Document_1999b_Title.jpg (10811 バイト)

 

第146国会  参議院  行財政改革・税制等に関する特別委員会
1999年12月3日

○福山哲郎君 午前中の同僚の佐藤委員に引き続きまして、私、福山哲郎が質問をさせていただきます。
 まずは、続長官におかれましては連日お疲れさまでございます。また御就任おめでとうございます。東京都の副知事をされたということで、僕みたいな若輩者に比べるともう本当に行政経験の豊かな長官に対しまして、きょうは少し質問をさせていただきます。こんな機会をいただきましてありがとうございました。
 私は、今回の、中心的には独立行政法人の問題になっているんですが、よくよく議論の引き合いにイギリスのエージェンシーの話が出されます。逆に言うと、イギリスは我が国の特殊法人をしっかりと見学に来て、視察をした上で、特殊法人制度という日本には不思議な制度があって、イギリスにこの制度を導入すればひょっとするとイギリスの行革もうまくいくのではないかという流れの中でエージェンシー制度というのを導入したと。これを突き詰めて言うと、もう長官御案内のように、行政の実施部門の一部に対して現場の合意を得た上で権限行使にとにかく自由な裁量を与える、現場の実施部門に対し自由な裁量を与えて、その結果業務の効率性を図るものだということだというふうに思いますし、長官もそういった御答弁をいただいていると思います。
 しかし、私は、我が国の今回の独立行政法人については、いわゆる今申し上げた実施部門と企画部門の分離という根本的な独立行政法人の位置づけをするときに重要なこの分離というものに対して、非常にあいまいな状況になっているのではないか。逆に言うと、実施部門を外部化することでスリム化をするという話なんですけれども、こういった趣旨で今回やられたはずなんですが、どうも五十九独立行政法人を見ると、現実に実施部門と企画立案部門が分離できるのかどうか大変あいまいな気がしているんですが、長官としてはいかがお考えか、御答弁いただけますでしょうか。

○国務大臣(続訓弘君) ただいま福山哲郎委員からエールを送られましてありがとうございました。
 私も、実は福山委員がかつて松下政経塾の門下生であるということで、昭和五十五年のお話をさせていただきます。
 たまたま鈴木知事のところに松下先生がお見えになりました。そのときにまさに今お話しのような独立行政法人あるいは特殊法人の話がありました。それはどういうことかといえば、たまたま知事が財政再建に対して大変大なたを振るっておられる、そういう状況の中で、自分の経験とそしてまた自分の所感を教えていただくためにおいでになりました。
 私は、無税国家論というのを初めて伺いました。まさに二十数年前のあの先見性。そしてまた、独立行政法人あるいは特殊法人の強い見直し論をおっしゃいました。今、二十一世紀に向かった日本の国のありようを考えたときに、このままではだめですよ、徹底的な行政のスリム化が必要です、大胆な省庁改革が必要ですよ、大胆な民間に対する規制撤廃が必要ですよ、そしてコスト意識に目覚めなさい、まさに行政はそうでなければだめですよ、こんなお話をされました。その意味では、福山委員はそういう哲学を持った人に育てられ、これからの日本を背負うお一人だと思います。
 そして、自分は今まで財界から大きな声で政府・自民党に対していろいろ申し上げてきたけれども、一つもそれが実行されなかった、ついては志を持つ若い人たちを育てたい、あわせて私財をなげうってPRの雑誌を創設して、大いにこれから日本の国づくりのために自分の余生をささげたい、こういうお話がありました。
 そういうことも踏まえながら、まさに今の独立行政法人は、従前の特殊法人のいろんな欠点を補うために、実は、そしてまたスリム化をするために、そして同時に国民の期待にこたえるために実行することでございますので、その辺のことは御理解を賜っていると思います。

○福山哲郎君 大変お褒めのお言葉をいただきまして、もう照れくさい限りでございますが、松下幸之助塾主の思い出をお話しいただきましてありがとうございます。私どもも本当に幸之助塾主にお世話になり、御指導をいただき、政治をよくしなければ日本はよくならないんだというその思いを持って徒手空拳の中から選挙を戦ってまいりましたので、今、続長官に言われて、志を変えないで頑張っていこうと思いますが、審議としてはもう少し具体的に行きます。
 大学とか研究所とか博物館とか美術館などが今回独立行政法人になっていますが、先ほど冒頭申し上げましたように、企画立案部門と実施部門をどうやって美術館で分離をするのか。その主務官庁が企画立案をして、実施部門を効率化するといいますが、美術館や博物館や研究所でどういった形で分離をしていくのか、なぜこれが独立行政法人として今回挙がってきたのかということについて、お答えをいただけますでしょうか。

○政務次官(河村建夫君) 美術館、博物館等を独立行政法人にするかどうかという問題について、いろいろ御議論をいただいてきたところでありますが、今回、美術館につきましては、御案内のように東京国立近代美術館、京都国立近代美術館、国立西洋美術館、国立国際美術館の四館を一つの法人、それから東京国立博物館、京都国立博物館、奈良国立博物館の三館が一つの法人という形になっておるわけでございます。
 国立博物館は、歴史的に価値の高い文化財を保存して、そして我が国の歴史、文化に対する正しい理解を促して次の世代に着実に継承させていくということを目的とする。国の重要な文化財保護行政の一端を担う。それから、国立美術館は、国内外の作品を問わず、すぐれた美術作品を収集して展示をして、そして国民の鑑賞機会の充実を図って芸術文化の振興に資していきたいということで、これも国の芸術文化振興の非常に重要な機関である。
 このような観点に立って、国の文化財保護行政あるいは芸術文化行政の一環を担う、国策として担うものであるという観点から、これを独立行政法人化していったわけでありまして、この評価につきましても、国立博物館は非常に歴史的な視点から成り立っておりますから、その観点に立ってこれを評価していかなきゃいかぬ。
 それから、美術館は美術価値的な視点という評価をしていかなきゃいかぬということでございまして、この評価のあり方については、今後さらに独立行政法人化の機関の中で、それぞれ独立しておりますが、博物館、美術館、それぞれ役割が違いますけれども、その中でさらに評価のあり方については今後詰めていく、こういうことになるというふうに思います。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 お伺いをしたんですが、余り御明確なお答えをいただいていない。例えば、独立行政法人になろうがなるまいが、博物館が国の重要な文化財を保護することとか重要な歴史的なものを大切にするというのは、独立行政法人であろうがなかろうが多分その役割は変わらない。
 今回、なぜ独立行政法人にするかという合理的な理由としては、それはもともとあった理由でございまして、ここに実は例の行政改革会議事務局が出した最終報告書があるんですが、政策立案機能と実施機能の分離を図ること、思い切ったスリム化が不可欠、質、効率性、透明性の向上があわせて必要と。これらをあわせて実現するための手段が独立行政法人であると。例えばそういう状況の中で、今、政務次官がおっしゃられた、なぜ美術館、博物館が独立行政法人になったのか。これの実施部門と企画立案部門というのを分離するその根拠というのは一体どういうものか。これは実は本質的な話ではないんです。こんな瑣末な話をしたくないんですが、もう一度御答弁いただけますでしょうか。

○政務次官(河村建夫君) 御指摘のとおりで、要するに、企画部門と実施部門を分離することによってメリットがどのように生まれるかということがやっぱり一つのポイントだというふうに思います。
 御指摘のように、中央省庁等改革基本法において、運営の効率化を図っていかなきゃいかぬということでありまして、これは独立行政法人化することによって、予算に関する単年度主義によらない弾力的で柔軟な会計制度の運用が可能になっていくであろうということが一点。
 それから、独立行政法人に対する主務大臣の監督、関与というものが法律によりかなり限定されて、その法人の自主性、自律性が増して対象機関の提供する行政サービスの質の向上を図ることが、裁量権が増しますから自由にやれるということが考えられるわけであります。文部省としては、行政事務の効率化の視点、これはもちろん大事でありますが、この機関というものの特性に配慮をして、文部省所管機関の機能をさらに充実するという形で一連の独立行政法人化の個別法の立法作業、これに今取り組んできてこのような形で法案を出しているようなわけでございます。

○福山哲郎君 今のは独立行政法人化するに当たる一般論だというふうに承ります。別に美術館、博物館が独立行政法人化をするための合理的な理由だというふうには私はどうしても受け取れないんですが、これで行くと切りがありませんので、総務庁長官にお伺いをします。
 今度、この独立行政法人は二種類に分類をされました。いわゆる特定独立行政法人、これは国家公務員の身分を持つ特定独立行政法人と国家公務員の身分を付与しない独立行政法人が存在することになりました。特定独立行政法人と普通の独立行政法人の区分をされた基準は何か、お答えをいただけますでしょうか。

○国務大臣(続訓弘君) 中央省庁等改革基本法の四十条及びこれを受けた独立行政法人通則法第二条の二項において、独立行政法人のうち、その業務の停滞が国民生活または社会経済の安定に直接かつ著しい支障を及ぼすと認められるもの、そのほか当該独立行政法人の目的、業務の性質などを総合的に勘案して必要と認められるものにつきましては、その役職員に国家公務員の身分を与える特定独立行政法人とする旨定められております。
 この規定に従いまして検討した結果、先ほど御指摘のありましたように、五十五の法人については特定独立行政法人とし、その他四つの法人につきましては国家公務員の身分を与えない法人とすると、こういうことにしたわけであります。

○福山哲郎君 かつての行政改革会議の議論では、独立行政法人というのは原則非公務員身分の団体との整理が大部分だったんです。しかし、現実にふたをあけてみると、その大部分は全く逆で、公務員型の独立行政法人が今、長官が言われたように五十五、そして非公務員型が四つだったわけです。
 そして、今、長官がまさに言われましたように、その基準というのは、その業務の停滞が国民生活または社会経済の安定に直接かつ著しい支障を及ぼすと認められるものについては公務員型だというふうにおっしゃったわけですが、逆にそれだけで、その基準だけでこの五十五と四つにどうやって分けられたのか。五十五はいろんなものに支障を来すから公務員型だと、四つは支障を来さないから非公務員型だというふうに言われますが、そこは一体どういう基準だったんでしょうか。
 例えば、美術館、研究所、青年の家とか、そういったものが今ごちゃまぜになって五十五あるわけですね。この非公務員型と公務員型の区分の基準を、総務庁長官、もう少し詳しくお教えいただきたい。

○国務大臣(続訓弘君) 先ほど申し上げましたように、中央省庁等改革基本法の四十条とそれを受けた通則法の二条二項、この絡みについて事務的にそれぞれ議論が深められ、そして省庁との議論の中で、今お話しのように、五十五、四というふうに結果として区分けされたと。
 したがって、それではどういう議論がなされたのかということにつきましては、私は、せっかくの御質問ではございますけれども、その衝にいなかったものですから詳しいこと、経過はわかりません。しかし、私の経験からすれば、相当の議論があって五十五と四に集約されたのは間違いないと。しかし、今申し上げたように、その経緯について福山委員にここでお示しすることができないことを大変恐縮に存じます。

○福山哲郎君 もう本当に御誠実に答えていただいているのであれなんですが、定義を示していただかないと本当によくわからない。
 例えば、私の知人で筑波の研究所に勤務をしている者がおります。そういう者から言わせると、公務員型ではなくて非公務員型の方が、その長が海外からいろんな研究者を引っ張ってきて自分の任用でいろんなことができたりとか、そういう自由度が逆に言うと研究所とかにはあるのではないかとかいう話もありますし、例えば総務省関係で言うと、統計センターが別に非公務員型でも、先ほど言われたその業務の停滞が国民生活または社会経済の安定に直接かつ著しい支障を、統計センターが公務員型か非公務員型か、例えば非公務員型でも支障を来すようには、私の感覚でいうと思えないわけですね。
 そうすると、本当に何の、結構例えば恣意的なものなのか、各省庁のお互いの調整の結果出てきたものなのかということで、先ほど長官が言われたように定義がはっきりしないということは、逆に言うとこの五十五と四つの位置づけもはっきりしてこないというふうに感じるんですが、済みません、もう一度御答弁いただけますか。

○国務大臣(続訓弘君) 例えば今、筑波の研究所のお話がございました。仮に独立行政法人化された研究所であったとしても、その任用の問題について、例えば民間から有能な研究者を採用するということは理事長の権限であります。したがって、採用された暁には公務員の身分が与えられるけれども、しかしそういう意味では私は自由な人事の交流が保障されていると。要するに、なるがゆえに独立行政法人化したわけですから、その辺のことは御理解をいただきたいと存じます。
 それともう一つは、今、私どもの統計センターの話がございました。統計センターの場合は、まさに公務員にすることによって、いわば守秘義務が課せられる。統計は、御案内のようにいろんな意味で重要な仕事でもございますので、そういう意味で公務員の身分を与えて、同時にそれに守秘義務を課せるということもこれまた重要でありますので、そういう意味で公務員の身分を与えている、こういうことに御理解をいただきたいと存じます。

○福山哲郎君 では、文部省にもう一度お伺いをしたいんですが、先ほどはなぜ独立行政法人に美術館や博物館をしたかというふうにお伺いしました。今度は、今申し上げた研究施設や例えばオリンピックセンターがございますね。国立オリンピック記念青少年センターがなぜ公務員型の特定独立行政法人なのか、お答えいただけますか。

○政務次官(河村建夫君) 国立オリンピック記念青少年総合センターが特定独立行政法人になっておるわけでございますが、この件につきましては、このセンターが青少年教育指導者等の研修の拠点になっておって、青少年教育団体等の連携の拠点としての役割を果たしているということで、まさにいわば我が国の青少年教育の唯一のナショナルセンターとしての高度の中立性、信頼性が求められている、こういう業務をやっている。そんなことを二条にありますように総合的に勘案したときに、このセンターについては役員、職員に国家公務員の身分を与えて特定の独立行政法人にすべきである、このような判断に立ったわけであります。

○福山哲郎君 それでは、国立青年の家は特定独立行政法人ではありませんね。国立青年の家や国立少年自然の家が特定独立行政法人ではない理由をお答えいただけますか。

○政務次官(河村建夫君) 御指摘の国立青年の家、国立少年自然の家の問題でありますが、これを非公務員型にするについてもいろんな議論がありまして、もっと民営化したらどうかとかいう意見まで実はあったわけであります。
 本件については、御案内のように、両青年の家、自然の家とも、我が国の文教施策の最重要課題であります心の教育を中心に、これを推進する上で非常に重要な役割を果たしてきておりまして、それぞれの県、規模、質的な格差はございますが、地方自治体レベルでも同様の施設が既に県立等々でございまして、それとの関連等を考えたときに、これはそれぞれの地域の特性をやっぱり生かした創意工夫や弾力的な運営をしていただくことが望ましいであろうという結論に立ちまして、国立青年の家と国立少年自然の家については非公務員型でやっていこう、こういうことになったわけです。

○福山哲郎君 先ほどおっしゃられました国立オリンピック記念青少年センターは、中立性、信頼性が非常に大切だ、ナショナルセンターとしての位置づけがあると。今、国立青年の家や自然の家は、地方の弾力性を大切にしたいとは言いながら、やはり心の教育のための中核の中心施設だと言われました。
 一体、ここで何で公務員型と非公務員型の違いが出てくるのかよくわからない。例えば、位置づけとしても、私も青少年センターも行ったこともありますし、青年の家は地元でよく使わせていただいているわけですが、お互いがそちらへ行って、例えば指導者が教育を受けるにしても指導を受けるにしても、青少年がそこに行くにしても、本質的には僕は余り変わらないという気もしないでもないんですが、そこの差異、区別の合理的な根拠というのはどういうものがあるんでしょうか。

○政務次官(河村建夫君) 先ほどちょっと御答弁申し上げました。同じような施設が、ほとんど各県ももう県立の青年の家、自然の家的なものを持っておりまして、そういうものから考えると、やはりナショナルセンター的な意味をこの国立自然の家に独立行政法人としてそういう形で持たせていくべきであろうという観点で、これについては、先ほど申し上げましたように、それは全県がこれを引き取って移管できないかというような検討も検討の段階でいろいろあったわけであります。
 しかし、総合的に勘案して、これは独立行政法人として国の予算もどうしても必要であるという観点に立って、しかし、さはさりながら、いわゆる国の附属機関からもう一歩開いた形にしてもっと自由にやれるように、地方がもっと使い勝手のいいような形にするには独立行政法人がいい、それは非公務員型でいける、こういうことになったわけであります。

○福山哲郎君 どうもくどいと思われるかもしれませんが、例えば青少年センターが社会経済の安定に著しい支障を及ぼす可能性がある、業務の停滞が国民生活に大変大きな影響があるというふうにみなされるから、じゃ公務員型にしたというわけではないわけですね。今の理由だとそうですよね。だって、青少年センターが公務員型、非公務員型で、それが先ほど長官の言われた国民生活、社会経済の安定に直接かつ著しい支障を及ぼすというふうには、今の御答弁では直結をしていないように思うわけです。
 私は、別にこれ細かく、もう何かくどいようで、嫌らしいようなんで嫌なんですが、例えば今回、通産省が非公務員型にしている日本貿易保険という独立行政法人ができています。貿易保険のホームページをとってきたんですけれども、これは日本の輸出入に対して、海上保険、貨物を輸送する際の沈没や火災やその他の損傷を受けた場合、そういったものに対する取引上の危険をカバーするための日本貿易保険がある。これ、今回独立行政法人になるわけです。これは非公務員型なんです。これはどういった場合かというと、民間の海上保険ではカバーし切れない非常に公益性の高いものの貿易取引、もちろんあると思うんですね、国益として。そういったものに対して貿易保険をつけるということでリスクヘッジのためにつくっている日本貿易保険、ここが実は非公務員型なんです。
 私は、先ほど長官の言われた「業務の停滞が国民生活又は社会経済の安定に直接かつ著しい支障を及ぼすと認められる」場合というのは、ひょっとすると、言葉は悪いかもしれませんけれども、国立の青少年センターよりも、この貿易保険が何か業務が停滞した場合にはよっぽど輸出入の問題で、日本にいろんなものが入ってくることに対して支障を来すわけですから、これはあくまでも私の私見だと言われればそのとおりなのかもしれませんが、こちらの方がよっぽど、逆に言うと長官の言われた定義でいうと、公務員型の方が当てはまるような気がするわけです。
 ところが、今おっしゃられた青少年センターと青年の家の差異は、正直申し上げまして本当にそれが公務員型か非公務員型かという大きい合理的な根拠になるとは思えなくて、特に逆にこういう日本貿易保険みたいなところが非公務員型になっているから、余計私はその基準みたいなものに対してよくわからぬなと思うんですが、いかがですか。

○政務次官(河村建夫君) 今の御指摘のそういう貿易保険ですか、そういうものとの比較が、そういうものは直接国民生活という観点からくればまさに経済とも密接でございますから、そういう観点があろうと思います。ただ、この少年自然の家が国民生活に直接支障を及ぼすかどうかと言われると、これはその判断とはちょっと判断基準が違うと思うんですけれども、しかし心の教育を進める上で、これがあることによってどういうふうな使命を果たしてきたかという考え方に立てば、やはりこれもそういうふうな心の教育を進める上で支障を来してはならぬという考え方が成り立つと思うのであります。
 と同時に、もう一つの条件としては、やはりその独立行政法人の目的とか業務の性質等を総合的に勘案してとする必要、例えば独立行政法人を非公務員型にすることによって人材交流、地方との人材交流が自由にできる、国立のままで置いておきますと地方からの人材を移すとき国家公務員にまたするとかしないとかというような問題もありますから。教育に関するいろんな方々が自由にその中に入っていただくことも考えていかなきゃいかぬ。人材登用、そういうような観点からも、この国立少年自然の家は非公務員型でやる方がよりベターである、こういう観点に立ってやってきた、このように考えております。

○福山哲郎君 済みません、私は余り頭がよくないので何回聞いてもよくわからないんですが。
 とにかくそういった面では、非常に今回の五十五と四つというものに対して私は大変あいまいだというふうに思っています。あいまいだということはそれだけ独立行政法人の位置づけもあいまいになってくる、当初の目的から徐々にあいまいになってくるというふうに思っていまして、少し観点を変えてお伺いします。
 特定独立行政法人、いわゆる今の五十五ですが、五十五の独立行政法人に移られる公務員数は一体何名になりますでしょうか。これは細かい数字ですので政府参考人でも結構でございます。

○政府参考人(河野昭君) 特定独立行政法人、今五十五法人を予定しているのは御承知のとおりでございます。具体的にそれぞれに何人の職員が移行するかというのは、それは今後確定していく話でございますが、これら五十五法人に係る事務事業に現在従事している職員の数は約一万九千人でございます。

○福山哲郎君 そしたら、非公務員型の四独立行政法人に移行されるという非公務員の数は何人になりますでしょうか。

○政府参考人(河野昭君) ただいま申し上げたように確定数ではございませんが、約八百人でございます。

○福山哲郎君 ということは、公務員型が一万九千人、非公務員型が八百人ということだというふうに思います。
 これはもう衆議院でもさんざん議論をされていますし、過去においても前国会でも議論された話なんですが、もう一度お伺いをします。この特定独立法人というのは、通則法の五十一条によると完全に公務員ということでよろしいんですね。

○政務次官(持永和見君) 特定独立行政法人の職員については、国家公務員としての身分が法律上付与されております。

○福山哲郎君 先ほど同僚の佐藤委員の話と大分重複をしてくるんですが、この公務員というのは国家総定員法の枠組み内ですか、外ですか。

○政務次官(持永和見君) 定員管理の法律によって独立行政法人の職員がいわば定員の枠からは除外されております。

○福山哲郎君 なぜ除外されているんでしょうか。だって、通則法の五十一条だと公務員なんですね。
 本年、政府が閣議決定をした中央省庁等改革の推進に関する方針、第四の一には、国家公務員は平成十二年度採用分から毎年新規採用を減らし、公務員数を十年間で二五%削減すると定められているわけです。政府が進めようとしている独立行政法人化による公務員定数の削減というのは、要はこの中に特定独立行政法人は入っているわけですね、二五%の中に特定独立行政法人の先ほど言われた一万九千人は入るわけですね。

○政務次官(持永和見君) 定員削減の問題は、これはまた小渕総理が基本法や閣議決定のもとで公約されておりますが、その公約による二五%削減につきましては、できるだけ国家公務員のやっておる仕事について、機械化とか民間委託を進めるための合理化努力、民営化をする、さらには独立法人化をする、新規増員を抑制するというあらゆる手段を使ってこの二五%を目標とした定員削減をしていこうということでありまして、そういった二五%の削減対象の中には、いわば目標としての削減対象の中には独立法人の職員も含まれております。

○福山哲郎君 ここが多分先ほどの佐藤委員とも同様の話なんですが、通則法によると国家公務員とする、しかしそれは国家総定員法の枠組みには入らない。これは法律同士なんですが、大変矛盾をしていると思うんです。
 例えば、先ほど申し上げた四つの独立行政法人、これの非公務員型が八百人なわけです。それは確かに八百人なら二五%の約束なんか守れるわけがないわけですから、この独立行政法人にした五十五の一万九千人をオンしなければいけないんだと思うんです。しかし、これが通則法上では公務員としているけれども、国家総定員法の枠組みには入らないということに対してしっかりと理由をお答えいただきたいんです。

○政務次官(持永和見君) これは委員も御承知と思いますけれども、国家公務員というのは非常に幅が広い概念でありまして、それぞれの法律によってこの分を国家公務員にする、公務員にしないというのがあります。例えば、率直に申し上げて、国会議員あるいは国会職員も、これはいわば国家公務員法上に言う大きな幅の広い国家公務員であります。
 そういうことからいうと、それぞれの法律によって国家公務員のそれぞれの範囲が規定をされておるわけでありまして、いわば定員管理の上では独立行政法人の職員は国家公務員の定員の管理からは外れるよということで、国家公務員としないということじゃなくて、定員の対象、定員規制の対象にしない、こういうことであろうと思います。
 それぞれの法律がそれぞれの目的なりそれぞれの経緯によってつくられておるわけでありますから、独立行政法人法の今お願いしている個別法は、それぞれの個別の目的なり、あるいは業務の中身なり、あるいはその経緯によって今お願いをしているわけでありますし、定員管理の法律は定員管理のそれぞれの経緯によってつくられている、こういうふうに御理解をいただきたいと思います。

○福山哲郎君 国家公務員にはいろいろなものがあって、あるときには定員規制の対象になる国家公務員と、あるときには定員規制の対象にならない国家公務員がいて、それぞれの法律によって適用が違うと今おっしゃったわけです。
 では、それの合理的な根拠は、どういう法律を根拠にそういう対象が違うということが認められるわけですか。

○政府参考人(河野昭君) 国家公務員、いろんな定義があるということは今、政務次官から申し上げたとおりでございます。先ほどから申し上げている総定員法といいますのは、これはいわゆる国家公務員の総定員でございませんで、正式な名称は行政機関の定員の法律でございます。
 したがって、国家公務員という、一般職の国家公務員でもいわゆる我々から非常勤職員まで含むわけでございますが、そのうちの広い国家公務員の中の行政機関の職員を規制したのがいわゆる総定員法の対象と、そういう整理でございます。

○福山哲郎君 ということは、独立行政法人は国家公務員だけれども行政機関ではない、だから定員の対象にならないと。そんな詭弁ないでしょう。それは通用しないですよ。国家公務員だと通則法上に書いてあって、でも独立行政法人だから、要は枠組みは行政機関ではない、働いている人間は国家公務員だと。だから、行政機関ではないから定員法の枠組みには入らない。長官、これ法律では矛盾していますね。これは説明しようがないですね。長官、いかがですか。

○国務大臣(続訓弘君) 福山委員の御疑問、私も全く同じなんですよ。それは、私自身もいろいろ事務当局と議論をしました。
 今、国家公務員は八十五万おります。そのうちの三十万は郵政の関係であります。したがって、五十五万が総理が公約をいたしました二五%の削減の対象になります。したがって、五十五万掛ける二五%は約十四万人なんです。十四万人を削減するということは私は大変至難のわざだと、こんなふうに思います。
 そこで、それでは具体的に十四万人の削減方法はいかにと聞けば、今るる御質問ございましたように、独立法人も当然今五十五万の対象になるわけですから、したがって二五%削減の対象にはなるわけです。しかし、たまたま独立法人化することによって法律の外に出ると。そうなると、それもカウントされる。
 あわせて、私どもは国民に対する公約、十四万人の削減については純減を目指して一生懸命頑張るということで、私も幾らか理解を、事務当局の議論に若干かみ合わない点はありましたけれども、私自身はなるほどそういう理論があるのかなというふうに理解をした。
 そこで、今度は国民の皆様に、私どもは責任を持って二五%の削減、これは純減を目指して努力をいたします、これが小渕総理の国民に対する公約ですから、その公約は絶対に果たす、不退転の決意で果たすと。しかも、それは十年、平成十三年から平成二十二年にかけてのお約束であります。これは守らせていただきたいと思います。

○福山哲郎君 もう長官が余りにも誠実にお答えいただいているので、どうしようかなと思うぐらいなんですが、長官が矛盾をしているというのをお認めになっている。確かに、そうすると、もう僕らどうしようというんだ、じゃこの二五%の約束自身も余り意味がないんじゃないかと。国民に二五%の公約をするぐらいだったらちゃんと真実のことを伝えるべきではないかというふうに私などは思うわけです。
 やっぱりこういう矛盾を長官自身がお認めになって、先ほど言われた、国家公務員、行政機関ではない、行政機関に対してだとかいう、そういう詭弁を政府が使われるというのは大変僕はよくないと思いますし、それがわかっているからには、お認めになったからには、せっかく委員会をしているわけですから、ぜひ修正その他、委員間で御議論をいただきたいというふうに思います。
 それから、もう一つすごく重要な問題があります。今回の中央省庁の施行法に伴う関連法案というのは、基本的には形式的な変更だということが多く言われました。審議会の合理化に伴って審議会の変更を行ったり、それから所要の改正という形でいろんな施行日を定めたり、新たな省庁再編によって大臣名や府省名を変えたりというような形式的な変更だと言われましたが、形式的な変更という位置づけで本当によろしいんでしょうか。いかがですか。

○国務大臣(続訓弘君) その前に、矛盾の点について私は率直にお話を申し上げましたけれども、私自身がそういう矛盾を感じたと。しかしながら、総理がお約束をした二五%の定数削減の中には今申し上げた八十五万の公務員がおられて、そして三十万人の郵政職員を除いた五十五万が純減の対象になります、その中で十四万人が削減の対象になります、それを目指して一生懸命頑張りますと。その意味では、独立行政法人に移行するその移行した方も十四万人の中にカウントしますよと。
 しかし、同時に純減を目指すわけですから、なお独立行政法人に移行した後も、あるいは残っている五十五万マイナスの約二万、その中でさらに今の純減を目指すという努力をしなくちゃいかぬ。これはお約束しているわけですから、総理がお約束したことはこれは守らせていただきます。
 ただし、今定数に、国家公務員の定数がどうだこうだという、そういうには非常にあいまいな点があるということは、私もそういう疑問を持っている、こういうことですから、その辺のところを、私が矛盾云々と言ったわけじゃありませんので、私自身の理解の仕方とそれぞれ行政当局が言う理解の仕方が違っていたと。しかし、それは今や私も理解をした、こういうことですから。

○福山哲郎君 私は余り理解していないですが、長官、次へお答えをいただきたいと思います。

○政務次官(持永和見君) 今回の施行法案の内容は形式的なものだけかというような御質問でありますけれども、今回の施行法案は、さきに成立をさせていただきました中央省庁改革関係法で決められたその内容に従いまして、いわば事後処理的に、大臣の名前とか府省の名前とか審議会の名前とか、そういうものを変えることを中心とした改正でございます。

○福山哲郎君 いや、ここが非常に重要な問題が隠されています。
 象徴的な話を一つ申し上げます。もう時間もございません。
 いわゆる大変長年各委員の皆さんの御努力、それから世論の後押しをいただいて成立をした情報公開法案、あれの附則に対する変更が今回の施行法にあります。行政機関の保有する情報の公開に関する法律の附則に今回変更点がございます。その附則の二項、もともとこれも国会で大変議論になりましたが、特殊法人の情報公開についてはこの法律の公布後二年を目途として法制上の措置を講ずると。これは長官も御存じのはずです。
 しかし今回、この独立行政法人が、どういうわけかわかりませんが、この附則の二項、特殊法人とともに、政府は、独立行政法人及び特殊法人の保有する情報の公開に関し「公布後二年を目途として」といって、どういうわけかわかりませんが、独立行政法人がこの二年後の法律上の見直しの中に含まれているわけですね。
 独立行政法人というのは、先ほどまさに長官が佐藤委員のときに言われたように、成果の情報を公開する、透明度を高めるというのが今回の大変大きな目的であったわけで、さらには、この情報公開法案という重要なものの附則の中に、この独立行政法人が二年後までは行政情報を出さないと。
 そしたら、多分向こうは行政機関ではないからだと言うんだろうと思うんですが、これは余りにも今回の施行法、一遍にいろんな法律が審議をされていますが、この中に隠れているんですけれども、非常に重要な論点だと思うんですが、長官、いかがですか。

○政府参考人(河野昭君) ちょっと事務的な説明をさせていただきたいんですが。それで……

○福山哲郎君 いや、長官に。

○国務大臣(続訓弘君) 独立行政法人は、独立行政法人通則法にもございますように、国から独立した法人格を持つものでございますことから、国の行政機関を対象とした情報公開法の上では対象外ということになるわけです。
 しかしながら、独立行政法人の情報公開は今御指摘のように重要なものでございますので、政府は、本年七月、行政改革推進本部のもとに専門有識者から成る特殊法人情報公開検討委員会を設置し、特殊法人の情報公開法制の検討とあわせて独立行政法人の扱いも検討しております。
 現在、同委員会は、来年の七月ごろに報告を取りまとめるべく精力的に検討を進めており、報告がなされた後は特殊法人とともに情報公開の法制化について適切に対応してまいる、こんなふうに思っております。

○福山哲郎君 もう終わりますが、先ほど長官が矛盾をしているというふうに認められました。また、この施行法の細かいところでは急に、今まで国の機関として情報公開が義務づけられていたものが外にアウトソーシングされた途端に附則の中に、二年後の見直しの中に含まれているというふうな状況で、大変私は問題があるというふうに思っていまして、そこを指摘して私の質問を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。(拍手)

 


 

