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第145国会  参議院  経済・産業委員会  1999年6月8日

○福山哲郎君 おはようございます。民主党・新緑風会の福山でございます。本日も先週に引き続きまして若干質問をさせていただきます。
 何度も申しておりますけれども、私は決して中間貯蔵に反対しているわけではございませんが、不明な点が多々あるということで、次の世代にツケを押しつけるようなことはしたくない、そういった意味で、議論を整理させていただきたいというつもりで質問をさせていただきます。
 まずは早速でございますが、五日の日に有馬長官が「もんじゅ」を視察されたと、お疲れさまでございました。そして、新聞によりますと、再開に意欲ということで長官の談話が出ているわけでございますけれども、運転再開に意欲を示された理由、根拠、そして視察をされた状況について、長官はこの分野の権威でありますので私などとは把握するレベルが違うと思いますが、わかりやすく御説明と状況を教えていただければと思います。

○国務大臣(有馬朗人君) お答え申し上げます。
 先週の金曜日の夜、現地に参りました。金曜日の夜半に近かったのでありますが、まず、「もんじゅ」を開発している若手研究者十五人ほどと話し合いました。このところ長期にとまっているものですから、研究者の意欲がうせていないかということを私非常に心配をしておりました。しかし、その若手の十五人ほどの連中と話した結果、極めてまだ意欲のある、非常に情熱のある人々だということを感じ取った次第であります。そういうことで、ちょうど私の講義を受けた子供、子供ということはございません、研究者もおりまして、そういう人たちからもいろんなお話を聞いて非常に安心いたしました。
 そしてまた、「もんじゅ」を翌日、土曜日に見せてもらったのですが、故障箇所などを詳しく見ました。そして、どういうふうに故障を直していくか、それからその後どういうふうにより安全なものをつくっていくか等々についてお話をいたしまして、この「もんじゅ」は十分安全なものだという確信をした次第であります。そしてまた、「もんじゅ」というものが持っている、そしてさらに高速増殖炉が持っている必要性ということに関して強く痛感をし、人類の将来のために科学技術を支えていかなくちゃならないという気持ちを私も持ちましたけれども、同時に、若手研究者たちがそういう強い意欲を持っているということに対して大変安心をした次第であります。
 また、若手の話を申し上げたりその翌日の土曜日の感想を申し上げたりしてごっちゃになりましたけれども、要は、若手研究者が非常にしっかりしていること、それからまた、故障をてこにしてさらに新しく安全性の高い「もんじゅ」に向けていくという努力、こういうふうなものが極めて現場の研究者の間に強く持たれているということで安心した次第であります。
 「もんじゅ」の再開に関しましては、今後ともまず安全の確保を前提にいたしまして、早急に運転を再開したいと思っております。そのためにはまず地元の方々の御理解と御協力を得なければなりませんので、今後とも説明会やシンポジウム等々で最大限の努力を続けていきたいと思っております。
 「もんじゅ」の視察をいたしまして、やっぱり研究者も含めまたその現地の方々にじかにお話しするということが非常に重要だということを強く感じた次第であります。そしてまた、自主、民主、公開の自主的なものである、自分たちでつくるものである、日本がつくる技術であるということを強く痛感をいたしました。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 長官に本当にそうやってお話をいただくと、ああそうなんだろうなと何か納得をしてしまいますが、ただ、その再開というのは、地元の御理解をいただいてというお話、それから情報公開を進めてシンポジウム等を重ねてということですが、何らかの形の再開のめどというものは、時期的なもの、それから安全もどこまで行ったら技術的に安全だということで踏み切れるのかとかいうのは、どういっためどがあるんでしょうか。

○政府委員(青江茂君) お答え申し上げます。
 時期的なめどということにつきましては、今時点におきましていつごろ再開にこぎつけることができるかということははっきりいたしてございません。まずは、地元の方々の御理解を得るというのが大きな課題。と同時に、安全審査、いわゆる改造を行いますので、安全規制当局の安全審査というものを受けなければなりません。それに相当な時日というものが必要とされるというふうに理解をしてございます。
 したがいまして、地元の方々の御理解、これが第一点、それから安全規制当局におきましての安全審査というものをクリアするという二つの仕事が残ってございます。時期的には、そういった作業を進めた上で再開というものにできるだけ早期に持っていきたい、かように考えてございます。

○福山哲郎君 めどは立っていないけれどもできるだけ早くというお答えが多くて、そういうお答えがすべてにわたって出てきますから、現実には質問をさせていただいてもそれ以上出てこないんだろうなというふうに思います。
 ただ、先週の質問で、私は委員の皆様に資料をお配りして、政府のイメージをされているとおりのグラフを示して、そして稲川長官はそのとおりですというふうに御答弁をいただきました。それでも、二〇九〇年までこのままで行って、中間貯蔵から使用済み核燃料がなくなることはない、そして二〇三〇年の千九百トンという使用済み核燃料の量も、これもまだ一億キロワット自身が不明確で、別に閣議でオーソライズをされた数字ではない、二〇一〇年の千四百トンはオーソライズをされた数字だけれどもというお話がありました。
 確かに将来のことですから、不確定なことが多くあるというのは認めますが、やはりそこのところのあいまいさみたいなものが国民にとっては不信感や不安感になっていると思いますし、自治体にとってはいつまでこの中間貯蔵が続くのだろうかという不信感になっているような気がします。
 そこで、一つお伺いをしたいんですが、六ケ所村が二〇〇五年、第二、第三の再処理工場の建設を二〇一〇年になって検討を始めるということですね。もしこの核燃料サイクルをどんどん進めていかなければいけないというお話ならば、第二、第三の再処理工場に対してなぜもう少し前倒しで議論を始められないのか、そこの理由を教えていただけますか。

○政府委員(青江茂君) お答え申し上げます。
 二〇一〇年検討ではございませんで、二〇一〇年に方針を決定いたしますということでございます。したがいまして、それに先立ちまして、当然検討を進めていくということでございます。
 先般、加納委員の方から御下問ございましたときに、私ちょっと不分明なお答えを申し上げまして、大変申しわけございませんでした。過般、原子力委員会は、原子力開発利用長期計画というものの調査検討のスタートをいたしました。その過程の中におきましても、この問題につきまして検討をさせていただきたい、かように考えてございます。

○福山哲郎君 そうすると、二〇一〇年に決定であって、これから第二、第三については検討を進めていくという解釈でよろしいわけですね。

○政府委員(青江茂君) さようでございます。

○福山哲郎君 それはどの場で検討を進められるんでしょうか。

○政府委員(青江茂君) まず、どのように持っていくのかという基本的な考え方につきましては、原子力長計という場がございますので、そういう場を通じまして検討が進められるということになろうかと思います。そして、この基本的な考え方を受けまして、事業ベースでどういうふうに具体的に建設を進めていくかということにつきましては、事業主体がその方針を受けまして事業活動としての考え方を固めていくというふうな運びになろうかと思います。

○福山哲郎君 というと、その検討の過程で、先日から議論されているような不明確な点、そして日本の原子力政策の具体的ないろんな今不明な点を明らかにさせていきながら二〇一〇年の決定まで進めていくという判断でよろしいわけですね。

○政府委員(青江茂君) そのように御理解いただけますればと思ってございます。

○福山哲郎君 そうすると、しつこいですがもう一回お伺いをしたいんですが、例の中間という問題でございます。
 稲川長官はある意味で言うと非常に正直に、そのとおりで、定義として中間を使わせていただいて、実際の使用済み核燃料は処理をされるわけだから永久的にそこには置いておかない、だけれども新しいのが入ってくるというようなお話に関してはお認めをいただきました。そういう定義でやっているということですが、ということは、ある意味で言うとその中間処理施設に対しては、処理が行われる限りはずっと新しい使用済み核燃料が貯蔵されに来て、逆に言うと核燃料サイクルが政府の考えているようにうまくいけばうまくいくほどそこには延々と貯蔵され続けるというジレンマが生じると思うんですが、そこに関してもう一度明確な答弁をいただければと思います。

○政府委員(稲川泰弘君) 前回の御審議における委員からの御指摘を踏まえまして、中間という言葉の意味するところに誤解が生じないよう正確を期して、内容を二つに分けて立地地元を含めた対外説明を行いたいと考えてございます。
 すなわち、第一に、個別の使用済み燃料につきましては、数十年貯蔵した後に再処理のために搬出されるということでございまして、この搬出については法文上の担保を置いてございます。また、中間貯蔵施設につきましては、使用済み燃料の発生量が再処理能力を上回る場合には引き続き必要となります。この二点につきまして、十分区分けをして明確にした上で対外的な説明を行うことといたしたいと思います。
 いずれにいたしましても、この期間の点につきましては、再処理工場の運転計画、プルサーマルの計画等を着実に進めることにかかってございます。こうした意味で、貯蔵期間が長期にわたることにならないように努力をしたいと思います。

○福山哲郎君 ありがとうございました。
 説明等に関してはぜひその二つのところをしっかりと分けて御説明をいただかないと、逆に不信感が増大するような結果になると思います。
 それからもう一つ、何かいろんなところで言いがかりをつけているようで嫌なんですが、六月五日の毎日新聞に、「原子力への安心感」という福井・研究センターが分析調査をした記事が載っていました。これは、六八年から九〇年の間の原子力への安心感の調査ということで、九〇年の調査が出たということに対して、何で今ごろ毎日新聞が発表されたのかなと、ちょっと不思議な気持ちはしたんです。
 この調査を見ますと、今の原子力政策の抱えている問題というのが僕は大変浮かび上がってくると思っています。この新聞記事によりますと、原発に対する安全感、これは技術的な信頼感なんですが、六八年には七九%の人が安全だと思っておられました。ところが、九〇年には四九%と半数を切っています。そして、もう一つの世論調査によりますと、これは総合エネルギー調査会需給部会の中間報告で、社会経済生産性本部がやった調査によりますと、九七年度では二七%に下がってしまいます。
 つまり、最初、六六年に東海原発ができた当時は、八割近い人が二十一世紀の夢の技術だということで大変評価をした。その後、国内の事故、それから海外でのスリーマイル、チェルノブイリ等の事故が起こって、技術的に信頼に足るという方は九七年度には三割以下になってしまいました。最初の話は安全感なんですが、心理的な信頼感である安心感で見ると、九〇年でわずか八%にも満たない状況になっています。
 心理的にほとんどの人が安心できない、不安だということに対して、数字が激減をしている、だから安全ではないから原発政策はだめだという、私はそんな感情的な議論をしているわけではないんですが、こういった数字が出ている中で、長官が言われる、安全性に対して理解を得るということは相当なエネルギーが要る。そして、これまでと同じようなやり方、これまでと同じようなエネルギーの使い方では、恐らくなかなかここが厳しいんだというふうに思っています。
 こういった数字が毎日新聞に出てきたということも含めて、この数字について、有馬長官、稲川長官、それぞれどのようにお考えかをお聞かせください。

○国務大臣(有馬朗人君) まず、旧動燃の平成七年十二月の「もんじゅ」のナトリウム漏えい事故とか、平成九年三月のアスファルト固化処理施設の火災爆発事故などによりまして、国民の方々の原子力安全に対する信頼感、安心感を損なう結果になったと考えております。大変残念なことでございました。世界的にもスリーマイル島とかチェルノブイリの事故などがありまして、信頼感が少し失われてきたのであると私は考えております。
 まず、一番大切なことは、何はともあれ、さまざまな原子力施設が無事故で完全に運転されるということが最も安心感を高める方法だと思っています。そういうことを原子力に関係する我々は大いに心がけていかなければならないと思います。
 その上で、私たちといたしましては、国民の皆さんの関心事である安心と技術的観点からの安全との間に今御指摘のような大きな乖離があることが問題であると考えております。このため、原子力の安全だけではなく、御指摘のように安心へ目を向けた努力が必要であると私も認識をしております。
 国といたしましては、まず政策決定過程において国民各界各層から幅広く御意見を伺い、それを政策に反映させていくべく、原子力政策円卓会議や、さらにまた地元の説明会などを積極的に開催していきたいと思っております。それからまた、原子力施設の安全審査の結果や、申請書、原子力安全委員会の会合等の情報公開ということを大いに図ってまいることによりまして、原子力に対する国民の皆様方の信頼回復に積極的に取り組んでまいりたいと思っておりますし、現在も大いに取り組んでおります。
 今後とも安全確保に万全を期することが一番大切なことでございますが、原子力に対する安心と信頼を得るため、まずわかりやすい情報を公開し、国民各界各層との一層の対話の促進など、政府一体となって積極的に取り組んでまいりたいと思っております。

○政府委員(稲川泰弘君) 御指摘をいただきました社会経済生産性本部によりますアンケート調査、これは総合エネルギー調査会で昨年六月に今後の原子力政策を進める上で検討するという趣旨でアンケート調査をお願いしたわけですが、この中に二つの大きな特徴がございます。
 一つは、「将来のエネルギー供給源の主力は」あるいは「原子力発電は日本にとって必要か」というような設問に対しましては、十年後は石油、三十年後は原子力がトップというような位置づけで、原子力の必要性についての御認識が見られてございます。また、「日本にとって必要か」というところも、「必要である」というのが七〇%という高い数字になってございます。
 他方で、「原子力発電の安全性についてどう感じるか。」というような質問については、五〇%が「安全でない」と。しかも、その理由としては、「国内で過去に事故や故障が起きているから」というのが四二%という数字であります。
 また、原子力発電について知りたいことのトップの六七%が「原子力発電所の安全対策」だというふうに答えております。また、「原子力に関する情報」につきまして、「情報が公開されている」か、「知りたい情報が得られている」かという質問をしておりますが、公開されていない、情報が得られていないというのが八割という高い数字になっております。
 この数字を見まして、帰結として、国民に理解を求めるための二つの対応を行うことといたしました。
 一つは、従来から各種シンポジウムやマスメディアによる情報提供をやっておりますが、このマスメディアによる情報提供に関しまして、世代、性別、各層に向けた細かい情報提供をするというのが一つでございます。
 いま一つは、双方向の対話を行おうということでございまして、通産省・資源エネルギー庁自身、各地の集会、主婦の集まり、商工会議所の集まりあるいは地方議会への説明参加、そういった双方向のことは行っていますが、加えて、総合エネルギー調査会の原子力部会自身が各地に出かけまして対話集会をやっております。最近の例では、高レベル放射性廃棄物処理処分のリポートを出しましたが、三月を挟みまして全国五カ所で、原子力部会の委員そのものが出かけまして、公募をした皆さんから御意見を伺い対話するということをやっております。現在も、原子力一般につきまして、六月、七月、三回でございますが、反対派の皆さんもお呼びいたしまして、それぞれプレゼンテーションをしていただきながら双方向の対話をするということを進めてございます。
 いずれにしても、国民への情報提供あるいは理解を求めることというのはいろんなものの積み上げの結果だと思っておりますので、いろんな機会を通じてこの積み上げを行い、また対話を行っていきたいと考えてございます。

○福山哲郎君 稲川長官が、今私が御紹介をしようと思った数字を言われましたのであれなんですが、確かに、九七年の世論調査では七割以上の人が原発が必要だと答えておられるわけです。そこは私も認めているわけですし、逆に言うと、今の生活レベルを維持するために原発はある程度仕方がないという国民の皆さんのお気持ちもあるわけです。ところが、先ほど言ったように、安全性や安心感に関して言うといきなり数字が落ちる。
 これは私自身の判断で言うと、原発に関する技術だって年々向上しているわけです。それも国民はわかっているわけです。恐らく、核燃料を使うゆえに原発が本来持っている危険性とかリスクというものを、夢ではなくて、国民の方一人一人がそのリスクがあるという事実を理解した上で、そしてやっぱり原発は必要なんだと。私は、一時期の原発反対という運動が起こっていたときよりも国民の皆さんの理解が上がった上で今の議論があるというふうに実は思っています。
 つまり、市民一人一人が原発のリスクに気づいて、気づいたけれども乗り越えて原発が必要なんだと。だから、資源エネルギー庁にしても科学技術庁にしてもしっかり頼むよと言うけれども、そこに対しての答えが返ってきていない。
 情報の出し方にしても、コミュニケーションのとり方にしても、今回の中間貯蔵の数字の出し方にしても、中間といいながら、どう考えたって、二〇九〇年まででは中間じゃないじゃないかと。今やっている政府のお役人の皆さん、大臣にしても、ひょっとしたら僕にしたって、もうその時点にはいないかもしれない。それなのに、こういった数字で中間貯蔵してくれと言ったら、残るはその自治体や住民に対する、後世の人に対するツケだけじゃないかと。そこをはっきりしてくれないことには我々は納得できないというのが国民の偽らざる心境だというふうに私は思っています。
 どうも、この間からこういう感情論を繰り返しているみたいで、僕も技術的なことがわからないのでこういう話になってしまうんですけれども、ただ、私のように原発の政策について本当に最近になって勉強し始めそしていろんな方から話を伺った者にとって、私は、イメージをしていたよりずっと国民は原発に対して理解が深いと思います。それを、余りにも政府側が昔ながらの方程式で、知らしむべからずよらしむべしというような状況でやられているからこそ、逆に不信感が増している。
 そして、この中間貯蔵の説明は余りにも不親切だというのが私は実態だというふうに思います。逆にもっと極端な言い方をすれば、コンセントをつないで電気が来ればそのもとが何かということは国民は余り考えていないかもしれない。
 そのときに、では、新エネルギーも含めてどのぐらい国が積極的にやってくれているんだということを、長官は最近新エネルギーの重要性は感じてやらなければいけないと言われていますから、そこは大変私もありがたいと思いますが、やっぱりオルタナティブをちゃんと提示した上で国民に説得をしないと、今のままの原発の政策を維持されるというのは、市民の理解が深まっているゆえになかなか理解が得られないのではないかなというふうな僕は気持ちでいます。
 新エネルギーに対して予算が一体どのぐらい使われているか、原発に対して予算がどのぐらい使われているか、その比率によって、本当にどのぐらい新エネルギーに対して積極的なのかということをこれから数字で示していって、例えば各家々に太陽光パネルがあり、風力発電があって、でもやっぱり足りないではないですかというぐらいの気概を国が見せないと、これからの原発政策はしんどいのではないか。
 私は、新エネルギーだけがオルタナティブだとは思っていませんし、それでは到底足りないことも理解をしていますが、やっぱりそういった気概を、現実問題として、国がこれから十年、二十年、それこそ第二、第三処理場が具体化する時点までに示していただかないといけないのではないか。
 私も、これから議員をやる限り、この政策とはおつき合いをさせていただきますので、そのことを最後に申し上げまして、そして有馬長官に一言御感想をいただいて、私の質問を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。

○国務大臣(有馬朗人君) 一つおわびを申し上げておきます。
 若い研究者を見ますと、何となく私の子供の世代だと思うものですからついつい子供と申しましたが、あくまでも研究者でございますので、先ほど子供と言いましたけれども、ちょっと訂正をさせていただきたいと思います。
 今、福山先生から重要なことをおっしゃられました。やはり総合的に国全体として将来のエネルギーをどうするかということを十分考え、まだまだ新エネルギーに対する国の取り組み方は弱いですので、こういう点に関してもさらに積極的に新エネルギーを開発するというふうな方向に向かい、そしてまた原子力の安全性、そして今おっしゃられました安心感をどうして得るかということについても十分国民の方々にお話をし、また国民の方々の御意見を聞きながら進めてまいりたいと思います。
 その中には、一つ非常に重要なことを今御指摘になられました、プルトニウムの使用ということです。この辺に関しても、より透明に、それが絶対軍備に使われないというふうなことを国民の方々にお話をしながら、今後も原子力の、そして広くエネルギーの政策を進めさせていただきたいと思います。

 


 

第145国会  参議院  経済・産業委員会  1999年6月3日

○福山哲郎君 民主党・新緑風会の福山でございます。
 本日は、先日の長谷川委員に引き続きまして民主党として質問させていただきますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 実は、今回、私も原子力については素人でございますのでいろいろ調べたら、世界で最初の原子力発電所が営業を開始したのが一九五七年。私が実は一九六二年生まれですから、私よりも原子力の方が年上でございまして、原発の歴史は私より古い。日本の東海原発が一九六六年でございまして、これは私が四歳のときでございます。ある意味で言うと、私の世代というのは原発とともに育ってきた世代で、その中で日本が経済成長をし、豊かになり、そして二十一世紀を迎えようとしている。ですから、別の言葉で言うと、私どもが原子力発電所の恩恵を一番受けてきた世代なのかもしれません。
 そこは私も評価をした上で、特に私は今政治家という立場で仕事をさせていただいていて次の世代を考えたときに、では次の時代に我々がこの原子力政策をどうしていくのかということを御議論させていただきたいというふうに思います。
 また、同僚議員が数々の御質問をされておりますし、現地にも行かせていただきまして、専門家の方もたくさんいらっしゃいますが、そういった意味でそもそも論から入らせていただくことをまずお許しをいただきまして、質問を始めたいというふうに思います。
 まず、今回の一部改正案では、使用済み燃料の中間貯蔵ということについて法案に取り込まれた。我が国が言っている核燃料サイクル政策を進めてきている一環だというふうに受けとめています。
 我が国は、エネルギーの供給体制において石油を中東に依存している。また、九七年には私の地元京都で開かれましたCOP3においてCO2削減への国際的な約束をした。しかし、それに反してエネルギー需要は増加する一方だという大変難しい中で、安定したエネルギーを確保しなければいけないということで原子力というのがあるわけです。そして、その原子力の燃料となる天然ウランについても海外に依存しなければいけない、そういった中でのこの核燃料サイクル政策だと思います。
 では、この核燃料サイクル政策の中で、今回盛り込まれた中間貯蔵というのはどういう位置づけであって、その意義と目的について、もう何度も答弁をされていて口が酸っぱくなるような状況だと思いますが、お答えをいただければと思います。

○政府委員(稲川泰弘君) 我が国の原子力政策は核燃サイクルを要諦にしているという点でございます。このために、青森県の六ケ所村再処理事業、プルサーマル計画などを着実に推進して、この核燃サイクルを確立すべく努力を行っているところでございます。
 ただ、この核燃サイクルの各工程に関しましては、現実には幾つかのおくれがある。再処理工場の稼働のおくれ、それから全体的な最終的ターゲットであります増殖炉の研究開発の計画に対するおくれ、そうしたおくれがあるのはまさしく事実でございます。
 この中間貯蔵対策につきましては、使用済み燃料の発生の状況と使用済み燃料を処理する再処理事業の進捗、この二つを調整するための措置として、従来からの原子力発電所内での貯蔵に加えて、原子力発電所外の施設において中間貯蔵をする事業を核燃サイクルの中に位置づけるというものでございます。
 そういう趣旨で、現状に即した現実的な対応によりまして核燃サイクルを円滑に推進していくものであるというふうに御提案を申し上げております。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 それでは、その使用済み燃料の現存量についてですが、現実には使用済み燃料は現在約一万二千六百トンあるということです。そして、その後、毎年九百トン発生し、二〇一〇年には千四百トン、二〇三〇年には千九百トンの使用済み燃料が出るというふうに言われています。
 現在は毎年九百トンだけれども、将来的に二〇一〇年に千四百トンにふえるということはどのような根拠によって算出をされているんでしょうか。

○政府委員(稲川泰弘君) 使用済み燃料の現存量、今までの累積の発生量は一万三千五百九十トンでございます。この中で、海外再処理に五千六百三十トン出しまして、それから旧動燃東海再処理工場に九百四十トンを出しておりまして、現在原子力発電所内で貯蔵されている量は七千二十トンでございます。なお、発電所内の管理容量は一万二千六百トンでございます。
 今後の年間発生量は、現在年間約九百トン程度の発生でございますが、平成六年原子力開発利用計画に示されました原子力発電の将来見通し等を前提といたしますと、二〇一〇年には千四百トン、二〇三〇年には千九百トン発生すると試算をいたしてございます。この試算は百十万キロワットベースの原子力発電所が年間三十トンの使用済み燃料を排出するという数字を使いまして算出をしたものでございます。

