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第143国会  参議院  予算委員会  1998年12月10日

○福山哲郎君 民主党・新緑風会の福山哲郎でございます。初めて予算委員会で質疑に立たせていただいております。総理を初め全閣僚の先生方を前にやや緊張しておりますので、どうかよろしくお願い申し上げます。
 まず、きのうの予算委員会で石川委員も少しお触れになられましたけれども、今回の緊急経済対策について、NHKの世論調査によりますと約七二%の人が期待できないと答えられています。そして、その理由として焼き直しにすぎないとか個人消費をふやす対策が少ないといった理由が挙げられています。また、朝日新聞の世論調査によっても七六%の人が期待できないと答えられています。
 せっかくの十七兆円を超える緊急経済対策が、消費マインドどころか国民のマインドも完全に政策に対して冷え切ってしまっていることに対して私は大変残念に思っておりまして、何で政策に対する国民のマインドが冷え切っているのかということに対しての感想と原因を総理並びに経済企画庁長官にお聞かせいただきたいと思います。

○国務大臣(小渕恵三君) 私は、政権発足以来思い切った施策をかなり果断に決定し、かつ実行してきたつもりであります。さらに、今般、総事業費規模にして十七兆円を超え、恒久的減税まで含めますれば二十兆円を大きく上回る規模の緊急経済対策を取りまとめたところであります。これを受けて編成され本国会に提出された第三次補正予算は、国及び地方の財政負担が十兆円を超える規模のものとなっております。本対策を初めとする思い切った諸施策を果断かつ強力に推進することによりまして、昨日も御説明申し上げましたが、この不況の環を断ち切り、平成十一年度には我が国経済をはっきりしたプラス成長に転換させ、平成十二年度までに経済再生を図るよう、内閣の命運をかけて努力をいたしていく決意でございます。
 こうした取り組みを通じまして、政府が国民から十分な信頼を得られるよう最善の努力をしてまいりたいと思っておりますが、今御指摘もありましたし、昨日も世論調査の結果をいろいろお示しいただきました。まことに私自身残念でありますと同時に、反省もいたさなきゃならぬと思っておりますが、今回のこの緊急経済対策の規模自体も極めて大きいものでありますし、また現実には税制改正、すなわち恒久的減税につきましては来年の通常国会で国会の御審議を得たいとは思っておりますが、しかしこれだけの税制改正を行うということは、私は近来ないことではなかったかと思っております。
 もちろん、所得課税あるいは法人課税も引き下げてはまいりました。また、昨年は特別減税という形で四兆円もいたしてまいりましたが、今後恒久的なこういう減税が行われていくということでありますれば、明年度でも所得課税につきましても四兆円超になっていくわけでございまして、そういう意味では政治としてといいますか、政府としてなすべきことにつきましてはかなり積極的に対処してきておるというふうに思っておりまして、こうしたことが国民の意識の中でなかなか受け入れがたいものを持っておるということにつきましては、我々も改めてその原因その他につきまして考慮しなきゃならぬと思っておりますが、なかなか今日の不況の状況というものが、年来のいわゆる物をつくれば物が売れるという、そういうふうに消費が伸びてくる状況でない中での不況対策というものの難しさを実は実感しつつ対処いたしておるわけでございまして、そういったことを考えながら、さらによりよき政策が生まれるものでありますれば、我々としてもこれは十分謙虚に受けとめていかなければなりません。
 何はともあれ、この状況を乗り越えるための三次補正を含めました今回の対策というものにつきましてぜひ国民の御理解を得たいと思っておりますが、背景とするところは、何といっても金融システムの安定ということにつきまして、この問題に対する対処についてまだ終局的解決に相至らないという状況の中で、これが引き起こしてきております不動産を初めとしての活性化その他が行われていないという状況の中で、非常に国民としてはある意味の不安感、将来に対する不安感、こういうものが払拭されない中でございますので、御指摘していただいたような数字に相なっているんだろうと思います。
 重ねてでありますが、あらゆる手段を講じて可能な限りこの政策を遂行することによりまして、こうした国民の期待感に全力で努力をいたしていきたいというふうに考えておる次第でございます。

○国務大臣(堺屋太一君) 対策の内容等につきましては総理からおおよそ答弁がございましたので、御質問のございましたなぜ十数%しか信じている人がいないのか、七割の人がだめだとおっしゃっているのか、この点に絞ってお答えさせていただきます。
 この理由は三つあると思います。
 それは、数次にわたって対策をやってまいりました。そして総額八十兆にも及ぶような政策をとりましたが、これが思ったほどの、期待したほどの効果を上げていない、だから今度もだめだろう、最初からそういうような感じで受けとめられるという点が第一だろうと思います。
 二番目といたしましては、第一次補正予算等を発表いたしましてから実行するまでにかなり時間がかかる。これは、地方議会も通していただいて、いろいろと手続その他が要りますから、もう一つ即効性がない。だから第一次が、この六月に決めていただいたのがまだ出ていないような状況でございますので、今回もその効果はどうだろうかと疑問に思う人が多いということでございましょう。
 それから三つ目には、やはり現在の不況というのが相当深い状況にあって、オピニオンリーダーとか企業の経営者とかそういった方が非常に冷え込んでいて、どちらかというと、語弊はあるかもしれませんが、余り効果がない、だめだと言った方が流行のような傾向が出ておりまして、何となく批判的に物を見たがる。そういう評価の点でいいますと、非常にそういったもので損をしているという感じがいたします。
 我々の方といたしましても、もう少しやっぱり、私も最大限の努力をしていろいろテレビその他で御説明申し上げておりますけれども、このムード全体を動かすには、情報の多い世の中でございますから、あらゆる手段で国民の方々に理解をいただくという努力をこれからももっともっとやっていく。そして、これが実効が上がったときに、やはり我々の言っていることと現実とを合わせて見てもらえばムードが変わってくるんじゃないか。
 これからも努力したいと思っております。

○福山哲郎君 長官には大変誠実にお答えをいただいたと思います。
 ただ、長官の三つの理由というのは、恐らく私たちがこの補正予算に対して疑問を呈している点とまさに一緒で、これまでの八十兆円が効果を上げていない、では次が上げられる保証がどこにあるのか。それから時間がかかり過ぎるということも、昨日の予算委員会で所得税減税が十二月の年末調整まで、向こうまで行ってしまうということで、これも時間がかかる。では、今回の補正が六月の補正とは違って早く執行できるのかという保証もどこにもない。不況感が強いということも、胎動はあるかもしれませんけれども、実は現実の数値では不況感はかなり強い。ということは、長官が今まさにこの補正がわからないということをみずからお認めになったように私は受けとめるのですが、いかがでしょうか。

○国務大臣(堺屋太一君) 効果がないとは全く思っておりませんが、そういう事実はやはりあります。だから、ある程度のタイムラグを置いて、例えばこの九月、十月から地方でも公共事業が出てまいりまして、やはり雇用はふえ、ちょっと活気づいてきたというようなことがございます。そういったことが一次補正、三次補正と累積していきますと、それが重なって必ず効果が上がると思います。
 マスコミも最近ちょっと理解してくれたのか、私が胎動が見られると言ったら袋だたきになるかと思ったら、まあ相当批判もありますが、賛成してくれるところもございまして、ちょっと変わってきているのじゃないかと思っております。さらにもう少しこの内容に踏み込んで御説明できるような機会をふやして、皆様方の御理解と世の中の動きを明るい方向に変えていきたいと思っております。

○福山哲郎君 総理は、何で国民のマインドが冷えているのか、政策に対してのマインドが冷えているのかという私の質問に余りお答えをいただかなかったような気がするんですが、長官とほぼ御意見は一緒だというふうに判断してよろしいのでしょうか。

○国務大臣(小渕恵三君) 企画庁長官を信頼いたしております。

○福山哲郎君 わかりました。
 では、次に行きます。
 そのようなお話の中で、実は政府の経済見通しの信憑性という大変大きな問題が出ていると僕は思っています。平成十年度の経済見通しに対しまして、当初のプラス一・九%からマイナス一・八%に十月に下方修正をされました。これはかなり大幅な下方修正だと思うんですが、きのうの予算委員会でも、長官はそのマイナス一・八%もかなりしんどいという御答弁をされたと思います。
 しかし、この下方修正、外れるのがいいのか悪いのか、当たるのがあながちいいかどうかは別にして、これは過去においても、平成四年度三・五%の見通しだったものが実績〇・七%、平成五年度三・三%の見通しで実績〇・三%、平成六年度二・四%の見通しで実績〇・六%、そして平成九年度に関しては一・九%プラスがマイナス〇・四%に今なろうとしています。そして、今回の平成十年度で一・九%がマイナスの一・八、またプラス・マイナス二〇%と長官は言われている。
 これは、単年度における経済情勢が変化をしたとか、見通しが多少甘かったとかいう御答弁がよくあるんですが、それを超えて、もうそういった状況で説明できるものではなくて、経済見通しのあり方自身の問題が僕は問われているような気がするんですが、長官はいかがお考えですか。

○国務大臣(堺屋太一君) 経済企画庁の見通しと実績を見ますと、実績の方が高かったのは、平成になってから見ますと、平成元年から平成二年などは上回っておりますし、平成七年、八年も予想を上回る実績を示しております。それに比べまして、五年、六年は見通しが三・三なのにマイナス〇・四になったり、それから平成六年が二・四だったのがプラスの〇・六だったり、かなり下向いております。
 どうもこれを見ますと、経済企画庁というのは大体同じような常識的な線を出していて、経済の変動に対して、上がるときは下を出しているし下がるときは上を出しているというような感じがいたします。
 今回でございますが、きのうの予算委員会で申したのはややしんどいと申し上げたので、非常にしんどいと言ったのではございません。それから、プラス・マイナス二〇%じゃなしに、二〇%というのは一・八の二〇%だったんですが、その範囲内だ、こういう感じを申し上げたのでございますが、この見通しはあるモデルをつくって見通しするわけです。そういう意味では、非常に科学的というか、数字がモデルできちんと出てきます。
 モデルで計算するのと勘でやるのとどっちが当たるかというと、どうも実績は勘の方が当たっておるんですね。これは、モデルの計算というのはある程度機械的にやっているわけなのでございまして、そういう点ではこれが、レオンチェフ以来学問的には積み上げているんですが、当たる確率がどうかということについてはもう少し学問的に進歩する必要があるんじゃないかと思いますが、世界的に今この経済モデルをつくってそういうやり方をしているということでございます。

○福山哲郎君 ですから、そのモデルの信頼性等が大変問題だと思っているんです。
 一つ、平成十年八月十一日の参議院の本会議で長官は、政府の経済見通しというのは、経済運営に当たっての政府の基本的な態度のもとをなします経済の望ましい姿、目標値を描いた部分があるから、当たり外れの問題ではない部分も実はありますという御答弁をされているんですけれども、そうすると、望ましい姿とか目標値を経済見通しに入れておられるということは、先ほど言われた科学的な理論値以外の部分の水増しなり、恣意的なものなのかがこの見通しには含まれていると考えてよろしいわけですね。

○国務大臣(堺屋太一君) それぞれのときに要素をとるんですね。その要素のとり方は、なるべく客観的にとっているつもりでございますが、やはりそこに希望的といいますか目標値的なものが入ってまいります。したがって、科学的な箱の中に、機械の中に入れる材料のところで、コンピューターに入れる材料のところでそういう希望的判断が混入することがしばしばあるようでございます。
 今回、我々、マイナス一・八から出しましたものからはなるべく、なるべくじゃなしにそういうことをしないで、非常に客観的にやろうじゃないかということでやっております。

○福山哲郎君 私は、ことしのがマイナス一・八でとどまるかどうかという議論をしているのではなくて、こういった状況で、見通しを出せば下方修正、見通しを出せば下方修正する中で政府の政策が発表されても、結局また同じだろうという不信感、オオカミ少年のような状況になっているのではないかというふうに思っております。このモデル自身の考え方、それから先ほど言われたみたいにいろんな要素が入るということは恣意的な状況も加わる可能性があるわけですから、そういう状況の中で経済見通しの発表の仕方、訂正の仕方、それからモデルのもう一度の再検討等を、長官は就任のときに早く発表することに対して大変果断に対応されたというふうに思うんですけれども、この経済見通しについて少し再検討を願いたいと私は思っているんですが、いかがでしょうか。

○国務大臣(堺屋太一君) お説のとおり、これから正確にやろうということにいたしまして、それであえて十四年ぶりに修正をいたしまして、マイナス一・八というのはこれは正確にやりました。ややしんどいかなというようなことを言っておりますが、ほぼ、ほぼといいますか、全くそういう思惑なしに計算をしてみた結果でございます。
 これを訂正するのは大変珍しいことでございましたけれども、来年度も可能な限り、人知の及ぶ限り正確なものを出したいと考えております。

○福山哲郎君 いや、そうしたら来年度は全く見通しとかを入れないで科学的にきちっと出せば、そのマイナス一・八と同じような数値ですから、別に人知の限り努力されなくても、そのモデルに数字を入れれば客観的な数字は出てくるんじゃないですか。

○国務大臣(堺屋太一君) 全部が数字どおりになるとは限らない、数字があると限らないんですね。例えば輸出市場というのを考えますと、客観的な数字がないから、アメリカはどうだろうか東南アジアはどうだろうかというところになりますと、やっぱりいろんな幅がありまして、そういうものを利用、考えつくところがあるわけです。
 ことしの見通しの非常に誤ったところは、アジア市場が、去年の九月までのデータで入れておりますから、こんなに悪くなると思わなかったというようなことが入っておるわけです。それを割合楽観の方をとっていった結果なんですが、これからは、今度はそういうところもありますけれども、なるべく衆知を集めて客観的な数字を入れていこう、こう考えておるわけです。

○福山哲郎君 実は本題は次からでして、では総理にお伺いをしたいんですが、一・九%からマイナス二・二%、なるべく客観的にマイナス二・二%なりマイナス一・八%に下方修正した平成十年度の予算がスタートしたときは、スタートしたというか、概算要求の時期というのは、十一月二十八日の国会で今回凍結されようとしている財革法が通った時期なわけです。ということは、平成十年度の経済見通しをつくるときには平成十年度の当初予算を前提として経済見通しは立てられているわけですね。当時入閣をされておられた総理に。では長官でも結構です。

○国務大臣(堺屋太一君) もちろんその時点で編成されている予算を前提として立てております。

○福山哲郎君 もう一度確認します。
 そうしたら、財革法で当時縛りをある程度かけられた状況の当初予算の中で一・九%という数字が出たということですね。

○国務大臣(堺屋太一君) そのとおりでございます。

○福山哲郎君 そうすると、平成十年度当初予算は七十七兆円、一般歳出四十四兆五千億円で一・九%というふうに発表されたわけです。ところが実際は、橋本内閣のときに所得税減税計四兆円、四月に一次補正の十六兆六千五百億円、そして今回の三次補正と。今回の三次補正は期ずれで来期に回ることも多くあると思いますが、ということは、四月の尾身長官も経済政策発表のときにこれで一・九%が達成できると堂々と言われているわけですけれども、ベースが違うわけです。当初予算の財革法で縛りがかかった予算で一・九だと言っていたのが、四月に十六兆円ぶち込んで、そして三次補正をやって、それでなおかつマイナス一・八という話に今なっているわけです。
 ということは、単純に考えれば、一・九%成長からマイナス一・八になるわけですから、プラス・マイナス、マイナス三・七誤差が出たという話になりますが、実はその途中に一次補正も三次補正も入れているということは、全くこれはでたらめな根拠、数字で、ベースが違うということですね。

○国務大臣(堺屋太一君) ベースが違うというか、前提が非常に間違っておりました。これははっきり認めた方がいいと思います。
 それはどこが違ったかというと、十一月に破綻があったんですが、このモデルには金融問題に対する破綻という影響が全く入っていなかった。したがって、その後の貸し渋りとかそういうことも入っていなかった。それから、アジアの状態に対しても非常に甘い見方をしておりまして、既にこのモデルをつくるときにはアジア経済は下落していたんですが、それも非常に浅く見ていた。そういうような金融破綻とかアジア破綻というのは過去になかったものですから、その辺がかなり違った。私も後でつくった前提条件を見せていただきまして、今から見ると非常に甘かったという感じがいたします。
 当時、やはり経済企画庁だけではなしに各民間のエコノミストなどもかなりその点は間違えていたようでございまして、最近にない激変があったからということだと思います。

○福山哲郎君 そうすると、先ほど僕は四年、五年、六年、九年も大外れというお話をしましたけれども、外れたときも緊急経済対策を打っているわけですよね。ということは、全部当初予算で見通しを立てて、これはまずい、大幅にずれそうだ、そこで経済対策として補正をどんどん組んで、そこのベースで一・九%、いや目標値に近づいたとか目標値に近づいていないとかいう議論をしていること自体僕は非常にナンセンスというか、ベースが違う、前提が違うからその議論はちょっと、それがマスコミに出ること自体非常にナンセンスで納得ができないんですが、いかがでしょうか。

○国務大臣(堺屋太一君) 経済見通しというのは大変難しい面がございまして、当たり外れいろいろあります。必ずしも上を言っているばかりでございませんで、実際よりも低いことがあるんですが、どうしてもやはりいいときに見通すと高い数字を出す、それが発表されて実際のときには経済の波が沈んでいて差ができる、悪いときに発表すると低く出すから、そのときには景気が回復している。こういう循環の繰り返しで、現在に引っ張られる人間の弱さがあらわれているんじゃないかという気がいたします。
 だから、これからはなるべくそういうようなことのないように努力したいと考えておりますが、これは当たり率でいいますと企画庁は特に悪いわけではございませんで、どこのエコノミストでも同じぐらいのことをやっているようでございます。

○福山哲郎君 そうおっしゃいますと、大幅に外れることもいろんな状況であるということはわかるんですが、この前提で、いろんな形の予測によってマスコミにこういう字が躍って、外れたとか長官が修正を発表したとかということで国民に対しての不信感を招き、先ほど言われたみたいに政策に対する国民との関係、信頼性、要は政府との信頼関係の中でこの経済見通しというものの存在の意義とか、何でこれをやる必要があるのかということを根本的に考え直す必要があるのではないかと私は思っているんですが、いかがでしょうか。

○国務大臣(堺屋太一君) 根本的にということはともかくといたしまして、より客観的に、より正確に出すようにしたいと思っております。あえて十四年ぶりに一・九をマイナス一・八に修正させていただいたのはそのためでございまして、これまで上方修正はございましたが、下方修正というのは十八年間なかったことをあえてさせていただいたのはまさにそのために、国民の方々に正確な予測をするんだという信頼を得るためでございます。だから、就任以来かなり日本の経済状況の厳しさを日本列島総不況などという言葉を使いまして申し上げてきたのも、企画庁として可能な限り正確な経済情報を国民の方々に与えようという私の考え方からあえてやらせていただいたことでございます。

○福山哲郎君 これは話を続けると切りがないのでちょっと話を変えますが、今度は大蔵大臣にお伺いしたいと思います。
 さきの臨時国会で十五カ月型の予算編成というような、あれは正式には十五カ月型では組めないと思うんですが、そういうイメージで断続的に景気に対してプラスになるような編成を十五カ月予算で組みたいというようなことを再三おっしゃられたと思うんです。今国会、補正を組まれましたが、十二月に臨時国会が開かれたということですが、考え方という意味では十五カ月編成ということを大蔵大臣は今維持をされているのかどうか、お聞かせください。

○国務大臣(宮澤喜一君) 維持をいたしております。したがいまして、四兆円の特別枠を十月までの概算要求に特例で引き延ばしまして、それをかなりいただいてこの補正に取り組んでおりますけれども、なお次に繰り越すものもございまして、私は、来年度の経済見通しのお話はいろいろございましたが、今年度の中で最後の四半期一―三、十―十二は今歩いておりますので、一―三というところが非常に問題だろうと思っておりまして、これがいろいろ切れかかるときでございますから、それが切れないようにということも考えながら十五カ月ということをやらせていただきたいと思っているわけです。