第146国会  参議院   中小企業対策特別委員会  1999年11月22日

○福山哲郎君 民主党・新緑風会の福山哲郎でございます。
 連休の合間、大変お疲れさまでございます。今回の法案について少し質問をさせていただこうと思います。
 まずは、通産大臣におかれましては御就任おめでとうございます。大変個人的なことで恐縮なんですけれども、大臣の義理の息子さんが私の先輩でございまして、先輩から、大臣は人格的にも義理の父としても大変すばらしい方だというふうに伺っておりまして、きょうはその大臣と一緒に審議をさせていただくことを大変楽しみにやってまいりました。どうかよろしくお願い申し上げます。
 実は、私ここにことしの六月に私のメーリングリストに入ったメールを四通持ってまいりました。中小企業に関することでございまして、まずは、大臣、政府参考人の皆さんにこのメールの中身をちょっと聞いていただきたいと思います。少し長くなりますが、よろしくお願いいたします。メールの発信者はほとんど私と同世代でございます。
  今日は、矢島です。
  久しぶりに発信します。
  初めての方にはまず自己紹介を。長野県に本社があるワイシャツ・メーカーの専務をしています。
  ワイシャツの製造というのは労働集約型産業の典型です。丁度、一週間前の今日、私自身でも以前、二年半程、工場長をしていた鹿児島県鹿屋市にある鹿屋FLEXという従業員百四十名強の工場を閉鎖しました。女性が九割という女子雇用型の職場でしたが、母子家庭の比率はかなり高い工場でした。ここ一、二年、地滑り的に国内縫製から海外縫製へとお客様の需要も変わり、海外工場を増強する一方で四つある国内工場の内、上記一工場をついに閉鎖せざるを得なくなりました。閉鎖に伴い全従業員解雇です。発表は四月上旬にしました。その閉鎖日当日の話、少し聞いて下さい。
  当日の午後、現地鹿屋市に到着。市長、商工会議所、職安等を回った後、工場に入ったのが三時過ぎ。既に最終出荷も済んでおり、ミシン等の搬出準備が始められていました。がらんとした工場内で言いようのない淋しさに襲われる。グループ毎にあちこちで固まっている人達の顔なんて、勿論、まともに見られない。
  三時四十五分、閉鎖式スタート。工場長の話があり、その後が会社代表としての私の話。マイクの前に立った途端、涙がこみ上げ、胸が締め付けられて一言も言葉が出ない。数分間のインターバルをもらう。その間に総務からの事務連絡。一斉にあちこちから泣き声が漏れてくる。改めてマイクの前に立ち、どうにかこうにか鹿屋FLEX最期の挨拶を終える。
  さて、皆さんに本当に聞いて頂きたいのはこれから先です。
  その夜、従業員の総意として彼等の積立金でお別れ会の宴会が開かれました。百四十名強の内、欠席はほんの三、四人。淋しさの中、大いに盛り上がりました。
  酌をして歩く中、みんなが私の所に次々来て言うことは、「矢島さん、頑張ってね。本当に頑張ってね。」それこそ、何人に言われたか分からない。ある母子家庭のライン職長が言ったのは、「会社のお陰で、家が建ったよ。車も買い換えられた。ありがとう。」ある男子スタッフは、「仕事は関係なくなっても、これからも付き合って下さいね。」宴会場内、数カ所の集団で聞かされた究極の台詞は、「矢島さん、もし鹿屋でまた工場を開くことがあったら、私ら来るからね。きっと工場また開いてよ。」何でみんなを一方的に解雇して、仕事を奪う私が励まされなければならないんだ。
  四月の閉鎖発表後も少しも生産性も下がらず、品質の乱れも起こさない工場でした。再就職活動も工場が終わるまではしたくないという従業員が大勢いた工場でした。時代の流れとはいえ、こんなにもモラルの高い人達でできた工場を閉鎖しなければならないって言うのは無性に悔しくって仕方がない。どうしたら、こんなにも素晴らしい日本という国に生産を取り戻せるんだろう。
  本当に本当に、日本を一日も早く元気にしたい。元気になった日本の男の人が必要とするのは、きっときっと遊び心があって、楽しいシャツのはずだ。そういう商品は、絶対に長い生産期間を使って大量に海外で作るような商品ではない。何とか一緒に日本を元気付けましょう。早く元気になるといいな、日本。
  最後に、私にとって鹿屋の従業員から罵られなかったというのは、さほど重要なことではありません。かれら自身が「こんな会社の為にこき使われて、私の、俺の、過去何年間は一体何だったんだ。」なんて思わず、辞めてもらえたこと。彼等の最後のプライドが守れたのが、私にとっての、せめてもの救いです。
  鹿屋FLEXの従業員の皆さん、どうもありがとう。
というメールが入りました。
 これは私だけに来たメールではなくて、私の仲間、たくさんの、それこそ何十人というメーリングリストに一斉に入ったメールです。これに次々と実は私の同世代の友人が反応しました。
 ある方です。
  矢島さん、皆さん
  工場閉鎖の話ありがとうございました。このようなお話は隠しておきたい筈なのにあえて発表される矢島さんの勇気に感動しました。
  四年程前のことですが、ある上場企業の下請けをして頂いていた企業があります。その上場企業からの下請けの仕事が少なくなってきた時のことです。トップが電子部品の組立てから一転してモロヘイヤの栽培を手掛けられました。途中、栽培技術の色々な困難を克服されまして、現在は成功されています。
  矢島さんの会社も、優秀な人材を活かせる、他のジャンルが見つかるといいですね。
という返事が来ました。
 もう一個。
  四月に友人が会社を倒産させました。先日、その友人は、銀行は中小企業には金を貸さない、銀行に火をつけてやろうか、と苦笑していました。色々な理由があるにせよ日本という国の策に憤りを感じるのは小生だけか。常に強者への策、税金の大規模投入がはたして国民を守るのか。日本人の我慢強さに委ねる無策、小生の会社はある大企業と契約していますが、あまりの無謀さに反旗を翻しました。潰されるかもしれませんが筋を通します。まあまあ、まあまあは止めました。矢島さんと小生の業界は違っても時代、環境は同じです。我々が未来を創ろうではありませんか。振出しに戻る事に恐怖はないのですから…
  では又お会いできる時を楽しみにしています。お体ご自愛下さい。
 これがもう一人。
 もう一方だけ紹介させてください。
  メール拝読いたしました。胸がつまります。涙が出ました。いろんなことを考えました。何かを伝えたくても思いが乱れます。
  矢島さんのメールを読ませていただいて頭に浮かんできたことがあります。以前に上杉鷹山を書かれたある方の講演の中で、リストラについておっしゃった言葉が頭から離れないのです。「リストラは人を切ることではない。自分の周りの人と時代の荒波を乗り切るために、その人達を乗せていくための新しい船を造ることである。」というのがその主旨です。この言葉を聞いてから、私はいつも仕事の創造をこころがけていこうと思いました。
  私の家業は料理旅館です。この時代ですから、かなりつらいものがあります。ですから、数年前から観光のお客様や女性のお客様を獲得するための努力をしています。少しずつですけれども、お客様が広がってきました。しかし、数字は横ばいですが、なんとか生き残っています。他にも色々なことを考え実行しました。大成功はしていませんが、一通り種まきが終わった感じがしています。性格が災いしてか、幸いしてかはわかりませんが、売り上げ増進策はいっぱい思い付くのですが、経費の削減はさっぱりです。ばかな社長ですが、みんなが助けてくれます。そのみんなを積んでいくための、新しい船を一生懸命考えています。みんなを泥船に乗せないように必死です。試行錯誤の連続ですが、後ろにはさがりません。ドンキホーテのようです。
  矢島さんの鹿屋の工場の人たちは素敵な人ばかりのようですね。頑張れ、矢島さん。鹿屋の人を乗せていける新しい船を造ってあげてください。あなたなら出来ます。頑張りましょう。
  ご縁に感謝して。
 これはたった四人の方のメールなんですが、実はこれだけではありません。本当に何十人もの方々がこの矢島さんの百四十人が働く工場閉鎖のメールに反応しました。そして、先ほども申し上げましたように、私たちの同じ世代の人間です。
 私は、この中小企業特別委員会審議に参加をさせていただいて、少し政府の答弁はリアリティーがなさ過ぎるのではないかなという気がしています。
 まず、大臣、それから中小企業庁長官も来られていると思いますが、今のメールを聞いて御感想をお聞かせいただけますでしょうか。

○国務大臣(深谷隆司君) まず、福山委員の誠実な質問ぶり、大変感銘を受けております。
 たまたま婿殿と松下政経塾で勉強を一緒にされた由聞いておりましたけれども、初めて議論できる機会を得て幸せに思っています。
 ただいまのホームページに対する発信及びその多くの方々の反応を伺いまして、本当に胸が痛くなる思いでいっぱいであります。バブルがはじけて、経済再生に向けて必死の努力を民間ももちろん官も政治もやってきたわけでありますが、なかなかその垂れ込めた雲が晴れていかない。しかし、昨年、小渕内閣が誕生して経済再生に全力を挙げていろんな政策をとってきました。批判も多いかもしれません。しかし、そういう中からようやくやや明るみが出たかなという、そういう感じが出てまいりました。
 それを確かなものにするために、この臨時国会では、中小企業に活力を持っていただこうという趣旨で、中小企業国会と言われるような内容で議論をしているところであります。臨時国会ではございますけれども、補正予算を組みながら何とか景気回復を確かなものにしようと必死でございます。そういう意味では、ありきたりのといいますか、いいかげんな机の上で物を考えるような発想は少なくともしないつもりで、微力でありますが一生懸命頑張っています。
 今のワイシャツ工場、百数十人の方々が働いている、その工場があるいはその会社がどういう理由でそのようになったかがつまびらかではありませんから正確なことは申し上げませんが、今のお話の範囲で聞くと、社長さんも社員の皆さんも誠実で、こういうような企業がどうしてこのようなところに追い込まれたのか、その状況は私自身もしっかり学んでみたいというふうな思いを強くします。
 そして、そのような厳しい状況にある中で、例えば銀行の融資がままならない、それでは緊急避難的に貸し渋り対策を行おうではないかということなど、数々の手を打ってきたわけであります。また、今の関連して届いたメールの中に、新しい事業を起こしたという話もあったようであります。まさに創業あるいはベンチャー企業を育てようという今の私たちの考え方もそこにあります。
 また、大企業の事業再構築のために、リストラとか下請が非常に苦労している。大企業にも社会的な責任は当然なければなりませんが、その再構築の状況の中でどう社員を守り、そして下請を守るかというのは大企業もあわせて考えていかなければならないし、それらの問題が具体的に示された場合、通産省としてはあらゆる対応で全力を挙げておこたえをしていかなければならないと思っていますし、そのためにしっかり大臣として頑張りたいと考えます。

○政府参考人(岩田満泰君) 御指名でございますので。
 大臣が申し上げましたことですべてでございますが、今の実態についての認識がもう一つではないかという御指摘を受けました。私ども事務当局といたしまして、これまでもそれなりに努めてきたつもりでございますが、引き続き実態の把握について一生懸命日々頑張っていきたいと存じます。

○福山哲郎君 大変御誠実にお答えいただきましてありがとうございました。
 確かに、大臣の言われたとおりでございまして、このたった四人のメールには今の中小企業の実態が実は大変多くちりばめられています。まず一つは、解雇された従業員の問題でございます。彼らの中で恐らく住宅ローンを抱えている人もいるでしょう。年金をどうやって継続していくかと悩んでいる人もいるでしょう。子供を育てる教育費が出せないと思っている人もいるでしょう。そして、地方でございます。再就職がどの程度確実に見つかるかということも恐らくまだまだ不透明だというふうに思います。まずはこういった問題があります。
 第二は、海外生産がふえて、日本の産業構造自体が高コストに変わっていく中で製造業自身が大変苦境に立たされている。私の地元の京都でも、先日、日産の宇治工場の閉鎖が発表されまして宇治市では大変衝撃が走りました。こういった高コスト構造の問題。
 第三は、先ほど大臣も言われましたように、返事のメールの中にありましたが、電子部品から一転してモロヘイヤの栽培をされたというような形で、要は転業、別のものを創業するというこの法案に対して大変大きな柱となっている問題。
 そして第四の問題は銀行の貸し渋りの問題、大企業、下請との関係の上下の問題。
 そして、最後の旅館のだんなさんが言われた、工夫しながらどうやって商圏を広げていくか、新規事業をどうしているか、先ほどのモロヘイヤと同様でございますが、こういった問題がたった四人のメールの中に本当にちりばめられているというか本質が隠されている。
 こういった条件の中でこの法案を考えたときに、まず二重構造の是正から、独立した中小企業の活力ある成長発展へというふうに理念を変えられた。私は独立した中小企業の活力ある成長発展ということに対して否定をする気は毛頭ございません。私は、どちらかというとベンチャー行け行けどんどんの世代でございます。どちらかというとベンチャー企業頑張れ、創業者支援、頑張ってほしい、そういう世代でございます。
 しかし、大企業と中小企業の格差是正策というのは、これは少なくとも並列をしてちゃんと議論をされないと、ベンチャーがどうだ、創業支援がどうだという話ではなくて、中小企業の中にはたくさんの中小企業があって、現場としてこういう実態がある中で、今まさに大臣が言われたみたいに、大企業と中小企業の下請の問題等についてしっかりと実態を把握したいとおっしゃられた。それにもかかわらず、根本的な法案の基本理念からこの二重構造の問題が削除された。私は、実はこれは実態を隠ぺいするものではないかというふうに思っておりまして、ぜひそこについて大臣の御答弁をいただきたいと思います。

○国務大臣(深谷隆司君) 昭和三十八年、つまり昭和三十年代というあの時代の議論というのを振り返ってみますと、大企業と中小企業というのを明らかに経済的な二重構造と置いておりました。そして、中小企業が非常におくれている、非近代的であるというような立場から、専ら画一的に中小企業の底上げをして大企業に近づけることが経済対策の中小企業問題だという、そういう嫌いが多うございました。
 もちろんそのことが成果を上げて、例えば生産性が向上されてきたとか、いろんな分野もありますし、中小企業そのものの努力もあってそれなりの発展はしてきたわけでありますが、現在、しからば、中小企業を画一的に考えて大企業に近づけるという意味での格差是正ということが必要かというと、私はその点は全く逆ではないか、むしろ中小企業の多面性に着目して、経営基盤を強化していくという、そこに力点を置くべきではないか。
 現実に、例えば賃金とか労働条件とかその他もろもろ格差はありますけれども、それは指標としての格差であって、それをなくすことにいささかも変わりはないわけでありますが、そのときに単に画一的に大企業に近づけるのではなくて、それぞれの分野に応じた対策をきめ細かく行うことで中小企業の経営基盤を強化していく、そうしていけば活力が増していくであろう、こういうとらえ方をしているわけであります。

○福山哲郎君 今のお話はごもっともだと思います。経営基盤を強化していくことで、三十八年から続いている大企業にキャッチアップするんだという議論はやめていこうと。確かにそうだと思いますが、実態的に言うと非常に僕は不可思議だと思うことが幾つかあります。
 それは、なぜならば、政府はさきの国会で産業再生法案を成立させました。これは合理化、リストラを含めて、押して申請をすれば、過剰設備、過剰債務、過剰雇用を何とか処理して企業の収益体質をよくしようという、多分力点を置かれた法案だったというふうに思います。そうすれば必ず過剰債務、過剰設備、過剰雇用を処理するという前提で、産業再生法を申請した企業からすれば、過剰設備を処理するということは、そこには必ず下請の企業がついてきます。そこの廃棄というものは必ず伴うわけでして、それは想定できるわけで、そこは先ほども申し上げました日産の問題でも今徐々に明らかになっています。
 特に私の地元、地元ということで言うわけではないんですが、ひどい話で、ことしの五月、三菱自動車が用地の三分の一の売却を発表しました。八月、キリンビールの京都工場が撤退を表明しました。八月、イセトーという印刷会社が工場を滋賀に移すことを決めました。来年の五月、島津製作所が工場を移転することを決めました。来年の九月、第一工業製薬の工場がこれも閉鎖が決まりました。はっきり言ってひどい状況なんです。
 大企業が生き残りと雇用を守るために移転をしていったり工場を撤去するというのは、ある意味でいうと経営判断です。そこは責められないと僕は思っています。しかし、責められないけれども、そこにいた企業の下には必ず下請企業とか関連の中小企業がたくさんあって、産業再生法案を通した段階でこういう実態が出てくるというのは想定できたはずなわけですね。
 これは先ほど言われたように、大臣の言われた経営基盤を強化していくことはもちろん根本的に重要だと思いますけれども、基本的には、この大企業と中小企業の格差というか下請の状態の実態というのは、これから逆に言うとどんどん出ていくかもしれない中で、中小企業国会と言われるこの国会の基本法の中でそれが削除されたことに対して、私は大変遺憾に感じておりまして、ぜひもう一度大臣のお言葉をいただきたいと思います。

○国務大臣(深谷隆司君) 産業競争力を強化するというのは、国策として私は間違いではないと思っています。今企業が足腰が弱くなってきた、そこをどう変えて新しい時代にふさわしい企業になって生き抜いていくかということは、国の経済の動向を考えても当然必要なことであります。
 ただ、その際に、安易にリストラに走るということを定めた法律では全くありませんで、企業が事業を再構築するという場合にできるだけ協力するということですが、それを単にリストラとか下請を切ることを公然と許したという内容では全くないわけでありまして、その面については私は大企業も十分社会的責任を果たしていただきたいと思っていますし、現実に日産に対してもそのような申し入れを行ったりもしてまいったわけであります。
 これはある比較的大きな繊維関係の企業でございますけれども、ここの社長ともいろんなお話をしましたら、二万数千人という社員を減らすまいという大変な努力をしていると同時に、あわせて、高齢化した人たちを会社の別枠の企業をつくりまして、例えばメンテナンスであるとかあるいは廃棄物のリサイクル活動など、そういうところできちっと守っているという、そういう具体的な会社の姿もありました。
 私は、事業の再構築という過程の中で企業がそういう責任を果たしていくということはとても大事なことだと思っています。ただ、にもかかわりませず例えば失業せざるを得なくなった、下請企業が切られざるを得なくなった。そういうときに社会的なセーフティーネットとして通産省は何ができるかということがとても大事で、そこの分野は私たちが担当していかなければならぬと思っているわけであります。そういう意味では、下請企業振興協会などを通して各都道府県のもとであっせんをしたり、いろいろなこともしているわけでございます。
 どのぐらい成果を上げたかというと、これはいろいろ議論が分かれるところでありますが、例えばこの協会に何とかしてくれと申し込んできた三万一千の希望に対して、四千六百社ぐらい新たな業を御紹介申し上げて成功したという例もございます。
 ですから、そういうような下請対策と、あるいは中小企業金融公庫等政府系の金融機関による設備資金、運転資金、その他もろもろ総動員して対応していくというのが私たちの役割だと思います。

○福山哲郎君 そのお気持ちはよくわかっているつもりでございますし、逆に言うと、産業競争力を強化をするということに対しても、私も先ほどの質問でも申し上げましたように、否定をしているわけではありません。それはある意味でいうと経営判断なわけです。しかし、だからといってなぜこの大企業と中小企業の問題を削除する合理的な根拠があったのかということになると、よくわからないんです。
 大臣のおっしゃることはよくわかるんです。それは片一方では絶対に国策として必要なことだというのはよくわかる。しかし、こういう状態が目の前に来ている。現実には見ている中で、なぜこの法案でわざわざ削除したのかということについては実は余り、片方では頑張るんだからそれでいいじゃないかとおっしゃるけれども、それはそうなのかもしれないけれども、ではわざわざ減らす必要もないだろうという議論もありまして、そこについては、大臣、もうこれ以上は食い下がりませんが、もし御答弁いただければと思います。

○国務大臣(深谷隆司君) 格差の是正という文言を経営基盤の強化というふうに変えておりまして、別に基本法の中で全くなくなってしまったという意味の削除ではありません。

○福山哲郎君 次に、例の中小企業に対する定義の問題についてお伺いをしたいと思います。
 今回の法改正では業種の例示をお変えになられた。それから資本金の大きさと従業員の規模によって分類を変えられました。これは別に政府参考人でも結構でございますが、この定義変更で、現状の中小企業の比率それから従業員の中小企業の比率は改正前と比べるとどのように変わったかお答えください。

○政府参考人(岩田満泰君) 現行企業数で九九・四%でございましたものが九九・七%に企業数で増加をするということでございます。それから従業員数でございますが、現行定義で六四・四%が従業員数で七〇・九%に上昇をするというふうに計算をいたしております。

○福山哲郎君 そうなんですね。今回の法案によりますと、中小企業の分類、定義を変えたおかげで九九・四%から九九・七%に中小企業の対象数がふえた。それから従業員に至っては六四・四%から七〇・九%の人が中小企業の従業員であるというふうに定義を変えられました。
 ここで質問なんですが、〇・三%なんですね、大企業というのは。一定の基準でこれを分類しているというよりかは、ある意味でいうと全体を包括しているという意味合いの方が私は非常に強いと思うわけです。定義をして分類しました、片方が九九・七%、片方が〇・三%なんというのは、これは大臣、ある意味でいうと分類という定義ではないと私は思うわけですが、いかがですか。

○政務次官(細田博之君) どこで切るかということは大変長い間、それこそ三十年来議論してきたことであります。
 しかし、まず御認識いただきたいことは、日本は世界に冠たる制度をこうやって確立してきておりまして、従来から与野党ともにこれはやるべしということで、中小企業に対する基本法をもって、そしてそれに基づいて中小企業に対する政策を金融、税制あるいは個別法で、全部いわば護送船団方式にも近い形で整備して、そして中小企業庁という役所があって専門的にやってきたという、このことの意味というのはまず一つ考えていただきたいこと。
 それではどこで切るかということですが、例えば今回大企業が一万四千社になります、減りましたから。しかし、その従業員数というのは合計しますと千三百四十一万人になりまして、残りの大企業の平均が千人なんです。もちろん二万人いる会社もあれば、六百人の会社もあるかもしれません。しかし、そこでやはり質的なところはこれは国家として大事な助成をすべきだという範疇ではないというところで、どこかで切って、むしろその他の大きな我が国経済の大宗を占める中小企業に積極的に世界にも例を見ないような助成策をとろうという発想でやってきたことでございます。
 切り方についてはいろいろ御意見はあると思いますが、最近の実態の変化に伴いまして、御存じのように、これだけ助成を中小企業にやっておりますと、ちょっと上のランクのところが助成が受けられない。政策投資銀行、旧開発銀行でも、運転資金融資を入れたり設備資金も少し余計に見ようとかいうことで少しずつやってきましたけれども、それではいけないから中小企業の手厚い政策をやっていこうじゃないかと、その政策対象として意味があるということで審議会の方で判断いただいたということですから、その点は御理解をいただきたいと思います。

○福山哲郎君 ですから、例えばアメリカでいうと大企業の関連子会社とか小規模企業でも、例えば少ない企業でもその会社がマーケットの中で市場シェアが高い場合には中小企業には入らないんですね。
 私が言いたいのは、九九・七%が一緒くたに分類されているようなものというのは、それだけ政策の有効性、つまりどこを対象にするのか、どういう方法でその政策の有効性を担保するのか大変ぼやけるんじゃないかと思っているわけです。先ほどから出てきますように、もっともっと、大企業と中小企業の関係で下請の会社もある。この法案で対象になっているベンチャー・創業支援をする企業もある。ほかの企業、例えば先ほどの参考人も言われましたけれども、個人事業主で本当に一人か二人で夫婦でやっている企業もある。その中小企業を九九・七%一緒くたにこれが中小企業だという分類をして政策をつくること自身に僕は実は無理があると思っていまして、これはあくまでも定義でも分類でもない、包括的にくくっただけで、それだけ政策の焦点、論点、有効性がぼけるのではないかというふうに私は思っているんですが、いかがでしょうか。

○政務次官(細田博之君) そういう御意見も成り立つと思います。
 しかし、小規模事業について、また近代化資金等助成法などでさらに特別に今まで以上に融資等をやっていこうということは、このたび拡充しておりますが、逆に、衆議院の議論でもありましたけれども、小売業がなぜ五十人で切れるんだと。じゃパートタイムを入れて五十人じゃいけないからパートタイムは絶対外せと。これは逆に言うと、五十人から百人ぐらいの実態があっても、パートを除いた常用労働者が五十人以下であるようなところは当然対象にすべきだ、できれば百人まで対象とすべきだという御議論もあるんです。
 だから、企業によって職種によって非常にばらつきがあります。従業員が七十人もいる小売業というのは、確かに町でいえば七店舗も八店舗も持っているスーパーマーケットですから、小売業から見ると大きな存在、脅威の存在であるから、これらはむしろ五十人もいるなら外してくれというような声もあるんですが、そこのバランスをとって見ているということ。
 それから、中小企業三機関にしましても保証協会にしましても、その他の税制にしましても、これらの企業には何兆円という融資残高、保証残高があって、非常に潤沢な形で政策的に見ていると我々は自負しているわけでございまして、もっと小さな、例えば五十人で切れ、百人で切れ、あるいは資本金も一億円で切れという議論は確かにあるわけでございますが、それは非常に資金的にもあるいは助成策としても限られたときの話としてはそういう議論もあったわけでございますが、最近はそうでもない。金融的にも緩和しておりますし、もっと助成措置を拡充しておりますから、面倒を見ていけるんだという自信を持って今度の定義改正に臨んでいることを御理解いただきたいと思います。

○福山哲郎君 どうも先ほどから政務次官のお話を聞いていると、潤沢な資金を供給し続けている、融資をしている、助成をたくさんしていると。だから細かく分類しなくてもいいじゃないかというふうに私には聞こえるんですが、潤沢に資金を融資した、潤沢に資金を助成したからそれで中小企業政策がいいとは私は思いませんから、そこはちょっと余り議論がかみ合いませんので、別の観点でお伺いします。
 では、政務次官、お答えください。
 この法案は、大企業と対抗し得る中小企業の育成を目指して、その潜在能力を持つ中小企業を育成することが対象なのか、市場で淘汰をされていく生存困難な中小企業を保護することなのか、これから先大企業の系列下から離れていく中小企業が今後本当に市場競争の中で頑張っていかなけりゃいけないものを生き残らせて戦わせるための政策が中心になっているのか、どれなのかお答えください。

○政務次官(細田博之君) 基本的には、中小企業は、昭和三十年代にこの基本法が定められて以来、一ドルが三百六十円から一時八十円、今でも百十円という三倍になった中で国際競争を強いられ、そしてさまざまな不況の波、オイルショックの不況もあれば円高不況もあるし、そしてバブルの崩壊もあって、その中を生き延びてきている五百九万、七万社が九万社になるわけですが、そういった企業があり、今日いろいろ姿を変えて残っているわけですね。多数の繊維産業が織物業をやめて機械部品に変わったり、いろんな産地での変化もあって残ってきているわけですから、私は、基本的に中小企業政策は、時代の変化の流れに沿って中小企業の中でもいろいろな工夫をしていただいて生き延びていく、そして生き延びる知恵と、それから必要な投資や金融やその他の助成措置が必要な方々にそれをできるだけ潤沢に提供するということが基本でありまして、大企業対中小企業なのか下請企業なのかという観点は、基本法的にはその次に位するものであります。
 ただ、取引の関係にしても下請の関係にしても、それぞれが力関係で非常に大きな問題を抱えておりますから、それぞれの法律によって保護すべきものは保護するという考え方でございますから、基本的には、今現に歯を食いしばって生きてきている中小企業で意欲のある者は、みんな意欲があるわけですから、その意欲のある方々をお手伝いするということが基本であると思っております。

○福山哲郎君 だから、先ほど最初にメールの話をお聞かせしたんです。
 意欲がないわけではないわけです。でも、環境の変化とかでどうしようもない状況になる人がいるときに、いろいろな方法で生き延びられるためにメニューをつくりましたと。メニューをつくっていない。いろいろ生き延びるためにどうのこうのと、そんな抽象的な議論をされたら、それは中小企業の皆さんたまらぬですよ、みんなこうやって苦労しているわけですから。
 だから、僕がさっき言ったように、この法案というのは、市場で淘汰をされていく中小企業に対して何とか次のソフトランディングをするための法案なのか、そうじゃなくて、中小企業が、もちろんこれはベンチャーもそうなんですけれども、ベンチャーも含めて大企業と肩を並べるぐらいちゃんと伸びていくための法案なのか、それとも、系列下にある中小企業が系列というものから切り離される状況がもう目の前に来ているわけですから、そういう状況の中で何とか生き残ったりそれぞれが自分で生きていくための政策をちゃんとメッセージとして伝える法案なのか、どれなんですかとお伺いをしているんです。

○政務次官(細田博之君) おっしゃいましたような、一生懸命これからも生き延びていこうという企業に対して手を差し伸べていく、国家が特別に手を差し伸べていくための基本法でありますし、そのための中小企業政策だと私は考えておりますが、それでは、各論で私も申し上げましたように、何年もの間に中小企業によっては廃業を余儀なくされた方や事業転換をされた方やいろんな方がおられます。
 しかし、先ほど例に挙げられた方の実際の工場閉鎖をどうしても阻止するように措置をとれと言われると、これは国家、政府としての政策としてはそこまで行けませんので、おやめになる前にいろんな融資や保証や、そういうものは御相談いただいて、その上で企業が生き残るためにどうしても一部の工場を閉鎖して一部の工場を生かすという御決断をされた場合には、やっぱりこれはやむを得ないことであるし、それは例としてはたくさんあるわけでございます。
 しかし、それは冷たい政策をとっているのじゃなくて、そういうことができるだけ起こらないようにするために用意しておりますが、それじゃ政策手段として何ができるのかということをいえば、やはり金融面の融資ですとか保証ですとか、あるいは税制ですとかその他の補助金ですとか、そういうものにツールが限られている。そして、不公正な取引がそこで発生したり差別が起こったり不当な解雇が起こったりしたときにはまたそれのツールを用意するということが政府の政策ではないかというふうに考えているわけでございます。

○福山哲郎君 そこで不公正な融資とかいろんな貸し渋りがないようにしていただかなければいけないのはよくわかりますが、どうも政務次官のお話を聞いていると融資と助成ばかりが出てきますので。
 次に行きます。
 私は、この法案の審議の中で根本的な問題は、二十一世紀、恐らく非常にマーケットの洗礼を中小企業も受けることになると思っているんです。そのときにマーケットの洗礼を受けるのはやむを得ないわけです。ところが、そのやむを得ない中で、強い者が勝つ優勝劣敗という方程式をそのまま中小企業に当てはめていくのか。
 我々は構造改革をこの国でしていかなきゃいけない。構造改革するときには、ある意味でいうと転廃業に対するソフトランディングも必要なわけです。ある意味でいうとやめるための施策も必要でして、あくまでも頑張って意欲のある人には支援しますよ、あとは知りませんみたいな話ではなくて、構造改革の中でどういうふうに本当に中小企業政策を位置づけるかという私は大変重要な問題だと思っています。高度経済成長のときにははっきり言って敗者なき競争だったわけです、どんどんパイが大きくなるわけですから。それはいろんな構造転換はあったけれども、転換したってその構造転換した中でやっぱり経済成長をしてきたわけですけれども、今みたいな低成長の中では、転換をしてそれが大丈夫だという保証がないわけです。中にはこんな状況だったらやめたいと思っている中小企業もいっぱいいるわけです。
 そこで、創業者支援だ、ベンチャーだ。私は、冒頭申し上げましたように、この世代ですから、ベンチャー万々歳の世代でございます。行け行けどんどん、ベンチャー頑張れという世代でございますけれども、そうではにっちもさっちもいかないところが厳然とあるということをやっぱりもう少し具体的に法案の中に盛り込んでいただきたいというのが私の今の率直な感想でございます。
 ちょっと具体的に行かせていただきます。
 中小企業支援ということでは恐らくだれも反対する人はいないと思います。要はその中で、これも地元のことで恐縮なんですが、西陣織のネクタイ織物産業が地場産業で千数百社あります。これは構造不況業種の典型でございまして、こうした中小企業に対して、先ほど政務次官が言われた、ただ融資を続けていくのがいいのかどうか、僕は非常に今悩んでいます。もう売れない状況の中で融資ばかり続けていったって、借金の残高がふえて、設備はしていますから、その設備も返さなきゃいけない。売り上げが上がらないのに借金をしてとにかく生き長らえていることが本当にいいのかどうか、僕は大変悩んでいます。
 実は、絹織物業というのは、群馬の桐生や山梨や東京の八王子、博多、西陣だけではありません。私は、ただこういうところを守れとか保護しろという話をしているわけではなくて、具体的にちょっと行きたいと思います。
 まず、日本国内のネクタイの使用量というのはおよそ今三千五百万から四千万あるんですけれども、そのうち海外からの輸入はどのぐらいあって、どの国からの輸入が多いか、お答えをいただけますか。

○政府参考人(横川浩君) 我が国へのネクタイの輸入についての御質問でございます。
 近年の世界各国からのネクタイの輸入の実績でございますけれども、平成九年には前年比で九一・六%、平成十年には九七・八%、若干減少傾向で推移をしてまいりましたけれども、本年になりまして一―九月、前年同期でございますが、二・五%の増、若干の増になっております。
 輸入の総量でございますけれども、一九九八年、昨年一年間の世界各国からの我が国への絹製ネクタイの輸入量は千七百五十二万本、こういった数字になっております。

○福山哲郎君 中国と韓国からはどのぐらい来ていますか。

○政府参考人(横川浩君) 申し上げました全世界から千七百五十万本余りの輸入がございますが、そのうち三五%に当たります六百十万本が中国からの輸入でございまして、ほぼ同様のシェアになっておりますけれども、韓国から三四・四%のシェアの六百二万本の輸入がございます。残りはフランス、イタリアといったような欧州からの輸入で占められておるわけでございます。

○福山哲郎君 実は、千二百十二万本中国と韓国から輸入をされているんですが、この輸入品の平均単価が何と中国製はわずか二百四十八円、韓国製は三百八十三円なんです。これは特恵関税で関税がかかっていません。製品で輸入をしてくる場合には関税ゼロです。
 先ほどヨーロッパの話が出ましたが、イタリアからの輸入の平均単価は二千四百円、フランスは三千四百円なんです。ある意味でいうと十分の一なんです。十分の一の状況で製品が入ってきているわけです。この中国や韓国の三百八十三円とか二百四十八円だと、国内だと縫製代、縫う金額にもならない状況で、特恵関税という名目でどんどん入ってきているわけです。ことしに入って千二百万本という状況でございます。
 もう一つだけ余計なことを言いますと、まず関税が今かかっていないということと、養蚕農家の保護によって、これは古くて新しい問題ですからここについて詳しく議論する気はありませんが、要は、原料の生糸に対して逆の意味の調整金が負担としてかかっています。
 若干申し上げれば、原料を輸入しようとする場合は二割高い関税を加えないと原料として入ってこないわけです。つまり、国際価格に比べると二割高い価格で輸入をして製造する。ところが、製品として入ってくるネクタイそのものは、中国から韓国から縫製代にもならないような状況で年間千二百万本入ってくるわけです。
 要は、製品がそのまま入ってきて、こっちが安くつくろうと思うと国際競争力の原料よりも二割も高い価格で輸入をしてつくらなきゃいけないわけです。例えば、国際競争力に見合うようなところをつくりなさい、マーケットで頑張りなさい、メガコンペティションで頑張りなさいと言ったって、全然関税がつかないで入ってくるものが十分の一の値段で入ってきて、自分らが原料を安く仕入れようと思うと、その原料は国際価格に比べたら二割も高いわけです。これはネクタイの産地の業者にとっては、変な話ですけれども、武器を全部とられてどうやって勝負するんだという状況なわけです。
 こういう状況を放置しておいて、彼らが言うには、もうつぶれていけ、もうおれらは野たれ死ぬしかないんだと政府に言われているような気がするというわけです。先ほど政務次官も大臣もおっしゃいました、基盤を強化する。じゃ、せいぜい条件整備ぐらいは同じ土俵にしてもらわないと彼らは戦えないというわけです。彼らは別に保護してくれなんて言っていないんです。助成をくれなんというのもよっぽどのことじゃない限り言っていないんです。ただ、条件を何とかしてくれれば我々は伝統の技術で頑張れる、でも原料は二割高い、向こうから十分の一ぐらいの値段で製品がそのまま入ってくるような状況では戦えないと。
 こういったところに対して、放置しておけということは、逆に言うと、先ほど大臣が言われたセーフティーネット等をつくっていかないことには、それこそ言われている構造転換とか中小企業の基盤強化が僕は本当に絵そらごとのように聞こえるんですが、大臣、政務次官、いかがですか。