○福山哲郎君 千四百トンというのは、二〇一〇年までに二十基原発を増設するというシナリオにも基づいているわけですね。

○政府委員(稲川泰弘君) 御指摘のとおりでございまして、二〇一〇年において約七千五十万キロワットの設備容量を持った場合の排出量として千四百トンを算出してございます。

○福山哲郎君 そうすると次に、二〇三〇年には毎年千九百トンということが予測として出ているわけですが、この二〇三〇年の千九百トンというのはどういった根拠でしょうか。

○政府委員(稲川泰弘君) 今、二〇三〇年という超長期のもので原子力の容量を記載したものは、平成六年につくられました長期計画でございます。二〇三〇年約一億キロワットという数字でございます。
 なお、この長期計画に基づきます超長期の原子力発電所容量につきましては、過去もちろん何度かの改定をされておるわけでございますが、一番最初が昭和五十七年の長期計画で、二〇〇〇年を九千万キロワットと書いております。これを昭和六十二年に改定いたしまして、二〇〇〇年の数字を五千三百、それから二〇三〇年の数字を一億という数字で置いてございます。この六十二年の数字は、平成六年の長期計画で二〇一〇年七千五十、二〇三〇年一億という数字に改められている次第でございます。
 したがいまして、このお示しをしております法案の基礎として検討をいたしました総合エネルギー調査会原子力部会の二〇三〇年の数字としては、ここのオフィシャルな数字がこの二〇三〇年一億キロワットでございますので、この数字を使いまして計算をいたしました。
 もちろん、今、長計の議論がまさに行われておるわけでございますが、二〇三〇年の数字を幾らと考えるべきかという点につきましては、これからの人口の動態、二〇〇七年を越すと日本の人口が減る、あるいは全体としてエネルギー需要を二〇一〇年に向けて横ばいにしてしまおうという計画で今いろんな措置をとっておりますが、そうしたエネルギー需要の動向、そうしたものを勘案して今後の長計の議論の中で御議論がなされるものと考えてございます。
 いずれにしましても、二〇三〇年一億キロワットを前提に数字を入れております。

○福山哲郎君 そうすると、二〇一〇年には千四百トン使用済み燃料が出る。二〇三〇年に千九百トンということになっているわけです。そうすると、今が九百トンでございますから、二〇一〇年までに約五百トン増加をする。二十基原発を増基した上で五百トン増加するということになると、先ほど言われた一億キロワットの計算でいくと、二〇一〇年から二〇三〇年の間に五百トン使用済み燃料がふえているわけですから、単純に計算すると二〇一〇年から二〇三〇年の間にもう二十基原発がふえているというような考え方になるんでしょうか。

○政府委員(稲川泰弘君) 御指摘のとおりでございます。
 二〇一〇年が七千五十万キロワット、それから二〇三〇年が一億キロワットでございますから、この差二千九百五十万キロワット。発電機の容量、百十万とか百三十万とかいろいろ規模がございますが、おおむねおっしゃったような設備容量を増設するのがこの一億キロワットの計算でございます。

○福山哲郎君 そうすると、二〇一〇年の二十基増基ということに関しては、エネルギー需給見通しも含めて、国の実質的なエネルギー政策の中で打ち出されているわけです。
 長期計画の中では二〇三〇年一億キロワットですが、今後のことはより具体的に詰めていくと先ほど長官が言われました。しかし、二〇一〇年までの二十基について本当にできるかどうか、実現可能性については大変その達成を危ぶむ声が出てきているわけです。
 私は、これはただ感情的に反対論が多いとか、この間「もんじゅ」等で事故があった部分に対する不信感が募っているとか、そういったことでお話をしているのではなくて、原発の運転開始までのリードタイムというのは幾ら御努力されても年々長くなってきているわけです。
 これは電事審の参考資料にあった数字なんですけれども、原発の一号炉の申し入れから運転開始までは七〇年代で平均が八、九年、八〇年代に入りますと平均十五年以上、それから九〇年代になるとそれ以上という形でリードタイムが長くなっている。もちろん、目標の二十基の約半分は増設だということも僕は承っておりますから、一号炉からの年月ほどは必要ないんですが、ことしは一九九九年でございます。あと十年しかありません。本当はもうそろそろめどがついていなければ、先ほど申し上げたリードタイムの話からいって、二〇一〇年に本当に二十基できるのかどうか。これが、政府からは最大限の努力をしますというお話になるわけです。最大限の努力をしてできなかったらどうするんだという話もありますが、ましてや二〇三〇年の根拠は長期計画の中の展望、期待値でございます。
 さらに、先ほど長官がまさに言われたように、長期的展望として約一億キロワットに達することが長期計画の中に期待されてありますと書いてあるだけなんです。これが根拠だと言われると、ちょっとさすがに納得できない部分があります。今使用済み燃料がたくさんたまってきているから、だから中間貯蔵施設が必要だということは、私は重々そこは理解をしているつもりでございます。
 理解をした上で、こういった乱暴な話で法改正を求めて中間貯蔵施設をつくれということが私は不信感のもとではないかなというふうに思っているんですが、その辺についてはどのようにお考えでしょうか。

○政府委員(稲川泰弘君) COP3の国際公約実現のために二〇一〇年度までに原子力発電の発電電力量四千八百億キロワットアワー、稼働率によりますが、十六から二十基の増設が不可欠というのはかねて御説明を申し上げたところでございます。
 運開に至るまでのリードタイムが非常に長いというお話がございました。まさに運開までどんどん時間は長引いてございます。現在、二〇一〇年ごろまでに原子力発電所を設置したいという趣旨で表明をされているものが二十一基ございます。このうち九基が増設でございます。それでまた、その他の十二基分は立地交渉そのものは一九六〇年代、七〇年代から既に行っております。そういう趣旨で二〇一〇年までの期間は、ほかのものと比べてもかなり長い期間の立地交渉を行っているものでございます。二十一基の中で用地が既に実質的に確保されているものは、増設の九基を含めまして全体で十五基ございます。ほぼ確定し得るかというものを含めますと十六基になります。
 もちろん、土地が手当てできれば原子力発電所ができるという性格のものではないことは十分承知してございますが、こうした中で例えば着工済みのもの、女川三号、浜岡五号、東通一号、それから炉規制法上の許可を済ませたもの、志賀等々ございます。そういった意味で、一次ヒアリングを開始した、その他の手続を既に、ある種の工程に入ったというものを全部合わせますと七基ございます。それからことし、さらにそれに加えて、地名は申し上げませんが、五基、六基年内に具体的な公開ヒアリング等を開始する、手続の開始、具体的な工程に入っていくものが追加されるべく努力をいたしているところでございます。
 そうした意味で、決して十六基ないし二十基は架空のそらごとを申し上げているつもりはございませんで、一九六〇年以降の立地の努力の積み重ねとして、二〇一〇年ごろまでに必要な原子力発電所の建設に向かって、先が確実に透明に見えたと言っては言い過ぎだとは思いますが、決して真っ暗な道を当てもなく行っているという状況ではなく、それなりに一歩一歩前進をしているものというふうに理解をいたしてございます。

○福山哲郎君 その御苦労はよく察しているつもりでございます。しかし、今長官が言われたとおり、一九六〇年代、七〇年代から頑張ってきたと。二〇一〇年でございます。五十年かかっているわけですね。長官がまさに今おっしゃられたとおりでございまして、先ほど申し上げたように、二〇一〇年で二十基があったと。その次に、二〇三〇年一億キロワットに対してまたプラスアルファの二十基という話になるわけですね。先ほど、まさに一億キロワットというのは二十基の増設を見込んでいるもので、これは今後も検討があるけれども頑張りたいというようなお話だったと思います。
 そうすると、二〇一〇年の見通しでも、先ほどお話を聞いて真っ暗やみの中を突き進んでいるのではないというのもわかりますが、用地取得で十五から十六、着工済みがたった三基というような状況、そして一九六〇年、七〇年代から一生懸命やってきた成果で、今真っ暗やみではなくて二〇一〇年でございますという話でございます。
 その中で、この二〇三〇年の千九百トンというものに対しても、私は実は今の長官の御説明を聞いてもなかなか納得がしにくい。そして、今回の法案の中間貯蔵施設に対して私は要らないと言っているわけではありません。要らないと言っているわけではないけれども、後でまたお話しさせていただきますが、日本のこの核燃料サイクルに対していろんなところで不信感が出ている状況の中で、将来すごく貯蔵施設が不足します、そして将来はこれだけ原発をつくってまだまだ使用済み燃料が出ますから、だから今とにかくつくらせてくださいというのでは、その繰り返しではやっぱりもう話が通らぬのではないか。
 この間の参考人で、東海村の村上村長があれだけはっきりと、私のところからは出していただきたい、受け入れる自治体ではなくて使用済み燃料を出していただく自治体としてきょうは来たんだと。やはりこれは、これまで政府の言ってきたこととは違って、我々自治体としては早く出していただくことを念頭に置いているということから考えても、そういう積み重ねで本当に国民の信頼が保たれるのかどうか、私はそういったことに対して大変不信感を持っています。
 実は、国民は状況が大変わかっているんだと僕は思います。昔のようにそんなに神経質な一方的な反対運動というのではなくて、自分たちがエネルギーを使っているのはわかっている、民生部門でエネルギー需要がふえていることもわかっている。その中で原発についてはある程度国民の理解もあると思うんですが、私は逆に言うと、役所側の姿勢が余り変わらない、知らしむべからずよらしむべしというような状況の中で、やっぱり情報公開を進めなければいけない。
 この間の村上村長も国民的合意形成が必要だとはっきり言われた。今回の中間貯蔵という、ある意味でいうと政策の方向がはっきりととにかく中間貯蔵しようというふうに変わったにもかかわらず、そういう姿勢が役所の方に見られないことに対する不信感がやっぱり多いのではないかなと僕は思っています。国民は多分そういった姿勢を見抜いているんだと思うんです。
 そういったことに対して、有馬長官も含め、もし御答弁を賜れればというふうに思います。

○政府委員(稲川泰弘君) 主に三点の御指摘があったかと思いますが、二〇一〇年、二〇三〇年、原子力発電所の増設可能性についてのお話がございました。
 二〇一〇年までにつきましては、先ほどの御説明の内容でございますが、着工済みがわずか三件しかないというあるいは御理解をされたのかもしれませんが、我々は二〇一〇年に向けてかなりの努力が実りつつあるということでございます。若干の言い過ぎを覚悟で申し上げれば、かなりの確度で二〇一〇年の目標に向かって近づきつつあるという理解をいたしてございます。こういう立場でございますので、多少言葉の行き過ぎは御理解を賜りたいと思います。
 他方で二〇三〇年の問題は、先ほども申し上げましたように、現在から人口が減り始める時期が二〇一〇年に近づいてくる。現在はエネルギー政策として総エネルギー需要の抑制をかなりのことで行っている。そういうプロセスを見ながら、今後、二〇三〇年の問題というのは議論をされていくものではないか。
 自身、二〇一〇年を超えて二〇三〇年までに二十基をさらにつくるとも申しませんし、それが可能だとも今申し上げる立場ではないと思います。ただし、二〇一〇年については先ほどのような表現をさせていただければと思います。
 各種の核燃サイクルの工程のおくれにつきましては、これは事実でございまして、六十二年の長計、平成六年の長計、また平成九年の閣議了解におきましても、こうした核燃サイクルの稼働のおくれに対して、さらにこれを促進するという立場と同時に、中間貯蔵を含めてそれへの現実的対応という議論をしておるところでございます。
 なかんずく二〇一〇年におきましては、二十基の増設のほかに、六ケ所再処理工場の操業のおくれによりまして使用済み燃料の対策必要量は増加をいたします。この結果、約七千七百トンの対策必要量、二〇一〇年ごろにおいても施設規模として七千七百トン程度のものを用意しておく必要があるというものでございまして、こうした各工程のおくれに対応してこの中間貯蔵施設の御提案をしているところでございます。
 最後に御指摘のありました万機公論、情報公開、この御趣旨はまことに御指摘のとおりでございまして、かような努力を、審議会の議論を全部公開するとかパブリックコメントをいただくとか、そういうプロセスをしながら意を尽くしているところでございます。

○国務大臣(有馬朗人君) 決して原子力発電所をつくることが易しいとは思っていません。
 しかし、まず第一に民生の電力をどういうふうに減らしていくか、このことを国民として本気で考えてほしいと思っています。そのためには省エネルギーを図らなきゃいけない。たびたび申し上げますけれども、私も通産省等々と、小学校、中学校の子供たちを初めとしてそういう人たちに省エネルギーを問いかけています。ぜひやってくれ、こういう運動はしていかなきゃいけない。
 それからもう一つは、新エネルギーを何としても開発していかなきゃいけない。せめてピーク時、すなわちお盆で甲子園のあるあたりのピーク時の電力は太陽電池で賄うというくらいのことは今後していかなきゃならないんです。しかしながら、本当に太陽や風力で一体どれだけ足りるかということを国民に知らせなきゃいかぬ。足りません、どうすればいいんですかと。このことに関しては真剣に皆さんでお考えいただきたいと私は思っております。今後も、原子力の長計等々、通産省とも一緒になりながら、この問題について世論を喚起していきたいと思っております。
 こういうことで、昨日、原子力委員会長期計画策定会議が発足いたしましたので、この会議にもお願いをしてさまざまな観点から今後どうしていくかを検討していただくことにしております。

○福山哲郎君 では、次の質問に移らせていただきたいと思います。
 今回、中間貯蔵ということになりました。これは衆議院の科学技術委員会の方でも議論が出ていますし、本委員会の方でも質疑が何回か出ているんですが、中間という言葉の概念の問題です。中間というのは時間的概念なのか、もしくは地域的な概念なのか。
 例えば、六ケ所村の再処理施設ができた、そこに対して各原発から出てきた使用済み核燃料を中間に貯蔵しておくための場所的な概念の中間なのか、そういう核燃料サイクルの中でどこかの中間に置いておきましょうという時間的な概念なのか。この中間という意味合いについて、どのような概念で使われているのか、お聞かせいただけますでしょうか。

○政府委員(稲川泰弘君) 結論としては両方の意味でございます。両方の意味と申し上げますのは、時間的な調整の趣旨でこの貯蔵を行うという意味での時間的調整であります。それから、場所的な中間という趣旨は、発電所の外で貯蔵を行うという意味での場所的中間でございます。

○福山哲郎君 発電所の外で貯蔵を行う意味で、外での中間というのはどういう意味でしょうか。

○政府委員(稲川泰弘君) 核燃サイクル路線の中では、使用済み核燃料はすべて再処理をされるというのが前提でございます。発電所で使用済み核燃料が生まれた、それは六ケ所村に持っていって再処理をされるまでの間、発電所の外で貯蔵をする、そういう意味での地域的中間でございます。

○福山哲郎君 そうすると、両方あると。その中で、先ほど、時間的な部分でいうと再処理施設に行くまでの調整の期間だという話です。この委員会でもよく出ていましたが、その時間的ということになると、中間貯蔵施設としてはどのぐらいの時間そこに貯蔵されるのかというのが衆議院の委員会等でも出てきているんですが、数十年というお話と、コストの計算からいって四十年というお話があります。ここについてもう少し詳しく御説明をいただけますでしょうか。

○政府委員(稲川泰弘君) この貯蔵期間は、発電所で発生をしました使用済み核燃料の個別のものを何年間貯蔵して再処理に至るか、こういう御趣旨で御理解を賜りたいと思います。
 このコストをまず幾らと考えるかという趣旨の計算を行いましたときに具体的な数字を当てはめる必要がございますので、その場合に四十年という期間を与えまして、それで貯蔵のコストを算定いたしました。その経緯で四十年という数字を総合エネルギー調査会原子力部会で使った経緯がございます。
 具体的な個別の使用済み核燃料の貯蔵期間の現実でありますが、これはまさに使用済み燃料の発生状況と再処理事業の進捗状況との調整でございますので、そうした中での要因で定まってくるということでございまして、概念的に数十年という趣旨を申し上げております。もちろん、期間を具体的に定める決定的な要因は再処理能力の稼働状況でございます。
 そういう意味で、再処理工場の早期稼働、あるいはその後の再処理能力の拡大という点に我々としては期待を持っているところでございます。

○福山哲郎君 その数十年というのが、例えばこれからその施設を立地しようという自治体に説明に行ったときに、数十年と聞いたときにその自治体の住民が思うイメージというか概念というのはそれぞれがばらばらなわけです。恐らく今、数十年と聞かれて、ここの委員会の委員の皆さんも自分の中の数十年という概念で中間貯蔵についての期間を考えた。それはやっぱり僕は余りにも説得性がないと思います。
 その中で、中間貯蔵施設を利用するというシステムそのもの、今回の中間貯蔵システムが、先ほど長官が言われたように、再処理工場の稼働がうまくいくまで頑張ったとします。もし、今資源エネルギー庁が考えられているイメージどおりに再処理のシステムが、日本の核燃料サイクルのシステムが稼働したとして、そうすると中間貯蔵施設というシステムは終わりがあるわけですね。つまり、原発から出た使用済み核燃料をそのまま再処理施設へ持っていけばいいわけですから、直接持っていくという工程が出てくるわけですね。
 今の中間貯蔵にたまっているものを全部処理できるような状態が将来あって、そうすると直接そこの再処理施設へ持っていくような状況になるということは、将来的には中間貯蔵という施設はなくなるわけですね。

○政府委員(稲川泰弘君) 中間貯蔵というシステムの制度としての存続期間の問題と、それから我々が今当面で議論をしております、発生をした個別の使用済み燃料が何年間貯蔵されるかという二つを分けて議論をさせていただきたいと思います。
 このシステムに関しましては、今後の再処理能力のいかんによります。例えば二〇一〇年に千四百トン、それまでの滞貨として三千九百トン、これを八百トンの再処理能力で処理をしていくわけでございまして、これは制度としてはかなり長期間続かざるを得ないと思います。そういう意味で、八百トンを超えて再処理工場の能力を幾つにできるものかということを、システムとしての必要性がいつまで続くかということにかかわる問題だと考えてございます。その点は、先ほど御指摘ございました立地地点に対するお話でも、再処理工場の今後の展開によりシステムそのものの存続期間というものにかわる問題であるということは申し上げたいと思います。
 それから、個別の使用済み燃料が何年間そこで貯蔵されるかということがございます。
 これは単純なモデル計算でございますが、先ほど申し上げました二〇一〇年年間発生量千四百トン、それまでの滞貨三千九百トン、これを再処理能力八百トンのままであるとすると何年間貯蔵することになるかというモデル計算をいたしますと、これはモデルでございますので余りにも簡便な計算ですが、約二十年であります。二〇一〇年に新たにそこに持ち込まれた個別の使用済み燃料が何年間その中間貯蔵施設に保存されることになるか。これを先入れ先出しのやり方で計算しますと、モデル計算としては二十年間。それで、もちろん八百トンのままの能力をずっと継続していけば、ちなみに二〇二〇年に入れられたものは何年後に出されることになるか、これもモデル計算をすると三十年になります。
 そういう意味で、もちろんこのモデル計算のとおりに八百トンのままを前提とするのか。逆に八百トンの能力の稼働率がどのぐらい、いいのか悪いのかというのにもかかわりますので、この二十年とか三十年とかいう数字をそのまま当てはめることはできないと思いますが、地元での期間の御説明に関しましてはこういう数字を使いまして、永久に貯蔵をするという趣旨のものではないということを御説明したいと思っております。

○福山哲郎君 今まさに多分その答えしかできないんだと思うんですが、例えば六ケ所以外に第二、第三の再処理工場を建設することになって、そこで稼働が多くなれば、それだけ中間貯蔵する期間が短くなったり少なくなったり、場所が必要でなくなるかというのはそれ次第だというのはまさにそのとおりなんですが、先ほどまさに長官が半永久的ではないとおっしゃることに対して僕は一つだけ疑問がございます。
 例えば、二〇一〇年に中間貯蔵施設に入れられた使用済み核燃料は三十年後には出ていくかもしれません。でも、原発はいろんなところが稼働していて、その間に、その原発からは使用済み核燃料がどんどん出てきて中間貯蔵施設に持ち込まれるわけです。幾ら日本の再処理サイクルシステムが稼働していようが、稼働すればするほど、中間貯蔵施設に保管されている使用済み核燃料を再処理工場に運んだとします、運んだとして、そこで再処理があったとしても、新たな使用済み核燃料はほかの原発で発生していて、それが中間貯蔵施設に持ち込まれることになるんじゃないですか。
 だから、例えば二〇一〇年に運ばれた使用済み燃料は三十年後出ていくかもしれません。それは半永久的ではないでしょう。でも、それに追っかけて原発で出てきた使用済み核燃料はその中間貯蔵施設にまた新たに来るわけですから、その個別の使用済み核燃料は半永久的にはここに置かれないかもしれないけれども、地域の住民やその自治体にとっては常に新しい使用済み核燃料が、サイクルが移動すればこうやって移動しているわけですから、これは半永久的にそこに置いてあるということではないんですか。

○政府委員(稲川泰弘君) 核燃サイクルというのは使用済み燃料を再処理して回転させるということでございますので、永久貯蔵とかいう言葉に対して我々がお答えを申し上げているのは、核燃サイクルによって使用済み燃料を再処理することなく永久に貯蔵する、いわばワンススルーのような態様のものを永久貯蔵という言葉で理解をし、かつ御説明を申し上げております。
 御指摘のとおり、ある施設の中で物が回転して、入って出ていって、しかし施設そのものは残るというものをとらえて長く永久に貯蔵しているんじゃないかという御指摘であらば、事実関係はそのとおりだと思います。
 ただし、核燃サイクル上の位置づけは、ある使用済み核燃料が発生をして、それがある一定期間貯蔵をされ、またその後に再処理をされて再利用されていく、こういう回転の中のもので、この回転がとまってある特定のものが永久にそこに置きっ放しになるんじゃないのか、そういう趣旨で議論をされておりますので、我々としては先ほどのようなお答えをしているわけであります。

○福山哲郎君 そういう趣旨で議論をしているのは、申しわけないですけれども、資源エネルギー庁さんがそういう趣旨で議論をされているわけであって、それは永久ではない。そうでしょう。確かに、運ばれたものが次に再処理としてサイクルに乗っかっていくわけですから、こういう形で出ていくから、これは永久に置いていないから永久貯蔵ではないと。それはあくまでも言葉の定義の問題なんじゃないですか。
 今問題になっているのは、この間の東海村の話もそうですけれども、地域の住民や地方自治体にとっては、その使用済み核燃料自身が移動しているかどうかなんというよりも、そこの中間貯蔵に実際に使用済み核燃料があること自身が住民にとっては半永久的になるのかという心配があるわけです。入ってきたものが出ていって出ていって、これは永久的に置いているんじゃないから永久ではありませんなんて、それは正直言って言葉のへ理屈以外の何でもなくて、地域の住民にとってはそれが移動しているかどうかなんてわからなくて、逆に言うと現実にはそこには使用済み核燃料は半永久的に残るということじゃないんですか。

○政府委員(稲川泰弘君) 言葉の定義の問題ですから、先生の御指摘のような御定義をされればそういう意味だと思います。
 ただ、東海村村長がここでお話しになられたこと、また我々が各原子力発電施設のかなり長い歴史の中でお話を伺っていることは、発電所で出てきた使用済み燃料を今プールに置いておりますが、各発電所でそれが再処理されることなく長々と置かれることになるのではないかというのが懸念の第一点。ついては、再処理施設についての対策を万全とするべし。また、使用済み燃料を各発電所で貯蔵していくについて、それぞれの能力をオーバーするようになってくるから、その部分をほかの地点で貯蔵するように要望をしてきておられます。
 そういう趣旨から見ると、決して例えば発電所の中のプールあるいは外のプールに貯蔵機能が常にあることが問題という趣旨ではなくて、使われた使用済み燃料が国の言っている核燃サイクルという中で回転をしているという状況をつくれ、かような趣旨として我々は理解をさせていただいております。

○福山哲郎君 今のお話は理屈としてはわかります。理屈としてはそうでしょう。でも、現実問題として、中間貯蔵施設と先ほど言われたじゃないですか、調整だと。時間的な調整と場所的な調整があって、両方あると。確かに調整です。ある使用済み核燃料はここにいて、それで再処理のサイクルに入っていくための一時期だと。でも、常に新しい使用済み燃料がここに来てここにあるということは、住民にとってみれば、失礼ながら、常に使用済み核燃料がある状態は変わらないんですよ。違いますか。