○福山哲郎君 ということは、考え方としては維持しているというふうにおっしゃられたと思うんですが、そうすると、今回一般会計概算要求が出ておりまして、八十九兆九千六百八十三億という形で一般概算要求が出ています。そして、その中の一般歳出予算としては四十九兆四千百七十六億で平成十一年度の概算要求が出ているんです。そうすると、十五カ月予算ということを考え方として維持するとなると、今回の本補正予算の一般歳出額は、この平成十一年度の概算要求の四十九兆から差し引いた額が来年度の一般歳出というイメージになるわけですけれども、それでよろしいですか。

○政府委員(涌井洋治君) お答え申し上げます。
 今回の補正予算で計上しております四兆円の景気対策枠の中で、三兆五千億円を補正予算、それから五千億円を来年度当初という考え方で、十五カ月予算という考え方のもとに計上しているところでございます。

○福山哲郎君 済みません、最後の部分をもう一回言ってください、三兆五千億の後。

○政府委員(涌井洋治君) 四兆円の景気対策枠につきましては、概算要求の段階では、概算要求ですからこれは考え方としては十一年度当初予算の要求枠という考え方であるわけですが、その中で、十五カ月予算ということで、できるだけ一―三月あるいは来年度の上半期の執行を考えまして、そのうち三兆五千億円を前倒しして今回の第三次補正に計上し、五千億円を来年度当初予算に上積みするという考え方でございます。

○福山哲郎君 そうしたら、四十九兆四千百七十六億円の一般概算要求のうちの三兆五千億をイメージとしては引いた形という形になるんですね。

○政府委員(涌井洋治君) 考え方としてはそういう考え方でございます。

○福山哲郎君 そうすると、来年度の本予算の一般歳出は約四十六兆円になるわけです。十年度の本予算、昨年の本予算は四十四兆五千三百六十二億で、財革法の縛りのかかった緊縮予算を組まれたわけです。今のお話で、概算要求から三兆五千億円、今回の補正の分は十五カ月予算だという考え方で引きますと、今お話しありましたように約四十六兆円です。そうすると、昨年の本予算の一般歳出とほとんど額が変わらなくなって、来年度の当初予算は非常に緊縮型という形になるんですが、これは景気に対して影響はないんでしょうか、大蔵大臣。

○政府委員(涌井洋治君) お答え申し上げます。
 四兆円の枠のうち三兆五千億円を今回の第三次補正に前倒し計上して御審議をお願いしておりますのは、考え方といたしましては、まず、春の一次補正の執行がこの九月、十月から本格的に、これはまさに契約が始まったところでございます。ですから、当初予算と一次補正の執行がこの十二月から来年の一―三月にかけて行われると。
 それから、四兆円を来年度の当初予算に計上いたしますと、当初予算の執行となりますと、実際に契約は六月とか七月とか八月になってしまうわけでございます。そうしますと、来年度の上半期の経済に対する悪影響を考えまして、むしろ三次補正にお願いいたしまして、一―三月にできるだけ契約していただいて、その執行が来年度の上半期に動くように、それで切れ目ない予算執行が行われるようにという考え方でございます。これが十五カ月予算という考え方でございます。

○福山哲郎君 そうすると、最初に戻りますが、当初、平成十年度四十四兆円の財革法で縛られた緊縮型の予算を組んで、それで一・九だと言ったものが、全くでたらめになったわけですよね、先ほどの流れの中で。今回十五カ月予算になるということは、今回の補正予算の三兆五千億円が来年度当初予算の概算要求から引かれるということは、やっぱり当初予算の額としては四十六兆で、そんなに大きい額ではない。
 総理にお伺いしたいんですが、はっきりとしたプラスになるということはおっしゃっておりますが、概算要求の当初予算の枠とこの補正予算の枠の中の景気対策の中ではっきりとしたプラスになるというふうにおっしゃられているんですね。

○政府委員(涌井洋治君) お答え申し上げます。
 経済的には、先ほど申し上げましたように、当初予算に計上いたしますと、その執行が要するに来年度の下半期以降にいく可能性があるということでございます。ですから、前倒しして計上してその執行をできるだけ来年度上半期に目標を合わせるということでございますので、経済的には国民経済計算上のいわゆる政府投資、IGベースではこの補正予算の相当部分が来年度に出てくるということでございます。

○福山哲郎君 それはわかります。
 来年度に出てくるから、今回の補正と来年度の当初予算ではっきりとしたプラスになるということをおっしゃられているんですかということを総理に確認したいんです。

○国務大臣(宮澤喜一君) ですから、何度も主計局長が申し上げたように、予算ベースではなくてIGベースでどうなるかということを考えませんと、今成長率の話をしていらっしゃいますから、IGベースでやらなければだめなんで、IGベースは先へ行って大きくなります、こう申し上げているんです。

○福山哲郎君 では、もう少し単刀直入にお伺いをします。
 先ほど言っているように、一・九%ことしがだめでマイナス一・八になった。これはでも、四月に補正を組み今回も補正を組んだ上でやっとマイナス一・八になった。来年度、この十五カ月の考え方の予算を組んでさらに当初予算を組んだ後に、やっぱりはっきりとしたプラスにならない、経済再生内閣が立ち行かなくなったといったら、またどんどん補正予算を組んで、それでやっとはっきりとしたプラスになりましたというと、これは前提が違いますから、はっきりとしたプラスになっても、前提が違うということになるので、総理にお答えいただきたいのですが、だから何回も言いますが、さらに来年度補正を組むようなおつもりは今の段階ではないわけですね。

○国務大臣(宮澤喜一君) 前提とおっしゃいましたから、お言葉を返すようですけれども、あなたの御議論の前提は平成十年度の当初予算でございます。これは非常な緊縮予算であったんですね。それで、平成十一年度の予算はそうでないんでございますから、前提は違います。

○福山哲郎君 いや、ですからその話をしているのではなくて、要は──わかりました、だからはっきりとお答えください。
 はっきりとしたプラスに総理がされるという思いは、今回の補正予算と来年度の予算で、そしてさらに来年度の法人税減税と所得税減税をされて、それではっきりとしたプラスにするんだというふうに総理はおっしゃっているんですね。

○国務大臣(小渕恵三君) そうした今回の補正予算も含め、来年度の予算も成立させていただきまして、そして来年度はプラスになるように、またなっていくであろう、こう確信を持って今お願いをいたしておるところでございます。

○福山哲郎君 そうすると、もう一度お伺いしますが、この状況の前提、この前提ではっきりとしたプラスということですね。もう一度お答えください。

○国務大臣(宮澤喜一君) そういうふうに総理は言っておられるわけです。

○福山哲郎君 もう時間が余りないんですけれども、総理は即効性、波及性、未来性ということを今回の補正で組まれました。私は単純に思うんですが、この即効性と未来性ということに対して非常に矛盾を感じておりまして、即効性があるということと未来性ということがどのようにこの補正の中に盛り込まれているのか、総理の意思を詳しくお伺いしたいと思います。

○国務大臣(小渕恵三君) それぞれ予算を前倒し執行してまいりまして、そうしたことで極めてスピーディーにその効果を発揮させていきたいということでございます。それから、未来性というのは、いろいろな予算の中で、この補正の中で考えておるものもありますが、将来にわたっての情報産業その他に対することも考えて予算の中にいろいろな項目を入れまして、それで将来にわたっての明るい展望を持てるような予算のまず端緒を築くということもありましてそうした言葉を使わせていただきました。

○福山哲郎君 私は実はこの未来性ということに対しては大変魅力を感じました。二十一世紀に対して環境対策、それから医療、保健に対しても非常に逆にうれしく思いました。
 しかし、その中で大蔵が、概算要求に対しての基本方針という中で、景気回復に即効性があり、後年度に過度の負担とならないものを計上という基本方針を出されました。過度の負担というのはどういうことを言われるのかよくわからないんですが、未来に対する総理が今言われたようなものをつくっていこうというときに、後年度に対する過度の負担とはならないという縛りをつけたときに、どこまでが未来に対するものなのかということに対して僕はこれは大変大きな縛りがかかったという気がしているんですが、大蔵大臣、それはいかがでしょうか。

○国務大臣(宮澤喜一君) 後年度に過度の負担になりそうなものというのはいろいろございますでしょう、世の中で。例えば年金の話でありますとか税金の話でありますとか、この際減税しちゃったらいいなんというお話も、しかし後をそれでどうするのというようなことがいろいろございますから、そういうことは、今仮にちょっとよくても、やっぱり我々の先も考えなきゃいけない、こういうような意味でございます。

○福山哲郎君 よくわからないんですが、とにかく頑張って、未来に向かってぜひお願いをしたいと思います。
 実は、最後にどうしても言いたいことがありました。きょうは十二月十日でございます。実は昨年京都で開催をされました地球温暖化防止京都会議、COP3が開催をされて京都議定書が採択をされたのが十一日の未明、ある意味で言うと十日でございました。それからちょうどきょうで一年たったんですが、先月にアルゼンチンのブエノスアイレスでCOP4という続きの会合がありまして、これに真鍋長官が行っておられました。
 私も実は行っておりまして、長官が演説をされたり各政府代表団といろんな形で交渉されて頑張られていることを拝見して大変頼もしく思ったわけですが、しかし中身で言うと、COP3の先送りをして二年後に持っていった、ブエノスアイレス行動計画というのができたわけですが、これは基本的には先送りだという状況になっておりまして、長官にこのCOP4についての率直な評価をお伺いしたいというふうに思います。

○国務大臣(真鍋賢二君) COP3の折にも先生には大変お世話になり、またCOP4に対しましては御夫妻でわざわざブエノスアイレスまでお越しいただき御協力をいただいたわけでありまして、心から感謝をいたしております。
 そこで、京都会議で感動的な目標値を定めまして、それに向かって頑張っておるところでありますけれども、何としても京都議定書の発効に向かって議長国である日本は努力していかなければならないと思っておるところであります。
 そこで、余りにも感動的なCOP3でございましたものですから、COP4はどうなるか大変心配をいたしたところであります。それがためにということで非公式閣僚会議を東京で開き、またアジア・太平洋環境会議、エコ会議を仙台で開きましてそれがための対策を講じていったところであります。いろいろと努力はしたわけでありますけれども、結果的に、表面的に数字が出ておりません。
 しかしながら、ブエノスアイレスの行動計画というものが決定されたわけでありまして、継続というものが力なりということならば、これは大きな私は意義があったと思っておるわけであります。COP6に向けて努力していこうという一つの目標もできたわけでありまして、私はそれなりの評価はできるのじゃないだろうか、こう思っておる次第であります。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 私は、中身について言うと切りがないので、一つだけ気になっていることがあります。
 例えば、宮澤内閣時代、総理が行けなかった地球サミット、大変残念だったんですが、この九二年のリオ・サミットから九八年のCOP4まで、実は環境庁長官が日本は十一人もかわっておられます。日本の政治状況からいってこれは仕方のないことなのかもしれませんが、外交交渉という点で考えると、ほとんど毎年外交会議は続くのに交渉者がかわっていく。さらには交渉担当者でいいますと、日本はCOP1からずっと継続して交渉している担当者というのがゼロなんですね。
 ところが、環境問題というのはこれから先、恐らく五年、十年、かなり継続的に物事が進んでいって環境悪化の状況が出てくるときに、こういった間違いなく継続性のある国際会議に、例えば環境庁の役人さんでも通産省でも外務省でも、交渉担当者が本当に継続的にいないというのは、私は外交交渉上大変マイナスではないかというふうに思っていまして、この問題に関しては、できればぜひ御検討いただきまして前向きに考えていただきたいと思っております。
 外務大臣それから通産大臣、環境庁長官に御答弁をいただきたいと思います。

○政府委員(東郷和彦君) 一点だけ事実関係について申し上げますが、御指摘のように、地球温暖化の問題に関しまして一貫して交渉に参画した者はおりませんが、現ジュネーブ大使の赤尾は九二年、リオ地球サミット以来、交渉の主要部分には参画しております。

○国務大臣(小渕恵三君) 御指摘をいただきましたように、国際会議に出席をされる政府のトップ、大臣でございますが、御指摘のような交代を余儀なくされておられるわけでございまして、経験が豊かだったので大木さんに今回もブエノスアイレスに行っていただきました。
 要は、内閣として、大臣がそういう交代をされるということにも起因することであろうかと思いますが、政府の方針はある意味では一貫しておることであります。そういった意味で、常々私自身も考えておりますが、何はともあれ、日本の内閣そのものも相当交代をする機会が多いわけでありまして、イタリアほどではありませんけれども、そういった意味で、これはやはり内閣のあり方、またそれを国民的な御支持を願うこと、あるいは制度的に大統領制を持っておられるような国で、四年ないし、アルゼンチンはたしか五年かと思いますが、六年、七年というところもございまして、そういう中でのキャビネットの編成とやや違っておる日本の形態でございます。
 しかし、御指摘をされた点は非常に私は重要なことだと考えておりますので、今後とも経験豊かかつ外交的にも長い間経験を持たれた方々が国際会議には継続して出席のできるような配慮はしていかなきゃならぬ、このように思っております。

○福山哲郎君 大変誠実な御答弁ありがとうございました。閣僚だけではなくて、ぜひ交渉担当者レベルで継続的に人材を養成していただくような方法を考えていただきたいと思います。
 最後に、実はこの京都議定書というのは、多数の国が条約に参加をしている中で、我が国の地名が入っているものというのは実は世界でこれしかないんです。気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書ということで、我が国の地名が入っている、多数の国が参加をしている条約ですので、早く批准をしていきたいということで、これからも関係閣僚皆さんの御努力をお願いして、私の質問を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。

 


 

第143国会  参議院   金融問題及び経済活性化に関する特別委員会
1998年10月16日

○福山哲郎君 私は、民主党・新緑風会を代表して、衆議院提出、金融機能の早期健全化のための緊急措置に関する法律案に対し、反対の立場から討論を行います。
 十三日、衆議院本会議において、本法律案は民主党等を除く与野党の賛成により可決されました。その後、海外の金融市場において今日まで何が起こったか、皆さん御存じでしょうか。いわゆるジャパン・プレミアムが何と〇・四%から〇・七%に上昇してしまったというのです。つまり、海外の金融市場は、本法律案が不良債権問題を解決するどころか、逆に一層の金融システム危機を招くと判断しているわけです。その判断理由は、恐らく我々民主党・新緑風会が本法律案に反対する理由と同一であると考えられます。
 以下、本法律案に反対する理由を具体的に申し述べます。
 第一に、本法律案は、資産査定の基準や引当率、有価証券の評価方法等が行政による裁量にゆだねられ、不良債権の実態を過小評価するもので、金融機関の真の経営実態は明らかになりません。恐らく政府も金融機関もみずからの責任回避のため、必死になって不良債権を隠すでしょう。したがって、水膨れ評価をした見かけの自己資本比率はさほど低くはならず、巨額の公的資金注入も金融機関の一時的な延命を図るもので、金融不安を回避するものとはなりません。また、このような情報開示では、なぜ二十五兆円もの巨額な公的資金を注入しなければならないのか、国民への説明責任は全く無視をされています。
 第二に、本法律案においては、健全な銀行や存続可能な銀行についてもシステミックリスクの名のもと、公的資金による資本増強を可能としております。公的資金注入のルールはまさにあってなきがごとく、何でもありの状態です。政府・自民党は、ことし三月に行った愚をもう一度繰り返そうとしているのでしょうか。
 第三に、本法律案においては、一層のモラルハザードを招くことは必至であります。今日の我が国の金融危機を招いた原因はバブルの崩壊だと言われています。しかし、それは一面では正しいかもしれませんが、実はこの社会に横たわる大きなモラルハザードという怪物こそが最大の原因なのではないでしょうか。金融業界と行政当局のもたれ合い、政治の無責任体制が金融危機を今日の状況まで追い込んだのです。
 以上のような理由から、我々は、本法律案では不良債権処理は遅々として進まず、貸し渋りも改善されるとは到底考えられません。まさに金融不健全化法案です。
 なお、我々民主党・新緑風会は、画竜点睛を欠くようなこの法律案では我が国の金融システム危機の解決にはつながらず、冒頭述べたように海外の金融市場の信頼も得られないと考え、対案を出させていただきました。我々の対案は不良債権の抜本処理を進め、金融システムの安定に資するものと確信しております。半年もしないうちに、国民は政治がまた同じ過ちを犯したことをマーケットによって知らされることになるでしょう。
 形は似ていますが、我が国の金融システムに対する哲学が全くもって異なる本法律案に対し、我々は堂々と胸を張って反対することを申し述べ、反対討論を終わらせていただきます。(拍手)

 


 

第143国会  参議院   経済・産業委員会  1998年10月15日

○福山哲郎君 民主党・新緑風会の福山でございます。よろしくお願い申し上げます。
 二度の石油ショックを経験した我が国が石油の自主開発に積極的に取り組まなければいけないという、国益の観点から大変重要だということは存じ上げているつもりでありますし、石油公団の意義等も納得をしているつもりではございますが、それでも、前通産大臣があのような報告書なり雑誌に論文を掲載されたということは大変大きな問題だというふうに承っております。この国会ではこの問題、収束するような状況ではないと思いますので、今、素朴な疑問も含めて若干御質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
 まずは、大変根本的な問題なんですが、この報告書の前提にありますのは、平成五年の石油審議会における長期見通しについて、石油自主開発という部分がありまして、そこで年間百二十万バレルの供給能力の確保ということを述べられておりまして、それを前提にこの報告書、それからそれ以降の自主開発というのは話が進んでおると思うんですが、本年六月の石油審議会におきまして、要はその時代と違いまして国際石油市場の成熟化ということが大変評価をされています。国際環境が変わっているということが評価をされて、自主開発のあり方について「抜本的な再検討を行う必要がある。」という表記がありまして、これまでの自主開発の部分も含めてちょっと考え直そうと。それは、新たな国際市場というマーケットが成熟をしつつあつく湾岸戦争を経ても我が国に対してそんなに影響がなかったということを積極的に評価されて、審議会からこういう報告書が出ておるわけです。
 ところが、今回出てきている再建検討委員会の報告書によりますと、いまだに平成五年の百二十万バレルの供給能力の確保ということを前提に書かれているというふうに私は報告書を拝見しまして受けとめました。
 まずは、今の段階で現実の石油自主開発についてはどのような前提条件でお考えをいただいているのかということについてお答えをいただきたいと思います。

○政府委員(今井康夫君) 我が国は、主要先進国の中でも最もエネルギーの脆弱性、特に石油につきましては脆弱性の大きい国でございます。例を挙げますと、石油の自主開発で申しますと、アメリカ、イギリスはメジャーを持っておりますが、メジャーを持っていない例えばドイツ、イタリア等と比較しても非常に低い水準、自主開発原油の比率は一五%にとどまっております。
 そういう中で、我が国は世界第二位の石油消費国、輸入国でございます。石油というのは常に探鉱をして開発していかないと減耗するものでございますから、そういう意味でも、日本がただ石油を買うだけではなくて石油の探鉱開発に積極的に参画するというのは国際的な責務でもあるというふうに私ども考えておるわけでございます。
 今、先生おっしゃいましたように、現在、日量百二十万バレルということを目標として自主開発を行っておりますが、これは二十一世紀の想定される石油輸入量のおおむね三割ぐらいという数字でございます。
 私ども、石油開発につきましては、この必要性については御理解していただいていると思っておりますけれども、この石油審議会の物の考え方は、確かにおっしゃるように石油市場が誕生した、そういうことはございますが、一方で緊急事態というのも想定される。一方で緊急事態が想定される中で、やはり国際的な市場も出てきた。平時と緊急時とどういう形で分担をして、どういう形で対
応していったらいいのかということを今後詰めるということになっておりますので、その中で自主開発政策についても改めて見直してみたい、こういうふうに思っております。

