが、だれかにとって、あるいは広く人類に何らかのメリットがあるわけですね。リスクを被るのはもしかしたら後の世代であるということを十分に認識した上で何らかの判断をしないといけないと思うんですが、その判断は、もしかすると自然科学の範囲ではなくて、私たちは情報を提供をします、もっと総合的に見て、今のリスクとメリット、それから公平性とかを見ながら社会が御判断いただくということなんじゃないかと思います。
 だから、生物多様性影響評価で、そこまでの判断は求められてはいないんじゃないかと思っております。

○福山哲郎君 実は、正にこの遺伝子組換え生物の問題だけではないんですね。ついこの間、私もこの環境委員会で環境大臣相手に予防原則を導入するべきだと別のことで言って、いや、それは科学的知見がなければというような議論を、押し問答して、正に今日も同じ話なんですね、昨日も。
 要は、安全か、なおかつ天笠さんの僕、論文を読んで実はあっと思ったんですが、安全か危険かということで、どちらかにはっきりしているものはむしろ対処しやすいが、問題は安全か危険かを判断しにくいグレーゾーンの場合であると。そのグレーゾーンのときに危険だと分かった場合の対策を立てておかなければいけないと天笠さんの論文に書かれていました。正にそのとおりで。
 済みません、何か愚痴みたいな質問になりまして申し訳ありませんでしたが、とにかく本当に今日いろいろお話を伺わせていただいて、より法律的に、先ほどの透明性の問題やどういう人選が行われるか等をきっちり審議の中で確保していきたいと思いますので、大変貴重な意見、ありがとうございました。
 終わります。

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第156国会  参議院  環境委員会  2003年4月15日

野生生物の保護とメジロ等の愛玩飼養制度について

○福山哲郎君 お疲れさまでございます。福山でございます。よろしくお願いいたします。
 時間がないので早速ですが、今日は野生生物の保護ということに関してお伺いをさせていただきます。今日は、タマちゃんについてちょっとお伺いをしたいと思います。
 昨年の八月に多摩川に姿を見せて、その後、鶴見川や帷子川と移動を続けながら生息しているアザラシのタマちゃんはもう皆さん、委員各位、御存じだと思います。もう流行語大賞にも選ばれたり、ワイドショーは毎日と言っていいほど出て、出演をされたり、住民票を交付をしたとか、いろんなことがあるんですが、実際にこのアザラシという、私もよく分からないんですけれども、一般的に言うと北の方に生息をしていると思うんですが、このアザラシのような動物が大都市の川とか日本の、全国に、川などに現れることは珍しいことなのか、過去にこういった実際事例があるのか、お答えをいただけますでしょうか。

○政府参考人(岩尾總一郎君) アゴヒゲアザラシは、オホーツク海以北の太平洋、それから北大西洋、北極海などを主な生息域としております。しかし、アザラシ類はアゴヒゲアザラシに限らず海流に乗って南下することが知られております。本来の生息域以外にもしばしば出現しておりまして、アゴヒゲアザラシについて見ますと、九八年、大分県の津久見湾、津久見市、それから二〇〇二年に三河湾で出現した記録がございます。

○福山哲郎君 なるほど。
 いや、何でこんな質問を今日しているかというと、地元でよく聞かれるんですよね。あのタマちゃん、どうにかなるのかとか、国は何かするのかとか、タマちゃんはどうなってしまうんだとかよく言われるのでちょっとお伺いをしているんですけれども。
 ということは、過去においてその事例はあると。そういう事例のときには何らかの形で行政が処分をしたり捕獲をしたりという例はあるんでしょうか。

○政府参考人(岩尾總一郎君) 大分県津久見市の例では、失礼いたしました、先ほど一九九八年と申し上げましたが、一九八八年の間違いでございますが、昭和六十三年、一頭見付かっておりまして、保護後、大分生態水族館というところで飼育されていたというふうに承知しております。

○福山哲郎君 更に言うと、このタマちゃんをめぐって動物保護団体の間で御案内のように争いが起きていると。僕はどちらが正しいのかよく分からぬのですけれども、正直申し上げて。
 片方のグループ、タマちゃんを想う会は、こんな汚い多摩川にすんでいてはタマちゃんがかわいそうや、元の海に帰してやるべきだと主張すると。もう片方のグループ、タマちゃんを見守る会は、人間が手出しをする必要はなく、ありのままでよい、天敵がいない多摩川は海より安全とも言えると反論し、現場では両団体の小競り合いまでが起きていると。
 こういうコメントをいただくのは変な話なんですけれども、大臣はこの問題どうお考えでしょうか。

○国務大臣(鈴木俊一君) 私は、タマちゃんの存在そのものが一つの自然現象だと思いました。つまり、どなたかが飼っていたペットが逃げ出したとか、どこかの動物園、水族館から逃げ出してきたとかそういうのではなしに、恐らく北の方から南下をしてきてあそこの帷子川、多摩川に現れたと、こういうことですから、タマちゃんの存在そのものが自然現象であるならば、その自然のままに任せておくのがいいのではないかと、そんなふうに考えているところであります。
 いずれにしても、タマちゃんの出現が野生動物に対する大変国民の多くの方々の関心を高めたと思いますし、また今、先生から御指摘がございました二つの立場があったわけですけれども、野生生物に対する接し方、どうしたらいいのかというその考えをまた国民の皆様に提供したきっかけになったということではないかと、そんなふうに思っております。

○福山哲郎君 私も今の大臣の御発言には全く同感でして、思った以上に野生動物に対する国民の関心が高いなということと、これをきっかけに更に野生生物保護への機運が高まればなというふうに思っております。
 先ほど、捕獲をして水族館にというお答えがあったんですが、実は、ある片方のグループのメンバーが今年に入ってからタマちゃんを捕獲して海に帰そうとする実力行使に出たけれども、うまくいかなかったと。
 その捕獲は失敗に終わったわけですが、じゃ、法律的な話をさせていただきます。
 鳥獣保護法において、タマちゃんのようなアザラシを捕獲することは現行法上どのようになっているのか、お答えいただけますか。

○政府参考人(岩尾總一郎君) 本日、現時点では、アゴヒゲアザラシは鳥獣保護法の規制対象として扱われておりません。したがいまして、同法の捕獲規制は適用されません。しかしながら、明日、改正鳥獣法が施行されます。アゴヒゲアザラシを含むアザラシ五種、ニホンアシカ、ジュゴンなどについて改正法が適用され、アゴヒゲアザラシの捕獲につきましては都道府県知事の許可を要することになります。許可なく捕獲した場合には一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処せられるということになります。

○福山哲郎君 いや、正に昨年こちらにいらっしゃいます委員の皆さん、そして大臣と御議論させていただいた鳥獣保護法の改正の施行が明日からということで、今日と明日の境にタマちゃんを捕獲をしちゃいけなくなるわけですよね。すごく時宜を得た、たまたまなんでしょうが、改正の施行になったなというふうに思っておりますが、タマちゃんに対する、さっきも大臣お話をいただきましたが、タマちゃんに対する環境省のスタンスは、鳥獣保護法でも明日から捕獲できないということになりましたし、先ほどの答えのとおりだと思うんですが、もう一度環境省のスタンスを大臣、お答えいただけますか。

○国務大臣(鈴木俊一君) 先ほど申し上げましたが、基本的には自然現象の一つということで、そのまま温かく見守るというのが姿勢であると思います。それから、今、局長からお話がございましたとおり、明日から改正鳥獣法が施行をされる、適用されるということでありますので、捕獲規制による保護が図られるということでございます。
 ただ、見守るということでございますけれども、神奈川県等関係機関から出現情報などの情報も受けたいと思いますし、万が一けがあるいは病気の兆候が見られる場合には保護収容が適切に実施されるように関係機関、専門家の間の調整や助言を行ってまいりたいと思っております。タマちゃんの救護体制ということで、専門家、それから環境省、神奈川県、横浜市等の関係機関から成る救護体制というものも一応整えているところであります。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 今回、たまたまなんですが、今回の法改正で海の哺乳類についても捕獲が基本的に禁止をされることになったということは鳥獣保護法上は非常に大きな第一歩で、環境省の対応を評価したいと思いますし、野生生物に対する保護について更に一層環境省としても御努力をいただきたいなというふうに思っているところでございます。
 同様の問題で、実はメジロの違法捕獲、それから密猟の問題が出てきています。この点について質問させていただきたいんですが、現在、野鳥のメジロというのは捕獲が禁止をされているはずでございますが、飼うことが、飼っておられる方がいらっしゃるわけですが、なぜ飼うことができるのかお答えをいただけますか。

○政府参考人(岩尾總一郎君) 国内におりますメジロ、野鳥でございます。自然のままで保護するということが基本認識と考えております。
 しかしながら、自分の楽しみのためにそのような野鳥を飼いたいという場合、我が国には古くからこのような野鳥についても愛玩飼養するという習慣があったということでございます。そのようなことにつきまして、鳥獣保護法の施行規則に基づいて、国内産のメジロあるいはホオジロ、この二種に限り、現在、許可を受けて捕獲し、飼養することを可能にしているということでございます。

○福山哲郎君 今、政府委員がおっしゃられたとおりで、メジロは日本を代表する野鳥の一種で古来から人々に親しまれているという経緯があると。しかし、近年、違法捕獲、それからペットショップ等での売買というのが非常にあちこちで数多く取り上げられています。実際には、先週、四月七日、私の地元の京都でも、京都府警が三市五か所で強制捜査を行って、違法飼養されていたメジロが押収をされています。
 今言われましたように、鳥獣保護法の愛玩飼養の規定があって、一人一羽の捕獲と飼養を原則として都道府県が許可できることになっているんですが、実際には、一羽だけではなくて何羽も何羽も飼っていたり、売買のために密猟をして家に飼養していたりという方が非常に多くなっていまして、この愛玩飼養、先ほど言われましたけれども、過去に、古来から親しまれてきているから必要だということなんですが、現実にこの愛玩飼養の規定というのは今どういう状況になっているんでしょうか。先ほど、ホオジロとメジロだけだというふうな話がありましたが、私の知るところによりますと、これはどんどんどんどん規制が強くなっている状況だと思うんですが、その辺の経緯をちょっとお知らせいただけますか。

○政府参考人(岩尾總一郎君) 大正八年に鳥獣保護法の施行された当時は、鳥獣、鳥、獣の全種を対象として都道府県知事の許可があれば捕獲して愛玩飼養するということが可能でございました。その後、戦後の昭和二十二年に密猟問題に対応するために飼養許可証制度というものが導入され、昭和二十五年には愛玩飼養の対象種をヒバリ、ウグイスなど七種に狭めてきたところでございます。
 その後においても段階的に対象となる鳥の種類を削減いたしまして、先ほど申し上げました、現在ではメジロ、ホオジロの二種に限って限定し、先生おっしゃったように数量も一世帯当たり一羽ということに限ってきたところでございます。

○福山哲郎君 ところが、何羽も何羽も持っていたり、輸入をしているメジロと一緒になって持っていたりとか、いろいろあるわけです。この愛玩飼養制度を悪用して、メジロの密猟や違法売買、密輸などいろんな問題が起きているわけですが、このメジロの違法捕獲、つまり、検挙されている、逮捕されている例や海外からの輸入については、環境省はどのように現状を把握しておられるのでしょうか。

○政府参考人(岩尾總一郎君) 違法捕獲につきましては主として都道府県が取締りを行っておりますので、鳥獣保護法に基づく違法捕獲の実態は都道府県の報告により把握しているという現状でございます。
 また、鳥獣の輸入に関しては、私ども公的機関、実績を把握しておりませんものですから、民間の業界団体が自主的な取組として独自に輸入証明書を発行しているということでございますので、かかる団体が自主的に鳥獣の種類別の輸入数などを環境省に対して通知してきている、それで把握しているというのが現状でございます。

○福山哲郎君 実態として今正直にお答えをいただいたので大変有り難いんですが、メジロの違法捕獲については都道府県の報告によると。これは、中身まで環境省としては把握をされていますか、どういった違法捕獲で逮捕の例だったかということに関しては、いかがでしょうか。

○政府参考人(岩尾總一郎君) 違法捕獲につきましては、狩猟免許取消し者の違反ということで、狩猟鳥獣以外を捕獲したという、メジロだけかどうかはちょっと私どもあれですが、私どもの把握している鳥獣関係の統計では、平成九年度が二百二件、平成十年度が百七十件、平成十一年度百六十二件、平成十二年度百五十五件という形で推移しております。
 それから、メジロ、ホオジロなどについての民間団体が発行している輸入証明書、海外からの輸入例でございますが、平成十一年は十一万三千羽、十一万三千七百二枚、証明書ですから枚数で申し上げます、平成十二年が十一万九百四十枚、平成十三年が四万七千二百七十六枚、平成十四年が一万三千七百三十八枚と、この三年間で約十分の一に激減しているということでございます。

○福山哲郎君 違法捕獲については、余り中身の実態分からないけれども大体百五十件から二百件逮捕、検挙の例があると。それから、海外からの輸入については、十一万三千羽ぐらいだったのが近年一万三千羽ぐらいに減っていると。これは本当に環境省の輸入規制の御努力のたまものだというふうに思っておるんですが、これ国別、例えば中国はメジロの輸出を禁止をしました。中国産は日本に入ってくるのは少なくなってきているんですけれども、最近は韓国やインドネシアからの輸入が増えているというふうに言われているんですね。特に韓国産の場合には、メジロが国産のメジロと非常に似ているので判別が極めて困難で、先ほど言った密猟や違法売買等について抜け穴になる可能性があるというふうに言われているんですが、こういう国別の輸入の数については環境省はデータを有しておられるかどうか、お答えをいただけますか。

○政府参考人(岩尾總一郎君) 申し訳ございません。環境省としてはそのようなデータがなくて、先ほど申しました民間の業界団体から発行されました輸入証明書のデータの提出を受けまして、それを基に分析して輸入概況を把握しているという現状でございます。

○福山哲郎君 先ほどの違法捕獲で、検挙の例も百五十件から二百件、中身はなかなか分かりにくいというお答えでしたし、今の国別の輸入の実態も現実にはなかなか把握しにくいということで、環境省としてもなかなか管理がしにくいと、人的に無理があるとか予算的に環境省足りないとかというのは私も重々承知の上なんですが、これ国別のデータというのは、別に今でなくてもいいんですが、出していただけることは可能でございますでしょうか。

○政府参考人(岩尾總一郎君) 直近のデータを業界団体から取り寄せたいというふうに思っております。
 それから、先ほど、外国の国別ということで申し上げますと、先生既に御承知かと思いますが、特に中国からの輸入が多かったということでございましたので、中国と平成十一年以来ずっと交渉を重ねてまいりまして、最終的には平成十四年の五月一日から中国の規制が始まったということでございますので、大量の輸入はもうなくなっているものというふうに承知しております。

○福山哲郎君 おっしゃったように、そこは本当に環境省さんの努力が実っていると思いますので、とても感謝をしているというか有り難いなと思っています。
 これは、国別のデータは後で結構ですので、できたら出していただければと思いますが、その違法捕獲の検挙の、逮捕の中身については、今後、環境省としてはもう少し中身をチェックするような方法というのは考えていただくことは可能なんでしょうか。

○政府参考人(岩尾總一郎君) この鳥獣保護法の業務、都道府県にお願いしておりますので、具体的には都道府県の職員あるいは鳥獣保護員などのパトロール、一般市民からの通報によって得た情報で違法捕獲個体がどのような状況になっているかというものを実施しているというふうに聞いております。
 このような取締りに際しまして、通常飼養が許可されている場合には鳥に足輪が付いているわけでございますが、そのような足輪が付いていない、それからその鳥が識別によって国産であると疑われる場合には、その飼養者から当該個体の入手方法などについて聴いて入手方法を明らかにしているというように、違法性の有無を確認しているというように聞いております。
 なお、メジロ等野鳥の識別に当たっては、私どもの方で作成いたしました野鳥の識別マニュアルがございますので、これを都道府県の方々に活用していただいております。また、野鳥識別の専門家の協力を得て、都道府県がかかる違法性を調べているというふうに承知しております。

○福山哲郎君 もう一つ別の観点から申し上げると、輸入の野鳥は少なくはなっていますが入ってきているんですが、生態系保護の点からも、それからメジロが野に、輸入野鳥が野に放たれて我が国の国産種の生息を脅かしたり、また交配することによって日本古来の種に対し何らかの影響が出たり、そういったいわゆる移入種ですね、移入種対策という観点からも、この現状については環境省としてはどのように御認識をされているのでしょうか。

○政府参考人(岩尾總一郎君) 先ほども申し上げましたが、かつて年間数万羽が中国から入ってきたということでございました。十四年の春以降、輸入がほとんどない状況でございますけれども、私ども、飼養を目的として輸入されてきているものだろうと思いますので、それを一般の山野に放すということは商売の上からもやらないんじゃないかと思っておりますが、ただ、おっしゃるように、外国産のメジロが導入され、万が一野に放たれたりした場合には生物多様性への影響ということが出てくるかと思います。
 現時点ではそのような事例をこちらとしても把握できていない状況でございますけれども、在来のメジロと交雑するなどの影響のおそれがあるのではないかという憂慮はしております。したがいまして、移入種対策として何らかの形で配慮していくということを考えております。
 このような移入種対策の措置の在り方については、現在、中央環境審議会で議論をお願いしております。今年の秋を目途に答申をいただきまして、これは鳥以外も含めてでございますが、その内容を踏まえて移入種対策に対する具体的な制度化について検討したいというように考えております。

○福山哲郎君 是非、この野鳥、メジロの輸入、移入種対策についても非常に何というか、注目をして対策を講じていただきたいと思いますし、できれば早急に対策が講じられるようなことを願っています。
 先ほどの愛玩飼養のことに一つ戻るんですが、これ今、一羽なら持てるんですね。一羽なら持てるけれども、現実には十羽とか二十羽で逮捕されている例がたくさん出ていると。ただ、これ例えば隣の家がメジロが一杯いると、十羽いると。十羽飼っていると、そこにいるんだというだけで実際には違法性というか、検挙はできるんでしょうか。

○政府参考人(岩尾總一郎君) 一羽という規定は、現行の国内におりますメジロに対しての飼養許可でございますので、それが外国からの輸入鳥かどうかという確認が取れないとなかなかその判断が難しいということで、先ほど言いました都道府県で、これが輸入種であるか、あるいは国産物であるかというような監視を続けて調査をしていただいているということでございます。

○福山哲郎君 その調査というのは、実際に例えば十羽持っている家があると疑いが掛かっている場合に、その十羽が国産であるか外国産であるかみたいなものを見分けてから逮捕なり捜査に入るということになるんでしょうか。

○政府参考人(岩尾總一郎君) 詳細な事例は承知しておりませんけれども、新聞報道など、環境省に送られてきたものを読んで推察いたしますと、先生おっしゃいますように、周辺の方々がちょっと大量に飼育しているのでないかというような通報があって、それを県の方が専門家と一緒に入っていくというのがきっかけだというふうに承知しております。
 したがいまして、例えば羽の色が違うとかそれから鳴き声が違うという一見して分かるものかどうかというかなり専門的なところもございますので、まず専門家の方々と一緒になって県で調査についても具体的な方法などを考えているのではないかというように承知しております。

○福山哲郎君 そういった十羽、二十羽持っている、所持をしているということは、現実は抜け道として先ほど御説明いただいた愛玩飼養ということの制度があるからではないかと。一羽オーケーだという話になっているから、例えば残り九羽は外国産だと言っていたり、残り九羽は交雑をして新たに生まれたんだというふうに逃げ道があったりというような話になっているんですが、現実に、先ほども言われたように、二〇〇〇年の四月に四種類の愛玩飼養対象だったものが二種類に縮小されていると。
 野に暮らす動物は野にという野生生物保護の流れからいって、愛玩飼養制度を維持する必要性を環境省は今どの程度考えておられるのか。お答えいただけますでしょうか、大臣。

○国務大臣(鈴木俊一君) この愛玩飼養制度でございますが、先ほど来自然環境局長が答えておりますとおり、これは、我が国におきましては古くから鳥を飼養してその鳴き声を楽しむというそういう習慣があったということで、大正八年の鳥獣保護法施行の当初にこういう飼養を認めてきたということであります。
 メジロにつきましても、何かそれぞれお互いに鳴かせて、鳴き合わせというようなことで、大変そういうようなことを親しんでおられる方がおられるということでございますが、先ほど来先生からも御指摘がございましたとおり、逐次これにつきましては規制というものがなされておりまして、平成十一年につきましては愛玩飼養可能な種を削減をするなど、規制をしてきたところでございます。
 その後推移を監視をしているところでありまして、愛玩飼養の取扱いについて検討を重ねていかなければならないと思うわけでありますが、先生の御指摘のとおり、第九次の鳥獣保護事業計画というのが平成十四年に策定をなされまして、失礼しました、第九次鳥獣保護計画の基準ですね、これが策定をされまして、野生鳥獣は本来自然のままに保護することが基本と認識されておりまして、愛玩飼養目的に捕獲するについては規制の強化に努めるということが必要だと考えているところであります。