○政府委員(稲川泰弘君) システムとして存続し、使用済み燃料を回転させれば、そこに使用済み燃料というものがあることは間違いございません。それはその趣旨のものとして御説明をしたいと思います。

○福山哲郎君 そうしたら、常に新しいものがそこにあるということじゃないですか。そうしたら、中間施設が要らなくなるということはあり得ないじゃないですか。先ほど言ったように、原発から使用済み核燃料がダイレクトに行くような状況が将来起こればそれはあれかもしれないですけれども、そうでない限りは、中間貯蔵施設には常に新しいものが入ってきて出ていっているだけであって、地域の住民や自治体にとってははっきり言って半永久的にあることと変わらないんじゃないですか。

○政府委員(稲川泰弘君) したがいまして、再処理能力についての拡充あるいはその着実な実施というものを我々としてぜひ実現をしてもらいたい、かように考えているところでございます。

○福山哲郎君 正直言ってここは全く納得できないです。
 では、ちょっと次に行きます。
 お配りいたしました表を見ていただきたいと思います。
 これは政府が出していただいている数字をもとに出しました。全く数字的にはいじっていません。二〇〇五年に六ケ所村が稼働することも前提にいたしました。それから、これは可能かどうかはわかりませんが、二〇一〇年にもし再処理工場をつくるという話になったときに、二十年後に第二工場が稼働するということも仮定をさせていただきました。そしてさらには、私は良心的に、第三工場も二〇四〇年には稼働するということも仮定をして、それも六ケ所村の第一再処理工場が年間八百トン、それと同じものが二〇三〇年、四〇年という形で処理できるというふうに仮定をしました。
 そして、先ほどの二〇一〇年、二〇三〇年に出てくる使用済み燃料発生量でこの使用済み燃料の貯蔵量の推移を見たときに、これだけ政府の言っていることを良心的に、リードタイムまでも何とかうまくいくような状況まで考えて、そしてその前提でいって、実は最後のところの中間貯蔵に使用済み核燃料が要らなくなるのが二〇九〇年を超えるわけです。これが先ほど長官の言われた数十年という単位なのか。時間的な調整と言われている単位なのか。悪いですけれども、よほどの長生きでない限り、ここの委員会で議論されている方はこの時点ではいないわけです。
 これで、自治体に中間貯蔵だ、安全に対して信用してくれ、そして半永久的ではないと言われていますけれども、ここの自治体で生きている、生活をしている住民にとっては、これは自分の一生かかっても出ていく可能性はないわけです。これは数字的にです。
 そして、先ほど申し上げたように、システムとしても、長官の言われているように、概念としては確かに入ってきたものは出ていくから永久ではない、でも現実には新しい使用済み燃料が入ってきてここに置かれているわけです。
 こういう状況が出ていて、本当にこれで、中間貯蔵施設をつくってくれ、半永久的ではない、そして先ほども言われました再処理工場の稼働状況によってはそれは大丈夫だと言われたって、一体どこが大丈夫だって国民に説明ができるんですか。
 私は、先ほどから何回も申しているように、決して中間貯蔵施設が要らないと言っているわけではありません。そして、エネルギーの必要性も否定をしているわけではありません。原発の必要性も否定しているわけではないけれども、余りにもこの議論は国民には説明ができないというふうに思うんですが、いかがお考えですか。

○政府委員(稲川泰弘君) このお示しいただいたグラフは、この前提でまた箱書きの中に入っている前提でつくればこのとおりであろうかと思います。
 なかんずく、使用済み燃料の発生量、二〇三〇年千九百トンという数字を入れて計算をしておられますので、そういう意味でも、これがシステムとして第三工場までできたときに、二〇九〇年を超えるところまで必要になるというところ、まさしくこの御指摘の図のとおりだと思います。
 繰り返しでございますが、使用済み燃料を中間貯蔵する趣旨は、その先に再処理に持っていくという核燃サイクルの路線を踏襲する、実現する、確実に行うという趣旨でございまして、そういうところから、排出された使用済み燃料を個別にとらえて、それがずっとここに置きっ放しになるものではない、かような趣旨で説明を申し上げておりますし、また今後もそうさせていただきたいと思います。
 システムとして、その所要期間、システム存続期間がこの図のとおり場合によれば長くなるということは、そのとおりであろうかと思います。

○福山哲郎君 そのとおりであろうと認められると余計困るんです。正直申し上げて、恐らくこのグラフは政府の言っているものを理想型に近い形で実現してこうなわけです。現実の中で再処理がこんなにうまくいくかどうかまだわからないわけです。
 六ケ所村の再処理だって、先ほど畑委員からありましたように、徐々に徐々に延びている。そして、第二、第三の再処理工場だってこのとおり稼働していくかどうかわからない。そしてなおさら、再処理して出てきたプルトニウムやMOXなどの利用のことは考えていないわけです。そして、「もんじゅ」を含めて高速増殖炉は二〇五〇年までめどが立たない。プルサーマルにしたって、十八基動かせばプルトニウムは完全に消費できるという話になっているけれども、それについてだってまだ未定なわけです。
 これはどう見たって問題を先送りするための中間貯蔵じゃないかと言われたって、この批判はやっぱり逃げようがないと僕は思っているわけです。だから、先ほどから何回も言っていますけれども、要らぬと言っているわけではない。ただ、これで国民に信頼をしろ、国民的な合意を形成してください、そして原子力政策に対しての信頼をどんどん醸成していきましょうというお話をしていただいても、これは納得できない。
 科学技術庁長官、事前通告ありませんが、もし御意見をいただければと思います。

○国務大臣(有馬朗人君) 私は、こういう状況は正しく国民に知らすべきだと思っております。これはもう情報公開の原則がありますし、こういうすべての条件をお示しした上で、国民がどう判断していかれるかを我々としては御意見を承りながら、我々のやるべき義務を果たしていかないとならぬと思っています。

○福山哲郎君 稲川長官、いかがですか。

○政府委員(稲川泰弘君) 大臣がおっしゃったとおりでございまして、それをまた肝に銘じて今後の御説明を繰り返したいと思いますが、一つ、仮にこの中間貯蔵施設をつくらなかった場合、この部分は発電所の中に貯蔵する結果になります。
 そこで、どこで置くかというお話でございまして、どこで置くかのときに、長い三十年、四十年、るる申し上げました計画がいささかおくれつつあるという中での地元での不信感がございますので、したがって、発電所の外でも置ける体制をここに置き、かつその事情は、大臣が御指摘になられましたように、広く御説明を申し上げた上でこの新しいシステムというものをぜひ起こしたいということでございます。

○福山哲郎君 もう本当に、現状としてはどうしようもありません、サイトの中には貯蔵施設がもういっぱいになりました、それでそれは住民とそこの約束した自治体とは違う、だから中間施設をつくらせてくださいと。
 お気持ちもよくわかります。それも必要だと思います。でも、そういう現状の積み重ねをずるずる追認をしてくれと言った結果がこういう結果なんじゃないでしょうか。
 その中での情報公開や信頼の醸成やということに対してやっぱりどこか、原子力政策についても、これははっきり言って、核燃料サイクルの政策自身についても、「もんじゅ」を含めて、六ケ所も含めて、見直しをしていかなければいけない時期も来ているし、現実問題として今世紀中にこういう問題は解決しないことがもう政府の数字で明らかなわけです。
 そこをはっきりと言わないで、数十年です、中間というのは数十年です、またもしくは、中間のコストを計算したときには、中間貯蔵施設のコストは四十年で計算しましたと。
 四十年どころじゃないですよ、これ。中間貯蔵施設、四十年じゃなくなりませんね。ところが、四十年で計算をしたと言ったら、数十年と言われて四十年という議論が出てきたら、ああ四、五十年なんだなと思うじゃないですか。それがやっぱり僕はいかぬのと違うかなというふうに、大変生意気を申し上げるようですが、思っています。
 この前提でまた同じことを聞きますが、受け入れる自治体があるんでしょうか、長官。

○政府委員(稲川泰弘君) この立地に関しましては、地元の理解、御了承を得ることが当然の前提でございます。そのために、国、電気事業者あるいは新しく行う中間貯蔵事業者、それぞれの立場でこの必要性、今御指摘のあった中間貯蔵の意味合いの二つの点、あるいは安全性、政策上の位置づけについても理解をいただく努力をしたいと思います。
 その際、今までの貯蔵施設の内外の実績、特に安全性その他につきましては、大臣から御指摘いただきました情報公開、貯蔵技術の情報を積極的に公開する等の努力をあわせ行うつもりでございます。
 また、この新しい施設がその地方の振興にも役立つべく我々として努力をしたいと思っております。

○福山哲郎君 そこで、先ほどほかの委員からも御指摘ありました、村上村長さんがある県の知事から中間貯蔵施設をつくらせてくれという申し出を受けてきっぱりと拒否をしたというお話がございます。
 このことについては、こういったお話が知事から村長さんに行っていることは資源エネルギー庁としては御存じでしたか。

○政府委員(稲川泰弘君) ここでの御議論がございましたので電力会社に確認をいたしましたところ、中間貯蔵施設に関してPA等さまざまな活動を行う一環として立地について打診を行ったことは事実であるという報告を受けております。

○福山哲郎君 これは素朴な疑問なので別に追及する気は全然ないんですが、中間貯蔵施設をつくることに対して国会で法案を審議している最中ですね。それに対してPAがあるというのはよくわかりますが、それを打診するというようなことは別に構わぬのですか。

○政府委員(稲川泰弘君) 是非のほどについては私ども判断するところではありませんが、いずれにしても、立地に関してはいろんな段階のものがあり、本件も非公式な段階のものであったかと思います。
 我々としては、ここで中間貯蔵を進めるための環境を整備していただく、すなわちこの法律のことを申し上げてございますが、それを第一歩として、今後貯蔵施設の安全性についての先ほどの説明などを通じて、早急に立地点を確保すべく努力をしたいと考えております。

○福山哲郎君 私は、いろんな自治体に対して中間貯蔵施設の立地のお願いをするときに、透明度を高めるとか、全部公開をしろなどというような議論をする気は毛頭ございません。それは皆さんの御苦労で今一生懸命やられていることだと思います。
 しかし、国会でまだ審議をしている最中にそういう打診があったり、参考人として来られた村長から、こういう打診があってきっぱりと拒否をしました、こういうことは困りますというようなことが出てくること自身、逆に言うと、私は、それを資源エネルギー庁が知らなかったということに関しても正直申し上げると監督官庁としてどうなのかなという少し懸念を申し上げて、この話についてはこれで終わりたいと思います。
 その中で、候補地に関して努力をされるのもよくわかります。この法案が通ってからいろいろやられるという今のお言葉も承りました。
 では、実際に候補地の立地条件のようなものの具体的な話、これはもう衆議院でも出ていると思いますが、具体的にはどういうところなのか、教えていただけますでしょうか。

○政府委員(稲川泰弘君) 具体的な地点につきましては中間貯蔵事業者が選定をすることになると思いますし、それで政府としては申請が行われれば厳格な安全審査を行うということでございます。
 安全審査の際に求められる要件という観点からお話を申し上げますと、今後原子力安全委員会において検討されることにはなりますが、中間貯蔵施設は、我が国の原子力発電所において実績のある方式が使われることが想定されますために、まず耐震安全が十分確保されること等々強度などに関するものが大きな立地要件になっていくのであろうかと思います。
 また、運搬について考慮いたしますと、例えば輸送キャスクというのは百トンあるいは百二十五トンというかなり大型のものでございますので、その輸送上の制約から港から比較的近い地域などの立地条件が出てくるものではないかと思います。ただし、これは許可の要件という趣旨ではございませんで、事の性格上そういうことになるのではないかということでございます。
 いずれにしろ、立地対象地域の方々の御理解を得つつ立地活動が進められるものと考えております。

○福山哲郎君 今、運搬が百トンから百二十五トンになるので輸送上の制約があって港から近いというお話がありました。その百トンから百二十五トン以外、具体的に輸送上の制約というのはどういうものがあるんでしょうか。

○政府委員(稲川泰弘君) キャスクで輸送をするといたしますと、今重さを申し上げました。それから、長さで申し上げますと、全長が六メーター前後でございます、外形でいえば二・五メートルというものを運ぶことになります。
 したがいまして、この一つのキャスクの中に三十本、二十本の燃料体が入るわけでございますが、こういうものを例えば道路輸送するにしても、いろいろな輸送上の制約といいますか、難しさその他が出てくるかと思います。そういう意味で、港に比較的近いところ、また道路でアクセスの易しいところというようなものがおのずと出てくるのではないかということを申し上げました。

○福山哲郎君 そうすると、もう一回だけ先ほどの話に戻りますが、例えばこれもうまくいって、中間貯蔵施設の立地場所が決まった。そこは輸送上の制約があって、三十本から二十本入りのキャスクを百トンから百二十五トンで運ぶから、アクセス上いろいろいいところがいいだろうという話です。
 そうすると、決まったところに、先ほど言ったように、再処理が稼働して使用済み核燃料がどんどん出ていくということは、出ていっても入ってきて、また出ていっても入ってくるということは、これだけ輸送上のリスクがその中間貯蔵施設の立地の場所には高まるということではないんですか。

○政府委員(稲川泰弘君) 輸送の頻度という意味では、当該地点に出る、入るという輸送が起こることは確かでございます。また、港湾に船が出入りすることも確かでございます。
 ただ、最近までの使用済み燃料の取り扱いに係るトラブルというのは二十件が報告されておりまして、最近の十年間では軽水炉に関しては全く報告がされておりません。それで、今まで輸送上のトラブルというのは、ヨーロッパに輸送したものについて船からおろすときのクレーンのひもが外れたというような事故が一件だけ報告をされてございまして、必ずしも輸送上の問題というのがこの中間貯蔵に係る対応として非常に難しいとか厳しいとかそういう事情はない、今までの経験で十分安全性を確保できるものと理解しております。

○福山哲郎君 ただ、感覚的には、中間貯蔵としてそこにずっと置いて出入りがない方が、そういうことも含めて地域の住民の安心感としてはまだ出入りがない方がいいのではないかなというのは感じます。
 さらには、東海村の再処理施設は火災事故でとまったままでございます。六ケ所村が二〇〇五年からということになっていますが、この六ケ所村の再処理の技術の問題でございます。ちょっと前にさかのぼりますが、東海村の再処理施設は実際の再処理可能量のどのぐらいの処理を稼働していたのでしょうか、お知らせください。

○政府委員(青江茂君) お答え申し上げます。
 東海の再処理施設、運転を開始いたしました昭和五十二年度から平成八年度までのこの二十年間の累積で九百三十六トンの使用済み燃料を再処理してございます。
 今、先生御指摘になられました年間の最大処理能力というもの、これを百二十トンということを前提にいたしまして、その年平均ということで見てみますと、その数値といたしましては四割程度の処理実績を上げているというふうに考えてございます。

○福山哲郎君 東海村は再処理施設としてはかなりの実績を上げられたと判断してよろしいんですね。

○政府委員(青江茂君) お答え申し上げます。
 東海村再処理工場、御案内のとおり、我が国におきましての最初の研究を兼ねました施設でございます。
 当初段階におきましては種々のトラブルに見舞われてございます。昭和五十三年には酸回収蒸発缶のトラブル、昭和五十八年には溶解槽のトラブル等、運転初期におきましては種々のトラブルというものを経験してございます。そういったトラブルというものはその都度克服をして、改修等をきちんといたしまして実績を上げてきておる。
 ただ、残念なことに今アスファルト固化処理施設の火災爆発事故でとまっておるわけでございますが、その直前の段階というものを見てみますと、かなりな実績というものを上げてきておるというのは事実であろうというふうに思ってございます。

○福山哲郎君 今大変正直にお答えいただきました。私は、六ケ所村が二〇〇五年から稼働し始めるという状況の中で、先ほどの前提で八百トン処理をするという話がございました。今、東海村の実績をお伺いしたのは、東海村でさえ最初いろんな御苦労をされて、結果としてかなり評価ができる状況で稼働したにもかかわらず、年平均可能量の四割の処理量であったと。私はこの六ケ所村の再処理について、早く二〇〇五年にスタートできればいいと思っていますが、今資源エネルギー庁が想定をされているような八百トンというフル稼働が現実に可能なんだろうか、こういった技術的なものは確立をされているのだろうか。これがもし確立をされていなくて、また当初今言われた東海村のように何回もいろんな試行錯誤を重ねながらということになりますと、この六ケ所の八百トンという前提も崩れてくるのではないかと思いますが、そこの技術的な裏づけということについてお答えください。

○政府委員(青江茂君) お答えを申し上げます。
 今、我が国の実績ということについてお答え申し上げましたが、一方、再処理につきましては、英国、フランス二カ国におきまして既に相当の長期間にわたりましての商業運転の実績というものがございます。そういうベースというものを前提にいたしまして日本原燃、この再処理工場の建設主体でございますけれども、一つにはその実績のある海外の技術というものを入れてございます。そういったものをもとにいたしまして、先ほど申し上げましたような東海再処理工場におきましてのいろんな知見というものも入れまして今建設を進めておるということで、技術能力という点からいたしますれば、年間再処理八百トンという能力は十分にあろうかというふうに思ってございます。

○福山哲郎君 海外の技術がありますから何とか大丈夫だろうというのもよくわからないんですが、八百トンで回ればいいけれども、もし万が一だめな場合にそれも中間貯蔵へ全部しわ寄せが寄ってくるわけです。
 私ももういただいた時間がなくて、予定していた質問の半分ぐらいしかできていないんですが、要は、私は今の日本の原子力政策というのはどうも川上の部分だけで突っ走っているような気がして仕方がないわけです。エネルギー需要は増加をしているよ、だから質のいいエネルギーを量を安定供給しなければいけないよということをにしきの御旗にしてどんどん川上のことをやられる。それは重要だと僕は思います。
 しかし、再処理や中間貯蔵や廃棄物処理といった川下の分野がなかなか見えてこない。それは当たり前なんです。それは科学技術の発展や進歩とともにいく話ですから、なかなか予定どおりいかないこともある。さらには地域住民との話もあって、予定どおりには……。そうすると、日本の核燃料サイクル全体像というのがなかなか国民には見えてこないんだと僕は思っているんです。
 先ほど有馬長官が言われました、本当に国民に実態を知らせて、省エネをしてもらって民生部門のエネルギーを減らしていくことが大事だと。まさにそうで、川上の部分の状況をやっぱり考え直していかなくて、もし川下の部分が今のような、先ほど私のような者が申し上げたような状況ですら不確定、不安定な要素を前提としてこれだけのものができ上がろうとしているわけです。そうしたら、川下の部分がこれだけあやふやなんだったら、川上も一回考え直して、川上の部分からちゃんと日本の原子力政策を考え直すという時期に来ているし、この中間貯蔵施設というのはそれを考えるに当たっては大変いいきっかけと言うと語弊はありますが、そういう時期に来ているのではないでしょうか。
 先ほど長官が言われました新エネルギーの開発も含めて、私は新エネルギーばかりでいけるとは到底思っておりませんけれども、ただこれまでのように川上ばかりを中心に考えて、川下は後で何とかなるわと、自分らが生きているうちではないけれども次の後世の人間は何とかなるわというような、こういう形でツケを回していくことに対して、これが本当に責任のある政治の仕事、政府の仕事なのだろうかと私は大変疑問を感じています。
 ですから、今回の中間貯蔵はある意味で言うといたし方ないですが、こういうふうに現状追認をしろという繰り返しの中での原子力エネルギー政策ということに対してはそろそろ考え直して、国会の場でも頑張らなければいけないと思いますけれども、ぜひ信頼される原子力政策にしていただきますことを心より御祈念申し上げまして、いろいろ申し上げましたが、私の質問を終わります。
 きょうはありがとうございました。

 


 

第145国会  参議院  経済・産業委員会  1999年6月1日

○福山哲郎君 おはようございます。民主党・新緑風会の福山でございます。
 お三名の参考人の皆様には、きょうは朝早くからお越しをいただきまして、また貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございます。次回の委員会でもこの改正案について質疑を行います。また、率直な御意見をお聞かせいただき、今後の原子力政策の参考にさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 先日、私も東海村に行かせていただきました。そして、東海第二発電所を視察させていただきまして、日本の原子力政策の歴史的な経緯、それから現場で働かれている方々、そして東海村の村民の皆さんの御苦労等を拝見させていただきました。その中で、約三万人人口がいらっしゃると。先ほど三万三千七百人とおっしゃいました。そのうちの約一万人の方が原子力発電所関係に従事をされている、お仕事をされているように当日の御案内でも伺いました。
 先ほど村上村長が、過疎地の住民に不要なもの、産廃物の捨て場にされるのはプライドが許さないというようなお話がありました。さらには、東海村では低レベルの放射性廃棄物、高レベルの放射性廃棄物も含めて今、日本一保管をしているんだということがありました。ただ、その裏返しで村上村長は、原子力政策については東海村というのは理解がかなり深いところだということも言及をされました。
 そういった意味で、現在、中間貯蔵施設に対して、先ほどの三万三千七百人の村民の皆さん、そして一万人の働かれている皆さん等が今どういうふうな思いでいらっしゃるのか、例えばそういう統計をとられているような例があるのかも含めてお聞かせをいただきたいというふうに思います。

○参考人(村上達也君) 東海村におきます放射性廃棄物の現状というものにつきましては、今までは余りはっきりしておりませんでした。一昨年から県の方で把握し始めたということがございますが、現実的には統計はあったわけでありますが、それが村民の方に知れてきたというのは私は一昨年あたりからだろうと思っております。それは新聞報道で出てまいりました。
 いずれにしましても、東海村におけるということで限定して言っておりますが、基本的には、放射性廃棄物についての対策、方針、そういうものは私は今まで国になかったのではないかと思っております。一応の管理基準はございましたが、それにしましても、動燃のピット問題や、そういうことも一昨年ございましたが、あのようなことがありまして、基本的にはあのあたりから問題がはっきりしてきたということは言えますが、そういうことでの政策不在ということはあったかと思います。
 使用済み燃料につきましても、しばらくはサイト内に貯蔵しておける。それは青森の方での再処理工場をつくるということがありましたので、あるいは低レベルの放射性廃棄物につきましても青森の日本原燃の方に持っていって埋設処分するということが方針としてはあったということで、そのあたりで何とかなるということだったのではないかと思っております。
 現在、私どもは、五千トンの中間貯蔵施設を東海村へというのは、これはオープンにする話ではないというふうに今まで思っておりましたし、村民の方には言っておりません。役場の原子力対策課には言っておりますが、これまたはっきりとした申し出ではありませんので、非公式な話でございますので、私の段階で、それと県とも協議しましたが、県も拒否しているということはあります。
 以上です。

○福山哲郎君 そこで、新聞等で出てきて、住民の皆さんから何らかの形で村長の方に申し出なり何らかの反応というのは別に今のところはないわけですね。

○参考人(村上達也君) 全くないというわけではありませんが、やはり一番の最大の東海村における課題の一つだなと。その廃棄物処理、処分問題というのはあります。

○福山哲郎君 そこで、私自身は、今回の中間貯蔵については、毎年毎年九百トンの使用済み燃料がふえていく、また青森の六ケ所村がフル稼働しても約八百トンの処理しかできなくて、それも二〇〇五年からになってしまった等々の考えで、中間貯蔵についてはある意味でいうと今回は否定できないかなという立場でいるのはいるのですが、先ほど村上村長が、発電所から持ち出してくれと要求をしている立場できょうはお話をしたいというふうに、本当に大変率直な御意見をいただきました。しかし、私が視察をさせていただいた東海第二発電所の方では、乾式キャスクによる使用済み燃料貯蔵設備が新たに増強が予定をされている。私ども委員会の方でもその増強される予定の敷地を拝見させていただきました。
 そういった持ち出してくれと要求をしている立場の中で、これは中間貯蔵施設ではないんですが、新たに乾式キャスクによる貯蔵設備の増強をしなければいけないその難しいお立場、先ほどストレスもあるというふうにおっしゃいましたが、そこら辺のところについて村長としてはどのような御意見をお持ちなんでしょうか。