○福山哲郎君 ということは、この日量百二十万バレルという数字は、この報告書を書かれる段階ではこれを前提につくられて、今後石油審議会等の議論によっては変化をする可能性はあるということですね。

○政府委員(今井康夫君) おっしゃるとおりでございます。審議会はこの秋開く予定をしておりますが、そこでこの数量目標につきましても御議論していただくつもりでございます。

○福山哲郎君 どちらにしても、この目標の百二十万バレルには今の現状で達していないわけですから、これを下げるのが意味があるかどうかというのも僕は問題があるとは思うんです。
 では、次の質問に移らせていただきます。
 今回、石油公団再建検討委員会というものを設置されて、報告書を提出されました。まず、石油公団再建検討委員会を設置された理由をどのように考えられているのか。前通産大臣等の指摘があったからという形なのか、自主的な思いでこれはやらなきゃいけないなと思ってつくられたのか、その理由について率直にお答えください。

○政府委員(稲川泰弘君) 本検討委員会設立の理由でございますが、昨年の十二月三日に衆議院決算委員会におきまして石油公団開発に関する審議が行われました。その中で、三点を中心として質疑が行われました。一つは、石油公団は多額の損失を出しており経営に問題があるのではないか、また、石油公団出融資先会社の事業・財務内容についての情報公開が不十分なのではないか、それから三点目に、石油公団におけるプロジェクト審査に問題があるのではないかという点でございました。
 堀内前通産大臣は、この衆議院決算委員会での質疑、さらに御自分で分析をされました作業結果を踏まえまして、ことしの六月十六日に省内に御指摘の検討委員会を設置して、これらの点についての検討をするよう指示されました。また、ことしの七月には、決算行政監視委員長に報告書「石油公団の現状分析と今後の対策について」というものをみずからお出しになっておられます。
 こういう経緯で、今回収りまとめました報告書は、この検討委員会におきまして、前大臣の御指摘事項を踏まえつつ、公団の現状、情報公開のあり方、公団及び出融資先会社の収支見通しなどについての検討を進めまして、検討結果を取りまとめたものでございます。

○福山哲郎君 ということは、さきの十二月三日の衆議院の決算委員会のあれを踏まえて再建検討委員会というのは設置されたと承ってよろしいわけですか。

○政府委員(稲川泰弘君) 直接的な設置の理由は、本年六月十六日の通産大臣の検討指示でございますが、その検討の前提として、昨年十二月三日の決算委員会の御審議も検討内容に加えてあるというものでございます。

○福山哲郎君 それでは、石油公団再建検討委員会のメンバーは、どういつだメンバーで委員会が構成されたのかを教えてください。

○政府委員(稲川泰弘君) 検討委員会は、資源エネルギー庁長官を委員長としておりまして、石油部長、石油部関係課長、資源エネルギー庁関係課長がメンバーになっております。

○福山哲郎君 ということは、構成メンバーは四名ですか。

○政府委員(稲川泰弘君) 長官、石油部長、石油部関係課長五名、それから資源エネルギー庁関係課長三名でございます。

○福山哲郎君 済みません、もう一度。

○政府委員(今井康夫君) 長官、それから次長、総務課長、それから私、石油部長、石油部の五課長でございます。

○福山哲郎君 先ほど言われました、七月に出された堀内通産大臣の報告書を踏まえて再建検討委員会をつくられたとお答えになられたと思うんですが、その報告書の中にそういったメンバーで再建検討委員会をつくれという指示はあったんでしょうか。

○政府委員(今井康夫君) 大臣から御指示を得て私ども資源エネルギー庁内に検討委員会をつくりましたが、今先生おっしゃった報告書というのが前大臣の決算行政監視委員会に対する報告書であるとしますと、それは七月二十七日でございますので、こちらはもっとずっと前に、六月の段階で発足し、作業を進めておりました。

○福山哲郎君 では、六月に再建検討委員会をつくられたときに、そのメンバーでやれという指示は大臣からはあったんでしょうか。

○政府委員(今井康夫君) ございました。

○福山哲郎君 あったわけですね。

○政府委員(今井康夫君) はい。

○福山哲郎君 そうすると、資源エネルギー庁長官にお伺いをしたいんですが、これだけ衆議院の決算行政監視委員会で問題になって、なおかつ前通産大臣が報告書を出されたという問題に対して、今お話を伺うと、ほとんど内部のメンバーで再建検討委員会をつくられた。それに対する妥当性、意味みたいなものに対してエネルギー庁長官はどのようにお考えでしょうか。

○政府委員(稲川泰弘君) 前大臣の御指示に基づきましてこの石油公団再建検討委員会を起こしましたが、あわせて石油公団におきましても再建検討委員会を置き、また公認会計士等の御協力を得ながら全体の検討を進めております。全体の連携をとりながら検討を行ったところでございます。

○福山哲郎君 わかりました。
 私などは、それが妥当性があるかどうかというのは犬変疑問なんですが、そのようにお答えいただいたので次に行きます。
 では、再建検討委員会では現実問題として何回ぐらい議論を重ねられたのかということをちょっとお教えください。

○政府委員(稲川泰弘君) 初回が六月十七日、最終回が九月二十九日、全部で十回開催をいたしてございます。

○福山哲郎君 では、それで検討がされて、こういう報告書が出てきたということは承らせていただきました。
 次に、六月に検討委員会ができまして、今お話がありましたように、前通産大臣から「石油公団の現状分析と今後の対策について」という報告書が衆議院の決算行政監視委員会に提出をされました。要は、前大臣がこういう報告書をつくられた、この報告書についてどのように今評価をされているのかということを、これは通産大臣と資源エネルギー庁長官とどちらにもお答えをいただきたい。

○国務大臣(与謝野馨君) 堀内大臣も日本の石油政策の将来、また過去のいろいろな経験に基づいて将来をどう展開すべきかということを真剣にお考えになっていたと私は思っております。私どもとしてはそういう堀内大臣のお考えに基づいて、そういうことに資源エネルギー庁、通産省挙げておこたえしていこうということで検討委員会をつくり、報告書を出したわけでございます。
 これは通産省だけでやったわけではございませんで、石油公団の内部でももちろんそういう体制を整えておりましたし、また全く自分たちだけでやるということはやはり世間を説得する力というものはどうかという問題もありますし、外部の御意見をお伺いするという意味で公認会計士あるいは石油に詳しいコンサルタント、そういう方々の意見も幅広く伺って報告書をまとめたわけでございます。
 考え方の部分は考え方の部分、それからもう一つは、経理内容等数字の部分は数字の部分というふうに二つ分けて考えますと、物の考え方というのは人によって違うこともありますし、将来の見通しについてもそれは考え方は違うことがあるだろうと思うわけでございますが、経理の状況とかあるいは客観的な事実については極めて正確に皆様方にお示しをする、情報開示をするということを前提につくられた報告書であるというふうに私
は評価しているわけでございます。

○政府委員(稲川泰弘君) 前通産大臣の御指摘のありました決算行政監視委員会への報告文書でございますが、指摘なされている点は大きく四点であるというふうに理解をいたしてございます。
 第一点は、経営状態がよくない出融資会社を現時点で清算すれば一兆三千億円の損失をこうむることになるわけでありますが、将来の資金回収見通し、損失見通しを精査すべきであるというのが第一点でございます。それから第二点は、財務内容が不良な出融資先企業を整理して優良企業への統合を行うべきである。第三点は、情報公開。第四点は、石油公団のプロジェクト審査能力及びリスク管理能力をレベルアップすべきという四点であったかと思います。
 我々、先ほど大臣からもお答え申し上げましたように、この御指摘を正面から受けとめまして、報告書においてこの四点に対する我々なりの検討結果を御報告したところでございます。今後はこの報告内容の実施に全力を挙げて取り組んでまいりたい、かように考えてございます。

○福山哲郎君 先ほど加納委員からも御質問があったと思うんですが、この報告書を全部読ませていただいて、前大臣の指摘がありましたがこうでありますという内容のことは書かれているのですが、先ほどありましたように反省とかもちろん謝罪とかいうことは全くないわけです。ということは、この報告書はその指摘に対してこたえをしたというふうな位置づけでよろしいわけですか。

○政府委員(稲川泰弘君) 今回の検討におきましては、堀内前大臣の御指摘あるいは国会の御指摘を初め各方面からの問題提起を正面から受けとめて、財務、事業運営について改善すべき点をすべて洗い出し、報告書として取りまとめたつもりでございます。
 今回の検討を通じまして、出融資先会社の情報公開の徹底、国民の理解を得る努力、あるいは既存プロジェクトの不断の見直し、さらには民間企業に準じた会計基準の適用などの面において、従来必ずしも十分とは言えず改善を図るべき点があるということを明らかにしております。
 いわばこの報告書全体が各方面からのさまざまな指摘に対する反省を踏まえたものでございまして、今後この報告書に基づき全力を挙げて必要な改善策を講じてまいりたい、かように考えております。

○福山哲郎君 ということは、もう一回しつこくお伺いしますが、改善をする点が多々あったということはお認めになるし、反省する面も多々あったということはお認めになるわけですね。

○政府委員(稲川泰弘君) 従来必ずしも十分とは言えず、改善を図るべき点があった。例えば情報公開であるとか経理のさらなる基準明確化とか、そういう点について今後努力をしたいと思っております。

○福山哲郎君 ありがとうございました。
 次は、雑誌等で拝見をしている中身の話ですので簡潔にお答えいただければいいのですが、雑誌を拝見していますと、小松前石油公団総裁を更迭をした云々かんぬんというくだりがいろんなところに出ております。しかし、本当にどのような形で石油公団を退職をされたのかということは、こちらとしては正式な状況がわかりません。
 例えば、更迭をしたという形のどういう処分が正式に行われておやめになられるに至ったのかということについて、簡潔にお答えをいただきたいと思います。

○政府委員(稲川泰弘君) 小松前総裁の辞任につきましては、小松前総裁自身が、公団の直面している状況あるいは御自身の年齢等を踏まえて、新たな責任体制のもとで今後の公団事業の効率化に取り組むことが適切という御判断のもとにみずから辞意を固められたものでございます。

○福山哲郎君 辞任ということは、みずからおやめになったということは、退職金はもちろん支払われる予定なわけですね。

○政府委員(稲川泰弘君) 退職金については、公団があらかじめ予定した手続にのっとって今後処理していくべきものと思っております。
 現在のところ公団は、今回の検討委員会報告書に基づきまして種々の課題を残しておりますので、その課題の実施、その方向を見定めた上で今後の退職金の取り扱いを決定していくことになると思っております。

○福山哲郎君 そのような課題というのはどういった課題なんでしょうか。

○政府委員(稲川泰弘君) 先ほど御報告申し上げましたが、情報公開の問題、会計基準の問題、さらには今後の全体の公団の収支に係る処理の問題等々でございます。

○福山哲郎君 というのは、情報公開、公団の収支等々の状況を見て小松前総裁に対する退職金の支払いは検討され、それから決定されるということですね。

○政府委員(稲川泰弘君) これらの課題の実施に向けての方向性を見定めた上で取り扱いを決定していくことになる、公団のあらかじめ定められた手続にのっとって決定さるべきものと思っております。

○福山哲郎君 何かよくわかったようなわからないような御答弁なんですが、とにかく支払われる前提でいっているということはお伺いしました。
 では、少し細かくなりますが、報告書の中身について質問させていただきたいと思います。
 一昨日の経済・産業委員会における資源エネルギー庁長官の説明にもございましたし、今回のこの報告書の中にもずっとあるんですが、「成功したプロジェクトの株式売却益などで埋めることにより、資金を自己回転させることを想定したもの」であるというような表現があって、よく株式売却益というのがあるんですが、これまでに株式売却益で公団の方が利益を得たというような実態、事実はあったのでしょうか。

○参考人(新欣樹君) お尋ねの売却益を計上したケースというものが二社ございます。これは出光石油開発とそれから日本海洋石油資源開発でございます。
 これらの二社は、新潟県の阿賀沖で同一鉱区において共同事業を今行っております。公団が取得いたしました株式が取得価格以上の価格で処分し得るような状態になった、恒常的な生産ということになったわけで、それぞれの民間株主に対しまして、出光石油開発の方は昭和五十五年三月、日本海洋石油資源開発の方は昭和五十七年三月、それぞれ売却をいたしまして、それぞれの売却価格は百九十四億円及び百六億円でございます。売却益という点では、前者が五十二億円、後者が七十八億円ということになってございます。

○福山哲郎君 出光石油開発に公団がそれまでに出資ないし融資をした額は全額で幾らですか。

○参考人(新欣樹君) ただいますぐにはあれですので、後ほどお答え申し上げたいと思います。

○福山哲郎君 そうしたら、日本海洋石油資源開発に公団がそれまで出資ないし融資をした額についてもお教えをいただきたいというふうに思います。

○参考人(新欣樹君) 後ほどお答え申し上げます。

○福山哲郎君 そうすると、今、百九十四億で売って五十二億利益が出たと言われましたが、この利益というのはどういう換算の利益になるんでしょうか。

○参考人(新欣樹君) 株式の原価と売却価格との差額というふうにお考えいただきたいと思います。

○福山哲郎君 わかりました。じゃ、先ほどお願いした数字をまたお教えいただきたいと思います。
 それで、実は、確かに利息、配当、それから株式の売却で将来的に二千四百九十億円の損失から三千七百六十億円の利益になるという見通しがこの間のエネルギー庁長官の報告とかにもあるんですが、私、一つ非常に不思議に思うことがございました。
 報告書を拝見させていただきますと、十年以内に株式を売却するという表現があるわけです。十
年程度で株式を売却するということはあるのですが、実は、別のページにこういうことが書いてあるんです。これは報告書の中にあるんですが、今回の分析においては、我が国会社の持つ油田の生産量の合計が二〇一〇年ごろに現在の約半分になる。つまり、数ある開発会社の中で本当にわずかですが今出ているものがある、その出ているものの生産量の合計というのは二〇一〇年ごろ現在の約半分になると書いてあるわけです。約半分になるのが二〇一〇年ごろと書いてあって、株式売却をするのは十年程度を見込みと書いてあるわけです。
 埋蔵量なり生産量が半分になるということは、客観的に言うとその株式は、会社の価値というのは半減するじゃないですか。だって、石油を開発することによってその会社というのは評価をされているわけですから、その評価をされている株式を二〇一〇年ぐらいをめどにこちらでは売却すると言っていて、片っ方では生産量が半減するとちゃんと書いてあるわけです。生産量が半減するということは、その会社の価値は今から比べると半分に減るわけです。そのときの売却益とかを、こういう報告書の中で利益が出るというような想定をすること自体に僕は大変無理があるような気がするんですが、どうでしょうか。

○政府委員(今井康夫君) お答え申し上げます。
 生産量が半減するということは、この計算の前提といたしまして、それぞれの会社が持っております確認可採埋蔵量をまずベースにいたしました。それで、それをこれから十年なり五年なり二十年なり、それぞれ権利の切れる期間まで生産を続けるということになります。
 そういたしますと、これは非常にかたい見通してございまして、確認可採埋蔵量がだんだん減っていくわけでございます。したがいまして、十年たつとその生産量も半分ぐらいになってしまうわけでございますが、実はそういう非常にかたい見通しであっても、この報告書で御説明をしておりますように、今後、この開発会社合計しますと、将来的には四千三百八十億から八千九百億ぐらいの収益がたまるという計算をしております。
 それで、通常の場合で言いますと、各企業はそれぞれ埋蔵量をふやす努力をいたしますし、期限が来ますとそれを延長する努力をいたしますので、通常はそれより生産量はふえるわけでございます。したがいまして、私ども申し上げている、ここで将来の収益の見込みが四千三百八十億から八千九百億ということを見通しておりますが、これより恐らくふえるであろう。それは、収益の見通しと申しますのは、会社にたまっているお金、それから配当として石油公団が受け取るお金でございますから、そういうものは今ここでの見通しよりももう少しふえるであろうということが書いてございます。
 株を売却する場合には、少なくともその開発会社が持っている内部留保、自分のところに持っておる内部留保よりも高く売れるわけでございますから、そういう意味では、ここで申し上げた収益の見通しというのは非常にかたい数字だということを私どもは申し上げております。

○福山哲郎君 今、開発会社は何社ありますか。

○政府委員(今井康夫君) 百二十三社でございます。

○福山哲郎君 今実際に剰余金が出ている会社は何杜ありますか。

○政府委員(今井康夫君) 十一社でございます。

○福山哲郎君 今、株式として売れる見込みのある会社は何社ありますか。

○政府委員(今井康夫君) これにつきましてはなかなか難しいのでございますけれども、剰余金が出ている会社というのは、基本的には現在、今まで出資を受けた金額よりも、それを上回った利益が上がっているわけでございますから、その意味では株は簿価よりも高く売れるというふうに思っておりますから、そういう意味では理論的には十一社については売れるんじゃなかろうかと思っております。
 私ども計算を、二〇二〇年までいろいろ分析してみたわけでございますが、今の剰余金が出ている会社十一社が恐らく十九社にふえていくという分析をしておりますので、株を売る、それはマイナスで売るんじゃなくてある程度の利益を得て売るとしますと、十九社が観念的には該当すると思います。

○福山哲郎君 百二十三社開発会社があって、今剰余金が出ているのが十一社、しかというのか、これは確率が高いというのか、その評価は別にして、その状況で十年後に株式売却をするときに、先ほど言われたように石油の生産量がふえているはずだと言われても、これはやっぱり説得力に欠けると僕は思うんです。
 さらには、先ほど言われたみたいに十一社が売却益が出ると言われているかもしれないけれども、ある開発会社はひょっとしたら埋蔵量がふえないままいっちゃうかもしれない。ここは確実に会社の株価というか会社の価値というのはどんどん下がっていくわけです。ふえたところはあるかもしれないけれども、そこはまたそのうちの何社かよくわからない。さらに言うと、十一社から十九社まで剰余金が出る会社がふえたと仮定をしたとしても、その横でこの百二十三社のうちの何社かが清算会社がどんどんできているわけです。そこの中で損失を出していっているわけです。
 その状況の中で、先ほど言った株式売却益、配当、その他でこれだけの収益が出る可能性があるということに対しては、ちょっと説得力に欠けると私は思うんですが、いかがでしょうか。

○政府委員(今井康夫君) ちょっと長くなるかもしれませんが、私どもの基本的な計算をした、分析をした前提でございますけれども、百二十三杜のうち、今現に動いていると思われます九十七社を具体的に一件一件当たったわけでございます。ある一定の油価、ある一定の為替を前提といたしまして、その会社がどれぐらい生産をして、そこからどれぐらい収入が得られて、キャッシュを得られて、それを石油公団に幾ら返せるのか、それから、返した後幾ら手元に残って利益として蓄積されるのかということを分析したわけでございます。
 そういたしますと、ちょっと数字欠いて恐縮ですけれども、今後、確かに回収不能になるものが出てきます。先生おっしゃるとおりで、回収できないものが、前提条件によりますけれども、六千八百七十億、もう少し条件を緩めますと五千百四十億、したがって七千億から五千億程度の回収不能が生じるわけでございます。
 一方で、もうかっていると申しますか、当たって利益が上がる会社からの利益、その収益、その会社からの配当である場合もありますし、利息である場合もありますし、会社にそのままとっておく、会社の内部含み益としてたまっていくケースもありますけれども、その会社に公団の持ち分としてたまっているものを合計いたしますと四千三百八十億から、条件がよくなりますと八千九百億になる。
 これは、株式を売却する以前の話でございまして、ある石油会社が生産することによって利益が上がって自分のところにためていく、そういうものを合計しますと今の数字でございます。それを今度は、それはその会社にたまるものでございますから、そういう会社の株式を売却する場合に、我々の期待としては売却益が、さらにキャピタルゲインが得られて、ここで御提示した見通しよりももう少し石油公団の収支がよくなるというふうに考えております。
 いずれにいたしましても、今後の収益とここで書いてありますものは、会社から受け取る配当金でございますとか利息でございますとか、会社に残る含み益でございますので、株式を売却する前の話でございます。そういう会社を売却すれば、さらにそれにキャピタルゲインが得られるということだと私どもは思っております。