○政務次官(茂木敏充君) 絹製のネクタイの輸入急増に対する事業者の経営安定、これに関した質問でありますが、私も栃木県の足利市という繊維の町に生まれ育ってきまして、輸入の急増によりまして多くの繊維事業者が年々厳しい経営環境にある、そういった実態も見てきております。
 そんな中で最近感じますことは、事業者の目も変わってきている。単にコスト競争力さえつければ売れる、こういう時代ではなくなってきている。その一方では、例えばイタリア製であったりとかフランス製の一万円、二万円のネクタイが飛ぶように売れるような事態になってきています。
 そういった中で、企業が今頑張っているのは、むしろコスト競争力よりもマーケティング、それから新商品の開発、デザイン能力をつけていく。例えば、私の町で言いますと、イタリアのコモ市という町がございます。ここは新しいタイプのデザイナーがたくさんいる。そういうデザイナーと直接に契約を結んで新しいネクタイをつくったり、そういった新商品の開発にも取り組んでおります。
 そういった中で、政府としましても、単に関税の問題であるとかそういうこと以上にこれから重要になってきますのは、例えば展示会を開催する、イベントを開催する、そういった中でマーケティングに対しても企業のお手伝いをしていく、さらには新商品のお手伝いをしていく、こういった措置を一層充実していきたい、こんなふうに考えております。
 ただ、輸入品の急増等の環境の激変、これがある場合につきましては、新法上も、第二章第三節におきましてセーフティーネットとしてこれからも対策をとっていきたい、このように考えております。

○福山哲郎君 ということは、ある程度輸入急増等について対策は具体的に考えられる要素はあるということですね。

○政務次官(茂木敏充君) 申し上げましたのは、輸入品の急増等によりまして国内の産業が大きな打撃を受ける場合につきましてはセーフティーネットの措置がとれる、こういう対応が新法上も組まれております。そういった個々の事情を見ながら、その対策が必要かどうか、適時適切に判断してまいりたいと考えております。

○福山哲郎君 そろそろ時間なのであれなんですけれども、私が一貫して申し上げたかったのは、ただ守れ守れということを言いたいのではありません。
 逆に言うと、中小企業も、これだけ自由主義だ、マーケットだと言われている状況の中で、覚悟は決めているわけです。ただ、条件整備をきちっとしてあげることと、それとやはりスムーズな転廃業。そうやってのたうち回っているところに、やれベンチャーだ、創業だと言ったって、そんな余裕はないところが多いんですよ。そういうところに対していかに転廃業をスムーズに、逆に信用保証枠で生き長らえさせていればそれだけ構造転換がおくれて、逆に言うと日本の産業競争力が強くならないのかもしれない。
 要は、そういった状況のもう少しきちっとしたセーフティーネットの具体的なメニューを出していただかないと、実は今のたうち回っている中小企業の皆さんは安心できないし、未来に希望が持てないと思うんですが、通産大臣、御答弁を最後にいただけますでしょうか。

○国務大臣(深谷隆司君) あなたの議論のやりとりを伺いながら、あなた自身も含めて大変悩んでいるということはよくわかります。私たちもそうです。
 とにかく、五百万以上もある中小企業の、その一つ一つの動きに全部こたえられないということに歯がゆさを感じます。そして、そういう中小企業が自助努力で頑張ってもらうところを、せめていろんな資金だとかノウハウだとかさまざまな形でお手伝いする。そして、なお難しいという場合のセーフティーネットを用意していく。
 現状では本当に最大限の努力をしていると思いますが、足らざるところが多いということに一方では胸も痛めております。

○福山哲郎君 堺屋長官、済みません、時間がなくなってしまいました。申しわけありませんでした。
 では、かわります。これで終わります。ありがとうございました。

 


 

第146国会  参議院   国土・環境委員会  1999年11月16日

○福山哲郎君 民主党・新緑風会の福山でございます。これまで経済・産業におりまして、この国会から国土・環境委員会の委員にさせていただきました。新参者でございますが、どうかよろしくお願い申し上げます。
 また、清水長官また柳本政務次官におかれましては御就任おめでとうございます。
 清水長官におかれましては、長年看護のことで本当に御尽力いただきまして、大変お力をいただいた先生だというふうに承っております。看護のことに御尽力をいただくということは、それだけ逆に言うと向かい側にある患者さんのことを考えて、やはり看護の方の環境整備や条件をよくすることによって患者の方が安心できて医療を受けられるような、そういった観点でお力添えをいただいてこられたというふうに承っております。二十一世紀を目前にした、特に環境庁が環境省に二〇〇一年に変わる、そして環境問題に大変国民の関心が高くなって喫緊の課題になっているときに清水長官のような方に長官になっていただいたということで、大変責任は重たいというふうに思いますが、ぜひばりばりと環境の政策発展のためにお力添えをいただきたいというふうに思います。
 まず、長官にお伺いしたいと思います。
 環境庁長官に御就任をされて、そしてこれまで環境問題はいろいろ言われてきておりますが、長官御自身として環境問題についてどのように御認識をされているのか、お聞かせをいただきたいと思います。

○国務大臣(清水嘉与子君) 大変励ましのお言葉をいただきまして、ありがとうございます。
 私も人々の生活の目線からいろいろ仕事をしてまいりましたけれども、この環境庁の仕事は非常に大きな仕事だというふうに思っております。今までも環境の問題に非常に関心を持っておりましたけれども、こうして環境庁の中でいろいろ勉強させていただきますと課題は本当に幅広く、しかも国民の一人一人の生活にかかわる、そして命にかかわるような問題から、それから地球環境の問題から、さまざまな問題がございますけれども、これだけ経済発展をしてきた日本が豊かな生活をしている、そのことによってまた地球環境を汚しているというようなことを考えますと、今までの経済の仕組みや何かを変えていくということも大事なことでございますし、しかもダイオキシンだの環境ホルモンだの、こういった問題も非常に大きな問題だと思います。
 二十一世紀、ちょうど環境庁が環境省になるという大きなときでもございますので、ぜひこういった大きな課題をこの環境省がきちんと受けとめられるような体制も整えていきたいというふうに思っておるところで、大変責任の重いときに環境庁長官になったなというふうに思っておるわけでございます。
 先生方の御支援をちょうだいしながらしっかりと仕事をしていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○福山哲郎君 ありがとうございます。ぜひその心意気でお願いをしたいというふうに思います。
 私は環境問題に関心を持っておりますが、別に経済成長を否定する気もございませんし、それから日本が均衡ある発展をしていくことも否定する気は全くございません。しかし、未来という点に目を向けたときに、現在も非常に大事ですが、未来に対する公益性みたいなものを表に出していくこともある意味で言うと国会では必要になってきたのではないかなという認識を持っています。
 実は、環境問題をいろいろ考えていきますと、例えば最近で言うと、このままでいくと二〇八〇年、八十年後ですからここの委員の皆さんがすべて生きていらっしゃるかどうかわかりませんし、僕もだめだと思うんですけれども、でも少なくとも私たちの子や孫の世代は確実に生きている世代ですが、二〇八〇年には温暖化によって例えば日本の砂浜がすべてなくなるのではないか、東京、名古屋、大阪の沿岸の工業地域がほとんど海面上昇による被害を受けるのではないかという具体的な例も出ています。それから、田村先生の地元の高知では、アユの漁獲高が間違いなく激減をしておりまして、六〇年から七〇年にかけてのほとんど半分、これも温暖化の影響ではないかと言われておりまして、日本近海で言うとマイワシの漁が八〇年代に比べると約十分の一というような例も出ています。
 私は、空想的な話で環境を守れというような話とか、一時期、七〇年代に公害問題が発生したときに、ある左翼グループみたいな方々が中心になって非常に急進的に環境の問題とかを言い出したようなものとは多分状況が変わっているんだと思います。恐らく、全く政治活動とか運動とかイデオロギーとかに関係のない普通の方が実は環境問題に対して大変関心を持っていまして、それは自分のものとして感じられるぐらいまで喫緊の課題になってきている。
 私は、それに対してまだまだ、申しわけないですが、国会の対応にしても我々政治の面の対応にしても、どうも旧来型の考え方が抜けていないんじゃないかという気でおります。この東京に至っては、百年間に平均気温が二・九度も上昇したという統計も出ています。もう人ごとではなくて、我々自身の生活に完全に影響を及ぼすということで、一番重要なのは温暖化だと言われています。
 その地球温暖化防止国際会議、いわゆるCOP5、ついこの間ボンで開催をされましたが、大変強行なスケジュールだったにもかかわらずCOP5の閣僚会合に長官は早速御出席をいただきました。私はどちらかというと、これは民主党では怒られるんですが、長官をぜひ行かせてくださいと言って党内では主張した口でございます。
 まず、COP5に御出席をいただいた御感想をお聞かせいただければと思います。

○国務大臣(清水嘉与子君) 大変御配慮いただきましてCOP5に出かけさせていただきました。
 出発する日の午後にやっと御許可をいただきまして出かけましたけれども、十一月二日から四日、ちょうどそこで閣僚級の会議がございました。二日には間に合いませんで、これは外務政務次官が出まして政策について発表していただいたわけですが、三日、四日は私も出させていただきました。
 私の感じでは、出ていきまして、途上国からも、それから先進国からもですけれども、非常にこの分野に関して期待をしていただいているなという感じもいたしました。
 今回は、大きなことが決まるという会議じゃございませんでした。COP6、来年に向けて京都で決めたあの議定書を具体的に何か検討する手だてをつくるといいましょうか、そういうスケジュールをつくったり中身を検討する項目を挙げるみたいなことをやった会議でございました。しかし、それでも私が出かける前には当地からいろいろ情報をいただきました。何か進んでいるんだろうか、なかなか進んでいないような状況を聞きまして心配しておりましたけれども、行きましたときに大変速く、スピーディーに、というのはやはり大臣級の人たちが二〇〇二年までにこの京都議定書を何とか発効させようという非常に強い意志をかなり多くの方々が出された。日本ももちろんそういたしましたけれども、そういうことによってかなり中のものが進んだのじゃないかという感じがしているわけでございます。
 私ども、京都議定書をつくったCOP3の議長国として、ぜひこの早期発効を実現するための交渉を促進させなきゃいけないという熱意でございまして、今後とも各国の閣僚にも積極的に働きかけながら進めていきたいと思いますし、ちょうどそこでたくさんの担当の大臣の方々にお目にかかった、これも大変よかったことではないかというふうに考えているところでございます。

○福山哲郎君 本当にお疲れさまでございました。二日間という短い期間で大変御苦労だったと思います。
 実は、温暖化防止会議については私は個人的に思い入れがありまして、COP3が御案内のように京都でございまして、私は地元が京都でして、そのときに私はまだ議員になっておりません。一応その会議にはいろんな形で参加をさせていただいて、民主党のCOP3の担当者としても出させていただいたりしたんですけれども、その後、去年のアルゼンチンのCOP4も自費で行ってまいりまして、そのCOP3の前のボンの会議にも実は自費で行ってまいりまして、ことしも行きたかったんですが国会が始まったので行けなくて大変残念な思いをしていましたので、ぜひそのときの感じみたいなものを長官にお聞かせいただければなというふうに思っています。
 私は、この温暖化防止会議というのが日本の国民に与えた影響は大変多いと思っています。環境NGOの皆さん、それから行政、それから政治家、たくさんの皆さんがこの京都会議を起点として随分温暖化について前向きな議論をされるようになった。そして、国内でも温暖化に対する対策の推進法案というのが昨年のちょうど今ごろだったと思いますができまして、さあ次はという話になってくるわけでございます。
 今回の長官の所信あいさつにこのドイツのボンの報告が書かれているんですが、「この場において、我が国の国内対策及び国際協力について紹介するとともに、」というふうに長官からごあいさつをいただきました。具体的に我が国の国内対策についてはどのようなことをボンで表明されたのか、お教えいただけますでしょうか。

○国務大臣(清水嘉与子君) まず、私は我が国がどうこの問題に取り組んでいるのかという御紹介を申し上げたわけでございます。
 COP3直後に内閣総理大臣を長といたします地球温暖化対策推進本部を設置いたしまして、一九九八年六月には地球温暖化対策推進大綱を策定し、実施に着手している。あるいは、あらゆる主体の取り組みを促す土台といたしまして、地球温暖化対策の推進に関する法律、これはもう世界に先駆けてつくった法律でございますけれども、そうした法律をつくり制定していること。それからまた、改正省エネルギー法の施行によりまして、トップランナー方式によりまして、自動車あるいは家電、OA機器のエネルギー消費効率基準をさらに強化しているというようなこと。あるいは、産業界では各産業ごとに環境の自主行動計画を策定するというようなことも、そして温暖化対策への取り組みを自主的に進めているというようなことも御紹介申し上げました。
 こうした中で、一九九七年以降、我が国の温室効果ガス排出量が減少傾向に転じているということ、この減少傾向をさらに堅固なものにするべく、国内政策措置の充実強化を図るというようなことを御紹介したところでございます。

○福山哲郎君 今お話をいただいたものは基本的にはCOP3の後に出されたものもあるんですが、その前から出されている基本的な日本のスタンスであるCO2の削減計画と私から見るとほぼ変わりないということですし、六%を世界各国に削減目標として日本は京都議定書で約束をしたわけですが、それについて、今長官が言われたことを全部やっても恐らく六%にはならないというふうに、多分長官も御判断をいただいているんだと思います。
 さらに次の段階が必要だというふうに御判断をいただいていると思うんですが、そういった点については何かボンの会議では御表明をいただいたことはあるんでしょうか。

○国務大臣(清水嘉与子君) とりあえず各国の取り組みについて紹介する時間に私もそういう発言をさせていただいたわけでございますけれども、果たして六%、これはできるのかという先生の御指摘については、確かにいろいろの不安もございます。
 しかし、私は温室効果ガスの排出量が一九九七年以降減ってきたと申しましたけれども、これが本当にみんなの努力、削減するための努力によって自然に減ってきたものやら、多少経済の今の状況の中で減ってきているもの、いろいろ問題があると思いますけれども、しかしそういったことも一つの日本の取り組みの成果として御紹介できたんじゃないかなというふうに思っているところでございます。

○福山哲郎君 それでは、もう一度別の観点からお伺いをします。
 先ほども少し長官にお触れをいただきましたが、今回COP5で大変関心が高まったのは、先ほどおっしゃられましたように先進各国が京都議定書をいつまでに発効させるんだというのが大変注目の的で関心も高かった。各国の大臣クラスからは、二〇〇二年までに発効することが不可欠だというようなメッセージがたくさん出されたというふうに承っています。
 日本も恐らくそういうスタンスであるということは間違いないと思うんですが、日本はどのような姿勢をボンではお示しいただいたんでしょうか。

○国務大臣(清水嘉与子君) 日本もこの二〇〇二年、これは何かといえばリオプラス10、十年ということを一つの目標にして何か発効を目指したいという姿勢を明らかにいたしました。COP3の主催国、開催国として、ぜひこの地球温暖化対策のためにこの早期発効が重要であるということで、このことの必要性を訴えたところでございます。
 しかし、そのためには先ほど先生も御指摘のように、実現が本当にできるのかという問題もあろうと思いますので、それについては京都メカニズムの詳細なルールづくりだとかいろいろなことについてこれから積極的に検討を進めていきたいと、こんなふうに思っているところでございます。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 リオプラス10、いわゆるリオでありました地球サミットからちょうど十年が、一九九二年から十年たって二〇〇二年にこの京都議定書を発効させるというのは、早いか遅いかというのはそれぞれの主観がありまして、一刻も早い方が温暖化に対してはいいのではないかという意見はもちろんありますが、十年という一つの区切りということで、そこそこふさわしいというふうには思うんです。
 ちょっと細かいことをお伺いするようですが、議定書の発効の要件は五十五カ国以上の批准及び批准した附属書T国、つまり簡単に言うと先進国ですね、先進国の排出量が附属書T国、先進国全体の五五%以上で、これで議定書が発効するということで長官、間違いないですね。

○国務大臣(清水嘉与子君) そのとおりでございます。

○福山哲郎君 そうすると、この五十五カ国以上の批准、それから附属書T国つまり先進国の排出量の五五%以上だというのが非常に重要な案件になるわけですが、現実問題としてはなかなか大変だ。
 もう細かいことは、一体どこが一番目ですか二番目ですか三番目ですか、何%ですかということは政府委員がいませんから私も聞きませんが、アメリカが大体世界で三六%の二酸化炭素を排出しています。それからロシアが一七%排出しています。この二つの国が合わさると実は五三%で、先ほど言ったように五五%以上じゃなきゃいけませんから、この二国が拒否すればこの議定書は全部オジャンになるわけです。
 三番目がどこかというと、これも普通僕は聞くんですが、もう聞きません。言いますと、日本が八・五%程度で、日本は三番目なんです。日本というのは、温暖化に対しては実は大変な貢献というと言葉がよ過ぎるんですが、大変ないわゆる加害者の国でございます。八・五%の日本が、三番目がどういうスタンスでこの発効に向けていくかというのは大変重要だと私は思っていまして、先ほど長官が言われた世界じゅうが期待をしているということの裏返しはここにあると思っているんです。
 そこに対して、具体的な道筋として長官は発効まで、もっと具体的に言いますと批准までどのようなスケジュールでお考えなのか、お教えいただけますでしょうか。

○国務大臣(清水嘉与子君) 今、先生御指摘のように、締約国数で五十五カ国以上、そして排出量が先進国で五五%以上を占めなければ発効しないということの中で日本が八・六%になっていますが、そういう量を持っているわけでございます。
 具体的に、二〇〇二年までに発効するということになりますと、当然のことながらその前に中身をある程度批准あるいは締約できるような、締結できるような条件を整えなきゃいけないということになるわけでございまして、一つにはCOP6におきまして、京都でつくった京都メカニズムの国際的な合意、あるいはシンクの問題とかいろいろございますと思いますが、そういったものをやはりきちんと国際的な合意を取りつけて、そしてそういう中で進めていく。もちろん国内対策が一番でございますから国内政策は進めますけれども、同時にそういったことを含めて実現に向けていきたいというふうに考えているところでございます。

○福山哲郎君 済みません、そろそろちょっと細かいというか厳しいことを言わせていただきますと、京都メカニズムの内容とある程度シンクも含めて国際的な合意をいただいてから、それから批准にかかりたいと今長官はおっしゃられました。
 確かにそのとおりだと思いますが、京都メカニズムないし国際的な合意は今の段階では長官、いつ大体まとまることになっているんでしょうか。

○国務大臣(清水嘉与子君) 私たちは、ぜひCOP6でこの具体的な中身について合意が得られるように努力したいということを考えているわけでございます。来年の十一月十三日でしたか、十三日から二十四日。

○福山哲郎君 そうなんですね。二〇〇〇年の十一月にCOP6でここで京都メカニズムの中身が詰まる、詰まればいいなという感じですね。まだ世界の状況を見ると、なかなか皆さんは言いたいことを言い合っていますから難しいと思うんですが。
 ということは、二〇〇〇年の十一月、ほとんど逆に言うと二〇〇一年ですね。先ほど長官が言われたように二〇〇二年には京都議定書を発効させたいということは、来年の十一月に京都メカニズムがCOP6でまとまったとして、二〇〇二年までに実は一年しかないんです。この一年で先ほど言われた六%の削減を担保するような国内の仕組みをつくっていかなければいけないわけですね。そうじゃないと批准できないわけです。
 だって、マイナス六%になることを前提にやっぱり批准はされるわけですから、そのための整備等が要ると思うんですが、実は京都メカニズムの合意等を待たないで、そろそろ逆に国内、僕が先ほどから申し上げているのは、何で長官に、国内の対策についてどういう御説明をされたのですかとお伺いをしたのは、国内でも間違いなく、確かに共同実施や排出権取引やCDMは海外との問題ですから、国内の対策としてもうそろそろ六%を担保するような準備を始めないと、実は今長官が言われた批准も二〇〇二年の発効も間に合わないのではないかという危惧があります。
 COP3で京都議定書をつくった議長国だった日本が二〇〇二年の発効までに間に合わないというような、そんなみっともないことは僕は絶対にできないと思っておりまして、そこについてちょっと長官、御意見をお聞かせいただければと思います。

○国務大臣(清水嘉与子君) 当然な御指摘だというふうに私も思っております。
 しかし、今申し上げましたように、国内の対策をもちろん私たちはメーンにして、中心にしてやりますけれども、さらに先ほど申し上げました京都メカニズムの詳細なルールづくりをCOP6で合意したい、そしてそれを含めてこの削減に向けて進めたいというふうに申し上げているわけでございます。国内対策、具体的にどこの部門に何%というようなことがかなり細かく計画だけはつくられておりますけれども、総力を挙げて国内制度、国内対策についても一層充実していきたいというふうに思っているところでございます。

○福山哲郎君 今のお答えはよくわかるんですがよくわからないお答えでして、余り厳しく細かいことを申し上げたくはないんですが、もう一度申し上げますが、日本は第三位の排出国で一割弱加害者となっている国でございます。そして、途上国も含めて各国が期待をしています。そして、確かにCOP6でいろんなメカニズム、京都議定書の京都メカニズムが決まるのはわかっているんですが、しかしそれは海外との排出権取引、クリーン開発メカニズム、それから共同実施、海外との問題でございます。
 国内で二酸化炭素の排出を抑えるということは現実問題としてはもうそろそろ整備をし出しても構わないだろうという話になると、国内法の整備とかも含めなければいけない。京都メカニズムができるのを待っているのは、それはもちろん待つことは必要なんですけれども、待つと、たった一年しかない。そのときに本当に批准できるようなものが担保できるのかどうかについて実は大変危惧をしておりまして、もう一度申し上げますが、そこで、いやまだ国内マイナス六%かどうかわからない。もし本当に日本の経済がこのまま小渕総理が言われるようにどこかで再生していったら、先ほど言われたように二酸化炭素が今減少していると言われていますが、減少しないかもしれない。そこで、たった一年しかありません、間に合いませんでしたと。
 そうしたら、二〇〇二年の発効のときに日本が批准できていませんみたいな話になるのは非常に問題だから、逆に国内法の整備なり国内での排出に対する仕組みはそろそろ準備はいかがですかとお伺いをしているので、もう一度お答え願えますか。

○国務大臣(清水嘉与子君) 国内といたしましては、先ほど申しましたような地球温暖化対策の推進に関する法律をつくりまして、それぞれの主体に応じて、国が何ができるのか、都道府県が何ができるのか、企業が何ができるのか、あるいは国民の皆様が何ができるのかというようなことについて進めているわけでございます。
 卑近な例を申しますれば、国ですと、せめて公務で使っている自動車なんかを低公害車にするというようなことも具体的に取り上げて進めているわけですね。私ももちろん総括政務次官も天然ガスの自動車に乗っているわけでございまして、そういったものを具体的に各大臣、各省の車についても入れていただく。せめて一〇%くらいは、平成十二年には一〇%入れたいとかいうような数値目標を持ちましていろいろ進めているところでございます。
 そんなことで、国内対策としては、各企業に対しましても、これは自主的なことではございますけれども、企業ごとに相当研究していただくというようなこともしているところでございます。

○福山哲郎君 私は、今、二酸化炭素が民生部門でふえている、増加をしていることも存じ上げているつもりでございます。企業部門は実は逆に減少している。民生部門で増加をしているから企業は努力をしているんだという議論も私はわかっているつもりです。そして、環境庁さんに言っても、逆に言うとこれは通産省マターも非常に多うございまして、それも限界があるのも存じ上げているつもりでございます。
 しかし、長官、環境庁さんが今言っている六%削減の基本的な数字は、CO2の削減は目標ゼロ%なんですよ、御案内のように。そして、何とフロンに関してはプラス二%なんです。つまり、二酸化炭素とフロンという温室効果ガスの大犯人に対してはゼロとプラス二%なんです。
 そして、どこを減らすかというと、メタン、これがマイナス〇・五%、そしてもう一個がマイナス二%。大変重要なんですけれども、六のうちの二減らすのは何かというと、革新的技術開発と国民各層のさらなる努力なんです。これはどう考えたって読めないんです。
 それからもう一個、三・七%マイナスと書いてあるわけです。これはすごいなと。六%のうちの三・七%だと。これは一体何かというと、森林等の吸収源なんです。つまり、日本は木が多いからそこで吸収してくれるだろうというのがマイナス三・七なんです。
 そして、なおかつマイナス一・八%、これも結構レベルは高いなといって見ると、これが先ほどから出ている京都メカニズムであります排出量取引と共同実施とクリーン開発メカニズムなわけです。
 そうすると、国内で何も減っていないんですよ。革新的技術開発と国民各層のさらなる努力は、今長官が言われたとおりに頑張らなきゃいけない。でも、民生部門は残念ながら国民各層の努力が足りなくて今ふえているんです。それでCO2は実際ゼロ。フロンに関してはプラス二%。それで、この状況でいって、例えば来年の、長官が言われたようにCOP6で京都メカニズムの排出量取引と共同実施とクリーン開発メカニズムのマイナス一・八%が確保できたとしたって、先ほど言われたシンクの問題、三・七%なんてまだまだこれは決まらないです。そうしたら、国内でどうやって減るのかというのが私にとっては非常に素朴な疑問としてあります。
 その準備を始めないで、来年のCOP6を待ってから一年間で批准をするということ自身に随分と無理があると思っていまして、なおかつ環境庁だけでは限界があるのも存じ上げているんですが、そこは環境省になるわけですからしっかりとしていただかなければいけないというメッセージなので、ここで長官にぜひ御決意とその思いをお聞かせいただきたいということです。

○国務大臣(清水嘉与子君) 先生、細かいことを御存じの上でそういう御指摘、本当に応援をしていただいているというふうに思っておりますけれども、これは環境庁だけでなくて政府挙げて取り組んでいる仕事でございまして、各部門でどういうことができるのかということを全部挙げていただいているわけでございます。運輸部門なんてまだまだこれからの問題だと思いますけれども、各自動車メーカーの方でも相当な検討がされておりますし、これから進んでくるだろうと思います。
 しかし、そうはいっても、今の掲げてある内容を見ますと、本当にこれでいいのかねという感じがされる、あるいは吸収源、シンクのところでこういう数字が本当にできるのかという御懸念は確かにおありになるだろうと思います。
 しかし、私たちは、世界が一緒になって、もう今、二十一世紀に向かってこのことをしようという取り決めを大きくしたわけでございまして、日本といたしましても何とか、何とかするぐらいではあれかもしれませんけれども、知恵を出して技術開発もしなきゃいけません、エネルギーの開発もしなきゃいけませんというようなことも含めて、何とか二〇〇二年のときにおくれないようにしていきたいということを私たちは目標に掲げながら進めなければ、これをもし下げてしまったら大変な問題になるんじゃないかというふうに思っているところでございます。

○福山哲郎君 長官にそれだけお言葉をいただくと、もうこれ以上突っ込むのは嫌なんですが、必死になってと、頑張りたいとおっしゃいましたが、私から見ると、要は決まっていないシンクと決まっていない京都メカニズムでマイナス五・五%を見積もって、先行きわからない革新的技術開発と国民各層のさらなる努力で二%、プラスをすると七・五%を全くまだ決まっていない状況の中でこれを見積もっていること自身、世界から見ると日本はやる気があるのかないのかと見られると私は思っているわけです。
 極論すれば、もうそろそろ本当に国内法の整備とかを始めないことには間に合わないんじゃないか。これは批准ができないことは、もちろん先ほど申し上げたようにみっともないですが、目標を達成できないことはもっとみっともないわけです。
 長官にこれ以上言っても、頑張りますというお答えになると思いますので、それはもうこれ以上は申し上げませんが、ぜひ長官、環境庁の役人の皆さんを鼓舞していただいて、環境庁の役人さんは、僕みたいな若輩が言うのは生意気なんですが、大変おとなしい方が多うございまして、他の役所との調整に入られると結構元気がなくなられる方が多くて、ぜひ長官におしりをたたいていただいて、こういうことはちゃんと目に見えるようにしていこうやないかと。国民が不安に思っていることに対して、環境庁として、相手の国との排出権取引やそういうものだけで減らそうみたいなことは考えないで、環境庁としての旗をちゃんと上げるという、ぜひお励まし、叱咤激励を長としていただきたいんですが、長官、いかがですか。

○国務大臣(清水嘉与子君) 大変ありがとうございます。
 環境庁も、非常にみんな環境省になるということで熱心に取り組んでおりまして、決して単なる調整官庁じゃなくて、相当なリーダーシップを発揮できるようになっているというふうに思っております。
 しかし、このことは、確かに環境庁だけで旗を振っていてもできないことはもう明らかなことでございます。役所の中での調整もそうでございますし、また国民各層の皆様方にもぜひこの問題をもう少し御理解いただけるように努力したいというふうに思っておりますので、先生方もぜひよろしくお願いをしたいと思います。

○福山哲郎君 わかりました。
 では今度は、二酸化炭素の排出をゼロ%にすると言われているわけです。つまり、もうふやしも減らしもしないけれども、何とかゼロに抑えるんだというふうに環境庁は言われている。これをとにかくふやさないでゼロ%であることは非常に重要なので、二酸化炭素の排出がゼロ%の目標になるための方法、妥当性みたいなものについて御説明いただけますか。

○国務大臣(清水嘉与子君) 今、先生がゼロとおっしゃいましたが、二酸化炭素、メタン及び亜酸化窒素の三ガス合計で二・五%減らせるという一応計画になっているわけでございます。
 具体的にどうするのかということでございますけれども、これは先ほど先生も御指摘くださいましたけれども、省エネルギー、新エネルギーの導入及び安全に万全を期した原子力立地の推進を中心としたエネルギー受給両面での対策、あるいは革新的技術開発、国民の皆様方への御努力を進めるということを考えているわけでございます。
 原子力の問題がいろいろと言われたりしているわけでございますけれども、やはり今日本では、二酸化炭素の排出が少ないエネルギーとしてこの利用を十分安全を確保しながらしていきたいというふうに思っているわけでございます。

○福山哲郎君 これも通産省マターなんですが、今の原発の立地と省エネの推進でゼロ%にとどめたいというお話は、これもよくわかるんですけれども、よくわからない。
 その原発の二十基増設というのはもともと前から、随分前から聞いている話でございまして、それが思うように計画の実施が進んでいないということはもちろん長官も御案内だと思います。そしてさらには、この間の東海村の臨界事故があって、それこそ柏崎ではプルサーマルの実施も延期をしてくれというような話が出てきています。そういう状況の中で、二〇一〇年までに二十基増設ということに対してどれほどの妥当性と真実味があるのか。国民の理解を得つつ二〇一〇年までに努力をされるというお言葉の、それは思いはわかりますが、それができなかったときに国際的な公約を果たせないわけです。
 環境庁の責務として、それができなかったときに、通産できないじゃないか、資源エネルギー庁できないじゃないか、科学技術庁の責任だと言うわけにはこれはいかないんですね。それはあくまでも国内の問題でございまして、それを国際的な公約である京都議定書の中での約束に入れること自身が非常に乱暴だと最近私は思っておりまして、それに対しては環境庁は環境庁なりに、代替案ができるかどうかは別にして、その二十基ができなかったときにどうなんだというようなことも含めて御議論をいただかないと私は大変見通しが暗いと思っておりまして、その点について長官、どのようにお考えでしょうか。

○国務大臣(清水嘉与子君) 先般の東海村の事故等もございまして、原子力に対する皆さんの不安、不信というのが大きくなってしまったこと、大変残念なことでございます。
 原子力は、先ほど申しましたように温暖化のためには二酸化炭素の排出が少ないというエネルギーでございますから、どうしてもそれを活用せざるを得ないわけでございますけれども、これを使うときには必ず万全を期したことをしなければいけないということも当然のことでございます。
 これも先生に先に言われてしまったのですけれども、やはりこの原子力の問題につきましては、安全確保の徹底を図るということと、それから国民的な議論をこれからしながら御理解を得つつ進めなきゃいけないという問題だというふうに思いますし、また新しいエネルギーの開発の問題についてももっと取り組まなきゃいけないということは御指摘のとおりでございます。

○福山哲郎君 もう今の話だとほとんど前に進まないんですね。
 ですから、僕は通産省マターのことをここでどうなんだと聞く気は全くなくて、逆にそれを通産省任せでいいのかという話をしているわけです。通産省ができなかったら、環境庁としては、できへんやないか、それでできへんかったからと。
 なぜ僕はこんなことを言うかというと、この原発の二十基増設の計画というのは、先ほど言った国際的な公約であるマイナス六%の中の一部に含まれているわけです。ということは、その一部が達成できないということはこれはもう火を見るより明らかでございまして、それに対して環境庁としてはどうなんやと。
 それで、先ほどから何回も同じことを申し上げているようで嫌なんですが、これができなければ、要は国内的に六%達成できる見込みがなければ当然批准できないわけですよ。だって、国会承認できるわけないんだから。そうしたら、この二〇〇二年の発効を日本は批准しないで迎えなきゃいけないという状況になるということになると、この原発を国民の理解を得てみたいな話で、二〇一〇年、そこまでいってできました、できませんなんて言っている悠長な時間はないわけですね。その前に我々は批准しなきゃいけないわけですから。
 だから、長官が二〇〇二年に発効したいとおっしゃられたから、では批准はその前ですねと。その前に批准をしなければいけないんだったら、ちゃんとその前に国内で削減するというある程度のものを担保しなきゃいけないじゃないかという議論でして、それは通産省との関係があるからお答えしにくいのはわかりますが、今のお答えだとはっきり言って批准はできないし、いつまでたっても六%の削減の見込みは二〇一〇年に原発ができてみなきゃわからないみたいな話になっちゃうんですが、長官いかがでしょうか。

○国務大臣(清水嘉与子君) 先生御指摘でございますけれども、そこの部分だけでなくて、いろんな点で私たち努力しなければいけない点がたくさん出てきているわけでございます。
 COP6、来年国際的な合意も取りつけ、そして国内の準備もし、そして締結に向けての作業をするということについて大変困難な点があることも事実でございます。しかし、このまま放置しておいていいのかといえばそうではない。やっぱり日本として進めていかなきゃならない地位にあるということも事実でございますので、今の計画は当然二〇〇一年、批准を国会にお願いするときには当然この計画の達成状況等についてまた見直しをすることになると思いますけれども、そういった点も含めて、多少どういうところで見直しがあるかわかりませんけれども、ぜひ進めていきたいというふうに私は思っているところでございます。