○福山哲郎君 最後の第九次鳥獣保護計画基準の話は今からしようと思っていたんですが、大臣がもうお答えいただいたのでそれでいいんですが、具体的にいつどのような政策をこの第九次鳥獣保護事業計画に基づいて愛玩飼養の問題について検討を加えるかということの議論まではまだ進んでいないんでしょうか。

○政府参考人(岩尾總一郎君) 前回、鳥獣保護法を改正していただきまして、その中で鳥獣保護に関する基本指針という形で新しく鳥獣保護の方法についての基本的な指針を定めることとなりました。
 今までの基準と似ておりますけれども、法律自体の見直しに含めまして、今後どのような形でこの基本指針を定めていくかということについても検討してまいりたいというように考えております。

○福山哲郎君 それは余り具体的なスケジュールの設定はないんでしょうか。

○政府参考人(岩尾總一郎君) たしか附帯決議で三年をめどにと言われておりますので、それまでにはやらなきゃいけないのかなという印象を持っております。

○福山哲郎君 いけないのかなではなくて、やっていただきたいと思います。
 とにかく、密猟や捕獲等いろいろ問題も出てきておりますし、今ちょうど、先ほど言われている中央環境審議会でも審議をされておりますので、是非前向きに、大臣言われましたように具体的な施策について御検討を早急にいただければというふうに思いまして、今日は質問を終わらせていただきます。

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第156国会  参議院  環境委員会  2003年3月27日

公害健康被害の補償等に関する法律案

○福山哲郎君 おはようございます。民主党・新緑風会の福山でございます。公害健康被害の補償等に関する法律案について質問させていただきます。
 NOx・PM法の改正、それから昨年の判決の直後、それから今回と、私この三年ぐらいずっとこの関係の法律の審議に携わらせていただいているような気がしてしようがなくて、そのたびに同じようなことを言って、環境省さんしっかりしてくださいと申し上げているんですがなかなか前に進まないと。
 で、今日、三月二十七日なんですが、ちょうど一月前の二月の二十七日に東京の大気汚染の訴訟団の皆さんが国会に被害者救済の措置を取ってほしいということで要請に来られました。それぞれの皆さんがぜんそくや気管支炎でいつ発作が起こるか分からない状況の中で百五十名の患者の方がお集まりをいただいて要請に来られたと。それから一月後ということなんですが、大臣、副大臣にお伺いをしたいと思います。
 東京や大阪などの大都市ではまだ被害者の方たくさんいらっしゃいます。その多くは御案内のように未認定患者で、いつ発作に見舞われるか分からない状況の中で仕事にも就けない、家庭生活も本当にいつ発作が起こるんだろうとびくびくしながら毎日を過ごしておられる。さらには経済的にも非常に厳しい状況だと。で、医療費も本当に四月一日から三割負担になるという状況でございます。こういった方々から本当に切実な叫びとして救済措置を設けてほしいということが言われているわけですが、大臣、副大臣はこの現状についてどのように御認識をされているか、まずはお伺いをしたいと思います。

○国務大臣(鈴木俊一君) ぜんそく患者さんのお気持ち、それから置かれておられるお立場、状況、そういうものにつきましてはその厳しさ、大変さ、私も十分認識しているつもりでございます。
 昨年の十二月でございましたが、板橋区の大和橋交差点現地を見てまいりました。いつもの、毎年行われる調査でも常にワーストあるいは二番目というような状況の地区でございますが、その際にも、このたびの訴訟団の原告団の皆様方、代表の方とも短時間でありましたけれどもお目に掛からせていただきました。そのときのお話でも、今は体調が良くてこうして普通にしていられるけれども、発作が起こればこれは大変だし、そういう状況の中で仕事も働くこともままならないと、体もつらいし、また経済的にも大変だというようなお話を伺っておりまして、私といたしましてもそうしたぜんそく患者さんの厳しい、またつらいお立場というものは十分に認識をいたしているつもりであります。

○副大臣(弘友和夫君) 私も北九州の出身でございまして、先ほど来、高度成長期に大変な工場から出る降下ばいじんという、あるときは小学校が丸々移転せざるを得ないという、そういう中でぜんそくの患者の皆さんもたくさん出られまして、本当にそのお苦しみというのは胸の痛む思いでございまして、一日も早い御回復というものを祈念しているところでございまして、以上でございます。

○福山哲郎君 お言葉でそういうふうにいただくのは非常に有り難いんですが、現実には環境省の施策が遅れたり調査や科学的知見の積み重ねが遅れて非常に政策が遅れているという実態もあって、幾ら大臣や副大臣がお言葉で言っていただいても患者さんのお苦しみは消えないわけですね。そこはやっぱりある種の政治決断なり行動が伴わないと現実の被害は減らないという実態があるということはお含みをいただきたいというふうに思いますし、先ほど、高度経済成長が背景にあったというお話が小泉委員の方からも御質問のときにありました。それも僕は事実だと思います。否定はいたしません。
 しかし、現実に道路行政というのはいまだに継続をしているわけで、その道路行政の中で本来なら道路を造れば渋滞がなくなる、渋滞がなくなれば大気汚染は解消するんだという議論をずっと十年一日のごとし続けてきて事ここに至っているわけで、高度経済成長が背景としてもたらしたのではなくて、それはある時代まではそうだったかもしれないけれども、その後は、これは環境省に言ってもしようがないわけですが、それは建設省の道路行政と環境省の中でどういうふうに環境を調和するかということに対する視点が非常に足りなかったことが大きな要因だと私は思っていて、余り高度経済成長というような抽象的な理由にするのは非常に僕は問題だというふうに実は思っています。
 で、環境省がおかしいじゃないかというような話はもう僕はさんざんこの委員会でしてまいりました。ただ、建設的に何とか被害者救済についての制度を国がいつやっていただけるのかとか、そのために我々国会議員が自らの議員立法なりでも何かアイデアが出せないのかということを本当に真摯に取り組んでいかなければいけないというふうに思いますので、これまで私が質問させていただいたこととダブることも、重複することも出てくるかもしれませんが、そのことも含めて今日は幾つか質問させていただきます。
 まずは、先ほども質問ありました昨年の十月の二十九日の東京大気汚染公害訴訟の第一審判決で原告団七名について、自動車排出ガスと健康被害の因果関係が認められ、そのうち一人が未認定の方だったと、国は東京都に賠償命令、損害賠償を命じていると、ところが国は控訴したと。先ほども理由を大臣おっしゃっていただきましたが、なぜ控訴したのかもう一度お答えください。

○国務大臣(鈴木俊一君) 東京大気汚染公害訴訟第一次の判決におきましては、昼間、昼間の十二時間におきまして四万台以上の車の交通量、そして大型車の混入率も高いそういう路線、そして沿道五十メートルという、そういうところに住まわれておられます患者さんにつきまして因果関係を認めたと、こういうことでございますが、国としてはいまだにこの医学的、科学的なこうした排気ガスと健康被害の因果関係の知見が認められないと、こういう立場でございます。
 それともう一つは、これは国土交通省の方の立場でございますが、道路の設置及び管理についての責任を認めた点、この二点につきまして不服があったために昨年十一月八日に控訴をいたしたところであります。

○福山哲郎君 この話をすると、もういきなり振出しへ戻ってしまうんですが、医学的な科学的な知見が足りないから控訴をしたという話があります。
 実は後の質問にこれを言おうと思ったんですが、今言っておいた方がいいかなと思うので、言うだけ言っておきます。
 その話は、もう御案内のように、衆議院でも出ていますが、十五年前からずっと出ているわけです。
 ここに過去の附帯決議が全部あるんですが、平成十年も、科学的知見がいまだ十分ではないから、「必要に応じ、被害救済の方途を検討すること。」という文言が参議院、衆議院の附帯決議であります。これ平成十年です。平成五年にも同じ文言があります。さらには、昭和六十三年にも全く同じ文言があって、「科学的知見が十分でない現状にかんがみ、調査研究を早急に推進するとともに、」「必要に応じ、被害者認定の要件を明確にするなど、被害救済の方途を検討すること。」。昭和六十二年にも、「調査研究を積極的に推進するとともに、その結果に基づいて必要に応じ被害者認定の要件を明確にするなど、被害救済の方途を検討すること。」。もうこれ何回も議論出ているんですけれども、附帯決議に同じ文言で今の科学的知見がないということをもう十五年前からすべて書かれているわけです。
 この期に及んで、裁判で五回負けて、そして医学的な十分な知見がありませんから控訴しましたと。これはやっぱり不作為責任を問われても仕方ないんじゃないかと思うんですけれども、大臣、いかがですか。

○国務大臣(鈴木俊一君) 患者さんの置かれている状況、それから私も原告団の方とお会いしてそのお話をされまして、やはり大変悩ましく思いますのは、やはり国として制度を作るときには、科学的な因果関係を明確にするということは、これはやはり必要であると思うのであります。
 私も、どうしてこんなにこの調査に時間が掛かっているのか、どうしてもっと早くできないのかということは、環境大臣に就任をしてこの問題についてブリーフを受けたときに真っ先に申し上げたところでございます。
 その中で、私なりに理解をいたしましたのは、やはりこういった調査が世界的にも先例のない調査で、調査設計からしなければならなかった、そして、かつまたいろいろな調査をするに当たっての機器、何かバッジみたいのを付けて生活していただいて、そこで暴露量を測るというような機器の開発等も自らしなければならなかった。こういうようなことで、そういう技術的なところで大変時間が掛かってしまったということでございました。
 したがいまして、環境省が何か怠慢を決め込んでいたとかいうような問題ではないという点は御理解をいただきたいと思いますし、仮に、予算を今の何倍か付ければもうすぐにでも結論が出るというものであれば、もちろんそういうようなこともいたすわけでありますが、そうした様々な調査設計上の問題とか、そういうようなところに技術的に時間が掛かって今日に至っている。
 しかし、これは誠に、何と申しますか、言い訳にしかならない問題でありまして、一日も早い結論が出るように最大限努力をしてまいりたいと思っております。

○福山哲郎君 患者さんにとっては毎日毎日が勝負なんですね。本当に、あした発作が起こるかもしれない。十五年間、技術が分からない、方策が分からないから掛かりましたと。それは、今はそう言えるかもしれないけれども、その間、十五年、患者さんがどんな思いでいたかと。本当に僕は環境省の不作為責任が問われているんだというふうに思います。
 じゃ、この法律に書かれています一条なんですが、この公健法というのは、公害被害者への補償制度のための法律で、民事責任を踏まえて、公害による健康被害者を迅速かつ公正に保護し、迅速かつです、公正に保護し、健康の確保を図ることを目的としています。
 東京大気汚染の公害訴訟を始め、過去五回の裁判では、連続して国の民事の責任が問われています。民事の責任が認められていますが、これらの判決は民事責任の救済迅速化を目指すこの法律の要件には満たさないんですか。いいですか、これには民事的な救済を早くしようとするためにこの法律ができたと書いてあるんです。裁判では五回、国の民事責任が問われているわけです。
 ということは、早々に救済の措置を取らなきゃいけないということになりませんか、この法律で言えば。この第一条に書いてありますよね。大臣、いかがですか。

○政府参考人(南川秀樹君) この民事上の訴訟でございますけれども、原告と被告の間で個別の案件につきましてそれぞれの主張、立証を行いまして判決を得るものでございます。したがいまして、直ちに制度創設ということに結び付けることは困難だと考えております。
 また、過去の五度の判決につきましては、いずれも国としては控訴いたしております。そのうち、東京訴訟以外の四つの訴訟につきましては、結果的に和解に至っておりますけれども、その中で、国としての因果関係に関する内容については認めていない、含まれていないということでございます。
 いずれにしましても、大臣から先ほど答弁いたしましたように、その方途を検討するにつきまして、まずぜんそくと大気汚染の因果関係を裏付ける知見を集め、そして、その上でそれを裏付ける知見が得られれば必要に応じて方途を検討していきたいと考えております。

○福山哲郎君 いや、その話はもう平行線なんですけれども、少なくとも第一条には、「被害に係る損害を填補するための補償並びに被害者の福祉に必要な事業及び大気の汚染の影響による健康被害を予防するために必要な事業を行う」というのがこの法律の第一条に書かれているわけですよ。現実に、裁判では民事上の責任が国は五回問われているわけです。ということは、どう考えても、この公害健康被害の補償に関する法律の要件を僕は形上は、形式上は満たしているというふうに思うわけですね。幾ら控訴をしていても、現実には国は求められているわけですから。
 だけれども、この話を幾らしても多分平行線だと思いますから、法律の趣旨にのっとっていないのではないかということをまず申し上げたいと思います。
 この公健法に実はもう一つ一条に重要なことが書いてあります。この第一種指定地域というのは、著しい大気汚染を生じ、その影響により慢性気管支炎などの疾病が多発している地域と定められています。
 この第一種指定地域が解除になったわけですが、旧第一種指定地域内の現在の汚染状況を見ると、環境省がいつも主張されていますように、硫黄酸化物は大きく減っています。しかし、窒素酸化物は指定解除後も横ばいかやや増加傾向にあります。浮遊粒子物質についても明確な減少傾向は見られていません、解除後ですね。
 ということは、この局地的な汚染というのは、硫黄酸化物については減っているかもしれないけれども、他の問題については深刻であるというふうに私は思っているんですが、公健法上の著しい大気汚染を生じているというのは一体どの程度を指すのかお答えください。

○政府参考人(南川秀樹君) 四十九年に議論しました、審議会で議論しました際には、著しい大気汚染につきましては、有症率が自然有症率の二倍から三倍、時にはそれ以上になる程度の汚染の程度を指すと言われております。そして、二酸化硫黄、SOxを、SO2を例に取りますと、年平均値で〇・〇五ppm以上だということでなっております。この年平均値は日平均値の約半分相当でございますので、倍すれば〇・一、硫黄酸化物の環境基準が日平均値〇・〇四でございますので、環境基準の二・五倍という数字になるわけでございます。

○福山哲郎君 いや、私の質問に答えていただいていないんですが、硫黄酸化物は減少していることは私は認めているわけです。しかし、窒素酸化物と浮遊粒子物質については指定解除後も横ばいどころかやや増えている傾向があると。その状況は、局地的な汚染でこの法律の定める著しい大気の汚染には該当しないのかとお伺いをしているんです。

○政府参考人(南川秀樹君) SO2ほどにはSPMもNO2もこういった形の結論が出ておりません。したがいまして、今の認識としましては、先ほど言いましたような数値、倍率が一つの目安になると考えております。

○福山哲郎君 つまり、これ解除したことの合理性がどんどんどんどんなくなってきているんじゃないですか。
 硫黄酸化物に関しては減っているかもしれないけれども、現実にこの窒素酸化物や浮遊粒子物質についての大気汚染というのは顕著に出てきていて、それが健康被害を及ぼすということが判決にも出てきていると。ということは、この指定解除していること自身、それから著しい大気の汚染を生じているというのはどの程度を指すのかということの答えがないと、これ指定解除自身の合理性を失いつつあるというふうに私は思うんですが、いかがでしょうか。

○政府参考人(南川秀樹君) 先ほど述べましたように、SOx、SO2で見ますと、環境基準の二・五倍というレベルでございます。少なくとも、窒素酸化物にしてもSPMにしても、そういった環境基準の二倍を超えるようなレベルには現状はないというふうに考えておりまして、その面的な広がりを持って病気が発生するという状況ではないと考えております。

○福山哲郎君 そうはいっても、環境基準の達成できなかったことが延々とこれも二十年以上続いているという実態があるわけです。
 確かに、単年度を見れば二倍じゃないのかもしれないけれども、環境基準の未達成が二十年以上続いている状況の中で、それは恒常的な大気汚染はずうっと面的に広がると考えるのが普通なんじゃないでしょうか。

○政府参考人(南川秀樹君) 面的な広がりにつきましては、環境保健サーベイランスでその大気汚染のレベルと地域に住んでおられる小児の健康影響を比較しておりますけれども、そこでは明確な関係が出ておりません。したがって、現状で、面的にSOxなりSPMの汚染をとらえて、それが原因で集団としてのぜんそくが発生しているということは言えないと思います。

○福山哲郎君 これもいつまでたっても平行なので、もう一つ行きますね。
 先ほど小泉委員からもありましたが、東京都は、大気汚染に係る健康障害者に対する医療費の助成に関する条例というのを七二年、一九七二年に制定しているわけです。この条例によると、推定によって救済されると。要は、疾病が多発している地域に関して、東京では、ここは大気汚染があるのではないかということによって被認定患者が増えているわけです。
 推定されるだけでは認定、東京では推定されるだけで患者認定をしているわけですが、国ではそれはなぜ駄目なのか、お答えいただけますか。

○政府参考人(南川秀樹君) 東京都におきましては、御指摘のとおり、条例に基づきまして、大気汚染の影響を受けると推定をされる疾病として、医療費の自己負担分を助成するということでございます。これにつきましては、都心のみならず、伊豆諸島を含む都内全域に居住する十八歳未満の方を対象としております。
 ただし、これ自身は、大気汚染、実際には大気汚染のみならず様々な影響を受けた方が含まれると考えておりますし、東京都内での環境保健サーベイランスの結果を見ましても、現在の広がりを持った大気汚染の状況下では大気汚染がぜんそくなどの主たる原因とは考えられないというふうに考えております。
 また、仮に同じような考え方で同様の制度を設けるということになりますと、全国すべての患者さん、ぜんそく患者さんについて、大気汚染の程度にかかわらず医療費助成の対象というふうになりますが、これは少なくとも公健法が意図しております費用負担を汚染原因者に求めるというロジックとは合わないというふうに考えております。

○福山哲郎君 要は、自分たちの都合のいいときには公健法のロジックに合わなくて、そうじゃないときにはそこは違うんだという話になるわけですが、大臣や副大臣にちょっとお伺いしたいんですね、先ほどの話も含めて。
 要は、民事責任を認めようというのがこの公健法の趣旨なんですけれども、裁判負けているにもかかわらず、全くそこは認めない。著しい大気汚染については、硫黄酸化物は減っているけれども、現実には窒素酸化物、浮遊粒子物質については減っていない。だから、そこは著しく汚染をされているわけです。
 それから、東京都は逆に言うと推定で認定をしてくれているけれども、国はしてくれないと。これは患者さんの立場からいうと、一体どこによりどころを求めるんだと。じゃ、科学的知見があれば何とかしてくれるのかと思ったら、科学的知見は十五年たっても、いや、まだだまだだと言われると。これは一体どうしたらいいと大臣はお考えですか。

○国務大臣(鈴木俊一君) やはり国として新たな救済措置を創設するということになりますと、これは一つの基本で、繰り返しになりますけれども、大気汚染とぜんそくの疾病との医学的、科学的な因果関係がございませんと、汚染者にその負担をしていただいて、仕組みを作る等においても、それが仕組みとしてできない。やはりその科学的知見を求めることが大切であると思っております。
 本当にこのぜんそくで苦しむ方等がおられて、それと大気汚染との関係というのは、これがなかなか私は難しい面もあると思うんです。例えば、一例を挙げますと、私の出身地、岩手県でございますが、岩手県内では、各測定がございますけれども、どこの地点を見ましても岩手県では環境基準をオーバーしている地区はございません。そういう意味では大気がきれいだという岩手県でございますが、しかし、平成十一年の厚生省の調査によりますと、ぜんそく患者さんの受診率は東京都よりも高い受診率だと、こういうことでございます。極めて卑近な例でございますが、こうした大気汚染とぜんそくとの因果関係、これの因果関係を科学的に明らかにするということがやはり基本ではないかと考えております。

○福山哲郎君 その受診率の話もよく出てくるんですが、例えば病院に行く回数が、病院に行きなと、町のお医者さんに行って診てもらいなというようなことが風習というか風土として例えば強い地域とか、サラリーマンが多くてなかなか病院には行きにくくて、会社休まなきゃ行けないような状況で、本当に病院に行くのも極度に、なかなか行けないような地域とか、それは地域性によって受診率も異なると思うので、一概に受診率が高いからというような議論というのは僕は成り立たないと思うんですが、まあ次に行きます。
 じゃ、ちょっと建設的に行きたいと思います。
 じゃ、科学的な知見を今調査されていると思いますが、この第一種指定地域の、法律上ですね、復活があるとすれば、解除されましたね、解除されたわけですが、第一種指定地域に復活しようと、ここを第一種指定地域にしましょうということがあれば、一体どういうような要件がそろえば復活が可能になるんですか。