○福山哲郎君 今の話はまさにそのことなんですが、今部長がおっしゃられたみたいに含み益の話をされているわけです。含み益というのは、あくまでも含みなんです。ところが、石油公団はどん
どんつくっては消し、つくっては清算しということで、これは実損が出ていくわけです。実損が出ていって、実は石油公団は利益が出ますよというのは、これは含みなんです。含みというのは、あくまでも例えば会社を売ってそこの売却益が、キャッシュが入ってきて初めて実益でございます。
 こっちでは含みを前提に物事を考え、こちらでは清算会社として実損をどんどん出していったときに、それこそこの報告書に書かれているように、世の中の現状の変化、マーケットの変化、為替の変化によって含み益というのはそれだけ変動があるわけです。含み益は含みで、こっちは実損を出していくというような状況の中で収益が出るというのは余りにも乱暴な議論ではないかと思うんですけれども、いかがですか。

○政府委員(今井康夫君) 私と先生と余り意見は変わってないと思うんですけれども、言葉の定義かもしれませんが、確かにおっしゃるとおりで、損は確実にある意味で出るわけでございます。会社が探鉱不成功の場合、出るわけでございます。一方で、もうかっている会社には内部留保がたまっていくわけでございます。そういうものに石油公団の持ち分を掛けますと、石油公団の得べかりし含み益が計算できるわけでございます。それは、為替レートによったり油の価格によったりして毎回条件によって違ってまいります。それから、生産が思わずふえたり、それから今の埋蔵量しかなかったり、それぞれによって違いますけれども、私どもは相当かたい見通しを置いて、株式を売却しない前に幾らたまるだろうかと。
 そうすると、おっしゃるとおりで、例えばそれを全部配当としていただいてもいいんです。それから、例えば会社を解散するときにそっくりこれは分配を受けてもいいと思います。ただ、継続性のあるような大きな会社でありますと、それを公開して売却した方がやはり株式売却益が得られると思いますので、そういうものについては売却をしていく。
 ここで数字でお示ししております収益というのは、その意味で会社にたまっているものであって、それを現実化する方法としては、配当をふやす、それから会社を解散させてしまうといいますか、会社の解散を待ってそれを受け取る、それから株式として売却をする。株を売却する場合、恐らく最低ここに予定している数字は確保できるというのが私どもの考え方でございます。

○福山哲郎君 水かけ論になりますからもうこれ以上は申し上げませんが、私は、今部長がまさにおっしゃられたとおり、内部留保がたまっている、内部留保がたまってきて含み益を石油公団が計算できるような石油開発会社というのは数少ない優良会社だと思っているわけです。
 その優良会社を売却して公団が手放すような勇気があるかどうかと考えたときに、これはやっぱり持っていたいと思われると思うんです。持っていたいと思われて、それを先ほど言われましたように、継続性の中でこういった優良な開発会社を持てば持つほど、逆に言うと埋蔵量、生産量が落ちていく可能性というのは出てくるわけです。
 そうすると、石油公団がよし売ろうと言ったときには、その会社の価値というのはもともと言っていた含み益よりもどんどん下がっているのではないか、その時点でだれが買ってくれるんだというような状況が、含みである限りは僕はずっと起こると思っています。それが一番高いところで売れて、石油公団にもキャピタルゲインが入ったというようなハッピーでは私は済まないというふうに思っていますので、そこに対して大変疑問を持っているということで、もうお答えはいただかなくても結構でございます。

○参考人(新欣樹君) 先ほどの出光石油開発並びに日本海洋石油資源開発につきましての数字というものを正確に申し上げたいと存じます。
 まず、出光石油開発でございますが、公団の出資は二十六億円でございます。これに対しまして、売却益五十二億円が出たということで、売却価格としましては七十八億円ということに相なります。先ほどちょっと私、棚を間違えまして百九十四億円と申し上げましたが、七十八億円ということに訂正させていただきます。
 それから、日本海洋石油資源開発の方でございますが、公団の出資額は二十八億円、これが先ほどの七十八億円の売却益を上げまして、合計百六億円というのが売却価格ということです。
 融資、これがあるかないかちょっとお答えできなかったわけでございますが、融資は両件ともございません。

○福山哲郎君 これもお伺いはしませんが、売って売却益が出たとおっしゃいますけれども、この後の石油の開発の状況によってはひょっとしたら非常に優良な開発会社だったかもしれないわけです。それを売却しているわけで、それでもう離れちゃっているけれども、本当は持っていればもっと公団にとったはいいことだってあり得るわけですから、要は、そこの売却のタイミングというものが確定しない限り、こういう算定というのは大変粗っぽいのではないかということで、もうこれ以上この問題はお伺いしません。
 次に行きます。
 文芸春秋の前大臣のレポートの中身によりますと、貸付金を減免する決裁は大臣決裁にあるにもかかわらず、大臣は全然決裁をしていなくて担当課長が決裁をされていたというようなくだりが出ています。そして、そこには、通産省の内部規程によって貸付金減免の規程があるというような中身も出ておるんですが、今、現状、与謝野通産大臣が御就任をされて、貸付金減免ないし開発に対しての決裁は大臣のところまでちゃんと上がっているのかどうか、お聞かせいただきたいと思います。

○国務大臣(与謝野馨君) 石油公団の探鉱投融資事業の実施に当たりまして、重要な案件については石油公団や民間当事者から事前に相談を受けます。そして、当然のこととして、大臣の判断を仰いだ上で物事を判断するということになります。
 他方、探鉱が不成功に終わった出資先、融資先の会社に対する貸付金元本の減免、償還期限の延長などの通産大臣の認可・承認事項の中で、案件の性格上、定型的なものについては事務当局において処理をしております。文書による決裁は重要な事務処理であるということは言うまでもございませんが、膨大な事務処理を円滑に進めることが必要であることから、事務処理の専決に関する規程に基づき、大臣の許可・認可に係る事項についても一定の範囲内で決裁を事務レベルにゆだねているところであります。
 これまでは、石油公団の開発事業に関しましては、文書上の決裁を石油部開発課長限りで行っていたものがありましたが、より厳格に事務処理を行うため、今般、堀内前通産大臣の御指示により、専決に関する規程の改定を行いまして、石油部開発課長の決裁事項を石油部長の専決事項としたところでございます。
 今後も、石油公団の開発事業において、政策的に重要な案件については、大臣の意向を十分に踏まえ、事務処理を行ってまいる所存でございます。

○福山哲郎君 ということは、堀内前大臣の指摘をされたこと等は余り今の現状では変化がないということなんですが、通産大臣の御意見で結構でございますが、国民の大切な税金を、幾ら国益に資する石油開発だからといって減免をする、例えば数百億、数千億の減免をするに当たって、担当課長ないし担当部長の決裁でいいと与謝野大臣はお考えでしょうか。

○国務大臣(与謝野馨君) 実は物事は程度の問題がございまして、専決で物事を決裁する場合も当然ある一定の尺度、基準、そういうものに基づいて決裁をしているわけでございまして、その額が多額にわたる場合は、決裁はその段階でいたしますけれども、幹部と相談をしながらそういう物事を進めていくというのは役所の中の当然のことでございまして、決裁権者が課長あるいは石油部長ということとそれがその幹部の知識なしに物事が行われているのかということとはまた別の問題でございます。
 当然、課長が決裁したことであろうとも、やはり通産省全体としてあるいは資源エネルギー庁全体として責任を持つという意味では、これは課長の決裁で物事がどんどんできるという話ではなくて、役所の意思をそういう段階で文書の問題としては決裁するということでございまして、当然その額が大きいとか重要な事項であるということは大臣も知っているし幹部も知っている、その上で決裁をするということでございまして、ここは定型的な決裁の問題を議論しているわけであると私は思っております。

○福山哲郎君 認知をされてそれが行われるかどうかというのは大変大きなことだと思いますので、大臣のおっしゃるとおりだと思います。
 今の問題で、先ほどの株式売却益の話、それから今の内規規程の話について、例えば、何歩か譲って通産省のおっしゃるとおり株式売却益が出るかどうかという話についても、情報公開としては大分進んだとは思いますが、今回出された各開発会社のあれを見ていると含み益がどのぐらい出るのかとか、今の状態でこれは上場可能な状況なのかとか、剰余金がどのくらい出ているのかというのが実は余りよくわかりません。本来でいうと、各開発会社のBSとPLを両方出していただいて、そこの中で、それを積み上げた結果、この報告書が正当性を持つのか、整合性を持つのかということを私どももやっぱり検証してみたいと思います。
 それから、先ほど申されました内規の規程の問題というのも、実はこの報告書の中にも通産省の内規によってというような記述が幾つもあります。これがわからないことには、これから改善をされるというものも、現実の問題の中で、その内規の幅があればあるほど逆に言うと改善される余地というのは狭くなるわけです。今後この問題というのはこの国会で終わらないと思いますので、ぜひそのための材料として各開発会社のBSとPL、それから通産省の中での各種規程の公開というものを、特にこの報告書では「各種規程の公開」ということがうたわれていますから、ぜひこの経済・産業委員会に御提出をいただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

○政府委員(今井康夫君) 私ども、石油開発は、国のお金でリスクマネーとして企業に提供するものでございますので、可能な限り情報公開、それからお求めになった資料について提出するように努力いたします。
 それから、先生の御指摘の一点、この報告書にも書いておきましたけれども、私どもはこの作業に当たりまして、可能な限りこれは客観的な目で見ていただこうということで、会計士さん、監査法人のお力をおかりしました。二つの監査法人でございます。その方々にチェックをしてもらっております。特に、今の株の部分でございますが、株式の売却益が得られるかどうかということも含めて監査法人の方にそれぞれの会社の株が今幾らで売れるのかということをチェックしていただいたわけでございます。
 それによりますと、報告書にも書いてございますけれども、現在の石油公団が保有して、先ほど御説明いたしました剰余金が出ている十一社、それから、剰余金はございませんけれども株式を時価評価いたしますと帳簿価額を上回っているような会社がございます。これが六社でございますけれども、十七社を合わせて今の株式の時価評価、これは八月の時点でございますのでダウが一.万四、五千円の段階でございます、これで四千八百億円になる。一方、この四千八百億円に評価される株の帳簿価額が七百三十五億円でございますので、八月の株式市場を前提にしますと、この段階で四千五十億の株式の評価益が出るという計算を監査法人の方々のお力も使ってやってみたところでございます。
 御報告申し上げます。

○福山哲郎君 私の質問にお答えいただいていないんですが、百二十三社の石油開発会社の損益計算書と貸借対照表、それから通産省内での各種規程についてこの委員会に御提出をいただきたいと思っているんですが、いかがでしょうか。

○政府委員(今井康夫君) 規程類を含めまして、可能な限り情報公開という今回の報告書の趣旨に沿いまして、私ども検討させていただきます。

○福山哲郎君 可能な限りというのはどういう話で、それで検討させていただきますというのはどういう返事で、僕は国会の経験が少ないのでそういうお答えがどういう意味を持っているのかよくわからないので、済みません。

○政府委員(今井康夫君) 恐れ入ります。
 石油の世界でいいますと、どうしても出せないものがございます。例えば、産油国との関係でございますとか、埋蔵量でございますとか、そういう非常に国際的な問題、それから例えば共同でメジャーとやっているようなケースでいいますと、メジャーとかかわるような問題、こういうものはそれぞれ契約なり、相手国の国家機密でございますので、そういうものについては公開の対象にならないと思いますが、それ以外につきましては可能な限りお出しするということでございます。

○福山哲郎君 少し疑問に思うんですが、国家機密等で出しにくいというのは僕も理解はします。しかし、公団が融資として三割、出資として四割ですか、つまりほとんどの石油会社について七割までの出資をしているような状況ということは、それを税金で使っているということは、もうはつきり言って国民の会社なわけですよ、石油開発会社というのは。その国民の税金で七割も出しているものを国民の代表である国会の委員会の場に資料が出せない、可能な限りという答弁というのはやはりちょっと納得しがたいんですが、これは委員長にお願いをして、理事会の方でまた次回までに御検討いただきたいというふうに思います。

○委員長(須藤良太郎君) はい。

○福山哲郎君 もう時間もありません。それでは、次に行かせていただきます。
 いろいろあるんですけれども、これも余り私、好きな分野ではないんですが、いろいろ調査をいたしました結果、私の手元に今これ百二十八社、先ほど百二十三社が存続と言われていましたので、多少清算されたところがあるかもしれませんが、百二十八社の石油開発会社の役員のお名前があります。ここで個人的なお名前は余り申し上げたくはないんですが、ある元中小企業庁長官は百二十八社のうち、何と十九社で役員をやられています。そしてもう一人、ある元大阪通産局長さんは二十一社で役員をやられています。この百二十八のうちの十九社と二十一社で役員をやられているということの実態について、まず通産大臣はどのようにお考えになられるでしょうか。

○国務大臣(与謝野馨君) ただいまのお話でございますが、名前を貸している場合と実際給与をいただいている場合というふうにやはり分けて考えていただいた方がいいんではないか。名前を連ねているということと常勤で給与を受け取っているということとは事柄が違うと私は思っております。
 このうち、常勤で直接給与を受け取っている会社は、それぞれの方、お名前は多分同じ方を指していると思いますが、一社と伺っております。
 ただし、同一グループ内のプロジェクト会社に利益が出た場合など、その時々の各社の事情に応じてプロジェクト会社が役員報酬の一部を負担することがあるものと聞いております。今お話をお伺いすると、十九社から全部役員報酬を受け取っているとか、そういう印象はちょっと私もびっくりしたんですが、そういうことはなくて、一社から基本的には受け取っているというふうに御理解をいただきたいと思います。

○福山哲郎君 私も全部の会社から給料をもらっているとはもともと考えておりませんでしたが、一社から給料をもらっていても、剰余金等が出たときにはやはり役員報酬が出るわけですね。それで、十九とか二十社に名前を連ねている。それは貸しているだけではなくて、れっきとした役員報酬が出るということはなかなか私としてはよく理解ができない。
 それで、正式に今ある百二十三社の石油開発会
社についての役員の名簿をこの委員会にお出しいただけないかということを今お願いしたいというふうに思っていますが、いかがでしょうか。

○政府委員(今井康夫君) 御提出申し上げます。

○福山哲郎君 それと、先ほど申し上げたお二人は、ほかの方もそうなんですが、当然、清算会社にいらっしゃったことがあるはずですね。要は、今は役員だけれども、清算した会社があってそこの役員をやっていたということだってあり得るわけです。その場合に、その清算会社が清算をされたときに退職金等をもらわれた例というのは一社もないのか。もしくは複数社の清算会社から退職金をもらわれた例があるのかということについてもお答えをいただきたいんです。

○政府委員(稲川泰弘君) 先ほど御指摘のありました二名のうちの後者につきましては、清算済みの会社で役員を務めていたものからいずれからも役員報酬、退職慰労金は受けておりません。
 御指摘のありました前者は、多分お名前は同じだと思いますが、平成四年六月、ラントウ石油開発というところから支給された約三十二万円のお金がございました。全くないかというと、この例が一つございます。原則的にはございません。

○福山哲郎君 ということは、清算会社から役員には退職金は払われないことになっているんでしょうか。

○政府委員(今井康夫君) 今まで私ども先生の御指摘も受けて調べましたけれども、極めて例外的なケースではございましたけれども、取締役として先ほど先生がおっしゃった二名のOBが清算会社を退職するときは退職金はいただいておりません。受け取っておりません。

○福山哲郎君 この二人はと、例外的なものはあるわけですね。
 ですから、私が言っているのは、例示的にお二人を挙げたわけで、かなり複数の会社で役員の名前を連ねている方がいらっしゃって、それを全部今この場で挙げるというのが時間的に不可能なのでたまたまお二人を挙げたわけですが、この辺についても今後検討させていただきたいというふうに思います。
 とにかく、冒頭申し上げましたように、私は、国益上の観点から石油の開発をすることを否定するわけではありませんが、やはりその分、透明性の確保としっかりとした将来見通しをつけないと、温暖化の関係からいって、石油、石化燃料に対する世界の視線もこれから先厳しくなるわけです。それを本当に石油という形で、日本がこの状況と同じような形で延長線上にエネルギー政策としていっていいのかということも含めて私は大変疑問に思っていますので、今後ともまた審議を進めていきたいというふうに思います。
 どうも誠実にお答えいただきまして、ありがとうございました。これで終わります。

 


 

第143国会  参議院   国土・環境委員会  1998年10月1日

○福山哲郎君 民主党・新緑風会の福山哲郎でございます。
 本日は、前回九月十七日の国土・環境委員会で少し気になりましたことがございましたので、温暖化についての質問をさせていただきますことをお許しいただきたいというふうに思います。
 COP4まであと一月になりまして、大変重要な問題がいろいろ山積をしておるわけですが、一般論として京都議定書でこのCOP4において中身を詰めようというふうに言われていました六条にあります共同実施というのは簡単に御説明をいただくとどんな制度なのか。それから、京都議定書の十二条にありますクリーン開発メカニズムというのは一体どんな制度なのかということをまずは簡単に御説明いただきたいというふうに思います。

○政府委員(岡田康彦君) お答え申し上げます。
 まず、共同実施でございますが、これは附属書1の締約国、すなわち先進国が共同して行うものでございまして、附属書1の締約国において排出削減等の事業を行い、その事業による排出削減量の一部を参加国の合意の上で当該事業が実施される国以外の参加国の削減量に加えることを認める制度でございます。
 その次に、クリーン開発メカニズムでございますが、これは途上国が排出削減等の事業を行いまして途上国における持続可能な開発に役立てると同時に、この事業によって生じる排出削減量について認証を受けた上で附属書Tの締約国、先進国に譲り渡し、先進工業国の削減量に加えることを認める制度でございます。
 これらの制度の具体的なあり方については、現在国際的に検討が進められているところでございます。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 それでは、少し本題に入らせていただきたいと思います。
 各委員の皆様にはお手元に資料をお渡ししたのですが、実は九月十七日の国土・環境委員会におきまして私が日経の記事を取り上げまして、九月十三日の日経に日本政府が条約事務局に共同実施もしくはCDM、今お伺いをした二つでございますが、について提案をしたというような記事が出ておりますが、その中身はどういうことだということをお伺いしました。それに対して岡田局長の方から、「まず第一、そのような提言を、日本の提案を日本の政府がしているということはございません。」という御答弁をちょうだいいたしました。
 ところが、実はお手元の三枚目を見ていただきますと、これ実は条約の事務局から出ているホームページなんです。条約の事務局から出ているホームページにおきまして、四番目、五番目、丸のついているところでございますが、これを見ていただきますと、一九九八年セプテンバーとなっていまして、これ九月十日に受け取ったということになっています。それから五番目もノンペーパーで、これは両方ジャパンというのがありまして、これも一九九八年の九月十日に受け取ったというのがありまして、これが実は条約事務局のホームページに九月二十二日に載りました。ところが、私が質問をさせていただいたのは九月十七日でございます。そして、私の質問に対しまして政府委員の方からは、「まず第一、そのような提言を、日本の提案を日本の政府がしているということはございません。」という答弁がございました。
 さらにもう一つですが、実は私がもう一度この日経の条約事務局に日本案として提出したということはないのですねというふうに確認をしましたところ、二枚目の資料をごらんいただきたいと思いますが、政府委員から、「いろいろ議論はしているわけですから、いろいろな意見を言っているということでは何も言っていないという意味ではございませんが、そういうふうに途上国を絡めたような提案をしているということはございません。」と御答弁をいただきました。
 ところが、最初に先ほどお話をしましたように、CDMというのは途上国を絡めないとできないものでございまして、このホームページの中においてはCDMについて日本から受け取ったと書かれているわけです。そうすると、世界じゅうのだれもがコンピューターのホームページで見られるようなものに対して、この国会の委員会の中におきまして二重の虚偽の答弁をいただいたということに対して、僕は実は前回初めての質問だったのでございますが、今回大変ショックでございまして、このようなことでいいのかということで、まず御答弁をいただきたいと思います。