○福山哲郎君 今非常に重要なことを長官はおっしゃられたのでもう一度お伺いしますが、批准に向けてこの削減計画の見直しをしていきたいとおっしゃられたわけですね。

○国務大臣(清水嘉与子君) いずれにいたしましても、そのときにどういう状況になっているかということをフォローしなきゃいけないというふうに言ったらいいんでしょうか、今までの計画が実際どうなっているのかというふうなことが当然出てくると思いますので、そのときに一体日本が批准できる状況にあるかどうか、どうしたらいいのかということについて検討がされなきゃいけないというふうに思います。

○福山哲郎君 でも、それは基本的に、今の話で言うとCOP6、来年の十一月が終わって全体を見てですよね。だって、COP6の中身によっては、日本が想定している排出権取引とかの削減目標がCOP6の結果いかんではできるかどうかわかりませんね。ということは、それはとりあえずCOP6後ということですね、今の削減の状況を見てというのは。

○国務大臣(清水嘉与子君) そうでございます。

○福山哲郎君 そうすると、また戻っちゃって申しわけないですが、間に合いますかという話になるわけですね。だから、これは行ったり来たりなのであれですけれども、要はこの六%の削減計画は、根拠がないと言うと怒られますが、非常にあいまいな見通しの中で言っているわけです。原発も二十基できるかどうかわからない。森林源、先ほど長官が言われたシンクもCOP6でどれだけ認められるかどうかわからない。さらには国民の努力みたいな話が出てきているわけです。
 では、もう一度お伺いをしますけれども、批准に向けて国内法の整備、国内法の制定等は何かお考えはありますでしょうか。

○国務大臣(清水嘉与子君) 今、先生の御指摘でございますけれども、国内におきましては、政府が決めております地球温暖化対策に対する基本方針でありますとか、推進大綱でありますとか、あるいは推進のための法律でありますとか、そういったものに従ってとにかく着々と準備をしていく、そしてCOP6の取り決めをきちんと決めることによって何とか六%を達成したいという、重ねてのお答えになってしまいますけれども、そういった方向でぜひ進めたいというふうに思っているところでございます。

○福山哲郎君 一応事前の質問をさせていただいていますが。
 ですから、六%削減をするために、担保するために国内法の制定の見通しはございますか。国内法である程度六%削減の見通しが立たないことには、逆に言うと国会で批准もできないわけですね。ということは、発効もできないわけですから、国内法の制定の見通しについて長官どのように、ゆっくりでも結構でございますので。

○国務大臣(清水嘉与子君) ちょっと重なったようなお答えになるのかもしれませんけれども、一つには京都メカニズムの国際交渉を、合意を得てきちんと国際交渉を進めて、そこの中での問題をきちんとしていく。それから国内的には、先ほど私が申しましたけれども、地球温暖化対策の推進大綱に従いまして、政府全体として徹底的な省エネルギー対策を推進すること、あるいは新エネルギーの積極的な導入のこと、安全に万全を期した原子力立地の推進のこと、産業部門、運輸部門、民生部門、各種対策の推進、革新的技術の開発、この辺のところを進めていくということを何度も申し上げたわけでございます。
 そうしたことを具体的に進めながら何とか六%削減を達成するシナリオを進めていきたい、こんなふうなことでございまして、先生の直接のお答えにならないのかもしれませんけれども、かなりこれで進めているということを申し上げたいと思います。

○福山哲郎君 お答えをいただいていないというふうに思っているんですが。
 そうしたら、先ほど申し上げたように、例えばその時点で六%削減が厳しいという状況になったときに、環境庁としてはこの削減計画の見直し等を行う準備はございますか。

○国務大臣(清水嘉与子君) いずれにしても、この六%が変わるわけじゃございませんよね。

○福山哲郎君 もちろん六%の中身の削減。

○国務大臣(清水嘉与子君) ですから、今各般にわたって、みんな今申し上げたようないろんなところで努力しているわけでございますから、非常に早く達成するところもあるかもしれません。そうでないところもあるかもしれませんけれども、そういった状況をぜひ確認してフォローしたいというふうに思っております。

○福山哲郎君 だから長官、申しわけないんですけれども、原発二十基が二〇一〇年にできることが前提でできている六%ですから、達成できるところがあるかもしれませんと言ったって、それが見えないことにはできないわけですから、今長官がおっしゃったのは多分不可能に近い話だと思うんです。
 おっしゃることはよくよくわかりますし、余り時間もありませんからきょうはもうこれ以上申し上げませんが、実はこの六%というのは大変ずさんな状況で、ずさんというと言葉は悪いですが、非常に不確定な要素をいっぱい含んだ六%の削減計画でございます。
 それで、発効が二〇〇二年というタイムリミットがあって、来年のCOP6があって、その間に批准をしなきゃいけないという大変焦眉の問題でございまして、そこに対してもう少し具体的に担保できるきちっとした計画をつくらないことには批准ができない、国会でも当然承認できない。そこに対しては環境庁としてイニシアチブをとっていただきたい。
 私はどちらかというと、責めているんじゃなくて応援団のつもりで言っておりまして、そこは逆に本当に前にしっかりと進んでいただかないと国際的にも恥をかきますし、冒頭申し上げましたように我々の孫子の代に間違いなくこの影響が、今ももう実際に来ているわけですから、高知でアユが食べられなくなっちゃうわけですから、そこに対してぜひ長官の今後のイニシアチブを御期待して、それから政務次官におかれましては、私は質問を用意していましたが、時間が足りなくなって質問できなくなったことをどうかお許しいただきたいというふうに思います。
 これで終わります。どうもありがとうございました。(拍手)

 


 

第145国会  参議院   経済・産業委員会  1999年10月20日

○福山哲郎君 民主党・新緑風会の福山でございます。
 きょうは、核燃料物質加工施設で発生いたしました臨界事故について質問させていただきます。
 今回の事故は、従業員三名の方の被曝に始まり、確認された方で六十九名、そして本当に決死の覚悟で冷却水抜きの作業をされた二十四名が被曝をされ、また近隣、茨城県民、そして日本国すべての国民が大変恐怖と不安の毎日を送ったという点で大変遺憾に思っているとともに、被曝をされた皆さん、近隣住民の皆さんに心からお見舞いを申し上げます。
 私は、率直に今思うのは、半径十キロ圏内に屋内退避の指令を出されて屋内退避があった、しかしそのときに実は茨城県民の皆さんの非常に良識的な適切な判断があったんだと思うんです。例えばだれか一人でも、こんなところにいるのは危ないんじゃないかというふうな思いがあって、おい、ここからすぐ抜け出そうやということで、車に乗ってだれかが移動し出した途端に、みんなが我も我もといって家の外に出ていって、それで予期せぬ被曝に遭ってしまったり、交通の麻痺があったり、そういう二次的、三次的なパニックも十分この事故は想定ができたはずだというふうに思っています。
 そこは私の感覚で言いますと、政府の初動がおくれたり、茨城県民、東海村の皆さんに情報の伝達不正確だったこととか、そういった政府の足らざるところを逆に言うと茨城県民の皆さんの本当に良識で補完をしていただいた。それで二次的、三次的な災害にならなくて余計なパニックが起こらなかったことというのは、逆に言うと我々、政府も含めて、政治を預かる者としては本当に茨城県民の皆さんに感謝をしなければいけないのではないかというのを私はまず冒頭申し上げたいというふうに思います。
 そういった点から考えまして、政府はこれまでどんなことを言ってきたかといいますと、絶対に起こってはならない事故が起こったとか、安全を最優先に進めていくなどという発言を本当に我々は耳にたこができるぐらい聞いています。そして、官房長官に関しては、もう我々が予期せぬ事故だったのだというような、予期しない事故であった、率直に言ってこれに対応するマニュアル、措置などが十分でなかったことを改めて知らされたというような話をされているわけです。この姿勢自身が私は大変問題だと思いますし、予想外だったので対応がおくれたとか、初めてだったから時間がかかったという、これはまさに阪神大震災のときもそういう発言に終始したわけです。そのときの教訓が一体どこにあるのか。
 私は、この問題というのは、先ほど自民党の加納委員からもありましたように、たくさんの問題がかかわっていると思います。未然防止の問題、初動対応のおくれの問題、住民の安全確保、そして今後の補償の問題、それから先ほど長官も言われました原子力災害防止法の新たなる制定の問題。本当にいろんな問題をはらんでいると思いますので、到底きょう一日の審議ではおぼつかない話なので、私は少し安全審査、未然に防げなかったのかという点にきょうは的を絞ってお伺いしたいと思います。きのうの衆議院の質問とも多少重なるかもしれませんが、お許しをいただきたいと思います。
 まず最初に、少し観点が変わるんですが、三十日、資源エネルギー庁長官がある発言をしています。今回、施設から半径十キロ圏内の住民の方々に対する屋内退避が解除されたのが十月一日午後四時半です。そして、半径三百五十メートル以内の住民の方々に対する避難勧告が解除されたのが二日の六時半でございます。事故発生から二日以上たっているわけです。それまで住民の方は見えない不安におびえながら本当に不自由な生活を強いられていた。
 ところが、事故当日の三十日の深夜でございます。実質は一日の未明だったと思いますが、資源エネルギー庁長官が記者会見でどのようなことを話されたか、お答えをいただけますか。

○説明員(河野博文君) 九月三十日、これは図らずも深夜でございましたけれども、御案内のとおり、この事故に関します一次情報は科学技術庁で累次にわたって公表してこられたわけでございます。しかしながら、通産省においでの記者の皆さん方もこの問題には当然のことながら非常に重大な関心を持っておられる。そこで、この深夜になりましても多くの記者の方がおられた状況にありました。
 そこで、私どもは、特にこの事故に関しての一次情報は科学技術庁の方で御発表であるということも申し上げ、しかし私どもとしてこの問題については全面的に協力をさせていただきたいと思っておりましたし、また原子力発電所の立地市町村などにできるだけ的確な情報を流したいということで私どもなりの対応策をしておりましたので、それを御紹介するという目的で説明の場を設けさせていただきました。
 具体的に申し上げましたのは、この事故に対します最大限の協力、あるいは原子力関係者への情報提供をさせていただくために資源エネルギー庁内に東海村核燃料施設事故協力・情報センターを設置したということ、それから当省から現地の対策本部に職員を数名派遣したということ、それから地元にあります日本原子力発電、これは発電所でございますけれども、そこに最大限の協力をしてほしい旨お願いをしたということ、そして電気事業連合会に対しても、いずれいろいろな協力をお願いするであろうから準備をお願いしますということを要請したことなどについてまず御説明をしたわけでございます。
 御指摘の点は、原子力発電に関する方針について御質問がありましたので、原因の徹底究明、対策に全力を尽くすということを申し上げた上で、日本の置かれている立場にかんがみまして、原子力の重要性については変わらないという趣旨のお答えを質疑応答の中でさせていただきました。それが全体像でございます。

○福山哲郎君 私は、資源エネルギー庁長官も大変厳しい状況の中での記者会見だったということはお察し申し上げます。しかし、「世界的な地球環境問題への対応という大きな課題が日本にはある一方で、日本経済を支えるという問題もあり、この連立方程式を解いていくためには、原発の重要性は変わらない。」、その後段です、「先程申し上げたとおり、日本の置かれている立場、原子力の重要性を鑑みて、私どもの認識は変えていないということ。」ということを述べられているわけです。
 私は、使用済み核燃料の中間貯蔵施設のときにも申し上げましたけれども、原発が必要ないとか原発をやめろとか、そういう感情的な議論をする気は毛頭ありません。しかし、このときにはひょっとするとまだ臨界が続いているかもしれない、そして住民の皆さんはまだ屋内退避と避難をしている。この状況のときに資源エネルギー庁長官が原発についての方針は変わらないというようなことを、臨界が終息していない状況のときにこういう発言をされれば国民は何を感じるかというと、事故が起きようが放射能が漏れようが国は方針は変えないんだなということをやっぱり感じるわけです。そこが原子力行政に対する国民の不信感のもとなんです。
 先ほどの午前中の答弁でも、中曽根長官がそのことを何回も言われました。私はそれを聞いて、そうではない、それよりもやることがあるだろうと。原因の徹底究明をし、そしてなぜこんな状況が起こったのかを国民に明らかにし、それから初めて原子力を見直すのかとか原子力をこれまでどおり推進するのかということを、それこそ国民挙げてもう一度議論をしていこうということが私は政府としての当然あるべき姿勢であろうし、立場だというふうに思います。
 先ほど私が申し上げましたように、茨城県民の皆さんの大変良識的な判断で二次的、三次的な災害が防げたという中で、まだ臨界が続いている中でこういうことを発せられる根拠が一体どこにあるのか。事故中なんですよ、まだ。どこに根拠を持って方針が変わらないということが言えるのか。私は少し感覚的な問題として疑問に思うんですが、エネルギー庁長官、いかがですか。

○説明員(河野博文君) 私といたしましては、先ほど申し上げたような趣旨で記者の皆様方に、当時私として差し上げられる情報を説明させていただくことが趣旨でお目にかかったわけでございますけれども、そういう質疑の中でそういうやりとりになりました。
 ただ、申し上げさせていただきますのは、あわせて原因の徹底究明、そして対策に全力を尽くすということもあわせて申し上げさせていただいているのでございます。

○福山哲郎君 歴代の科学技術庁長官も資源エネルギー庁長官も国民の理解を得つつと、この間の中間貯蔵施設のときも、これからその候補地を探していくのに情報を開示して原子力行政として本当に積極的に国民と対話を進めていくんだという言葉が、やっぱりこういう発言があると絵そらごとに聞こえるわけです。逆に言うと、国民にとって原子力行政に対する不信感を高めるという意味で、私はマイナスの効果もあるのではないかと思うぐらい二言目にはこういう発言が出る。これ、中曽根長官、今のお話でいかがお考えですか。

○国務大臣(中曽根弘文君) 委員のただいまの御指摘は、私は大変大切なことだ、そういうふうに思っております。
 原子力事業また原子力行政は昭和二十年代の後半から進められてきたわけでありますが、今日に至りますまでには、もちろん地域の皆さん方の本当に温かい御理解、それから関係者の皆さんの大変な御努力の積み重ねでここまでやってきたわけでありますが、最近のいろいろな問題を初めとして今回の事故は、そういう意味でそういう方々の期待を、信頼を裏切るという意味において大変残念にも思っておりますし、私の立場でも責任を感じているところでございます。
 たびたび申し上げておりますけれども、今一番大切なことは、事故原因の徹底究明、再発防止策、それから住民の皆さんの御不安を取り除く、大きく分けますとこの三点だと思っております。これらが整備された上で、改めて国民の皆さんにこういう手当てをしました、今度は絶対大丈夫ですと。今までもそういう言い方をしてきたかもしれませんけれども、そういうような整備を行った上でもう一回一から、白紙から国民の皆さんの御理解をいただくように努力すべきだ、私はそういうふうに思っておりまして、午前中の発言で原子力の重要性を申し上げましたけれども、気持ちはそういう形で再出発だ、そういう気持ちであることをここで述べさせていただきたいと思います。

○福山哲郎君 かなり踏み込んだ御発言をいただいて、ありがとうございます。
 本当に国民はそういう言葉を待っているんだと思いますし、そうでないと、本当に東海村という原子力行政に非常に理解を示した村民の皆さんに対して逆に私は失礼だというふうに思いますので、今後もぜひそういう立場を長官にはお願いしたいというふうに思います。
 では、具体的なお話に進みたいと思います。
 今回事故があったウランという物質は、もうきょう皆さん御案内ですので繰り返し述べませんが、一歩間違えれば、一つ間違えれば大きな事故を引き起こしてしまうという大変危険な物質なわけです。それに対して核燃料施設安全審査基本指針というもので許可をされたということを伺っていますが、もう一度確認のために伺います。
 今回の転換試験棟に対しての変更申請に関しては、この核燃料施設安全審査基本指針をもとに許可をされたわけですね。

○説明員(間宮馨君) そのとおりでございます。

○福山哲郎君 そうすると、一つ疑問が出てきます。
 この核燃料施設安全審査基本指針というところの最後に、「なお、本基本指針に基づき、各種核燃料施設について、その特質に応じた個別の安全審査指針を整備するものとする。」というふうにあるんですが、今回のウラン加工施設、特に転換試験棟についての個別安全指針はなかったわけですね。

○説明員(間宮馨君) 五%以上のものに対しての個別指針はございませんでした。

○福山哲郎君 おかしいじゃないですか。何でつくらなかったんですか。だって、もともと議論になっていますウラン加工施設安全審査指針、これは五%以下のものですね。この五%以下のものについては安全指針ができている。何で五%以上のものについては安全指針をつくらなかったんですか。何で五%で区切られているか。その二点について明確に述べてください。

○説明員(間宮馨君) 五%以下の濃縮ウランを取り扱う加工施設につきましては、施設数が多いということと臨界事故が起こる可能性が極めて低いという特徴を反映させまして、特にウラン加工施設安全審査指針を取りまとめているものでございます。
 一方、五%以上の濃縮ウランの加工施設に対しましては、先ほど申し上げましたように、核燃料施設安全審査基本指針が適用されるということでございます。これは、五%以上の濃縮ウランを取り扱う加工施設は五%以下のものと比べまして臨界事故が起こるおそれが高いということと、施設自体の数が少ないということから基本指針を直接適用することとしているものでございます。

○福山哲郎君 数が多いから安全指針をつくった、数が少ないから安全指針はつくらなかった。わかりました。
 じゃ、もう一つ伺います。
 再処理施設は幾つありますか。

○説明員(間宮馨君) 現在、東海村と六ケ所、六ケ所の分はまだ建設途上でございますが、完成したものは一つでございます。

○福山哲郎君 再処理施設に対する安全指針はできていますか、いませんか。

○説明員(間宮馨君) それはございます。

○福山哲郎君 ちょっと待ってください。今、一カ所でしょう、再処理施設は。再処理施設は一カ所とおっしゃって、安全指針はできていたわけでしょう。ウラン加工施設の五%未満についてはたくさんあるからつくりましたと。五%以上で再処理施設ではない今回のジェー・シー・オーのようなものに関しては、数が少ないからつくらなかった。再処理施設一カ所だけどできているじゃないですか。何でつくらなかったんですか。

○説明員(間宮馨君) 先ほどの区別は、五%以上、以下ということで申し上げました。再処理施設につきましては非常に全体システムが複雑でございまして、そういう特殊性も加味して特別につくられたものでございます。

○福山哲郎君 それは納得できないですね。
 同じウランという大変危険度の高いものを使っていて、そして五%以下という危険が少ないものは数が多いからつくりました、五%以上は危険度は高いが数が少ないからつくりませんでした、それよりも上の再処理のものについては一カ所だけど数が少ないけれどもつくりました。これはどう考えても私は論理矛盾だと思うんですが、いかがですか。

○説明員(間宮馨君) 今申し上げましたように、指針を直接適用して審査をしても、いわばその審査が妥当に行われるあるいは円滑に行われるというところに関しまして指針をどのように整備していくかという観点があるわけでございまして、加工施設の場合と再処理施設の場合はその対象となるシステムの複雑性というところに着目をして、ある方は指針なしで直接基本指針の方から審査ができる、もう一つの方はやはりそのための指針をつくっておくべきであるという議論でそこが分かれたというふうに認識しております。

○福山哲郎君 今のも納得できないですね。
 再処理は複雑だ、加工施設は複雑でないからつくっていないと。でも、五%以下はつくっているわけですね。これはどう考えても論理矛盾だと思うんです。
 もう一つ追加してお伺いをすれば、原子力安全委員会の勧告等については、政府は、基本的には科学技術庁はできる限り尊重しなければいけない尊重義務がございますね。いかがですか。

○説明員(間宮馨君) そのように理解しております。

○福山哲郎君 そうすると、これは安全委員会の委員長にお伺いしたいんです。
 安全委員会から出ている核燃料施設安全審査基本指針に「本基本指針に基づき、各種核燃料施設について、その特質に応じた個別の安全審査指針を整備するものとする。」と書いてあるわけです。これに沿って再処理施設の安全審査指針とウラン加工施設の安全審査指針はできているわけです。五%以上のもの、今回のジェー・シー・オーのものに関してだけはできていなかったわけです。
 これは、尊重義務があるものに対して、安全委員会の委員長としてどのように見解をお持ちですか。

○説明員(佐藤一男君) まさに御指摘のとおり、五%以上のものについてのそういう特定の指針というのは用意されておりませんでした。ただし、基本指針の要求事項を見ますと、少なくともそこに書かれている限りでは、この五%以上の施設についても十分適用可能である、それでカバーしているという形に形の上ではなっていたわけでございます。
 ただ、今回のこのような事故が起こりますと、本当にそれで十分だったのかという疑問は生ずるわけでございまして、この点につきましては政府の対策本部会議の決定も受けまして、この事故調査委員会というものを今つくっておりまして、そこで十分この点についても御審議いただき、ひとつ遠慮のない御指摘をいただきたいというふうに考えているところでございます。

○福山哲郎君 安全委員会の委員長におかれましては大変御苦労されていると思いますが、先の話は結構でございます。過去につくらなかったことに対してどうお考えか。安全委員会の勧告に対して、こういう基本指針をつくれというものに対して、では科学技術庁は安全委員会から出てきたものに対して自分の恣意でつくったりつくらなかったりできるわけですか、自分の判断で。

○説明員(佐藤一男君) その審査指針と申しますものは安全委員会の指針でございます。これは、科学技術庁、行政庁がつくるものではございません。したがいまして、それを用意していなかったのは不行き届きではないかという御指摘は、これは安全委員会が承ることでございます。それについてのこれまでの考え方、今後の考え方等についてはただいま申し上げたとおりでございます。

○福山哲郎君 そうすると、今回はこちらの核燃料施設の安全指針でもう一回許可を出したということを確認した上でお伺いします。
 なぜ臨界事故に対する考慮が必要ないと判断されたのか、お答えください。

○説明員(間宮馨君) お答え申し上げます。
 臨界安全性にかかわる安全審査に当たりましては、核燃料施設安全審査基本指針に基づきまして、単一ユニット、貯塔、仮焼炉、還元炉等及び複数ユニット、こういう単一ユニットの相互間の関係に対しまして誤操作を含む臨界安全対策を講ずるとともに、加水分解から沈殿までの一連の工程をワンバッチ、いわゆるウラン濃縮度一八・八%で申しますと二・四キログラムウランで管理することを確認いたしております。
 これらのことから臨界事故の発生するおそれはないと確認をいたしておりまして、臨界事故に対する考慮を要しないという判断が行われたものでございます。

○福山哲郎君 済みません、そこなんですが、実はワンバッチ以上入れないということで問題の沈殿槽が安全確認をされたという議論、沈殿槽のあり方自身の議論はあるんです。だって現実には五十何キロ入ったわけでしょう。ワンバッチ以上入れないといったって現実には入ったわけですから、それは形状的に全くもって安全管理できていなかったわけですよ。質量管理だけだったわけでしょう。その質量管理もワンバッチ以下でやると。ここにありますよ、ジェー・シー・オーが出されている核燃料物質加工事業の変更の申請書にそう書いてあります。だけれども、現実には形状では全然安全管理ができなかった。できないだけの量が入るものだったわけじゃないですか。
 この議論はもちろんあるんですが、私が細かく言いたいのは、単一ユニットと複数ユニットの臨界管理があれば臨界事故を想定する必要はないと一体どこに書いてあるんですか。一体、核燃料施設安全審査基本指針のどこに書いてあるんですか。

○説明員(間宮馨君) 審査におきまして、今申し上げたようなことから、臨界事故の発生するおそれはないということを結論したものでございまして、その結論に基づきまして、先ほど申し上げましたような臨界発生時の措置は必要がないということになっているものでございます。

○福山哲郎君 これは大変問題なんですけれども、いわゆる五%以下のウラン加工施設の安全審査指針に対しては、十、十一、先ほど局長が言われました単一ユニットの臨界安全、指針十一の複数ユニットの臨界安全、そして指針十二の臨界事故に対する考慮、ここでウラン加工施設の指針には、「ウラン加工施設においては、指針十及び指針十一を満足するかぎり、臨界事故に対する考慮は要しない。」、五%以下のウラン加工施設に関しては十、十一があれば十二は考慮しなくていいと書いてあるわけです。さっきからはっきりおっしゃっているように、核燃料施設安全審査基本指針、今回許可を出したこれには十、十一があれば十二は考慮しなくていいなんて一言も書いてないじゃないですか。
 つまり、我々が類推するには、これに関してはウラン加工施設の安全指針を準用して臨界を想定しなかったとしか考えられないわけですよ。そうすると、はっきり言って、先ほど冒頭申し上げたように、五%以下は指針をつくった、再処理施設は指針をつくった、今回のジェー・シー・オーは指針がなかった、ある意味で言うとダブルスタンダードだったわけです。片方では臨界を想定しないというウラン加工施設指針を利用して、片方ではこちらの核燃料施設の安全指針を利用したというふうな話と感じられるんですが、それはいかがですか。

○説明員(間宮馨君) 一部の例えば耐震設計であるとか、そこら辺についてウラン指針をいわば準用したケースはございますが、全体としては基本指針の中で審査が行われております。
 基本指針の方はいわば上のレベルの指針でございますので、その中で先ほど申されましたような五%未満のような形についての判断があったとしても、それはいわば包含されている世界でございますので、矛盾にはならないということでございます。

○福山哲郎君 今、大変重要なことを言われたんですよ。一部分はウラン施設のを準用した、でもこのウラン施設じゃない方に関しては包含しているからいいと。包含しているんだったら、当然包含している方が優先じゃないですか。
 では、そのウラン加工施設の安全指針のうちの一番重要な臨界事故に対する考慮を省いていいというところだけ準用したんですか。こんなばかげた話がありますか。一番重要な危険についてだけこの指針をもってやって、あとに関してはやらなかったなんて、そんなばかな話はないでしょう、局長。

○説明員(間宮馨君) 正確に申し上げますと、本指針とウラン指針というのは当然ございますが、本指針が本件に関しては適用されたものであるわけです。しかしながら、幾つかの部分につきましては、このウラン指針はウラン指針でいろんな議論をしているわけですから、いわば本指針の世界でも使える部分があるわけでございます。
 それは、本指針に照らして使ってもいいと思われるところだけを抜いて使っているものでございまして、個別具体的に申し上げますと、平常時の条件であるとか、閉じ込めの機能であるとか、放射線被曝管理であるとか、地震に対する考慮、ここら辺についてはウラン指針の方は当然個別具体的でございますし、かつ本指針に照らしても十分使えるということで、その部分だけは準用してございますが、いわゆる単一ユニットの臨界管理、複数ユニットの臨界管理、臨界事故に対する考慮の部分については一切使っておりません。
 そういう峻別をして、いわば全体として最も審査が厳密になされるようにやられたものでございます。

○福山哲郎君 今のも大変重要なことを言っているんですよ。部分的にはウラン加工のものも使ったと言っているわけですね。今もおっしゃっているわけです。それは逆に言うと、指針というのはあくまでもきちっとそれに適合して安全を確保するためにできているものを、科学技術庁が恣意的に自分の判断で、これはウランでも適用できる、こっちは核燃料施設でも適用できると判断して、総合的に見てこれでいいでしょうといって臨界を考慮に入れなかったとしたら、これは大問題じゃないですか。五%以上の指針はできていない、さらには状況によっては、片方だけはウラン加工施設の指針を準用して、片方では核燃料指針を準用してという話では、これは大問題でしょう。

○説明員(間宮馨君) 混乱を避けるために今厳密に申し上げたわけでございまして、基本指針を適用したというのがまず第一でございます。基本指針を適用する中で、部分的に共通なものも当然あるわけでございまして、その厳密さを失わない中での共通な部分につきまして参考としたというものでございまして、参考にとどまっておりますので、いわゆる本指針を適用したということに関してはいささかも崩れはございません。

○福山哲郎君 でも、この核燃料施設安全審査基本指針には、十と十一を満足すれば指針十二は考慮を要しないなんて一言も書いてないじゃないですか。一言も書いてないじゃないですか。こっちは書いてありますよ。十、十一を満たせば臨界に関しては考慮は要しないと書いてあります。今、はっきりおっしゃいましたよね、本指針だと。本指針には一言も臨界の想定を省いていいなんて書いてないじゃないですか。

○説明員(間宮馨君) いわゆる基本指針の方は、ウランの指針に比べまして、まさにまだレベルが高いということでございますので、具体性においては少し欠けるところがあるわけでございます。
 この基本指針に照らしての審査の特徴といたしましては、極めて個別具体的、余りパターン化されていないような形での審査が行われるわけでございまして、その中の個別判断としていわゆる臨界事故の発生するおそれがないというようなことが結論されたものでございます。

○福山哲郎君 おかしいじゃないですか。具体性がないんでしょう、基本指針には。それで、具体性がないのに五%以上のものは勝手に五%以下のものの指針で判断したんでしょう。おかしいじゃないですか。でも、これを言っていると切りがないので、もうあれなんですけれども。
 そうすると、さらにこの総理府令の問題が出てくるわけです。きのうも衆議院でさんざん議論になりましたが、五%以上、臨界質量以上のウランに関しては、「臨界警報設備の設置その他の臨界事故の発生を想定した適切な措置が講じられているものでなければならない。」という総理府令の第三条の二項に違反しているのではないかという議論に対して、局長は、警報装置がついているから、それを考慮に入れたんだという御答弁をされていますが、それは正しいですね。

○説明員(間宮馨君) そのとおりでございます。

○福山哲郎君 私、ここに申請書を持っているんですよ、変更の申請書。これ、ガンマ線エリアモニターというのがあるんです。これが先ほどから越島参考人が言われている警報器なんです。これは決して臨界警報装置ではありませんよね。

○説明員(間宮馨君) 午前中も申し上げましたが、臨界が生じた場合、非常に強いガンマ線が出るということでございますので、臨界が生じれば確実にキャッチできると認識しております。

○福山哲郎君 キャッチはできます。警報も鳴ります。しかし、臨界を察知する、臨界かどうかを判断する警報装置ではありませんよね。だって、さっき越島参考人が言われていたじゃないですか、臨界かどうかはわからなかったので、確信は持てないが判断した。アラームは鳴った。しかし、それはガンマ線のエリアモニターが反応しただけで、別に臨界を知らせるアラームが鳴ったわけではないわけです。
 もっとはっきり申し上げますと、この施設では、第一加工棟にも第二加工棟にも同じガンマ線エリアモニターはついているわけです。臨界を知らせる警報器ではないわけです。つまり、きのう衆議院で局長が答弁をされている、臨界の警報装置、あなたは臨界という言葉をあえて言わないで、警報装置、警報装置と言われていましたけれども、この総理府令の「臨界警報設備の設置その他の臨界事故の発生を想定した適切な措置」の両方ともこの転換試験棟は満たしていないということですよね。

○説明員(間宮馨君) 再度申し上げますが、臨界状態になりますと、核燃料の核分裂による中性子線及び核分裂によって生成される核分裂生成物からの強いガンマ線が放出されます。すなわち、臨界事故の際には、中性子線あるいはガンマ線を検出器が検知してエリアモニターが吹鳴するということで臨界状態を知らせる仕組みとなっております。
 したがいまして、もちろんその中性子モニターが不要と言っているわけでは決してございませんで、今回の事例にかんがみますと、中性子モニターも併設をしなければいけないと思っておりますが、ガンマ線によって確実に臨界がキャッチできるということはそのとおりでございます。

○福山哲郎君 私が言っているのは、臨界をキャッチするという話をしているわけではないです。臨界をキャッチするのは当たり前なんです、ガンマ線のエリアモニターは。それが臨界かどうか知らせる臨界警報装置というのが恐らくこの総理府令が求めている警報装置であって、ガンマ線エリアモニターというのは、さっき申し上げましたように、第一加工棟、第二加工棟、両方、何でもついているわけです。五%以下のところにもついているわけですよ。
 要は、この総理府令の二項にある臨界質量以上のウランのときに必要な措置は講じられていなかったということですねとお伺いしているわけです。

○説明員(間宮馨君) 我々としては、この総理府令を満たす最低限の基準はこのガンマ線のエリアモニターであったというふうに認識しております。

○福山哲郎君 今のじゃ全然答えになっていないですよ。だって、ガンマ線のエリアモニターというのは第一加工棟も第二加工棟もついているわけです。これは五%以下の施設なわけです。総理府令は、五%以上のものに対しては臨界警報装置をつけろと言っている。
 さらに言いますと、私は今、東海村の再処理施設のこれを持ってきました、ホームページ。ここにはれっきとした臨界警報装置というのがガンマ線エリアモニター以外についているんです。
 では、これと同じ作用がガンマ線エリアモニターにはついていて、それが臨界警報装置だというふうに局長はおっしゃるんですか。

○説明員(間宮馨君) いずれにしましても、中性子線かガンマ線をキャッチするというのが臨界を知らせる警報装置の必須条件でございまして、ガンマ線につきまして測定できる機能であれば臨界は確実にキャッチできるわけでございます。そういう意味におきましては、最低限の基準は満たしているというのが我々の認識でございます。

○福山哲郎君 越島参考人、先ほどの御答弁をもう一度言っていただきたいんですが、ガンマ線エリアモニターが鳴っても、それが臨界かどうかは皆さんはわからないんですよね。臨界警報装置が鳴ったという認識はありませんね。

○参考人(越島建三君) 先ほど申し上げましたとおり、避難した場所でサーベイメーターの針が振れている、こういう現象は私どもの加工施設では臨界の状態以外は考えられないのではないかということで臨界ではないかと判断したということでございます。

○福山哲郎君 それは、臨界警報装置が鳴ったということではなくて、臨界の可能性があると判断したということですね。イエスかノーかでお答えください。

○参考人(越島建三君) 臨界ではないかというふうに判断したということでございます。

○福山哲郎君 どうですか、局長、今の越島参考人のお話を伺って。臨界の警報装置が鳴ったんじゃないですよね。きのうの衆議院の答弁、あなたは警報装置があるからこの総理府令に関しては問題ないと答弁されていましたけれども、臨界警報装置も、それに対する適切な措置もとられていないんです。両方ともこの要件を満たしていないんです。いかがですか。

○説明員(間宮馨君) 繰り返しになってまことに申しわけございませんが、ガンマ線の検知によって臨界は検知できるということでございますので、最低限の基準は満たしていると考えております。

○福山哲郎君 委員長、これは次へ進められないです。

○委員長(成瀬守重君) 速記をとめてください。
   〔速記中止〕

○委員長(成瀬守重君) 速記を起こしてください。

○福山哲郎君 では、お伺いします。
 臨界警報装置は、この転換試験棟についてはついていなかったわけですね。

○説明員(間宮馨君) まず、臨界を確実に臨界であるというふうに判断をするという場合においては、確かにガンマ線だけというよりは中性子線モニターということが適当かと思いますが、先ほど申し上げましたのは、そういう中におきまして、必要十分ではないですけれども、必要条件として臨界があれば必ず鳴るという意味のぎりぎりの最低条件ということで申し上げたものでございます。