○政府参考人(南川秀樹君) ぴったりしたお答えがしにくいんですけれども、現在の公健制度を前提としますと、今の大気汚染の状況下におきまして、一定の広がりを持った、例えば何区とかそういったことで地域を指定することは考えられません。局地的な大気汚染による健康影響調査を急ぎたいと考えますけれども、そこで因果関係が認められた場合には必要に応じ方途について検討することになります。
 ただ、それにつきましては当然ながら調査結果の内容を十分踏まえてのものになるわけでございまして、それ自身は現在の被害者の公健制度というものを前提にして考えるということではないと考えておりまして、基本的には制度設計を一からスタートするということになると考えています。

○福山哲郎君 今、随分はっきりお答えをいただいたので、それはそれで一つ、次のステップに上がるためには必要なのかもしれませんけれども、もう一度確認します。
 ということは、第一種指定地域への復活はないと、今の状況ではそれは考えられないということは、この公害健康被害の補償等に関する法律の現状の枠組みの中では、今の未認定の患者さんを救済する措置というのは取れないということですね。

○政府参考人(南川秀樹君) 現在の大気汚染レベルを考えますと、取れないと考えます。あくまで、今の制度といいますのは、旧指定地域の制度でございますけれども、東京であれば十九区に住んでおる、大阪市はどこでもいいということで、そういった四十一の地域に一定期間以上住んでおる、あるいは通勤しておる、そして病気にかかるということであれば、大気汚染と健康被害の間に因果関係ありと割り切って補償給付を行っております。
 したがって、現在の汚染レベルが特段に悪くならない限り、現在の形での再指定ということはあり得ないと考えております。

○福山哲郎君 そうすると、本当に具体的に新たな制度の設計図をかいていただかなければいけないということを前提に、次にちょっと質問を進めたいというふうに思います。
 これもさっきから言っている話なんですが、指定地域解除後から十五年間、結局、いろんな附帯決議等も含めて、環境省は何をやってきたのかという話が出てきます。この十五年間、いまだに科学的に知見がはっきりしないんですが、何を具体的にやってこられたのか、お答えをいただけますでしょうか。

○政府参考人(南川秀樹君) 十五年が長いという印象を受けられたことについては私も非常に反論しにくいのでございますが、ただ、その間、いろんな形での努力は継続しております。
 具体的には、地域集団と、地域の人口集団の健康状態と大気汚染の関係を三歳児を対象として観察する環境保健サーベイランス調査、それから、幹線道路沿道の局地的な汚染の健康影響に関する調査を進めております。
 前者につきましては、従来から三歳児を対象にサーベイランス調査をしてまいりました。これの中では、面としての汚染と大気汚染の間には明確な因果関係はございません。
 具体的には、たばこなんかですと、結構、家でたばこを吸う方がいると子供のぜんそくが出やすいというようなことがございましたけれども、大気汚染についてはそういった答えは出ておりません。ただし、これにつきましても、小児ぜんそくの患者の七割が三歳までに発症する、ただし、六歳まで見れば九割が発症するという報告もございますので、六歳児への拡大も考えたいと考えております。
 それから、後者の主要沿道の局地汚染の健康影響評価でございますけれども、窒素酸化物、それから普通のSPM、更に細かな二・五のPM二・五につきましても、個人暴露量を把握するための機器の開発、方式の開発を行ってまいりまして、それについてはほぼでき上がっておるところでございます。
 また、ぜんそくなどの疾患については、今度は、調査を行うに際しては、その健康影響というか健康指標の客観的な把握も必要でございますが、これにつきましては、従来は自己記入式の質問票によって把握をしておりましたが、呼気、吐く息のNOの分析などによりまして、より客観的な健康影響指標の導入ができると考えております。これまでにその指標の確立を急いでまいったところでございます。

○福山哲郎君 過去においてやってきていただいたこととこれからやられること、両方ともお答えをいただいたんですが。
 そうしたら、同様に、先ほどやはり質問ありましたが、千葉大学の例の調査があります。幹線道路から、都市部の非沿道地域のところの幹線道路五十メートル以内のところでございますが、そこの調査についてですが、ここでは因果関係が認められているわけですが、この因果関係を認められている千葉大の調査について、先ほどもお答えいただきましたけれども、もう一度、どのようにお考えになっているのか、お答えください。

○政府参考人(西尾哲茂君) 千葉大調査に対する考えでございますが、これは疫学手法に様々な工夫をして実施されたということで、重要な研究と考えております。
 しかしながら、この調査の内容を見てみますと、例えば一例を挙げますと、ここでは都市の沿道と非沿道を比べて分析しております。確かに、窒素酸化物については都市の沿道の方が濃度が高くて非沿道の方が低いということで比べられるわけですが、粒子状物質については逆になっているような地点もたくさんございまして、都市の沿道の方が、この具体の調査の地点で考えますと、非沿道よりもたまたま濃度が低かったようなものが混在している、そういったような問題点、これは濃度や暴露との関係についての評価ということで問題点がございます。そのほか何点か、こういう疫学上の問題点がございます。
 ただ、なかなか疫学調査は難しゅうございます。問題点だけを申しているのではどうかという御議論もございます。その場合には、やはり他の各種の疫学調査と一致しているのだろうか、いろいろ問題点はありながらも全体として一致した傾向があるんだろうか、こういうことにもなるわけでございますが、例えば、同様の追跡調査であります杉並調査では関係は見られない、そういうようなことでなかなか多くの疫学調査で一致した状況になっているということも言えないということでございますので、やはりこのような手法での調査によりまして、この一つの調査によりまして因果関係を確定するということにつきましては、こうした疫学調査の限界があるのではないかというふうに考えております。

○福山哲郎君 これまで環境省さんは疫学調査をやられたことはございますか。

○政府参考人(西尾哲茂君) 環境省の大気汚染と呼吸器疾患に関します調査でございますけれども、それにつきましては、公健法ができたころ以来、いろいろな形で調査を繰り返してきております。各地でも調査が行われておると思います。
 ただ、しかしながら、これらの調査につきましては、先ほどから議論になっています他の大気汚染物質、窒素酸化物とPM等粒子状物質、その他いろいろな大気汚染物質との関係をうまく整理すること、あるいは非常に、地域集団で比べておりますので、局地的なところをどうやって評価をするのかなどにつきまして、いろいろな因子が交絡しておりまして、それぞれの調査の間では必ずしも一致した結果が得られていないというふうに考えております。

○福山哲郎君 疫学調査はしてこられたというふうに考えていいんですね。それとも、疫学調査としては今まではやられていないけれども、これまでの、先ほど言われたサーベイランス調査とか環境影響調査の中で判断として一致しないということなのか。疫学調査自身は行われているんでしょうか。

○政府参考人(西尾哲茂君) 従来型の意味で大気汚染とそれから健康への影響を地域集団あるいは大きな地域で比較するという疫学調査は重ねてきておるわけでございます。
 ただ、しかしながら、局地に非常にピンポイントでその影響を見ることができる疫学調査というものにつきましては、残念ながらまだ現時点で手法は開発されていないわけでございますので、そういうこの問題のピンポイントに対して的確に反応する設計の疫学調査というのは今までなし得ていないのだと思っております。

○福山哲郎君 南川部長にお伺いしたいんですが、先ほど、いろんな手法を開発してこれから調査をしていくというような先の話もされましたが、その中には新たな意味での疫学的な調査というのは含まれるのでしょうか。

○政府参考人(南川秀樹君) 環境省といたしましては、先ほども答弁しましたとおり、個人暴露量の把握あるいは客観的な健康影響評価指標の導入を急いでおりまして、そして、その後、それの準備を急ぎまして、十七年度から幹線道路沿道の局地大気汚染による健康影響に関する調査研究を推進したいと考えておりますし、また、先ほどございました千葉大の調査でございますが、私どもとして不十分な点があるということは申しますが、決して不適切だというふうには考えておりませんし、また、その千葉大調査の中心となりました研究者にもこの私どもの準備の中で重要な役割を果たしていただいております。そういう意味で、是非しっかりした調査をしていきたいと考えております。

○福山哲郎君 しっかりした調査はしていただきたいと思うんですが、簡単に言うと、個人暴露量の把握とかということに関して言うと、まだやられていなくて、今後ともやっていきましょうという話で、千葉大の調査が納得してできていないんだったら、開発等の話はあるのかもしれませんが、現実に千葉大がやっているわけですから、なぜ十五年間やってこなかったかということに、また元へ戻るわけですね、現実の話で言うと。
 じゃ、さっさと疫学調査、千葉大の方と研究してやっている、出ているんだから、事前からやっておけばいいのにそれをやらないで、また千葉大の方を加えてやりましょうみたいな話というのは、自分のところではまだやっていない、しかし他人がやった調査はそこは不十分だと言うというのは、やっぱりもう何か納得できないんだけれどもな、私は。そうはいってももうあれですから、もう水掛け論になります。
 ただ、その千葉大の調査に加え、欧米の研究蓄積を指摘した日弁連の意見書というのも出ているはずです。二〇〇二年の八月二十三日、日弁連から自動車排ガスによる健康被害の救済に関する意見書では、欧米での研究について、NO2や大気中粒子濃度の上昇に伴い、ぜんそくなどによる死亡や入院、治療が増加するとの有意な関連を見いだした研究が多数蓄積されているというふうにこの日弁連の意見書には述べられているわけですが、こうした欧米の研究成果については環境省はどのように認識し、また評価をし、またフォローをしているのか、お聞かせいただけますか。

○政府参考人(西尾哲茂君) 御指摘の欧米の研究につきましては、一つは、アドベンティスト・ヘルス・スタディーということで、一般大気中の粒子状物質とぜんそくの発症などの長期影響を観察した追跡研究がございます。それから、そのほかに幾つかのものがございますが、死亡などの短期影響との関係を観察した一連の研究がございました。
 ここに挙げられているものにつきましては、この前の東京の裁判の判決でも議論として取り上げられておるわけでございますけれども、ただ、これらの研究は大気汚染と健康影響を考える上で重要な研究ではありますが、残念ながら、これは一般大気中の粒子状物質とそれから様々な健康影響との関連を対象としておるものでございまして、自動車、道路沿道といったような局地的な影響につきましてこれを当てはめることは困難であると思っております。判決でも同様の考え方から千葉大調査というようなものを取り上げて、こうした調査につきましては千葉大調査と同じような証拠として取り上げられていないというふうに理解しております。

○福山哲郎君 じゃ、もう一つお伺いします。
 国立環境研究所がマウスなどを使用して行った実験結果として、NO2やディーゼル微粒子などを含んだディーゼル排気とアレルゲンを複合して吸入することでぜんそくなどが悪化することが判明をし、発表されています。大都市圏ではNOxやSPMの約半分はディーゼル車から排出されていますけれども、こうした実験結果、これ、国立環境研究所ですからね、環境省はどのように認識をしているのか、お答えください。

○政府参考人(西尾哲茂君) 御指摘の国立環境研究所の動物実験は、DEP、ディーゼル排気粒子をマウスに気管内投与して健康影響を調べたものであります。こうした実験というのは、国内外で様々な動物実験がなされておりまして、健康影響を認めるような知見、あるいは発現が認められなかった知見、いろいろになっていると思っております。
 それで、こうした動物実験の結果を人に当てはめるという場合の前提条件といたしましては、動物実験とそれから人の健康影響との機序に基本的に共通的なものがあるというような場合は、この動物実験の結果をその人の健康影響に当てはめることはできるのではないかということが言われておるわけでございますけれども、私どものディーゼル排気微粒子リスク評価検討会の専門家にも議論をしていただきましたけれども、これはこの動物実験の結果を人に直接外挿するということにつきましては、その機序等につきましての共通性が確認されていないので困難であるというふうに評価された次第でございます。

○福山哲郎君 大臣、副大臣、聞いてくださいね。
 千葉大の調査はこうこうこうだから駄目。それから、日弁連から出てくる欧米の調査は一般的なところで局地的なものだから駄目。国立環境研究所、我が国の国立の機関が出しているものは今の話でいうと、また今の理由で駄目。環境省はやっているかというと、これからやりますと。これはやっぱり自分に都合の悪いものは排除して、自分に、自分のところは何も不作為でやらなくて十五年間放置していて、また元へ戻るんですけれども、これはやっぱり納得できないでしょう、大臣。ちょっとお答えいただけます。
 もう大臣は、そこがもう厳しいのはお分かりいただいているし、もっと早くやっておけよと言われて今おしりをたたいていただいていることは僕は理解をしているつもりですが、やっぱりちょっと納得できないですよねと僕は思うんですけれども、いかがですか。

○国務大臣(鈴木俊一君) 様々な実験が行われてそれなりの一つの結論が出ておるということでありますが、その実験の目的、それからその調査設計の仕方、そういうものがこの因果関係を究明する上でぴたっと当てはまるかどうかと。こういう問題になりますと、私もちょっと科学者じゃございませんので、率直に言って、そう言われればそれに対してそうじゃないんだと、こう言うだけのものはございません。
 ただ、政治的な意味でお答えを申し上げますと、私どもは何か、これは駄目だあれは駄目だと言うて、ただただ時間延ばしをしていて何か新たな救済措置を作るのを阻んでいるというようなつもりはもちろん毛頭ないわけでありまして、そうした救済措置を作るにしても、まずそうした大気とぜんそくとの因果関係というものを科学的に明らかにしなければならない。それが明らかになった段階におきましては、新たな救済措置の方途についてもこれは検討をするんだと、こういうことでございまして、科学者じゃございませんので、一つ一つのこの研究成果について私がこれが採用できるじゃないかとかできないとかいう論評はできませんが、とにかくそうした十七年度から本格的な調査を環境省としてもいたしますが、こうしたものを一日も早い結果が出るように全力で努力をしてまいりたいと思っております。

○福山哲郎君 大臣の御決意は大変有り難く承りますが、それでもまた十七年度からなんですよね。今年、平成十五年ですよね。それでもまだ先なんですよね。副大臣、どうですか、今の話伺われて。

○副大臣(弘友和夫君) 基本的に大臣の答えと同じでございますけれども、突然のお尋ねで間違ったらちょっと訂正していただきたいんです。
 先ほど来、本当に悩ましいといえば、先ほど当時の公害の問題とは違うんだというお話がございました。私は、その当時は自然有症率は他の地域と二、三割、二、三倍も違うとかいろいろな現象がはっきり出ているのでそういう判断ができたと思うんですけれども、今非常にいろいろ判断がしにくい部分があると。それで、いろいろな調査結果が出ている、それを全部排除しているんじゃなくて、それが全部じゃないという段階なんですね。
 ですから、それぞれをやはり参考にしながら、やはり調査研究を進めていかなければならないというふうに思って、十七年度は、確かに苦労しておられる皆さんからいえば二年も先じゃないかというあれがあるかもしれませんけれども、いろいろな準備等もあると思いますんで、とにかくできるだけ早くそういう調査結果が出るように努力してまいりたいと思っております。

○福山哲郎君 いいですか。十五年放置して、また二年先なんですよね。これは、済みません、これはもう政治決断だというふうに思うんですが、環境省がそれぞれのスタッフは頑張っていただいていると思いますけれども、十七年度からだというのをできるだけ早くしろと、早く進めろというふうにそこもまげて大臣から御指示いただけるようには御指導いただけませんでしょうか。

○国務大臣(鈴木俊一君) 私もこの点につきましては、とにかく早くできないかということで督励を、督促をしているわけでございます。
 ただ、申し上げましたとおり、そうした技術的なこの問題に遭遇しての時間が掛かっているということでございまして、何か予算を、それにかかわる予算を今の倍とか三倍にすれば一気に進むとか、そういうことであればこれはもう環境省としても優先的に予算を使ってやるということでございますが、必ずしも予算を付ければ先に進むというような状況じゃないというのが本当に率直に言って悩ましいところでございます。しかし、でき得る限り確実なこの調査結果が出るように最大限努力をしてまいりたいと思っております。

○福山哲郎君 そうすると、例えば平成十七年度から始めますと言われる調査というのは、現実には先ほども御紹介いただきましたけれども、どのような内容になって、その結論は一体いつまでに出るぐらいのめどが今環境省では立っているんでしょうか。

○政府参考人(南川秀樹君) 御指摘の調査につきましては、道路沿道において自動車排ガス由来の大気汚染物質に個人がどのように暴露されているかを測定するとともに、ぜんそくなどの症状の健康調査をより的確に把握いたしまして、両者に相関関係が見られるかどうか、また見られる場合はどういう相関関係かということを十分に調査したいというものでございます。この疫学調査を適切に実施するための試行調査を現在進めておりまして、それを踏まえまして設計を行い、十七年度から本格調査を実施いたします。
 ただ、この調査につきましては、最終的なまとめにつきましては今後の知見の集積の次第でございまして、現時点でそのめどを明言することは非常に困難でございます。もちろん、できるだけ急ぎたいと考えておりますが、いつまとまって発表できる、結果が示せるかということについてはなかなか今めどは明言できないというのが現実でございます。

○福山哲郎君 大臣、平成十七年度、二年後に始まって、科学的知見が集まって、いつか分からないと。科学的知見が集まってそれから制度設計に入るわけですよね、救済措置が、もしそれで因果関係が認められたら。それはあと何年掛かるんですかね。大臣、どうですか、今の答弁。

○国務大臣(鈴木俊一君) 繰り返しになってしまって本当に申し訳ないような気がいたすんですが、やはり国として新たな救済措置を作る。その救済措置をどのような形で仕組んでいくかということになりますと、やはりそこには大気汚染、そして大気汚染をしている汚染者を特定できて、そして一方において、それによる健康被害者がこれだけおられるというような、そういうような因果関係をやはりつかまなければならないということが、これは国の制度として仕組む以上必要不可欠なことであると、そういうふうに思っております。
 そういう中で、調査がなかなか進まないということでありますが、繰り返しになりまして恐縮でございますけれども、とにかくその調査結果を、しかもしっかりとした科学的な根拠のあるものを得るために最善を尽くしていかなければならないと思っております。

○福山哲郎君 もうあと幾つか、実はNOx・PM関係でも質問しようと思ったんですけれども、ずっと平行線なので、少しお話しして、ちょっと別の質問に移りますが。
 実は、国は昨年六月にNOx・PM法を改正をしたんですね。これは、NOx・PM法というのをここ持ってきているんですけれども、「二酸化窒素及び浮遊粒子状物質による大気の汚染に係る環境基準の確保を図り、もって国民の健康を保護するとともに生活環境を保全することを目的とする。」というのが第一条にあるんです。この法律を作るということは、このNOx・PMが国民の健康に被害があるからこうやって法律を作るわけだと僕は思っているわけですよ。
 ましてや、東京都は、NOx・PMが大気中に排出されているが、その排出源の構成はどうなっているのかというと、東京都の資料によると、NOxの六七%、それからPMの八二・二%が自動車からの排出だというふうに出ているわけです。
 さらに、国はこういう法律を作って、国民の健康を守ろうという法律も作っているわけです。ということは、法律を作って規制をしようということは、国自身がこのNOx・PMは健康被害があるということを認めているから法律を作って減らそうとしているわけで、今因果関係が分からない、因果関係が分からないと言って、言っていること自身が、NOx・PM法で排ガス規制を進める一方で、今、この一時間ずっと話をしてきました、因果関係はない、因果関係は明らかでないと言っているわけです。私は大変矛盾だというふうに思うんですが、どうですか。

○国務大臣(鈴木俊一君) 環境省としてと申しますか、国として、環境省としてでございますけれども、大気汚染とそれからぜんそく等の疾病の間に因果関係はないんだと言っているんではなくて、それの知見がないと、分からないということを申し上げているところでございます。
 そこで、こうした患者さんの救済の努力と、継続した努力とまた別に、やはり大都市を中心としたこの大気汚染の改善というのは、これは一方においてこれは環境省に求められていることであると、そういうふうに思っております。したがいまして、こうしたNOx・PM法等の着実な施行を行いまして、そして、大都市部におけるこの大気汚染のより改善した状況に持っていくという、そういう努力はこれはこれで必要なんだと、そういうふうに思っております。