○政府委員(岡田康彦君) 大変申しわけございません。若干状況を御説明させていただきます。
 私も今回、再度御質問をいただくということで御質問の趣旨をもう一度ビデオから採録して見まして、実を言いますと突然の御質問でもあったものですから、若干私の方が質問の趣旨を取り違えていたんだということを私自身がわかりました。それで、大変これは申しわけなく思っておりまして、先生には別途おわびに上がったところではありますけれども、そこは突然の御質問だったという面もあってお許しいただきたいと思いますが、特に新聞記事をもとにおっしゃいましたので、新聞記事では「途上国に排出枠売却権 日本、温暖化会議で提案へ」というような書き方で、私どもは途上国に排出枠売却権について物を言うような提案の仕方はしておりませんでしたものですから、そういうことを申し上げました。
 どうも先生は新聞記事のそのことを言っておられたんじゃなくて、条約事務局の方に私どもが出した文書のことを言っておられたんだということを、議事録を見、ビデオを見ましたところ、意味も恐らくそうであったんだろうと。これは私の方が質問を取り違えてお答えしたということで、これは申しわけないというふうに、全くそのとおりに思っておりまして、その旨先生にもおわびした次第でございますが、この委員会におきましても質問の趣旨を取り違えてお答えを申し上げたという点については深くおわび申し上げます。

○福山哲郎君 議事録を見ていただいても、二回とも私は、条約事務局に日本案として提出したということではないという、そういう事実はないのですねとお伺いをして、質問の趣旨を取り違えたでは、済みません、委員長、これはなかなか納得しがたいものがあるんですが。

○委員長(陣内孝雄君) 後で理事会で協議いたします。
 ちょっと速記をとめてください。
   〔速記中止〕

○委員長(陣内孝雄君) 速記を起こしてください。

○福山哲郎君 では、その質問を取り違えたということは別に、この時点で岡田局長は日本政府が条約事務局にこういった提案書を出されたことは御存じだったわけですか。

○政府委員(岡田康彦君) 正直に申し上げたのがいいのかどうかということはありますが、全く正直に申しますと、正直言って申し上げようがございませんが、職掌ですから知らないと言ってはいけないんですが、私自身は率直に言って知りませんでした。申しわけありません。(「そんなばかな話あるかよ」と呼ぶ者あり)ですから、私が言うべきことではないんですが、正直に言えといえばそういうことでございました。

○福山哲郎君 条約事務局に提出して、ホームページにこれだけ載っていて、実は中身はあるんです、ここに。あるんですけれども、この中身について局長が知らないで条約事務局に提出をされたということは一体どういうことなんでしょうか。

○政府委員(岡田康彦君) 申しわけありません。それは、ですから、私はもう一度さらに申し上げ
れば、私が知らないと申し上げるべき立場ではありませんので、それを知らなかったことが申しわけないだけであります。
 これは部内分掌的に言いますと、要するに地球環境部長に専担で分担してもらっているものですから私が承知していなかったということですが、それは外に向けて言えるような話じゃありませんから、承知していなかったこと自身が申しわけないということになります。

○福山哲郎君 あのとき地球環境部長は後ろに同席をされていたはずだと私は記憶をしておるんですが、地球環境部長は条約事務局に出されたことはもちろん御存じだったわけですね。

○政府委員(岡田康彦君) 申しわけございません。その点は、先ほども申し上げましたが、突然のお尋ねであったものですから、私も後ろを振り向きました、その際。ビデオでもそのとおりに映っておりますが。その後、私もどうしてこういう手違いが起こったかということについて調べてみたんですが、要は地球環境部長自身も新聞の話の方の伺った話をぼっと思って、新聞の見出しの方の……(「きちんと聞いているじゃないか」と呼ぶ者あり)、いやいや、ですから突然のお尋ねであったのでやや私自身も動揺しましたが、「途上国に排出枠売却権」ということの記事の方に気が行って、そういうことを言っているわけじゃありませんということを申し上げてしまったということであります。

○福山哲郎君 今の御答弁には基本的には全く納得できないんですけれども、環境庁長官、あのときの答弁で環境庁長官は、本当に誠実にNGOの皆さん、それから日本国民の皆さんが大変関心を持っているものに対して積極的にやっていかなきゃいけないという御答弁を私にいただきました。それで、そのことに対して、例えば国会でこういうことを聞いたにもかかわらず出てこないという中で、どこに国民に対して、京都議定書であれだけの皆さんの御努力の結果採択されたものを、次につながる直前にこういう姿勢でよろしいんでしょうか。環境庁長官、どのようにお考えですか。

○国務大臣(真鍋賢二君) ただいまの先生のお話を伺っておりまして、局長からも自分の考えの取り違いをしておったことに気がついて先生にその意を伝えておわびを申し上げたわけでありますので、そこは完全な人間というのはもう存在しないわけでありまして、ぜひお許しをいただいて御理解をちょうだいできればと大臣として考えるわけであります。
 また、浜中部長は、問題が質問されるという前提があったならばそのような答えも準備しただろうと思うわけでありますけれども、当日この席にいなかったわけでありまして、後ろの席には陪席しておったかもわかりませんけれども、その返事のいとまが、十分意思疎通ができなかったということで、これまた後ほどの打ち合わせの中で両者の理解ができたわけでありまして、浜中部長としては正規のそういう返書をいたしておったということでございますので、そのように御理解をいただきたいと存じます。

○福山哲郎君 今の話もおかしくて、常識的に考えますと、長官、大変失礼ですが、十日に条約事務局に出したものを一週間後の十七日に突然質問されたから混乱をしたから答えられなかったと。そんな責任でこの条約に対して、COP4に対して臨むという姿勢でいいのかという点が一点。
 それから二点目は、……(「局長が知らなかった」と呼ぶ者あり)局長が知らなかったという点もそうなんですが、おかしいということと、今少し興奮しましたので頭から抜けましたが、私がきのうこれを質問すると言って初めておわびに来られましたし、それまでに訂正は、これは十七日の質問ですから、きょう十月一日です。半月以上たっているにもかかわらず、その間に何の音さたもなくて、私がこれをきょう質問させていただくということになって初めてわびが入った、わびを入れに来ましたと。それは姿勢として、それが本当に今長官が言われたように勘違いをしていたということで申しわけありませんという話ではやはりこれは納得できないんですが、長官、いかがですか。

○政府委員(岡田康彦君) もう一度おわびをさせていただきたいんですが、例えば承知しておって違うようなことを言ったということであれば、そのときから私自身が良心の苦しみを感じるとかそういうことがあるんですが、全く申しわけないことに、きょうもう一遍御質問をちょうだいするということで伺って、何かまずい行き違いがあったかということで、ビデオでも再度見た結果、これほひょっとしたら私がそういう新聞の見出しの方のことにとらわれて答弁したんではないかということで、もう一遍再度中で打ち合わせをしてみたところ、やはりその可能性が強いということがわかりまして、これは大変申しわけないということで、きょう本席でもおわびを申し上げると同時に、これは先生にも直接おわびを申し上げなきゃいけないということで気がついて早速行動はいたしたところでございます。

○福山哲郎君 本当に私のような若輩が申し上げるのは生意気なんですが、そうやって、例えば条約事務局に出したり、内々で物事を進めようとする姿勢があるから、いろんな市民や国民の中から、この環境問題に対しては政府なり環境庁なりが自分たちに情報を開示してくれないという猜疑心が芽生えて、いつの間にか不信感が芽生えるというような状況が多々起こっているのではないかなという気がして仕方がないわけです。
 本当に十年後、二十年後に環境破壊が目の前に起こってきたときに、そのときに国民に一体だれが責任をとるのかといったときに、このときにこんな情報も出ていなかったじゃないかということでは僕は済まされない問題だというふうにこの問題は思っているんです。
 特に、COP4があと一月、十一月の二日から始まる。その直前でその責任者である環境庁さんがこういう姿勢で本当にいいのか、重なるようなことで恐縮なんですが、実は私はもう大変悔しくて、悲しいというか残念だというふうに思っています。
 そしたら、ペーパーを出されたということはもうお認めになられるわけですね。

○政府委員(岡田康彦君) 六月の気候変動枠組み条約の補助機開会合においての決定に従いまして、条約事務局に対しまして九月十日付でクリーン開発メカニズム及び共同実施に関する文書を提出いたしております。
 この文書は、クリーン開発メカニズム及び共同実施、それぞれの制度全般につきまして我が国としての議論のたたき台としての考え方をまとめて提出したものでございます。

○福山哲郎君 では、この提案はだれがつくられたんですか。局長は御存じなかったんですね。御存じなくて提出されたんですね。

○政府委員(岡田康彦君) 先ほど来、そのこと自体についておわび申し上げたところですから余り繰り返しませんが、内部分掌的には企画調整局の中に地球環境部というのがございます。当然私の職掌範囲ですから、私が知らなかったということは言いわけにならないことは承知していますので、その点は十分承知の上で申し上げることですが、内部分掌的には地球環境部長の責任で対応させていただいているというのが私どものあれでございますものですから、そのこと自体も事実として御報告させていただくことはやむを得ないのではないかと思います。
 それから、一点申し上げますと、私どもたまたま地球環境部長が今国会から政府委員を外されたということもございまして、その間、若干そういうこと等で対応について失礼があったということも、ダブルでいろいろとこういうことが起こる原因になったということで、いずれにしても申しわけなかったとは思っております。

○福山哲郎君 ではもう一度確認します。企画調整局内で作成されたんですね。

○政府委員(岡田康彦君) 本ペーパーは政府として提出されたものでございまして、外務省、通産省と環境庁が調整をして出したものでございます。

○福山哲郎君 外務省、通産省と調整をして政府として出されたものを局長が御存じなかったんですか。もう一度お伺いします。

○政府委員(岡田康彦君) 申しわけございません。
 ですから、先ほども申し上げましたように、今現在私も、その後そういう経緯を経ての事柄は承知いたしましたけれども、内部分掌的には地球環境部長の所掌ということで処理をしておりますものですから、その段階では存じませんでしたと申し上げます。

○福山哲郎君 では、地球環境部長の権限で通産省や外務省と調整をして、政府の意見として提出をされて、そこには局長は要は入っておられなかったわけですね。

○政府委員(岡田康彦君) その入っていなかったことがいいとか悪いとかいうことについていろいろ御議論があるかもしれませんが、事実としてはそうでございました。

○福山哲郎君 済みません、もう僕はよくわからないんですけれども、そしたら、その地球環境部長と外務省と通産省とは一体どこのテーブルで調整をされたんですか。

○政府委員(岡田康彦君) 通常の各省協議の手法で、各省と連絡をとり合いながらやったように今聞きました。

○福山哲郎君 済みません、通常の手法というのは僕はよくわからないんで、もう少し詳しく具体的にお教えください。

○政府委員(岡田康彦君) もしもお許しをいただいて、浜中地球環境部長から御答弁させていただければ、答弁させていただきますが。

○福山哲郎君 では認めますので、浜中部長、お答えください。

○説明員(浜中裕徳君) 御説明を申し上げます。
 通常の協議のルールと申しますのは、担当の専門の人間がおりまして、まずはそういう人間のレベルで関係省庁の間で意見交換をいたしまして、その結果を私に報告がございます。必要がありましたら私と、例えば通産省の担当の審議官、それから外務省の担当の審議官の方が通常の私のカウンターパートでございまして、必要がありましたら直接電話なり、あるいは直接お会いをして協議するというのが通常の協議のやり方でございまして、本件に関しましては担当者のレベルでいろいろ意見交換させていただいた結果を私が報告を受けました。それで必要な指示もしたこともあったと記憶をしておりますが、最終的には私のレベルで直接関係省庁の担当、それぞれ同格の方々とお会いをしたり電話したりということはございませんで、その担当官のレベルでの協議によりまして、最終的にはまとめさせていただいたという経緯がございます。

○福山哲郎君 一体それはいつ、何月何日の会議というかテーブルなんですか、部長。

○説明員(浜中裕徳君) 御説明を申し上げます。
 これにつきましては、九月十日までに条約事務局に提出を求められていたということでございまして、具体的に申し上げますれば、六月のボンで開催をされました補助機開会合以降、九月上旬までの間に何回もそういうやりとりをさせていただいてきたということでございます。

○福山哲郎君 長官にお尋ねします。
 局長が御存じなかったものを、政府として条約事務局に提出をされたものを長官は御存じだったんですか。

○国務大臣(真鍋賢二君) 私の大臣就任はもっと後でございましたものですから、六月の段階から議論をしておることについての詳細な報告はございませんでした。
 それで、局長、部長が今お話ししておることを伺いながら、やはり責任体制というものが各省庁にあるわけでありまして、その恒例に従って対応をしてまいったところでありまして、大臣には最終的な段階での報告はございますけれども、その過程についての報告というものは余りないわけであります。しかし、決断を迫る問題については逐次報告があり、それは大臣が決裁をいたしております。

○福山哲郎君 そしたら、長官は六月の過程を就任前ですから御存じないのはいいんですが、九月十日に提出をされた時点で長官は決裁されたんでしょうか。

○国務大臣(真鍋賢二君) もちろん大臣として決裁をいたしておるところでありますけれども、しかしながら、先ほど来お話をしておりますようにすべてに熟知するわけではございませんで、先生も御案内のことと思います。
 これはお互いに知ることは知っておる、知らないことは知らないというような形でディスクローズしていくのは、もうこれは現在課せられた大きな責務であるわけでありまして、できるだけその趣旨に沿ってやっておるわけでありまして、私もこの環境庁長官になって以来、皆さん方からのいろんな御質問をちょうだいいたしておるわけでありますけれども、知るところはすべて報告させていただいて、そして皆さん方の御意見をいただきながら問題処理に当たっていこうという姿勢は終始一貫いたしております。

○福山哲郎君 ということは、環境庁長官はいろいろ決裁しなければいけないから、それは理解をさせていただきます。
 ということは、局長は飛び越えて長官のところに行って決裁をされたということでしょうか。

○政府委員(岡田康彦君) 申しわけありません。
 先ほど来何度も申し上げておりますように、内部所掌的には、こうしたことの国際的な取り決めの取り組みにつきましては地球環境部長から直接大臣の方にお諮りをするようにいたしておりますものですから、大変失礼いたしました。

○福山哲郎君 簡単にイエスかノーかで答えてください。中央環境審議会は、このペーパーを出すときに何かこのペーパーを出しますよという形の了解を得ましたか。

○政府委員(岡田康彦君) そういうものをお諮りはいたしておりません、その段階では。

○福山哲郎君 そうすると、国会の委員会では出していませんと言って隠して、そして局長も御存じなくて、大臣も基本的にはいろいろある決裁の中で、全くわからないけれどもとにかく決裁をしたという中で、それでいつの間にか通産省と環境庁と外務省が担当者レベルで調整したものが政府の提案として条約事務局に送られたわけですね。(「だれが責任をとるんだ」と呼ぶ者あり)

○国務大臣(真鍋賢二君) 環境庁の問題としては私が全責任をしょっておるわけでありまして、そのように御理解をいただきたいと思います。

○福山哲郎君 委員長、これは大変重要な問題だと僕は考えます。本当にCOP4という大変大きな国際会議で、だれがつくったかわからない、局長も知らない、長官も知らない状況の中で条約事務局にれっきとしてこういう文書が送られているわけです。本当にこれで地球温暖化防止に対して議定書の議長国としての責任が果たせるのでしょうか。
 私は、先ほどから何回も申し上げておりますように、本当はもっと聞きたいことがたくさんあります。では、だれが作成されて、ペーパーの中身にどんな調整が行われたのか。中央環境審議会にもこれは諮られていないわけです。国民や議員や中央環境審議会、全部何も諮られていないところで条約事務局にペーパーが提案として送られているわけです。一体だれの意見が条約事務局に送られたんだと。
 もう時間がありませんのでこれでやめますが、この件に関しては、委員長を初め理事の皆さんにまたいろいろ御検討いただきまして、私もこういう状況で何をしていいのか今まだわかりませんので、また御指導をいただきたいと思います。
 どうもありがとうございました。

 


 

第143国会  参議院   経済・産業委員会  1998年9月24日

○福山哲郎君 民主党・新緑風会の福山哲郎でございます。さきの参議院選挙で初当選をさせていただきまして、本日は経済・産業委員会において初質問でございます。や000や緊張いたしておりますが、与謝野大臣を初め先輩の皆さん、何とぞよろしくお願い申し上げます。
 また、鴇田中小企業庁長官におかれましては、私の地元であります京都府の元副知事をされておりまして、大変御尽力をいただきまして、また今後ども御指導をよろしくお願い申し上げます。
 ではまず、現下の大変厳しい情勢の中で景気の問題等があるのですが、平成七年度、政府の御尽力におきまして中小企業の創造的事業活動の促進に関する臨時措置法というのがつくられまして、中小企業の創業及び研究開発等を支援することにより、中小企業の創造的事業活動を促進し新たな事業分野の開拓を図るということで、その法律によって認定を受けたにもかかわらず、現状におきまして、この認定を受けた企業の倒産が平成九年で五件、負債総額で言いますと約四十三億円、平成十年三月までで言うと三件、負債総額で言いますと七十一億円を生じている。
 こういった状況の中で、この認定に対してどういった基準であったのかということと、私はこれを悪いということではなくて、ベンチャー支援でございますからこういうリスクは生じるものだとはわかっておるのですが、今後の対策なりこういったことが起こった原因についてお答えをいただきたいというふうに思います。

○政府委員(鴇田勝彦君) 委員にも御指摘をいただきましたが、平成七年度に中小企業創造活動促進法という制度を設けたわけでございます。この趣旨は、中小企業の創業あるいは研究開発等の創造的な活動を総合的に支援しようということでこの法律を制定いたしまして、信用保証、税制、財政、各般の支援策を講じているところでございます。
 同法に基づきまして、これまでの認定件数はこの八月末現在で約四千件、正確には三千八百十四件を数えております。今、委員の方からも御指摘をいただきましたが、中小企業庁で把握している経営破綻によります認定の取り消しの件数は総計で十八件でございまして、これは三千八百十四件の中のウエートで申し上げますと全体の〇・五%、正確には〇・四七%程度になっております。
 これ自身、高い比率であるか低い比率であるかという評価についてはなかなか難しい点がございますが、認定企業の破綻の直接の原因を精査させていただきますと、若干無理な業容の拡大があっ
たりあるいは手形を詐取されたり、いろいろさまざまなケースがございます。私どもの評価では、こういったベンチャー企業特有の経営管理に関する未熟さといいますか、ふなれさがその遠因にあるのではないかと認識しております。
 このため、我々といたしましては、当然この破綻要因について分析をこれからも進めてまいりたいと思っておりますが、同時に、経営面でのサポート、今までは技術、情報を中心にやっておりますが、経営管理の面についても必要な手だてを設けるべきだろうということで、地域活性化アドバイザー制度というソフトな、人的な指導・支援の活用を今既にやっておりますので、これらについて認定企業も含めて一般的にベンチャー企業についてこういったソフトの指導体制を拡充していきたいと考えております。
 ちなみに、先ほどの〇・四七%という倒産比率でございますけれども、一般的にマクロで見ますと、製造業全体で現在〇・四九%ぐらいの倒産比率になっておりますので、まあほぼ同じ程度であろうかというのが一点と、もともとこの新規性を持った技術、サービスで創業されている方々ですので、そういうリスクというのはどうしても若干重くなっているんではないかという感じがいたしております。