○福山哲郎君 百歩譲って今の御答弁を認めたとしても、そもそももう矛盾が出てきているわけです。
 最初、臨界を想定していない施設なわけですから、もともと臨界を想定していない施設で臨界に対する警報装置をつけるわけがないわけです。それを今おっしゃられたようにガンマ線エリアモニターで代用していたわけですよね。ということは、もともとの総理府令の二項に関しては臨界警報装置も臨界事故を想定した適切な措置も全くとられていなかったということになると思います。
 それから、もう一つ申し上げますと、これは申請書の最後のところにあるんです。誤作動のところにこう書いてあるんです。例の沈殿槽のところです。「貯塔、貯槽類には溶液のオーバフロー防止のため液面制御計又は警報計を設置する。」と。オーバーフローです。あふれることです。「したがって本工程でウランの設備からの漏洩があるとすれば大部分が作業者のハンドリングミスによるものである。」と書いてあります。つまり、オーバーフローがあるということは、ハンドリングミスによることはあり得ると書いてあるわけです。
 ということは、誤操作の可能性があるとなったら臨界を肯定しなきゃいけないじゃないですか、考慮に入れなきゃいけないじゃないですか。これはジェー・シー・オーからの申請書に書いてあるんですよ。いいですか。

○説明員(間宮馨君) そこら辺の誤操作の範囲でございますが、いわば計測を、例えば最初の段階での溶解のところでの計測を怠ったとしても沈殿槽の前でもう一回必ず計測をするということになっております。そういう二重計測があって、一回忘れても後の方でチェックできる。あるいはワンバッチ入れるということで成り立っておるシステムでございますが、ワンバッチ既に入っている、それを作業員がうっかり忘れてもうワンバッチ入れたとする、それでも臨界に至らないというような意味においての誤操作でございまして、今回のようなそれをはるかに超えるものについては想定されていなかったということでございます。

○福山哲郎君 もう私の持ち時間が少なくなってまいりました。非常に残念なんですが、参考人に少しお伺いしたいと思います。
 ジェー・シー・オーでは、いわゆる裏マニュアルも含めて十年ほど前から申請をしていたものとは違う工程をこの転換試験棟ではやられていたというふうに伺っておりますが、第一加工棟、第二加工棟、いわゆる五%以下の通常の軽水炉の燃料加工の状況の中では、申請に反するような裏マニュアルなり違う工程で作業が行われていたことは一切ございませんか。

○参考人(越島建三君) 第一加工棟、第二加工棟は、原料を入れましたら最終製品まで連続した工程で流れますので、例えばこういう転換試験棟のように途中で物を抜いて途中から物を入れるというような工程はございません。

○福山哲郎君 ということは、それは全部自動で機械でやられているということですか。

○参考人(越島建三君) 一部工程は遠隔制御の自動でやれるところもございますが、次の工程へ動かすのは人間がボタン操作等で液を動かすというようなマニュアルと自動制御の合体でございます。

○福山哲郎君 そうすると、今捜査が入っているようですが、後になってから第一加工棟、第二加工棟でもいろんな形でジェー・シー・オーは申請以外の工程をやっていたとか省いていたとか、そういうことは出てこないというふうに判断してよろしいわけですね。

○参考人(越島建三君) 私、細かいところまでチェックというか頭に入っておりませんので、現時点では絶対ということは申し上げられません。

○福山哲郎君 もう終わりますが、とにかく私はこれをジェー・シー・オーの人為的なミスだということにしてはいけないと思っています。逆に安全性を確保するためにも、この五%以上のウラン加工施設に対して安全指針をつくってこなかったこと、それからこの警報装置の総理府令違反の問題、科学技術庁の問題については欠落している点は多々あるわけで、責任は十分その未然防止についてはあるというふうに思いますので、最後に一言、中曽根長官から、今のやりとりを聞いていただいての御答弁をいただいて終わりたいと思います。

○国務大臣(中曽根弘文君) 今、委員からいろいろな安全審査面について御指摘がありました。御指摘のような点も参考にしながら今後の安全策を図っていきたいと思っております。

 


 

第145国会  参議院   経済・産業委員会  1999年8月5日

○福山哲郎君 おはようございます。民主党・新緑風会の福山哲郎でございます。
 本日は、参考人におかれましては、本法案の審議に際しまして、御多用の中お時間をちょうだいいたしましてまことにありがとうございます。時間も限られておりますので、早速質問に入らせていただきます。
 まず、樋口参考人にお伺いをしたいと思います。
 樋口参考人は、住友銀行から昭和六十一年にアサヒビールに行かれまして、そしてこの十数年間アサヒビールのリーダーとして業績の伸長に際しまして本当に力を振るってこられた。私どもも大変尊敬をさせていただいており、なおかつ今回、経済戦略会議の議長、また産業競争力会議の委員としてこの法案の最初の絵図面をかいていただいたということに対して、まずは敬意を表したいと思います。
 そこで、素朴な疑問でございます。
 樋口参考人は恐らく、先ほども言われた自助努力、それから自己責任という中でアサヒビールの中で仕事をずっとされてこられたと思います。そして今、過剰設備、過剰債務、過剰雇用といういわゆる三Kが議論になっておりますが、過剰設備や過剰債務や過剰雇用があるから経済の産業の競争力が落ちてきて日本の景気が悪くなったのか。僕は、順番は逆なのではないかと思います。
 過剰に設備をするというのは、経営判断の中で、この設備投資をすることによって次の企業の利益を生むという判断があったから設備投資をされたはずだろうし、過剰雇用の問題も人が将来的に要るだろうということで雇用をされた。さらには過剰債務の問題も、これはバブルがはじけて、ひょっとしたら本業に関係のない土地や不動産に手を出した企業もあったと思います。その中で、経営者の責任、我々は自由主義、資本主義のマーケットの中で生きていて、これから本当に二十一世紀大競争時代に入るというときに、この三Kがあるから経済の力がなくなっていっているのではなくて、そこの経営者の判断なり、まずそこの部分の言及が必要なのではないかというのを私は本当に素朴な疑問として思っています。
 だから、例えば今回の法案で、再生をするために国民の税金や優遇措置を使って救いましょうというスタンスが、これまで経済界が言われた規制の緩和や、余り政府は口を出すな、それから裁量行政はもう勘弁しろと言われていた流れと、どうも私はここの部分がおなかに落ちてこない部分があります。
 私は、日本の経済がよくなること、産業が再生していくことを否定する気は毛頭ございませんが、その部分で樋口参考人の御意見、御所見を伺いたいと思います。

○参考人(樋口廣太郎君) お答えいたします。
 福山先生の御質問、まことに的確なところを突いておられるわけでございますが、もともと経済情勢の変化というものの中で私どもはよく考えなきゃいけないのは、過剰設備あるいは過剰債務、それから過剰労働力という、過剰という言葉は果たして何に対して過剰かという一つの定義からやっていかなきゃいけないと思います。
 企業はそれぞれ自主的な判断をいたしているわけであります。私の方のことを申し上げて大変恐縮ですが、十三、四年前に私がアサヒビールに行ったときは、その前に五百人の人員の肩たたきもやったわけでありますが、最初に言ったことは、私は一人の退職者も出さない、一人もやめさせない、そして必ずその五百人は帰ってきてもらうということで、その後三年間にわたって約半数以上の方に帰ってきていただきました。そして、実際上、雇用は大体二倍半にふえたわけでございます。それは皆さんのおかげ、消費者のおかげでございます。
 そのとき、つらつら考えてみますと、私たちが十三年前には、ルックイーストと申しまして、アジアの経済の中で日本の持っているポジションは、日本側は大体七五というラフな数字を使っておりますが、要するにアメリカその他は七〇という数字を使っております。その中で七〇のシェア。今日、例えば中国がかつてアジアのシェアの中で七%台、それが今一三%に上がってまいりました。あるいは韓国が大体六%ぐらいから七・八%に上がってまいりました。アジアの国が全部ルックイースト、日本を見習おうということで、日本の商社がこれをお手伝いしたことも事実でありますが、アジアが日本に向かって輸出をしなければ自分たちはやはり日本のように繁栄しないということで世界の経済状態、かつてアメリカだけの間に貿易摩擦がございました。それが前川レポートになってあらわれたわけであります。
 その情勢と違ったのは、アジアの中においていわゆるアジアの国々が非常に立派に動いてきた。そこで初めて過剰設備という問題があらゆる産業において出てきたと思うのであります。ただし、運送に非常にコストがかかる、あるいは運送している間に品物が毀損するというようなものは非常に保護されているわけでありますが、確実に競争にさらされている業種というものは、情勢の変化がやはりアジアの国々の大いなる発展のために非常に大きく変わってきたというのは、先生御指摘の要素の中の一つにぜひ入れていただきたい。本当に変わってきたということをしみじみ感じるわけです。
 したがって、老朽設備とかいろんなことを言っておりますが、もうはるかに隣国の国々の生産コストの方が何分の一か安いものは、例えば横浜のそういうところへ見に行かれたり、神戸へ行かれますと非常に安いものがぼんぼん入ってきている。それらの産業は決してサボったわけでもなければ、社会的に反社会的なもの、非道徳的なものをつくっているわけではないんですけれども、やむを得ずやめざるを得ない、あるいは縮小せざるを得ないということが現実の問題であります。もっと言えば、日本の繁栄の中にかつて輸出したものが確かに返ってきているわけでありますが、そういう問題というものは構造的に出てきているという点を私は頭の中に入れてお話しさせていただければいいと思うのであります。
 そういうことは、先生のお話は当然私たちがきょう御質問いただくことを予定しておりましたが、あらゆる要因の中で一番大きいのは、当面のアジアの国、ウイズアップ、ともに共生していくという段階においてこの問題が起こったということを率直に申し上げさせていただきたいと思います。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 構造的な問題というのは、確かにそのとおりだと思います。ただ、議論になっています今回の事業再構築計画を提出してそれを認定する、それは通産大臣が認定をするわけですが、その基準等が大変あいまいになっている。例えば、今、樋口参考人が言われたような構造変革の中で、これはいたし方ないから廃棄をしていかなければいけないという問題なのか、先ほど言われた老朽化の問題等もあります。
 しかし、私が申し上げたように、経営判断を間違った、言葉は悪いですが、しりぬぐいを国に頼って税金を使ってくださいというような話の場合に、私はきのう実は日債銀の集中審議を予算委員会でやりました。やはり金融の問題もある意味でモラルハザードがある、それが産業界にも広がることによって、これまで我が国が培ってきた技術力やそれぞれの労働者の一人一人の、逆に言うと勤労に対する姿勢のよさや、それこそ日本がこれまでよかったと言われていた日本型の経営みたいなものの根本を実は揺るがしていくのではないかという危惧が実はこの法案であります。
 そして、参考人が言われたように、逆にそういったものをきちっとフォローしていく法案なら、スピードは大切だと思いますが、なぜこのような形の、ある意味で言うと不十分な中、先ほど花田参考人がおっしゃられたように、これからの時代絶対に必要だと言われている要はコンピューターやインターネットやIT産業の部分のSOHOというような分野についてはほとんどこの法案は見ようとしていないのか、もしくは見なかったのか、そこはわかりませんが、つまりそういったことに対する法案自身のあり方みたいなものに対して実は私は少し残念に思っています。
 逆に、樋口参考人のような方には、日本の経営者しっかりせいと、こんなのに頼るぐらいやったら自分のところの責任は自分で見ろと、もう少ししっかりして、もうちょいいいものをつくっていこうやないかというようなことも含めて、ほかの参考人の方にもお伺いしたいので短目にもし御意見をいただければ、お願いします。

○参考人(樋口廣太郎君) 発言させていただきます。
 いわゆる失敗したとか判断を誤った経営者で、現在なおのうのうと許されるような今は社会じゃない。特に、株主訴訟あるいはそういう判断や大株主の問題、特に外国の株主の追及は極めて厳しいものがございまして、そういう人で現在存続している人を私は実は知らないわけでありまして、経営責任をとってやめているわけでございます。当然、退職金その他についてもそういう人たちは、辞退といったらおかしいですけれども、もらっているケースは非常に少ないということを申し添えたいと思います。

○福山哲郎君 大見参考人にお伺いをいたします。
 これまで象牙の塔と言われてきた大学が表へ出ていかなければいけないという御指摘をいただきまして、大変わくわくしながらお伺いをしていたんですが、一つ具体的な話になります。
 要は、ターゲットに向かって目標に到達するためのプロデューサーの存在というのが必要だというふうに御指摘をいただいたと思っております。私もそのとおりだと思いますが、このプロデューサーの存在というのが実は今の日本には余りないんだと。そうすると、ここのプロデューサーを育てるシステムなり機関なりが先生の言われる絵図面とは別の部分でやっぱり非常に必要になってくるのではないかということをお話を伺っていて感じまして、こういうプロデューサーを育てる育成等について何か具体的な御所見があれば、お伺いをしたいと思います。

○参考人(大見忠弘君) これからの日本にとって極めて大事な御議論だと思うんです。どういうふうにするとこういう人たちが育つのかという定式は、まだ残念ながらないと思います。
 私どもが具体的にやっていることは、こういうプロデューサーのような役をやると、ターゲットそのものを自分で決めて、人もお金もそろえて仕事をしないといけませんから、全責任が自分にかかってまいります。ほとんどの場合が世界じゅうにどこにもない新しい技術ですから、プロデューサーがお考えになったターゲットが正しいか否かすらなかなか保証がされない。非常にこれはもう不安で焦燥感に駆られる毎日を送らないといけないんです。極めて強い技術的な判断力と経営判断と非常に強い精神力が要求されます。
 そういうものをどうやっていくかというのはぜひお考えいただきたいと思うんですが、私自身がやっていることは、大学あるいは産業界と一緒になった大きなプロジェクトの中で、どんなプロジェクトでも新しければ新しいほど随所でデッドロックに乗り上げます。そういうときに、ほとんどの場合、私からこういう方向に歩こうという指示を出すんですが、それぞれの場所でそれぞれの時点でみんな自分ならこうするということをテークノートしておきなさい、理由を書いておきなさい。
 何カ月かすると、私が出した指示と若い人たちが考えたものがどこにずれがあるかということがわかってきますから、そういうことを何回か繰り返していって、自分の読みが十回続けて十回当たればだれもやったことのないことに挑んでいい資格が出てくるんじゃないですかというような形で若い人たちの指導を私自身はやっておりますが、どういうふうにやるといいかという制度だけではなかなか片づかない問題があると思うんです、完全に個人の能力にディペンドしますから。

○福山哲郎君 ありがとうございます。本当はもう少しお伺いしたいんですが、時間がないので。
 花田参考人、今、大見参考人のお話の中で、能力の問題、それから制度だけではない問題、それが何回も失敗する、ぶつかっていってもなおかつやる技術力の問題というのがあって、少し視点は変わるかもしれませんが、現在SOHOセンターの理事長として花田参考人が先ほど言われたみたいに、SOHOを今スモールオフィスもしくはホームオフィスでやろうとしている人というのは、まさに先ほど言われたように環境整備がない中で自分の自己責任の中でビジネスをスタートさせた。それは、今まで日本にあったような中小企業、いわゆるお父さんがいてお母さんがいて、もう少し大きい中小企業を興していこうというのとは多分形態がかなり違う新しい事業で、これも先ほど言われたように実はある一定のスキルと能力と決断が要るというふうに思うんです。
 そういうことに対する日本の風土ができていないというふうに先ほど言われたのですが、具体的に今SOHOをやられているビジネス、さっきITと言われましたが、なかなか見えてこなくて、一体どういう形で仕事をされていて、その人たちのリスクというのはどんなものなのかというのを、本当に一分か二分でお答えいただければ非常にありがたいと思うんです。

○参考人(花田啓一君) 極めて難しい質問をされてしまいましたが、基本的には先ほども申し上げましたようにパソコン及びインターネット、そうしたものを使って仕事をしているというふうなものがSOHOであるという認識で構わないと思います。それは形態的なものでして、御質問に答えられるかどうかわからないんですが、要するにSOHOというものは個人もしくは極めて小規模で仕事をするんだという基本的なマインドがあるわけで、これは人間にいろいろな考え方があるように、価値観があるように、まさしく多様化している価値観の結果だろうと思います。
 ですから、私は会社員がいいという人も当然いらっしゃるでしょう。会社員の中でも、九時から五時まで働くだけで給料はそんなに上がらなくていいよという人もいらっしゃる。もちろん、一生懸命エリートとして出世したいという方もいらっしゃる。同様に、会社員という形ではなくて自分でビジネスをしたいという方もいらっしゃる。人間にはそういったいろんなタイプのベクトルがあると思うんです。ですから、そういった中で個人という形で自分の力を信じて仕事をしていくという部分だと思うんです。
 実際の職業としては、デザイナーですとか翻訳業ですとかプログラマーですとか、いろいろな形がありますが、プログラマーをやっているからその人がSOHOかどうかということは実は非常にわかりにくいことでして、その人自身がいわゆるSOHO的マインドで自分自身の力を信じてやっていくんだという気持ちがあればプログラマーの人でもSOHOと呼べるかもしれませんし、いや一時的に今SOHOなんだけれども、実は私は会社員になりたいんだという人は余りSOHOとは呼びたくないなという気分があります。
 同様のことは例えば農業においても、農業というものは第一次産業ですが、自分の畑で耕したものを、まさしくホームオフィスですが、インターネットを使って販売したい、産直したいというような考えをお持ちの農業の方はSOHOと呼んでもいいのかもしれない。
 事ほどさように、業種でSOHOというものをくくるのは非常に難しいので、質問にお答えできたかどうかわかりませんが、業態としてのSOHO、そしてある種文化的な側面、マインドの問題としてSOHOというとらえ方をしていただければ幸いです。

○福山哲郎君 本当に時間がなくて恐縮なんですが、今のSOHOのお話というのは新たな業態です。
 それとは逆に野口参考人は、いろんな過剰な設備と言われながら、でもそこで一生懸命働いている労働者の雇用をどう守るんだ、過剰設備が廃棄されるからそのまま人員も廃棄されるというようなことでは困るということで今大変御苦労されていると思います。
 先ほど陳述をいただきましたいろんな法案の細かい点は、もちろんこれからも審議の中で努力をしていかなければいけないと思うんですが、でも現実に産業再生をするためにいろんな形で日本が構造改革をしていかなければいけない。その中で組合と経営者との関係というのもいろんな形態が変わってくると思っているんです。
 ですから、この法案に対する問題点と、そういう今後の組合がどのようにこれからの構造改革に向かおうとされているのか、本当に一分しかないので恐縮なんですが、簡単に御意見をいただければと思います。

○参考人(野口敞也君) 構造改革に関しまして我が国もさまざまな法律をつくってまいりました。最初は石炭でありますけれども、これについては雇用に最大限政府は配慮したわけです。
 それから、一九七八年に特定不況産業安定臨時措置法というのができておりまして、鉄鋼それからアルミ、造船、それから繊維、こういう構造転換をやりました。このときは安定基本計画というのをつくりまして、労働組合に意見を聞かなければならないとはっきりありまして、実は私はそのときゼンセン同盟という繊維の組織におりまして、その中心になっておりました。具体的に設備の廃棄量を決めましたが、これは当時の通産省の原料紡績課長でありますが、この方と、それから化繊協会あるいは紡績協会の専務、それから私の三人で最終的な廃棄の数字を決めました。同時にそのときに、雇用に対してどういうような処置をするか、とりわけ経営の多角化ということについて力を入れていこう、こういう意思確認をやりました。
 現在、繊維産業が再生して何とか残っておりますが、やっぱりそのときの政労使にわたります合意というのが大変重要であったと思います。それが時代を経て、その後も構造改革の円滑化法というのができますが、このときは労使協議を努力しなきゃいけないというような形になっておりました。今度は、いよいよ「労働者の理解と協力を得る」というような言い方に変わってきています。
 しかし、経済成長を見ますとどんどん悪くなっているわけです。高度成長時代から、今ゼロないしマイナス成長の時代になってきている。それにもかかわらず、労働組合との協議あるいは労働組合だけでなくて従業員との納得する話し合いというのが法文上ではどんどん軽くされている。全く逆行しているんです。やはり政府が支援をしながら構造改革を進める、それだけ働く者への配慮が必要である。一方では、雇用の安全のネットワークというのは少しも改善されていない。現実にほうり出されたらどうにもならないというのが実態であります。
 労働組合としてこれからどうするかというのですが、やはり協議をきちっとやる、そして法律上これをさらに強化させていきたい、このように考えております。

○福山哲郎君 どうもありがとうございました。

 


 

第145国会  参議院  予算委員会  1999年8月4日

○福山哲郎君 民主党・新緑風会の福山哲郎でございます。
 本日は、日債銀・長銀等金融問題に関する集中審議ということで、冒頭、質問通告をしていないのですが、少しお答えをいただきたいと思います。
 昨八月三日、民主党の衆参両議員十六名が日債銀の東郷前頭取、それから同行の元会長であります窪田弘、それから大蔵省元銀行局長の山口公生、それから当時の審議官であります中井さんの告発をいたしました。当委員会でいうと同僚議員の簗瀬進議員もそのお一人として告発に加わられているんです。
 この日債銀、長銀等の問題は、この通常国会中にも何度も何度も審議をさせていただきました。しかし、なかなか明らかにならない。こちらの要求資料もなかなか出てこない。答弁ものらりくらりとかわされ、そして今国会中に何と長銀においても日債銀においても逮捕者が出るような状況になっている。そして、さらにその逮捕者が出た中で、これはやはり国会の責務としてこの国会の中で明らかにするところは明らかにしようということで、衆参においてこの予算委員会で集中審議が行われるわけです。
 我が党は、この集中審議について、その重要な人物であります山口元銀行局長それから中井審議官について参考人として衆参両院で答弁をいただきたい、逮捕者も出たんだからはっきりさせていこうではないか、これは国会の責務だということで求めたにもかかわらず、政府・自民党は全くその要求を拒否した上でこの集中審議になりました。
 昨日の告発は、国会で明らかにならないことは仕方がないから司法の場で明らかにしていかなければいけない、国民の税金である公的資金が使われ、六百億円がパアになった、そして日銀を含めて奉加帳方式もパアになったという状況の中で、司法の場で明らかにせざるを得なくなったという大変苦渋の選択を民主党はしたわけです。
 しかし、本来は国会で明らかにしていかなければいけない。参考人を呼んできっちり明らかにすることは明らかにしていかなければいけないということに対して、きのう告発をしたこの状況について、総理はいかがお考えか、御見解をお聞かせください。

○国務大臣(小渕恵三君) 司法の場で決着をつけたいということで告発をされたことにつきましては、それは司法の場におきまして適切に対応されるものと考えております。
 なお、こうして審議が行われるわけでございますので、より明らかになるためにこうして政府としても全力を挙げてその解明に努力をしておるわけでございます。
 なお、参考人云々の問題につきましては、これは当委員会におけるいろいろ御審議のあり方につきましてでございますので、政府としてこのことをコメントすることは差し控えさせていただきたいと思いますが、元来、私も長い間国会に所属させていただきまして、衆議院の予算委員長もさせていただきましたが、時に国政調査権の問題とまた国会における審議のあり方、さらにまた刑事事件に既になっておる問題の処理のあり方につきましては、その時点時点におきまして、院において与野党間あるいはまた各政党間でお話し合いの上に一定の結論をつけ、解明に努力されてきたというふうに認識をいたしております。

○福山哲郎君 ぜひ、告発をしたのは一部の有志の議員でございますが、ここはその司法の場ではないですけれども、国会としての機能を参議院として明らかにしていきたいと思いますので、この審議での誠実な御答弁をお願いしたいと思います。
 では、法務大臣にお伺いします。
 きのうの告発を聞かれて、現状、どのような御認識でいらっしゃるか、お聞かせください。

○国務大臣(陣内孝雄君) 昨日、国会議員の方々から東京地検に対し、大蔵省関係者及び元日本債券信用銀行頭取らを被告発人として詐欺及び証券取引法違反による告発状が提出されたところでございます。同地検におきましては、適宜適切に対処するものと承知いたしております。

○福山哲郎君 法務省の方では、この日債銀の窪田元会長、また東郷前頭取の逮捕に至る過程で、山口元銀行局長や中井審議官についての詐欺罪等でもある程度調査をしたというような話も承っているんですが、そのような事実はございましたでしょうか。

○国務大臣(陣内孝雄君) お尋ねの件は捜査の内容にかかわる事柄でございますので、お答えすべき性格のものではないと考えます。

○福山哲郎君 わかりました。でも、そこは適宜しっかりとお願いします。(「わかっちゃいかぬよ」と呼ぶ者あり)いや、次、ちゃんと行きますので。
 日銀総裁が早くお戻りだということで、日銀総裁にお伺いします。
 六月二日、山一証券に対し、東京地裁は破産を宣告いたしました。債務超過額千六百二億円でございます。そのときに日銀総裁は、政府が山一の最終処理を適切に実現するよう期待すると強調されました。また、日銀の小畑理事は、日銀特融は民間企業の損失を補てんするものではない、そして中央銀行と円の信認を揺るがし、ひいては日本経済の地盤沈下につながると言って、特融に対する早期回収に対して大きな期待を寄せられた。
 私は、今国会の二月二十六日の本委員会での質問で、同様の質問を総裁と大蔵大臣にさせていただきました。そのときはまだ山一の破産の認定がありませんから、仮定の話だという話でございました。しかし、現実問題として破産が確定をした時点で、現状、日銀総裁はどのような御見解をお持ちか、お答えください。

○参考人(速水優君) お答え申し上げます。
 山一証券が破産という事態に立ち至りましたことは、日本銀行としてはまことに残念かつ遺憾に思っております。
 ただ、日本銀行が実施してまいりました山一証券に向けてのいわゆる日銀特別融資、特融と言っていますが、平成九年十一月に山一証券が廃業、解散方針を決定したときに、我が国金融・証券業界に対する信認の低下とか内外市場の混乱を引き起こすことを回避するということで、当時まだ法案が整備されておりませんでしたし、金融システム全体の安定を確保するということで、最後の貸し手という中央銀行の機能を発揮すべきであるという政策委員会の決定で、必要な措置として特別融資を出したわけでございます。
 日本銀行としましては、今後、破産手続の中で適切に権利を行使していくことによりまして、山一証券の資産処分を通じた特融資金の回収に努めていく所存でございます。既にピークで一兆二千億ぐらいまで特融は行っておりましたけれども、今三千四百億ぐらいの残高がまだ残っております。
 ただ、これによりましてもなお相当規模の回収不能額が発生するものと考えざるを得ませんけれども、本件特融につきましては、平成九年十一月二十四日付の大蔵大臣談話におきまして、本件の最終処理も含めて、証券会社の破綻処理のあり方に関しましては、寄託証券補償基金制度の法制化、同基金の財務基盤の充実、機能の強化等を図って、十全の処理体制を整備すべく適切に対処したいということを大臣談話として言っておられます。日本銀行資金の最終的な回収にこの点で私どもは懸念がないと考えているわけでございます。
 実際、こうした事情を踏まえまして、大蔵大臣におかれましては、国会におきましても、本件については大蔵大臣の責任において解決しなければならないという趣旨のことを御答弁なさっておられます。
 私どもとしては、特融の具体的な返済方法につきまして、現時点で予断を持っているわけではございませんけれども、いずれにしましても、今後の破産手続の進展を踏まえつつ、最終的には大蔵大臣談話の趣旨に沿った適切な対応が図られているものと考えております。

○福山哲郎君 その問題の大蔵大臣談話があるわけでして、今まさに日銀総裁が言われたとおりに、平成九年十一月に大蔵大臣の談話で適切に処理していきたいという話があった。しかし、問題のその頼りの日本投資者保護基金の方では、これは投資者保護の目的であるから山一問題は対象外だというふうに言われている。
 これは、大蔵大臣も実は私とのやりとりの中でこういうお話をいただいています。
 大蔵省がいわば音頭をとって日銀にもお願いをし、民間にもお願いをして金を出してもらって、何とかここは乗り切ろうといたしましたその乗り切りが成功いたしませんでしたので、あちこちに御迷惑をかけるようになった。それはまことに音頭をとった者に私は責任があると思います。
と言われている。
 これは、セーフティーネットがなかったから仕方がなかったとかいう議論ではない。それから、金融と財政の分離を含めて、大蔵省は金融監督庁をつくって、ある意味で言うと機構改革で責を果たしているではないかという答弁もございますが、現実にこの日銀特融が焦げつきをしたということに対して、大蔵大臣は、音頭をとった者に私は責任があると思うと言われている。そして、大蔵大臣の談話がしっかりと残っている。しかし、その談話に対して投資者保護基金は、これは投資者保護の目的であるから山一問題は対象外だと言っている。しかし、今、日銀の総裁は、このとおりに返るものだというふうに思っている。
 私が質問したときは確かに山一が破産をするかどうかが仮定の話でした。しかし、現実に破産をして、この同じ国会内での議論でございます。どうか大蔵大臣の御答弁をお願いしたいと思います。

○国務大臣(宮澤喜一君) それでは、少し詳しく申し上げます。
 平成九年十一月二十四日にこの特融は行われたわけでございますけれども、当時は日銀法の旧法の時代でございまして、旧法の二十五条によりまして日銀総裁が大蔵大臣に特融をすることについての認可を申請されていました。大蔵大臣がそれを認可しております。ところが、この規定は新法になりまして大蔵大臣が要請をするということに変わっておりまして、そして旧法の認可は要請をしたものとみなすとなっておりますので、これははっきり大蔵大臣が要請をしたものというふうに考えるのが相当であります。
 その次の御質問は、平成九年十一月二十四日に、今お話しの寄託証券補償基金制度云々ということを大蔵大臣が言っておられるわけなんですが、この補償制度というのは、成立をいたしますときに、これは申し上げておかなきゃなりませんが、この制度ができますと、補償基金がその発足前の、証券会社、山一証券を含む破綻処理に伴う貸付債権を譲り受けることができる旨の規定がこの法律に設けられている。
 まことに厄介な話なんですが、基金をつくるのは許す、そのかわり前の山一証券のものもしょえよと。しょえよとは書いてないんですが、譲り受けることができると書いてありまして、したがいまして現実にはこの基金というものがその責めを免れるものではないとまず第一段に私は考えます。ところが、その基金が今三百三十億円しか金を持っておりませんで、平成十一年三月末に増資しましても五百億円でございますから、ちょっとこれで弁済できるとは私は思わない。
 責めはあると思っております。責めはないと私は決して言うつもりはないんですが、これでは恐らく足りないのでございますから、そうすれば、要請をした大蔵大臣がこれについて日銀に何かの形で責めを負わなければならない、私は依然としてそう思っております。

○福山哲郎君 その何かの形とは何でございますでしょうか。

○国務大臣(宮澤喜一君) 終局的に日銀に未済になりました額、それは今幾らかはまだ確定いたしません。恐らくまだ一、二年この山一の処理がかかると思いますが、結局それは大蔵大臣が日本銀行にお払いをしなければならない。基本的には、どういう方法にしろ、その責任はあるというふうに私は考えております。

○福山哲郎君 大蔵省がお払いするということは、それは国民の税金で埋めるということでしょうか、わかりやすく言うと。

○国務大臣(宮澤喜一君) 要請をしたことが法律上明らかでありますから、要請をした金が戻ってこないときには要請をした者に責任があると考えるのが相当だろう、一種の常識論でございますけれども、私はそう思います。

○福山哲郎君 この大蔵大臣談話はもちろん宮澤大蔵大臣じゃございませんよね。ところが、これは大蔵省の機関として責任をとると。責任をとるということは、責めを負うということは、イコール国民の税金で責任をとるということですか。

○国務大臣(宮澤喜一君) ただいま申し上げましたとおり、保護基金というものが責任を持っているということはまず前提にしなければなりません。それが足りないときの問題でございますから、何かのことをしてこの債務というものは日本銀行にお返しすべきものだ、その基本的な責任は要請をした大蔵大臣にある。

○福山哲郎君 足りないのが明らかになって、何かの形で責めを負う、責めを負うけれどもそれはまだ何かわからないという状況では余りにもいいかげんなんじゃないでしょうか。大蔵大臣、いかがですか。

○国務大臣(宮澤喜一君) 日本銀行は、国の中央銀行として内外に対して、殊に世界に対して信用を維持しなければならない銀行でございますから、貸したものが回収できないというような状況にあるということは私はいかぬことだと思います。

○福山哲郎君 それに対しては、大蔵大臣の責任のとり方はどのように、例えばお金をお支払いすればそれでいいというふうに思われるのか。それは政治的な責任としては発生しないんでしょうか。

○国務大臣(宮澤喜一君) やはり一番大事なことは、日銀としては金を返してもらいたいということだと思います。やっぱり要請をした者はそれは返さなきゃいけないと思います。

○福山哲郎君 そこで談話を発表したと。そこの談話を発表したところでは、この基金から返すというようなことの談話を発表して、それが足りませんから国民の税金なりを使ってくださいと言うことに対する政治的な責任は発生しないのですかというふうにお伺いをしているんですけれども。

○国務大臣(宮澤喜一君) 当時、関係者の判断の中で、山一は債務超過でないという判断があったかもしれません。しかし、それは現実に債務超過になったわけですから、やはり要請した者の責任は免れない。

○福山哲郎君 どうもお答えをいただいていないと思うんですが、そのときの日銀総裁はこのように答えているんです。もしそれがだめな場合には、「銀行券発行残高は今五十兆ですけれども、それの一割に相当する資本準備金というものを常に抱えております。そういうものの中で毀損が出てきた場合には払わざるを得ないということでございますから、」、私が日銀の権威や信頼は侵されないのですかと言ったことに対して、「その辺はそんなに御心配いただくようなことにはならない」というふうに速水総裁はお答えいただいています。
 速水総裁がこれをお答えいただいた、資本準備金というものから「毀損が出てきた場合には払わざるを得ない」というふうに御答弁いただいている御認識は、いまだ変化はございませんか、これはちょっと先ほどの話とは違ってくるんですが。