○参考人(村上達也君) 東海の第二発電所における使用済み燃料の貯蔵ということにつきましては、今のところプール貯蔵でやっております。それで今度、ドライキャスク方式によってそれも増強、要すれば貯蔵能力をアップする、リラッキングと言っていますが、それについては我々の方としましては理解しておりますし、村としても認めております。
 さらに、自分のところの発電所で発生したものにつきましては、それは操業の必要上、それについては我々としては拒否する立場にはありません。ただし、さらによその分まで我が方で受け入れろと言われると、それは違うでしょうと。
 それと、発電所のものまで保管していますのは、あくまでも最終的には六ケ所村の方に搬出するという約束の中で保管をしているということはどこの発電所も同じだと私は思っていますし、東海村も同じであります。

○福山哲郎君 そこで、先ほど、過去三十二年の実績で貯蔵施設の安全性は実証されておるというお話が村上参考人からもあったわけですが、その中で、貯蔵の安全性と、また、今回の中間貯蔵も含めて安全性について先ほど市川参考人が、意見があるのだが時間がないのでというお話がありましたので、中間貯蔵施設の安全性、また、今お話がありました、サイトの中でとにかくとりあえず自分のところで出したものについては貯蔵しているんだ、再処理に向けてという安全性について市川参考人に御意見をお伺いしたいと思います。

○参考人(市川富士夫君) 今までのお話で、いわゆるサイト内貯蔵については十分な実績があるから中間貯蔵も安全である、こういうことが言われておりますが、確かに使用済み燃料をプールなりなんなりに入れて貯蔵をしているという状態では現在までは余り大きな問題は起きていないわけであります。ただ、今後これが中間貯蔵に移るときに何が違うかといいますと、私は二つの問題が違うというふうに思います。
 一つは、貯蔵すべき燃料が今までのものに比べて、先ほど言いました燃焼度というものが大きくなる燃料が次々と出てくるわけです。これは、国の方針としまして高燃焼度化という方針が打ち出されておりますので、必ずそういうことになります。そうしますと、燃料棒の原子炉内での損傷といいますか、損傷と言うほどひどくなくとも内部にいろいろな変化が起こった状態のものが多く排出されるということが予想されますので、これが従来と同じような状況を保てるのかどうかということは慎重に検討されるべきであろうというふうに思います。
 いま一つは、今回の中間貯蔵の問題で中間報告というのが昨年出されておりますが、これを拝見しますと、そこに出てくる幾つかの事故といいますかそれの事例の多くは、燃料棒をおっことした、落下ということなんです。落下というのは、移動させるときに落下が起こるわけでありまして、その落下の可能性のある移動ということが中間貯蔵に移るときに非常にふえるということなのであります。
 つまり、これは重いものであるし近寄れないものでありますからクレーンで遠隔操作でやるわけですが、そのとき何かのはずみでおっことすということ。まずは、今までのサイト貯蔵から中間貯蔵へ移すときに、輸送車に載せ、そして専用船に載せ、そして向こうに着いたらまた専用船からおろし輸送車に載せ、そして貯蔵場に行ったらまたその輸送車からおろす。何回もそういうつり上げてはおろす、つり上げてはおろすということが起こるわけでありまして、そのときの事故の発生確率というものがやはり今までに比べればふえるという問題は認識しておくべきではなかろうかというふうに思います。

○福山哲郎君 そうすると、市川参考人が先ほど最後のところで、再処理の今後の展望は極めて困難であり、高速増殖炉の現状とあわせ考えるならば、再処理・プルトニウム利用の方針は再検討すべきときが来ていると。そうすると市川参考人は、例えばアメリカのようなワンススルー方式とか、もしくは中間貯蔵はやむを得ないけれども、技術革新等を見ながら新たな再処理の方法等を考えていくべきだというような、そういったことをおっしゃられているのかどうか、お聞かせをいただきたいと思います。

○参考人(市川富士夫君) 私は、中間貯蔵の安全性の問題とかそういうことだけで物を申しているわけではありませんで、そもそもこの問題が出てきた根元というのが、先ほど言いましたように、原子炉がたくさんどんどんつくられて動いていくということと、そこから出てくるものの持っていき場所が極めて見通しが少なくなってきているという、この二つの矛盾をしわ寄せする形で中間貯蔵のようなことをやるのでは、後追い政策といいますか、その場しのぎを次々と繰り返していくことの一つではないか、そういうふうに思っているわけなんです。
 したがって、方針を変えるなら変えるともっとはっきりと、先ほど言いました三番の再処理・プルトニウム利用というやり方をもう一回ここで見直すから、その見直す期間についてやはり何らかのそういう対策を立てる必要があると、こういうふうにおっしゃればまた話は変わってくるんじゃなかろうかというふうに私は思っているわけです。その辺が非常にあいまいなまま、ただいっぱいになるから中間貯蔵だというのは国民が納得できないことではなかろうかというふうに思います。

○福山哲郎君 その中で、近藤先生は、基本は信頼醸成にあって、これを目指した新たな対話等を含めて政策を考えなければいけないというふうにおっしゃられていまして、この件についてはちょっとお三人の方全員に、皆さんにお伺いをしたいんです。
 この法案の根本的な問題になりますが、ではこの中間貯蔵施設を本当に引き受けてくれる自治体がこれから新しく出てくるのだろうか。先ほど村上参考人もおっしゃられましたように、うちは今のところはその話は基本的にはこれまでやってきたんだというお話もありましたように、この間の巻町での住民投票で原発建設がノーとなった。また、原発ではありませんが、徳島の可動堰の問題についてもいろんな形での住民運動等が起こっている。
 確かに、原子力発電所をある自治体だけに任せて、それに対する負荷をほかの自治体も共有しないというのは、ある意味でいうと、僕は日本の国民の責任として必要だというふうには思っておりますが、現実問題としてこの中間貯蔵施設を引き受けてくれる自治体が出てくるのかどうかという現実性。それは、例の「もんじゅ」の事故なども含めて原発事故に対する不信感が高まっているということも相まって、先ほど言われた、逆に貯蔵施設の安全性ということが余り表に出てこない、ネガティブな情報だけが前へ出てきて、その不信感の中でこういう中間貯蔵をつくるという話が出てきたときに、現実問題として自治体が出てくるのかどうか。また、それに対してどういうふうに今お考えをいただいているか、三人の参考人の方にお伺いをしたいというふうに思います。

○参考人(市川富士夫君) はっきり申し上げまして、非常に困難ではなかろうかというふうに思うんです。
 というのは、もう一つ難問があるわけです。これは、再処理した後の高レベル廃棄物、いわゆるガラス固化体と現在なっておりますけれども、こういうものの最終処分場をどこかに求めなければならないというのが非常に今急がれている状況にあるわけです。これも、そういうものを果たして受け入れるところがあるかといいますと、ちょっと考えられない状況にあると思います。
 そこに加えて、もう一つこの中間貯蔵という名の高レベル廃棄物の、プルトニウムの鉱山をつくるのかとよく言われるわけですけれども、そういうものを引き受けるというのは、ただ単にお金で何か施設をつくるからとかいうような、そういうことだけでは済まない問題でありまして、私は非常に難しいというふうに率直にお答えします。

○参考人(近藤駿介君) 難しい設問をされるなと思ったんですけれども、つまり我々は常に難しい問題しか扱わないわけでありまして、難しいからここで御審議していただいているんだと思っているわけでありますが、もちろんおっしゃられましたように、「もんじゅ」その他の事故をめぐりまして国民の皆様の原子力関係者に対する不信感というのは非常に高まったということを痛切に感じています。
 また、このことは、総合エネルギー調査会もまた報告書を取りまとめるに当たって、単に書面で御意見をいただくのみならず、全国各地で意見を交換する会を開かせていただきまして、その席でさまざまな御意見をちょうだいしたところでございますが、その折にも大変厳しい御批判を賜ったというふうに理解しております。あわせて、しかしそこでは先ほど最初に申し上げました日本が置かれているエネルギー事情に対する深い御理解を示される方もいらっしゃるという状況でございます。
 したがって、我々原子力関係者は、先ほど村長がおっしゃられましたように、私はそれを信頼醸成と申し上げたわけでありますが、つまり過去のことについて懸命に反省をし、そして信頼回復のために精いっぱいの努力をしているというところを御理解いただく努力をするというプロセスを経て、さらに加えてこうした中間貯蔵施設の持つエネルギー政策上の意義について御理解を賜るべく努力をいたしまして、必ずなし遂げるべしという決意を持って各自治体の方々とお話をしていくということが大切ということで、その中で全国多々ある自治体の中には正しく御理解いただいてお引き受けいただけるところが必ずやあるに違いないと確信をしているところでございます。

○参考人(村上達也君) 原子力発電所のサイト内には現実には貯蔵しているわけです。御承知のとおり、七千トンを貯蔵しているということであります。ただ、そこの原子力所在市町村の県知事は何と言っているかといいますと、新潟、福島、福井の知事さん方は、やはり持ち出せと言っています。これ以上サイト内にふやすんじゃないよと。それは当然ながら、原子力発電所は、六ケ所村の方で再処理する話だったんじゃないか、そちらの方へ持ち出すんじゃないかということで、これが私も発端じゃないのかなという感じはしております。
 私も、この三県知事が申しておりますように、要すれば使用済み燃料の取り扱いに対する不透明さが立地地域では懸念や不信感を生んでいる、将来的な貯蔵、保管のあり方を含め、使用済み燃料貯蔵問題の全体像を明確にせよと言っているわけです。これが今まで欠けていたということでございまして、これからチャレンジしていく、取り組んでいくということでいきますと、サイト内貯蔵と中間貯蔵というのは全くまた性格が変わってくる。要すれば、日本全体のエネルギー政策の根幹をなすものが中間貯蔵施設問題だと思っているんです。
 だから、それはやはり政策をきっちり立てていく。しかも、それは今までの原子力発電所を受け入れている市町村とか県とかというのは、もうおれたちはやってきたという考え方があるんです。だから、それについて一挙に国民的合意形成に持っていくというなら、私は、東京都内に持ち込む、東京湾に持ってくれば、物理的な条件は別にして、使用済み燃料の保管というものはこのようなものだ、全く恐ろしさはないんだというようなことで一遍に解き放たれるんじゃないのかなと私は心底思っております。

○福山哲郎君 なるほど、東京湾に持ってきて、一気に国民の合意形成をして、そこで今まで御苦労されていた自治体の御苦労も国民みんなにわかってもらってと、確かに本当にそういう気がします。だけれども、それが現実的かどうかよくわかりませんが。(「京都もいいよ」と呼ぶ者あり)京都も、福井がありますので。
 と言っているうちに、あっという間に時間が流れて、時間が来てしまいました。もう少しお伺いしたいこともあったのですが、また今後もこの委員会で質疑を続けますし、これからも原子力政策についてお力添えを心よりお願い申し上げまして、私の質疑を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。

 


 

第145国会  参議院  経済・産業委員会  1999年4月15日

○福山哲郎君 おはようございます。民主党・新緑風会の福山でございます。
 この問題についてはかなりこの委員会でも熱心に御議論いただきましたし、先日の参考人質疑におきましてもかなり具体的なお話がありまして、多少重複することがあるかもしれませんが、お許しをいただきたいというふうに思います。
 みずからの恥をさらすようで申しわけないのですが、ふと自分を省みますと、大学を卒業いたしましてサラリーマンとして企業に就職をして二年目ぐらいのときに、ある女性から一緒に英会話学校へ行きませんかと誘われて、ほいほいと行こうと思いまして、当時でいうと三十回、期限は一年間ぐらいで、値段にすると十万か十五万ぐらいだったと思いますが、その女性と一緒に行けるということでチケットを買いました。三十回分ぐらいだったと思いますが、チケットを持って、当時安い給料だったものでもちろんローンを組んで、実はそのチケットを二回ぐらいしか消化していないので、八カ月ぐらいたってからお金を返してもらえませんかと言うと、お金は返せませんと。あと残り四カ月ぐらいしか期限がなくて、どう考えても仕事が忙しくて行けないということで、これはもう自分がやっぱり浅はかだったんだと思いまして、もちろん英語を勉強したかったのは間違いないのですが、お金を払ってあきらめた記憶を実はこの審議をしている最中思い出しました。
 要は、参考人のときにもお伺いをしたのですが、あくまでもそこは自己責任だと僕は思っていた節が当時はありました。英会話学校の方もそれで企業が成り立っているんだから、行かないのは私の自己責任だという気でおりましたので、お金も結局払ってしようがないなというふうに思いました。ただ、今回、中途解約ができるようになったので、あああのときこれがあればお金は返ってきたのだと思っているのですが。
 ただ、この間の参考人のときにありました、例えば東京都だけで相談者の件数が九年度八万七千件、一日でいうと約二百四十件、それから役務サービスに関する相談件数でいうと九年度で三万件、これも一日でいうと約八十件から九十件、これは東京都だけで電話が鳴り響いているわけです。この間、参考人が言われていたように、相談の窓口に来られる方というのはわずか一%だと、先ほど加納先生もおっしゃっておられました。一%ということは逆に言うとその百倍件数があると考えたときに、大変ひどいと。
 ただ私は、先ほどみずからの恥ずかしい経験も含めて、自己責任だということと、そこにどう規制を加えるかということと、では産業の自由な活動の中で悪質な業者も含めてどうするんだという、自己責任と産業の発展と規制のバランスをどうとるのかというのを、自分の中では大変複雑な思いでおります。
 まずは、与謝野通産大臣にもし御見解をお伺いできればと思います。よろしくお願いします。

○国務大臣(与謝野馨君) 先生のケースは、会社が忙し過ぎたのか、英語の塾の教える内容が悪いのか、女性が悪いのか、にわかには判断がつきかねるわけでございますが、近代の契約法というのは、やはり契約当事者間の自由な意思に基づいて契約をするということで、これは口頭であれ書面であれ契約というのは成立するわけでございます。
 しかし、法律の建前はそういうことになっておりますけれども、口頭の契約というのは契約の内容について後で確認することに関しては不安定性がありますし、また契約当事者間が対等であるといっても、一方は知識を持ち一方は知識を持たないということがございます。これは法律の問題もそういうことでございますし、提供される物品、サービスの内容についてどちらが高い知識を持っているのか、どうやってその内容を確認するのかという具体的な問題になりますと、契約者間が対等で契約するといういわゆる教科書的な契約法というのは多分現代社会では適用できないだろうと。一連の訪問販売法、割賦販売法等々が消費者保護の立場に立っておりますのは、もろもろのそういう事情を勘案してできた消費者保護の法律であると思っております。
 したがいまして、原則は契約者は対等で契約するんだということであっても、やはり知識あるいは法律上の経験等々が薄い一般の消費者というものを保護するという法制というのは、当然現代社会が要請している大事な法制であると私は思っております。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 まさに大臣が言われたように、近代の特に民法上、契約というのはお互いの当事者間で成立をするわけですから、そこが一々不安定な状況でいつ解約されるかわからないような状況になった途端、もう商行為、取引が成り立たなくなるわけです。ですから、逆に四業種に指定をする意図というのは僕は大変よくわかっているつもりです。ただ、海外ではこうした指定商品制とか指定業種をとる国はなくて、原則適用、一部除外というふうな例もあると伺っているんですが、なぜそれが日本ではできないのかということと、海外ではその場合にはどういうふうな法律的な判断でやられているのかを教えていただければと思います。

○政府委員(岩田満泰君) 海外では私どもの日本にあるような訪問販売法のような形で、分野分野ではございますけれども、かなり広い分野を包括的に規制するような法律は必ずしもないようでございます。教育というような特定分野に限定をしたりというようなことでございまして、それ以外にはもっとむしろ消費者契約一般というような形でそういうものに対して対応するというような法制のとり方がされているというように理解をいたしているところでございます。

○福山哲郎君 そういった中で、今のお答えだとよくわからないんですが、例の四業種の問題、先ほど加納委員からもありましたが、大臣は本会議で「今後生じ得る新たな役務の指定に際しましては、苦情相談の実態等の総合的観点から検討を行い、機動的に対応するよう努めてまいります。」というふうに御答弁をいただきました。
 それで、流れとしては、例えば九四年に自主的な取り組みをしますという話をしたけれども、その自主的取り組みの実効性が余り見られずにどんどん増加をしてきた。だから、今回その増加の著しいというか、苦情件数の多い四業種を指定しました。それ以外のものに関しては、先ほど申し上げたように、政令で機動的に対応しますという話になっていると思うんです。その流れは私も理解をしているんですが、ということは、極端な話で言うと、四業種以外のものの苦情がふえたら新たに対応するというふうに、裏を返して言うとそうも聞こえるわけです。
 逆に言うと、では四業種以外のところで、被害、苦情がどんどん広がって、その被害が見えたところで、ではやっぱり指定をしましょうかというのは、当初自主取り組みをしたけれどもやっぱりだめで、ふえたから四業種を指定した。しかし、それ以外のところは自主的取り組みないしそういったもので苦情がふえてきたら新たに指定しますよということは、逆に言うと九四年の自主的取り組みの轍を、四業種以外では同じことをもう一度繰り返すのではないかなという危惧がある。その間に被害者がどんどんふえていくのではないかなという危惧があるんですが、その辺についてはいかがでしょうか。

○政府委員(岩田満泰君) したがいまして、この指定の問題と申しますのは、機動性というところが極めて重要なことでございますが、同時に、私どもがこうしたいわゆる指定商品・指定役務制ということを訪問販売法制定以来とっておりますのは、実は訪問販売法は今やいろいろな分野を包含する法律になっておるわけでございます。いずれにしても相当強力な行政措置というものが用意され、一方においては民法の特則としてかなり大胆な特則が設けられるというような形。今回で申し上げますれば、クーリングオフに加えて中途解約の権能というものが与えられる、しかも、事由のいかんを問わない中途解約権というようなものが与えられるということでございます。そういうかなり強力なと申しましょうか、そうした一般則に対する例外的な内容を持つものについて、これを被害とかトラブルとか、トラブルは数の問題だけではないと私どもは思っておりまして、その内容の問題があると存じておりまして、そうした内容に照らしてやはり深刻なものと申しましょうか、それをいかに機動的に把握し指定していくかということではないかと思っております。
 ありそうであればあらかじめ網を張っておくというのは、これはこれで一方において規制の行き過ぎという批判を受ける可能性があると思っております。特に、内容が訪問販売法のような法律というのはかなり強力な規制手段を伴っておりますので、そのような考え方で指定商品制・役務制ということをとらせていただいてきている、こういうことでございます。
 機動的に対応しろという御指摘は、御指摘のとおりでございまして、私どももその努力をしていきたいと思っております。

○福山哲郎君 そういう御答弁になるんだろうと思います。
 ただ、逆にそこで、例えば先ほどの資格講座とか自己啓発講座というのもかなり苦情件数としては多いわけです。それで、一体どこまで多ければ、その中身ももちろんそうなんですが、苦情件数もそうなんですが、先ほども申し上げましたように、ここに出てくる数字というのは一%とか四%だと言われている状況の中で、中身を勘案してというものの、ガイドラインとか目安とか、それはおっしゃられたように、機動的に個別の業種についてその場その場で対応するというふうにしか今方法はないんでしょうか。

○政府委員(岩田満泰君) ガイドラインというようなお話でございますけれども、そういった議論との関係において、機動性と同時に恣意的な指定ということは一方において慎むべきというようなことで、訪問販売に関していえば、消費経済審議会という場でこれを御議論いただいて、機動性と同時に恣意性を排除したような形での規制体系を保持する、こういうことになっておるわけでございます。
 したがいまして、今具体的に挙げられましたような業種というのは、一言で申し上げまして、私どもも重大な関心を持っております。持っておりますが、それぞれに取引と申しましょうか業種の実態にはかなりの複雑なものがございまして、例えば仮に中途解約というようなことが起きた場合において、いかなるところを損害賠償額の制限として設定することが合理的であるのかというようなことは、これは通常の民法に基づく契約であればはるかに高いお金を取られるであろうその上限をはるかに低いところに抑えようという趣旨を持っております。そうなりますと、そういうものについていま少しく私どもとしては勉強をしなければいけない点はある、しかし重大な関心を持って見詰めているというようなところがあるわけでございます。

○福山哲郎君 それでは、ちょっと別の観点からお伺いをしたいんですが、九四年に自主的取り組みということで通産省がやられたわけですけれども、その当時、エステ、学習塾、外国語会話教室、家庭教師派遣、今回指定の四業種に関しての組織率が把握をされていたのかどうか、もし把握をされていたとしたら、どのぐらいの組織率だったのかをお答えいただけますでしょうか。

○政府委員(近藤隆彦君) 今御指摘の四業種でございますけれども、現在の組織率で申し上げますと、エステティックが一番高いわけですが、これでも一三%強でございますし、また一番低い外国語会話教室、これは三%ぐらいでございます。また、残りの学習塾とか家庭教師派遣につきましては、おのおの七%ないし一〇%という数字でございます。

○福山哲郎君 もう一度。

○政府委員(近藤隆彦君) 七%とか一〇%という数字が現在の学習塾、それから家庭教師派遣の数字でございます。
 ただ、九四年当時につきましては、そういう意味でいいますと、明確に業界の組織率を把握しておりませんけれども、現状がこうでございますので、相当低かったのではないかというふうに推定しております。これは、新規参入が非常に多いとか、個人企業に近いようなものが多いということがありまして組織率が大変低いわけでございますけれども、現状から見ましても、当時はもっと低かったのではないかというふうに推測しておりますけれども、恐縮でございますが、正確な数字は把握をしておりません。

○福山哲郎君 そうすると、この四業種については、九四年の通達の時点で、当時ははっきりとした数字は御存じなかった。ただ、組織率が低いだろうなということはある程度類推はできた状況はあるわけですか。

○政府委員(近藤隆彦君) 恐らく、こういう新しい産業でございますし、それから経営の形態が個人企業ないしは極めて小さい規模でもできるものでございますから、もちろん当時から団体はございましたけれども、組織率は相当低いのではないかという感じはある程度は、特に企業数でいいますと考えられると思います。ただ、業界全体の例えば売り上げ規模とかそういった面でいいますと組織加入者は結構大きなウエートを占めている場合がございますけれども、企業者の頭数でいいますと圧倒的に小さい人が多いということもございましたものですから、企業数ベースでいいますとかなり小さかったんじゃないかという推測をしております。

○福山哲郎君 そうすると、先ほど御答弁いただいたように、現在でもエステが一三、学習塾が七、家庭教師が一〇、外国語会話教室が三%という状況で、九四年の取り組みのときはこれよりも少ないという状況はある程度類推できたと。
 僕は、今、当時政策が失敗だったとか反省しろとか、そういう後ろ向きの話をしているわけでは全然ないんですが、この状況なら当然自主的取り組みを促したって、だって九割がアウトサイダーなわけですから。今まさにおっしゃられたように、売り上げの規模でいうと、加盟をしている、組織化されている方が売り上げの規模は大きい。九割が売り上げの規模が小さくて把握できないとなれば、ここが悪質な業者である可能性というのは苦情がふえてくる段階で限りなく高いわけです。ここについて、この九四年の自主取り組みから今回の改正に至るまで、低組織化に対する通産省としての御努力、取り組みを何かなされたのか、その結果が現在の一三なら一三なのか、それまでは一応そういうことは余りせずに来たのか、そこら辺はいかがでございましょうか。

○政府委員(近藤隆彦君) 御指摘のとおり、業界全体にこのようなルールができるだけ浸透することは必要でございますので、いろんな普及啓発活動というのは国も行っております。業界に対しましても自主ルールをつくったことを幅広くいろんなことでPRするようにといったこととか、それから国もこのような自主ルールがあるといったことをいろんな場で説明しまして、できるだけ広く浸透を図る。こういった自主ルールの作成が逆に組織率を高めるという効果も期待できるという面がございますので、そういったことも期待しておった面がございます。
 他方、消費者に対しましても自主ルールの存在を十分知っていただけば、消費者との関係でもなお事業者が慎重になるという可能性もあったものでございますので、このようなことでできるだけ業界団体の組織率を高めたいといったことを業界を通じましていろいろな指導をしておったわけでございますけれども、数字は現状のとおりということでございます。