○福山哲郎君 それと同様に九月十六日の日経産業新聞に、失業サラリーマンの起業を支援するということで、失業のサラリーマン、また主婦、学生にも助成制度を新設するというのを通産省が発表されましたが、これも、今のとは多少色合いは違うにせよ、かなりのリスクを背負いながらの制度が導入を図られるということになっておるんですが、この制度についての基本的な概要を少しお教えいただけますでしょうか。

○政府委員(鴇田勝彦君) 新しい制度の概要でございますが、現在ございますマル経制度、小企業等経営改善資金融資制度につきまして、いわゆる脱サラといいますか、サラリーマン失業者の方々も容易にこういった制度融資が受けられるような道を開きたいということで、現在十一年度の予算要求におきまして要求をさせていただいております。
 実を言いますと、昨年の十一月に「二十一世紀を切りひらく緊急経済対策」ということで、新規開業者向けにこのマル経制度を使えるように若干の要件の緩和を行ったところでございます。この際の基準といたしましては、過去六年間例えばある業種に従事をされてそれと同じ業種で新規創業をされる、俗称のれん分けと我々称しているんですが、そういった限定された分野でマル経資金の活国策を講じておったところですが、これからは新規雇用といいますか、雇用創出の観点も踏まえてマル経制度について緩和を図りたいということで、先ほど申し上げましたサラリーマン失業者等の新規開業資金についても、実際にその六年という事業要件等を要求せずに活用できる道を開きたいと思っております。
 これから具体的に制度設計をする必要がございますが、我々のイメージでは、例えば公共の職業教育訓練機関である程度の訓練、研修を受けられた方、あるいは中小企業事業団、商工会、商工会議所等がやっております新規開業の研修を受けられたような方についてはこのマル経制度が使えるようにしてみてはどうかということで、現在要求をさせていただいております。

○福山哲郎君 今のお話を受けてですが、私も実は国会議員にならせていただきまして、中小企業施策総覧というのをじっくり見ようと思うと、大変いっぱいありまして何が何だかわからない。地元の西陣織工業組合に行ってきまして、皆さん、これをどうやって使うのかよくわかるんですかと言ったら、さっぱりわからぬと。屋上屋を重ねているようなものもありますし、現実問題としてはもう保証枠がいっぱいになって使えないような状況も出ている。後で質問させていただきますが、商工会議所の活用等も含めてこういった施策のもう少し整理整とんができないのかなと。
 それから、こういう言い方をすると大変いけないのかもしれませんが、中小企業で働かれている方というのは日々の経営活動で大変忙しくしておられる。その中でこういった情報を精査し、自分に見合うものを探しに行って、そしてそれに見合って審査書類を出してというようなことがきちっとできるようなところは、逆に言うと余裕があるのではないかと私は思ってしまっているような状況もあります。いろいろ御努力はされているとは思うんですが、もう少し中小企業に対する情報開示のわかりやすさみたいなものに対する工夫をしていただけないかと思っているんですが、いかがでしょうか。

○政府委員(鴇田勝彦君) 中小企業対策というのは大変長い歴史を持っておりまして、その間、先達がいろいろな知恵を絞られてさまざまな中小企業者のニーズにこたえるということで多種多様な施策が整備されているということは委員御指摘のとおりでございます。基本的に、我々としても中小企業者がわかりやすいような施策にできるだけ大ぐくり化をしたり単純化をしたりということを、現在、作業を進めている最中でございます。
 ただ、現時点の対応策ということで考えますと、私ども中小企業庁あるいは通産局に相談窓口というのを設けさせていただいております。あるいは県にも同じような窓口もつくっていただいていますし、政府系の金融機関については当然のことながら各種の融資要望についておこたえをする窓口をつくらせていただいております。とりあえずは、どういつだニーズがあるかについてそういったところにも声をかけていただいて、そこで親身な対応を図るように我々としては指導をしているところでございます。
 それから、最近、昨年の秋からでありますが、特に貸し渋り対策ということで政府系金融機関についても各種の特別貸付制度を整備させていただいております。これにつきましては、例えば去る七月に大変わかりやすいパンフレットを百万部ばかりつくらせていただいて、各地の県商工会、商工会議所等の経営指導員の方から、受け身ではなくて積極的に配って説明をしていただくというような対応策を講じておりますし、今後十月発足を目指しております貸し渋り保証制度につきましても、やはり同じような部数で広報に努めていきたいというように考えております。また同時に、インターネット等の最新設備についても、ホームページを開いたりして広報に努めておりますが、今後とも御指摘のような点については改善を図っていきたいと思っております。

○福山哲郎君 先ほど長官が言われました商工会議所の件に関してなんですが、最近、新聞や雑誌で商工会議所に対する問題点等がるる指摘をされている記事が多く出ています。基本的には、大都市における商工会議所の組織率というのが二〇%と言われまして、さらに並行して、ほかの中小企業の団体もあちこちに雨後のタケノコのようにたくさん出てきている。
 その中で、先ほど長官が、経営指導員が一軒一軒回っているとおっしゃられましたが、現実問題としては、商工会議所にちゃんと入会ができるというのはそれなりの企業の方が多いというふうに私は承っております。その逆に、指導員が行くたびに、今うちは不景気やから、もう商工会議所を脱会させてもらうわという、行った効果とは別の効果が出てくるようなこともあるというふうに承っておりますし、九州の方では二割脱会をした商工会議所があるというふうにも承っています。
 現状の商工会議所についてどのような御認識を持たれているかということについてお答えをいただきたいと思います。

○政府委員(鴇田勝彦君) 商工会、商工会議所につきましては、委員御指摘でございますけれども、私ども、商工会等の組織率について調査をいたしましたところ、平成五年以降ですと、商工会の場合は組織率が六五%前後で推移をしております。もちろん、より高い組織率になることが望ましいわけでございますが、片や商工会議所につきましては、若干右肩上がりで組織率が具体的に上がってきております。私の資料によりますと、平成元
年は三一・七%でございましたが、平成九年には三六・一%、約五ポイントぐらい伸びてきております。
 ただ、いずれにいたしましても、商工会、商工会議所というのは、中小企業施策を進めるに当たりまして、指導行政あるいは情報行政各般で大変な協力をいただいている組織でございますので、こういったところにつきましてより活性化を図り、予算的にも手当てをしていくということで対応していきたいと思っております。

○福山哲郎君 今の組織率に関してはいろんな見方がございますので、非常に会員増強を図っているようなところもあるというふうに承っております。ですから、実効性とか、本当に機能しているかとか、例えば地方の商工会に行きますとほとんど専務理事さんもいらっしゃらない、事務員の方もいらっしゃらない状況の中で、がらんとしていて、ごあいさつに行ってもいつもいらっしゃらないような商工会も散見されるようなところがございまして、そういったところの一つ一つの商工会なり商工会議所の状況についてはどの程度の把握をされているんでしょうか。

○政府委員(鴇田勝彦君) 商工会議所、商工会につきましては、特に商工会は二千数百という数がございますので、規模において大変大きなものから極めて零細なものまであるというのは我々も承知をしております。
 具体的には、都道府県を通じまして、各種事業予算、人件費等々の助成をさせていただいておりますので、一応そういったチャネルを通じて個々の商工会、商工会議所についても我々は把握をさせていただいているというように認識しております。

○福山哲郎君 中小企業の問題については、地元のことも含めて、今後経済・産業委員会でもっと勉強させていただきながら、いろいろ御指導いただこうと思います。
 質問を変えさせていただきまして、昨年、地球温暖化防止京都会議というものがございました関係で、この会議については通産省、環境庁さんを初め、大変御尽力をいただいて、京都議定書という画期的なものができ上がって、私なりにも大変思い入れを強くしておるところでございます。そのことについて少し質問をさせていただきたいというふうに思います。
 まずは、地球温暖化対策推進大綱というのがことしの六月十九日につくられたのですが、実はこの地球温暖化対策推進大網に二酸化炭素を含めた三ガスが二・五%、それから代替フロンがプラス二%、それから森林の吸収源が三・七%等、政府としての二酸化炭素排出削減の見通しが述べられています。しかし、これは実は京都議定書がつくられる前に日本の政府が目標にしていた数字とほぼというか、全く数字が変わっておりません。六%削減ということを対外的には約束して、日本の国民、またNGO、NPOも含めて、大変日本は頑張る決意なんだなと思っておったところが、現実問題としては、二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素に関しては二・五%の削減と、全く実はCOP3以前と数字が変わっていないという現状がございます。
 そうすると、六%の約束をしたけれども、現実の三ガスでは二・五%で全く変わっていない。あとは、先行きCOP4以降によって決められる三・七%吸収源も含めて、大変あいまいな数字の中で日本は六%の約束をしたのではないかというふうな思いが実はあります。この二・五%の削減について、COP3前も後も、スタンスとしてはできないものはできないということで全く変わっていないのかということを通産省にお答えをいただきたいというふうに思います。

○政府委員(太田信一郎君) 福山委員御指摘のように、昨年のCOP3で、日本の場合、マイナス六%の削減目標を立てさせていただきました。具体的な内訳としては、委員言われましたように、二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素でマイナス二・五%、残念ながらフロンについては、フロンから代替フロンに移行している過程でございますので、これはぎりぎりいろんな努力をしてプラス二%ということになっております。そのほか、森林の吸収でマイナス三・七%、それから柔軟性措置という排出権売買、あるいはクリーンディベロプメントメカニズム、あるいは共同実施ということでマイナス一・八%、全体として都合六%の削減目標を立てさせていただきまして、私どもとしては関係各省合わさって一生懸命この目標に向かって努力していきたい、その基本となるのが委員御指摘のように六月十九日の地球温暖化対策推進大綱になっておるというふうに私どもは考えておるところでございます。

○福山哲郎君 ですから、その数字はよく承っておるんですが、政府はもともと六ガスは認めないというスタンスでずっとCOP3に臨まれたわけですが、それが六ガスを認めることになったときに、もともとCOP3前に三ガスで二・五%だと言っていたものが、COP3が純わってもまた二・五%、変わらずこの六月十九日の大綱で述べられているわけです。ここのスタンスは変わっていないのかということです。

○政府委員(太田信一郎君) 二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素に関して言えば、マイナス二・五%というのはCOP3前から政府の中でいろんな議論をしてきて、そういう観点からいえば、最終的にまとまった段階と変わっていないというのは御指摘のとおりでございます。

○福山哲郎君 そうすると、その二・五%削減のうちの二%が二酸化炭素というふうに計算上はなるんですが、この大綱によりますと「エネルギー需給両面の対策や革新的技術開発、国民各界各層の更なる努力などを着実に推進することにより、二・五%の削減を達成する。」というふうにあるんですが、具体的にこの革新的な技術開発というのはどういったものを想定されて、どのように今推進をされようとしているのかということを少し具体的にお閃かせいただきたいと思います。

○政府委旦(太田信一郎君) 今、委員から御指摘のありましたように、地球温暖化対策推進大網においては、まさにその対策の柱の一つとして革新的な環境・エネルギー技術の研究開発の強化が位置づけられております。
 私ども通産省としては、ことしの一月から六月にかけまして産業技術審議会という場におきまして、二十一世紀、もちろん二〇一〇年を踏まえ、さらにその先も踏まえた温暖化防止技術の研究開発に向けた検討を行いました。
 その報告を受けまして、具体的な取り組みとして例えば幾つか、三つぐらい申し上げたいと思いますが、一つは超臨界流体利用ということで、水とかアルコールをある温度、ある気圧でもって気体とも流体ともつかない状況に置きますといろんな化学反応がその中で加速される、その結果非常に省エネルギーに役立つ、そういう超臨界流体利用技術。あるいは超高効率の太陽電池、今太陽電池というのはかなり普及しておりますが、さらにそれをアモルファス等、例えば通常のシリコンをハイブリッドした形でのそういう超高効率、具体的な数字でいけば変換効率が三割近くになるようなそういう太陽電池あるいは超電導発電など、現在の技術水準ではやはり開発リスクがかなり高くてなかなか難しいものを加速的に進めていきたいということで考えているところでございます。
 こういう革新的な技術開発を進めることによりまして、先ほど来御質問ありました二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素の排出量の二・五%削減を達成し、ひいては温室効果ガス六ガス全体の目標である六%の達成を目指していきたいというように考えておるところでございます。

○福山哲郎君 それは二〇一〇年というおしりがあるわけですが、そのおしりに対してどの程度のスピードでやられるというめどがあるのかをお聞かせいただけますか。

○政府委員(太田信一郎君) 今の御指摘でございますが、例えば太陽電池を一つとりますと、我々今までアモルファスで何とか二〇一〇年ぐらいまでに変換効率一五とか二〇ぐらいを目指していたわけでございますが、こういうCO2の問題がさら
に重要なことになるという認識のもとに、私も詳しくは説明する能力もないんですけれども、先ほど申しましたように、そういうハイブリッド型とか、ガリウムとか砒素とか、そういうものをいろいろ活用した形での超高効率の太陽電池を、従来ですとやっぱりコストとか技術開発の程度を考えますと二〇一〇年を超えないとなかなかできないところを、できる限り前倒しで加速的に進めていきたいということで審議会の御報告もいただいておりますし、予算等措置を含めて我々懸命に努力していきたいというふうに考えておるところでございます。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 私は実はこれからちょっと細かい数字の質問にさせていただくんですが、通産省に対して温暖化防止に前向きではないというようなことを言いたいわけではなくて、実はいろんな数字が出ているものに対して、これがどの程度の整合性があるのかということについていろんなところから疑義が出ております。そこを明らかにすることは、大変関心の高まっている地球環境の問題に対してまず国民にそこを理解してもらうのが大事だというふうに私なりに考えますので、少し細かい数字について聞かせていただきたいと思います。
 六月三日、産業界におけるCO2排出削減対策についてという、四小委員会による第一回の合同小委員会というのがございました。この状況の中で、「電気事業の取組の概要」という欄がございまして、CO、の排出量が二〇一〇年、丁二倍程度ということで、約二〇%ふえるというふうな報告が出ています。これはこれでいいわけですが、一・二倍程度というのが出ている。ところが、六月四日、電気事業審議会需給部会の中間報告というのがございまして、この中間報告によりますと、一九九〇年が七千六百万トン排出して、二〇一〇年は六千九百万トンを排出するということで、実はここは九%ほど削減計画が出ております。
 私は細かいことがちょっとわかりにくいんですが、先ほど申し上げた「電気事業の取組の概要」の一・二倍、二〇%増と出ている報告と、その次の日にありました電気事業審議会のこの九%削減という見通しと、これは恐らく数字の積算とか状況、前提とかが違うからこういう数字になると思うのですが、よくここの整合性がわかりませんので、お答えをいただければというふうに思います。

○政府委員(稲川泰弘君) 御指摘のございました六月三日の四審議会合同小委員会における電力業界の数字でございますが、これは自主行動計画に基づきます炭酸ガス削減目標を出しておりまして、基本的には原子力発電の導入等電力業界において行い得る供給サイドの努力をあらわしたものでございます。具体的には、自然体であれば二〇一〇年度に九〇年比一・五倍になるところを一・二倍に抑えるというものでございまして、電力業界サイドのみの、供給サイドのみの努力による炭酸ガスの削減努力でございます。
 他方、御指摘のございました長期電力需給見通してございますが、これは先ほど申し上げました電力供給サイドの努力に加えまして、需要サイドにおける抜本的な省エネを行うことを前提といたしておりまして、その分が追加的な炭酸ガスの削減になります。
 そういう意味で、両者の数字の違いは基本的にはこの需要サイドにおける今後の追加的に行われる省エネルギー対策の効果を含んでいるか含んでいないか、需要サイドのものは電力会社の努力の及ばない範囲、範囲外でございますので、そういう意味でこの需要サイドにおける数字を含んでいるか含んでいないかがこの数字の差でございます。
 したがいまして、この電気事業者の努力の経緯のほか、需要面のいろんな総合的な対策の効果、その二つを今後注視してまいりたいと考えております。

○福山哲郎君 ということは、先ほどの一・二倍というのは産業界が努力をした結果という話で、こちらに関しては省エネの技術を含めて需要サイドの話を抑えた結果の差がここに出ている、それが約三割近くあるということでございますね。
 次に行かせていただきます。
 その同様の合同小委員会において、製造業について三%削減というような意見が通産省から出たということを漏れ伺っておりますが、この四小委員会の第一回合同小委員会の議事録というものは拝見させていただけるものでしょうか。

○政府委員(太田信一郎君) 公開になっておりますので、お届けさせていただきたいと思います。

○福山哲郎君 そこで、三%削減という話が出ているのですが、それが昨年の十月十三日、地球温暖化問題の国内対策に関する関係審議会合同会議というところへ出された資料がございまして、これによりますと、CO2排出量は産業部門で言うとマイナス七%という表記になっております。
 先ほど申し上げましたように、ことしの六月三日の合同小委員会で産業界として三%削減だと言われたことと十月の審議会合同会議での七%削減についてもやはりちょっと数字が違うというふうに承っておりまして、そこについて御説明をいただければと思います。

○政府委員(太田信一郎君) 日本の地球温暖化対策を進めるに当たりまして、CO2等の排出削減に向けた産業界の自主的取り組みを促進することが極めて重要であることはもう論をまたないところでございます。こうした観点から、経団連の環境自主行動計画を初めとした産業界の自主計画について、福山委員おっしゃられたように、産業構造審議会、総合エネルギー調査会などの四審議会の合同小委員会のもとで業種別の分科会を設け、ことし六月に各業種ごとの行動計画についてフォローアップを行ったところでございます。
 御指摘の三%という数字は、こうした各分科会における行動計画の聴取に基づきまして産業界による自主的取り組みの削減効果を計算したものでございますが、こうした産業界の自主的取り組みによる効果のほかに、私ども今度省エネ法を改正させていただきまして、中堅工場における省エネルギーの強化、あるいは必ずしも産業界の自主取り組みの中に織り込まれていないものも含めて今後の技術開発、さらには、ただいま資源エネルギー庁長官から御説明を申し上げました、電力部門における需要がある想定のところで落ちついたときにおけるCO2原単位の改善効果を加味することにより、産業部門全体としてマイナス七%の二酸化炭素排出削減の効果を目指していかなければいけないと思っております。そういう観点から、今後ともフォローアップをこれは毎年必ずやっていきたいと思っております。
 それに加えて、トップランナー方式の導入等による省エネルギー法の施策の実施、さらには技術開発の支援などを進めて二酸化炭素の排出削減に努めていきたいというふうに考えているところでございます。

○福山哲郎君 ということは、先ほどと大体同じような見解だということですね。なるほど、わかりました。
 それでは、またもう一点お伺いさせていただきます。
 本年の六月十一日に総合エネルギー調査会需給部会において、エネルギーの長期見通しを出していただきました。大変御苦労があったというふうに思うんですが、一つは、例えば地球温暖化の対策に関して言うと、六省庁の九審議会から成る地球温暖化問題関係審議会合同会議というところで地球温暖化対策というのは行われまして、先ほどのいろんなものが決まっていくという状況でございますが、このエネルギーの需給見通しの策定は通産省の総合エネルギー調査会で行われているということになります。
 私は、エネルギー部門というのは日本の産業政策そして日本の経済問題も含めて大変根幹をなすものだというふうに認識はしておりますが、これだけ地球環境の問題、温暖化の問題が出てくると、通産省一つの省庁だけにかかわる問題を超えて大変大きな、横にまたがった横断的な問題となってきているような気が私個人としてはいたしております。例えば、エネルギーの長期見通し等は、一省
庁ということではなくて、地球温暖化対策のように各関係省庁と横並びというか横断的な形で議論をするような問題ではないかというふうに考えておるんですが、いかがでございましょうか。