○福山哲郎君 それも環境基準を延々と達成できていないわけですから、達成できるように是非頑張っていただきたいというふうに思います。
 今までの議論の中でずっとありましたように、従来の考え方では科学的な知見が得られないと救済はできないという、そういうふうにずっと今言われているんだと思うんですね。でも、その間に実は患者さんとか被害者は、もうある意味で言うとほったらかしになっているわけです。こうした問題については、少しやっぱり考え方とかパラダイムをチェンジをしていかなきゃいけないんじゃないかなと思うわけですね。
 やっぱり日本には化学物質を含めてもう何千何万種類の化学物質があって、例えば土壌の汚染による地下水の汚染も含めて、大気の汚染も含めて、いろんなところで、実は科学的にはまだどの程度人間に被害があるのか分からないけれども、現実に我々の生活の中で使用されているいろんな物質というのはもう多く存在しているわけです。そのときに一々一々科学的知見がないからできないんだ、科学的知見がないからできないんだと言っていたら、全部後追いで、被害ばっかり出ていくと。
 やっぱりこの考え方をいい加減パラダイムチェンジしないと、いつまでたっても患者さんは出てくるけれども役所の行政は後追い、後追い、後追いで、被害を被っている患者さんや被害者は何だこれはということで苦しんでいかなければいけないと。
 私は、確かに補償制度というのはお金が要ることですから、無尽蔵にお金を払えばいいとか無制限にお金を払えばいいとかいうことは僕は決して思っていません。しかし、知見の蓄積がまだたとえ十分でなかったとしても、これだけいろんな因果関係を表すであろうということが積み重なっているような事例に対してはある種の補償制度をスタートさせて、同時に、疫学的調査の充実などで因果関係の究明を急ぐという手法もやっぱりこれからの時代は僕は必要なんじゃないかなと思うわけです。
 なぜかというと、その状態で因果関係が多少まだすべて明らかになっていないかもしれないけれども、いろんな知見が出てきている状況でスタートさせれば、例えばその補償の負担をする方も、じゃ、もっと早く因果関係を究明しないとこの補償は続くんだという、逆のインセンティブも働くわけです。もっともっとその技術を開発しなければいけないとか、それから、今の現状を放置してはいけないから今の汚染物質を何とか除去しようという、そういうインセンティブも働くわけで、今のように、いつまでたっても科学的知見がなければできません、できませんみたいな話になると、インセンティブは生まれないし、いつになってできるのか分からないし、少しこういう被害者の早期救済と原因の早期解明を両立させるような制度設計を、これ、環境省、この問題に限らずですけれども、これから先、こういういろんな部分で化学物質による被害が出てくる可能性というのはあるので、こういう考え方を取り入れていただきたいというふうに前向きにちょっと考えていただきたいんですが、大臣、どうでしょうか。

○国務大臣(鈴木俊一君) まず、環境省として基本に取り組むべきことは、ただいま化学物質等の問題でも汚染ができたらどうするんだということでありますけれども、やはり未然防止に努めていく、そのための対策をしっかりいたしまして、そして、国民の方々の健康被害、そういうものを起こさなくするということがまず大事であると思います。
 そういう面につきましては、この大気汚染、先ほど申し上げましたとおり、それはそれとして、大気汚染の改善のためのNOx・PM法の円滑な施行を努めるというようなこと、あるいは化学物質につきましては化審法の適用をするとか、そういうことで未然防止、実際にそうした被害が起こらないような未然防止に全力を尽くすということがまず大切であると思っております。
 その上で、ここは一つの割り切りで、こうした新たな救済策をいろいろな調査研究と並行してやっていくというようなふうに発想を変えろと、こういうことでございます。
 しかし、国という立場におきまして、こうした新たな救済制度を創設するに当たりましては、やはり環境大臣といたしましては、そうした両者間におきます因果関係の特定、こういうことがやはり先立って明確にされなければならないのではないかと、そのように思っております。

○福山哲郎君 いや、だから、私は今この問題に限らずと申し上げているんです、これから先のことを考えたときに。
 そうしたら、今日本で使われている化学物質、全部、すべて因果関係で健康被害がないということを証明してからじゃないと使用できないようにしないと、合わないですよ、合理性なくなりますよ。何か使った、被害が出た、因果関係を明らかにしなきゃいけないと言って、時間が掛かって例えば被害者が出るんだとしたら、元々その化学物質を使う前に、その化学物質は健康被害がないんだとか、被害が起こらないんだとか、生態系を破壊しないんだとか証明しないとそれが使えないという状況を作らないと、今の話はいつまでたっても被害者は出たときに解決ができないという話になるんですが、そこは、大臣、いかがですか。

○政府参考人(南川秀樹君) 化学物質につきましては、二つ大きな制度がございます。一つが、大臣から先ほど答弁いたしました化学物質審査規制法でございます。この中では、毎年、三百ほどございますが、新規に我が国で使用したい、あるいは輸入したいと、そういう化学物質につきまして対象に、人の健康、あるいは、できましたら近い将来生態系影響ということもチェックして、そういった影響が、被害が出ないようなもののみを使用を許していくという形ができつつございます。是非それを強化していきたいと考えております。
 もう一つは、PRTR法でございます。これは規制法ではございませんが、三百を超える人あるいは生態系に影響を及ぼすおそれがある化学物質をとらえまして、非常に幅広くとらえております。そして、それにつきまして、各事業場からどの程度どの物質が大気、水、土壌に出ておるかということを把握いたしまして、それを開示するということでございます。
 そういう意味で、化学物質につきましては、極力、より事前に問題を察知して、幅広くお知らせし、また事業者などにも必要な努力を求めていくという体制を作りつつあるところでございます。

○福山哲郎君 今、部長がおっしゃっていただいたように、確かにPRTRとか化審法とかあるんですけれども、PRTRは逆に言うと公表されるだけなんですね。
 例えば、今の例で言うと、ぜんそくなどの原因となるホルムアルデヒドの排出量などは、東京ではPRTRによってのデータによるとずば抜けて高いんです。いいですか。これはイコール東京の大気の汚染が進んでいることを表しているわけですけれども、それに対して、現実問題としては今何にもできないわけです。
 それは、多いというのは分かったと。大気の汚染は、ホルムアルデヒド、ぜんそくの原因になるものは一杯出ていると、東京はずば抜けて高いと。でも、それに対して何にも規制はできないし、それがひょっとしたら被害者の方の原因なのかもしれないけれども、それに対してもどうしようもないという状況だから、いつまでたっても物が解決しないから、さっき申し上げたように多少そこは別の意味のインセンティブ、さっき申し上げた因果関係の解明のインセンティブとか、じゃこういう物質はなるべく使わないようにしようというインセンティブを働くためにも、そういう予防的な救済制度みたいなことが必要なんじゃないかなというふうに申し上げているわけですが、なかなか平行線なんですが、大臣、一言、いかがでしょうか。

○国務大臣(鈴木俊一君) 大気汚染の問題とぜんそくの問題に限らず、また先生も化学物質のお話をされましたが、いずれにしましても、公害によって健康被害が受けたということになりますと、その間のやはり関係というものが基本にならざるを得ないのではないかと思います。それは、汚染原因者がだれかという特定にもつながるわけでございますし、そうした新たな救済措置の仕組みの制度設計にもそういうものが必要になるわけでございますので、先生から、本当に一つのこれはお考えだと思いますが、私としてもそこが大変悩ましいところでありまして、やはりそうした因果関係の解明というものが基本にならざるを得ないと、そのように考えております。

○福山哲郎君 そうなれば、逆に言うと、因果関係の解明のための仕組み、早くスタートできる仕組みをどう進めるのかというのは、やっぱり環境省としては僕は、それは今回の問題だけではなく、いろんな問題に対する僕は喫緊の課題だというふうに思いますし、附帯決議にあるものを十五年間も、具体的なものがないとは言いませんが、こういう状況というのは私は納得できないんですが、次、行きます。
 公健法では、今の公健法の枠組みでは、被害者の救済ができないということを部長が先ほど明言をされました。じゃ、なぜ今のでできないのかとか今の制度はどうなっているのかをちょっと知っておかないと、例えば政治家同士で新たな救済制度を考えようといって御相談をさせていただくときにも分からないので、少し技術的な話になりますが、今の公健法の制度設計について幾つか材料をいただきたいというふうに思います。
 補償対象となるための認定というのは、例えば公健法が制定された後は、初年度一万九千二百八十一人が認定患者として補償の対象者になりましたが、認定を行う際のプロセスはどういうふうにやられたのでしょうか。

○政府参考人(南川秀樹君) 認定を受けようとする方につきましては、住所を証明するための住民票の写し、あるいは主治医の診断書をもちまして、県などの指定します、県市区の指定します医療機関における検診を受けていただきます。その資料を地方自治体の認定審査会に提出をいたしまして、そこでお医者さんの集まりでございますけれども、そこで審査をいただくということになります。その審査会の意見を受けまして、県知事さんあるいは政令市長さんなどが認定の処分を行うということでございまして、認定されますと、今度は国が監督します協会の方から認定患者さんへの補償給付がまた自治体を通じて行われるということになっております。

○福山哲郎君 公健法において、じゃ認定されるんですよね、認定審査会で。補償を受けることができた患者の総数は申請者に対してどのぐらい認定者が出て、何%ぐらいだったか、お答えください。

○政府参考人(南川秀樹君) これは、大気汚染関係の旧指定地域について申しますと、全体で、累積でございます、四十九年から六十二年度まででございますが、全体で申請者が十六万四千五十二名、うち認定されました方が十五万九千二百六十九名でございまして、九七・一%が認定をされたということでございます。

○福山哲郎君 ほとんど、九七・一%ということだとほとんど認定、申請者が認定をされたということだと思いますが、そうすると認定審査会というのは何を審査されていたのか、認定審査会はどんな役割を担っていたのか。また、これ各県の認定審査会にこの申請書は行くみたいですが、都道府県はどういう役割をしたのか、お答えをいただけますか。

○政府参考人(南川秀樹君) この公健法におきましては、都道府県などに公害被害の認定審査会を置いております。ここでは、具体的に届出がございました検診結果などが正しいかどうかということを中心に認定の作業をしておりますし、また補償給付が行われた場合にはそれが定期的に正しく行われているかということのチェックをいただくことになっております。
 それから、都道府県知事におきましては、その認定審査会の審査結果を受けまして認定業務を行う、あるいは、その認定された患者さんに対しまして国が監督します公健協会から給付いたします補償費等の患者さんへの給付を行うということでございます。

○福山哲郎君 都道府県、今おっしゃった都道府県の財政負担はどのぐらいでした。

○政府参考人(南川秀樹君) まず、全体としまして補償の中身でございますが、医療費関係の費用でございます。それから、二つ目が障害の補償費、働けないことなどによる補償でございます。それから、遺族関係、遺族の方への補償費。また、通院費などの療養手当、葬祭料でございますが、こういった費用はすべて公害健康被害補償予防協会で集めまして、自治体に具体的な個々人への給付をお願いしております。
 したがいまして、それについての健康被害の補償についての自治体の負担はございません。
 ただ、自治体は、先ほど申しましたような審査会の運営などの事務費用が要るわけでございまして、これにつきましては国が二分の一、自治体が二分の一ということで負担をいただいているわけでございます。

○福山哲郎君 そうすると、補償に関しては都道府県は全く財政的負担はないということですよね。

○政府参考人(南川秀樹君) ございません。

○福山哲郎君 でも、現実には都道府県からの要請とかも含めて、道路行政なり環境影響の問題とかは都道府県も十分責任があるわけですよね、何かすごい変な質問の仕方ですが、ですよね。これ何で都道府県の財政負担はないように設計されたんですか。

○政府参考人(南川秀樹君) 当時の考え方でございますが、これ、その以前に、旧救済法というのがございました。その延長で今のような形になっておると承知しておりますけれども、その当時は医療費の自己負担分のみを補助するということでございまして、それについて自治体の方で認定作業をいただいて、そこに経済界などから集めた金を自己負担分を流すということででき上がっておりまして、その延長線上で事務を整理されたというふうに理解しております。

○福山哲郎君 もう一つお伺いします。
 先ほど小泉委員からもあったと思いますが、費用負担の固定発生源と移動発生源の話があって、固定発生源八、移動発生源二ということになっているんですが、この八対二というのは、先ほどもありましたが、現在でも妥当だというふうにお考えでしょうか。

○政府参考人(南川秀樹君) 先ほど小泉議員にお答えしましたのは、八対二が変える必要ないと答えましたが、その意味としましては、その既存の患者さんに対する支払を求める際の、支払を行う際のその費用負担として、その以前の、患者さんが発生した以前の大気汚染に係る寄与度ということで変更する必要がないと申したわけでございます。
 現在では、全くの試算でございますけれども、その固定発生源と移動発生源はNOx、SOxを見ただけでも大きく変化をいたしておりまして、当時よりも自動車のウエートが高くなっていることは事実でございます。

○福山哲郎君 そうすると、費用負担の割合は、かなり、時代の変化によっては妥当性が少し揺らいでいるかもしれないという御認識でよろしいんでしょうか。

○政府参考人(南川秀樹君) 今、発症、もしそういう患者さんが発症すれば、当然ながら比率は変わってくると思います。

○福山哲郎君 もう一つ、今、現状、被害者の方は、未認定の方がやっぱり一番困っているのは医療費なんですが、これ認定されると一人当たりどの程度の療養費というか、を受け取っておられたのか、お教えください。

○政府参考人(南川秀樹君) 現在は、十四年三月末の認定者の数が私の手元にある最新の数字でございますが、全体で五万七千百三十八人の方がおられまして、障害補償費などの年間支給費がトータルで七百十億一千四百万円でございます。これを全く割り算いたしますと、認定者一人当たりの平均受給額は百二十四万ということになります。そして、その内訳でございますが、これも平均でございますが、約四割が医療費、これは全額でございますが医療費、それから約四割が補償費、あとは通院等の療養手当が約一割、その余が残りということになっております。

○福山哲郎君 そうすると、一人当たりの医療費というのは月幾らぐらいになるんでしょうね。

○政府参考人(南川秀樹君) ぜんそく患者さんにつきましては、公害健康被害法に基づきます医療費については少し通常の医療と点数が変わっておりますが、公害患者、認定患者お一人当たりの十三年度の平均的な治療費としましては三万六千円が掛かっておるところでございます。

○福山哲郎君 何で医療費は、今言われた、診療報酬の面で高めに設定されているんですか。今言われた、ちょっと違うとおっしゃったのは。

○政府参考人(南川秀樹君) 公害指定疾病に関する診療報酬につきましては、健康保険で手当てされない公害診療に特化した特掲診療、あるいは健康保険よりも手厚く技術料を評価する趣旨で一・二倍から一・五倍の単価が設定されております。
 これは、過去の、四十九年のいろいろ書類等を見ますと、医療に関して診療時間が、一般患者に比べて時間が長く掛かる、あるいは家族、本人に対して家庭における療養あるいは日常生活についての指導を要することが多い、また、特殊な検査や治療を要することが多いというふうな事情もございまして高くなっておることがございます。
 ただし、私ども、例えばその特掲診療の項目を減らすなど適正化を図ってきておるところでございます。

○福山哲郎君 なるほど、少し高めに設定されていることですか。
 いや、何でこういう細かいことをお伺いしたかというと、民主党としては新たな救済制度の制度設計を少しでも形として作っていきたいというふうに今思っておりまして、我々の党だけでは全然力不足なんですが、やはりそういう制度設計を作る中で環境省さんとも議論を詰めながら、科学的知見が出てくる前にでも何らかの形の議論を深めたいというふうに思っておりまして、そうでないと、一九九六年以降、原告団、五十七人の未認定の患者さんが既にもう死亡されています。
 先ほどの冒頭の話から言うように、因果関係を理由に、もう裁判も長期化するわ、救済制度も長期化するわという話になると、本当に患者さんがしんどい状況が続きますので、何とか、今日ここにいらっしゃる先生方のお力もいただいて、救済制度についての一つの設計図みたいなものを考えていきたいというふうに思っておりまして、とにかく、今日、平行線が多かったんですが、環境省の更に格段の努力とスピードアップをお願いをいたしまして、ちょっと早いですが、私の質問を終わります。
 どうもありがとうございました。

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第156国会  参議院  環境委員会  2003年3月26日

イラク戦争による環境被害、地球温暖化について

○福山哲郎君 おはようございます。民主党・新緑風会の福山でございます。ツルネン委員に引き続きまして質問させていただきます。
 今日は時間が余りありませんので、もう幾つか概略的なことをお伺いをしたいと思います。
 まず一つは、二十日からアメリカのイラクに対する米英軍の攻撃が始まりました。大変、戦争の映像を見るというのは嫌なものでして、ニュースを見ながらとても沈痛な気持ちで毎日過ごしています。
 我が民主党は、今回の攻撃に対しては正当性がないと、イラクのフセイン大統領が非常に国連決議の違反をし続けたことについては我々も認めておりますが、だからこそ国連の査察を継続をして、大量破壊兵器、ガス兵器、化学兵器の廃棄につなげるんだということを今主張させていただいています。
 各国を見ると、いろんな閣僚や政治家がそれぞれの意見をこの戦争について述べています。イギリスも、もう御案内のとおり、院内総務が辞任をされたり閣僚が辞任をされたりしておりますが、日本では余りそういう声が聞かれません。大変恐縮ではございますが、大臣、副大臣、政務官、それぞれこの米英軍によるイラク攻撃について御見解を賜れればと思います。

○国務大臣(鈴木俊一君) 今回のイラクの問題でございますが、平和裏のうちに解決ができればと、これはもうみんなが望んでいたことであると思います。しかしながら、今日のような事態に突入したというのは大変残念であると思っております。しかし、これはやはり国際社会が一致してイラクに求めた大量破壊兵器の廃棄、こういうものに対してイラクが十数年間にわたって積極的にこたえてこなかったと。今回、こういう事態に至ったやはり原因は、一にイラクの態度にあったと思います。
 先生の御指摘のとおり、最終的に国際社会というものは意見が分かれたわけでありますが、やはり日本とヨーロッパの国々、これは国防上の体制の問題あるいは置かれておる環境、それぞれ違うと思っております。日本の国は北東アジアにあって現実的な脅威というものもありますし、また専守防衛という形で、日米の安全保障条約の中で国の安全を守っているという、そういう状況にあるわけでありまして、そういうことを考えますと、やはりこうした外交問題、こういう大きな外交判断というのは、やはりぎりぎりのところになりますと、冷徹に国益をどうやって確保するかということではないかと思います。
 そういう意味において、国民の生命、安全、国の独立を守るというこの国益、国家利益を守るためには、日米同盟というものを、これを基本に考えて判断しなければならなかったのではないかと、そういうふうに考えているところであります。

○副大臣(弘友和夫君) 私も戦争というのは本当に残酷な悲惨なものであるということで、心の底から思っておりますけれども、そういう意味で、このたびのイラク攻撃というのは、国際社会が平和的解決という切実な願いであったにもかかわらず、武力行使という最後の手段に至らざるを得なかったということ、大変に残念で悲しむべきことであるというふうに思っております。
 ただ、今、大臣のお答えのように、この十二年間にわたって国連決議を履行してこなかった、十七本にもわたる決議をことごとく無視といいますか、そうしてきたやはりイラク側に非があるというふうに考えておりまして、ここに至ったからには、一日も早く戦争状態が終結されて、今後のイラクの復興等に日本も本当に貢献をしていかなければならないんではないかなというふうに思っております。

○大臣政務官(望月義夫君) 国際紛争というものがもうもちろん国際的な協調の下で平和的解決をする、そういうことが最も望ましいことであると、私も基本的にはそのように思っております。
 しかしながら、総理の公式見解でもございますように、もう皆さん御存じのように、いろんな諸問題ございます。それから、ただいま大臣からお話しのように、我が国の国益あるいは平和を維持するためにはどうするかという問題、基本的な問題の中に日米安保条約、あるいはまたいろんな、北朝鮮の脅威の問題とかいろんなものがございます。そういう様々なことを踏まえての今回の苦渋の決断に、また、総理と同じ意見を私も表明させていただきたいと、このように思っております。
 しかしながら、戦争というものは本当に環境破壊というものが大きいものでございますので、一日も早くこの戦争が終結をしていただき、私たちはイラクが一日も早く再建され、復興されることを望んでおります。