○参考人(速水優君) この案件につきまして、大臣から詳しく経緯を報告してくださいましたとおりでございます。私どもは、この案件については、大臣の今言われたようなことで、特融が仮に完済されない場合にも戻ってくるというふうに考えております。
 そのほか、日本銀行としては、資産のうちやや回収に疑惑を持つようなものに対しては引当金を積んでおります。それによって、不安定な資産に対する引き当てを積んでおくことにおいて日本銀行に対する内外の信認、通貨に対する信認は保ってまいりたいということで、その都度、政策委員会で何%積むかということを決めて引当金を積んでおります。そのことだけを御報告させていただきます。

○福山哲郎君 そうすると、日銀総裁にお伺いしたいんですが、みどり銀行や幸福銀行などに向けてもまだ日銀は特融があるはずですが、これの残高はどのぐらいになっていますか。

○参考人(速水優君) 今、特融の残高は、八月三日時点で八千五百億ございます。その中に今言われた銀行、みどり銀行等についてのものも含まれております。

○福山哲郎君 ということは、その中でまた債務超過があれば返ってこない可能性もあるということですね、総裁。

○参考人(速水優君) 預金保険機構の対象になっているところが大部分だと思いますけれども、そういったものが支払いを受けてなおかつ特融が焦げついて返済されないというようなことのために引当金は常に積んでおります。

○福山哲郎君 今、可能性があるということを言われたんだと思うんですが、僕はこの間のこの委員会でも申し上げたんですが、要は日債銀にしても長銀にしても、これは形は違うけれども奉加帳を回して日銀にお金を出させた。そして、そのときに確認書を含めて再建は可能だと言って出させて、それがパアになった。これは公的資金も同じでございます。
 今回のこの山一の特融も、増資と特融という形で、確かに表現は違うかもしれない。でも、大蔵大臣が談話を発表して何とかするからと言って、結果としては債務超過だと。そして、日銀の特融が焦げついて、大蔵大臣は今支払いが足りないと言われる。体質的には同じことが起こっているわけです。それで、結果としては当時セーフティーネットが足りなかったからだと言われる。
 では、先ほども申し上げたように、それに対する中央銀行としての信認や権威、今まで日銀の特融は焦げついたことがなかった、そういったものに対する政治的な責任はないのかということを問いたいんですが、総理、いかがですか。

○国務大臣(宮澤喜一君) 銀行につきましては、今おっしゃいましたように預金保険機構等いろんな仕組みができておりますけれども、証券については確かにそれがおくれておった。寄託基金なんというものもようやくそれからできるのでございますから、大変おくれておったことは確かでございます。銀行に対するよりももっとおくれておりました。したがいまして、日銀に特融をお煩わせしたということでありますので、御指摘のように、政府がそういうセーフティーネットを金融機関、証券会社あるいは保険会社等について十分備えていなかったというこの責任は免れることはできないと思います。

○福山哲郎君 日債銀の問題に移ります。
 銀行法の第二十六条には、これは改正前の旧銀行法でございますが、「大蔵大臣は、銀行の業務又は財産の状況に照らして必要があると認めるときは、当該銀行に対し、その業務の全部若しくは一部の停止又は財産の供託を命じ、その他必要な措置を命ずることができる。」というのが二十六条にあります。また、第二十四条の一項には「大蔵大臣は、銀行の業務の健全かつ適切な運営を確保するため必要があると認めるときは、銀行に対し、その業務又は財産の状況に関し報告又は資料の提出を求めることができる。」というふうに旧銀行法ではありました。
 この二十四条を適用して日債銀に報告を求めたことはありますか。

○政府委員(日野正晴君) お答えいたします。
 銀行法二十四条等に基づき金融機関から報告を求めたかどうかという個別の問題に関しましてはコメントを差し控えたいと存じますが、一般論として申し上げますと、監督上必要な事項につきましては絶えずその状況に応じまして銀行法二十四条等によりまして金融機関から報告を求めております。

○福山哲郎君 何で日債銀についてコメントを差し控えなければいけないんですか。今その集中審議をしているわけですよ。日債銀に対して銀行法二十四条に基づいて資料、報告を求めたことがあるかというふうに聞いているんです。もう一度お答えください。

○政府委員(日野正晴君) 銀行法二十四条に基づきます報告と申しますのは、例えば定期的に決算の状況表でありますとか、あるいは日計表等がございます。
 具体的にどういった場合に二十四条に基づいて報告を求めるかということは、その都度その都度、銀行の業務の健全かつ適切な運営を確保する必要があると認める場合に報告を求めているということでございます。

○福山哲郎君 済みません、時間がないので簡潔にお答えください。
 日債銀に対して、二十四条に照らして健全かつ適切な運営を確保するために資料の提出を求めたことがありますかとお伺いしているんです。もうイエスかノーかで答えてください。

○政府委員(日野正晴君) 私が御答弁申し上げておりますのは、銀行法二十四条の現在の金融監督庁の運用ということをお答え申し上げているわけでございまして、当時の日債銀に対する報告徴求というのは、この二十四条というよりも、その当時は通達に基づいて行われていたようでございます。(発言する者あり)

○委員長(竹山裕君) 速記をとめて。
   〔速記中止〕

○委員長(竹山裕君) 速記を起こして。

○政府委員(日野正晴君) お答えいたします。
 日債銀からとっているかどうかというお尋ねに対しましては、とっているというふうにお答え申し上げたいと思います。

○福山哲郎君 時期、回数を教えてください。

○政府委員(日野正晴君) 今具体的に、いつ、どういうものかというちょっと細かいことは手元に資料がございませんが、先ほど申し上げましたように、決算の状況表あるいは日計表等について定期的に報告を求めているということでございます。
 それから、破綻の直前には、私どもは銀行法二十四条に基づいて報告徴求をしております。

○福山哲郎君 事前に通告しているんです、時期と回数は。銀行法二十四条により日債銀に対して最初にいつ報告を求めたか、求めていればその時期と回数は。

○政府委員(日野正晴君) 先ほど定期的にと申し上げたことを敷衍して申し上げますと、決算期ごとにとっているというふうに御理解いただきたいと思います。

○福山哲郎君 決算期にとるなんて当たり前じゃないですか。金融監督庁、大蔵省なんですよ。
 これは健全かつ適切な運営を確保するために必要があると認めるときは求めることができると言っているんですよ。それをいつとっているんですかと聞いているんじゃないですか。回数といつ始まったのかということを聞いているのに、そんなふざけた答弁はないでしょう。
 委員長、できないですよ、これ。審議進まないですよ。

○委員長(竹山裕君) 日野長官、しっかり答えてください。

○政府委員(日野正晴君) 今申し上げましたように、銀行の業務の健全かつ適切な運営を確保する必要がある観点から求めているということで、二十四条に基づいては、決算状況表とかあるいは日計表を平成十年の六月以降に求めております。これはあくまでも定期的なものでございます。
 それから、そのほか月次ごとに、その月次の今申し上げましたような状況の報告を求めております。

○福山哲郎君 平成十年の六月からですね。

○政府委員(日野正晴君) 平成十年六月というのは金融監督庁が発足したときでございますが、それ以前の大蔵省当時から、今申し上げましたように、日計表あるいはその月次の決算状況表などの提出を求めているということでございます。

○福山哲郎君 違うじゃないですか、その答弁。
 僕は、さっきわざわざ旧法だと言ったでしょう。九八年六月というのは新法になってからの話じゃないですか。旧法時代のもので一体いつから始まったのかと言ったら、前からやっていましたと。だから、それはいつかはっきり答えていただいたらいいんです。

○政府委員(日野正晴君) 九八年の六月以降は二十四条に基づいて報告徴求を行っておりますけれども、それ以前では銀行法二十四条に基づく報告徴求命令は行っておりません。

○福山哲郎君 さっきと答弁が違うじゃないですか。さっきの答弁と違うんですけれども。

○政府委員(乾文男君) 先ほどから長官がお答えしておりますけれども、まず実態から申しますと、各金融機関につきまして決算の状況でございますとか日計表、これは月次になりますけれども、そういうものを大蔵省当時から徴求しているわけであります。ただ、徴求の根拠と申しますか、ただいま御指摘の銀行法の二十四条でとるというのは監督庁になってからとっているわけでございまして、従来は銀行法の二十四条ということではなくて通達等に基づいて徴求していた、そういうことでございます。

○福山哲郎君 ということは、大蔵省は、金融監督庁時代じゃなくて大蔵省時代は、この二十四条に基づいては報告、資料を求めたことはないんですね。一度も例がないんですね。日債銀だけとは限りません、ほかの銀行でも結構です。ないんですね。

○政府委員(乾文男君) 大蔵省当時のことでございますけれども、銀行法二十四条に基づいてとったということではなくて、先ほど申し上げましたように通達等に基づいて徴求していたということであると承知しております。

○福山哲郎君 どんな通達ですか。

○政府委員(乾文男君) 今申し上げましたように、決算状況表あるいは日計表等について様式を定めて提出してください、そういう通達であったというふうに承知しております。

○福山哲郎君 それはあくまでも日常業務ですよね。この二十四条に照らしたものではないわけでしょう。

○政府委員(乾文男君) それは、まさに日常業務と言われれば日常業務でございますけれども、日常、銀行を監督している上において徴求していたということであると承知しております。

○福山哲郎君 ということは、二十四条に基づいては一度もやっていないわけですね。もう一度お伺いします。

○政府委員(乾文男君) 大蔵省当時は、一々と申しますか、銀行法二十四条ということではなくて、通達に基づいてそうしたことを徴求していたということだと承知しております。

○福山哲郎君 もう一つお伺いします。
 第二十六条、「大蔵大臣は、銀行の業務又は財産の状況に照らして必要があると認めるときは、当該銀行に対し、その業務の全部若しくは一部の停止又は財産の供託を命じ、その他必要な措置を命ずることができる。」と。
 二十六条に基づいて必要な措置を講じたことはありますか。

○政府委員(乾文男君) 日債銀について、この二十六条に基づく措置をとったことはないというふうに承知をしております。

○福山哲郎君 ほかの銀行はいかがですか。

○政府委員(乾文男君) これは先生あれでございましょうか、大蔵省当時でしょうか、それとも監督庁になってからでしょうか。
 大蔵省当時、他の銀行について二十六条の措置をとったことはあるというふうに承知をしております。

○福山哲郎君 どのような措置をとられたのでしょうか。

○政府委員(乾文男君) 個別行の名前を言うのはあれかもしれませんが、公表しておりますので申し上げますと、いろいろな不祥事件が起きましたときに、例えば第一勧業銀行につきまして、何と申しますか、総会屋の事件がございまして、それにつきまして業務停止をかけたというふうなことはこの第二十六条で行っております。

○福山哲郎君 業務停止以外の何か種類はございますか、必要な措置を講じられたものに対して。

○政府委員(乾文男君) 業務停止というのはこの二十六条の中でも一番重いものでございますけれども、それに至ります段階といたしまして、内部管理体制の改善を求める等いろいろなレベルのものがございまして、そうした措置を発動したこともございます。

○福山哲郎君 そうすると、大蔵大臣、九七年四月から奉加帳を回した、中井審議官が各金融機関にお願いしますと言った、確認書を回したと。いろいろやられているのはいいんですよ。しかし、銀行法の二十四条と二十六条の法律に基づいたものを何もしない上で大蔵省は日債銀の奉加帳を回したということになるわけです。これ不作為じゃないですか。法律に基づいて何にもやっていないじゃないですか。
 だって、さっき言われたでしょう、改善を求める計画を求めたりするんだ、業務停止もあり得るんだと。これは日債銀について一切やっていないと。やっていないじゃないですか、やらなきゃいけないことを。これ不作為責任があるじゃないですか。行政としての不作為責任はどうなるんですか。大蔵大臣、お答えください。

○国務大臣(宮澤喜一君) 私、詳しいことはよくわかりませんが、通達で求めると。通達で求めるということは何かの法律の根拠がなければできないはずです。ですから、法律そのものを発動する場合もあるだろうし、その法律の根拠によって通達で求める場合もあると思うんですね。その意味は、もしその通達が無視されれば法律を発動するということでございますから、行政というのは私はそういうふうに行われることはしばしばあると思うので、今がそうかどうか存じませんが、常識的には今お話を聞いていてそういうふうに思います。

○福山哲郎君 そうしたら、先ほど言われた通達は何の法律を根拠に出された通達ですか、今、大蔵大臣の御答弁をいただいたわけですから。

○政府委員(日野正晴君) 金融監督庁が発足いたしましたのもそういった理由だと思いますけれども、明確なルールあるいは法律に基づく監督という観点から、先ほどから御指摘になっておられます銀行法の二十四条や二十六条を、私どもはこれをいろいろ使わせていただいておりますが、先ほどの通達は、究極的に法律のどこに根拠を持つのかというふうに言われますと、結局一般的な銀行監督ということを大蔵省はその職務としていたわけでございますので、監督上必要な行政の一つの形態として行っていた、こういうふうに私どもは理解させていただいているわけでございます。

○福山哲郎君 大蔵大臣と今の答弁は違いますね。

○国務大臣(宮澤喜一君) いや、それでいいんだと思うんですね。
 つまり、今、長官の言われようとしたことは、そういう大蔵省の行政というものが、いわばなれ合いになるというか、きちんと一つ一つ物差しに従っていないで、こういう通達でやってくれ、わかりましたというようなことでは批判があるから、自分たちは一つ一つ法律に基づいてやっている、こういう趣旨の答弁をされた。
 つまり、長い間の金融機関と大蔵省との関係というものは、大蔵省が通達を出せばそれを守ってくれるというようなことの信頼感がありました。信頼感のうちはいいんですが、皆様方に言わせればそれが癒着になる。そういうことがあって監督庁はおやめになったんですが、大蔵省が通達を出したときに、それは大蔵省が銀行に通達が出せるのは当たり前だとみんなが思っています。その根拠は何だとおっしゃるなら、それは大蔵省は一般的に銀行を監督する権限がある。その権限は何で与えられたかといえば、それは銀行法によって与えられている。そんなことはみんなわかり切っておったといったことが間違いのもとだとおっしゃりたいんなら、そういうことはございます。

○福山哲郎君 銀行法に基づき大蔵省は監督をするのが当たり前だという状況の中で、日債銀に対して二十四条と二十六条を適用しなかったのは、大蔵省として大蔵大臣として不作為責任はありませんか。

○国務大臣(宮澤喜一君) それは、私はそうは思わないので、大蔵省のそういう責任あるいは権限が無視されたという状況がありましたらそうおっしゃることができると思いますが、そういう譴責はございませんでしょう、一々法律を適用しなくてもちゃんと監督は行われていた、それは間違いがないわけですから。それを無視された、それでも黙っていたというんなら、それは不作為になるかもしれない。

○福山哲郎君 違いますよ。必要があると認めたときは、大蔵大臣は資料を請求したり、さらには必要な措置を講じなければいけないんですよ。それをしなかったんですよ。そこに対して、大蔵大臣としての、大蔵省としての機関としての責任はないんですかとお伺いしているんです。別に、無視されたとか無視されないという話をしているんじゃないんです。

○国務大臣(宮澤喜一君) 違うんですね、私が申し上げようとしていることは。実際、説明も聞いているし、書類もとっているし、ただそれを二十何条に基づきますと言っていないだけのことであって、やることはやっているんですから、それをやらなかったら不作為でしょうが、一々法律を根拠に言わないだけのことです。

○福山哲郎君 だって、それは通常の業務です。それこそ先ほど大蔵大臣が言われた大蔵省が銀行を監督するのはもう当たり前だという状況の中で定期的に通常的にいろんな資料をもらう、報告書をもらう。当たり前ですよね。しかし、これは「健全かつ適切な運営を確保するため必要があると認めるとき」、ということは、必要があると認めなかったということですね、日債銀に対して大蔵省は。

○国務大臣(宮澤喜一君) 違います。行政というのはそういうものじゃないんで、一々法律に基づいてこうしますなんというのは本当は行政からいえば上手な行政とは言えないんで、そうじゃなくて、ちゃんと一つ一つのことが毎日毎日法律の趣旨に基づいて行われていればいい。私は、そこに瑕疵があるというふうに、あるいは不作為があるというふうには思えないんです。
 いざとなれば、無視されれば法律に基づいて、その法律に違反すれば罰則がございますから、それはやれます。しかし、そこまでやらなくてもちゃんと一つ一つの監督が行われていれば普通の場合は私は行政というのはそれでいいんだというふうに思います。

○福山哲郎君 だって、さっき第一勧銀に必要があるときにはやったと言っているじゃないですか、必要な措置を。ということは、日債銀に対しては二十六条の適用は必要でなかったと判断していたということですね。

○国務大臣(宮澤喜一君) 第一勧銀に対してやったのはそういう処分をしなければならなかったからであって、処分をするのに通達ではできません。したがって、法律を引用したんです。

○福山哲郎君 改善を求める計画をしたり、いろいろ種々、業務停止をしたのは一番重いものであって、あとは段階があるというふうに先ほど言われたじゃないですか。ということは、日債銀に対して二十六条を適用する必要はなかったというふうに大蔵省はずっと判断していたということになるんじゃないですか。

○国務大臣(宮澤喜一君) それは事実に徴して違うと思うんです。平成九年の四月一日に日債銀が経営再建計画を発表いたしました。これから大蔵大臣の談話があるんですが、そこへ至るまでの間だってそれだけのことを日債銀はひとりだけでできたわけはないんで、それだけの行政指導が行われていたということは、事実に徴して当時のことを知っている者から言えば明らかです。そのことを一々法律を引用しないといって、法律の何条に基づきと言わないからといって、不作為であるとか怠りがあったとか、そういうものではない。

○福山哲郎君 だって今、裁量行政に批判があったから旧法を改正して新法にして法律に基づいてやるようにしているんですと今、大蔵大臣は私に御答弁していただいた。なおかつ長官もそう言われた。
 今の大蔵大臣の答弁は、そういうことをきちっとやらないで、定期的に日常やっていることを、やっていることはやっているといって正当化されたんですよ。先ほど否定したことを今、大蔵大臣は正当化されたんですよ。(「矛盾している」と呼ぶ者あり)

○国務大臣(宮澤喜一君) 矛盾しているといいますよりは、そういう行政でいいと思ってやっていたんです。そうしたら悪かったと。だから今はやめたと。悪かったと言われるからやめているのでありまして、当時の行政はそういうことで動いていたんです。何もやらなかったわけではないんです。
 ですから、不作為とか何とかということになると、それは違いますと申し上げざるを得ないので、一々物差しに、法律に基づかないでああこうとやっていたのはあいまいじゃないかと、それは場合によっては癒着になるよというようなお話なら幾らでも私はおとなしく聞くんですが、何にもやっていなかったわけではないんです。

○福山哲郎君 ちなみに、これは「大蔵大臣は」ですから、そうしたら大蔵大臣の行政責任は問われるわけですか。今のは、確かに役所はやっていたでしょう、大蔵省はやっていたんでしょう、日常的には管理をしていたんでしょう。でも、これは本当は大蔵大臣がやらなければいけないことなんです。それで、大蔵大臣がやっていないわけですよね。

○国務大臣(宮澤喜一君) それは恐らく役所がいわゆる長年の習慣で行政をやっておって、今から考えますとですよ、やっておって、ちゃんといっていたと思ったが、ちゃんといっていなかったからこうなったんだろうと。そうすると、その事態を大蔵大臣は見逃したなと。大蔵大臣は法律を執行する最終的な監督の責任者でございますから、それは大蔵大臣に、最終的にはおっしゃるようになるんだと思います。

○福山哲郎君 ということは、この二十四条、二十六条について日債銀に適用がなかったことに対する大蔵大臣の責任はあるということですね。

○国務大臣(宮澤喜一君) 私の言葉ではそういうときにそういうふうな表現をいたしませんけれども、法律を物差しどおり適用しなかった、実際は同じ行為をやっていたにしても、適用しなかったからけじめがつかなかった。そういう行政に行政の最高責任者は責任があるかといえば、そういうふうにおっしゃるのならば、私は別にそのことに異存はございません。

○福山哲郎君 多分、堂々めぐりになるんでしょうから次に行きたいのですけれども、要はこういったものが今回の問題の根本だと思うんです。それは大蔵大臣も今お認めになられましたし、先ほどの大蔵大臣の談話の話もそうです。それから、今から申し上げる確認書の問題も本質的には全く同じことだというふうに思うんですけれども、金融監督庁長官にお伺いをします。
 私がことしの三月九日、参考人質疑のときに山口元銀行局長にこう聞いたんです。この確認書、もう皆さん御案内のように日生と中井審議官が交わした確認書でございますが、これについて私はこうお伺いをしました。「中井審議官の判断で各社と確認書を交わされたのか、逆に上司である山口参考人の命令で中井審議官は動かれたのか、どちらでしょうか。」というふうにお伺いをしました。そうしたら、山口元銀行局長はこう言われたんです。「もちろん中井審議官の個人的な判断ではありません。しかし、私が命令してこれを交わしなさいと言ったものではありません。」。
 何ですか、これは。「中井審議官の個人的な判断ではありません。しかし、私が命令してこれを交わしなさいと言ったものではありません。」と山口参考人は言われたわけです。では、これは一体何の権限で、だれの権限でこの確認書を交わされたんですか。

○国務大臣(宮澤喜一君) それは私からお答えするのが適当だと思います。
 この日債銀の再建について平成九年一月に大蔵大臣が談話を発表されました。そして、日銀にも要請され、みんなでこれをひとつ再建させてやろうではないかということが大蔵省の、つまり大蔵大臣の意思として決定されたわけでございます。それで、大蔵省の公務員諸君は、その大蔵大臣の意思を受けてできるだけ再建をしようと思った。みんなが思いました。それは、自分の意思というよりは、大臣の決定された意思に基づくと私は考えておるんです。
 したがいまして、今おっしゃいました中井君の確認書というものも、なかなか相手を説得することができない状況の中で、恐らく日本生命保険相互会社代表取締役との間で交わされたものと思います。
 このことを山口君が中井君に命令したかどうか、それは私は存じません。本人がしないと言っているそうでございますから、そうかもしれません。ただ、それなら中井君の意思かといえば、そんなことはないので、中井君個人がこういうことを自分の責任でやった、何と申しますか、説得そのものですね、それは大蔵大臣のこの四月一日の声明によって公務員がそれを体してやったということでございましょうね。
 確認書まで行くのは行き過ぎだよとかなんとかいう御批評はあるかもしれない。しかし、説得というものは個人の意思でやったものではないと思います。(「それならだれかと言っているんだよ」と呼ぶ者あり)

○福山哲郎君 大蔵大臣のおっしゃることはよくわかるんですが、だから山口さんと中井さんを呼んでそこをはっきりさせましょうと。私が命令したわけではない、でも個人的な判断ではありませんなんという答弁をしているわけです。
 そして、四月一日の大蔵大臣談話を受けてそれを体してやりましたと大蔵大臣は今おっしゃいました。では、大蔵省は大蔵大臣の談話を受けて、仮にも日本生命の副社長と大蔵省大臣官房審議官という肩書で判こをついて、大蔵大臣の意向を体して、それも直属の上司の命令でもないのにこういう確認書を、これは一枚だけじゃないです、ほかの増資先とも数社と交わしているわけですけれども、こういう紙を交わすだけのものが大蔵省にはあるわけですか、そこまでの裁量が。

○国務大臣(宮澤喜一君) それならだれの責任だという今お声がありましたので、それは大蔵大臣の責任でございます。役人はその大蔵大臣の方針を体してやったことでありますが、さて、この確認書を交わすまでのことが行政官として常識的に大変に褒めたことかということになりますと、それはいろいろ御批判は残るだろうと思います。
 ただ、私がいつも故意過失がないと申し上げておりますのは、それは大臣の定められた方針を自分としてこういう形で実現した、そういうふうに解してやるべきではないかと思うんです。

○福山哲郎君 大蔵大臣が山口元局長や中井審議官をかばわれるのはわかります。
 しかし、いいですか、日銀のお金が八百億、そしてすべての増資先も含めて二千百七億、日生に至っては株主代表訴訟まで起こっている。そしてそれが全部パアになっているわけです。
 体して行いましたと。これは山口さんもこう言っているわけです、いろいろ問い合わせがありましたと。要は、日債銀が大丈夫かどうかという問い合わせがあったんです。それに対して、その当事者の銀行が、「例えばほかの上司の方等々に説明するときにそれをお使いになる場合に、こういうきちんとしたやっぱり名前も書いたものというのが必要だったんではないでしょうか。」と言っているわけですよ。
 つまり、増資先にお願いをすると、そことのやりとりの中でその担当者が、いや、大蔵からこういう確認書をもらっていますと言う方が説得しやすいでしょうというのでサインと判こを押したというわけですよ。でも、自分は命令していないと言っているわけですよ。こんなばかな話が通るんですか、大蔵大臣。

○国務大臣(宮澤喜一君) それは、局長が審議官に命令する関係には私はないと思います。山口君が自分は命令したことはないと言うのは多分そうなんでしょう。命令関係には、やってやれないことはないが、普通ございませんから。恐らく、中井君は大臣の、省の意思というもので動いたと思うので、山口君が自分は命令したことはございませんと言うのは、そうもあろうなと私は思います、その点は。

○福山哲郎君 済みません、大臣に対してお言葉を返すようでございますが、私はこれも実は山口参考人にお伺いをしたんです。
 中井審議官は、当時、銀行局担当の審議官だったんです。「中井氏は当時銀行局担当であったので山口参考人の部下ということでよろしいわけですね。」と僕が確認したら、山口参考人は「結構でございます。」と答えられたんです。つまり、私に上司だということを答えていただいているんです。答えた後に、中井審議官の個人的な判断ではなくて、私が命令をしてこれを交わしたものではないと言っているわけです。
 今、大臣がかばわれる気持ちは私はわかるつもりでいますが、これは一般国民から見たらやっぱりおかしいですよ。今の大臣の御答弁も含めて、納得できないですよ。

○国務大臣(宮澤喜一君) そうかもしれませんが、実は中井君はその当時は大臣官房の審議官なんですね、きちんと申しますと。したがって、山口君の指揮下にはないんです。
 ただ、大臣官房審議官が銀行局にもいる、何局にもいまして、局長を助けて、片方が参議院に行くときは衆議院に行くとか、そういうことをやっていますから、山口君にしてみればあれは自分の片腕だということはそのとおりで、そうでないと言ったらむしろおかしい話ですから。しかし、厳密に言えばこの人は官房審議官であるということを、どうでもいいんですが、お尋ねがありますから申し上げたんです。

○福山哲郎君 いや、もう全く納得できないです。
 それで参考人に山口元局長と中井審議官を呼んでくださいと言っているわけです。今の上司か部下かという話も、命令をしたかしないかの話も、お二人を呼べばはっきりするじゃないですか。現実にもう二人も逮捕者が出ているわけです。国民の税金もパアになっているわけです。
 これは国会として当たり前の話だと僕は思うんですけれども、総理、いかがですか、今のやりとりを聞かれて。

○国務大臣(小渕恵三君) これは院のルールとして、政府側がこういう人を呼ぶべきだということを申し上げることはかえって僣越だと思いますので、これは院において、当予算委員会において御判断していただきたいと思っております。

○福山哲郎君 では、自民党総裁としてはどのようにお考えですか。

○国務大臣(小渕恵三君) 今、委員長の御指名のように、内閣総理大臣として御答弁をする立場でございますので、先ほど申し上げましたように、ぜひ国会における審議権といいますか国政調査権といいますか、こういう御判断につきましては、私の経験律から申し上げましても、こうしたお話し合いというのは過去自分も経験をいたしておりますが、それは究極は院において、そして当該の委員会において御判断していただくというのが政府として御答弁申し上げるすべてだろうと思っております。

○福山哲郎君 それでは、今のやりとり、上司か部下かという話はもうしません。
 では、この確認書は、今の流れの中で、大蔵大臣談話を意に体して確認書を交わしたと。これは一体だれのどういう権限で交わした文書でございますか。金融監督庁、お答えください。

○政府委員(日野正晴君) 先ほどからもたびたび御議論されているところを何か総括するようなことになって大変恐縮でございますが、日債銀からは平成九年の四月一日に経営再建策というものが出たわけでございます。そのとき、ちょうどクラウン・リーシングとかいろいろノンバンクが破産したりいたしまして大変な経営の危機に陥ったということで、大蔵大臣からも談話が発表されたりいたしまして、その大臣の御意向を受けたというような形で増資先に対して日債銀がいろいろお願いをしていた。
 そのお願いをするに際して、大蔵省では一体どういうふうに考えているのかということでございましたので、大蔵省としてはということでありまして、恐らく行政というのは、それは大蔵省という官印を押すとか大蔵大臣という判こを押さなくても、中井審議官というのは大臣官房審議官なわけですから、中井審議官が自分に与えられた職責を、銀行局を担当している官房審議官として、大蔵大臣の意を体して日債銀の再建策に当たりまして、とにかく増資要請先から何とかこういうものをもらえないかということで押されたものということだろうというふうに理解しております。

○福山哲郎君 ところが、不思議なことに、山口参考人は私にこういうことも言っているんです。さっき命令していないと言っているんですが、「大臣談話の話ではなくて、この確認書に対して大蔵省としては責任がとれる文書ですね」と聞くと、山口参考人は「私的なものではないという意味ではそうだと思います」と答えられているんです。私的なものではないとはっきり言われているんです、山口さん。自分が上司じゃないと言っているくせに。
 それで、「大蔵省としては責任がとれる文書ですね」と言うと、山口さんは「そうだと思います」と言われているわけですが、じゃ大蔵省として責任がとれるというのはどういう意味で責任がとれるんですか、監督庁長官。これは大蔵省の組織が変わったとか、金融と財政が分離したとか、そういう話じゃないですよ。この確認書について責任がとれるかどうかということを聞いているわけですから。お答えください。

○国務大臣(宮澤喜一君) それは御質問が私は難し過ぎると思うんです。
 つまり、これは公文書かと言われたら、公文書ということはございませんね。それなら私文書だなと。公文書でないものは私文書でしょうから。私文書というものは、じゃ何でもないじゃないかと言われてしまえばそれだけになってしまうんですね。そこがやっぱり中井君としてはいわば私文書の形をとらざるを得ない。しかし、これは大蔵大臣の考え方に背くものではありませんというような気持ちでやったんだろうと思うので、それは御質問がちょっと難し過ぎるんじゃないかと思うんですね。

○福山哲郎君 では、私文書でも公文書でもないものを大蔵省は何社にも配って二千何百億円という増資を引っ張り出してくるわけですか。それで、それがパアになって、これは私文書か公文書かわかりません、上司かどうかもわかりません、大蔵大臣談話の意を体して部下がやったものだから、それは悪いと言われれば悪いけれどもという話でおさまる話なんでしょうか、大蔵大臣。国民がそれで納得するんでしょうか。

○国務大臣(宮澤喜一君) 私はこう思いますが、いかがでしょう。
 これは公文書かと言われたら、どうも公文書と申し上げるにいきませんね、官印もございませんし。公文書でないものはすべて私文書だなとおっしゃられれば、それはそうでございますと申し上げざるを得ないでしょう。
 そこで問題は、最高の責任者である大蔵大臣がこういう確認書について全く自分は知りませんと言えるか言えないかということになりましたら、それはこの審議官が大臣の意を体してやった行為で、故意過失というようなものがない限りはなかなか大蔵大臣としても自分は知らぬことですともおっしゃれないのじゃないでしょうか、事実は。私は法律を今議論する用意がございません。事実はそんなところではないんでしょうか。

○福山哲郎君 それじゃ、これは今一枚しか確認書が出てきていません。各行と大蔵省は、中井審議官の名前かほかの名前かわかりませんが、判こもついているかどうかもわかりませんが、先ほど大蔵大臣が言われたように官印があるかどうかもわかりませんが、ほかの銀行と交わされた確認書を全部出してください。わからないじゃないですか、そうしたら、今の話は。
 委員長いかがですか。

○政府委員(乾文男君) これは以前からお答えしておりますけれども、例えば今のでございますと中井審議官でございますけれども、当時の大蔵大臣談話に沿っていろいろな説得というものをやっていた。そういう中で、先方の求めに応じまして、ざっくばらんに言いますと、中井さん、そういうやりとりを紙にしてくれませんかということでもって日本生命の場合にされたということでございます。これは確認書という形になっておりますけれども、いわばやりとりのメモということでございまして、先方のまさに発言の内容ということでもありますから、先方の同意がないとそれをお示しすることは差し控えたいというふうに考えているところでございます。

○福山哲郎君 これで午前中の質問を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。

○委員長(竹山裕君) 残余の質疑は午後に譲ることといたします。
 午後一時に再開することとし、休憩いたします。
   午後零時六分休憩
     ─────・─────
   午後一時開会

○委員長(竹山裕君) ただいまから予算委員会を再開いたします。
 予算の執行状況に関する調査を議題とし、休憩前に引き続き、質疑を行います。福山哲郎君。

○福山哲郎君 まず冒頭、委員長、先ほど午前中に申し上げましたが、各行に大蔵省が出されました確認書、メモ書きなのか確認書なのかいろいろあるみたいでございますが、ぜひそれは当予算委員会として資料要求をしたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。

○委員長(竹山裕君) ただいま福山君の要求につきましては、その取り扱いを後刻理事会で協議をいたします。

○福山哲郎君 少し細かい話ですが、九七年五月十九日でございますが、日債銀の東郷頭取が東京三菱を初め各行に七千億円だと伝えたという話があります。これは日野長官にお伺いしたいんですが、いわゆる御自分で何かの検査の途中での心証を積み上げた計数を伝えていたという御判断でよろしいわけですね。

○政府委員(日野正晴君) 大蔵省の検査の結果、示達がなされましたのは九月でございまして、それまで検査はいまだ確定しておりませんですから、大蔵省としての検査結果、途中でございますけれども、検査官とそれから検査をされている金融機関との間ではもうしばしばディスカッションと申しますかいろいろ話し合いがなされるということでございますので、検査官からいろいろ指摘をされたりいたしますと、これは大蔵省はこういう心証をとっているんだな、大蔵省はこの辺のところを恐らく不良債権と見ているんだなというふうに当該の金融機関は恐らく理解されているだろうと思います。また理解されただろうと思います。
 そういったことをもとにいたしまして、日債銀は自分のところはこうだということを言われたのではないかというふうに思っております。

○福山哲郎君 五月十九日、日債銀が東京三菱銀行に七千億円だと、これは大蔵がこういうことを言っているというか、日野長官の今言われたとおりだとして、こういう状況だと。これは大蔵省は御存じでしたか。