○福山哲郎君 これは実態としてお伺いしたいんですが、通産省がエステならエステの業界にこういう法案ができてこういうことになりましたよといっていろいろ浸透を図る。加盟をしていないそれ以外の例えば九七%のところには現実問題としてはそういうメッセージは、例えばポスターが張ってあるとかどこかの新聞に出たとか、そういう話ではなくてダイレクトにそういうところへ届く手だてというのは実際にはないわけですね。

○政府委員(近藤隆彦君) これは今回法律の改正をしていただきますと、ますます業界としましても自覚が高まると思いますので、そういう意味で言いますと、一つは業界団体に対する求心力も高まる可能性があるというふうに考えております。
 それから同時に、全国を回りましていろんな場で説明会等を行いまして、国としましても幅広く関係者にこういった新しい法規制の内容といったものをよく知ってもらう、そういうことを通じましてできるだけ隅々まで浸透できるようにということでございますけれども、願わくばこういったことを通じまして業界の組織率も高まっていく、それから業界の自主ルールもますますしっかりとしたものになっていくことを期待しております。そういう意味では、説明会等をできるだけ幅広くして多くの人に知ってもらうということが一番じゃないかというふうに考えております。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 この間も参考人がおっしゃられたんですが、一人とか二人の技術者が小さい規模でやっているところが多いという御答弁がありました。そこは、この間もエステ業界の加盟の入会金等を見ると年間何万円という形になるわけです。そうすると、一人とかで近所の御婦人相手にやっているようなところは、そこに加盟金を払って何らかのメリットがあるかというと、よくわからないという状況の中で、こういう法律ができたことすら全く知らないまま行ってしまっているようなことも僕は多々あるんじゃないかと。特に家庭教師派遣とか英会話教室でも学習塾にしても、学習塾といったっていろいろありまして、寺子屋さんみたいなところから、おうちで部屋を借りているようなところからいっぱいありまして、その中には、悪質なことでちょっともうけたろかというようなところがあるんだと思いますし、その辺の問題は本当に悩ましいなというふうに思いますので、ぜひそこら辺は御努力をいただいて浸透を図るようにお願いをしたいというふうに思います。
 その流れの中で、エステに関してなんですが、例えばこれは通産省の管轄の問題ではないかもしれないんですが、理容業、美容業、例えば床屋さんとかは技術者としての資格も要る、事業者にいろんな規則もある。エステに関しては、電気針を使用した永久脱毛サービスがあったり肌に直接さわったりするわけですが、これは恐らく通産省ではお答えにくいことだと思いますが、こういったことに対する資格制度の導入等については、厚生省さんになるのかもしれませんが、どのようにお考えなのか、もしお答えできる範囲があればお答えいただければと思います。

○政府委員(近藤隆彦君) エステの行っております一部の業務につきましては、おっしゃいましたような法規制のかかっているようなものもあるように承知しておりますので、そういう意味では法規制との調整が要ると思っております。
 御指摘の資格の問題につきまして、ちょっと切り口は違いますけれども、やっぱりいい仕事をしている事業者とそうでない事業者と差別化をする、そういうものが一般の消費者も理解しやすいようにするという観点からは、現在業界が自主的に努力しておりますのは、ロゴマークとかあるいは団体に入っているという加盟の証書みたいなものをつくりまして、それを見やすく張ったりしていまして、自分のところはしっかりとした業務をしていますということを明確にして消費者の選択に資しているというケースがございます。若干切り口は違いますけれども、こういったことをさらに普及しまして、消費者とすればちゃんとした事業者であるということを認識できるような、そういったことを通産省としてもできるだけのことをしたいというふうに考えております。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 また、ちょっと別の観点から質問させていただきます。
 今回の改正では罰則規定がかなり強化をされました。それは私は、フリーライドする悪質な業者がそれだけ警戒をするということで大変評価をさせていただいています。例えば業務停止命令に反したときは、これまでの百万円以下の罰金が三億円以下に引き上げられたりということで大変いいと思うんです。業務停止命令に反したとき罰金になるというふうに思うんですが、そもそもその前提となる業務停止に至るまでのプロセス、どういった状況があったらどういう段階を経て業務停止命令まで行くのかをちょっと教えていただけますでしょうか。

○政府委員(岩田満泰君) 業務停止命令に至るプロセスでございますが、一つは、取引の公正あるいは消費者の利益が害されるおそれがあるというときに、まず業務の改善等々につきましての指示を行うことができることになっておりまして、この指示に違反する行為をした場合には業務の全部または一部の停止命令を行うことになっております。この命令にさらに従わない、違反した行為を行った場合には、事業者を罰するほかに、その事業者の属する法人につきまして法人重課と申しましょうか、そうした罰則重課の対象になるということに罰則の内容を改正させていただきたいということで御提案しているわけでございます。

○福山哲郎君 そうすると、八八年にも法改正があったんですが、この十年間にこの業務停止命令は一体何件あったんでしょうか。

○政府委員(岩田満泰君) ちょっと手元の平成八年に前回法律を改正していただきました以降のデータで申し上げさせていただきますが、したがって平成八年十一月以降ということになりますけれども、訪問販売法に基づきまして業者に対して二十二件の指示処分と一件の業務停止命令を行ってきておるところでございます。

○福山哲郎君 業務停止命令は一件ですね。指示処分が二十二件ですね。そのときの例えば業務停止命令は公表義務があるんですか。

○政府委員(岩田満泰君) 業務停止命令につきましては公表義務が法定されております。

○福山哲郎君 では、指示処分は公表義務はありますでしょうか。

○政府委員(岩田満泰君) 指示につきまして法定された義務はございませんけれども、私ども、指示の対象になる行為というのは、この法律に違反をするような行為であり、かつ消費者の保護あるいは公正な取引という意味において、それを害する重大なおそれがあるというケースでございます。
 公表するということにつきましては、実質的な社会的制裁の意義を有しておりますし、かつまた消費者に対して、ある業者が問題を起こしているということの情報提供をするという意味合いもあるかと存じております。その意味におきまして、指示をするようなケースにつきましても、消費者被害の実態を踏まえながら必要に応じて公表ということも判断をしていきたいというふうに考えております。

○福山哲郎君 ということは、指示に関しては公表の義務はないけれども公表することもあり得るというふうに判断させていただいてよろしいわけですね。

○政府委員(岩田満泰君) さようでございます。

○福山哲郎君 そうすると、これまでで言うと、指示処分は二十二件出ていて、業務停止まで行ったのが一件だと。ということは、二十二件指示が出た段階で、ある程度、業者の方では自分のところでの自主規制なり多少の改善が見られたということですか。

○政府委員(岩田満泰君) さようでございます。一件につきましては改善が見られませんでしたので業務停止命令に至ったということでございます。

○福山哲郎君 そうすると、先ほどの公表の話になるんですけれども、公表は弾力的に対応できるというふうにおっしゃっていただいたので、それは大変いいことだと思うんですが、やっぱり悪質な業者にとっては、業務停止まで行かなくても指示処分を受けたことが公表されるというのも、その会社のイメージ、それからお客さんに対する影響も考えると非常に怖い部分があると思います。
 罰金が具体的に百万円以下から三億円以下に引き上げられても、現状の話を聞いているとほとんどこれは今は適用されていないわけですね。業務停止命令の一件は罰金が適用されたわけですか。業務停止命令で、それでも反したら罰金なんですね。ということは、段階としては罰金に至ったのはまだ一つもないんですね。

○政府委員(岩田満泰君) 訪問販売法というのは、今一応一連で申し上げましたけれども、どこからでも入れますので、直罰の規定がございますので、警察のお仕事になっている部分があるわけでございます。訪問販売法に違反していることを警察当局が確認いたしますれば、直ちに逮捕されて罰則が課されるケース、摘発のケースがあるわけでございます。
 したがいまして、かつまたそういう意味ではちょっと言葉が足らなかったかもしれませんが、指示をしないと業務停止命令ができないということでもございませんので、いきなり業務停止命令に行く道も認められております。ただ、業務停止命令の違反がないと確かに今回の法人重課というようなことにはなりませんけれども、いずれにいたしましても、警察当局における摘発のような道というのは、行政の私どもが動くこととはまた別個の道が、直罰の体系がとられておるということでございます。

○福山哲郎君 その摘発の例はございますか。

○政府委員(岩田満泰君) 詳細、正しいところは警察庁の方にお聞きいただいた方がいいかと思いますが、年間百件程度の摘発があるというふうに承知をいたしております。

○福山哲郎君 ちょっと戻るんですけれども、罰則規定を今回強化されました。具体的に罰則強化しないとこれは減らへんわという御認識だと思うんですが、でもこれまでずっとこの状況で来たわけです。百万円以下の罰金がいきなり三億円以下に引き上げられたわけです。これは罰則の強化としてはかなり大きな強化だと思うんですけれども、この立法趣旨はどういった理由だったのかをお知らせください。

○政府委員(岩田満泰君) 訪問販売法の関係の事案を見ておりますと、違法、不当な販売行為を行う業者が少なくないと、これはいろいろなデータからも推定されるわけでございますし、その手口と申しましょうか、そういうものもかなり悪質、巧妙になってきているものが中に含まれてきているという認識がございます。同時に、一件当たりの被害額が平均で見ましても一億円を超えるというような高額化の傾向がございます。
 そういたしますと、罰則の効力とでも申しましょうか、力という意味からいきましても、何百万円ということではなかなか強制力がないと申しましょうか、実効が上がらないということでございます。そういう認識を踏まえまして、産業構造審議会の御議論でも罰則の強化が早急に必要であるということで、訪問販売法全体を対象として罰則の強化を今回図らせていただきたいと、このように考えておるわけでございます。

○福山哲郎君 そこはもうぜひよろしくお願いします。
 ただ、この罰則に関して最後にお伺いをしたいんですが、直罰的な状態もある、指示から業務停止命令というふうに段階を経ていく場合もあると先ほどおっしゃいました。その指示から業務停止命令という段階を経ていくのが二十二件だと。
 先ほどから言っている東京都だけで八万七千件の苦情が来ていることから考えたときのこの二十二件というのは、防止をする、業者に対して警鐘を与えることも含めて、この二十二件という数字自体に関しては少ないというか、これが本当に実効性のあるような状況で行われているのかどうかということに対して少し僕は疑問に思います。
 逆に、その抑止力を生かすためには例えばどのように今後取り組んでいかれるのかとか、そういうことについてもし何か建設的な話が出ているんだったらお聞かせをいただきたいと思います。

○政府委員(岩田満泰君) 先ほど申しましたように、直罰のルートという言葉でよろしいかどうかあれですが、直罰のルートもございますし、行政的な措置を経てという、両方あり得るわけでございます。一つは、私ども、これまでもそうしてきたわけでございますけれども、警察当局との連携ということは重要でございまして、やはり捜査能力と申しますか調査能力と申しましょうか、そういうような意味におきましては捜査当局の方がはるかに上でございますので、指示をするにいたしましても違法であるという認定は私どもにとっても必要なことでございまして、そうなりますと捜査当局との連携ということは重要でございます。
 何人を問わず私どもに申し立てをしていただけるという条項がこの訪問販売法の中にはあるわけでございまして、いろいろな形で申し立てをしていただき、私ども自身がそれを調査するわけでございますけれども、必ずしも違法であると断定し切れないというものについては注意というような形で、行政指導になりますけれども、そういう形をもってとりあえず、しばらくその監視をすると申しますか、そういう状態にしていくという対応もあるわけでございます。違法であるということが確認されたものが今、平成八年十一月以降の数字で二十二件ということになっておる。それ以外に、行政指導的な意味合いでございますが、書面によって注意をするというようなことの措置は別途とっておるということでございます。
 警察当局との連携もあわせまして、そういう対応を今後ももっと強めていきたい、こう考えております。

○福山哲郎君 それからもう一つ、今回、指定法人制度が取り入れられたわけです。これは消費者を救済する手段がふえたということで大変望ましいことだというふうに思いますが、その指定法人制度の運用方法、実態がまだまだ不明確な部分があります。
 実際、どういうふうな団体を想定しているのか、それからその指定法人制度はどのぐらいの数を考えているのか、指定法人制度の具体的な活用の中身、その辺についてお答えをいただきたいというふうに思います。

○政府委員(岩田満泰君) 指定法人という仕組みをお願いいたしておりますのは、一般の方々からの申し立てなどを含めまして、これを初めといたしまして、この法律の適正あるいは確実な施行に貢献をしていただく方を政府以外のところにも求めたい、こういうところに問題意識が発しておるわけでございます。
 したがいまして、内容的には法律に書いておりますように、申し出にかかわりますこと以外に、もろもろの情報提供でございますとか、あるいはまた人材の育成の問題であるとか、重要なことをあわせやっていただけるような法人がぜひ出てきていただくことを期待いたしておるということでございます。
 法律に規定してございますように、これはあくまで法人からの申請に基づいて、中立性でございますとかお持ちになっている能力等々を勘案した上で指定をさせていただくということでございます。いずれにいたしましても、今申し上げたような趣旨のものでございますので、あらかじめ幾つの法人ということを決めてこの制度をお願いしているということではないということでございます。

○福山哲郎君 向こうから申し出をいただく法人について、こういう団体なのかという、ある意味で言う想定とかイメージというのは具体的にはないんですか。

○政府委員(岩田満泰君) せっかくの御質問でございますので、私どもとしては、財団法人日本消費者協会あるいは日本産業協会がこれまでやってこられましたお仕事等々を見ておりますと、一定の体制整備が行われればこうした仕事を担っていただくというのには適格な法人であるのではないかというふうに考えておるところでございます。

○福山哲郎君 だけれども、それにはこだわらないということですね。わかりました。
 それでさらには、これは重箱の隅をつついたような話で大変恐縮なんですが、本案は成立、公布後六カ月以内に施行というふうになっているんですが、本当の悪質な業者がいるとすると、施行一日前とかぎりぎりの駆け込み勧誘みたいな話をして逃げてしまうとか、駆け込み勧誘をしてあとは知らないよというような形で例えばチケットを何百枚売っちゃうとか、そういうような状況は想定できるのか、またそれに対してはどのような形で対応されるのか、本当に細かいことで恐縮なんですが、僕はあり得ると思いますので、御答弁をいただければと思います。

○政府委員(岩田満泰君) ある意味で一番難しい御質問だと思います。
 法律ができますれば、私ども、この内容を前広にいろんな形の媒体を使いまして周知徹底と申しましょうか、広く普及啓発に努めるつもりでございます。にもかかわらず、これを法律施行前にということの業者がいないかと言われれば、あるいはそういう業者もいるかもしれないということでございますが、ともかく可能な限り早く準備を進め、施行に持ち込む努力を一方でしつつ、法律の内容について広く消費者を含めて周知徹底を図る努力を法律成立後には早速させていただきたい、このように思っております。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 次に、不正競争防止法関連について少しお伺いをしたいんです。それと訪問販売法も関係するんですが、電子商取引、先ほど加納委員の方から御指摘がありましたが、この数年大変急増していると。これは相談件数という形では数字として出ているんですが、一つだけわからないのがありまして、例えば実態としてこの電子商取引は今、書籍、パソコン等があるんですが、インターネット上は最近実は車という話もありまして、例えばこの苦情の被害金額等についてインターネット上とほかのものとは多少違いが出てきてやっぱり高額のものが多いとか、そういうふうな傾向は出ているかどうか、これは私もわからないんでお教えをいただきたいんですが、そういうようなインターネット上は実態上異なった顕著な特徴があるというような問題は何かありますでしょうか。

○政府委員(岩田満泰君) 特段の実態上の差は現状においては認められないというふうに理解をしております。

○福山哲郎君 先ほどもありましたように、いろんな形の、例えばプロバイダーに契約をしたけれどもその契約がいいかげんだったとか、表示が違うとか、例えば最近で言うと、がんに効くとかいうような何か薬品まがいのものがあって、それを買いに行ってそれが効かなかったとか、先ほど言われたように、例えば自分の名前を片仮名で一文字打ち間違えたら、自分の本当の名前と片仮名で打って間違えたのとが二つ一遍に商品が来てしまったとか、こういう細かいことはもちろんこれからたくさん出てくると思うんです。それに関しては、先ほど大臣から御答弁がありましたように、これから通産省、政府としても法整備をしていかなければいけない。
 ただ、私が大変危惧をしているのは、国際的な取引が多くて海外との問題があるということが一つと、もう一つは、インターネット上は例えば車を写真で載せることも可能ですし、家具を写真で載せることも可能ですし、例えば宝石も、実物ではないけれども大変高額なものが画面上では幾らでも出てくるわけです。そうなったときに、今出てきている学習塾、エステ、家庭教師、外国語学校というような額とはひょっとするとけたが違うような状況の被害が出てくる可能性が私は非常に大きな可能性としてあると思っております。その辺に対しては先ほど大臣がこれから整備をしていくというふうに御答弁をいただいたものに対して御期待をすることになるんですけれども、そういった観点の議論というのはなされているのか、またそれに対してもし何か御答弁をいただければというふうに思います。

○政府委員(岩田満泰君) 今、先生のお話のものの中には、訪販法上の通信販売の規制によって既に規制下に置かれている内容のものと、あるいは通信販売の規制の観点とはやや違う内容のものとが両方含まれているように思います。
 私どもも例えばインターネットサーフデイというようなものをやって、具体的に今恐らく一万件、一万点と言わなければいけないかもしれませんけれども、インターネット通販が行われている状況にあると私ども理解をいたしております。これの総点検を通産省でして、その中に通信販売あるいは訪販法違反の状況の情報開示しか行われていないものについて、まさにインターネットを通じて警告を発して修正を求めるというようなことをこれまでもやってきておるわけでございます。
 さらに、こういったものというのは、もう少しシステマティックに頻度高く行えるような仕組みを今さらに検討いたしたいと考えておるところでございます。
 あわせて、通信販売の問題とは違う問題につきましては、先ほど大臣からも御答弁申しましたように、そうした新しい時代の取引形態というものに着目をして、あるいはこれはまた電子商取引一般の問題の中の一つの問題あるいは一部分の問題ということになろうかと存じますけれども、私どももそうしたものとして、通信販売的な規制では足りないかもしれない部分について、消費者保護法体系としての訪問販売法の中、例えばそういうようなものの中でどのような手当てを新たにしなければならないのかということは、今回の特定継続的役務の議論をしていただいた産構審の場におきましても宿題として指摘をいただいております。この点を今既に逐次勉強始めておるところでございますけれども、引き続き精力的に勉強させていただいて、できるだけ早くその成案と申しましょうか、しかるべき対策の方向性を見出したいと、こう考えておるところでございます。

○福山哲郎君 最後になりますが、今回政府は大変積極的にというか、早くこの法律改正案をということで大変御努力をいただいたというふうに評価をさせていただいているんですが、実際にその法案の改正で法案が国会を通りまして数年しますと、担当課長さんとか一生懸命つくられた方の声がだんだん薄まっていって、国会も今こうやって審議をしていますから、高揚感がありますから注意をしていますが、いつの間にかその立法趣旨等がなかなか反映しにくくなっていく状況も見られるというふうに思います。
 特に、今回、四業種以外の指定をどんどんしていかなければいけないという、本当に日々消費者と業者の間での競争が行われている状況の中で、そういったことがなく、ぜひしっかりとフォローアップをしていただいて、この立法趣旨がうまく機能するように御努力をいただきたいと思います。
 少し早いですが、これで質問を終わらせていただきます。

 


 

第145国会  参議院  経済・産業委員会  1999年4月13日

○福山哲郎君 おはようございます。
 本日は、本当にお忙しい中、舟橋、小暮、村参考人に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。せっかくの機会でございますので、皆様の忌憚のない御意見をいろいろとお聞かせいただければというふうに思います。
 早速ではございますが、質問に入らせていただきたいと思います。
 もともと質問しようと思っていたことよりも、今、舟橋参考人の表をもう一度拝見しましてふと考えたんですが、「消費者相談件数の推移」の中で、例えば平成九年度、都と都内の区市町村に寄せられた相談件数が八万七千件です。それで、今回の法律で問題になっている「役務(サービス)に関する相談件数」が三万件ということです。ぱっと数字を見るとああ八万件かというふうな感じだったんですが、三百六十五日で割りますと一日約二百四十件ぐらいになります。役務に関して言うと約百件弱、八十件ぐらいになる。
 これは、一日二百四十件、あちこちの消費生活センターに電話が鳴り続けているということなんでしょうか。

○参考人(舟橋とみ子君) 相談でございますけれども、先ほど御説明しましたが、東京都は二カ所、飯田橋と立川にセンターがございます。それから区市町村でも相談窓口を設けております。相談は、大体九割方が電話での御相談でございます。
 そういうことで、確かに今先生の御指摘がありましたように、電話を頻繁にかけて御相談されるということが非常に多い状況になっております。

○福山哲郎君 一日で考えるとちょっとびっくりするような数字だなというふうに思います。小暮参考人のエステのサービスに関しても全国的には約八千件ぐらいということで、これに関しても一日で割るとすごい件数になります。先ほど、数字としては余り多くはありませんがという舟橋参考人の言われた資格講座のところでも、平成九年度六百二十八件というふうに先ほど御説明をいただきました。これもよくよく考えると、一日二件は鳴っているという感じになります。別に個別の一日どうだということにこだわるわけではないんですが、やはりこれはかなり大きな数字ではないかなと私は改めて感じているんです。
 では、そのときに、基本的な問題というのは、先ほど小暮参考人が言われた、事業者が利益を追求し自由な経済活動をしていきたいということと、自分の意思でサービスを受けたいんだと思う消費者の自己責任の問題、それに行政がどう規制を入れるかというこの三つのバランスが私は大変問題だと。
 先ほど小暮参考人が言われましたように、規制が強過ぎると自由な経済活動がもちろん阻害されるわけです。新しい産業の芽を伸ばすような形でぜひ考えていただきたいという小暮参考人のお話も非常にわかる。ただ、これだけ件数が多いということは、やはりこれも非常に問題だと。ただ、ほっておけばいいかというと、そうではない。逆にお年寄りとか若年層とかといった人に対して大変厳しい状況もある。
 きょうは三人の参考人の方がお越しなんですが、現実に消費者の相談を生の声として聞かれている舟橋参考人、そして法的な意味できちっと社会的に規制をしていけばいいのではないかと思われている村参考人、今現実に産業活動をやられている小暮参考人、先ほど申し上げた自由な経済活動と消費者の自己責任ということとそれから公的規制のバランスというこの三つの観点から、現状とその問題点等の認識を、三人の参考人の方、それぞれ簡単で結構でございますので、御意見をお伺いしたいというふうに思います。
 では、まず村参考人からお願いします。