○福山哲郎君 ここは外交安保委員会ではありませんから、私もあえて反論する気というか、ここで更に質問を続ける気はありませんが、今、大臣、副大臣、政務官のお言葉をいただいて、ある意味、政府のお立場ですからしようがないと思いますが、こういう戦時下でどんどんどんどん政治家が自分の言葉を失っていくことについて非常に私は危惧をします。
 政府のお立場として政府の言われている見解を言われることはそれは仕方のないことだというふうに思いますけれども、やはりこういったときこそ政治家が一人一人言葉を持たないと、逆に言うと非常に僕は民主主義の危機だというふうに思いますし、私は正直申し上げて、十二年間、国連決議違反をし続けてきたからこそ査察の継続をして、徐々に徐々にではありますが、粘り強い外交努力の中で大量破壊兵器と化学兵器の廃棄を進めることがより合理性が高いと思っておりましたし、今も思っておりますし、この時期にそれを打ち切って攻撃をすることの根拠については、実は政府は余り説明をされていません。
 なぜこの時期なのかということに対しては、違反をしてきたからイラクが悪いからだという議論はありますが、なぜ、この時期に打ち切ることの合理的な説明はなされていないと思いますし、あえてこの時期に査察を打ち切って攻撃をすることによって、逆に、あるかないか疑惑の持たれている大量破壊兵器や化学兵器が地下に潜り固定化をし、世界に拡散する危険性もあるというふうに思っておりまして、その危険性があるからこそ実は国連の安保理で新しい決議が採択をされなかったのではないかと私は思っておりまして、そこは見解の違いですから、これ以上申し上げませんし、北朝鮮の問題もいろいろありますが、やっぱり中国、ロシアとの関係というのがやっぱり北朝鮮との交渉では非常に重要だと思いますし、やはり国連の枠組みで北朝鮮の問題も私は進めていく方が、私自身は我が国の国益にかなうと思っておりますし、非常に残念に思っています。
 ただ、戦争というのは、米英の兵士が死亡していくことはもちろん、イラクの市民の皆さんが死亡していくことはもちろん、死者が出ることももちろんです。さらには、環境破壊を最大限に起こす最も大きなものが戦争だと思います。現に、湾岸戦争時は油田破壊による火災で一日当たり約一万七千トンのSOxが排出され、その濃度は東京の三十倍から四十倍になったというような例もあります。健康被害や環境汚染は中東全域に広がる可能性もあります。
 人間の安全保障という考え方としても、環境破壊というのは戦争によって起こされること、これ見過ごすことはできないと私は思っておりますし、現実にこのイラク攻撃を受けた後、国連環境計画、UNEPがメソポタミア大湿地の危機的な状況を警告をしています。戦争を終わらせ、人間と野生生物のために、湿地の再生を含めた戦後の復興を進めるべきとの声明を現実にUNEPがもう早速発表をしています。
 こういった状況について、環境大臣はどのような御認識でいらっしゃいますでしょうか。

○国務大臣(鈴木俊一君) 戦争による被害というのは人命の被害もありますし、世界経済に与える被害も多いわけでありますが、先生がおっしゃるとおりに、環境に対する被害というものも大変戦争によって大きく受けると、そういうふうに思っております。自然環境の破壊ということになれば、これはもう大規模な洪水もあると思いますし、また火山の爆発等でもありますし、更にフェーン現象や落雷による大規模な森林火災、こういうものもあると思いますが、いずれもそういったものは自然の中での出来事であるわけでありますが、戦争というものは人為的なものでありまして、そういう人が起こす中で環境に影響を与える最大なものの一つが戦争であるということは先生と認識を一つにしているところでございます。
 それから、UNEPがメソポタミア大湿地の危機的状況について声明を出したということを私も承知をしております。お聞きするところによりますと、一九七〇年代には八千九百二十六平方キロメートルあった面積が二〇〇〇年には九〇%が喪失をされたということで、二〇〇二年段階では七百五十九平方キロメートルまでに減少したということでございます。原因は流域のダム開発、それからかんがい事業が乾燥化の大きな要因であると、こういうふうに思っておりますが、戦争が今行われている地域でございますから状況の把握というものはそれはできないわけでありますが、しかし、このメソポタミア大湿地が今回の戦争によって被害を受けないように、そのように期待をしているところであります。

○福山哲郎君 日本の環境省としては何らかの形で情報を集めたり、今後、私、復興の話を今するのは余り私は何ともあれなんですが、戦後もし、戦争が早く一日も早く終わればいいと思いますが、終わった後、こういうことに対して日本の環境省として何か行動を起こすようなことは大臣としては今何かお考えございますか。

○国務大臣(鈴木俊一君) 現状どうなっているかということは、今戦争が始まっておりますので、その中でなかなか難しいことであると思います。
 戦後どういうことができるかということは検討しなければならないと思いますが、例えば、ここがラムサール条約の登録湿地みたいになっておりますと、それはそういう国際的な枠組みがございますので、その中での対応も可能であろうかと思います。
 お聞きするところによりますと、この大湿地はそうした国際的な枠組みの対象になっていないということでありまして、例えば日本でもラムサール条約の指定湿地はございますが、そうでないところで重要湿地と環境省で指定するところもあります。そういうところに例えば外国の方から来てその枠組みがない中で何か働き掛けをし、その湿地回復をする手だてがあるのかどうか、そういうことについてはちょっと検討をしなければならないと思っております。

○福山哲郎君 もう一つ、大変将来的なことで言うと余り良くないことが発表されました。
 気象庁が十九日に、大気中に含まれる二酸化炭素の濃度、これは戦争とは関係ありませんが、二〇〇一年の世界平均で三七一ppmと過去最大に達し、更に上昇し続けていると発表したと。CO2濃度は地球温暖化の最大の原因とされると。二〇〇一年の平均濃度は、十八世紀後半の産業革命以前、二八〇ppmの値より約三三%も上昇しており、上昇のペースは依然高いというふうに発表されまして、国内についても三地点の昨年の濃度観測結果をまとめた結果、年平均濃度で二から二・四ppm増加をしており、増加が続いているということが気象庁から発表されました。
 京都議定書を我が国もようやく批准をして、ところがまだ発効まではおぼつかないという状況の中でCO2の濃度は更に上昇をしていると、国内もそういう状況だということでございますが、環境大臣、この件についても御見解をいただけますでしょうか。

○国務大臣(鈴木俊一君) 三月十九日の気象庁の報告につきまして、発表につきまして、今先生が述べられた内容が述べられておりまして、大変これは深刻な状況になっているということを改めて感じました。
 CO2の排出がこのように大幅に増えつつあるということでございますので、これによる一番の懸念というのは地球温暖化の問題でございまして、もう先生に申し上げるまでもなしに、IPCCで、第三次報告におきましていろいろな影響というものがあるということも言われているわけであります。正に人類の存続基盤そのものにかかわる問題でございますので、国内対策はもとより地球的な取組を更に強力に進めなければならないと、そういうふうに認識を新たにしているところであります。
 先般、水フォーラムがございまして、その際に、水フォーラムに参加をされました数か国の環境大臣、副大臣と会談をする機会がございました。私どもといたしましては、国内対策はこれはしっかりやっていくけれども、併せて世界的規模の取組、京都議定書にとっては一日も早い発効と、それからグローバルな取組、これが、二つが原則ということでございますので、そういうことについても意見交換をしたところであります。早期発効に向けてはロシアに対する働き掛けをそれぞれの国で強化していこうということもお話をしましたし、グローバルな取組ということでなかなかいい答えは出ないんでありますけれども、アメリカの国務次官とお会いした際には、日本国内ではやはりアメリカに参加を求める声が強いんだということも伝えたところでありまして、国内対策とこうした国際的取組を更に強化をしていかなければいけないと、そういうふうに感じております。

○福山哲郎君 是非、ロシアに働き掛けを強めていただきたいと思います。
 もう時間がありませんが、お手元にちょっとお配りをいたしました、ペーパーを配らせていただきました。
 実は、温暖化の被害がいろんなところで出だしているという報告が入っているんですが、実は大陸部でありますモンゴルで実は相当温暖化の被害が出ていると。実は、南の島が海に沈むというような話がよく出ていますが、一番早く温暖化の被害が出ているのはモンゴルではないかということが少しニュースで入ってきておりまして、実は去年、私、モンゴルに八月行ってまいりました。今年の三月にも実はモンゴルに行ってまいりました。
 これ簡単な資料なんですが、真ん中を見ていただきますと、月平均気温の七月、ウランバートルとマンダルゴビというところの三十度以上の日数が、わずか八年間で激増しています。私が去年八月にモンゴルに行ったときに、六年前には、私が行ったその日、八月の中旬だったんですが、六年前には初雪を記録をしているんですが、私が行ったその日は三十六度でした。わずか六年間で、初雪から三十六度まで気候が変動しています。川は枯渇をして、年間二百本から三百本の川がなくなっていると。現実に、ゴビ砂漠の真ん中にヘリで行きまして、日本でいうと琵琶湖ぐらいの湖が六年間で実は跡形もなく消えておりまして、元、湖のところに私もヘリで降りまして、大変な景色を見てまいりました。実際に、非常に温暖化の直接の影響が起きていると。
 モンゴルというのは、御案内のように経済発展がまだまだですから、放牧、いわゆる遊牧民が中心ですから、実は二酸化炭素の排出量はほとんどないんですね。つまり、二酸化炭素の発生でいえば加害者では全くないわけです。ところが、被害をある意味でいうと集中的に世界でもいち早く受けている国でございまして、家畜の被害は、実はこの三年間で概略ですが約一千万頭ということで、現実に非常に温暖化の影響を受けていると思います。
 もう時間がないので、この件についてはまた環境省から建設的な意見交換を今後委員会等を通じてさせていただきたいと思いますが、是非、環境大臣、こういった国がすぐ近くにあって、この状況を把握することが将来の地球環境破壊についての非常に大きな科学的な知見になるとともに、これに対する救済なり日本の環境省として何ができるかみたいなことについて、すぐにとは、お答えできないでしょうが、少しまた御理解というか御認識をいただきたいというふうにお願いをして、一言だけ何かお答えをいただければと思います。

○国務大臣(鈴木俊一君) 近年、今まで考えられなかったような大規模な洪水が起こったり、それから大型のハリケーンが出たりという、そういうような現象としての、時々の現象としての、何か地球が、気候がおかしくなっているということは承知をしておりましたが、改めてこの資料をいただきまして、わずか六年の間にこれだけ三十度を超える日数も変わったり、またそうした琵琶湖に匹敵する湖がなくなっているという環境変化の大きさを改めて認識をさせていただきました。
 いずれ、そういう世界の気候の変化ということに常に敏感になりながら地球環境問題に取り組んでまいりたいと思っております。

○福山哲郎君 終わります。

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第156国会  参議院  予算委員会  2003年3月11日

政治とお金の問題について


○福山哲郎君 民主党・新緑風会の福山哲郎でございます。
 今日は政治と金の集中審議でございます。私は、昨年の三月七日、やはりこの参議院の予算委員会で鈴木宗男議員の追及をしました。今年その三月七日に坂井衆議院議員がまた逮捕をされることに至りました。そして、長崎県連の事件、そして今また大島農水大臣の疑惑が出てきています。
 政治の金の問題、本当に重要なんですけれども、折から日本は株価は八千円を割れ、国連の安保理の決議はどうなるのかという大変緊迫をしている状況の中で、なぜまたこの国会で政治と金が出てくるのか。国民も私どもももううんざりでございます。
 それぞれの個別の議員の責任はもちろんなんですが、総理、就任以来二年弱でございますが、あなたは一体この問題について一体何をされたでしょうか。すべて議員の判断だと、そして逮捕されれば司法の判断だと。この二年弱の間に政治と金に関して一体どういった変化が自民党の中にありましたでしょうか。鈴木宗男議員や加藤紘一議員や井上参議院議長の問題が起こっている最中に、逆に言うと自民党の議員はたかりをいろんな業者にしていたわけです。全く体質は変わっていない。この状況を小泉総理、小泉総理が自民党の総裁としても何もしていないという批判が国民の中には上がっています。
 なぜこの時期に政治と金の質疑をしなければいけないのか、そしてあなたの責任をどう考えているのか。まず総理、お答えいただきたいと思います。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 野党の立場で私を批判するのはこれは結構でありますけれども、私は今までの事件で法的改正は進んでいると思いますよ。あっせん利得処罰法、官製談合防止法、そして企業献金についても一定の制約を設けようと。
 私は、この問題は法律を破るということが問題なんですから。そうでしょう、議員、与野党問わず。秘書の問題につきましても議員の問題にしても、法律をありながら、法律がありながら、法律を尊重すべき立場でありながら、法律を守らなきゃいけないのに守っていないところにおいてこういう事件が出ている。まず、法律を守れと言いたい、議員も秘書も。幾ら法律作っても法律守らなかったらこれはどうにもなりませんよ。
 政治にかかわりません、社会でもいろんな法律があります。法律作っても守る人がいないから犯罪が起きて逮捕されるんでしょう。法律が完全だと思っていません。法律ができたならば、議員、特に法律を守らなきゃいかぬと。これについて、私は、政治資金規正法にしても公選法にしても、これは違反すれば逮捕されるんだなという実態が出ているわけですよ。もう十分に、議員もこの法律というものを守らなきゃならないということを改めて徹底しなきゃいかぬと思っております。

○福山哲郎君 法律を守らなければいけないなんというのは当たり前の話でございます。それでも事件が続いていることが問題でございますから、今の総理の答弁は全く答弁になっていないと思います。
 しかし、こんな話をしているより具体的な話をした方がいいと思いますので、問題となっています大島農水大臣のことについてお話をさせていただきます。
 少し見ていただきますが、大島農水大臣、たくさんの疑惑があるので今日全部は紹介はできません。(図表掲示)
 しかし、今、坂井衆議院議員が実は秘書がお金が入ってきたことを虚偽の記載だということで逮捕をされました。そして、その秘書の塩野谷秘書も虚偽の記載だということで逮捕されました。
 今、大島農水大臣は、衆議院においても六百万円受け取ったという疑惑が出ています。それは秘書が受け取ったわけです。その疑惑が出てきて、それが虚偽の記載だったのではないかという疑惑が出てきています。
 そういう状況についてこれからお伺いをしたいというふうに思いますが、私、大島農水大臣の二〇〇〇年、この六百万の授受が行われた年の二〇〇〇年の後援会、政治団体の政治収支報告書を見ました。特に、その六百万を受け取ったと言われる藤田秘書が代表を務める二〇〇〇年度の大島理森後援会、経済社会開発研究会、それぞれこの二つの政治団体は研修会を三回、二回開催し、二百万円ずつ計一千万円計上しています。(図表掲示)
 これ見ていただきますと分かりますように、この二つの政治団体は研修会を三回、二回開催して二百万円ずつ一千万円を計上していますが、大臣、この研修会の中身、時間、参加人数、参加者の構成はどういったものだったかお答えください。

○国務大臣(大島理森君) 会計責任者は、御存じのとおり、辞めた元秘書でございます。私自身、宮内ももう辞めておりますから、事務所スタッフに確認をいたしましたところ、御指摘の平成十二年五月十日、十五日、二十三日に大島理森後援会として、五月十日、十五日に経済社会開発研究会で、それぞれを研修会を行っているということでございました。これは日程表を確認して、そういうことでございました。
 開催場所は、五月十日、十五日は自由民主党本部でございます。そして、二十三日には全日空ホテルで一回懇親パーティーを行ったとのことでございました。
 出席者の数は、スタッフに調べさせたところ、どういうメンバーであったかという明確な個人名が入ったものは残っておりません。私自身の記憶も、一生懸命思い出させておりますが、数十名、一回数十名であったと思います。
 主に私が、ほとんど私がそのときの国会情勢についての報告やあるいはその他政策課題について講演をさせていただいたと。
 これがお答えでございます。

○福山哲郎君 申し訳ありません。私は、正式に三回と二回の正式な参加人数、時間をお願いします。もう一度、数十名ではなくて、数でお答えください。

○国務大臣(大島理森君) 何名参加したかというのは記録に残っておりません。たしか、リバティでございましたので、党本部でございますから、数十名の記憶だけしか今ございませんし、人数が何名かというのは、大変申し訳ありませんが、正確には、記録にないものでございますから、それは大変申し訳ありませんが、お答えすることはできません。
 それから時間でございますが、たしか午後四時半ごろからではなかったか、そして、二回行われたんじゃなかったかなと、日程表を見るとそうなっているそうでございます。

○福山哲郎君 済みません、委員長。手を挙げたらすぐ指名してくださいね。
 大臣、数十名ですが、会費は幾らでしたか。

○国務大臣(大島理森君) その会費は多分、これちょっと後で確かめます。二万か一万ではないかと思います、前もやったことがございますので。ここは大変申し訳ありませんが、後で確かめさせていただきます。

○福山哲郎君 済みません。一言だけ言わせていただきます。
 二万か一万が分からなくて、これ、国民の皆さん見ていただければ分かるんですが、いいですか。今の研修会、自民党の本部と全日空ホテルでやった、数十名だと。人数分からない、会費も分からない、収入は二百万、二百万、二百万、二百万、二百万、見事に丸込んだ数字が全部で、合計でたった二週間の間に一千万も入っているわけです。これ、どういうことですか。会費も幾らか分からない、人数も分からない、こんなんじゃ質問続けられないじゃないですか、委員長。
 僕は、ちゃんと昨日、中身、時間、参加人数、参加者の構成全部、会費、すべて私は事前通告しております。このままでは質問続けられません。

○国務大臣(大島理森君) 人数を何名と言われても、その記録がないものでございますから、それでリバティであったと思うんでございますが、自由民主党の本部でやって、私ども、日程表を見ますと、そこにはその日に講演会をやりましたという日程表があるものですから、そういう中で調べられたものを今御報告をしているわけでございます。そして、その講演会は、正に先ほどの議論がありましたが、収支報告に載せて明らかにしているところでございます。

○福山哲郎君 少し見ていただきたいんですが──同じので結構です。
 実は、大島農水大臣の収支報告というのは意外ときっちりやられているんですよ。これは、藤田という秘書がまじめな性格だったといろんなところから私、伺っているんですが、非常にきっちりした方で、実はこれ、過去の二年間の政治収支報告とこの二〇〇〇年の比較なんですが、実は、今、大臣がパーティーとか資金集めの勉強会とかと言われていましたが、実はちゃんと過去の二年、実は二年だけではありません。私は、過去の五年ほど全部見ましたけれども、すべて収入が端数まで出ていて、なおかつ、それに掛かっている支出、ホテル代までもきっちりと、実は一円単位まで出ています。この図表には書いておりませんが、実は、参加人数まで収支報告には書かれています。
 ところが、この二〇〇〇年に関しては、研修会、場所不明なんです。何も書かれていないんです。それから、人数、今の大臣の答弁を聞いていただいたらお分かりのように、覚えていないと、数十名。会費も分からないと。二万円か一万円か分からないと。こんな、そして、収入が二百万、二百万、二百万、二百万、二百万。先ほども申し上げましたように、わずか二週間の間で一千万入っているんです。これ、どう見たっておかしいじゃないですか。

○国務大臣(大島理森君) きっちりしているからそのように出したものだと思いますが、特定パーティーではないわけでございます。したがって、五月、スタッフのこの報告によりますと、先ほど申し上げたような大きないわゆる特定パーティーの場合は、今、先生がお話しされたように報告をいたさなければなりません。そして、私が今調べさせたところによりますと、そういう研修会あるいは講演会というのは今までも何年かにやってきたこともございます。
 ですから、そのときに初めて、そういう人数とかそういうものを届け出ていないということではなくて、特定のパーティーの場合は、今、先生がきっちりと割とやっているよと、こう言われましたが、そこはそれできっちりやらしていただいているということでございまして、その年だけ特別に隠しているとかそういうことではございません。

○福山哲郎君 農水大臣、それはスタッフの方がちょっと事実と違うことを農水大臣にお伝えをしたか農水大臣がそれをわざと偽っているか、どちらかなんです。
 確かにやられているんです、研修会。二百万レベルの研修会をやられているんです。例えば、二〇〇一年九月二日、経済記念講演会。これ多分勉強会でしょう、言われたように。二百二十三万五千円、ちゃんとこれ五千円単位までいって、これ支出まで出ている。更に言えば、大島理森時局講演会三百二十五万八千七百四十一円、講演会開催費百二十一万一千一円。これ、ちゃんと支出まで出ているんです。
 あなたの言うようにやっているんです。おっしゃるように類似のものはやっておられるんですが、その類似のものに至っても、過去においてもきっちりと一円単位まで出ているんですが、ここの年だけですね、選挙の年、それもこれ五月になっていますが、いわゆる六百万の授受がされたとあなたが認められた、大臣が認められた六百万の授受があったのが六月の十二日です。ここ一千万、残りの四百万はどこから出てきたのか私分かりませんが、二百万、二百万、二百万、二百万、二百万、きっちり収入で上がっている。これ、どう考えたって説明付かないじゃないですか。

○国務大臣(大島理森君) お答えを申し上げますが、正に政治資金規正法にのっとり、私自身も行って講演した記憶もございますし、したがってそういうことをきちっと報告として記載されておると、こういうことだと思います。