○政府委員(稲川泰弘君) 今回、長期エネルギー需給見通しを改定いたしましたが、これは総合エネルギー調査会設置法に基づきます総合エネルギー調査会において、エネルギーの専門的立場から審議を行い取りまとめたものでございます。
 今回の改定につきましては、先生から御指摘をいただきましたようにむしろ横断的な問題意識を踏まえました経緯をとってございます。昨年八月以降、関係各省の御協力を得ましてこの省エネ対策というのを積み上げてまいりました。
 また、この積み上げた対策内容につきまして、先生からも御指摘のありました関係九審議会合同会議でこの対策内容、全体的な考え方、この検討が行われまして、むしろこうした検討を土台といたしまして、今回総合エネルギー調査会でエネルギーの側面も含めまして政策対応の可否を検証してまいったものでございます。また、当然この見通しの審議は全部公開で行っておりまして、審議を含めて全部公表をいたしてございます。
 こういった意味で、委員の方々によりまして、国民各層の御意見も踏まえつつ現在の見通し改定が行われたものというふうに理解してございまして、むしろ先生から御指摘をいただきました横断的な問題意識を持ち、関係省庁との横断的な協力のもとでこれをつくり上げた、あるいはこの審議会で御審議を賜ったと我々は理解をいたしてございます。

○福山哲郎君 各省庁から省エネについて集められたというのは、何かそういうテーブルがあって集められたんでしょうか。

○政府委員(稲川泰弘君) 昨年の七月中旬であったかと思いますが、当時、総理から通産大臣、環境庁長官、その他の大臣が呼び集められまして、COP3の京都会議のために国内で相当の省エネを進めなければこの炭酸ガス削減目標をつくる過程での議論も非常に難しい、ついては各省それぞれ省エネルギー対策を積み上げるべしという御指示がございまして、資源エネルギー庁、通産省がその幹事役となりまして政府部内での事務的な連絡をとり合いながらこの対策を積み上げていったものでございます。その成果は先ほど御指摘のありました関係九審議会合同会議に上げまして、その中身の御検討を賜ったものでございます。

○福山哲郎君 ということは、その事務レベルの会議に関しては表に出ていないわけですね。

○政府委員(稲川泰弘君) 広く公開をして各省の会議の内容をお示ししたものではございません。まさしく政府部内の相談として対策を積み上げていったものでございます。

○福山哲郎君 今のは省エネの方ですから需要側の話ですが、供給側に関しては横断的に省庁間で議論が行われたという経緯はないんでしょうか。

○政府委員(稲川泰弘君) 供給サイドの大きな枠組みにつきましては、先ほどの関係九審議会合同会議の方に、九〇年レベルに安定化させるために二つのことをなすべき必要がある、一つは今の省エネでございまして、これは各省の対策によって実現をお願いするものでございまして、それからいま一つのものは、既に目標にございます原子力発電あるいは新エネルギーについて現在まで掲げてきた目標を達成することによって供給サイドで炭酸ガスを発生しないエネルギー供給を図り得る、そういう枠組みをこの関係九審議会合同会議にお出しをして、そこで御議論を賜っております。その議論の経緯は関係九審議会合同会議の最終報告の中で触れられているところでございます。

○福山哲郎君 その合同会議というのは、今言われたのは六月三日の話ですか。

○政府委員(稲川泰弘君) 十一月であったかと思いますが、数度にわたります関係九審議会合同会議の審議の結果を取りまとめたものでございます。

○福山哲郎君 それは議事録残っているわけですね。議事録というか、それは公開されているわけですね。

○政府委員(稲川泰弘君) 最終報告はもちろん世の中に公表されております。

○福山哲郎君 それを踏まえて、六月十一日の長期需給見通しにつながったということですね。

○政府委員(稲川泰弘君) さようでございます。
 一月の下旬から総合エネルギー調査会が審議を開始してございますが、その中における大きな枠組み、省エネ、あるいは原子力、新エネに係ります大きな枠組みについては関係九審議会合同会議の取りまとめを土台として検討を続けたものでございます。結果においても同様の結果になっております。

○福山哲郎君 そして次に、そのエネルギー長期需給見通してございますが、私の承っているところによると、この見通しの数値としては、二〇〇〇年までは経済成長率を三%という前提で積算をする、そして二〇〇〇年以降は経済成長率を二%ということで積算をして今回の長期エネルギー需給見通しを出しているというふうに承っているので、それで間違いないでしょうか。

○政府委員(稲川泰弘君) 御指摘のとおりでございます。

○福山哲郎君 現下このように低成長時代に入りまして、本年も残念ながらマイナス成長になるかもしれないという状況の中で、まず二〇〇〇年までに三%成長で長期見通しを立てられたという根拠はどこにあるのかお教えいただけますでしょうか。

○政府委員(稲川泰弘君) 二〇〇〇年までの数字あるいは二〇〇〇年以後の数字につきましても、既に発表されております経済審議会あるいは産業構造審議会の報告をベースといたしてございます。
 ただ、この作成過程は、途中年次を区切ってエネルギー需要量を出すというやり方ではございませんで、二〇一〇年までに長いいろいろな経緯を経ながらどういう収束の仕方をするものかということでございまして、結果的には期間を通じておおむね二%程度の経済成長を前提としたものになっていると考えてございます。

○福山哲郎君 済みません。もう一回確認させてください。
 今おおむね二%程度と言われまして、その前は、二〇〇〇年までは約三%、二〇〇〇年以降は二%と言われましたが、押しなべたときの二%というのと今の表現はどこが違うんでしょうか。

○政府委員(稲川泰弘君) 冒頭先生が御指摘になりましたように、二〇〇〇年まで三%、その後二%という前提に変わりはございません。
 ただし、長さを考えますと、全体的な効果としては、二〇〇〇年以降のものの効果の方が非常に大きく出ている結果だと我々は理解してございます。

○福山哲郎君 もう一度お答えをいただきたいんですが、三%と二%の積算の根拠は、先ほど審議会での議論を踏まえてとおっしゃられたんですが、じゃその審議会も含めて、どうして三%と二%というのを前提として置かれているのかということをお聞かせいただけますでしょうか。

○政府委員(稲川泰弘君) この経済成長の見通しそのものについては、総合エネルギー調査会自身が数字を定める性格のものではございませんので、既に公表されている経済審議会あるいは産業構造審議会の数字を見て、おおむね二%程度というのはこの二つの数字のまとまったところでございますので、それを前提に作業を行ったものでございます。

○福山哲郎君 そうすると、その経済審議会等で踏まえられた数字が、今後ひょっとすると日本の経済状況の変化に伴って、例えばじゃその経済審議会ではゼロ%なり一%の成長で審議を進めていこうということになったときには、通産省の言われているこのエネルギー見通しもそういうように数字は変化をするということでしょうか。

○政府委員(稲川泰弘君) 長期的な見通しを国として数字を置きかえて検討するということであれば、我々もこの長期エネルギー需給見通しをいず
れ改定する段になってくると考えております。

○福山哲郎君 そこで、これはよくわからないんですが、現下、本当に日本は低成長に苦しんでいます。先ほども言われました三%、二%の経済成長をすればそれだけ景気はよくなるわけですから、それを僕はあえて否定をする気は毛頭ないのではございますけれども、現状がマイナス成長か辛うじて一%かと言われているところで、二〇一〇年までに三%、二%の前提でエネルギー見通しを立てることについて、結構そこのギャップというのが大きくなるんではないかなということを私は今考えております。逆に、ある積算モデルを使って長期エネルギー需給見通しがつくられているということならば、じゃ二〇〇〇年までに例えば今の現状に合わせて一%、二〇〇〇年以降は希望も含めて二%というような形で、いろんな数字を入れかえればそれでエネルギー長期需給見通しというのは全体として変わった数字が出てくるというふうに考えていいわけですね。

○政府委員(稲川泰弘君) 需給見通してございますから、前提条件を置きかえればいろんな数字が出てくることは確かだと思います。
 ただ、我々考えてございますのは、資源開発とか関連施設の整備等に非常に長期間を要するというのがエネルギー分野の非常に大きな特色でございますので、したがいまして、こうした需給見通しを考えるに当たっては、短期的な経済動向というよりも長期的な経済の先行きということを前提にしてひとつ物を考える必要があるというのが第
 一点でございます。
 それから、さらに、この長期エネルギー需給見通しというのは、エネルギー需給に関する単なる試算といいますよりも、これに関して達成すべき政策目標あるいはそのための具体的な対策を明らかにするという役割があると我々は理解してございます。いわば一定の成長率、望ましい成長率と申し上げた方がよろしいかもしれませんが、そこであるべき需給両面の努力、需給構造というものを示すという政策的な意味合いがございます。
 したがいまして、経済成長率を落とした場合の試算というものはやっておりませんけれども、結果としてあらわれております今回の需給見通しは、二〇一〇年までの十数年間、エネルギーの伸びをほぼゼロにして経済成長を支えるという結果になってございまして、いかなる経済成長率を前提とした場合においても非常に厳しい内容であろうと我々は理解してございます。
 日本の現状、既に世界的に有数の省エネを実現したエネルギー効率の非常に高い国でございますので、今後、このエネルギー効率をさらに上げるためには、技術開発のほか、かなりの省エネ投資が必要でございまして、こうしたものを実現するためには、むしろ逆に、ある成長率がなければエネルギー効率というのは今後高まっていかないのではないか、かようなことも考えている次第でございます。

○福山哲郎君 大変今のお話はよくわかります。
 ただ、今おっしゃられました国家としての大変大きな政策目標であり達成目標であり、長期的なところで見て大変重要なものだということは理解しました。
 今そのようにおっしゃられたので、これも素朴な疑問としてお伺いするんですが、先ほどから何回も申し上げていますように、我々の環境、人体に対する影響、また生態系に対する影響も含めて重要にかかわってきている状況の中で、政策目標でありますこのエネルギー需給見通しは、それならば、逆に言うと、その結論について国会等での承認なりの手続を踏まえるということに関してはどう思われますか。

○政府委員(稲川泰弘君) 今回の改定の経緯はるる先ほど申し上げましたとおりでございますが、形式的には、これは総合エネルギー調査会設置法に基づきましてエネルギーに関する重要事項を調査、審議するという一環としてエネルギー調査会が策定をしているものでございます。
 もちろん、この議論の過程で、各省、各界の御意見を賜りながら審議を進めており、公開のもと、資料も公表して現在までやっておること、御報告のとおりでございますが、我々としては、各界の御意見を踏まえた内容となるよう今後とも努力していきたいと思っております。

○福山哲郎君 ですから、国会の承認等を受ける等についてはどのようにお考えになられますか。

○政府委員(稲川泰弘君) 現在の長期エネルギー需給見通しは、総合エネルギー調査会設置法に基づいて行われているものでございまして、その後、総合エネルギー対策推進閣僚会議その他にも御報告をしているものでございまして、我々がその取り扱いをとやかく申し上げる性格のものではないと思っております。

○福山哲郎君 どうもありがとうございます。
 また、もう一つ、先ほど原発等の話が出まして、私は別に原発に対してあえて反対をする立場ではございませんが、現状の住民投票の問題、いろんな地域住民等の問題の中で、原発の二十基増設を含めてCO、の排出削減の計画が立てられていると思っているんですが、原発の二十基増設というものが二〇一〇年までに本当に進むのかどうかということに大変私は疑問に思っていますが、そこに関してはどのようにお考えでしょうか。

○政府委員(稲川泰弘君) 昨今の原子力に対する一般の信用、信頼感が失われていることを考えますと、大変厳しい課題であるということは我々も百も承知をいたしてございます。
 現在、二〇一〇年までに原子力発電所を運開しょうとする計画が通産大臣のもとに二十一基分提出をされてございます。これは、それぞれ一九六〇年代から立地交渉を開始しているものでございまして、決して今から新たに立地を交渉しようという性格のものではございません。
 この二十一基の中で、増設分が九基ございます。既に原子力発電所がありその隣に新たに増設をする性格のものが九基。それから、新たに新規立地のものでも、既に十数年、二十年の歴史を経ておおむね土地の取得を終了したものが六基ございます。したがいまして、土地の確保については実質的に終了していると考えているものが合わせて十五基ございます。
 もちろん、土地を確保すればそれで原子力発電所の立地ができるという性格のものでは全くございませんけれども、ただ、全く不能な課題を考えているかというと、それは二十数年の電力会社の立地の努力がありますし、また我々も来年度予算において要求中でありますが、各原子力立地地点の地域振興を含めた、雇用をキーワードにした各種の対策を検討いたしてございまして、そうした政策努力、それから電力会社のさらなる立地努力、そういうものを含めていけば決して不能の課題ではない、努力に値する課題であるというふうに考えて努力をしているところでございます。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 少し最後に細かい質問をもう一個だけ、忘れていまして、させていただきたいと思います。
 先ほどお話がありました二酸化炭素を含めて六%削減の中で、フロン、HFC、PFC、SF6に関して言うと約二%増というふうに増加を見込んでおられます。しかしながら、本年五月二十九日の化学品審議会によりますと、HFC、PFC、SF6に関して言うと二〇一〇年までに約四%増というものが見込まれているわけです。
 これは四%増というと、数字のマジックで何かややこしい話なんですが、日本全体の温室効果ガスの排出量の中でこの今言った三ガスの占める割合というのは、一九九五年ではわずか三・四%ですし、一九九〇年では二・九%にしかすぎないんです。全体の中では、その三ガスの占める割合というのは二・九と三・四%にしかすぎない。その状況で、化学品審議会では二〇一〇年までに四%しかふえないというふうに言われているわけです。
 ということは、全体のマスの中でたった三%のものが全体で四%しかふえなくて、この目標全体の中でフロンが二%増加をするという見通しは、増加の見通しとしては余りにも大き過ぎる見通しではないかなというふうに思っているのですが、そこはいかがでしょうか。

○政府委員(河野博文君) 確かに、御指摘の化学品審議会で取りまとめました中間報告の対策を計算いたしますと、フロン等の三ガスの排出量は微増にとどまっているのは御指摘のとおりでございます。
 ただ、これはCOP3を受けまして、かなり高い努力目標を設定した各業界の努力をさらに集計した結果でございます。それぞれの分野で今後の技術開発の進展あるいは関係者の幅広い協力、そしてまた国際協調といったような諸要素が所期の計画どおりに実現する、また関係者も最大限の努力をするということで何とか到達できるかもしれない試算ということでございます。また、それぞれの分野の推計値でございますけれども、これも同様に最大の努力が結実した場合という試算でございますし、その前提条件も分野ごとによってかなり差があるということは認めざるを得ないところでございます。
 したがって、御指摘の数字はあくまでそういった種々の前提条件がすべて実現された場合を前提とした仮定の試算でございますから、より高い努力目標を設定してそれに邁進することによって、御指摘の炭酸ガス換算で二%増の範囲内で何とか抑制していきたいということを考えているところでございます。

○福山哲郎君 ということは、このフロンに対しての二%増加という見通しというのは多少、変な話ですけれども、水増しというか、ぎりぎりのところで今計画をつくっているから、そこの努力も踏まえた上で少しは余裕を持ってプラス二%と見ているというふうな表現、お答えと受け取ってよろしいんでしょうか。

○政府委員(河野博文君) 正直申し上げて、余裕を見て二%というほどの自信はないというのが申し上げられることだと思います。
 確かに、試算をして企業種の努力目標の結果を足しますと、炭酸ガス換算で二%とはいかず、むしろもっと低い数字になるのは御指摘のとおりでございますけれども、それぞれの業界が非常に高い努力目標を設定するための前提を置いておりますので、その前提がすべて、しかも企業種にわたって実現するかどうかというのは技術開発要素も含めて未知の分野もございますので、これをもって余裕を持って二%がクリアできるというふうに申し上げるのはやや私どもとしては借越かと思っております。

○福山哲郎君 どうもありがとうございました。
 いろいろ本当に重箱の隅をつついたような質問をさせていただいて大変失礼だとは思ったんですが、私は、現下の不景気に対して国民の皆さんが大変不安に感じているとともに、中長期的には昨年のCOP3というのは、ある意味でいうと、いい意味で環境に対する意識を国民の皆さんに持っていただいた反面、その分、将来に対する不安も非常に中長期的にもかき立てたというふうに思っています。
 それは両方功罪相当ばだというふうに思っておりまして、短期でいうとこの景気の不安、長期でいうと環境を含め年金等の不安も含めて、どうも日本は元気がなくなっているような気がしておりまして、それを含めてこの二〇一〇年までの六%の削減というものに対して国民の皆さんは本当にできるんだろうかという懐疑心を持っているということで、大変細かい失礼な質問をさせていただいたことをおわびさせていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。本当にありがとうございました。

 


 

第143国会  参議院   国土・環境委員会  1998年9月17日

○福山哲郎君 民主党・新緑風会の福山哲郎でございます。さきの参議院選挙で初当選をさせていただきまして、実は本日、初めての質問でございます。やや緊張しておりますが、どうかよろしくお願い申し上げます。
 まず、真鍋長官にお伺いをしたいと思います。
 私は、昨年、民主党のCOP3担当としてドイツのAGBM8、ボンにまで行かしていただき、また地元の京都でCOP3があったということで、大変この問題に関しては今、思い入れを熱うしております。
 現実に、そのCOP3の状況の中で議定書が採択をされました。その議定書というのは当時の環境庁長官でありました大木長官、それから環境庁の皆さん、そして関係各位の大変な御努力によって採択をされたということも私も目の当たりにしております。
 しかし、その期待を込めた京都議定書はこれからどう動いていくのか、また国内でどういう対策をされるのかということがやはり国民にとっては大変関心事でございますし、これだけ不確実性を前提とする環境問題の中で、この時期にあの大木環境庁長官の次に御就任をされた長官の御決意と、私もつい二カ月ほど前までは一般の国民とし
 て環境問題に関心を持っておりましたので、国民、またNGO、NPOの皆さんに御決意とメッセージをまずはいただければというふうに思います。

○国務大臣(真鍋賢二君) 福山先生がまさに初めて取り組んだという御意見でございましたが、そうでなくて、COP3にも大きく関心、関与を持たれたわけでありますから、私以上の知識を持つておられるわけであります。
 そういうことで、昨年のCOP3が大変成功裏に終わったということは先ほど来私からも申し上げたところでありますが、そのフォローイングをしなきゃならない、幾らいい案をつくり上げてもその後の経過がスピードダウンしたのではだめだということで、きょうあす、非公式閣僚会議でございますけれども東京で会議を持ちまして、前回議長をしました大木先生にも出席をしていただきましてその意見を賜っておるところであります。私も心残りであったわけでありますけれども、けさの開会のごあいさつだけにして、今日この法案審議のために出てまいったわけであります。確かに、きょうの非公式会議も重要であるわけでありますけれども、この法案がいかに重要であるかという認識はそのことによってもお知りをいただきたいと思っておるところであります。
 そんなことで、COP3が成功したからは、それはCOP4に何としてもつないでいかなきゃならないということで、実は昨夜、歓迎会をやったわけでありますけれども、皆さんがこういうことを申したということを申し上げたわけでありますけれども、やはりCOP4を成功させなんだら3で成功してもだめなんだという気持ちを皆さんが持っておりまして、それで今回COP4が開かれるブエノスアイレスの議長さんも、環境大臣も参りまして、一生懸命に成功を期しておるわけであります。
 ですから、ひとつこれを継続していって、これからの地球温暖化問題対応をしっかりとやってまいりたいと思っております。私も浅学非才でございますけれども、皆さんの御支援をちょうだいしながら、本当にこの問題に真剣に取り組んでまいりたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。