○参考人(村千鶴子君) では、お答えいたします。
 相談件数が大変多いという御指摘なんですが、実を言いますと、こういった消費生活センター等にどれぐらいの割合の方が相談に来ているのかということを見ていただきませんとその数字の評価も違ってまいりますということをまず申し上げたいと思うんです。
 これにつきましては、平成十年一月に消費者問題に関する世論調査というのを、これは総理府が全国調査をやっております。それで見ますと、被害に遭った、納得できないと思ったときに消費生活センター等の行政に相談に行く方の割合は一・五%か一・七%か、それぐらいだということなんです。
 それから、平成十年三月ごろに国民生活センターが国民生活動向調査というのを政令指定都市と二十三区の二十代から六十代までの主婦層を対象にやっているんですが、これでいいますと、被害に遭ったと思ったときに行政に相談に行かれる方というのは四%なんです。
 ですから、東京都だとか国民生活センターのPIO―NETのデータというのは、実は背後にそれだけのものがあって、すべてではないというふうに評価をしていただかなければならないんだろうということになりますので、現実的な問題状況としては大変深刻な状況になっているというふうに御認識いただくのが正しいのであろうというふうに思います。
 それから、経済の活性化と消費者の自己責任と規制というものについての考え方なんですが、この点につきましては、何でもかんでも法律でがんじがらめに規制をすればいいというふうには私どもも思っておりません。ただ、やはり経済の活性化ということを考えましたときにも、いいものをきちんとした売り方をしていくところが伸びていくというのが本来の正しい経済の発展のあり方であろうと思っているわけです。そういうためにはどうすればいいかということは、とりもなおさず、消費者が納得できる選択をし、納得できるものに対して合理的な対価を払う、こういう社会環境をどうすれば確保することができるかということであろうと思っているわけです。
 現在、継続的サービス取引について問題になっておりますのは、例えばある英会話スクールですと、契約締結段階で三年間有効チケットを六百五十回とか七百回分まとめて売ってしまって、それでほとんど予約がとれない。つまり、お金をどぶに捨てたのとほとんど同じ状態になって、中途解約は実質認めなかったり、解約を認めてもほとんどお金を返さないというたぐいのものであったりするわけです。
 これは健全な経済取引なのかというと、ちょっと下品な言い方ですけれども、私の感覚で言うとやらずぶったくり以外の何物でもないわけで、こういう形で膨らんでいく企業というものが果たして経済の活性化にプラスになっているのかというふうに考えていただきたいと思うんです。消費者が喜んで買い、そして喜んで対価を払う、実際に提供されるサービスというものが喜んで利用されるという社会環境をどうやって整備していくかということであろうと思うんです。
 今回問題になっている法案というのは、消費者が契約をして、納得のできるサービスについてはずっと取引を続けなさいと、納得ができないものについては、その時点で合理的な中途の精算をするというルールを設けて、納得のできないものでサービスを受けるつもりがないものについてまでお金を取るとか縛るとかいうような不合理なことはやめなさいというのがメーンであるわけです。そういう考え方でいえば、これはやはり自己責任の前提でもあり、健全な経済発展のための前提でもあるということで、私は決して矛盾するものではないであろうというふうに認識をしております。
 消費者の自己責任ということで考えますと、自分がどういう業者とどういう商品やサービスを幾らでどういう取引条件で買うことになるのかということを正確に認識して、そして自分で選ぶということが自己責任の前提だろうと思っております。こういう環境整備のための民事ルールとしての消費者契約法が、ことしの一月、国民生活審議会の最終報告で必要性があるというふうに言われておりますけれども、これもやはり自己責任ということを求めるときの最低ルールであるだろうというふうに思っております。

○参考人(小暮元一郎君) 企業が繁栄できるかどうか、それから継続的にサービスを提供できるかどうかということは、これはかぎを握っているのはすべてお客様だと思います。気に入らなければもう二度とそのサロンには来てくれません。それで、お客様とそれからサロン側の情報格差といいましょうか、それは埋めていって、お客様のそういった自己責任を求めていくということは大切だろうというふうに思います。
 ただ、私どもはエステティックの業界におりまして、あるいはまたほかの、英会話さんの業界、それぞれ業界の事情がすべて違っておりますので、業界ごとのそういった取引のルールを定めていくのがいいんじゃないかというふうに私は思っております。

○参考人(舟橋とみ子君) 自由な経済活動でございますけれども、その場合はやはり、対等の力を持った者同士が契約をしていく、そういうことが大切だと思います。消費者と事業者との間には、情報力それから交渉力の格差がどうしてもございます。そういった中で、消費者の自己責任を求めるに当たりましては、そういった格差をカバーしていく公正な取引ルール、規制と申しましょうか、そういったものが必要になってくると思います。
 消費者が契約する際に、先ほど来申し上げているんですが、虚偽の説明を受けたり強引な勧誘を受けたりという不適正な働きかけがなくて、きちんと適切な情報提供がされていく中で契約をしていく、そういうことがやはり大事だと思いますので、そのための公正なルールなり規制なりは必要かというふうに思っております。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 私もここは大変難しいところだというふうに思っていまして、例えば、舟橋参考人からいただいた資料によると、「エステティックサロンから、キャンペーン中と勧誘の電話があり、体験するため出向いたら、美顔の契約をさせられた。サービスを受けに行く度に手、足のコース等いろいろなコースを次々と勧誘され、一年間に五つの契約、総額約百万円も契約させられた。支払えないので解約したい。」というケースがございます。
 これは表現の問題があると思うんですが、「サービスを受けに行く度に」ということは、多分、この消費者は何回かサービスに行って、いいなというふうにも感じて、五つの契約をしたら百万円になっちゃったと。これは、「契約させられた。」という表現にありますが、させられたのか、本当に契約をする意思があってきれいになりたいと思われたかというのは、これは本当に微妙なところだというふうに思います。
 本当に悪質なケースと、私の友人とかでもエステサロンに行って喜んでいる人はいっぱいいるわけです。そこが今回のこの法案では非常に難しいところだなというふうに思いながら、それでも問題が多いというのは難しいところだなと思いながら今質問しているんです。
 それでは、ちょっと小暮参考人にお伺いをしたいんですが、先ほど加納先生からも言われたように、業界自体の加盟率が約一三%と。これは、先ほど、一人二人でやられているところが多いというふうに言われていますが、なぜ加盟率が低くなっているのか、原因と、それから業界として加盟率を上げるための御努力を何かされているのかをお知らせいただければありがたいと思います。

○参考人(小暮元一郎君) アウトサイダーが非常に多い現状なんですけれども、先ほども申し述べましたが、業界として努力は続けております。しかし、強制力というふうなものがない現時点ではちょっと限りを感じております。
 それから、経営内容が非常に小規模であるという、そういうサロンが大多数を占めておりまして、そのサロンがその地域地域でどのくらいどのように仕事をしているのかどうかというのはなかなか把握できないままに今日まで来ております。
 これから、私どもが中心になっていろんな機会をとらえていきたいと思いますが、自主的にこのように決めておりますよということを事業者に今までも伝えてはきておりましたけれども、なかなか求心力を持たないままに今日まで来ているというのが実情であります。
 これからは、行政の方々とも御相談しながら、御指導をいただきながらもっともっと積極的に広めていきたい。あらゆる機会を踏まえて、本当にこの仕事をお客さんに支持されるいい仕事にしていく気があるのかどうかというようなことも確認をしながら進めていきたいというふうに思っております。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 ぜひ業界団体として、加盟率向上に向けて御努力をいただきたいと思います。
 舟橋参考人にお伺いをしたいんですが、先ほど、消費者に対する情報、学習等の提供をやられているというお話がありました。これは具体的にはどういう形で啓蒙啓発をやられているのか、具体的な事例とか方法等についてお教えいただけますでしょうか。

○参考人(舟橋とみ子君) 東京都の消費生活総合センターでは消費者教育や消費者啓発等を行ってございます。
 具体的には、やはり若者の被害が多いということで、最近では、例えばいわゆる悪質商法の手口を示したポスターでありますとかまたチラシ、それから「東京くらしねっと」という情報誌にいろいろ情報提供をしております。また、教育講座とか出前講座というようなことで学校とか企業の方に出向いていって若い方にそういった啓発を行うとか、そういったこともやっております。また、大学の落語研究会の協力を得ましてわかりやすいコントとか落語で啓発を行ったりとか、そういうこともやっております。それから最近では、インターネットを利用したゲーム感覚で被害の疑似体験ができるようなCD―ROMもつくりまして、そういった啓発等に努めております。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 例えばポスターが張ってある、チラシがあると今おっしゃられた。ポスターが張ってあってそれが本当にどのぐらい消費者の啓蒙啓発になるのかというのは、大変失礼ながら私は少し疑問があります。例えば、そこで都が単独で行う啓発の限界や、またこの点に関して、国に対して啓蒙啓発について何か要望なり、国との協力関係なりで何か御意見等はお持ちでいらっしゃいますでしょうか。

○参考人(舟橋とみ子君) 国に対しましては、こういった取引の適正化に向けて要望書を出させていただいたり、日ごろからいろいろ連携をお願いしているところでございます。
 また、先ほど申し上げました若者向けの啓発でございますけれども、東京都のみではなく、関東甲信越の何県かと協力しまして、ことしの春の新入社員の若者とか、入学する時期でもございますので、そういった時期をねらって効果的なことをということで、協力してキャンペーンを行ってございます。
 そういったことで、啓発に工夫をしているところでございます。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 その啓発の中でも、その啓発がどの程度効果が出てくるのかということに対しては、消費者の立場で考えると僕も非常に難しいなと。
 先ほど申し上げましたように、私の友人では喜んでエステサロンに通っている人もいますし、自己啓発セミナーで大変お金を使い込んで困っている人もいます。それぞれ私前後の世代というのはこういったことに非常に安易にローンとかを組む世代になってきてしまいまして、僕たちの世代よりももう一つ前の若い世代になるともっと安易にローンとかクレジットを組んで困っているような人間もたくさんおりますので、そこら辺のところに対してどう啓蒙していけばいいのかということに関しては、多少今の状況では限界があるし、学校教育の問題も含めて難しいなと感じています。
 もうそろそろ時間になりましたので最後になりますが、村参考人にお伺いをしたいんです。先ほど、包括的な消費者契約法のお話がございました。具体的に、この消費者契約法について、例えばこの一点に関しては特に強調して、将来にわたって制定に向けてのポイントとしてはここが重要だというようなことがあれば、先々のことも含めて参考にさせていただきたいので、お聞かせをいただきたいと思います。

○参考人(村千鶴子君) 消費者契約法につきましては、一番考えていただきたいのは、個々の消費者が日常生活で契約を結ぶときに自分でその契約の中身を理解して、自分のニーズに合った選択を自分自身でできるようにするためにはどういう法律が必要か、そういう発想をいつも持っていただく必要というのが非常に高いだろうと思います。
 そういうふうに考えたときに、例えば国民生活センターのデータなんかを見ますと、日常生活での契約を締結する層はこの層だというのがあるわけではなくて、かなり若い層から超高齢者まで日常生活で自分に必要なものは個々人が契約をする、もうそういう時代になっている。それから、商品やサービスも、きょうの問題の継続的サービス取引もその一部なんですけれども、非常に多様化し複雑化し、そして日夜新しいものがどんどん出てきている、そういう状況にございます。
 ですから、やはりそういう非常に動きが激しい時代の中で、個別の消費者のためにどこまでわかりいい説明というものを制度化できるかという視点というものが非常に大事なのではないかなというふうに思っているんです。
 国民生活審議会の最終報告を見ますと、例えば説明の程度、重要事項とはだれにとって重要かとか、どこまで説明すればきちんとした説明をしたという評価ができるかという基準について、一般平均的消費者という言い方をしているわけですけれども、実は一般平均的消費者というのはどこにもいないわけです。ですから、その種の商品を生活で必要としている人、例えば介護サービス等の契約であれば高齢者とか超高齢者の方がそういうものを契約なさるわけですから、そういう契約する人たちのニーズに合った説明、理解可能な説明というものをきちんとすることが必要であるという基本的な考え方に立っていただくということが非常に大事だろうというふうに思います。
 それから、消費者契約法ができた暁に実効性を担保するために消費者団体の差しとめ請求権等が議論されておりますけれども、これも非常に大事だと思うんですが、一般消費者にとってみると、地元の自治体の消費者行政、端的に言ってしまえば消費生活センター等の相談業務の充実だとか情報提供の充実だとかというものが消費者契約法とやはり二人三脚で非常に必要な部分だろうと思うんです。ですから、そういうところを落とさないようにぜひ御議論いただければありがたいというふうに思います。

○福山哲郎君 これで終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。

 


 

第145国会  参議院  経済・産業委員会  1999年3月30日

○福山哲郎君 おはようございます。民主党・新緑風会の福山でございます。
 きょうは、特許法の改正について質問させていただきたいと思います。よろしくお願いします。
 昨年の四月、先ほど畑委員もおっしゃられましたように、特許法は損害賠償についての改正も含み四十年ぶりに改正をされまして、とうとう日本もプロパテント時代のスタートを切った、今回その改正がいわば二段ロケットの二段階目ということで、各委員の先生方の御尽力で附帯決議がなされまして、今回その附帯決議の内容がかなりの部分反映されているというふうに考えております。
 とはいえ、まず、特許や実用新案、意匠、商標など、これまで特許庁が担当してきたものというのは、工業所有権といって、ある意味で物権的なアプローチをされてきたように感じています。この所有権という概念から、産業財産権というような形の取引ができるような状況でということで、今まさにこの特許の問題というのはその変化の真っただ中にあるように考えております。
 そうなると、こういった技術というのはまさに国境がなく動き回っていく。その国境がない中で、どの国で研究開発をすれば一番得かという競争が実はもう始まっているんだろう。そうすると、当然、知的財産権の保護が最も強い国に研究成果というものが集まっていく状況になっていくのではないかなというふうに思っていまして、これに乗りおくれてはいけない。まして、日本は先頭を切るんだという心意気のもとに今回の改正案がされたのは重々承知をしておるんですが、とにかくこういう状況で、日本の産業発展、技術集積というのが外へ出ていくことに対して抑えていく。
 これは大きく国益に関係するものだというふうに思いますので、こういった状況を踏まえて、まず、知的財産権に関する国際的な戦略というものを通産大臣はどのようにお考えになられているのか、大きな枠組みで御答弁をいただければありがたいと思います。

○国務大臣(与謝野馨君) 技術開発をやった場合に、それの成果に対して価値を与える特許を初めとした知的財産権制度は、研究開発に要した投資の回収を促進し、研究開発へのインセンティブを付与するなど、技術革新、ひいては世界経済の発展の基盤としてますます重要になってきていると考えております。
 こうした中、経済のグローバル化が進展する今日、円滑な貿易、投資、技術移転に資する予見可能性の高い安定的なビジネス環境の整備に向け、知的財産権制度の分野においても次のような課題が重要となってきております。
 第一に、制度の国際調和に向けた透明性の高い国際保護ルールの確立であります。第二には、情報通信技術やバイオテクノロジーなどの先端技術の国際的な保護水準の調和でございます。第三には、知的財産権が尊重される国際的な事業環境の整備でございます。
 日本といたしましては、以上の三つの課題に対処するべく、今後の国際交渉に積極的に参加する所存でございます。特に、国会の了解をいただければ、五月中旬に開催予定の四極貿易大臣会合、五月下旬の先進国特許庁長官非公式会合などを通じまして、WTO・TRIPS協定等、知的財産権制度の今後のあるべき姿について議論してまいる所存でございます。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 国際的な観点からいうと、今大臣がおっしゃられたことはまさにそのとおりだと思いますし、その中で日本が存在感を持ってやっていくということは重要だと思います。逆に言うと、実際に国内でどれほど技術を養成していくかというのも大変重要な問題だと思います。そういう点で見ますと、改良型の技術開発から付加価値のより高い創造的な技術開発へ重点をシフトする必要があるというふうに私は思っていまして、創造的な技術研究を活性化させる必要がある。
 ところが、我が国の特許の内容を見ますと、既存技術の小改良や改良性の高いいわゆる改良特許というのが四分の三を占めている。創造性、独創性の高い基本特許というのが基本的には余り多くないというのが現状であります。
 この法案の改正が創造的な技術の開発にそのまま結びつくとは思わない。逆に言うと、それのための条件整備だということはよくわかりますが、こういった日本の現状をどういうふうに分析されているのか、また、アメリカなどとの差も含めて、我が国の産業の競争力が減退することにならないか、その辺の見通し、創造的な技術開発に関する戦略をお聞かせいただきたいというふうに思います。

○政府委員(伊佐山建志君) 先生御指摘のとおり、私どもが企業向けにアンケート調査いたしましたところ、御指摘のような内容の実態があるということを私どももつかんでおります。日本の場合には、国内におきます企業間の競争がほかのケースと比べまして大変厳しい、激しいという実態がございまして、どちらかというと企業が特許戦略というものを企業の生き残り戦略の一部に活用されるということで、他社が特許をとるであろう、とったであろうということを想定しながら、ある種防衛的に特許戦略を立てるというような実態もございます。
 そういうふうなこともございますものですから、基本特許にウエートが置かれるというよりも、残念ながら改良特許のウエートが高い。あるいは、実際に出願したけれども、特許化される登録件数というのは全体の三割でしかないというような形になっていること、これについては制度面で改正される部分は何とか是正していきたい。
 今回、こういう形でもって御審議をお願いいたしているわけでございまして、そういうことによりまして私どもが期待いたしますのは、まさに先生御指摘のように、創造的な研究開発をすることが日本の市場において十分に受け入れられるんだという制度的な担保と、それを使う側の意識というものが相まって、多分最も理想とされるような企業活動が行われることになるのではないかというふうに期待いたしております。
 先ほども御紹介申し上げましたけれども、日本だけではございませんで、世界がどんどん新しい技術を求めて、それを商業化する、新しい企業を起こすという形で進んでおります。日本がそれにおくれをとらないような形でもってやる、その一番ベーシックな着実なやり方というのが、私どもが主張いたしております創造性のある環境づくり、知的な活動をうまく創造サイクルに乗せることによって、そういう環境づくりを一刻も早く日本の中でも築いていくことが重要だということで、今後そういう方針のもとでやっていきたいというふうに思っております。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 今回の法案の中で、特許庁長官がメッセージとして、例えばここの部分は創造的な技術開発をする条件整備として一番重点的に私たちは考えたというようなところはどういった点になりますでしょうか。全部がそうだと言われれば、全部がそうなんでしょうが。

○政府委員(伊佐山建志君) そのとおりでございまして、制度的な部分で私どもが関係方面と非常に工夫いたしました点といいますのは、やはり知的財産権という非常に経済的に価値のあるものを開発するわけでございますので、それがきちっと評価されるような市場づくりにつながる制度にしなきゃいけないということで、侵害された場合の補償、回復というところで、権利的にそれが素早く回復される、それから侵害された場合に十分な経済価値を回復できるような、そういう制度にする。
 そこで、先ほど大臣からも御紹介申し上げましたけれども、計算鑑定人というような方々の支援を得ながら制度を運用するというのは非常に工夫をした部分だと思っております。

○福山哲郎君 では、具体的に法案の中身について少しお伺いをしたいのですが、今回、出願人に対して、三年以内に審査請求を短くされた。これは私は大変いいことだというふうに思うのですが、現実に我が国の今までの審査請求制度の利用状況を見てみますと、六、七年の間ずっとほったらかしにしておいて、七年目のぎりぎりのところで集中的に申請をするという状況にあります。
 今回、一気にそれが三年になるわけです。そうすると、出願人にとっては大幅な実務の変更を伴いますし、出願に対する評価体制というものも、急激にぎゅっと押し詰まって、実はかなり大きな負担がかかるのではないか。僕は法案の趣旨には賛成なんですが、逆に、その評価体制の整備に対して負担と混乱がないように、今どのようにそれを配慮されているのか、お聞かせをいただけますでしょうか。

○政府委員(伊佐山建志君) 一つ先ほども御紹介申し上げましたけれども、日本の場合は非常に出願の数は多い、しかしながら特許化されるのは全体の三割ぐらいだというところでございます。
 そもそも、特許化される前に審査請求という手続をとっていただくことになるわけでありますが、半分は審査請求されないということでございます。先ほど申しましたように、日本の企業同士の競争が非常に激しいということを反映いたしまして、どちらかというと防衛的になる。したがって、最後まで出さなければ、こちらも出さなくていいということがございますものですから、そういう結果を招来しているんだというふうに考えております。
 ただ、これはほかの方々からすると権利の帰趨が未確定なままになってしまいますものですから、これではほかの人の研究開発を阻害することにもなりかねないということでもございますので、今回こういう形でもって審査請求期間を現行の七年から三年にぜひ短縮していただきたいということでお願い申し上げているわけでございます。
 その結果、審査請求件数が増加することになるのではないかという御懸念、私どももそういうことの可能性については十分配慮しなきゃいけないというふうに考えております。一つにはいわゆるペーパーレス計画、これを私ども長い間計画的に進めさせていただいておりますけれども、これをさらに実効あるものにさせる。それから、私ども特許庁でこれまでやってこられた方で、わかりやすく申し上げますと、定年になられた、定年になりそうだ、しかしながら同じような仕事をやりたいという意欲と能力を持った方がたくさんおられます。そういう方々の力というものをうまく活用させていただいて、そういうことを通じまして審査処理件数というものを少しでも高めるというような形をとってきております。
 おかげさまで、最近に至りましては審査処理件数というものは審査請求件数を上回っておりますものですから、約四、五万件毎年上回るような環境になっておりますので、何とかその辺のやりくりはできるのではないか。
 それから、さらには情報の分野で、これまでも特許情報をマージナルコストで提供するということによりまして、民間企業のデータベース構築をそういう形でもって間接的に御支援をさせていただいております。
 それに加えまして、特に中小あるいはベンチャー企業に注目いたしまして、三月末、つまりあすから私どもの特許電子図書館をいよいよインターネットで開放することができるようになっております。これによりまして、特許庁が保有しております約四千万件の特許情報、必ずしも特許だけじゃございませんで、工業所有権関係それから非特許文献なんかも入っておりますが、こういったものを分類・検索サービスつきで世の中に御提出するということを考えております。これによりまして、出願する側にありましては、先行技術調査を非常に容易に御自身でおできになるという環境になりますものですから、一部の出願あるいは審査請求というものはそういうものを御利用することによって明らかに不要になるのではないかというふうに考えております。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 もう一つ、同じような観点でお伺いをしたいんです。少し細かくなりますが、恐縮です。
 無効審判の審理において、書面のやりとりを口頭審理にするということの促進が行われていまして、平成八年まで二十件以内だったものが、平成九年は五十六件、平成十年には百四十四件を数えて、大変ふえている。その中で、これまでは口頭審理が厳格に行われたかどうか、適法に行われたかどうかの証明手段である調書の作成を審判長の命を受けた職員が行っていることを、今回、客観性、公証性を担保するために審判書記官というものを創設するというふうに改正案で入っているわけです。
 これはどのような形での人員体制を整えられるのか、またその件数増に対応できるのか、先ほどと同じような観点でございますが、お教えをいただけますでしょうか。

○政府委員(伊佐山建志君) 御指摘のとおり、口頭審理案件というものが最近非常にふえております。従前はどちらかというと書面に依存するケースが多かったわけでございますが、口頭審理を通じまして、特に当事者の言い分というものが非常にはっきりと明確な形でもって確認できるというメリットが大きいということを踏まえまして、これをベースに今後やっていくことが多分社会的なニーズにこたえることになるのではないか。そのためには、手続面でももう少しきちっとした形にしないと客観性、信頼性というものが得られる形にはならないということもございまして、今回審判書記官という新しい制度を導入していただくべくお願い申し上げているところでございます。
 具体的にこういう仕事ができるのにはそれなりの専門知識が必要でございます。少なくとも特許実務を十分に経験している、それに加えまして、特許法のみならず民事訴訟法等の関連法規の知識を十分持っている、あるいはやはり調書というものを作成するのはそれなりの専門性が必要でございます、調書を作成する能力を持っている、こういう方々でなければいけないということでございます。この法律をお認めいただければ来年からこういう制度を導入したいということでございますので、若干の時間的な余裕をいただいた上で、私どもの研修所で所要の研修を十分にしていただいて、それで対応できるような形にしたいと思っております。
 具体的には、三人の審判書記官で対処するということでございます。現在、今御指摘のように百数十件弱でございます。したがいまして、一人当たり数十件ということになりますので、これは私どもの実務経験からいいますと十分にこたえ得る量だというふうに判断いたしております。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 その専門性のある人材というのは、先ほど言われた例えば特許庁のOBの方とかもしくは弁理士の方とか、そういうふうなイメージでよろしいのでしょうか。

○政府委員(伊佐山建志君) むしろ現役の方でございます。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 次でございますが、今回の答申に書かれて、そして法案の改正で見送られた点なんですが、これはお答えになられる範囲なのかどうかはちょっと僕も判断できないので、それは御判断をいただければと思います。
 弁護士費用の敗訴者負担の導入については、答申の中では積極説、消極説両論が併記されておられます。訴訟の結果、権利者の得る賠償額との関係で弁護士費用をどちらが持つかということに対して、これは特許庁のお答えいただける範囲なのかどうかちょっとわからないのですが、この件について答申の中のものが今回外れているということで、どういうふうにお考えなのかをお教えいただけますでしょうか。