○福山哲郎君 だから、記載されてないんですって。
 じゃ、これ多分、会計帳簿があると思います。この二百万、きっちり丸まった数字に収支が合っているはずです。さっき一万円か二万円か分からない、人数も分からないとおっしゃいましたけれども、会計帳簿があるはずですから会計帳簿を出していただきたいんですが、いかがですか。

○国務大臣(大島理森君) 政治資金規正法に適正に処理しておりますので、どうぞ政治資金収支報告書に記載されておるとおりでありますから、それをごらんになっていただければと思います。

○福山哲郎君 いや、記載されてないんです、適正に。
 じゃ、もう一度、大臣にお伺いします。記憶をたどっていただきたいと思います。何人だったんですか。三回のそれぞれをお答えください。(発言する者あり)いや、だから、大体じゃ割り切れないんだって、二百万円だから。

○国務大臣(大島理森君) 何人と。これ、もう二〇〇〇年の御指摘ですよね。本当に何名来てどうだというその名簿もないそうでございまして、そういうふうなことから、私の記憶では数十名、あそこはそのぐらいだろうと思うんですが、私の記憶では数十名であったと。また、これ不正確に物を言うてもいけませんし、何人、明確に何人ということはちょっと本当に記憶にないものですから、大変申し訳ありませんが、そこはお答えするわけに、できません。

○福山哲郎君 じゃ、しようがないですね。もうこれじゃこれ以上質問できないじゃないですか。私、昨日事前に通告しているわけですから。ほかの収支報告ではきっちりこれやっているわけですから。これ、理事出てください。これじゃ質問続けられないです、これ以上。

○委員長(陣内孝雄君) 大島農林水産大臣。

○福山哲郎君 委員長、違うって。指名してないですよ。

○国務大臣(大島理森君) 福山委員にも先ほど申し上げましたが、その正確に報告をするということは、法にのっとった形でしなければならないものはしております。それは特定の、特定パーティーと言われるやつですね。これについては当然にそれはやらなきゃならぬと。
 したがって、それ以外のものについては政治資金規正法にのっとった報告をするということでございますので、それもまあ資金パーティー、特定資金パーティーもそうでございますが、それに基づいていたしているわけで、今、先生が正確な数字を言わない、言えと、こう言うんですが、本当に、名簿を取ってそこの記載があって、それが何名何名というのであれば、それは調べて御報告して──もう一度調べさせますけれども、昨日、先生から質問をいただいたのがかなり遅うございました。しかし、一生懸命事務所の中を調べても、その名簿の数が分からないとすれば、それを分かったふりしてまた物を言うわけにはいきません。私の記憶では数十名であるというふうに申し上げるしかないのであります。

○福山哲郎君 総務省に聞きます。
 これ実は、いい加減なことなんです。これですね。実は経費がわずかながら、本当かどうか分からないですけれども、出ているんです。こちらが六百万の収入に対して八万一千百五十六円。こっちが四百万の収入に対して六万三千八百八十七円です。先ほど、大臣は二万円か一万円か記憶にしていないと。これも実は微妙なんですけれども、これおかしいですよね。普通、パーティーにするんだったら、確かに二十万円以下は名前を出さなくてもいい。更に言うと、五万円以上の寄附だったら名前を出さなきゃいけないと。ただ、それにはパーティーとしての対価というか、ちゃんと講演会があったり食事を出したりと、することがあるはずです。
 これ、今の話ですと、一千万円稼ぐのに経費十四万しか掛かっていないんですよ。これ、総務省、対価の状況からいうとおかしいんじゃないですか。

○政府参考人(高部正男君) お答えを申し上げます。
 私どもの方では具体の事実関係を承知する立場にございませんので、ただいまの御質問についてはお答えいたしかねますので、御理解をいただきたいと思います。

○福山哲郎君 いや、一般論で結構でございます。一般論で結構でございますから、お答えください。
 今のはおかしいでしょう。法律が規定をしているパーティーや寄附金の要件とこれ合わないはずですよ。だって、一千万稼ぐのに幾ら、八万円、十四万。これ、寄附ないしはパーティーの見合いになるんじゃないですか、総務省。一般論で結構です。

○政府参考人(高部正男君) お答えを申し上げます。
 収支報告書につきましては、その年の収入、支出をすべて記載するということになっているところでございます。また、ただいまお話がございましたパーティー、対価なのか寄附なのかということでございますけれども、この辺につきましては、その代金が社会通念上の価格に、社会通念上その対価と見られるかどうかということで判断されるべきものだというふうに考えているところでございます。

○福山哲郎君 だって、今の大臣の話だと、自民党の本部に呼んだと、数十人来たと、二万円か一万円取ったと、二百万だと、自分がちょっとしゃべったと。それで対価に合うかどうかですよ。これは絶対合わないでしょう。どうですか、総務省。お答えください。

○政府参考人(高部正男君) 先ほどお答え申し上げましたように、具体的な事実関係を私ども承知する立場にございませんので、ただいまの御質問については、おかしいのかおかしくないのかというのはお答えいたしかねますので、御理解いただきたいと思います。

○福山哲郎君 もう一つお伺いします。
 これ、五月十日は二回やっているんですね。ということは、四百万入っているんですね。数十人だと多分、数十人ということない、百人単位ではないということは、例えば五十人、六十人だと仮定しても、一人六万円ぐらいになりますよ。大臣、どうなんですか。

○国務大臣(大島理森君) 委員は資金パーティーをおやりになったことがあるかどうか分かりませんが、普通の状況として、特定パーティーでもそうでございますが、一生懸命秘書たちがお願いして、御賛同をいただいて、その中で全員おいでになるかどうかというのは、これは実態として、実態としてね、そういうことはなかなかございません。
 したがって、今伺ったら、パーティーは二万円であったと聞いております。そして、私は約一時間近くお話をした記憶がございます。さらに、経費のことを言われましたが、確かに、例えば資料、資料でありますとか、もちろん自民党、自由民主会館でもそれなりの経費が掛かりました。懇親会パーティーは二十二万六千何がし掛かっております。したがって、そういう実態であるということを御報告させていただきます。

○福山哲郎君 今伺ったら二万円だというふうに報告ありましたと。何で今報告があるものを昨日は報告できないんですか。そんなのできるわけないじゃないですか。さっき二万円か一万円か分からないと、報告はなかったと言っていたのに、何で今報告が来るんですか。
 ちょっとこんなのやってられないですよ。こんなの虚偽じゃないですか。

○国務大臣(大島理森君) 虚偽でも何でもありません。今確かめさせました。そうしたら……(発言する者あり)いやいや、そのパーティーの券は幾らであったかという質問事項については、私もそこは報告を受けておりませんでしたので、誠実にお答えするために、今至急調べてお答えをしたところでございます。

○委員長(陣内孝雄君) 速記を止めてください。
   〔速記中止〕

○委員長(陣内孝雄君) 速記を起こしてください。

○国務大臣(大島理森君) 先ほど福山委員が、幾らかという質問、パーティー券というか案内状に幾らかということについては、大変これは私自身のそこまでの準備が至らなかったこともそうでございますが、その会費は二万円であったと今確認したところでございます。
 そして、もう一度申し上げますが、開催日でございますが、御指摘のように平成十二年五月十日、十五日、二十三日、大島理森後援会として、五月十日、十五日に経済社会開発研究会で、それぞれ研修会を行っているとのことでございました。十日、十五日は自由民主党本部、二十三日は全日空ホテルで懇親会を行ったということでございます。一日につき各二回に分けての研修会で、合計四回の講義を私自身が行わさせていただいた。
 人数でございますが、先ほど来申し上げておりますように、だれのたれべえさんが何人何人何人という名簿が残っておりません。したがって、私自身明確にそこをお答えするすべがございませんが、私の記憶によりますと数十名であったということでございます。
 大体、案内状を出したのは、日ごろから支援してくださっている方々に案内状を出したと、こういうことでございます。

○福山哲郎君 毎回二百万円ぴったりの理由は何ですか。

○国務大臣(大島理森君) 結果としてそうなっていると思いますが、なぜそうなのかと言われても、私はそこは分かりません。

○福山哲郎君 そんなの納得できません。国民の前でこんなのは納得できない。ちょっと納得できないですよ、理事。こんなの質問続けられないですよ、こんなの。
 そしたら、もう一回聞きます。最初数十人とおっしゃったんです。二万円で数十人だったら四百万行かないじゃないですか。もう一回答えてください。

○国務大臣(大島理森君) 先ほども申し上げましたが、様々な御案内状を出して、そして参加をしようという意図でお支払をいただいていても、結果としてそこにおいでにならないということもあるんだろうと思うんです。また、私の長い経験の中でも、特定パーティーをやっていただいたとしても、やはりそこはおいでにならないときもあるということを考えると、私は、そのことは、数十名おいでになっても、それが実態でございますから、先生からおかしいじゃないかと、こうおしかりをいただければ、そういう見方もあろうかと思いますが、私自身、そういう事実を御報告申し上げております。

○福山哲郎君 国民は本当に経済的に今しんどい状況にいるんです。そのときに、たった十四万の経費で一千万も入ってくるようなことを政治家がやっていると国民に見られて僕ら迷惑なんですよ。こんな一般通念上当てはまらない答弁をして、まともにやっているからなんていうのは通用しないんですよ。二百万、全部偶然じゃ二百万になったんですか、これ。

○国務大臣(大島理森君) 収支報告に載っていることでございますから、結果としてそうなっているんだろうと思います。

○福山哲郎君 もう一度言います。しつこいようですが、もう一度言います。大島大臣の収支報告は全部、支出まで実は一円単位まで過去は出ているんです。このときだけどういうわけか二百万、丸々丸め込まれた数字で二週間で一千万なんです。そして、なおかつ六百万のお金が六月の十二日に渡っていることを大臣も認めているわけです。四百万、別のところからまた取ってきたかもしれないし、ひょっとするとその六百万とは別の一千万かもしれない。これ、新しい疑惑が出てきているわけです。そして、これ対価上、総務省、問題ありますからね、これは法律違反の可能性があるわけです。
 先ほど、総理が法律を守らなければいけないと。じゃ、ちゃんとパーティーの名目にすればいいわけですよ。それもしていない。寄附としても扱っていない、名前も分からない、人数もいい加減、そして数字は二百、二百、二百、二百、二百。こんなの通じるわけないじゃないですか、大臣。総理、どうですか、これ聞かれていて。何で。総理。

○国務大臣(大島理森君) 研修会等々は今までもやっておりまして、したがって政治資金規正法にのっとり、そういう形で私どものスタッフがきちっと報告をしたものだと思うのです。
 もう一つ、今、委員がそう断定はしておりませんけれども、(「断定してないですよ」と呼ぶ者あり)だから断定はしておりませんけれども、六百万円、元秘書が受け取ったものを何かそういう形で処理しているのではないかという雰囲気で今お話をされておりますが、そういうことは絶対にございません。

○福山哲郎君 だから、その六百万が違うということは、別の一千万の疑惑が出てきたということですよね。
 そうしたら、この一千万については、やはりこの処理をしたこの収支報告の代表者である藤田、この人は実は、さっき申し上げたように、六百万を受け取ったと言われている人なんです。この一千万の収支報告を書いた代表、収支報告、この藤田を是非参考人に、こういう疑いがあるからこそ参考人に呼んで、聞いて、大臣の疑惑を晴らさなければいけないし、晴らすのではなくて、明らかにしなきゃいけないと思いますが、委員長、お願いいたします。

○委員長(陣内孝雄君) ただいまの福山哲郎君の要求につきましては、その取扱いを後刻理事会で協議することといたします。

○福山哲郎君 そうすると、今の藤田秘書でございますが、これが、ビルオーナーから六百万円を選挙運動で役立ててくださいと言って持ってこられて、その人が大島農水大臣の選挙事務所で受け取ったとされることがあります。
 で、総務省にお伺いをします。
 この藤田秘書は、大島大臣の政治資金管理団体の会計責任者です。会計責任者が選挙事務所で相手側のオーナーから、これ選挙活動で使ってくださいねと渡されているということは、収支報告に対する記載の義務はどこから発生しますか。

○政府参考人(高部正男君) 政治活動に関する寄附の取扱いに関する一般論を申し上げますと、政治資金規正法におきまして、政治団体の会計責任者は、毎年十二月三十一日現在で、当該政治団体に係るその年におけるすべての収入、支出について、所要事項を記載した収支報告書をその日の翌日から三月以内に提出しなければならないとされておりまして、なお、寄附については、同一の者からの寄附で、年間五万円を超えるものについては、寄附者の氏名、住所等の内訳を記載することとされているところであります。したがいまして、この収支報告書を作成するときに、記載すべき事項を記載しなければならないということになります。
 お尋ねございました事案が政治資金収支報告書に記載すべき寄附に当たるかどうかということにつきましては、諸般の事情を総合的に勘案して、具体の事案に即して判断されるべきものと考えておりまして、総務省は具体的事実関係を承知する立場にはございませんので、お答えは差し控えさせていただきたいと存じます。

○福山哲郎君 これも社会通念上ですが、選挙事務所でビルのオーナーが選挙活動に使ってくれと言って、公認会計、会計責任者だと言われている者に渡して、手渡した時点で私はそれは政治資金だと思うんですが、総務省、いかがですか。

○政府参考人(高部正男君) 具体的に判断する場合には、それぞれ具体の事情に応じまして、寄附者の真意でありますとか、受領者、受け取った側の真意がどうだったか、あるいは当該寄附金の取扱いといったいろんな事情を総合的に勘案して、個々の事案ごとに判断されるべきものというふうに考えておりまして、私どもの方では具体的な事実関係を承知する立場にございませんので、お答えは差し控えさせていただきたいと存じますので、御理解を賜りたいと存じます。

○福山哲郎君 そうしたら、総務省、お伺いしますが、その藤田秘書は、一年半後にそれを預かっていて返しているんです。ということは、いいですか、一年半預かっていて返しているということは、会計責任者ですから、当然、報告義務を怠ったことにはなりますよね。

○政府参考人(高部正男君) お答えを申し上げます。
 ただいまの事案につきましては、当該お金が政治団体の収入というふうに判断されるかどうかということに懸かってくるわけでありまして、先ほど申し上げましたように、その辺の判断というのは、個々具体の事案に応じて判断されるべきものだというふうに考えるところでございます。

○福山哲郎君 おかしいじゃないですか。だって、だって会計責任者はお金を持っていて、記載をしていない事実が一年半続いているんだから、それで返したわけでしょう。そうしたら、その一年半は当然、報告義務違反ですよね。だって記載、だって六百万持って、会計責任者なんですから、返したわけでしょう。この一年半は報告義務違反は発生しますよね。

○政府参考人(高部正男君) ただいまの事案につきましては、その具体の事案については承知しないわけでございますが、ある方が持っておられたという状況のそのお金の性格がどういうものであるのか、その政治団体のお金、政治団体の収入と見られるものかどうかという点について個別具体に判断する必要があると、かように考えるところであります。

○福山哲郎君 国民に御判断いただきたいんですけれども、選挙事務所で選挙活動に使ってくれと相手が言って会計責任者が受け取ったお金が政治資金ではないというのはどういう場合なんですか、例えば。

○政府参考人(高部正男君) 個別具体にはどういう場合かというのはお答えしかねるところでございますが、先ほど言いましたように、寄附をされた方がどういう意図で、真意、どういう真意でなされたのか、また受け取られた方がどういう意図で受け取られたのか等々、いろんな事情があろうかと思いますので、そういうものを総合的に判断すべきものと、かように考えるところでございます。

○福山哲郎君 実はこれ、大島農水大臣が衆議院の委員会で認めておられるんですね。これ、藤田から、藤田秘書からいろいろ事情を聴いたと。そのときに、これ大島大臣認めておられるんですよ。預かっておったという話と、それから選挙活動に役立ててくださいと言われたものだったけれどもそれを流用した云々と言われているんです。
 ということは、大島大臣は、秘書、藤田秘書自身から、選挙活動で預かってくれというふうに言われたものを持っていましたということを大島農水大臣認めておられるわけです。だから、そうすると、一年半このお金を持って、預け、返したということは、これは当然義務違反ですよね。で、会計責任者ですからね。

○政府参考人(高部正男君) 先ほど来答弁申し上げていますように、預かったお金というものの性格について具体的にどういうふうに認定するのかという問題だろうと思います。政治団体の収入というふうに考えられるものなのかどうか、それらにつきましてはいろんな事情を総合的に判断して決めなきゃいけない、かように考える次第でございます。

○福山哲郎君 じゃ、例えば、お伺いしますが、選挙事務所に陣中見舞いだと持ってきたと。で、領収書を渡さなきゃいけないとかいいながら、選挙、陣中見舞いですと言った瞬間に、ここに置いてあるお金はこれはまだ政治資金じゃないわけですね、今の話でいうと。だって、見掛け上、いいですか、会計責任者が選挙事務所で受け取っているんです。で、相手は選挙活動に使ってくださいと言っているわけです。それで受け取っているんです。これを政治資金じゃないとどうやって説明できるんですか。

○政府参考人(高部正男君) 再三御答弁申し上げていますように、送り、出し手の意図、それから受け手側もどういう意図で受け取っておられるのか、その他いろんな事情を総合的に判断して決められるべきものだというふうに思う次第でございます。(発言する者あり)

○委員長(陣内孝雄君) 速記を止めてください。
   〔速記中止〕

○委員長(陣内孝雄君) 速記を起こしてください。

○政府参考人(高部正男君) お答え申し上げます。
 個別の金銭の授受が政治資金収支報告に記載すべき寄附に当たるかどうかということにつきましては、それぞれ個別具体のいろんな事情を総合的に勘案して決められるべきものでありまして、私ども個別の具体のいろんな事実関係を逐一承知する立場にはございませんので、個別具体の事案について、それが記載義務がある寄附に当たるのかどうかといったようなお答えはいたしかねますので、その点、御理解をいただきたいと存じます。

○委員長(陣内孝雄君) 大島農林水産大臣。

○福山哲郎君 駄目です。僕は大臣の今話をしているんじゃないんです。僕は大臣の話をしているんじゃない。時間、止めてくださいよ。(発言する者あり)

○委員長(陣内孝雄君) 速記を止めてください。
   〔速記中止〕

○委員長(陣内孝雄君) 速記を起こしてください。

○福山哲郎君 いいですか。その藤田秘書というのはれっきとした会計責任者なんです、政治管理団体の。そして、当該ビルのオーナーは選挙活動に使ってくれといってお金を持ってきた。場所も選挙事務所です。そして、相手は会計責任者です。
 そこに渡されたお金は政治資金であるはずだから、一年半彼が持っていて一年半後に返したということは、この一年半報告していないということは報告義務違反ですねとお伺いしているんです。

○政府参考人(高部正男君) お答えを申し上げます。
 再三お答え申し上げておりますように、政治資金収支報告に記載すべき寄附を記載しなければ政治資金規正法違反の問題は当然のことながら生ずると思いますが、個別具体の事案が記載すべきものかどうかについては、これは刑罰法令の適用ということになりますと司法手続の中で決まっていくことということになりますので、私どもそういう具体的な事案を承知する立場にございませんので、個別具体の事例が法規に違反するかしないかといったようなことはお答えいたしかねますので、御理解を賜りたいと存じます。

○福山哲郎君 法務省、お伺いします。
 坂井、逮捕された坂井議員の秘書、塩野谷秘書は、逮捕事実の理由は何ですか。簡単にお答えください。

○政府参考人(樋渡利秋君) お答えいたします。
 被疑者塩野谷晶の逮捕事実の要旨は、他と共謀の上、隆盛会の平成九年分から同十三年分の収支報告書においてそれぞれの収入総額欄に虚偽の記入をして自治大臣又は総務大臣に提出したというものでございます。

○福山哲郎君 逮捕された坂井衆議院議員の塩野谷秘書は虚偽記載で逮捕されました。ところが、この塩野谷秘書は実は会計責任者ではなかったんですね。ただ指図をしていただけだったんです。共謀ですからね。それでも逮捕されているんです。この藤田秘書は会計責任者なんです。で、一年半後返しているんですが、この一年半に関しては義務違反の虚偽記載になるのではないですかと聞いているんですが、法務省いかがですか。

○政府参考人(樋渡利秋君) 犯罪の成否につきましては、収集された証拠に基づいて司法が認定するものでございまして、一般論として申し上げれば、検察当局あるいは捜査機関におきましては、犯罪となるべき事実があれば不偏不党、公明正大に法と証拠に基づいて適切に対処するものと承知しております。