○政府委員(日野正晴君) 結論から申し上げますと、大蔵省は知っていたということでございます。
 そういうことを言っているということを知ってはおりましたが、日債銀としても増資を要請している先に対しましていろいろ説明する必要がございますし、その必要に迫られてそういうことを言っていることは承知していたというふうに思います。承知していたというか、知っていたと思います。
 しかし、そのことについて大蔵省が何かお墨つきを与えたとか、それは正しいとか言ったことはなかったというふうに承知しております。

○福山哲郎君 それは五月十九日に東京三菱ほか各行に七千億円だと伝える以前にわかっていたのか、それから先、日債銀がそういうことを言っているよということが大蔵省としてはああそうなのかという形でわかっていたのか、どちらでございますか。

○政府委員(日野正晴君) それは、その以前に知っていたというふうに思います。

○福山哲郎君 それで、参考人のときに東郷元頭取はこう言われているんです。七千億円を大蔵省に通知した上で要は東京三菱ほかに伝えたと。私は聞いたんです、どこの窓口ですかと。そうしたら、「大蔵省銀行局銀行課だと思います。」と。もう窓口までちゃんとはっきりしているわけです。
 では、七千億円を増資要請先に伝えますよといって連絡したときに、大蔵省はうんともすんとも否定も何もしないで、ああそうですかと。検査の最中ですよ。先ほどまさに日野長官が言われたように九月に示達が出ているんですが、五月の時点で七千億円と伝えますよ、今検査の最中ですけれどもといって銀行局の銀行課に伝えたときに、検査の最中であるにもかかわらず、第三者に当の日債銀が伝えることに対して大蔵省がうんともすんとも言わなかったと。これは日野長官、どういったことなんでしょうか。

○政府委員(日野正晴君) 大蔵省ではその当時、増資の問題に関しましては、今お話がございましたように、銀行局が窓口になっていろいろ応対をしていたと思います。一方、検査の方は官房検査部の方でやっておりまして、同じ大蔵省の中ではありますけれども、銀行局が日債銀からそういう話を聞いたときに、増資要請をするに際しては何らかの形で自分のところの資産内容を説明する必要に迫られているんだなということを考えて、途中段階ではありましたけれども、日債銀が大蔵省の検査の結果を踏まえてみずから認識している数字を説明することはやむを得ないのかなと考えていたというふうに聞いております。

○福山哲郎君 大蔵大臣、検査の最中に、検査部と銀行課は違う、増資する要請先に回らなきゃいけないから七千億円と具体的な数字を伝えますと言ってきたときに、銀行課としては、やっている最中に、検査部と銀行課は別だといってしんしゃくしたと。先ほどから、ずっと私の午前中の質問からしんしゃくするのが多過ぎるんですけれども、大蔵大臣はどのようにお考えでしょうか。

○国務大臣(宮澤喜一君) 想像するしかありませんけれども、きっとこうではないでしょうか。もし、そのときに検査が済んでおって検査の結果がわかっておりましたら、七千億ですと言われたとき、少なくともそれは違いますとは申したでしょうね、幾らという数字は多分申さないと思いますが。ただ、検査の結果というものがないものですから、何とも言いようがないということではなかったでしょうか。

○福山哲郎君 それでいいんですか、検査の最中に日債銀がほかを回るのに。私は大変納得しにくいんですが、時間がないのでイエスかノーで答えてください。
 大蔵省は、中川金融検査部長が平成九年三月五日に、一年後に早期是正措置が導入されるということで資産査定についてという通達を出していますが、それはよろしいですね。イエスかノーで答えてください。

○政府委員(五味廣文君) そのとおりでございます。

○福山哲郎君 そこには、この早期是正措置が来年の、要は平成十年四月から始まるけれども、なるべく早く前倒しでこの通達に基づいてやりなさいということが書いてありましたね。それでよろしいですね。

○政府委員(五味廣文君) 早期是正措置が導入されるに当たって、「できるだけ早期に自己査定を実施する体制を整備し、自己査定結果を適正に反映させた償却・引当を実施することが望ましい。」、こういうことが早期是正措置に関する検討会の中間とりまとめにおいて述べられているということがこの通達の中に紹介をされておりまして、そこで「早期是正措置制度が導入されるまでの間における金融検査においても、金融機関の自己査定のための体制整備の進展状況等について把握するよう努められたい。」と、こういう記述になっております。

○福山哲郎君 その中で、いわゆる日債銀が主張しています、支援を続ければ継続をずっとし続けると言われている企業、それを第V分類にするか第U分類にするかというのが一つの争点なんですが、ここに「自行として」、これは日債銀ですが、「自行として消極ないし撤退方針を決定していない債務者であっても、」、これはいわゆる状況が悪いけれども、融資をし続ける限りは継続ができると日債銀は主張していたものであっても、「当該債務者の業況等について、客観的に判断し、今後、経営破綻に陥る可能性が大きいと認められる場合は、破綻懸念先とする。」という表現がありますね。それでよろしいわけですね。

○政府委員(五味廣文君) もう少し正確に紹介させていただいてよろしいですか。
 今のお話は、第V分類ではなくて破綻懸念先という債務者区分の方のお話でございまして、具体的には、事業を継続しているけれども実質債務超過の状態に陥っていて、業況が著しく低調、貸出金延滞など事業好転の見通しがほとんどない状況で、自行としても消極ないし撤退方針としており、今後経営破綻に陥る可能性が大きいと認められる先、これが破綻懸念先の代表的な定義ということで述べられております。その後に、議員が今おっしゃいました、自行として消極や撤退方針を決定していない債務者であっても、その業況等について客観的に判断して今後経営破綻に陥る可能性が大きいと認められれば破綻懸念先である、こういう記述でございます。

○福山哲郎君 時間がありませんので、もう結論だけ申し上げます。
 いわゆる九月の示達で両論併記がされた。七千億円と一兆一千億円だった。検査部の方はこの早期是正措置を早目に前倒しでやりなさいという通達を出して、こういう第V分類になりそうなものに対しては、危ない破綻しそうなところは第V分類にしましょうという状況で検査を進めていた。ところが、五月の時点では、大蔵省は七千億円だという三月の日債銀の自己査定を踏まえて奉加帳を回した。ここで大蔵省のスタンスと検査部のスタンスが違っていた。しかし、検査部としては各行にこういう早期是正措置でやりなさいよと言っている手前、そこをやらないでこの示達を出すわけにはいかなかった。しかし、銀行課は銀行課で、先ほど検査部と銀行局が違うとおっしゃられましたが、そこの両方で、片方は奉加帳を七千億円で回した、片方の検査部はこれを第V分類に入れると一兆一千億円だと。ここのはざまの中で私は両論併記が示達の中で行われて、その中で日債銀はこれは大蔵省が七千億円を認めてくれたんだというふうに踏んで、佐々波委員会も含め七千億円を主張したというふうに思っています。
 私は、大蔵省はある意味で言うと二つの数字を非常にうまく検査部と銀行局において使い分けをした。結果は破綻をした。日銀も増資先もそれから公的資金、国民の税金も全部パアになった。私は、大蔵省の責任は大変大きいと思いますし、このことに対してはまだまだ明らかでない部分もありますので、先ほども申し上げました資料も含め、本当に審議をもっと尽くさなければいけないというふうに思っていますし、とにかくまだまだわからないことだらけでございますが、時間も来ましたので、次の質問に移りたいと思います。
 どうもありがとうございました。

 


 

第145国会  参議院本会議   1999年7月8日

○福山哲郎君 私は、民主党・新緑風会を代表して、ただいま議題となりました政府提案の中央省庁等改革関連法案に対し、反対の立場から討論をいたします。
 私たちが本法案に反対する理由は明快であります。政府は、今回の行政改革を通して、簡素、効率、透明な行政を実現すると国民に約束をしてきたにもかかわらず、実際に政府が提出した法案はこの公約から余りにもかけ離れた内容であり、これをおよそ行政改革と称することはできないことが国会審議を通じて明らかになったからであります。
 昨日の特別委員会審議において、まさに私たちが本法案に反対する理由を総務庁長官自身みずから説明していただきました。同僚の江田議員の、今回の本法案において権限、財源、人間のうち、どれがどれくらいスリム化されるのかという質問に対し、長官は、この法案で直接スリム化が実現するということではなく、行政改革を実現するシステムがビルトインされたということだと答弁されたのです。この答弁からも明らかなように、政府自身でさえ今回の本法案で行政のスリム化を実現するとは考えていないのです。
 それでも、今回の本法案によって本当に行政改革の実現を期待できる組織が構築できるならまだ理解はできます。しかし、私たちはこの本法案が行政改革を推進するシステムをビルトインしているとは到底考えられません。
 ここでは、以下の六点に絞って問題点を指摘いたします。
 第一の問題点は、本法案における基本理念の欠如です。
 何のために省庁再編を行うのか。この省庁再編の向こう側、つまり二十一世紀の日本が一体どこに向かうかが全く明らかにされていません。行政改革会議が最終報告で理念として掲げた、肥大化し硬直した政府組織を改め、重要な国家機能を有効に遂行するにふさわしく、簡素、効率的、透明な政府を実現とはほど遠い内容であり、後に述べる国土交通省や総務省の出現など全く逆行しています。明治時代に構築された基本形を維持したままの行政制度・体制では、その後に大きく変化した行政ニーズに対応できないことが明らかになったからこそ、現在、行政改革が求められているのです。
 来る二十一世紀には経験したことのない少子高齢社会を迎え、一方ではグローバルな大競争社会に放り出される我が国が、いかにその荒波の中でも国民の生活、安全を守っていけるような効率的で国民の信頼に足る行政組織を構築するかが私たち立法府に課せられた大きな課題なのです。しかし、本法案にはこのような社会の基本的な構造変化を意識した行政改革に対する理念が感じられません。
 第二の問題点は、手順の問題です。
 そもそも、省庁半減という役所の大ぐくり再編から議論をスタートさせた今回の省庁再編は、その結果数合わせが至上命題となり、この実現にこだわる余り実質的な行政改革がおざなりになったのです。あるべき手順とは全く逆になっています。本来なら、まず社会の変化を踏まえた上で新たな官民関係の基本を定める。次に、公的部門が負うべき範囲を定め、地方が負うべき分野については地方への権限移譲とこれに見合った財源の移譲を進める。そしてさらに、中央政府が担う事務のうち、外部化した方が効率的なものを定める。こうして残ったものが中央政府がみずから実施しなければならない分野なのであり、そういった作業の後に省庁の再編に取り組むべきなのであります。
 審議の過程においては、政府もこの手順が本来の手順であることは認めておられます。しかし、基本理念、手順を間違えたために、その結果とんでもないものになってしまいました。その代表的なものが国土交通省と総務省です。この巨大な省庁のどこが簡素であり、透明であり、効率なのか、審議において再三明確な答弁を求めましたが、結局、政府は何ら回答していません。
 第三の問題点は、まさにその国土交通省の誕生です。
 建設、運輸、国土、北海道開発庁の四省庁を統合したその巨大官庁には、地方整備局という大きな問題を抱えています。国土交通省の巨大な出先機関である地方整備局が事業の決定権を持ってしまえば、国民の代表である国会がチェックすることさえ困難になるのです。現在、全国のあちこちで公共事業を進めようとする国と地元住民の間で摩擦が生じていることから見ても、時代に逆行していると言わざるを得ません。こういった巨大官庁を認めることは、国会の存在を否定しているようなものです。
 第四の問題点は、財政と金融の分離問題です。
 小渕総理は我々民主党との合意を破り、その結果提出された本法案は改革という名に全く値しないものになっています。公党間の合意を平気で踏みにじるという小渕総理の政治姿勢は許せるものではなく、財政と金融の完全分離及び金融行政の一元化という命題を不完全な決着に終わらせることは、我が国の金融システムにとって大きな禍根を残すことは明らかであります。財政と金融の規律があいまいなまま、またぞろ公的資金の投入を繰り返すということになれば、ただでさえ危機的な状況にある我が国の財政は完全に破綻への道を歩むことになるでしょう。真の行政改革の進展を阻むだけではなく、将来の世代にも大きなツケをもたらしています。
 第五の問題点は、定数削減のごまかしです。
 小渕総理が昨年政権を引き継いで以来、この行革について唯一リーダーシップを発揮したのが、公務員の二五%削減と行政コストの三〇%削減であります。しかし、この公約もまた見せかけの公約と言われても仕方のないものであります。公務員の削減については、昨年の基本法にある一〇%削減と実質的に何ら変わることがなく、独立行政法人化される機関の職員を削減の内数とすることによって見かけ上の削減割合をふやしただけのものであり、また、行政コストの削減については、その内容が抽象的で、これでは検証のしようがありません。このように公約を掲げること自体、国民を欺くに等しい行為であると考えます。
 第六の問題点は、内閣総理大臣のリーダーシップについてです。
 日本の内閣制度の機構と運営の実態は、同じように議院内閣制度を採用しているイギリスやドイツとは似て非なるものとなっています。そもそも、議院内閣制度は、内閣を通じて政治がリーダーシップを発揮するための装置であるという認識が基盤にあって成り立つ制度であるにもかかわらず、初めに行政ありきという明治憲法下の変則的な内閣制度の残滓をそのまま引きずっています。
 本法案では、単に従来から当然の権利とされている閣議における内閣総理大臣の発議権を明記したにすぎず、一方で事務次官会議、閣議の全会一致制、分担管理の原則など、官僚支配の温床となっている制度はそのままとなっており、政治のリーダーシップを発揮しようがありません。さらに、内閣の補佐機能である内閣府についても、予算、人事や組織体制を統括していないなど、政治的リーダーシップにより各省庁をコントロールする仕組みとしては極めて不十分と言わざるを得ません。
 以上、この欠陥だらけの法案、政府自身が行政のスリム化を実現できないという法案に対して、我々民主党・新緑風会は反対の意思を明らかにするとともに、既得権益温存、官僚依存の現政権にかわって国民が主役の行政体制の実現を目指して邁進することを国民にお誓い申し上げ、私の反対討論を終わらせていただきます。(拍手)

 


 

第145国会  参議院  行財政改革・税制等に関する特別委員会
1999年7月7日

○福山哲郎君 民主党・新緑風会の福山でございます。
 公述人の方々には、御多用のところを貴重な御意見を賜りましてありがとうございました。少ない時間でございますが、よろしくお願い申し上げます。
 私は、少し公述人の皆様のお話を伺っていた印象をお話しさせていただきますと、今、海老原委員の方から省庁の大くくりの再編についての印象を公述人に聞かれたとき、ほとんど評価がなかった、先ほどの公述人の意見にもなかったということがまさに象徴的だなというふうに思っておりまして、行政改革会議がもともと言った、肥大化し硬直化した政府組織を改め、重要な国家機能を有効に遂行するにふさわしく、簡素、効率的、透明な政府を実現するという目的とはちょっとイメージが皆さん違うのではないかなという感じで、歯切れが徐々に悪くなっているのではないかというふうな気が率直にいたしました。
 まずは井上公述人にお伺いをしたいんですが、井上公述人は賛成というお立場だと。しかし、一府二十二省庁を一府十二省庁に変えたからといって終わるわけではない、もっと地方分権なり規制緩和をしなければいけないんだということを言われました。それはもうまさにこの省庁再編の効果がまだ手探りだということの意見の裏返しだというふうに思いますし、今、この経済不況の中、本当に戦っておられる経営者のお一人として、まさにこれがどう日本の経済再生へつながるのかということに対してのお気持ちをあらわされているというふうに私は受け取らせていただきました。
 そういった中で、井上公述人が言われました、具体的なもう一歩の規制緩和の推進、もしくはスピーディーな意思決定に対して、具体的にどういったことを政府なりに求められるのかというのをもう少し御説明いただければと思います。

○公述人(井上義國君) スピーディーな意思決定、世の中がどんどん変化していくわけですから、それに対して対応できなかったというところに今の日本の不振の原因があるわけですね。そういった意味で、何も国の政策だけによって経済が動くわけではありませんけれども、それでも企業としてもっと動きやすい、もっと対応しやすい体制というものが必要なわけでありまして、そういう意味で、今回の行政改革、中央省庁改革が内閣機能を強化してというふうなことで、そこで非常にスピーディーな意思決定ができるということを大いに期待しております。

○福山哲郎君 規制緩和の何か項目とかがもし具体的な像としてあれば、お教えをいただければと思うんです。

○公述人(井上義國君) 規制緩和の項目は、関経連でも、関西経済同友会でも、あるいは経団連でも、非常に多くの問題について要望を出しております。それもまだ、実際に改革されたのは半分ぐらいではないかと思います。
   〔団長退席、大島慶久君着席〕
 そういった意味で、そういった問題をスピーディーにやることはやれということでありまして、極端に言えば、経済分野に関して言えば一遍白紙に戻してもいいんじゃないかと。白紙に戻して、本当に必要な規制を改めてもう一遍やり直すというぐらいの、それぐらいの覚悟が要るのではないかということを常々申し上げておるわけであります。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 次に、真渕公述人にお伺いをしたいと思います。
 真渕公述人のお話は大変私、興味深く伺いました。改革という外からの圧力ではないところで、自律的な変化が実は行政の中では行われるんだというお話がありました。そして、それが発見、開拓、消滅というサイクルの中で行われてきたというふうにおっしゃられたんですが、改革という外からの圧力ではなくて、行政側が自律的に変化をするためのこれまでの大きな要件、要因というのは、どういうインセンティブが働くと行政というのはそういったことに乗り出していったんだろうかということについて、その要件についてお教えいただけますでしょうか。

○公述人(真渕勝君) 私は、調査した上でこれが恐らく一つのメカニズムであろうと思っているのは、今のところスクラップ・アンド・ビルドの原則だけでございます。
 つまり、先ほど申しましたように、実務家の方の感覚とは少し違うようではありますが、ぼんやりしていると危ないという、要するに省の数、組織の規模を保障してくれているわけではなさそうであると。スクラップ・アンド・ビルドであれば、新しいものさえつくらなければ何もつぶさなくてもよいというニュアンスを我々は受け取っておったんですけれども、必ずしもそうではないではないか。少なくとも長期的に見れば必ずしもそうではなくて、恐らくぼんやりとしていれば不利な状況になろうということがあって、そういうメカニズムを、スクラップ・アンド・ビルドというのが擬似的な市場メカニズムとして競争を強いたのではないだろうかというのが今のところの私の観察でございます。

○福山哲郎君 そうすると、先生の言われた、八〇年代以降エネルギーがどんどん落ちつつあるのではないかということの要因なんですが、私は、お伺いをしていて感じたのは、一つはやっぱり財政的な制約というのがあるのではないかなと。
 これまでと違いまして、日本もどんどん財政赤字がふえてきて、その財政的な要因の中で、例えば一律にシーリングがかけられるとかという状況の中で、新たな政策フロンティアというよりも、そういうことがやれる環境が徐々に徐々に悪くなっていくことによって、行政の中のそういったシステムが衰えてくるというようなことがあるのではないかなと感じたんですが、そこはいかがでしょうか。

○公述人(真渕勝君) 可能性としましては、今おっしゃったことに加えて、例えば、規制緩和とか小さな政府ということが一般的に言われるようになりますと、役人の方々が何か元気を出して新しい仕事を見つけようということがやりにくくなるというのは一つあるだろうと思いますし、もう一つは財政的な問題があると思うんですが、やはりスクラップ・アンド・ビルドでありますからつぶせばつくれる。一定の予算が使わなくてよくなれば新しい予算が使えるということになりますから、果たして財政的制約というのは大きいのかな、そこはちょっと必ずしもそうではない理屈も考えられるなというふうに思っております。

○福山哲郎君 そうすると、今回はかなり大きな、真渕公述人のお話を前提に考えると大きな外部からの力が働きました。特に、省庁再編についてはまさにツルの一声というか、ある権威の中で省庁の枠組みまでが決められた上で行政組織が変化があったと。
 これに対して、行政内には、例えばどういう別の化学反応というか、これまでそのエネルギーはどんどん落ちていっていたわけですね。ところが、突然こういう、突然ではないですが、大きな力学が働いて行政組織が変化をせざるを得なかった。これは、先ほど先生が言われた疑似マーケットが働いたわけではなくて、大きな力が働いてきたわけですね。そこに対して、将来のことですからわかりませんが、どういったそういう別の化学反応が起こるような予想というか見通しがもしおありならばお教えをいただきたい。

○公述人(真渕勝君) まず、過去の例を少し申し上げますと、運輸省の方いらっしゃいますが、過去の機構改革として非常に大きい、しかもこれは行政改革の成果であると言われたものとして、一九八四年の運輸省の改革があろうかと思うんですね。
 つまり、乗り物別であったというものが地域交通局あるいは貨物流通局というんですか、いわば横割りの組織ができたと。これはすごいというふうに受けとめたことを私は覚えておるんですが、私が知っている限りでは、一九九〇年にほぼもとに戻ったという感じ、全部じゃありません、全部じゃありませんが相当程度戻ったと、半分は戻ったというふうに言っていいと思うんですね。
 これはつまり、行政改革があるときになぜ変化をしようとしないのかというと、やっぱりある種の抵抗感が役人の方々にあるわけですね。つまり、自分たちでやらせてくれるんならどんどん変えていくよと。外から言われると余りおもしろくないと。でも、風が強ければ、ニーズもあるでしょうから一応歩調は合わせると。
 今の場合の八四年というのも多分ニーズはあったと思うんですが、内的にも、ニーズ、そういうことを要求する方々もいらっしゃったと思うんですが、そうじゃない方々も多かった。ただ、非常に外圧というか外からの圧力が強ければ、やっぱり合わせていくだろうと。しかし、あらしが過ぎれば戻るということがかつてあったように思うんですね、ほかにも、大きな例はこれかなと思うんですが。
 そういうことを考えますと、今回についても、課レベルでどのぐらい、切って離れないぐらいの、単にひっつけるだけじゃなくて、要するに再編ですね。二つのものを全然違う線引きを行うことによって新たな課をつくるというようなことをしない限り、そのまま大くくりの中で昔からの課が残れば、パフォーマンスといいますか意図されたことは必ずしも実現されないことになるのではないだろうかというふうに思っております。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 真渕公述人にもう一つだけお伺いしたいんですが、真渕先生は大蔵省のここ数年来の動きをずっと関心事として見てこられて、現実に財政赤字がこれだけ膨れて、そして金融関係も、銀行行政、金融行政の問題も含めて今ここまで来ている状況の中で、いわゆる財金分離論があって、そして今の新たな財務省の設置という状況がある中で、現状の省庁再編における財務省の問題等についてどのような評価をされているのか、簡単にお聞かせをいただきたいと思います。

○公述人(真渕勝君) 私は、官民の役割分担の見直しという話を別にしまして、霞が関の中での機構改革は、政策パフォーマンスにはそれほど大きなインパクトはないであろうという予測を持っておるんです。ですが、やや例外なのが大蔵省であるというふうに私は考えてきておりました。そのために、今、福山委員から言及いただきました本を昔書いたことがございます。財政と金融の分離がなかったために財政赤字は巨大になったんだと、だから、これは大蔵省の目標を大蔵省の組織が裏切っているのだという議論をしたことがございます。この点では、組織と政策というのはかなりリンクしているなというふうに考えております。
   〔団長代理大島慶久君退席、団長着席〕
 今回の財金分離につきましては、もちろんパーフェクトなものではございませんが、やはり一定の成果であるというふうに私は肯定的に評価し、そのようにまた別の本を出したことがございます。そしてまた、今よく心配されておる金融監督庁につきましても、非常にモラールは高いと、いろんな事情があるというふうに伺っておりますが、非常にモラールは高いなと思っておりますので、現状においてはよくぞここまで来たものだというふうに評価しております。
 ただ、今後のことにつきましては、これもまたやってみなければわからないということは確かなんですが、一つだけやや気になっておりますのは、大蔵省が財務省という、中身も変わりますが名称変更がされると。ただ、英語名は変わるや変わらないやということで、英語名は変わらないというふうに聞いたことがあります。この点をちょっと大蔵省の役人さんとも話をして変わらないんだというふうに聞きましたが、「タイム」にはミニストリー・オブ・トレジャリーというふうに書いてありまして、どっちが本当なんだと思ったんですが、大蔵省の役人は変わらないというふうに言っておりました。これは非常に私はアナウンスメント効果の大きい問題であろうと思いますので、やるならやった方がいいんじゃないかというような感触は持っております。
 そのぐらいです。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 山本公述人にお伺いします。
 政策評価について大変興味深いお話をいただきました。今回、実は政策評価というのは一つの争点だと思うんですが、いわゆる国土交通省の問題、巨大な官庁ができ上がる、財政規模でいうと約十兆円、人数でいっても五万人ぐらいと。先ほど先生が、議会としての評価機能も別建てで必要だとおっしゃいましたが、これは国会だけではありません。国土交通省の地方整備局という大変巨大な、北海道開発庁から農林関係を引いたような、そういった地方整備局が全国のブロック単位でできてくるわけです。ここに対しては地方議会のチェックもない。そして、国会のチェックもある意味でいうと予算の審議だけという状況の中で、先ほど先生が言われたモニタリングの調査に対しても大変不安な状況の中で、いわんやプログラム評価等についてはまだまだ全然整備ができてないということに対して、私は実は大変不安に思っています。
 まして、新しくできる総務省が政策評価をしますが、これは横並び官庁で、あくまでも勧告のみということで、一体どれぐらい実質的に一つ一つの事業についてのチェックができるのかということに対して今回懸念をしておりまして、この辺について、先ほどの地方に対して巨大な地方整備局ができることに対するチェックのあり方、それから今申し上げました総務省自身の政策評価についてのあり方等について、もし何か御意見があればお聞かせをいただきたいと思います。

○公述人(山本清君) いわゆる国土交通省の巨大化した場合におきます政策評価のあり方につきましては、かねてから私は持論がありまして、ある雑誌等にも意見を開陳したわけでございますが、まずどういうことをやったらいいかといいますと、まさしくたくさんのプロジェクトを抱えておる、それについてひょっとすると恣意的な評価がされたり、あるいは箇所づけがされるおそれもあるということですから、あくまでもこれはたくさん予算を獲得したい、あるいはそれを執行したい、そういう利害と、それをチェックする機能というのは相反するわけでございますね。したがって、こういう相反する機能を同一の省内において完結するというのは、これはもう組織管理上非常にまずいわけでございますから、まさしくこの場合こそいわゆる審査庁というのを、八条かあるいは何条かは別にしまして、かなり独立的な審査庁を国土交通省あるいはその外局あるいは内閣府等においてつくると。この機関の審査庁というのは、基本的にはまさしく英国のエージェンシーに似たような自立的な組織であるべきであるわけです。
 したがって、少なくともこの場合の審査庁の役割と申しますのは、いわゆるエージェンシーには二つの役割があるわけです。
 エージェンシーの第一の役割というのは、なるべく自立性を与えて効率性を上げましょう、国民に対するサービスの質を上げましょうということです。余り余計な制約はしない方がいいという目的でエージェンシーになる場合が一つあります。
 もう一つは、余り日本では議論がされないんですが、いわゆる下克上といいますか、下の巨大組織が上を牛耳ってしまうということですね。部下が上司を乗っ取ってしまう。これはキャプチャリングということをよく言うんですが、組織論的には。そのキャプチャリングという現象がまさしく起こりかねないわけです。みずからの予算拡大行動がとられるおそれがある。
 したがって、それを避ける、あるいはそういうことをしていませんよということを堂々と巨大省がむしろアカウンタビリティーを果たす。そういう意味においても、いわゆる乗っ取りを回避するために権限を分離するということですね。それがやはり必要であろうというのは、これは私のかねてからの持論であるんですが、余り明確に書かないからよく世間に知れ渡っていないかもしれません。そういう新たな独立行政法人組織をつくるべきであるというのが、私の巨大官庁に対する恣意的な裁量を防止するための一つの提案でございます。
 それと総務省でございますが、総務省は今度行政監察局がいわゆる行政評価局となることなんですが、これは少しある意味においては役人がうまいことしたなという印象を素朴に思います。総務省の方に対して、別に私は特に利害関係ないんですけれども、総務省が行う政策評価というのは、多分いわゆる政策評価と独立行政法人評価委員会、これは合併の第三者的な委員会ができるそうなんですが、ああいった学識経験者を集めたようないわゆるパートタイマー的な組織をつくっても、これは機能しないと思うんですね。ですから、私は、その総務省の政策評価には期待はするんですが、どうも実効性に欠けるんじゃないかということを思います。
 そうすると、これは政策評価に当たっては国会でぜひとも、例えばいわゆる補助金の資格要件、適格要件、あるいは公共事業の場合の採択要件、あるいは社会福祉等におきますと介護保険等が今度導入されますが、そういった場合のいわゆる目標集団というのは本来どうあるべきかというそういった本来的な議論を、価値判断にかかわる議論を含めた議論をやはりしていただいて、国会の方で政策の枠組みをビルトインしていただきたいということをぜひともお願いしたいというのが私の意見でございます。

○福山哲郎君 滝口公述人にお伺いしたいことがあったんですが、時間になりましたので大変失礼いたしました。これで終わります。

 


 

第145国会  参議院  国土・環境委員会、経済・産業委員会連合審査会
1999年7月1日

○福山哲郎君 おはようございます。民主党・新緑風会の福山哲郎でございます。
 きょうは、PRTR法案について、まず民主党・新緑風会のトップバッターとして質問させていただきますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 今回、法制化されようとしているPRTR制度の原型というのは、先生方御案内のように、アメリカで八六年に制定をされました知る権利法に基づくTRI制度であると言われています。
 この制度というのは、今から十五年前、十二月二日の深夜に、インドのボパールで、ある工場の劇薬の漏えい事故が契機となって制定をされた。この事故自体というのは工場の保守要員の本当に簡単なミスだったんですが、何が悲劇だったかといいますと、この工場でどんなリスクを持った化学物質がつくられていて、そしてその非常事態にどう対応したらいいかといった情報が住民や、もっと言うと自治体の行政機関までが持っていなかった。そして州政府も知らなかったということで、結局朝までに二千五百人以上の周辺住民の方が亡くなったという大変大きな悲劇になりました。
 それを機会にアメリカでTRI制度、有害化学物質排出目録制度がつくられたわけです。もしその周辺住民が工場の実態を知っていたら、工場に対する住民の要求が強まって劇薬の使用量が減ったかもしれないし、工場側も保守設備をもっと充実させたかもしれない。事故に対しても十分な避難措置もとれたかもしれない。ところが、実態は行政にも住民にも知らされていなかったということで大惨事になったわけです。
 つい先月も、きょうは七月一日ですから先月になるんですが、六月五日には埼玉県の幸手市で、塩化ビニール原料や農業用の殺虫剤のスプレー缶二百五十万本が保管してあった工場が爆発をしました。ここにその新聞記事もあるわけですが、「倉庫爆発 火柱五十メートル」と。幸いけが人がなかったということですが、周辺の水田には爆発によってスプレー缶が散乱していたと報告されています。
 政府からもお話がありますように、毎年数千種類と言われる新しい化学物質が生み出されていまして、現在、日本国内だけで数万種類使われている。こういった化学物質によるリスクというのは年々高まっていると言えると思います。そういった意味で、このPRTR法案がこの連合審査で、またこの国会でできるということは私は大変評価をしていますし、いいことだと思います。
 そして、日本で化学物質がなくていいかというとそうではないですし、化学物質の利便性、有効性も否定をするものではありません。しかし、やはり日本全体に言えることですけれども、これはひょっとすると化学物質だけではないのかもしれませんが、一つ一つのリスクというものに対する無関心、それからリスクとどう向かい合うかということに対してもっと我々が国民も含めて感じていく必要があるのではないかというふうに思っています。そのためにも、衆議院で修正をされまして、公明党さんの修正案が出てきて私はさらによくなった法案だと思っていますが、ぜひこの参議院で議論を尽くした上で、さらに実効性のあるものに修正ができないかという観点の中で幾つか質問をさせていただきたいというふうに思います。ちょっと前置きが長くなりましたが、よろしくお願いします。
 まずは、公明党の修正の発議をされた先生にお伺いしたいというふうに思います。
 事業者による届け出情報の扱いについて、営業秘密の判断を求める情報は御案内のように主務大臣に直接行く、営業秘密以外のものに関しては都道府県知事を通じて主務大臣に行く。これは届け出窓口が都道府県になったわけですから事業者にとっては大変便利になった、いつも事業者にとって一番近い都道府県が窓口になったので便利になった。さらには、届け出の回収率も恐らくこれによってよくなるだろうということで私は大変評価をしております。私の認識はこういった形で評価をしているんですが、修正案の認識としてはこれでよろしいのでしょうか。また、公明党さんが都道府県を中に入れられた意図、そして自治体を入れられたのは、自治体に一体何を求めておられるのか等についてお答えいただきたいというふうに思います。

○衆議院議員(福留泰蔵君) 福山先生からは、事業者による届け出情報の扱いについて、私ども衆議院の修正点とその理由についてのお尋ねだろうと思います。
 政府原案におきましては、事業者の届け出情報の扱いにつきまして、排出量等の届け出は主務大臣に直接行うものとしていたところでございます。先生御指摘のとおりでございます。衆議院におきます委員会質疑を踏まえまして、事業者からの届け出につきまして、営業秘密に係る請求がある場合を除き都道府県知事を経由しなければならないものといたしました。そして、その際、都道府県知事は意見を付すことができるものとするとの修正を私ども行ったところでございます。
 届け出を都道府県知事経由といたしましたことによりまして、地域の中小企業の便宜や届け出の確保等の制度運営に当たりまして都道府県の役割が増大をいたします。そして、より主体的に都道府県がこのPRTR制度に参加することとなることを私どもとしては期待しているところでございます。
 こういった観点から、非常に有意義な修正であったと考えているところでございます。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 今おっしゃっていただいたように、私も大変有意義な修正だったというふうに思いますし、都道府県の主体的なかかわり、それから中小企業に対しての届け出の実効性の多分アップということで大変よかったというふうに思います。
 少し観点を変えます。これに関しては後でまた続いて質問させていただきますが、では指定事業者でございますが、政令で定めることになっていますが、指定事業者というのは、この制度で該当している事業者というのは届け出義務についてどのように知ることになるのでしょうか。また、その事業者に対して届け出をしろというような通知が行くのか。そこはどういった制度になっているのでしょうか。通産省、どうぞお答えをいただきたい。

○政府委員(河野博文君) お尋ねの点でございますけれども、PRTRの届け出の対象事業者という通知を国から個々の事業者の方々に行うということは実は考えてはおりませんけれども、法施行までに、法律の内容あるいは対象事業者の要件などにつきまして、地方自治体あるいは業界団体、または中小企業関係の団体などさまざまな機関の協力を得て、あらゆる機会をとらえて周知徹底を図っていくということを考えております。
 また、PRTR実施のための準備作業として今私どもが考えておりますことは、事業所・企業統計調査のリストで、基本的にはほとんどの企業が網羅されているリストでございますけれども、これをもとに対象事業者の把握調査を実施して、あらかじめ対象事業者の候補リストを作成するといったようなことも今後検討していかなければならないというふうに思っております。