○政府委員(伊佐山建志君) 先生が御指摘された点以上のことは私ども、こういうふうにやりたいということを持っているわけじゃございません。
 弁護士費用のみならず、できるだけ侵害した側の利益というものを立証する、この立証の仕方も大変難しいものがございます。利益から所要のコストを差っ引けばいいじゃないかというような議論がございますが、これも実はどういう客観的な証拠をもって費用と認めるかというような問題もございまして、それが不明な場合に、最終的にはでは収入として得たもの全部とっていいのかどうかというような議論もございます。この点については今後いろいろなケースというものを踏まえて判断していきたい、こういう結論になったものですから、私どもとしては、今まだ方向づけをするのは時期尚早だということで触れないことにしたわけでございます。

○福山哲郎君 先ほど畑委員の方からもありました司法制度改革の関係になりますが、間違いなく知的所有権訴訟というのはこの流れからいってこれから増加傾向にあると思います。
 ところが、裁判所の体制、司法の中の体制では、東京地裁で専門部が一部増設されたという動きがありますが、抜本的に拡充強化がされているわけではない。権利の迅速な確定をしなければいけないと言っていますが、そういう点も含めて、これは司法の問題なのでこれも言及いただけるかどうかは別に、専門的な知識を有する裁判官の養成等については今どのようにお考えなのかをお教えいただけますでしょうか。

○政府委員(伊佐山建志君) 特許等の侵害訴訟を円滑に運営する要件といたしまして、技術的な知見を有する私ども特許庁と法的判断能力を有します裁判所がうまく連携をしないと所期の目的を達することができないということは御指摘のとおりであります。そういう観点から、今回の法案におきましても、特許庁と裁判所との間の協力関係というものを意図的に強化する、そういう規定を幾つか設けさせていただいております。
 具体的には、侵害情報を交換する、それから特許庁の専門的判断を提供することによって裁判におけます判断業務というものを少しでも迅速化できるような形にするというような工夫をさせていただいております。
 それから、侵害訴訟の迅速な解決を図るべく、私どもから専門の調査官を裁判所に配置させていただいております。この人たちに対する特許情報、これをできるだけいわばオンラインで提供できるような、あたかもかつて御自身で特許庁においてやっておった仕事と同じような環境で調べができるというような形になることによって、審理の迅速化が図られるのではないかというふうに考えております。
 こういう形での協力関係というものを今後ともぜひ強化してまいりたいと思っております。

○福山哲郎君 次に、文部省にお伺いをしたいんです。
 日米の大学における特許の出願件数というのが異常に差が大きくて、一九九五年の段階で日本は百三十七件、アメリカは五千百件ということで大変大きな違いがある。この辺のことにかんがみて、昨年、大学等技術移転法、TLOができたんだというふうに思います。
 歴史的に見てなぜこのような差が生じたのかというお答えと、実際に大学での知的財産開発のために文部省としては具体策をどのようにお考えなのか、それからもう一点は、先ほど申し上げたTLOについて今進捗状況はどのようになっているのか、三点についてお答えをいただけますでしょうか。

○説明員(若松澄夫君) 先生御指摘いただきましたように、工業所有権審議会の答申資料によりますると、平成七年、一九九五年でございますけれども、日本の大学が特許出願をいたしました件数が百三十七件に対しまして、米国の大学が特許出願した件数が五千百件というふうに承知をいたしておるわけでございます。
 ただ、例えば権利の帰属のあり方につきまして、アメリカでは一九八〇年のベイ・ドール法制定以降、原則として大学に権利が帰属するというふうにしていることに対しまして、日本の国立大学では原則として大学ではなく個人に帰するというふうにされてございまして、実態としても八割強が個人に帰属しているということなど、制度面での違いというものもございまして、一概に単純な比較というのは難しいのではないかというふうに思っております。
 ただ、帰属先がどうであるかということにかかわりませず、日本の大学の研究成果というものが必ずしも特許に結びついていないのではないか、こういう指摘があるということは事実でございまして、私どもといたしましては、大学の教官が積極的に特許がとれるような環境を整備していくことは重要なことだというふうに認識をいたしております。
 そうしたことから、例えば研究者のインセンティブを高めるために、科学研究費補助金という基本的な研究費がございますけれども、その中の研究業績という欄がございますが、その中にどの程度特許を取得したのかというようなことについての記載欄を設けるというようなことでございますとか、あるいは教官個人が持っております特許を出願するためのサポートの体制というものをつくっていく。先ほど先生御指摘ございましたような、支援をするためのTLO法と言われるものを通産省と一緒になって制定をして促進しているというようなことがございます。また、平成十一年度からでございますけれども、科学技術庁と共同いたしまして、大学の教員の特許マインドというものを涵養するためのセミナーというようなものも開くことにいたしておるところでございます。
 今後とも、大学の教員の特許取得を支援するための環境整備、ひいてはそれが民間に活用されていくことについて努力をしていきたいというふうに思っておるわけでございます。
 それから、TLOの設立状況でございますけれども、御案内のように、昨年の八月一日からいわゆるTLO法が施行されておるわけでございまして、昨年の十二月には、東京大学を中心といたします株式会社先端科学技術インキュベーションセンター、それから東北大学を初めとする東北地域の国立大学を対象といたします株式会社東北テクノアーチ、それから立命館大学を初めとするところの関西地域を対象とします関西ティー・エル・オー、さらには学校法人日本大学、その四法人から申請のありました実施計画について承認をいたしたところでございます。それ以外にも、近年、北海道大学、筑波大学、東工大、名古屋大学、九州大学など二十以上の大学で設立に向けての全学的な検討委員会というものが設けられているなど、学内外でさまざまな形態レベルでの検討が進められておりまして、私どもとしてもそれを推進していきたいというふうに考えているところでございます。

○福山哲郎君 先日、この質問をするのである技術系の大学の先生のところへお話を伺いに行ったら、特許を出すよりも論文を発表する方が大学の世界では評価が高いんや、そこの評価がもらえないんだったら特許へ出すよりも学会での論文発表の方を私たちは優先する、そういう風土が日本のアカデミズムにはあるというお話を直接伺いました。
 今のお答えをいただいたのですぐその風土が変わるとは到底思えないんですが、その辺について文部省はどういう御認識でいらっしゃいますでしょうか。

○説明員(若松澄夫君) 大学の教官がまず最初に考えますのは、自分の研究成果というものを論文にすることであるということにつきましては、日本の研究者はもちろんでございますけれども、私どもの承知している限りにおきましては、アメリカの研究者においてもそれは同様であるというふうに思っております。ただ、とりわけ日本では、特許を取得するということが、研究評価、研究の業績として認められにくい、そういう風土があるということは先生のおっしゃるとおりであろうと思っております。
 したがいまして、先ほども若干申し上げましたように、大学の先生方に対します代表的な研究費でございますところの科学研究費補助金、そういうものの業績欄に特許の取得状況というようなものを記載させるというような形で、申請を評価する上での一つの方法にするというようなことなどの取り組みをして、大学の先生方の意識を少しずつ、特許をとるということも研究業績としての重要な一要素だという認識を持っていただきたいというふうに考えているわけでございます。

○福山哲郎君 ということは、今の表現でいいますと、特許をとることも業績の評価の一部であるということの認識を持ってほしいということなんで、文部省は特許の方向に誘導してそっちへ向かっていくという形でもないわけですね。一応学会での発表等は、もちろんアカデミズム、それが大事なのはわかるんですが、それは一部の選択肢としてそういうことも評価の対象に入れましょうよという、今の段階ではその程度なわけですか。

○説明員(若松澄夫君) 大学の先生方が行っておる研究活動は非常に幅が広いわけでございまして、もちろんすべての研究が実用化に即結びつくという研究をいたしているわけではないわけでございます。ただ、中には研究成果というものが産業界等の活用にふさわしいものというのは当然あるわけでございまして、そういうものがいたずらに埋もれておるということはよろしくない。
 したがいまして、先生方の意識というものを、学会発表あるいは論文発表という形態とともに、そういうような内容の研究成果につきましては速やかに移転ができるようにということで、私どもとしても先ほど申し上げましたTLOというようなものを促進するという形もとっておりますし、私どもの持っておりますパンフレット等でもそういうことについての啓発をしているつもりでございます。

○福山哲郎君 また少し話が変わります。
 マドリッド協定議定書に参加をするというお話について、二、三お伺いをしたいと思います。
 一つは、今このマドリッド議定書に参加するに当たりまして、アジアを見たところ、近隣アジア諸国において我が国の意匠や商標等が大変模倣される例が多くなっていまして、この模倣品流通というので我が国の産業は大変被害をこうむっている。これの対策に苦慮しているというふうな話も伺っているんですが、この模倣品に対する対策をどう考えているのか。
 さらに、そこに加えて、模倣品が出回っているアジアにおいて実はこのマドリッド議定書に対して参加を表明している国がまだまだ少ないということの現状についてどのように認識をされているか、また対策についてどう考えているのか、お伺いします。

○政府委員(伊佐山建志君) 御指摘のとおり、アジアを中心といたします発展途上国におきまして、特に日本の商標の模倣が非常に多いということはそのとおりでございます。これを何とか改めなきゃいけないということで、基本的には、御案内のとおり、二〇〇一年からWTOのTRIPS協定の履行期限が来るわけでございますので、それぞれの国におきまして総合的な知的所有権制度の整備というものがとられているところでございます。
 さはさりながら、制度があれば必ずしも十分だということではないのが現実でございますので、模倣被害の実例を私どもなりに調査いたしまして、これまで発展途上国政府に対しましては、それをお示ししながらこういうふうに改めてほしいということを申し上げ、制度運用の改善要請を行ったりいたしております。
 また、あわせて、アジア等の発展途上国の取り締まりに当たる方々に日本に来ていただいて、日本ではこういう形でもってやっているからこそこういう欲しい技術が入ってくるような環境になっていますということをお教えさせていただいております。
 それからまた、日本の方の企業にも必ずしもマインドが十分にできていない。模倣されてやっとこれで一流の企業になったというようなことを言われる企業も現実の問題としてございます。そういう方々には、そんなことをやっていたんじゃ問題を大きくするばかりだということを申し上げて、外にいる方々に模倣品被害のセミナーを開催する。こういった実態がありますよということをお教えしながら、それをどういうふうにやったら回避できるかということを、アメリカとかヨーロッパの事例を申し上げながら、マニュアル集をつくるなどして御協力といいますか、むしろ意識改革をしていただくべくいろいろな働きかけをいたしているところでございます。
 それから、マドリッド協定議定書でございますけれども、御指摘のとおり、実はアジア諸国でこれに参加いたしておりますのは中国と北朝鮮、この二カ国でございます。ほかの国がまだ参加されていないということで、私どももその辺は非常に気になっていますものですから、去る一月に日韓特許庁長官会合というのがございまして、その場でもぜひこれに入るべきではないだろうかというようなお話を申し上げております。韓国では具体的にマドリッド・プロトコルに参加すべくその手続を早急に進めているんだというお話でございました。したがいまして、韓国は時間の問題で参加されることになると思います。
 ASEAN諸国にもお話を申し上げているんですけれども、そのもう少し手前の状況にあるものだから、まずはTRIPS履行をきちっとやるための制度づくりをした後で、こういった問題についてもやりたいというのが実態のようでございます。いろいろな機会を利用しながら、日本の経験を十分お話ししながら、それをやらないと欲しい技術が入ってこないということについて御理解いただけるように今後とも努力してまいりたいと思っております。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 本当に一刻も早く働きかけをしていただいて、それこそ日本がリーダーシップを果たしていただかなければいけないと思います。
 もう一点言いますと、このマドリッド・プロトコルにはアメリカが参加をしていません。現実に簡便に迅速に安く商標権をとるということに対してアメリカという巨大な市場が入っていないというのは、実は画竜点睛を欠くというか、本当にこれで議定書がうまく機能しているんだろうかという疑念を持たざるを得ないわけです。アメリカの参加の見通し、また今何でアメリカが参加をしていないのかの理由について特許庁としてどのようにお考えなのかをお聞かせいただきたいと思います。

○政府委員(伊佐山建志君) アメリカの場合は、一応行政府としてマドリッド・プロトコルに参加する方向で従前よりも熱心に進めるような形になるのではないかという予測をいたしております。
 アメリカがこれに問題視しています点は一つだけでございまして、EUがこのマドリッド・プロトコルに入っているヨーロッパ諸国に加えてEUという、ある種二重投票権を持てるような形になっている、これはおかしいというところでありまして、私どもお伺いしている限りでは、アメリカの中で一部のところがこれに問題を提起している。
 今まではそこの意見が非常に強かったけれども、最近はやっぱりトータルとして商標の保護というものをアメリカの企業も非常に重視しておりますものですから、商標の保護を受けるに当たりましてこのマドリッド・プロトコルというのは大変便利な仕組みでございますので、そういう現実というものを無視できないような環境になりつつあるということから、従前よりももう少しまともにと言ったらおかしいですけれども、多分議会におけます審議でもメンバーになること、加盟することを是とするような確率というものは非常に高くなっている、このように理解いたしております。

○福山哲郎君 そろそろ時間ですので、最後に一つ、これほど特許法等の改正が進んで世界の大きな流れになってきている。先ほど長官も言われましたペーパーレス化、それから特許電子図書館の開放等が出てきた段階で、私は、弁理士の資格要件というか役割というのはかなり大きな変化をもたらしてくるのではないか。今、日本全国で約四千人、これは数で足りるのかどうかという観点と、弁理士資格の試験等、弁理士のあり方等についても弁理士法の改正も含めて視野に入れて考えなければいけないのではないかというふうに思っているんですが、最後にそういった点の御見解をお聞きいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

○政府委員(伊佐山建志君) 私どもも、弁理士の役割というものが従前以上に大変大きなものになってきているというふうに認識いたしております。先ほど来御紹介ありましたように、地方におきましても知的財産権のウエートというものは大変高くなっている。したがいまして、弁護士の方もそうですし、やはり知的財産権にかかわる方々の人的インフラを十分にしないことには十分社会的ニーズにこたえることにならないという認識では同じでございます。
 しからば具体的にどうするかということになるわけでございます。量的な問題も私どもも認識いたしております。今の四千人で十分であるかどうか、アメリカの場合には約二万人ほどいるということでございまして、経済規模から考えましてもアメリカの半分ぐらいいてもいいんじゃないかというような御議論もあります。
 そういった点を含めまして、実は昨年の四月以来、私どもの組織の中で今後の二十一世紀におきます弁理士の役割やいかん、今後どういう人、どういう制度にして拡充すべきかということについて議論いたしてまいりまして、その最終的な考え方というものがほぼ取りまとめられつつございます。
 その辺を踏まえまして、今後さらに審議会等の場を通じまして、対象法になっております弁理士法、この改正も十分に視野に入れながらどういう役割を与えるべきかということについても十分な議論をしていただいて、それを踏まえて所要の措置をとっていきたいというふうに考えております。

○福山哲郎君 ありがとうございました。

 


 

第145国会  参議院本会議   1999年3月24日

○福山哲郎君 私は、民主党・新緑風会を代表して、ただいま議題となりました訪問販売等に関する法律及び割賦販売法の一部を改正する法律案並びに不正競争防止法の一部を改正する法律案につきまして、総理及び関係大臣に質問を行います。
 まず初めに、訪問販売等に関する法律及び割賦販売法の一部を改正する法律案についてお尋ねいたします。
 さまざまな商品やサービスが出回り、クレジットカードやローン利用による買い物が一般的になったことを受けて消費者トラブルが急増しています。
 例えば、消費生活センター等の消費者相談窓口に寄せられた苦情件数について見ると、一九九七年には四十二万九千八百六十六件に及び、五年前の二十七万八千八百四十二件と比較すると五割を超える増加となっています。また、トラブル一件当たりの契約金額も大型化しており、一九九七年度は一件当たり約百五十三万円と十年前の約八十五万円に比べて二倍近くにも達しています。これらの苦情のうち、契約、解約関係については、訪問販売、通信販売、電話勧誘販売、マルチ商法等、本改正案の対象となっているものが七割近くも占めるという実態です。
 平成五年当時、国会において今回と同様の継続的役務提供契約の適正化等に関する法案を検討したところ、通産省は業界の自主的ルール、自主ガイドラインの策定という指導等で対応するという措置を講ぜられました。しかし、結果としてこのトラブルの増加をもたらしています。いわゆる継続的役務提供に関してもっと早く法制化をすべきではなかったのか、総理の明確な見解を求めます。
 さて、本改正案では、エステ、外国語会話教室、学習塾、家庭教師派遣など継続的なサービスを提供する四つの業種を対象に加え、罰則も強化する方向となっています。一定の評価はできるものの、とはいえ、現実には結婚相談所やパソコン教室業にも被害は広がっています。
 本改正案の四業種以外の追加指定は一体どのようにされるのでしょうか。これほど業種が多様化している状況で追加指定がおくれれば他の業種での被害が増加し、まさにイタチごっこです。またもや後手後手に回る可能性はないでしょうか。通産大臣、お答えください。
 また、長引く不況と失業の増大を反映してのことか、現在、マルチ・マルチまがい商法をめぐるトラブルも九七年には一万件を超え、九五年の二・二倍と激増しています。特筆すべきは、ここ数年、若年層にその被害が及んでいることです。楽してもうけようと安易に飛びつき、人生を狂わせるケースも多々見受けられます。国民一人一人の自己責任が問われることはもちろんですが、現状をかんがみ、消費者教育の充実、消費者トラブルに係る情報提供の充実に努めるべきではないでしょうか。総理、御答弁ください。
 また、法改正内容の周知徹底とともに、継続的役務提供という言葉それ自体が何のことかさっぱりわからぬいわゆるお役所言葉であり、国民にとって法律の内容がわかりにくくなっています。法改正にあわせて、この言葉を若年層も含めて消費者にもっとわかりやすいものに置きかえることが必要だと考えますが、いかがでしょうか。
 一方、ここ数年間、家庭における情報化の発展により、インターネットや電子メールの普及は目覚ましく、インターネット通販など電子商取引市場の急速な拡大が見られます。電子商取引における消費者トラブルはどのような現状なのか、そしてどのような対策を講じようとしているのか、通産大臣の所見を伺います。
 本改正案に見られる個別業種を対象とした法制度の見直しと並行して、あらゆる商品やサービスを包括する消費者契約法の制定が各方面から強く求められております。しかし、経済企画庁での取りまとめがおくれ、いまだ法案が提出されていないことは極めて残念であります。販売活動などの制約を懸念する関係業界の抵抗もあって法制化のめどがついていないと報じられていますが、政治のリーダーシップが欠如していると批判せざるを得ません。政府は今国会中に消費者契約法案を提出すべきではありませんか。総理及び経済企画庁長官の答弁を求めます。
 次に、不正競争防止法についてお尋ねします。
 政府は、音楽、映画、ゲームソフトなどを販売する事業、いわゆるコンテンツ提供事業について、将来の成長産業、雇用創出産業として極めて有望なものと位置づけています。ここで見逃してならないのは、こうした産業は産業全体としての成長性は高いものの、一社一社の個別の企業にしてみると大変なビジネスリスクを負っているということであります。
 例えば、近年成長著しいゲームソフト産業を例に挙げれば、たった一本のゲームソフトに三十億円にも及ぶ開発費用が投下されたりしています。このようなソフトは、必ず投資額を回収できるほどヒットするとは限らず、失敗した場合には会社の存続にも影響するものと考えられます。
 このようなコンテンツ産業の状況を踏まえるならば、現在のようにデジタルコンテンツをただ見、ただ聞き、ただ利用させるような不正な機器が一流の新聞紙面やインターネット上で公然と広告され、市場に蔓延している事態を目の当たりにするにつけ、一方では、コンテンツ提供事業を極めて有望な成長産業と位置づけている政府としては、怠慢のそしりを逃れ得ないものと考えられます。総理の見解を求めます。
 ところで、こうした事業者は、みずからの商品であるコンテンツの提供に伴う対価の徴収を確実にするため、防御手段として暗号技術の向上などに不断の努力を行っております。そもそもみずからのビジネスは、まずは自助努力で守るというのが大原則であります。仮に必要以上に強過ぎる規制を導入することになれば、不十分なレベルの技術であっても法によって守られることになり、技術の改善向上努力の意欲をそぐことにもなりかねません。あるいは規制の仕方いかんによっては、今後の情報化、特に電子商取引の中心技術であるべき暗号技術の開発などを萎縮させることにもなりかねません。
 したがって、本改正案のように規制の導入は急ぐべきであり、むしろ政府の対応は遅きに失したものと私は考えますが、他方、導入する規制は、民間の技術開発努力を可能な限り妨げないよう配慮し、必要最小限の措置とすべきと考えますが、今回の改正がこうした観点から必要最小限の措置となっているのか否か、通産大臣の見解を伺います。
 また、我が国のコンピューター社会は極めて脆弱で、ハッカーが銀行の現金自動預け払い機に侵入し預金残高を改ざんしたり、政府機関のシステムを混乱させることは朝飯前だと言われています。我が国で昨年摘発されたいわゆるハイテク犯罪は四百十五件あります。過去五年間でおよそ十三倍の増加であります。日本は先進国の中で不正アクセスを罰する規定を唯一持たない国と伺っていますが、そうであれば我が国の法体系や捜査体制は余りにも立ちおくれていると言わざるを得ません。
 金融、インターネットはもちろんのこと、経済が国境を越えて動いている現在、日本政府の対応の不手際で世界にパニックをもたらすことは絶対に避けなければなりません。不正競争防止法案に加え、国際的な動向を十分に踏まえた上で不正アクセス取締法案を早急に提出すべきではありませんか。日本政府はネットワーク犯罪に対して手をこまねいて傍観するだけなのでしょうか。
 以上、総理の御決意を求め、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕

○国務大臣(小渕恵三君) 福山哲郎議員にお答え申し上げます。
 継続的役務に関する法制化がおくれたのではないかと御指摘でございました。
 これらの業種につきましては、従来から取引適正化のための自主ルールの策定を指導してきたところでございます。しかしながら、近年、苦情相談件数が御指摘のように増加傾向にありますので、関係審議会での御議論も踏まえまして今回の改正案を提出した次第でございます。
 消費者教育、情報提供の充実についてのお尋ねがありました。
 近年、消費者トラブルの増加にかんがみ、昨年十二月、私が会長をいたして開催した消費者保護会議におきまして、消費者にも自己責任に基づいた行動が求められていることから、消費者教育、情報提供の体制整備が不可欠であるとして、各般の施策を決定いたしております。これに基づきまして適切な消費者教育、情報提供に努めてまいりたいと考えます。
 お尋ねの消費者契約法につきましては、先般、国民生活審議会で報告が取りまとめられました。そこでは、消費者契約をめぐる紛争の円滑な解決に資するため、同法をできる限り速やかに制定すべきといたしております。同時に、業種の特性等を踏まえまして、今後さらに詰めるべき論点が指摘されております。政府といたしましては、本報告を踏まえ、これらの課題に鋭意取り組み、適切に対応してまいります。
 今回の不正競争防止法改正の時期、タイミングについてお尋ねがありました。
 情報の無断視聴や無断コピーなどを制限する技術に対する保護措置につきましては、欧米におきましても昨年末に順次法的整備がなされたところであり、我が国としても早期の成立を期すべく、立案作業に最大限の努力を行っておるところでございます。
 不正アクセスの規制等に関する法律案につきましてお尋ねでありますが、御指摘のように、いわゆるハイテク犯罪の防止と電気通信の安全、信頼性の確保を図るために、不正アクセスを禁止、処罰する法制度の整備が急務であることは御指摘のとおりであります。
 現在、政府におきましても、不正アクセスから防御するための援助措置等も規定した効果的な法律案とすべく鋭意検討を進めているところであり、できるだけ早く法案を国会に提出して御審議をいただけるようにいたしたいと考えます。
 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
   〔国務大臣与謝野馨君登壇、拍手〕