○福山哲郎君 つまり、先ほど私が申し上げた二百万、二百万、二百万、一千万の研修会という、非常にどこからお金が出てきたか分からない問題も、実は収支報告書の代表者は藤田秘書でございます。それで、先ほど申し上げた六百万円の問題についても、これ報告義務違反で恐らくこれも虚偽記載になると思います。これも藤田秘書でございます。
 現実問題としては、これと非常に類似した事件として坂井逮捕が、坂井衆議院議員が逮捕されているということで、私は大変この問題重く受け止めておりまして、大島大臣にはもっとしっかりと説明をしていただかないと、そんなもの、十四万の経費で一千万もうかるようなことを出されて、ちゃんとしっかりと答えていると言われると全く合わないと思いますし、総理、総理、現実にさっきお話ししたように選挙事務所でお金だといって渡して会計責任者が受け取っているのにそれは政治資金じゃないみたいな議論が成り立っているんですけれども、これ、大臣はこんなことやっていたら農水行政できないじゃないですか。国民も、これからの日本の農業行政や食の安全とか大変重要な問題があるのに、こんなの行政できないじゃないですか。これやっぱり総理、大臣にはやっぱりお辞めをいただいて、やっぱり国民に信頼される農水行政をちゃんと確立していただかないと国民はかわいそうだと思うんですが、総理、いかがですか。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 農林水産大臣としての職務は大変多岐にわたっておりまして、国民生活にとっても大変重要だということは当然であります。その職務に大島大臣、今精力的に当たっておりますので、しっかりと対応してその責任を果たしていただきたいと思っております。

○福山哲郎君 まだ幾つかお伺いしたいこと多々あるわけですが、時間になりましたので、櫻井議員に替わります。
 どうもありがとうございました。

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第156国会  参議院  予算委員会  2003年1月29日

ハンセン病問題・人権擁護法案について

○福山哲郎君 民主党・新緑風会の福山哲郎でございます。櫻井議員に引き続きまして、質問をさせていただきます。
 今年に入りまして小泉内閣の支持率がやや陰りを見せ出しましたが、小泉政権発足当時は非常に高い支持率でございました。もう皆さん御案内のとおり、構造改革なくして景気回復なし、また自民党をぶっつぶす等々のワンフレーズキャッチコピーに加え、私は、大変小泉内閣の支持率が高かったことに対して大きな要因になったのは、ハンセン病問題に対する控訴断念という大変大きな政治決断だったというふうに思っています。その政治決断をされた直後、やはり国民は、小泉内閣に対する、ひょっとしたらやってくれるのではないかという大きな希望と期待を持ったというふうに思っております。
 ところが、現実一年半ぐらいたちまして、小泉内閣は非常に仕掛かり品が多いと。やり掛けたままでそのままというような問題も多いですし、現実にこの補正予算をずっと見ておりますと、本当にこれで構造改革進むのかどうかという議論もあります。
 というような観点から、今日は少し小泉内閣のこれまでやられてきたことについて確認をしながら議論を進めさせていただきたいというふうに思います。総理はいらっしゃいませんが、各閣僚の先生方、どうかよろしくお願いいたします。
 一つは、ハンセン病問題でございます。
 いわゆる一昨年五月の小泉総理の決断から、非常にこのハンセン病問題について国民の世論も高まったと。しかしながら、私、一向に何も進んでいないとは申し上げません。現に、療養所に入られている方に対する一時金、和解の話、それから原状回復、それから啓蒙、啓発の問題等について進んでいないとは申し上げませんが、幾つか全く進んでいない問題もあります。
 まずは、このハンセン病問題対策協議会の位置付けについて、厚生労働省、お答えください。

○副大臣(木村義雄君) ただいま委員からハンセン病問題の対策協議会等の位置付けのお話が出ました。
 ハンセン病問題対策協議会は、平成十三年五月二十五日のハンセン病問題の早期かつ全面的解決に向けての内閣総理大臣談話におきまして、「患者・元患者の抱えている様々な問題について話し合い、問題の解決を図るための患者・元患者と厚生労働省との間の協議の場を設ける。」こととされたことを踏まえまして設けられたものでございます。
 平成十三年十二月二十五日のハンセン病問題対策協議会における確認事項では、「今後のハンセン病問題の対策を検討するため、厚生労働省と統一交渉団との間で当面一年度に一回ハンセン病問題対策協議会を開催する。」こととされており、これを受けて本年一月二十日に平成十四年度のハンセン病問題対策協議会を開催されたところでございます。

○福山哲郎君 この協議会の座長はどなたでしょうか。

○副大臣(木村義雄君) 私でございます。

○福山哲郎君 二つの実は全く手に掛かっていない問題があります。
 平成八年度、いわゆるらい予防法廃止が決まる前に療養所を退所された方、患者の方々です、平成八年以前に療養所を出られた方に対する一時金の支払というものがあります。この問題に対しては、今、正に座長である副大臣が言われたように、ハンセン病問題対策協議会における確認事項にこういう表記があります、「平成十四年度中の実現に最大限努める。」と。これが平成十三年の十二月の二十五日に締結をされたわけです。
 平成十三年の十二月の二十五日に締結をされたということは、もうその年の平成十四年度の本予算には入らないと。本予算には入らないから、「平成十四年度中の実現に最大限努める。」という確認事項が交わされました。ところが、この補正予算は、平成十四年度の補正予算にもかかわらず、この問題については全く触れられておりません。
 私は、この補正予算に本来は政府としては入れるべきであったものを、入っていないのではないかというふうに思っておりまして、その点についてお答えをいただけますでしょうか。

○副大臣(木村義雄君) 今お話しになりました慰労・功労一時金につきましては、平成十三年十二月二十五日の確認事項におきまして、「慰労・功労の趣旨の一時金支給について、方法・金額を含めさらに検討し、平成十四年度中の実現に最大限努める。」こととされているところでございます。
 慰労・功労一時金は、和解一時金との整理など難しい問題が多い課題でありますことから、これまでハンセン病問題対策協議会の作業部会等の場において検討が進まず、平成十四年度補正予算計上に至らなかったところであり、また平成十五年度予算においても同様の状況から予算を計上していないところでございます。
 慰労・功労一時金につきましては、こうした難しい問題はございますけれども、今後とも作業部会などの場で患者・元患者の方々と協議を重ねてまいりたいと、このように思っておるような次第でございます。

○福山哲郎君 この協議会は、本来はいつに開催される予定でしたか。先ほど言われた一月の二十日ではなくて、本来はいつの予定でしたか。

○副大臣(木村義雄君) 予定は昨年の八月ということになっておりました。

○福山哲郎君 八月をなぜ一月まで開催ができなかったんですか。

○副大臣(木村義雄君) ハンセン病問題対策協議会につきましては、平成十三年十二月二十五日に取り交わされましたハンセン病問題対策協議会における確認事項に基づき、今後のハンセン病問題の対策を検討するため、厚生労働省と統一交渉団との間で当面一年度に一回開催されているところでございます。一年度に一回でございます。
 厚生労働省としましては、昨年八月の事前協議のほか、四つの作業部会を計二十数回にわたり開催してきたところでございます。平成十四年度の協議会については、厚生労働省と統一交渉団との間の日程調整が付かず、本年一月の開催となったところでございます。
 このような事情につきましては、統一交渉団とも相談してきたところでございますし、十分に御理解をいただいているものと認識しております。
 今後とも、ハンセン病問題の早期かつ全面的な解決に向けて協議会においてしっかりと協議を行ってまいりたいと、このように思っております。

○福山哲郎君 実はこれ、内閣が替わられて副大臣に就任されてから実は、大変失礼な話なんですけれども、事の成り行きのスピードが遅れているんです。前の副大臣でいらっしゃいます桝屋副大臣のときは、平成十三年の十二月の二十五日の議事録があるんですが、麦谷疾病対策課長から桝屋副大臣同席の下でこういう発言があるんです。予算措置をどのように行うか、幾らにするかということを検討して、平成十四年度中に具体的な案をお示しするというふうに御理解いただきたいと思いますというふうにお話があるんです。
 具体的な案をお示しになられましたか、じゃ。

○副大臣(木村義雄君) 現在、作業部会で検討しているところでございます。

○福山哲郎君 じゃ、平成十四年度中に具体的な案をお示しいただけるんですね。

○副大臣(木村義雄君) 特に慰労・功労一時金の問題でございまして、先ほども述べたように難しい問題も多いのでございますけれども、作業部会などの場で患者・元患者の皆様方とも協議をしつつ課題を一つずつ解決し、粘り強く検討を進めてまいりたいと、このように思っております。

○福山哲郎君 だから、平成十四年度中にお示しをいただけるんですねと。私が聞いたところによりますと、この一月の二十日の協議会では決裂をしているんです。厚生労働省からはゼロ回答なんです。だけれども、桝屋副大臣も含めて平成十四年度中に出すという発言もあれば、更にはこの確認事項にもあるわけで、出されるのかと聞いているんです。

○国務大臣(坂口力君) 今お話のございましたのは、一つはこの平成八年の四月以前に退所をなさった方、それからもう一つは入所を一度もしなかった人、この二人の問題でございまして、今、木村副大臣から答弁いたしましたとおり、再三この皆さん方とのお話合いはしているわけでございます。決して話をせずにずっと引っ張ってきているというわけではありません。再三、話を実はいたしております。
 ところが、この話はしてきているんですけれども、なかなか話の妥協点が見付からないということがございます。一つなぜそういうことかということを申しますと、既にこの平成八年の四月以前に退所された皆さん方に対しましても、これは八百万から千四百万の一時金というのは出ているわけでございます。また、入所歴のない方に対しましても、七百万から五百万の間の一時金がこれは既に支払われていると。で、今問題になっているのは社会復帰、社会生活支援に対して更にどうするかという、この平成八年の四月以降に出た人に対しましては、二百五十万ないし百五十万、若干違う人もありますけれども、そういう支援金が出ている、その問題をどうするかということになっているわけでありまして、入所しておみえにならないような方と、入所されていたがゆえに今いろいろのこの問題があった人とをどう整理をするかという難しいそこに問題があるということでございます。
 これは双方の意見ございまして、歩み寄らなきゃならないわけでございますけれども、現在のところまだ妥協点が見付かっていないということでございまして、これからひとつしっかりとまた努力を重ねたいというふうに思っております。

○福山哲郎君 坂口大臣から御丁寧に御答弁いただきましたが、僕はその問題は分かっておるつもりでございます。非入所の方と、それから療養所に入られて、平成八年度以前に入られた方の話は、僕は別に今質問させていただいているつもりでございまして、今は平成八年度以前に退所された方に関しての話を副大臣にお伺いをしていて、その問題に関しては具体的な案を示すと厚生労働省が桝屋副大臣のときに言われています。坂口大臣も一生懸命取り組まれたことも僕は分かっているんですが、ところが、この半年間、実はスピードが一気にダウンをしていて、現実問題としてゼロ回答だということに対して、平成十四年度中、平成八年以前に退所された方について具体的な案は出るんですねとお伺いをしているので、お答えください。

○副大臣(木村義雄君) 慰労・功労一時金の創設には和解一時金との整理などが難しい問題が大変多いんです。
 現時点で具体的にどうだこうだとか、いつとかいうことをお約束することは難しいんでございますけれども、最大限努力をしてまいりたいと思っております。

○福山哲郎君 でも、じゃ、この確認事項にある「平成十四年度中の実現に最大限努める。」ということはどうなるんですか、副大臣。

○副大臣(木村義雄君) 最大限努力してまいりたいと思っております。

○福山哲郎君 先ほど、正に副大臣言われたように、平成十五年の本予算にもこの話はないわけです。患者の皆さんは高齢化をしています。そういう状況の中で、あのときになぜ世論が、国民が小泉総理の決断に拍手を送ったかというと、そういった状態が分かっているからこそ、その政治決断に拍手を送ったわけです。それをまたごちゃごちゃごちゃごちゃ、障害があるとかいろいろな問題があるから最大限とかいう話をしていたら、あのときの政治決断の意味がないじゃないですか。その政治決断を踏まえているから、坂口大臣も桝屋副大臣も平成十四年度中という話をこの確認書に入れているんじゃないですか。それをまた最大限などと言って、平成十五年も本予算に入っていなかったら、またずるずるずるずる行くんですか。だから、いつまでかと聞いているんです。

○副大臣(木村義雄君) 政治決断を踏まえまして、最大限努力をしてまいりたいと思っております。

○福山哲郎君 では、もう一つ、非入所の方の話についてお話をします。
 非入所の方に対する経済支援を含む恒久対策というのは、国は裁判の中で認めているわけです、協議をするということを認めているわけです。これは私は対策について協議をするというレベルでも結構なんですが、その協議すら実は行われていません。
 非入所の方のヒアリングの申出、面談の申出等を副大臣は受けたことありますね。

○副大臣(木村義雄君) 協議はしているという認識でございます。

○福山哲郎君 非入所の方との面談、ヒアリングの申出を受けられたことはありますね。

○副大臣(木村義雄君) 事務的にはしておるそうでございます。事務的にはやっております。

○福山哲郎君 副大臣が面談の要請を受けたことがあるかと聞いているんです。

○副大臣(木村義雄君) 御要請を受けたことはございます。

○福山哲郎君 坂口大臣も、面談の御要請を受けられたことは御理解いただいていますよね。

○国務大臣(坂口力君) 直接いただいているかどうか分かりませんけれども、そういうあるいは文書をいただいているかもしれません。いずれにいたしましても、これは事務的にある程度詰めていって、そしてお会いをさせていただくということにしなければなかなか詰まらない話でございますから、まずは事務レベルにおいてこの皆さん方とのお話もある程度詰めてもらいたいというふうに申しているところでございます。

○福山哲郎君 面談をしてくれと言っているわけです。話をしてくれと言っている。話を決めてくれと言っているわけではありません。要は、協議をするという前提の中で、副大臣にお目に掛かって話をしたいという面談に対して、事務方、事務方とずっとこの副大臣は言いっ放しなわけです。そして、先ほど言われたように、八月のやる予定が一月までずれ込んでいるわけです。
 このことに対して、副大臣、じゃ、面談を受けていただけるということ、これは協議ですからね、私は、協議をする場として、場ではなくて、まず非入所の方に会って事情を聴いてもらえるぐらいの誠意は示していただきたいんですけれども、そこはいかがですか。

○副大臣(木村義雄君) 大臣又は副大臣と非入所者との面談を求められていたということでございますが、非入所者の方々の現在の生活実態を把握するためには、まずは事務的に十分にお話を伺うことが重要であると考えてございます。したがって、引き続き事務方で十分に話を伺わせていただきたいと、このように思っております。

○福山哲郎君 いいですか、平成十四年の一月の三十日の口頭弁論、被告は国です。原告との間に、入所歴なき原告に対する恒久対策について引き続き協議することを含むかということに対して、含むものと認識しているというふうに国は答えているんです。その中で非入所の方々が面談をしてくれと、事情を聴いてくれと言われたのを何で政治家の副大臣が聴けないんですか。何で聴けないのか、具体的に答えてください。

○副大臣(木村義雄君) 先ほどからお答えをしておりますように、これいろいろとやっぱり実態の把握等を、事務的にまずすべきことがあるんですよ。その後、それを十分に踏まえていただいて、お話を十分詰めていただいて、協議の場は設けられているんですから、そして先ほど言ったように昨年も二十数回、本年度ですか、本年度は二十数回やっておるんです。ですから、そういう場で引き続き十分にお話を詰めていただくことが私は大切なことではないかなと、こう思っておりまして、是非それを実行していっていただきたいと、こう思うわけであります。

○福山哲郎君 実態を把握するために副大臣に会っていただきたいと言っているわけです。何でそれを事務方だけで詰めるわけですか。実態を把握するのに副大臣が事情を聴いて何が悪いんですか。
 協議の場では一度も国は具体的には何も示していないんですよ、具体的な案も何も。話をして、難しい難しいの一点張りで。じゃ協議の場の前に、とにかくやっているけれども、副大臣に会わせてくれという患者側の、非入所側の気持ちが何で副大臣としてあなた分からないんですか。何で面談することもそうやって逃げるんですか。

○副大臣(木村義雄君) この問題はやっぱり事務方で私は十分詰めていただく必要があるんではないかと、これは私自身がそう判断しているからでございます。

○福山哲郎君 いいですか、厚生労働省の事務方だけでは詰まらないからこそ何十年もハンセン病の患者の人は苦労してきたんじゃないんですか。役人が何もやってこなかった結果としてこういう結果が出て、国が負けて、そして小泉総理の判断になったんじゃないんですか。それをまた戻して事務方事務方、じゃ事務方の判断を聞いたらあなたはそこで判断をそのまま受け入れるわけですか。自分の判断は一体どこで入るんですか。

○副大臣(木村義雄君) この問題に関しましては、やはりしっかりと事務方で詰めていただくことが非常に大事だと私自身考えております。

○福山哲郎君 あなたは協議会の座長なんですよ。責任があるんですよ。どう考えているんですか、事務方事務方事務方事務方と。
 坂口大臣、どうですか。僕、坂口大臣はこれ動いてきたときの状況を分かっていますから、桝屋副大臣とともにこうやって一つ一つ階段を上げてこられたことに関しては非常に有り難いなというふうに思っています。しかし、こういう状態で本当に、政治決断が要るからこそこの問題はここまで来ているんじゃないんでしょうか、大臣。

○副大臣(木村義雄君) 座長として責任があるからこそしっかりとした判断を決断をするためにもしっかりと詰めていただきたいと、このように思っております。

○福山哲郎君 もういいですけれども、しっかりとした判断で、直接に非入所の方と面談をされるのはしっかりした判断のためには必要ないとおっしゃるわけですね。

○副大臣(木村義雄君) 十分に詰めていただいて、協議をしていただいた後で、そこから判断をする、こういうことになるんではないかと思っております。

○福山哲郎君 でも、その協議会も延び延びになって今年の一月なわけですよ。それで、補正予算にも現実には入っていない、本予算にも入っていない状況なんです。患者の方はみんな本当に苦労してこられて、今、高齢の中でみんな生きているわけですよ。
 何を考えているのかよく分かりませんが、坂口大臣、最後に少し希望の持てる御答弁をいただきたいと思います。

○国務大臣(坂口力君) 木村副大臣も会わないということを言っているわけではなくて、手順を踏んでその先で会うと、こういうことを言っているわけであります。
 非入所の皆さん方には、私、最初のときに一度お会いしたことあるんです。これは沖縄でお会いしております。ほとんどが沖縄の方でございまして、沖縄の療養所にお邪魔をいたしましたときに、その非入所の皆さん方で、いわゆる診療所のようなところで診療をずっと続けておみえになる方々でございまして、間違いなければ楓の会とかなんとかという名前が付いていたというふうに思いますが、そこに皆さんお集まりをいただいて、その事情につきましても十分お聞きをしてまいった経緯がございます。
 したがいまして、今、木村副大臣中心になりまして、そしてこの会もあるわけでございますし、そして事務レベルでの積み重ねもこれ待ちまして、木村副大臣のところで決定してもらいたいというふうに思っている次第でございます。

○福山哲郎君 この一月の二十日の協議会は実は非常に異様な形で閉じられていまして、協議会に参加されている政府側以外の者は途中で退席をしています。それはなぜかというと、余りにも厚生労働省からの回答が、あの副大臣からの回答だったんですが、ゼロ回答が続いたので、これでは話にならない、協議会成立しないと言って途中で退席するような状況になっていますが、それに対して、この協議会、今後の在り方について副大臣、今どう考えているのか、お答えください。

○副大臣(木村義雄君) 一つ一つ丁寧に解決をしてまいりたい、このように思っております。

○福山哲郎君 先ほどから全く具体的な話がないわけですが、本当にそこのところは、このハンセン病の問題について小泉総理に国民世論が拍手喝采をしたのとはちょっと方向がずれてきていますから、そこについては今後ともしっかりと監視をしながらいきたいというふうに思いますが、鋭意厚生労働省も努力をいただきたいと思います。
 それから、二つ目へ行きます。
 やはりそれは人権の問題に関係しますが、いわゆる人権擁護法案が昨年の通常国会で上程をされました。通常国会、臨時国会、二回の国会で与野党法務委員会の理事の先生方の努力も残念ながらかなわず、継続審議となりました。二回の国会で継続審議になったことについて法務大臣はどのように今認識をされているか、お答えをください。

○国務大臣(森山眞弓君) 人権擁護法案は、人権擁護推進審議会の長年にわたる御審議を経まして、その結果立案されたものでございます。人権尊重社会を実現するためには是非とも必要な法律であるというふうに考えておりますので、委員御指摘のような状況となっていることは誠に残念だと思っております。
 したがいまして、この国会におきまして十分御審議をいただきまして、一日も早く成立させていただきたいと考えております。