○福山哲郎君 長官の御決意を聞きまして、私も含めてよろしくお願い申し上げます。
 それでは、具体的な質問に入らせていただきたいと思います。
 まず、温暖化防止行動計画についてでございます。
 九〇年、温暖化防止行動計画がつくられまして、その第三の「行動計画の目標」のところに「官民挙げての最大の努力により、」という表現が使われまして、二酸化炭素の削減について表現がされました。それにもかかわらず、先ほどからお話が出ていますように九五年レベルで実は八・三%も二酸化炭素が増加をしている。この官民挙げての努力をすると言っているにもかかわらず八・三%ふえてしまった、削減につながらなかった理由は一体何であるか。
 それからまた、その行動計画の第四には「見直しを行い、」ということが表記をしてあるんですが、実際にこのような状況はこのままでは減らないということがわかっていたはずですから、その状況の中で見直しを実際に行われたのか。また、行ったとすれば、その中身はどういうふうに行われたのか。そしてまた、もし行われていないんだとすれば、それはなぜ行われなかったのかについて、簡潔にお答えをいただきたいと思います。

○政府委員(岡田康彦君) お答えいたします。
 行動計画に掲げられました国の施策が、既存の施策の運用の改善の範囲にとどまっておったということ、また事業者等の取り組みについての方針が示されずに自発的な取り組みが進展しなかったこと等が問題だというふうに考えて、この行動計画が十分機能しなかった大きな問題点だというふうに考えております。
 このため、本法案におきまして、国、地方公共団体、事業者及び国民が地球温暖化防止に向けた取り組みを進める枠組みを定めているところでございましてこれに基づき対策の推進を図ってまいりたいというのが現在の気持ちでございます。
 一方、見直しの規定についてでございますが、政府におきましては、毎年地球環境保全に関する関係閣僚会議を開催いたしまして、この行動計画につきまして関係省庁から対策の実施状況の報告を受けるとともに、なお一層の推進に向けて行動計画のフォローアップを行ってきております。フォローアップは行ってきていますが、行動計画の見直しまでには至っていない。もちろん、フォローアップで毎年のそうしたプロセスを経てきた。
 そうして、各省庁おのおのにおきまして計画に
盛り込まれなかった各種対策の推進について検討を行い、実施に努めてもらうという形で取り組んできたわけであります。したがって、端的にお答え申し上げれば、見直しはやってきておりません。

○福山哲郎君 今なぜ達成できなかったかというところに対しまして、自発的な取り組みが進展をしなかったことというふうにお答えいただいたと思います。それから、フォローアップはしたけれども見直しはしてこなかったというふうにお答えをいただいたと思うんです。
 そうしますと、今回のこの法案におきまして、先ほどから何回も出てきております事業者の件に関しては、これは自主的な運用をお願いしているわけですね。行動計画の自主的なものに対しては自主的な取り組みが進展をしなかったから目標ができなかった。それから、今の話ですが、この法案も五年以内での見直しということを言っているんですが、フォローアップをしたけれども見直しはしてこなかった。
 というような状況になれば、この行動計画と法案が同じような結果を導くような危惧があるのではないかというふうに普通なら考えるんですが、そこの点についてはどうお考えでしょうか。

○政府委員(岡田康彦君) お答え申し上げます。
 先ほど事業者等の取り組みについての方針が示されていなかったというふうに申し上げました。今回私どもが御審議願っている法案におきまして、事業者の取り組みは先ほど来お答え申し上げているとおりでありまして、どういうことに取り組んでいただくかということについては、基本方針を定めることによりましてまずお示しをしようと考えております。
 それからもう一点は、繰り返しになりますので簡単にいたしますが、要するに事業者のお願いしている努力義務というものも輪を広げていく努力を私どももしますので、事業者の方々にそれに取り組んでもらえるような土壌づくりをしていきたいと先ほど来申し上げているところでありまして、極めて日本型社会の中では、先ほどユニークと申しましたが、新しい取り組みのものだと考えておりまして、これをうまく機能させれば従前と同じような失敗にはならないというふうに考えております。

○福山哲郎君 ぜひ失敗なさらないようによろしくお願いしたいと思います。
 ではその次に、今お話をしました九〇年の行動計画があります。それから、本年六月十九日に決定をされました地球温暖化対策推進大綱というのがございます。それから、この法案が通りますと国は地球温暖化に対する基本方針というものをつくらなければいけないということになります。そうすると、さきの行動計画と地球温暖化対策推進大綱とこの基本方針の法律上の位置づけというか、それが一体どういう関係になっているのかということがちょっと僕は理解が今できないので、ぜひ教えていただければというふうに思います。

○政府委員(岡田康彦君) 若干戻りますが、一九九〇年に策定されました地球温暖化防止行動計画は、気候変動枠組み条約に先駆けまして、二酸化炭素の総排出量を二〇〇〇年以降一九九〇年レベルで安定化させることを目標にいたしまして、政府の講ずべき対策を取りまとめたものでございました。
 それから次に、地球温暖化対策推進大綱は京都議定書を受けまして、これも政府として緊急に推進すべき施策を取りまとめたものでございました。当時の六月十九日の段階では、ただいま御審議いただいている温暖化対策推進法案はまだ審議の途中ということでございましたので、その中には早期成立を図る、その上で法律の着実な施行を図る、こういうような記述が大綱の中になされておりますが、別途、今度は本法案の基本方針は具体例を用いつつ、各主体の講ずべき、各主体は国も地方公共団体も事業者も国民にお願いすることも含めてになりますが、各主体の講ずべき温暖化対策への取り組みの基本的事項、政府及び地方公共団体の実行計画に関する基本的事項、排出量の相当程度多い事業者が定める計画に関する基本的事項等を定めまして、今後の総合的な地球温暖化対策の方針を示すものでございます。
 本法案の成立後には、この基本方針のもとで地球温暖化防止行動計画や地球温暖化対策推進大綱に盛り込まれた施策を初め、各般の施策が総合的に着実に推進されるものと考えております。

○福山哲郎君 ということは、国民や地方公共団体や事業者は、基本的には今回の法案で出てくる基本方針、その後国がつくる基本方針にのっとって行動していけばいいということですね。

○政府委員(岡田康彦君) お答えいたします。
 先ほど来議論があり、お答えも申し上げておりますように、ただ基本方針をつくればいいというわけにはまいりませんでしょうから、いろんな働きかけが必要ですし、一人一人の国民の皆さん方の御努力もお願いしなきゃいけない、そういう相互関係のものではありますが、基本方針を定めることによって各主体の取り組みが明らかになっていくということは御指摘のとおりでございます。

○福山哲郎君 では、次の質問に移りたいと思います。
 先ほど申し上げました大綱によりますと、現状での日本政府のCO、の削減目標というのは三ガス、三つのガスで二・五%というふうに今表明をされていると思います。六%の削減目標を掲げたところの中で三ガスが二・五%、それから代替フロンに関しては残念ながらプラス二%、森林による吸収が三・七%削減、排出量等で残り一・八%という目標が掲げられていると思うんですが、私が知るところによりますと、COP3の前に日本の政府が提案をした状況の中でもこの三ガスに関しては二・五%の削減の目標だったような気がしています。
 ということは、六%削減をするということを議定書の中に盛り込みました。ところが、会議後に出てきている政府の方針もマイナス二・五だ。会議前に言っているのも三ガスについては二・五だということになると、たくさんの方の努力の結果何と日本は六%まで頑張るんだということを表明したんだと国民はみんな思っているわけです。
 でも現実問題として出てきている中身は、三ガスに関しては二・五%と変わらなくて、あとはこれからブエノスアイレスで、COP4でいろんな中身が決まってくる、森林の吸収源とか排出量取引等にゆだねられるという話なわけで、現実にそうなると、大変うがった見方で失礼な話なのかもしれませんけれども、では六%を納得して議定書を採択したときに、日本の政府は、もう会議前の姿勢とは根本的には変わらない、できないものはできないんだ。三ガスでは二・五%は変わらないけれども、ほかのがいろいろ出てきたので、ほかのいろんなものを活用して六%にすればいいから、とりあえず会議前も会議後もとにかくできないものはできないんだから、三ガスでは二・五だろうという話なんでしょうか。
 要は、そこで会議前も会議後も同じ三ガスで二・五%の削減の目標が掲げられているということに対して少し納得ができない部分があるんですが、お答えをいただきたいと思います。

○政府委員(岡田康彦君) お答えいたします。
 我が国の温室効果ガスの排出量は先ほど来お話しありますように増加基調が続いておりまして、このまま推移すれば二〇一〇年には二酸化炭素排出量は一九九〇年に比べて二〇%以上の増加を見てしまうだろうというふうに考えられております。
 そこで本年六月、先ほど申し上げた内閣の地球温暖化対策推進本部が決定した大綱におきましては、当面緊急に推進すべき国内対策を強力に進めるんだということで、そのときに二酸化炭素等の三ガスにつきましては二・五%削減を達成するということをうたっておるところであります。その限りではおっしゃるようなことになろうかとも思いますが、これは六月十九日時点でそういうふうにとにかくそれで一歩でも二歩でも進めようということで定めております。
 一方、政府といたしましては、京都議定書で新
たに加えられました代替フロン等の対策を推進するとともに、吸収源の取り扱いだとか排出量取引の具体的なルールにつきましては、現在取り進められていますところの国際的な検討の結果を踏まえて、植林の推進や排出量取引等のメカニズムの活用を図ってまいります。これも大綱でもうたっているところでございまして、それがただいま現在の政府の方針ではございます。
 それから一点、大変恐縮ですが、先ほど私、大綱の中での法案の位置づけにつきまして早期成立という趣旨のことを申したかと思いますが、大変失礼いたしました。私、記憶で申しておりましたので、「地球温暖化対策の推進に関する法律案に基づく対策を円滑に推進するための基礎を直ちに整え、その成立後速やかに以下の取組を進める。」という記述でございましたので、おわびして訂正いたします。

○福山哲郎君 もう一度だけお伺いします。
 ということは、会議前に日本は三ガスではマイナス二・五はやりましょうと言っていたことと、会議後六%ということを採択した、残りの三・五はほかでやるということで、基本的なスタンスは変わっていないと見ていいわけですね。

○政府委員(岡田康彦君) 六月十九日の大綱に定めたところの考え方は御指摘のとおりだと思います。

○福山哲郎君 わかりました。時間がないので次に進めます。
 次に、その問題の吸収源の三・七%という目標に関してなんですが、もともと日本政府は吸収源に対しては算定基準があいまいだからやめておこうということをずっと主張していて、そこは日本の政府の姿勢として大変評価をされていたにもかかわらず、三・七%を見込んでおられる。
 この三・七%というのは正直申し上げまして、これからCOP4でいろいろなことが詰まっていくんですが、先ほどの大綱によりますと、「今後の国際交渉において必要な追加的吸収分が確保されるよう努める。」と書いてあるんです。「確保されるよう努める。」という表現があるわけです。「努める。」と表記されているということは、これはもしそれが確保されない場合には、このもともと言っている森林による吸収の三・七というのが大変絵にかいたもちになる可能性があるというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

○政府委員(岡田康彦君) これは若干議定書の中身にさかのぼりまして御説明させていただきたいと思います。
 京都議定書の第三条の三の規定では、一九九〇年以降の植林、再植林等に起因する二〇〇八年から二〇一二年までの間の温室効果ガスの排出の量及び吸収の量の純変化に限って数値目標の達成に用いられるというふうにされておりまして、この方式では一九九〇年の温室効果ガスの排出量の〇・三減と見込まれているということは御承知のとおりであります。
 一方、議定書の三条の四というのがございます。ここで土地利用変化及び林業等にかかる部門に関連する人為的活動については、IPCC及びSBSTAでの検討等を考慮し、吸収源に算入し得る活動としてどのようなものを取り上げるか、またどのようにしてその吸収量等を算定するかについて議定書の締約国の第一回会合以降において決定するというふうにされているところでもございます。
 要は、仮に我が国のすべての森林等を対象として二〇一〇年ごろにおける我が国の全体の森林等による純吸収量を推計すると、先ほどのお話のような三・七%という程度で見込まれておるということではございます。今後の国際交渉において必要な追加的吸収分が確保されるよう適当な方法論等の確立を図っていくこととされているのもそのとおりでございます。
 我が国といたしましては、要は吸収源の取り扱いをめぐるさまざまな課題を科学的総合的に検討した上で、法的拘束力のある削減目標に抜け穴とならない形で、温暖化防止に意義のある形で吸収量を算入することについての国際的合意が形成されることが重要だと考えており、こうした会議に積極的に参加しているところでございます。

○福山哲郎君 今の話を受けまして、実はきょうの日経に「温暖化ガス排出権購入へ基金 対口投資を拡大 世銀構想」という中で、日本政府に世銀が温暖化ガス排出権の購入を要請したというような話が出てきたり、九月十三日の日経にも「途上国に排出枠売却権」ということで、日本政府が条約事務局に共同実施もしくはCDMに対しての提案をしたというような記事が出ております。
 この提案の内容をまずはお聞かせいただきたいということと、今お答えいただきましたように抜け穴をなるべく少なくするという話の中で排出権取引に関していうと、上限を設ける形の方が国際的には納得を得られる可能性が高いと思うんですが、今の日本の政府としてはどのようにCOP4に向かわれるつもりなのかをお聞かせいただければ。手短にお願いします。

○政府委員(岡田康彦君) まず第一、そのような提案を日本の政府がしているということはございません。
 それから二点目でございますが、あとは私ども排出量取引だとか共同実施等につきましても、要は京都議定書においてもともとこれらは国内対策を補足するものとされておるところでございまして、そうした先進国の対策の抜け穴ではなくて、先進国全体として五・二%の削減という枠の中で、相対的に排出削減費用の小さいところからより効率的な排出の削減が進められるようにするものであるというふうに考えておりまして、こうした観点からこれらの制度を透明性が高く効率的なものとすることが重要だと考えております。

○福山哲郎君 そうしたら、この日経の、条約事務局に日本案として提出したということはない、そういう事実はないということですね。

○政府委員(岡田康彦君) いろいろ議論はしているわけですから、いろいろな意見を言っているということでは何も言っていないという意味ではございませんが、そういうふうに途上国を絡めたような提案をしているということはございません。

○福山哲郎君 時間がないので次に行かせていただきます。法案の中身について二、三点お伺いしたいと思います。
 まずは、衆議院の御努力で修正をいただきまして、市町村が努力義務から義務規定に変わったと。その条文の中で、市町村と都道府県に関しては総排出量を公表するべきという表記がございます。ところが、努力義務規定になりました事業者に対しては、温室効果ガスの総排出量を含むという表記が入っておりません。八条のところで都道府県と市町村は実行計画を策定し公表しなければならないというところに「温室効果ガスの総排出量を含む。」とあるのですが、事業者のところは、私は今これを義務規定にしろという質問をしているのではなくて、この温室効果ガスの総排出量を含むということはどちらにしても努力規定なので、追加をしていただいてもいいのではないかというふうな気がしているんですが、なぜここは事業者のところでこの温室効果ガスの総排出量を含むというのが入っていないのか、理由をお聞かせいただければと思います。

○政府委員(岡田康彦君) 事業者に対しましては、基本方針に定めたところに留意して、みずからの事業活動に関し、温室効果ガスの排出の抑制等のための取り組み、これがまず一つですが、それのみならず燃費のよい自動車の製造、販売であるとか、あるいは廃棄物の減量といった消費者やあるいは処理業者という他の者の温室効果ガスの排出量の抑制に役立つ取り組みについても計画を作成し公表するように努めるように求めております。要は、自分の排出削減だけじゃなくて、トータルとして排出削減に結びつくような取り組み、これももちろん当然取り組みとしてやっていただきますよということを言っております。
 また、実は事業者の能力や業態が多様でありますから、排出削減の取り組みもまた六ガス全部ありますとそれぞれのガスへの対応のしぶりというものも違う。また、さらには植林等による吸収ま
で極めて広い範囲にわたりますので、具体的な計画の内容や範囲、公表の範囲、方法については法律上細かく規定せずに事業者の判断にゆだねる、自主的な取り組みの創意工夫を奨励する、こんな観点からそういう同一のような規定を置いていないところであります。

○福山哲郎君 もう少しお伺いしたいんですが、次に行かせていただきます。
 さらに、全国温暖化防止活動推進センターについてお伺いしたいんですが、これは民法三十四条の法人を都道府県知事が指定をするというふうに書いてあるんですが、「申請により、」ということは、複数の者が申請をしたときは、これはどういう審査基準でどういうふうに指定をされるのか。もしくは、例えばWWFジャパンのような民法三十四条法人が申請を行って地球温暖化防止活動推進センターとして名乗りを上げてきた場合に、そういうことも実際は想定をされているのかどうか、お答えをいただきたいと思います。

○政府委員(岡田康彦君) 地球温暖化防止活動推進センターにつきましては、まず一つは、地球温暖化対策に関する普及啓発を行うこと等により地球温暖化の防止に寄与する活動の促進を図ることを目的として設立された民法第三十四条の法人であることというのがございます。第二に、法律で定める業務を適正かつ確実に行りことができると認められるものであること、具体的には財産の状況だとか人的体制、実績等が業務を行う上で十分であるかといった要件を満たすことが必要になるだろうと考えております。

○福山哲郎君 そうしたら、複数の申請があった場合には、この条件にかんがみて知事が指定をするということですか。

○政府委員(岡田康彦君) 一つに限るとなっておりますので複数の場合はそういう形になろうかと思います。

○福山哲郎君 もう一つ、温暖化防止活動推進員というのがやはりあります。これに対してはどういった選出方法や選定基準を考えられているの
 か、お聞かせをいただきたいと思います。

○政府委員(岡田康彦君) 推進員にお願いするに当たりましては、地球温暖化対策に関する専門的な知識を有し、普及啓発等の活動について豊富な経験を有する方に住民の身近なところにおいて地球温暖化対策についての啓発や助言等を行うことをお願いするものでありますので、その選定の具体的な方法につきましては、地域の実情に応じた各都道府県の判断にゆだねるところだと考えております。

○福山哲郎君 ということは、その条件にかなつた方なら、例えば一般の市民とかNPOで環境問題に対して大変造詣の深い方等が推進員に選定されることもあり得るということですね。

○政府委員(岡田康彦君) もちろんであります。

○福山哲郎君 最後でございますが、附則の第二条、「法律の施行後五年以内に、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」というところなんですが、一つ、この法律の地球温暖化を防止しようという大きな意味合いから含めて、私はこの法律の施行の状況についての検討というよりも、地球温暖化の防止に対して全般について検討を加えていこうというような、やはり法律の施行の細かいことに対する検討を加えて見直すということではなくて、地球温暖化に対しての全般の見直し、それを見直してこの法律を見直そうというような大きい枠でこの法律はとらえられないかなというふうに一つ感じておること。
 もう一つは、施行後五年といいますが、先ほど来お話がありますように議定書の発効等の時期がいっかわからないですが、それが来れば、先ほど言われたみたいにもう一つ重要な法案をつくっていくということもあるでしょうが、この法律を見直して一つ一つ積み上げていくというのも一つの考え方だと思うので、二点、法律の施行の状況についての検討というのを地球温暖化全般についてもう一回見直すというような状況とか、それから議定書が発効し次第この法律を見直してさらにいいものにしていこうというようなことはお考えはございませんでしょうか。

○政府委員(岡田康彦君) お答え申し上げます。
 二点でございますが、「法律の施行の状況について」というのは、もちろんこの法律の施行の状況そのものと同時に、周囲の環境との相対的な関係というのは当然入ってくるわけでございます。したがいまして、もちろん増減の要因を分析した上で必要に応じ施策の強化が必要になるとなればまた五年以内ということで、私どもとしては少し幅をちょうだいしておきたいということで五年以内ということにさせていただいているわけですが、一方で以内としているのは、本法案の施行状況はもちろんですが、御指摘の京都議定書の発効といった国際的な状況の進展次第といった点もございますので、五年よりもっと早く必要な措置を講ずることもあり得るという意味で五年以内とさせていただいているところでございます。

○福山哲郎君 時間になりました。大変誠実にお答えいただきまして、本当にありがとうございました。