○福山哲郎君 そうすると、基本的には個々の事業者には通知が行かないということで広報なり業界団体等、自治体を通じてということは、今候補対象リストをつくるのを検討されるとおっしゃいましたが、中小とかある業界に加わっていないようなところ、例えば中小の工場とか町工場とかは漏れる可能性はあるわけですね。

○政府委員(河野博文君) 先ほど申し上げたようなさまざまな努力で、対象となりますすべての事業者の方々にこの制度を御理解いただくように努力してまいりたいと思っております。

○福山哲郎君 ぜひそこは周知徹底をしないと、逆にフリーライドするところが出てくれば出てくるだけ、きちっとやった事業者は自分のところの排出量、移動量は出していると、それが表に出るわけですから、事業者にとってはちゃんとやればやるほど表に出てくる。それによって地域の住民等があらぬ疑い、危険性に対して騒ぐことによって、ちゃんとやっているところ、届け出をしているところが逆に被害をこうむるというような状況がないようにしないと、フリーライドして出さないところが逆に住民からのチェックを受けないというような、制度をつくったことが逆にマイナスになるようなことはぜひ避けていただきたいというふうに思いますので、そこの周知徹底等については本当に御努力をいただきたいと思います。
 さらに、先ほどから出てきています例の営業秘密に関してですが、これは衆議院の方でも御答弁をいただいたんですが、先ほど公明党の先生がおっしゃいましたように、営業秘密を希望する情報とそうでない情報の提出方法を分けた。我が国でこのPRTR制度が始まった場合に、一体営業秘密になる情報と営業秘密にならない情報の割合というのはどの程度になるのか。
 アメリカの例などもあると思いますし、またその営業秘密に対しては、法案の中にもありますが、どういった要件で営業秘密だということを主務大臣が判断するのかということについて、お答えをいただけますでしょうか。

○政府委員(河野博文君) まず、この法案におきます営業秘密の判断の要件でございます。
 これは不正競争防止法の営業秘密の要件に倣ったものでございますが、それを法律上三つの要件として明記いたしております。
 具体的に申し上げますと、まず秘密として管理していること。二番目に、生産方法その他事業活動に有用な技術上の情報であること。三番目に、公然と知られていないことでございまして、この三要件に照らしまして毎年度厳格に営業秘密の判断を行っていくということでございます。この三要件すべてに該当する場合に営業秘密として認められるということでございます。この営業秘密の判断基準は、先ほど申し上げましたように、諸外国の営業秘密に関する判断基準ともほぼ同様のものというふうに考えております。
 その同様の判断基準で判断を行っております欧米諸国についてのお尋ねでございますけれども、例えば米国におきましては、九五年の実績でございますけれども、提出数が七万三千件余りのうち、営業秘密として最終的に取り扱われましたものは十三件にすぎないという状況でございます。我が国においてはこれから制度が行われるわけでございますので、明確に予測することはなかなか難しいわけでございますけれども、我が国においても営業秘密の件数がそう多くなることはないというふうに考えているわけでございます。

○福山哲郎君 ということは、七万三千件のうちの十三件というと〇・一%以下ということでよろしいですね。
 ということは、我が国でも大体〇・一%以下ぐらいになるのではないかというふうに推定をされているというふうに判断してよろしいわけですね。

○政府委員(河野博文君) 制度の開始前でございますので精緻な数字をお答えすることはできないかと思いますけれども、先ほど御紹介したアメリカの例などに比べまして大きく離れることはないのではないかというふうに思っているところでございます。

○福山哲郎君 先ほど言われた、営業秘密として認める三要件がございました。主務大臣がそれぞれ判断をするわけですが、各主務大臣の中で確かにこの三要件は一定として、ただ所管の各省庁によって判断の基準なりが、この三要件である程度の一定の水準がそれぞれで確保できるのかどうかということについてはどのようにお考えでしょうか。

○政府委員(河野博文君) 一つの業種といいますか業態の中で営業秘密というものは意味を持つという側面がございますから、その業種の中で統一的な判断がまずなされなければならないと思います。その際に、国内はもとより国際的な競争環境の中で判断をしていくということも重要かと思います。
 また、主務大臣が複数にわたるといいますか、業種によって異なるということになりますけれども、この営業秘密の判断にかかわります三要件の適切な運用を図るためには、この法案をもし成立させていただければ、環境庁あるいは私どもが中心となりまして、事業所管官庁と営業秘密の判断にかかわる三要件などの適切な運用については、例えば連絡会を設けることなどして準備していきたいというふうに考えております。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 では、営業秘密が大体〇・一%以下だということになりますと、九九・九%ぐらいはほぼ開示をされるという前提でこのPRTR制度は成り立っている、そういうふうに今の御答弁で私は判断をさせていただきました。
 きょうはパネルをつくってまいりましたので、ちょっとこれを。(図表掲示)九九%以上のものが営業秘密ではない。営業秘密ではないものに関して言うと都道府県知事を経由する。営業秘密のものは、秘密事項ですから主務大臣に行くという形になります。
 今回は、この九九%以上を占める営業秘密以外のデータについて絞ってお尋ねさせていただきたいんですが、この九九%以上の情報というのは一度都道府県知事を経由します。経由をしてから主務大臣に行きます。営業秘密のこの白い部分はそのまま直接主務大臣に行きます。そうすると、この九九%以上のものというのは都道府県知事、主務大臣に行って、そこから環境庁さんと通産省さんに行くわけです。
 そうすると、この九九%以上の情報に対して主務大臣は一体どんな役割が想定をされて、具体的にどういった処理をされるおつもりなのか、お聞かせいただけますでしょうか。

○政府委員(河野博文君) 届け先につきましては、業種ごとの技術実態あるいは化学物質の取り扱いに精通した事業所管大臣あてに行うという仕組みを御提案しているわけでございます。
 事業所管大臣の具体的な役割といたしましては、届け出を経由することになった都道府県が事業所からの問い合わせを受けた場合、こういった問い合わせに対して対応をしていく、その際に工業プロセスですとかあるいは化学物質の取り扱いに関する事業所管省庁の専門的な立場からの対応を確保することがございます。
 また、御承知のように、このPRTR制度はかなりのものにつきまして推計マニュアルによりまして排出量を推計して届け出るということになるわけでございますけれども、事業者が排出量等を推計する上でこの推計マニュアルの適用方法などについて事業所管省庁が専門的知識を生かしながら適切に指導してまいるというようなことが考えられると思っております。

○福山哲郎君 今の政府委員の御答弁はまさにそのとおりで、事業所管庁が問い合わせに対していろいろ答えたり、マニュアルを渡したりということは私もわかっているつもりです。しかし、問題は、この上がってきた情報に対して、データに対して主務大臣がどうのこうのしないですね。主務大臣は事業所に対して、少なくとも事業所の主務官庁としていろんな指導ができたりマニュアルを配ったりはできるけれども、都道府県知事から主務大臣を経由して通産省と環境庁へ行くときには、この情報に対しては基本的に具体的には何も関与はないはずですね。

○政府委員(河野博文君) 主務大臣が受けまして、もちろん基本的には届け出でございますから受理をするわけでございますけれども、例えば同規模の事業者に比べて排出量の値が違っている、あるいは経年変化を見て従来と違う数字があるというようなことになった場合に、これは都道府県知事を経由する場合もありましょうし、あるいは場合によっては直接事業者に対して問い合わせをする等のことは当然考えられるわけでございます。

○福山哲郎君 確かにおっしゃるとおりなんですが、その場合には都道府県の窓口でやればいいわけです。つまり、都道府県の窓口で今おっしゃられた正確性の確保というのをしないことには意味がないわけです。逆に、都道府県の窓口が正確性の判断等ができない状況で、都道府県知事もそのままスルーして主務大臣に行くような状況なら、公明党さんの趣旨、都道府県が主体的にかかわれる役割というものを重要視しているし、営業所とのコミュニケーションの問題、届け出の比率が上がる問題、有効性の状況から都道府県知事を中にかませたという公明党さんの趣旨があるわけです。この修正案に対しては、先ほど申し上げたように私も大変評価をしている。
 そうすると、先ほど言った知事の段階で正確性に対しての確保ができるんだったら主務大臣はこのデータを持っている意味がなくて、そのままスルーして通産省と環境庁に行くなら、九九・九%の基本的には営業秘密でない情報が主務大臣を経由する意味合いがどこにあるのかを明確に御答弁いただきたいんです。

○政府委員(河野博文君) 都道府県の経由の際に都道府県が主体的にかかわっていただいて、例えば経年変化でございますとか地元で御存じの同規模の事業者との比較、こういったことについていろいろ参考になる意見を付していただけるということは今後考えられることだと思っておりますが、同時に主務大臣も専門的な知見を生かしながら、届け出られた数字について必要に応じ指導をし、あるいはある種のチェックをしていくということは主務大臣の仕事だというふうに思っております。
 衆議院で御修正いただきました内容も、主務大臣の努力と地方公共団体の努力が相まってPRTRの届け出の回収率といいますか正確性といいますか、そういったものを期していくということだというふうに私どもは理解しております。

○福山哲郎君 今のお話はまさにそのとおりなんですが、別にそれは通産省、環境庁へ行ってからだって主務大臣が判断できるじゃないですか。
 だって、このまま都道府県知事から通産省へ直接行って、営業秘密ではないわけですから、営業秘密について僕はどうのこうの言っているわけではありません。営業秘密ではないわけですから、そこの部分については直接環境庁、通産省に行った方がよっぽど都道府県もすっきりするし、都道府県にとってみれば、来た情報を各省庁別に分けてそれぞれの主務大臣に届ける方がよっぽど事業の仕事量としてもふえますし、ややこしい。そうしたら、環境庁、通産省にそのまま行って、主務大臣が例えばそこに重大な関心があったとか、その事業所に対して何か重大な問題があるという懸念があるときは、遠慮なく環境庁、通産省に状態を聞けばいいわけですから、別にここの部分を遮断しているわけでは決してないわけです。
 そこの意味合いについて、僕はここの部分は公明党さんの修正案を大変評価しつつも、結果としてここはもう一段踏み込んだ方がこの法案がさらによくなるのではないかと思っているんですが、もう一度御答弁いただけますか。

○政府委員(河野博文君) 先ほどお答え申し上げましたように、地方公共団体と主務大臣の努力が相まってこの制度を円滑に運営していきたいというふうに考えているわけでございます。また、情報の流れといたしましても、主務大臣経由で最終的な取りまとめ官庁であります環境庁と通産省に流れてくるというのは自然な流れだというふうに思っております。

○福山哲郎君 何も情報に対して手を加えないのに、そこを経由することが何が自然な流れなのか、もう一度御答弁いただけますか。

○政府委員(河野博文君) 先ほど申し上げましたように、その事業所管省の専門的な知見も生かしまして、経年変化等々のチェックは都道府県知事と同様に事業所管大臣でもいたすことになると思います。
 また、推計マニュアルの適用は、これはそれぞれの工業プロセスなどの実態を生かして推計方法をこれから定めていくことになると思いますけれども、その適用状況についても主務大臣が場合によっては指導し、あるいは出てきたデータについてもチェックをする、そしてできるだけ正確なものを環境庁長官と通産大臣に届け出ていくという仕組みが適切だというふうに考えているわけでございます。

○福山哲郎君 ですから、それはできるわけです、ここからこれでも十分。そして、先ほど言ったようにこの修正の趣旨は、都道府県知事に正確性を確保して、そこに対してやれという話ですから、確かにマニュアルとかでチェックをすることは必要かもしれません。それは必要だけれども、この段階でその情報に対して別に何らかの形の手を加えるわけではなくて、事前にマニュアルで指導をしたり、先ほど言われたようにできるだけ広報をきちっとしていくというお話をされているわけですから、都道府県のところでそういう正確性や今おっしゃられたことのチェックができなければ逆に意味がないわけです。
 これは修正の発議をされている公明党の先生に、その辺の趣旨がどのような状況であったのか、もしお答えをいただければありがたいと思います。

○衆議院議員(福留泰蔵君) 基本的に都道府県を経由して主務大臣に届け出ることと修正したわけでございますが、最終的に届け出先を一元化する修正は行わなかったというのが私どもの提案でございます。先生御指摘のことも十分理解するわけでございますが、今政府委員が答弁をした内容を私どもは理解しているつもりでございます。その上で、実は私どもの考え方として、このPRTR制度が私たちの環境を守るための、前進するための大いなる第一歩であるだろうと思っているところでございます。
 私どもの修正は、私ども市民の環境問題というものにこれからは住民と行政と企業が三者一体となって取り組んでいく、そのベースとなる制度ではないかというふうに思っております。そういう意味で、地域の環境問題というものに取り組むのは、やはり地方自治体が主体となってやっていかなければならない。そういった観点から、都道府県を窓口とすべきではないかということで修正を行ったところでございます。
 その上で、ただデータだけですと、政府案ですと主務大臣にそのデータの届け出を行った上で都道府県へそれを通知するという中身になっておりました。ですから、データの取り扱い自体は恐らく政府案でも取り扱うという意味においては同じ意味だったのでしょうけれども、届け出を地方自治体が受けるということによって主体的なかかわりがそこに出てくるだろうという意識でございます。
 あわせて、それを逆の言葉で申し上げれば、主務大臣というのはそれぞれの産業の育成という観点を持っているのだろうと思っております。これからの産業というのは、環境問題への対応なくして産業の育成はないだろうと思っておりますし、そういった観点から、今政府委員の答弁のとおり主務大臣と都道府県が一体となってそれぞれPRTR制度の推進を図っていくということは、ある意味で重要ではないか。一元化したデータを主務官庁が受け取るだけではなくして、届け出の段階からそこにかかわっていくということは意味があるのではないかと私どもも今受けとめているところでございます。
 しかしながら、今回の修正によって法案の検討事項における見直し期間が十年から七年に短縮されております。修正案提案者としても、この法案がこれからもよりよい形に進化していくということを期待しているものでございます。

○福山哲郎君 大変誠実にお答えいただきましてありがとうございました。僕は、何ら今のお話に対しては異論はございません。
 ただ、この法案の目的は、「事業者による化学物質の自主的な管理の改善を促進し、環境の保全上の支障を未然に防止する」ということで、最終的にデータは環境庁と通産省が持つわけです。それを否定しているわけではなくて、主務大臣を一々経由していることに対して、環境庁と通産省が持ったデータをほかの主務大臣に渡さないと与謝野大臣も真鍋長官も言われているわけではないわけですから、それは都道府県の立場で言えば一本化して渡した方が法案としては非常にすっきりするし、営業秘密について僕は否定をしているわけではないわけですけれども、この辺について環境庁長官はどう思われますか。

○国務大臣(真鍋賢二君) 初めて取り上げるPRTR法案でありますので、やはり都道府県の責任者と主務大臣との連携を図らなければならないし、また主務大臣によって科学的知見をいただかなければならないし、また交換しなければならないという観点から、そのような対応がなされたと思うわけであります。
 うまく運用していけば、この問題は将来的には先生がおっしゃるような点にまた配慮していかなければならないのではないだろうかと思うわけでありまして、都道府県からダイレクトに通産省と環境庁が受けるような体制でないというのはそういうゆえんじゃないだろうか、こう考えております。

○福山哲郎君 では、もう一つお伺いしますが、通産省と環境庁が持っているファイル記録事項の開示というのは、主務大臣が持っているところに情報公開法に基づいて資料請求、開示請求もできるでしょうし、これは恐らく通産省または環境庁にも請求ができるわけですね。
 つまり、個別事業所のデータに関しても、営業秘密ではない場合は、別にその主務大臣ではなくて環境庁さん、通産省さんにも開示請求はできるわけですね。

○政府委員(河野博文君) 御指摘のように、先ほどのような情報の流れでございますので、環境庁長官及び通産大臣はすべての個別事業所の排出量等のデータをファイル記録事項として保有しておりますので、その開示請求は個々の主務大臣以外に通産省または環境庁に対しても行うことができるものでございます。
 もちろん、個別事業所に係るデータの請求は、環境庁長官、通産大臣だけでなくて当該事業を所管する大臣に対しても行うことができます。

○福山哲郎君 そうなんですね。
 これは、例えば当該事業所の所管官庁のところだけで情報開示がされるんだったらまだよくわかるんですが、これは結局一本化された情報で、通産省と環境庁に情報開示請求しても同じデータが出てくるわけです。
 そうすると、僕は主務大臣を経由することの意味が余計よくわからなくて、これはもう言っていても切りがないですし、先ほど公明党の先生もそれから長官も、この法案は発展途上でよりいい方向にというお話がありますから、私はぜひこの参議院でこの部分については修正を含めてもう少し考えていただきたいなというふうに思います。
 では、ちょっと次の観点で行きます。
 例えばファイル記録事項に対して、きちっとした情報公開法に基づく手続で請求をされた場合に、その営業秘密以外のファイル記録事項について開示請求を拒否することはあるんでしょうか。

○政府委員(河野博文君) この法案におきましては、第十条の第一項におきまして、何人もファイル記録事項の開示の請求を行うことができると規定しております。
 同条第二項に基づいて開示請求が行われる限り、それを拒否することはないと思います。

○福山哲郎君 開示請求を拒否することはないんですね。
 ということは、先ほどからこだわっていますが、営業秘密は〇・数%で、九九%が営業秘密ではない情報で、主務大臣を経由するかどうかはもういいです、主務大臣を経由するかどうかは別にして、このファイル情報というのは開示請求を拒否することはないんですね。
 そうすると、拒否しないということは、すべてを開示するということです。その九九・九%についてはすべてを開示することです。つまり、その段階で役所が開示をするかしないかという判断をしないわけです、この情報に関しては。では、その判断をしないものなら全部開示できるわけですから、なぜわざわざ請求をさせて、なぜわざわざそこで手数料を取る必要があるのか。
 だって、もともと営業秘密は別にあるわけじゃないですか。九九%は、経由はどうであれ、環境庁と通産省に行って、このデータファイルというのは開示請求に対して拒否はしないと今答弁された。開示請求を拒否しないということは、すべてを開示するんです、この九九・九%は。
 そうしたら、そこで開示請求についての判断をしないわけです、請求したものに対しては全部出すわけですから。それに対して、何でわざわざ請求をさせるのか、何でわざわざ手数料を取るのかがよくわからないんですが、お答えをいただけますか。

○政府委員(河野博文君) この法案におきましては、PRTR制度の実施によりまして、事業者の皆さんによる化学物質の自主的な管理の改善を促進して、環境の保全上の支障の未然の防止を図るということを目的といたしますと同時に、事業者が主体的に国民の理解の増進を図るということによりまして化学物質管理に関する信頼性を高めていくということを目的としております。
 こうしたPRTR制度の趣旨を踏まえますと、化学物質の排出及び管理の状況について国民の皆さんの理解を深めることは、第一義的には事業者の皆さんの役割だというふうに思っております。事業者自身が創意工夫をしてみずからの責任で実施すべき性格のものではないかというふうに考えるところでございます。
 こうしたことから、この法案では事業者の取り組みを第一義として、国は、こうした事業者の皆さんが必ずしも十分にデータを開示できないような場合、それを補完するという立場から、個別事業所ごとのデータに関心を有してそれらを必要とする方々に対して確実に開示を行うというふうにしたところでございます。したがって、個別事業所のデータを国民からの請求によって開示する制度としたものでございます。
 なお、OECDあるいはEUにおきます環境情報の取り扱いの基本的な考え方でも、集計データのような一般情報については国が主体的に公表していく、一方で個別事業所のデータについては請求に応じて開示するという制度としていると承知しております。

○福山哲郎君 いや、事業所の自主的な開示を促したりそれに対しての啓蒙をいろいろやるということは事業者側の話であって、それを促すからこの開示請求を認め、開示請求でやるんだというのは、何か説明として全然よくわからないんです。
 だって、もともとこれは全部出す前提で開示請求に対して拒否をしない情報なわけですから、それを一々手数料を取ってわざわざ請求させる必然性とか合理的な理由がどこにあるのか。今の御答弁だと、申しわけないですけれども、それの合理的な理由には僕はならないと思うんです。
 だって、意味がないじゃないですか、もともと物を出すという前提で来ているわけですから。いかがですか。

○国務大臣(与謝野馨君) 今、先生が議論されている条文というのは、実は先般国会を通りました情報公開法の規定を打ち破る条文であるわけです。
 国の行政機関が持っております情報の中で開示をいたしますのは、いわゆる法人情報は実は除かれております。これは行政機関が持っております組織の共用文書、これは磁気テープとかそういうものも含まれておりますが、そういうものは出しますが、一般的に法人の情報は出さないという法律の構成になっております。
 今、河野局長から御答弁申し上げましたように、化学物質の移動に関する全国的な集計というものは当然公表いたしますし、恐らくそういうものは県別に統計をとって公表することも私はできるんだろうと思います。
 ただ、情報開示ということは、具体的にあの事業所は一体どうなっているんだ、自分は近くの住民なんだけれども、あの事業所に関しては少し心配なのできちんとした情報開示をしてくれと、こういう開示を請求するということがあって、当然それに対しては法律の建前上、営業秘密以外のことはお断りしないということになっておりますが、今先生がおっしゃっております情報開示を全部やれということは、全国にあります届け出た情報を全部明らかにするということですから、それは恐らく膨大な資料になるんだろうと思います。
 しかし、個別の情報開示請求に関しては、「何人も、」と書いてございますから、その県に住んでいる方でも地球の裏側に住んでいる方でもだれでも開示を請求できるということになっておりますから、実際に情報が請求された方に届くか届かないかということは、これは疑問を呈するまでもなく必ず届くシステムになっております。
 ですから、これをあらかじめ全部開示しろという御主張でありますと、それはやや非効率な部分もございまして、もちろん情報を集めました県別の集計とか国全体の集計というのは当然全体の統計としては公表いたしますけれども、請求ベースで個別の問題を開示していくというのは、情報公開法の考え方と多分軌を一にしているだろうと私は思っております。

○福山哲郎君 大臣の御答弁も僕は一部そうだと思いますが、逆に非効率だというレベルで言えば、全部出しちゃった方が国としては、例えば請求に対して一々手続もしないで済むし、どちらが非効率かというのは大変僕は議論の余地はあると思います。
 それともう一つ、先ほどの話ですが、事業所が情報データを都道府県知事に渡して、それが主務大臣から通産省に行って、都道府県知事と主務大臣へ戻し届け出を送る事務は、これは法定受託事務になりますね。それでよろしいですね。

○政府委員(河野博文君) 都道府県知事の経由の事務は法定受託事務でございます。

○福山哲郎君 環境庁、通産省がデータをまとめて、このファイルデータを都道府県知事に渡して、この都道府県知事が住民の請求に応じていろんな形で情報を開示していくのは、これは自治事務ですね。

○政府委員(河野博文君) 御指摘のように、法律案第八条におきまして都道府県にファイル記録事項を通知する旨規定しております。したがいまして、ファイル記録事項は都道府県知事に渡るわけでございますけれども、それの管理は基本的には自治事務と認識しております。

○福山哲郎君 そうすると、通産省と環境庁からファイルデータとして都道府県知事に行った。このデータに関しては、先ほどから申し上げているように営業秘密ではないわけです、原則として九九・九%は。ということは、例えばある都道府県が、この国から来たファイルデータに関しては自治事務だから、うちは職員も行革の時代だ、お金もかかる、請求に対して一々開示をして手数料を取るよりも、これは九九・九%営業秘密外のものだから、このファイルデータについては私の都道府県は全部開示しますよ、ファイルデータとして例えば都道府県のインターネット上で全部開示しますよという状況は自治事務ですから可能なわけです。そうすると、与謝野大臣がおっしゃられたように国は同じ情報です。これは間違いなく同じ情報なわけですけれども、請求ベースでそれに対して個別に出てきて、ある都道府県に行けば自治事務の中で同じ情報を無料でインターネットで公開するということがあり得るわけですね。

○政府委員(河野博文君) 先ほど大臣からも行政情報公開法との関係について御説明申し上げたところでございますけれども、この開示に要します費用は、例えば郵送代ですとかあるいは封筒代ですとか、こういったものは実費の範囲内で徴収することは妥当だと思いますし、またインターネットのような電子媒体を用いる場合でも、セキュリティー確保のためのシステムコストあるいはコンピューター使用料等の実費を負担していただくことが適当だというふうに考えております。これが国の考え方でございます。
 一方、先ほど御説明いたしましたように、ファイルは都道府県知事にお渡しをいたします。この管理は都道府県知事の自治事務でございますから、基本的にどう対応されるかは都道府県知事の御判断ということでございますけれども、先ほど来御説明しておりますようなPRTR制度の趣旨を都道府県知事にも十分御説明し、また都道府県知事がそれぞれの情報開示に要します費用等を御勘案の上、態度を決められるということだと思っております。

○福山哲郎君 今のは非常に遠回しの表現なんですが、要は可能だということでいいんですね。可能なんですね、先ほど私が申し上げたことは。

○政府委員(河野博文君) 都道府県におきましてもデータセキュリティーコスト等がかかるとは思いますので、その辺がどういう御判断になるかわかりませんが、それは不可能ではないと思います。

○福山哲郎君 これは、おまえが言うほどそんな単純な問題ではないと言われるかもしれませんが、要は基本的には営業秘密は確保されているわけです。それで、リスク管理をするためにこのPRTR法案があって、リスク的にこれは企業としては出してもいいよというものが出ているわけです。
 つまり、個別情報に対しての守らなければいけないような状況というのは別のところで営業秘密でしっかり確保されているということですから、逆に言うと、変な話ですけれども、ある都道府県が無料でインターネットで公開すれば行政側は手間も要らない、人件費もかからない。先ほどネット上のリスクの問題と言われましたが、先ほど言われたみたいに、これは基本的には営業秘密外のものですし、表に出ることを前提に事業者は出しているわけですから、そこに関しては手数料はかからない、行政も手間もかからない、人件費もかからない。
 そういう状況ですから、わざわざスタッフを配置して書類を請求ベースで書かせてそして情報を開示させるということは、それこそ与謝野大臣はこれからの日本の情報通信社会の先頭を切っておられる通産省の大臣でいらっしゃるわけですし、逆にこんな当たり前のように、絶対情報を開示します、拒否をしないようなものに対してインターネット上で公開もできないような状況の中で、これからの情報通信の社会の中でということに関して言うと、実はこのPRTR法案というのはチャンスではないか。行政というか、日本の政府がある一定の情報については国民にこれだけの開示をしているよと、今までのような知らしむべからずよらしむべしではなくて、我々としてはこういった形で、情報公開やインターネットの時代にこういった姿勢で政府が臨むんだということに対しては、私は営業秘密についてどうのこうの言っているわけではありません、九九・九%のものに対してこれはある意味で言うといいきっかけでありチャンスだというふうに思うんですが、与謝野大臣、どうお考えになられますか。

○国務大臣(与謝野馨君) 実は先生にお考えいただきたいのは、推定で二万社も関係してくるわけですから、少なくとも一社一枚は報告が来ているはずですから、一枚で二万ページ、五枚で十万ページ、十枚ですと二十万ページのものを開示するということです。それは、恐らく請求ベースで開示した方がはるかにコストもかからないでしょうし、こういうものの情報開示請求というのは、自分たちの町に化学工場がある、そこがどういう活動をしているのかということを考えたときに、それではあそこの化学工場の情報を聞いてみようということで、数百円のコピー代で恐らく請求できるんだろう。これの方がはるかに具体的であり、ピンポイントであり、効率的であるんだろうと思っています。
 二万ページから二十万ページとか、そういう単位のものをネット上で公開するということは、毎年これをデータとしてインプットしなきゃいけないわけですから、そう費用も安いわけではなく、また全部見なければわからないということよりも、自分の町のこの件ということを開示請求された方がはるかに具体的であり、効率的であるんだろうと私は思っております。

○福山哲郎君 実務上は、そういう議論が多分大臣のおっしゃるように成り立つと思います。しかし、これから先の時代というのはこういう状況がいっぱい起こってくるわけでして、それに対して一々全部この量は非効率だからといって、そこを工夫していただくのが逆に言うと僕は行政側のお仕事ではないかなというふうに思っております。
 おっしゃっていただく意味はよくわかります。よくわかりますが、これはシステムとして可能ですし、先ほど政府委員の方もおっしゃられたように、ある都道府県はおれは開示するよと言えば開示できるわけで、それに対して国はやめろと言う権限もないわけですね。ところが、国は有料だという話で、国は余りにも膨大な量だから都道府県はまあいいという状況になったときに、これは実務的には多分大臣のおっしゃるとおりだと思います。しかし、もう一歩進んだ判断をこれに対していただきたいというのが私の今の考えでございまして、そこは御理解をいただきたいと思います。
 そうすると、今の話の中で、先ほどの話の続きで戻ってきますが、自治体の届け出窓口、事業者が自治体にデータを届けるときに、自治体の窓口はどこに行くんでしょうか。
 先ほどの話ですと、主務大臣と都道府県の基本的なやりとりの中で、お互いが連絡をとり合うことによって、正確性やいろんなものを担保したいとおっしゃるとなれば、都道府県の窓口はその事業所の所轄の窓口になって、事業所はそれぞれの部署にデータを届けなければいけなくなって、これは都道府県の業務としては大変煩雑な業務なんですが、これに関してはいかがお考えですか。

○政府委員(岡田康彦君) お答え申し上げます。
 都道府県内部における事務分担につきましては、それぞれの都道府県において決定されるべき事項だと考えております。
 もちろん、一般的には各業種に属する事業所の存在状況であるとか事業実態は事業所管部局がよくわかっているわけです、そっちが強いと。一方で、また特定の化学物質の排出状況や地域における環境の状況については環境部局がそれぞれ知見を有していると、こんなことがございまして、どこでどうするかということについては、各都道府県において適切に経由窓口を決定していただくことを期待しているところでございまして、具体的に窓口を国がどうしろこうしろというようなことを指示するようなことは考えておりません。

○福山哲郎君 そうすると、僕は揚げ足をとるわけではないんですが、先ほどおっしゃられた主務大臣と都道府県がお互いが一体となってという前提で考えれば、それぞれ個別の事業所は担当の都道府県の窓口にデータを持ってこいという話になります。しかし、今の岡田局長のお話によれば、それぞれの地方自治体にゆだねると。
 しかし、私は、先ほど申し上げた都道府県を一回経由することの意味、公明党さんが修正をされた意味を考えても、各地域の事業所がややこしくないようにすることを考えても、都道府県の窓口は、環境部なら環境部、商工部なら商工部でも結構ですが、一本化をした方がより効率的だと考えられます。
 つまり、今申し上げたように、自治体と主務大臣の関係を考えれば全部ばらばら。岡田局長の話を伺うと、自治体にゆだねる。私は、これは環境の保全に資するための法律だと考えて、もしくは将来的には一本化して環境庁や通産省に行くと考えれば、環境部や商工部に行った方がより効率的だと考える。これは、はっきり言ってこれぐらい考え方が異なるわけです。
 これを都道府県に任せるという話は、ある意味で言うと非常に乱暴な話でございまして、都道府県の事務も含めて大変煩雑になる。これについて、通産省はどのようにお考えでしょうか。

○政府委員(河野博文君) 環境庁からも御答弁がございましたように、私どもの考え方も都道府県の御判断にゆだねたいというふうに思っております。私どもの対応は、事業所管省庁も巻き込んで政府全体としてこの問題に取り組むという姿勢をるる御説明しておるわけでございます。
 都道府県におきましても、そういった都道府県のさまざまな部局が一致協力してこの制度の運営に当たる、これもあり得る一つの考え方かと思います。ただ、一方において、都道府県におきましてもそれぞれの部局の人員あるいは専門的な知識等々についてばらつきもあろうかと思いますので、そういった点も全部踏まえて都道府県知事の御判断にゆだねるというのが私どもの考え方でございます。

○福山哲郎君 そうするとまたわからなくなるんです。
 先ほど、都道府県の正確性は担保したいとおっしゃるわけです。都道府県で集めた情報について、事業者の出したデータについての正確性を担保すると。その正確性を確保するには一体どうやったらいいのかと考えたときに、窓口に関しては各自治体で自由に決めなさいと。ある考え方もあればある考え方もあると。そういう状況の中で、どうやって都道府県の実務者レベルの話で見たときに、事業所から出てくるものに対する正確性を本当に担保するのか。
 先ほど、それを主務大臣が指導したいから主務大臣を経由するんだとおっしゃったけれども、実際受け取る窓口に対しては自由にやりなさいと、いろんな考え方がありますと。では、どうやってその正確性を担保するんだということに対してはどのように説明されますか。

○政府委員(河野博文君) 都道府県の御判断でどのような部局を窓口にされたにせよ、主務大臣としてその部局と協力をしながら、先ほど申し上げましたように都道府県知事のある種のチェックといいますか検討、そして主務大臣の知見を生かした検討、これらが相互に補完し合いながらこの制度を円滑に運用できるようにしてまいりたいというふうに考えております。

○福山哲郎君 そうすると、都道府県はばらばらで部署を決めた場合には、それぞれ主務大臣はばらばらに対応するということになるわけですね、具体的には。

○政府委員(河野博文君) これは都道府県での御判断でありますけれども、それぞれお決めになった担当部局と私どもは全面的に協力してまいりたいと考えております。

○福山哲郎君 もう時間がありません。実はあと五問ぐらいお伺いしたいことがあるんですが、もう私のいただいた時間がないのでそろそろやめにしたいと思いますが、私は冒頭申し上げたように、この法案について否定的に思っているわけではありません。評価をしています。さらには、公明党さんが御苦労されて修正をされたことに関しても、私は実は大変評価をしている人間だと思っています。
 しかし、修正をしていただいたからには、逆に冒頭申し上げたように、この法律案をもう少し実効性を高めていきたい。もしこの良識の府と言われる参議院で、さらにこの法案をよりよくするためには、先ほど申し上げた主務大臣を経由することの合理性の問題、それから今の都道府県の窓口をどのような形にするのかを国があなたのところに任せますよみたいな話の中で言われると、もともとの前提の話がなかなか説得性がなくなるような問題、そのほかにもあるんですが、こういった問題をぜひこの参議院の連合審査、また行われるこの法案の審議に際して、より実効性のある修正を何とか委員の皆さんの御賛同をいただいてできることを切にお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。(拍手)