○福山哲郎君 この問題は、内容、要は人権救済機関の実効性の問題と、もう一つ大きな問題として報道規制の問題と、二つの問題で世論が噴き上がりまして、二回継続になりました。
 今この法案について、抜本的な修正も含めてこの国会で通過をさせるべきだという声がかなり大きく上がっていますが、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

○国務大臣(森山眞弓君) 私といたしましては現在の法案が最善のものと考えて国会に御提案させていただいているわけでございますが、できるだけ多くの方に御理解いただけるように、そのような形で法案が成立するということが望ましいというのは申すまでもございません。今国会では、そういう御意見も踏まえまして十分に御審議をいただいて、一日も早く成立いたしますようにと願っているところでございます。

○福山哲郎君 大臣、じゃもう一度お伺いします。
 二回の国会を通じて継続審議になるぐらいいろんな議論が紛糾をいたしました。大臣は今、最善だと思われていると言われましたが、最善の案だと言われている法案が、報道規制や中身の実効性も含めて疑義が出てきたからこそ、逆に言うと二回の継続になったわけです。その事実に対してどのように認識をされているか、もう一度お答えください。

○国務大臣(森山眞弓君) 大変残念ながら、立案の者たちの考え方が十分御理解いただいていないのかなというふうに思っておりますし、もっと努力をして説明を申し上げ、御理解をいただくように努力しなければいけないというふうに考えております。
 昨年十一月十二日にこの法案に対する参考人の質疑がございまして、例えば実際に報道の被害に遭われた参考人の方からその被害の状況などをお話しいただきました。私も実効的救済を可能とする仕組みを整備する必要性を改めて認識したところでございますが、もっともこの法案の報道被害に関する規定につきましては各方面に様々の御意見があることも承知しておりますので、それらも踏まえて十分に御審議いただきたいと考えているところでございます。

○福山哲郎君 内容と報道規制以外に、実は昨年末に名古屋刑務所の受刑者の死亡事件というものも起こりました。これも実はこの法案の状況には影を落としていまして、公権力による人権侵害について本当に実効性を伴えるのかどうかという議論も出てきています。
 抜本修正も含めて、多少法案を修正をしてより良くして通すというお考えは、大臣、ございませんか。

○国務大臣(森山眞弓君) 名古屋の刑務所の事件につきましては、本当に遺憾でございまして、矯正行政を預かる私としては深くおわび申し上げたいと思うところでございます。
 しかし、検察におきまして、同じ法務省傘下の矯正部門で発生した事件であるからといって手心を加えるというようなことは全くございませんで、厳正に対処するものと確信しておりますし、検察の不偏不党については国民からも高い信頼を得ているのではないかと思います。
 まして、新たに設置されることになる人権委員会は、法務大臣の指揮監督を一切受けることがないということになっております独立行政委員会ですから、矯正部門で起こる人権侵害についても十分適切に対応できるものと考えておりまして、この問題、あるいはそのほかの問題、全部含めまして様々な御意見やお知恵をいただいているところでございますので、それらを含めて是非今国会で成立できますようにお願いしたいと思います。

○福山哲郎君 そしたら、別の観点でいきます。
 国連の人権規約委員会からの勧告に基づいて二〇〇二年の十月に我が国は報告書を提出をするはずになっているはずですが、これは報告書はもう提出をされましたでしょうか、法務大臣。

○国務大臣(川口順子君) 残念ながらまだでございます。

○福山哲郎君 理由はなぜでしょうか。

○国務大臣(川口順子君) 私も、今朝この話を聞きましたときに、どうしてかと思いまして聞きました。それで、これは言い訳をするわけではないんですが、といって実際は言い訳ですけれども、本当にそうなものですから申し上げたいと思いますけれども、非常に物理的な作業が多くあって、これだけをやっているわけではございませんので、事実上パンクをしているということで、国連に対しての様々な報告をしなければいけない量が非常に多いということが事実ということでございます。
 ほかに理由はないかと私しつこく聞きましたら、ないということでございましたので、これはできるだけ早くやるように督促したいと思います。

○福山哲郎君 法務大臣、外務省が報告書を出していないことについては御存じでしたか。

○国務大臣(森山眞弓君) 承知しておりましたけれども、今、外務大臣が御説明申し上げたような理由だというふうに聞いております。

○福山哲郎君 なぜ人権行政を携わる法務省が報告書の作成には携わらないんですか。

○国務大臣(川口順子君) これは政府全体としてやっておりまして、当然法務省も関係しておりますけれども、まとめているのは外務省だと、そういうことでございます。

○福山哲郎君 法務大臣、本当は法務省がやるべきことなんじゃないでしょうか。

○国務大臣(森山眞弓君) もちろん、人権にかかわることですから法務省も大いにかかわっているわけでございますが、最終的にまとめて国連にお出しになるというのは外務省の仕事ということになっております。

○福山哲郎君 法務省はその作業にはかかわっていますか。

○国務大臣(森山眞弓君) はい。当然かかわっております。

○福山哲郎君 どのような状況でかかわられていますか。

○国務大臣(森山眞弓君) 関係者の意見などを聴取いたしまして、それを法務省として取りまとめるということをやっております。

○福山哲郎君 非常にあいまいなんですが。
 じゃ、二〇〇三年、人種差別撤廃委員会の報告書の提出の見通し、一月の末が期限だと思いますが、これに対して、法務大臣お答えください。一月末に、期限に提出できそうですか。法務大臣お答えください。

○国務大臣(森山眞弓君) 大変残念ながら、期限どおりにはできることはなさそうでございます。

○福山哲郎君 外務大臣、お答えください。

○国務大臣(川口順子君) 法務大臣がお答えになられたようなことでございまして、理由も先ほど申し上げたようなことでございます。

○福山哲郎君 これ、恐らく両方とも余り、ほかの仕事もあるのかもしれません、本当にお忙しいかもしれませんが、やはり人権擁護法案が通っていないことも大きな理由のうちの一つだというふうに思いますし、更に言えば、これは法務省と外務省が、先ほど意見を聴取してとかおっしゃられましたけれども、現実問題としてはそれぞれが別個にやっているというか、外務省が出しているか出さないか、法務省も実は、昨日聞いたところ分からないみたいな答えが実は法務省からありまして、これ、だからこそ内閣府等で、法務省だけではなくて全体として、こういった問題については国際要請もあるから内閣府に置くべきではないかと、人権擁護の救済機関を置くべきではないかということを我々は主張しているわけです。
 それで、官房長官にお伺いしたいんですが、今みたいなやり取りとか、現実に人権擁護法案が二回の国会で継続していることも含めて、官房長官、この問題についてはどのように今お考えでしょうか。

○国務大臣(福田康夫君) 遅れているという事実があるようでございます。これはできるだけ早めなければいけないと、これはそういうふうに率直に思います。
 だからといって、じゃ内閣府に持ってくるかどうかということについては、これはまたちょっと違う事情もございますので、やはりこういう人権の救済手続に関するような法律的な知識とか経験を有するそういう人たちを持っている法務省でもって、に置いておくという方が、この方が的確な仕事ができると、こういうことであります。もちろん、しかし、その前提としては、この擁護委員会ですか、これの独立性と、こういうものは厳に守られなければいけないと思っております。また、その方法は講じられていると思っております。

○福山哲郎君 我々は抜本修正を基にこの国会で人権擁護法案通していきたいと思っていますので、何とぞよろしくお願いいたします。
 時間がないので少し早めます。
 補正予算の中身についていきます。
 まず、雇用の問題が非常に重要になっていますが、昨年、総合雇用対策の中で鳴り物入りで退職前長期休業支援助成金というのができました。さらには、建設業労働移動支援助成金というのができました。
 まず、退職前長期休業支援助成金の当初の政府の利用見込み人数をお知らせください。

○国務大臣(坂口力君) これは、平成十四年度当初予算の利用見込額は、約二千五百名でございました。

○福山哲郎君 実績をお答えください。

○国務大臣(坂口力君) 平成十四年十二月末までで十一名認定申請がなされたところでございます。

○福山哲郎君 見込み数二千五百七十三で実績十一人でございます。
 次、建設業労働移動支援助成金、見込みの数を厚生労働大臣、お答えください。

○国務大臣(坂口力君) 一万人でございます。

○福山哲郎君 度々、大臣恐縮なんですが、実績をお答えください。

○国務大臣(坂口力君) 十四年十一月末までに二十九名でございます。

○福山哲郎君 最初の去年、鳴り物入りで総合雇用対策だといって出てきた退職前前期休業支援助成金、見込み数二千五百七十三人で実績十一名、建設業労働移動支援助成金、見込み数一万人に対して実績二十九名でございます。この状況について、厚生労働大臣、どのようにお考えでしょうか。

○国務大臣(坂口力君) この退職前の長期休業助成金制度でございますが、これは希望退職の募集をされました皆さん方が、できればお辞めになります前にその企業に依頼をして、何か月間かの間、次にお勤めになるところのその技術を身に付けていただくということができればというふうに思って作ったものでございまして、ただ、いつかのマスコミにも言われましたとおり、その期間が七日間という非常に短な間にやらなければならなかったということがございまして、これは三か月に既に延長をいたしておりまして、今度、リストラになりますとき、リストラに対しましてはまた六か月というふうに延長したいというふうに思っておりますが、いずれにいたしましても、予想しておりましたほどこの申込みがなかった。
 これは、その退職希望を募ったときにもう少し企業の方も、その人たちがその次に勤めるまでの間に何らかの技術を身に付けさすということにもう少し積極的になってくれるかなというふうに思いましたのが若干我々としては甘かった。そこで、ここを期間を延長し、規制緩和をいたしまして、そして受けやすくしたということでございますけれども、これは二千五百というのは十六年末までの話でございますからまだ期間のある話でございまして、一年間でというわけでは決してございません。
 ですから、この期間をもう少し規制緩和をいたしましたし、いたしますので、もう少し状況を見て、なおかつこれが申込みがないということであれば、内容につきまして少し検討し直したいというふうに思っているところでございます。

○福山哲郎君 制度設計の見誤りにしては余りにも僕は落差が大き過ぎるというふうに思っているんですが、竹中大臣、こういう状況を見てどう思われますか。

○国務大臣(坂口力君) ちょっとその前に、少し。
 済みません、話が混乱しまして、七日間というのは建設の方の話でございまして、済みません、ちょっと期間、間違えました。

○国務大臣(竹中平蔵君) 直接の所管ではございませんので情報量も十分ではございませんが、PR等々も含めて更に厚生労働省の方で努力をいただけるものというふうに思っております。

○福山哲郎君 今回も、厚生労働省を見ますと、早期再就職者支援基金事業というのが二千五百億円予算が計上されています。これは、中身はともかくとして、この二千五百円がどこに行くかというと、一回財団法人を経由します。これは高年齢者雇用開発協会というところなんですが、ここは実は何と、公益法人の見直しによって、事業の一部は独法に移管した上で早晩解散の方向が決まっている財団法人にこの二千五百円が、二千五百億円が行くことになっています。
 こういう財団法人等を通じて基金を作ることによって、今のようなことも含めて実効性がまるで上がらなくなっているのではないかというふうに私は思っているんですが、この件について、厚生労働大臣、いかがですか。

○国務大臣(坂口力君) この早期再就職者支援基金につきましては、十六年度末までというふうに決まっております。十六年度末になりましたらこれは終わる、一応これで終了することになりますし、そしてこれが終わり次第と申しますか、終わると同時にと申しますか、この財団は解散をすることにいたしております。

○福山哲郎君 財務大臣、ちょっと、財務大臣、済みません、申し訳ありませんが、早晩解散になる、平成十六年に解散になる財団法人に二千五百億円お金を入れて雇用対策事業をするということについて、私はちょっと理解ができないんですが、財務大臣、いかがですか。

○国務大臣(塩川正十郎君) 今、話を聞いておりまして、私もその事実を初めて知りました。よく一回実態を調査いたしまして返事いたします。

○福山哲郎君 石原行革担当大臣、独法に移行して、解散移行のところに今回補正で二千五百億円ぶち込まれます。極端な話で言うと、この高年齢者雇用開発協会というのはもう御案内のとおりです。理事長は前労働事務次官。厚生省、労働省の、大蔵省の天下りの方がたくさんいらっしゃいます。こういう実態について、石原行革担当大臣、いかがお思いになられますか。

○国務大臣(石原伸晃君) ただいま厚労大臣から御答弁ありましたように、これは、この早期再就職者支援基金事業が、今のこの不良債権処理を進めることによって、セーフティーネットとして上積みをしている基金なんですね。そして、もう解散するということは所管されている厚労大臣がはっきりおっしゃいましたし、私は、本当にしっかり十六年度末、不良債権処理が終わった段階でこの財団が解散されることを見守っていくというのが私の立場でございます。

○福山哲郎君 今の答えはよく分からないんですが、ただ、基本的に、本当に政府のやろうとしている雇用対策というのが本来実効性が伴っているのかとか、この二千五百億円が解散予定のところに入れられることに対する本当に正当性が一体どこにあるのかとか、こういった点はしっかりと検証していただかないと、国民の税金が入り、なおかつこの補正予算で雇用が膨れ上がるんだ、雇用が増えるんだということを政府は一杯言っているわけですよ。それにもかかわらず、実態として昨年のも惨たんたる結果でございまして、実際の話、こういう点についてしっかりともう一度吟味して、財務大臣言われたように、一度調査して、また御報告をいただきたいと思います。
 それから、もう一個行きます。
 法務省の補正予算、全部で三百三十億円近くなんですが、このうちの構造改革推進型公共投資の予算は幾らですか。

○国務大臣(森山眞弓君) 二百九十八億円余りでございます。

○福山哲郎君 構造改革推進型公共投資の促進というお金が、今、法務大臣言われたように、二百九十八億でございます。そのうちの環境問題等緊急対策費は幾らですか。

○国務大臣(森山眞弓君) 二百九十八億余りが全額、環境問題等の緊急対策になっています。

○福山哲郎君 中身をお教えください。

○国務大臣(森山眞弓君) この構造改革推進型公共投資の促進の中には環境問題等緊急課題への対応という項目がございまして、防災、治安対策等に積極的に取り組んで地域生活の維持向上を図るということになっておりますが、その地域生活の安全の維持向上に資する環境整備の一つといたしまして、法務省関係としては刑務所等施設の緊急整備がございまして、法務省では、現下の刑務所等の過剰収容に対処するために、その新築、増築を行うものでございます。

○福山哲郎君 私は刑務所の整備をすることが駄目だと言っているわけではありません。昨年の名古屋の受刑者が暴行で死亡事件があったことも含めて過剰収容だというのも分かっています。しかし、今回の補正予算は重点四分野ということを財務大臣もよく言われて、構造改革推進型公共投資の促進の環境問題等緊急対策費で、何と法務省施設整備がほぼ全額の二百九十八億で、その整備施設名は福島刑務所、福井刑務所、沖縄刑務所等が全部刑務所でございます。これはやっぱり名目としてはインチキなんじゃないですか。法務大臣、どうですか。

○副大臣(小林興起君) 予算でございますので、法務省と十分に財務省も打合せをさせていただきまして、決定をさせていただいたところでございます。
 今回の補正予算のバックグラウンドを成しますのは、御承知のとおり改革加速プログラムでございまして、この中の構造改革推進型の公共投資の中に刑務所というものが出ているわけでございまして、それほど緊急性が高い環境問題に、これは地域生活の安全の維持ということでしっかりと書かれているところを受けて、今回これを取り上げたところでございます。

○福山哲郎君 何で環境問題なんですか。

○国務大臣(森山眞弓君) 最近の犯罪情勢の悪化を背景とした被収容者の増加ということは先生も憂慮していただいておりますが、過剰収容状態でございまして、これが大変深刻でございます。このような状態を緩和することによりまして、被収容者の更生教育及び職業訓練に適切に対応するとともに、社会復帰の円滑化、再犯防止等を推進するということは、地域生活の安全の維持向上に資するものだというふうに考えております。このように構造改革の加速に合わせて緊急に措置することが必要な施策であるということで、この法務省の予算が計上されていると考えております。

○福山哲郎君 冒頭私も、先ほど申し上げましたように、この質問の前に、私は刑務所の施設整備が必要なのは認めているんです。収容が過剰なのも認めているんです。では、そう書きゃいいじゃないですか。何が構造改革推進型公共投資で環境問題等緊急対策費なんですか。これ見たら国民はみんな、ああ環境問題で新たにできるんだなと。確かに地域の治安、環境問題かもしれません、大きい話で言えば。でも、そんな議論したら何でもありじゃないですか。法務大臣、いかがですか。

○国務大臣(塩川正十郎君) これは物の考え方でございまして、ということは、刑務所であるとか、あるいは拘置所、それから一部は留置場にも今回予算を増額いたしました。それは治安対策も一つはありますし、同時に、この種の事業というものは、言わばスケールの割合小さい事業がたくさんあるんです。箇所付けが多いんです。このことは地元の建設業界に活力を与えることにもなるし、また新しい、新しい……(発言する者あり)まあまあ聞いて。新しい需要を作っていくということにもなりますので、そこでそういう予算の使い方、公共事業といったら何でも道路だとか河川だと思っておられるかも分かりませんが、最近の公共事業は、言わば配分の質が変わりまして、そういう大型の公共事業よりも小さい配分をするということ、そうすることは結局地域の安全を確保することにもなり、安定にも広がってくるから環境も良くなるということで、総合的にやるということであります。

○福山哲郎君 そんなのむちゃくちゃじゃないですか。何で地域の小さい小さい箇所付けになって地域の建設業が公共事業が増えますからみたいな話、私何にもしてないじゃないですか。ちゃんと正直に書けば、治安に対して国民もちゃんと法務省が動いているんだなと理解できるでしょうと。それを法務省が環境問題等とか構造改革とか言うから、それは違うんじゃないですかと。大臣それはちょっと違いますよ。

○国務大臣(塩川正十郎君) そういうことは、結局今度の補正予算は雇用の安定確保でしょう。セーフティーネットと同時に公共事業を通じて、公共事業を通じて少しでも経済を良くしようということでしょう。それが大型に偏ってはいかぬから、小さく分配するということになります。その際に、何を目的にしてそういう予算を分配するかといったら、文教施設の改善であるとか、あるいは治安対策をやるとか、地域の環境を改善するとか、そういういろんな名目を付けてやっておるわけでございまして、だから、そういう点からいって、それは一々議論してそれを決めていこうということはむしろ、それはむしろこじつけた話でもっておるという。

○福山哲郎君 いろいろ名目を付けて公共事業を通じてやろうと、くしくも財務大臣の本音が出ちゃったわけですけれども、これはやっぱり国民をだましていると私は思いますよ。僕は別にここに、刑務所にお金を使うのが駄目だなんて一言も言っていないですよ、先ほどから。これはやっぱりおかしいですよ、補正予算の我々審議をやるときに。
 それから、もう一つ。じゃ、もう一個行きますね。
 環境省の補正予算は補正総額、わずかなんですが、百七十億円なんです。このうちの、中小企業対策といって何が五十億円計上されているか。百七十億のうちの五十億ということは約三分の一です。これは、中小企業対策だといって何が出されているかというと、環境事業団の中小企業者に対する債権のうちの償還困難となっている債権の貸倒引当金の積み増しなんですよ。要は、過去における負債の言わば焦げ付いたやつを、今回五十億円ぶち込んで環境事業団の決算を少しきれいにしましょうという話なわけです。
 百七十億円のうちの五十億円は、こういう前の負にこんなどさくさに紛れてお金を入れて中小企業対策だという議論は僕は非常に乱暴だと思うんですが、環境大臣いかがですか。

○国務大臣(鈴木俊一君) 今御指摘をいただきました環境事業団に対する貸倒引当金の積み増し、五十億のことでございますが、これは、環境事業団の不良債権に対する処理というのはこれは確実に進めなければいけませんが、今回の補正予算におけるこの交付金は、中小企業組合に参加する企業の連鎖倒産を防止することを目的とするものでありまして、現下の経済社会構造の変革に備えた中小企業のセーフティーネットの構築の一つと認識をしております。

○委員長(陣内孝雄君) 時間が参っております。

○福山哲郎君 あのですね、ほかにもいろいろ指摘をしたいと思ったんですが、こういった形の付け替えとか、今本当に、財務大臣が言われましたけれども、名目だけ付けて公共事業を細かくばらまくみたいな話がありまして、本当にこういった形で、国民が期待をしている景気回復とか構造改革とか、それから雇用が増えるとかいうことには僕は到底まだまだ及ばないというふうに思っておりまして、もっときっちり詰めたいと思いますが、時間がなくなりましたので、これで終わらせていただきたいと思います。
 どうもありがとうございました。

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