○国務大臣(与謝野馨君) 福山議員にお答え申し上げます。
 本改正法案で対象とする四業種以外の追加指定についてのお尋ねでありますが、今後生じ得る新たな役務の指定に際しましては、苦情相談の実態等の総合的観点から検討を行い、機動的に対応するよう努めてまいります。
 今回の法改正内容のわかりやすい周知徹底についての御指摘でありますが、各種の広報手段の活用等により、若年層を含めた国民各層にわかりやすい形で改正法の趣旨及び内容の周知徹底を図り、本改正法に盛り込まれた措置が十分に理解され、活用されるように努めてまいりたいと考えております。
 次に、電子商取引における消費者トラブルの現状と対策についてのお尋ねでありますが、苦情相談件数については、比較的少数ですが、近年急増傾向にあります。
 これを踏まえまして、通産省としては、インターネット通販事業者について、訪問販売法上の表示義務の遵守状況を調査の上、遵守の呼びかけを行ったところであります。今後とも、情報化の進展に伴う新たな取引の実態に注視しつつ、積極的な対応に努めてまいります。
 次に、不正競争防止法の改正における規制内容についての御質問でありますが、本法律案は、成長産業における取引秩序の確立を図るため、必要最小限の民事上のルールを設けるものであります。
 なお、法案では、試験研究のための装置に適用除外規定を置くなど、技術開発等の努力を萎縮させることのないよう配慮をしております。
 以上です。(拍手)
   〔国務大臣堺屋太一君登壇、拍手〕

○国務大臣(堺屋太一君) 消費者契約法についてお尋ねがございました。
 選択の自由が広い市場経済では、公正な競争と事業者の情報公開が欠かせぬ一方、選ぶ者の自己責任も重くなることから、消費者と事業者との間の契約に広く適用できるような消費者契約法の制定は重要であると認識しております。また、産業界におきましても、この点については一定の理解が得られたものと考えております。
 本年一月の国民生活審議会の報告においては、消費者契約法をでき得る限り速やかに制定すべきことが指摘されております。同時に、同法は、広範な業種、業態を対象とすることから、対象業種の範囲、それぞれの業種における特性あるいはトラブルの実態等を踏まえて、将来発生いたします業種をも含め、今後さらに詰めるべき論点が残されていることも指摘されております。
 したがいまして、経済企画庁といたしましては、これらの論点について鋭意検討を進め、でき得る限り速やかな法制化を目指し、最大限の努力をする所存でございます。(拍手)

 


 

145国会  参議院  経済・産業委員会  1999年3月15日

○福山哲郎君 おはようございます。民主党・新緑風会の福山哲郎でございます。
 本日は、かなり広範囲にわたりましていろんなことを質問させていただきたいというふうに思います。少し長時間ではございますが、どうかよろしくお願い申し上げます。
 まずは第一に、先週の金曜日に、昨年の十―十二月期のGDPの結果が出てまいりまして、五四半期連続のマイナス成長になったということで、九八年十―十二月期のGDP実質マイナス〇・八%成長、九七年の十―十二月期から戦後初めて五期連続のマイナス成長となりました。主要先進七カ国でも九八年のマイナス成長は日本だけという、御案内のように大変異常な事態であります。
 堺屋長官がいつもおっしゃられますように、恐らくこの十―十二月期というのは、まさに夜明けの前の一番暗いところだったということなんだと思いますけれども、この結果について長官はどのようにお考えか、お聞かせをいただきたいというふうに思います。

○国務大臣(堺屋太一君) 十―十二月期のQE、四半期別国民所得統計速報によりますと、この期間に内外需合わせて〇・八%のマイナスになりました。これは年率に直しますと三・二%になる、非常に大きなマイナスであります。その結果、委員御指摘のように五期連続のマイナスになりまして、四期連続も新記録だったんですが、五期連続というのはこの種の統計をとり出してから最初のことでございます。
 ただ、パターンを見ていただきますと、一昨年の十―十二月期には外需が〇・四%プラス、内需が一・三%マイナス、その次の期は、内需の方が一・〇%マイナスで、外需が〇・三%マイナス、その次の期は、内需の方が一・一%マイナス、外需がプラス〇・四、そして七―九月期は内需が〇・六マイナスで、外需が〇・三プラスでありました。
 要するに、今回は、内需の方はややましになっているけれども、輸出がアジア地域を中心に悪かった、これが一つの理由であります。それからもう一つは、七―九月期が〇・七%のマイナスと予想されておりましたのが、意外や中小企業等の設備投資が多くて、確定値ではマイナスが〇・三になったというようなこともございまして、いかにも今回、この十―十二月にがっくり落ちたような印象もありますけれども、内容を見ますと必ずしもそうではなしに、内需だけで見るといささか改善が見られるという状況になっております。
 重要なことは、今回、政府投資は相当公共事業等をやりましたので改善要素になっておりますが、消費需要は心配されたほどの下がりはなかった、住宅投資とそして設備投資が非常に低落している、これが大きな問題でございます。その後、ことしに入りましてから住宅の方はかなり改善が見られるという情報が相当に入っております。したがって、そこは改善されると思いますが、設備投資は依然として後退が続いているというような状況でございます。
 政府といたしましては、十一月に決定いたしました第三次補正予算を含みます緊急経済対策の着実な実行と、そして金利、金融政策等をあわせてこの一―三月にはいい状態をつくり、そして四月からの平成十一年度にははっきりとしたプラス成長に持ち込むべく全力を挙げている次第でございます。

○福山哲郎君 私も、景気はよくなるにこしたことはないというふうに思っていますし、堺屋長官の言われる見通しのようにいけば大変ありがたいなというふうに思っています。
 ただ、長官にお伺いをしたいんですが、消費の方が思ったほど冷え込まなかったというふうに今おっしゃられましたが、十―十二月期というのは、ボーナスも十二月に出ますし、年末のセール等もありまして基本的には消費は上がる期だというふうに通常は思うんです。それが、実は思ったより下がらなかったというよりかは、思ったより上がらなかったというのが実情だというふうに思うんですが、そこら辺の理由というか、どのように今判断をされておられますでしょうか。

○国務大臣(堺屋太一君) 御指摘のように、十―十二月というのは消費の、最もたくさん売れるときでございますが、これは季節修正済みでやっておりますので、季節によって売れるということは一応打ち消されているとお考えいただいていいと思います。
 また、各流通部門が消費税還元セールとかいろんなイベントをやりました。その効果も期待されたんですが、プラスにはなりませんでした。反面、ボーナスが前年に比べるとかなり減っております。その影響で勤労者所得で見るとかなりのマイナスが、二%以上のマイナスが予想されたものですから、かなり下がるんじゃないかと思っておりましたところ、季節修正済みで〇・一のマイナスということでございますので、危惧されたほどの悪化はなかったが期待されたほどの上昇もなかったというような結果になっております。
 一月になりましてからの消費動向もいろいろと情報はふくそうしておりまして、消費というのは全く政治で動かしにくい部分でございますので、確かに委員おっしゃるように危惧しておりますが、今のところ、住宅につられてやや回復傾向がこの二月の下旬あたりから出ているんじゃないかなというような感じは持っております。

○福山哲郎君 本当にそれならありがたいなと思います。
 消費について見ますと、一―三月期から見ても、マイナス〇・一、マイナス〇・一、マイナス〇・一ということで、実は余り大きく動いていないというふうに私は思っているわけです。
 三番バッターが消費でございますね、長官。三番バッターが四月、五月に出てきて何とかというお話ですが、要は、これだけ政府が緊急経済対策と減税措置等を昨年とりながらも、消費自体は余り大きな動きがないということで、私は、消費が急に花が開いていくとか、逆に言うとしぼむ方も含めて、どちらかというと、当面、やっぱり動きはそんなに、国民一人一人も将来に対する不安もありますし、堺屋長官が一生懸命頑張って景気はよくなるんだとおっしゃられても、それもほんまかなというのもあると思いますので、そこら辺については長官の言われるようになればいいなというふうに思いながら、次に質問に移らせていただきます。
 先ほど、公共投資の方で一〇・六%プラスだと。これは昨年四月の緊急経済対策等の実際の効果が出てきているというふうに私も思っています。
 それで、一番バッターが公共投資で、多分このレベルでいうと二塁打ぐらいは打ってくれているという感覚だと思いますが、二塁打ぐらいは打っている。住宅投資もなかなか、この二番バッターは動きが鈍かったんですが、ようやくこの一月に入って住宅ローン減税等、政府の政策減税等の動きの中で二番バッターもようやく活躍をする傾向がちょっと出てきた。ところが、消費に関しては今申し上げたとおりのような状況でございます。そして、四番の設備投資が実はマイナス五・七と、さらにこの十―十二月期に悪化をしているということで、GDPに対する設備投資の影響というのは規模的にも大変大きい。それが実は坂道を落ちていっていると。
 これは、せっかく一番、二番が頑張って、消費はひょっとしたら犠牲フライかもしれないけれども、四番の設備投資は実は残塁に終わるような状況が起こるのではないかというような懸念をしております。この設備投資のマイナス五・七というのは大変重要というか、問題だというふうに思っておりまして、そこに関しては長官はどのようにお考えでしょうか。

○国務大臣(堺屋太一君) 委員御説のように、政府の公共投資というのは大体全体の七%台でございます。住宅も四・五とか四%台でございます。したがって、長打を期待できるようなバッターではございません。それに比べまして消費は六〇%でございますから、ここで一発長打というように期待したいところでございますが、今のところ消費のもとであります可処分所得がそれほど増加するとは思えません。
 したがって、消費者のマインドが改善をして耐久消費財等に需要の転換が起こる、あるいは新しい耐久消費財が出てくる、そういうようなことを期待しないと大きな伸びはできないんじゃないか、そういうような議論もございます。
 ただ、耐久消費財の買いかえ時期が来ておりまして、住宅に続いてそういう周辺刺激がございますれば、今コンピューター、軽自動車等々、新しい企画、新しい商品などの支出がございますので、かなり、ある程度期待できるのではないかと思います。
 問題は輸出と設備投資なのでございますが、この設備投資は衰えたりといえども一五、六%のシェアを持っておりまして、政府の公共事業の倍ぐらいのシェアを持っておりますから、これがやはり長打を出してくれなきゃ困るんですが、その前に、設備投資がふえるためには企業が設備投資をするともうかるという判断が必要です。そのためには、労働生産性が向上し、資本効率が上がる、いわゆるROEが上がらなければなりません。
 ところが、大赤字が予想されます金融機関を除きましても、この三月期の日本の企業のROEは二%少々だと言われております。それに比べて、アメリカ、ドイツ、イギリスあたりでは十数%、時には二〇%に近づくような利益率なんです。そうなるためには、やはり人員の整理や事業の選択も含めた大胆な手術が必要になってまいります。その間の苦痛、これぞ本当の夜明けの前の暗さだという感じがいたしまして、恐らく来年度の前半ぐらいはかなり厳しい事態があるんじゃないか。
 その間、政府の公共事業や減税を含めた消費需要、こういったものがずっと下支えをして次に伝えてくれる。同時に、各省の政策が功を発揮いたしまして、新しい産業分野、例えば介護でございますとか、あるいは住宅建設でございますとか、あるいは家事のアウトソーシングの新しい産業でございますとか、環境の発展とか、そういうところの新しい投資が出てきてくれなければ、従来型の産業構造で設備投資が拡大するというのはかなり時間のかかる問題だと思っております。
 政府といたしましても、経済戦略会議の提案、あるいはこれから進めます経済審議会等でそういった点を十分に考慮して解決していきたい、積極的にそういう設備投資を呼び出していきたいと考えている次第でございます。

○福山哲郎君 長官のお話を伺っていますと、ほとんど、余り認識は、正直、生意気ながら変わらないのかなと。だから、設備投資に対してはっきりと確信を持って四月、五月、来年度出てくるというよりも、やはり政府の政策と、呼びかけと、もうかるという意識等が出てこないとなかなか出てこないというと、今お話にありましたように、四番バッターの登場も、まあどうなのかなという状況だと思います。
 その中で、私は思うんですが、長官がまさに言われましたように、この三月、恐らく日本の経済は未曾有のというか、多分戦後始まって以来の悪い企業決算を迎えるのではないかというふうに思います。そして、その悪い決算を踏まえた後、働く人たちにとっては大変厳しい春闘を迎えると。これは、賃上げよりも何よりも雇用確保だというような状況の中で、先ほど長官も言われたように厳しいリストラとか構造改革をしていかなければいけない。そうすると、逆にその三月、四月というのは、〇・一%のマイナスぐらいで落ちついている六割を占める消費が、実は非常にマインド的にはしんどくなるんじゃないか。
 そうすると、新聞紙上で三月の決算が最悪の決算だというようなことが活字で躍り、春闘が厳しいということを働く者は自分の各企業の中で感じ、目の前でリストラされている人を見る中で、そして消費が上がるか、さらには四番の設備投資が出てくるかというと、僕はやっぱり三番、四番の登場というのは本当に厳しいんじゃないかというふうに今感じています。
 そんな中で、この政府当初見通しの、実は当初ではないんですが、修正されたマイナス二・二%の九八年度の成長が、この十―十二月期のマイナス〇・八を踏まえて一―三月期はどういった見通しを長官は今お考えでいらっしゃいますでしょうか。

○国務大臣(堺屋太一君) 平成十年度に関する限りは、十―十二月期がマイナス〇・八と予想以上に下がった反面、七―九月期がかなり上方修正されているということがございます。したがいまして、仮に一―三月期が成長ゼロだったといたしますと、全体を通じてマイナス二・四ぐらいになります。私どもは、一―三月期はプラスに転じてくれるのじゃないかという期待がありますが、仮に〇・〇で行きましてもそれぐらいでございますから、マイナス二・二という見通しは修正する必要はないと考えております。

○福山哲郎君 マイナス二・二でも二・四でもどちらでもよろしいんですが、これは僕はさきの臨時国会でもこの見通しの件については長官と少し質疑をさせていただいたんですが、当初予算でプラス一・九%だったんです。四月の総合経済対策と十二月の補正という、ある意味でいうと、普通ならベンチにいないような松井とかイチローみたいな代打を昨年四月に経済対策というところで十六兆円、十二月も十七兆円ということで、本当に松井、イチロー級の代打を昨年はベンチにいないはずなのに出してきた。それで、代打なしで当初プラス一・九だったものが、代打を二人出してマイナス二・二ということになっています。
 僕は、当たったか外れたかということは、もう余り議論はしても仕方がないと思いますし、見通しがあかんかったやないかという話をしても水かけ論ですから意味がないと思うんです。
 これ、当初予算でプラス一・九だったんです。二人の代打を四月と十二月に出してマイナス二・二です。実は、外れた率というのはプラス・マイナスすると四・二とか三になるわけです。四・二%とか三%のずれというのは尋常なずれではないと私は思うんです。例えば九八年度のGDPが四百七十八兆円ぐらいだと計算しても、四%から四・数%ずれるということは、実はGDPでいうと十九兆円とか二十兆円のずれになるわけです。十九兆円とか二十兆円のずれというと、先ほど言った民間住宅が十七兆円ですから、この分ぐらいのずれを今回の経済政策では起こしているわけです。
 ここに対しては、やはり九七年までの従来の政府の対策、それから九八年の見通しについてかなり大きな誤りがあったんだということを認めていただかなければいけないのではないかというふうに私は今思っております。これだけ厳しい状況ですから、九八年がマイナス二・二かマイナス二・四の議論をしているよりも、将来どうするかという議論の方が重要だとは思いますが、やはりプラス・マイナスで四・数%ずれているというのは大変大きい、それも二人も代打を使っているわけですから。
 この辺について長官はどのように思いますか。

○国務大臣(堺屋太一君) 昨年の見通し、プラス一・九というのが大変大きく外れたことにつきましては、率直に国民の皆様におわびする以外にないと思います。これは明らかに間違いました。
 どこにその間違いがあったのか、私どもが小渕内閣になってから丹念に研究いたしました。その結果、やはり最大の問題は金融政策のあいまいさにあった。これがどんどんと収縮していく。政府が十六兆円、その次は減税を入れて二十四兆円つぎ込みましても金融収縮がとまらない。ここで相当連続三振をとられたようなところがございまして、この金融収縮をまずとめなきゃいけない、これに小渕内閣は全力を挙げました。
 一つには、貸付保証を中小企業にやりました。この効果があらわれまして、十二月から一月にかけて中小企業の倒産件数は非常に少なくなっております。
 第二に、大手金融機関に対して改善しなきゃいけないというので、臨時国会で金融再生法案、金融早期健全化法案を通していただきました。それが御案内のように去る金曜日あたりから実行されて注入されております。これで金融問題が本当に解決するのかどうか、まだやられたばかりでございますから危惧は残っておりますが、これは金融再生委員会の指導等もございましてかなりよくなるだろうと思っております。
 そういうぐあいに、まずバケツの穴をとめて、それから改めて水を注ぎ込もうという政策をとっております。そういう点で、この不況の環の一番の重要だった金融問題がとまった、それに伴って中小企業の経営状態もかなり改善されてきている。そういったことごとがリストラあるいは金利の低下等で個人所得が減るというような問題を覆っていい方に影響してくれるのではないか。それを株式市場なども評価してくれているのではないか。あるいは住宅現場に来られる方がふえているのではないか。そういう意味から去年とは違った局面が出てきていると私は感じております。

○福山哲郎君 では、これは長官に、私が大変尊敬する元評論家でいらっしゃったので、今でもそうかもしれませんが、わからないというか、少しお伺いをしたいんですが、経済成長率というのは四半期ごとで見ていきますね、前の四半期からどのぐらい減ったんだという議論をしていきます。そうすると、先ほど冒頭申し上げましたように、五四半期連続で成長率は減っているわけです。日本のGDPは減っていっているわけです。
 そうすると、政府の〇・五%成長というのは、それは一%であろうが〇・五%であろうが与謝野大臣が誤差の範囲だとおっしゃられたように、いろいろあると思うんですが、基本的にはどんどんGDPの大きさというのは減った上で、要は、当初でいえば例えば一―三月期が四百八十二兆円だったものがこの十―十二月期は四百七十三兆円と分母が減っていっているわけです。分母が減って例えば〇・五%成長したとしたって、それは一体日本のいつの時期のGDPに比べてどうなんだといったときに、〇・五%成長するのはいいことなんですが、分母自体が減っていっているわけですから、私はこの議論の中で、この国の雇用とかこの国の経済規模とか産業構造から考えて、一体どのくらいのGDPならば不況感とか不景気感とか将来に対する不安がなくなるような経済活動ができるのか、これが一概に言えるかどうかもわからないし、その議論が意味があるかどうかもわからないんですが、今のプラス〇・五にする一%にするというのは、どんどん減っていっていますから、ここが起点になるわけです。ここが起点になって〇・五上がった、よかったねといったって、実は三年前ぐらいの時期に比べれば全然落ちているわけです。それはプラスに転じるのはいいことなんですが。
 では、日本の経済のファンダメンタルズで見たときに、どういう規模のGDPが本当に今の日本の経済の中でいいのかという議論が必要なのではないかというのは個人的に思っていまして、そこに対して長官の御見解をいただければというふうに思います。

○国務大臣(堺屋太一君) 委員御指摘のとおりでございまして、前年と比較しておりますから、前年が下がっていたらそれに比べてどうかと、こういうことになるわけです。五期連続でどんどん下がっておりますから、実額でいいますとかなりの減少を見ております。暦年で見て二・八%下がっているということでございます。
 それで、この〇・五%というのは、毎期下がってきたところの平均をとりますから、今よりは高い、初期よりは低い。それを回復しようと思いますと、例えば一―三月期が〇・〇、横並びでございますと、これから平均いたしまして平成十一年度は〇・四ずつ上がらなきゃいけない、年率で一・六%ずつぐらいの成長をしなきゃいけない。一―三月期が〇・四ぐらい上がってくれていますと、向こうの谷間との間が上がりますから、あとは〇・一ずつぐらいになる。そういうテクニックな問題がございますが、それは経済学者の間の議論でございまして、一般国民の話からいうと、〇・一だろうが〇・四だろうが余り関係がないということになるでしょう。
 それで、政府といたしましては、この〇・五というのは、とにかく五期連続でプラスにするんだ、今までの二年連続でマイナスになってきたのを三年連続マイナスにしないんだと、こういう決意を示したものでございまして、まだまだこれは健康体になった状態とは考えておりません。
 さきに報告のありました経済戦略会議では、最初の二年間、九九年、二〇〇〇年は経済を再生するために早く言えば集中病棟みたいなものだと。そして二〇〇一年、二〇〇二年が一般病棟からリハビリだと。そして二〇〇三年から二〇〇八年まで、この期間に健康体になって、そしてその健康体の状態は潜在成長率で二・〇%と、こう見ているようでございます。
 私どもはこれから経済審議会で、この経済戦略会議の提案も踏まえまして、さらに業種別に精査いたしまして、どれぐらいのものであるべきか、今申し上げたのは実質成長でございますから、これに名目成長が加わって財政がどのようになるのか、産業構造がどのようになるのか、それから雇用がどのようになるのか、そしてその中で、雇用も若い人、高齢者、女性、男性、いろんな面でどんな形になっていくのかというのをできることならことしの前半にお示しさせていただきたい、経済審議会として答申させていただきたい。
 そこでは、委員御指摘のようなことを国民の皆様方にもよくわかってもらえるような形で示せればやりたいなと、今鋭意努力しているところでございます。経済戦略会議では大体二・〇%の実質成長という数字が出されておりまして、今のところそれが一番権威のある数字とお考えいただければいいんじゃないかと思います。

○福山哲郎君 この件についての質問はあと一つで終わりにしたいと思いますが、では先ほどからの流れの中で、三番バッター、四番バッターが打ってくれればいいんですが、ひょっとしたらファウルチップになるかもしれないし空振りするかもしれない。
 そうすると、この〇・五%のプラスにするためには公的資本形成というものがまた必要になってくる可能性があります。来年度の予算審議をしている最中に、その話は予算が通ってからだという話をいただくのは百も承知の上でございますが、もしそういう状況で三番バッター、四番バッターが空振りをした場合には、長官としては次なる財政出動等のお考えはお持ちでいらっしゃいますでしょうか。

○国務大臣(堺屋太一君) 委員御自身がお話しいただきましたように、予算審議がまだ終わっていない段階で次の手はどうかというのを申し上げるのはいかがなものかと思いますが、経済政策につきましても、緊急経済対策と、十一年度の予算におきまして、そういったことも見込んで十分な手当てをしたつもりでございます。国際経済その他から緊急事態が起こってくる、災害が起こるというようなことがあれば別でございますが、十分な手当てをしておるつもりでございます。したがいまして、これをいかに上手に執行していくかというのが第一の問題だろうと思います。いろいろとそういう面では新しい政策も入れておりますので、執行の面で考える必要があろうかと思います。
 また、予算以外にも、金融政策でございますとかあるいは規制緩和政策でございますとか、そういった経済対策の面で幾つも今考えなければならない点もあるのではないかと思っております。
 そういったことをできるだけ取り上げまして、長打力がなくても、ピンチランナーを出すとかヒットエンドランをやるとかというようなことをやる。ベンチにいない選手をまた連れてくるというようなことはなるべく避けていきたいし、それでもできるだろうと、できるはずだと私たちは確信しております。

○福山哲郎君 大変誠実にお答えいただきまして、ありがとうございました。
 では、次の質問に移らせていただきたいと思います。
 がらっと雰囲気は変わりますが、お手元に資料を配らせていただいております。「ご当選」という、何か政治家にとってはどきっとするようなものが書いてある、「振袖無料プレゼントご当選のお知らせ」というのがございまして、これはつい先月の二月二十三日に公正取引委員会の方でこの会社でありますいちこしに対して警告の措置をとっていただいた案件でございます。公正取引委員会には警告の措置をとっていただいて、私は京都が地元でございますので西陣の産地等大変皆喜んでおるんですけれども。
 これ見ていただければわかりますように、振りそで無料プレゼントなんです。振りそでが無料でプレゼントされるというのはすごいことでございまして、これは借り上げのホールだの呉服の販売会場で、うまいんですが、十七歳から十九歳の女性には振りそでをプレゼントしますと、四十歳から六十歳の方には訪問着とか浴衣を無料プレゼントするということをダイレクトメール、チラシ等で周辺に発送しまして、それで当たったといって喜んでその会場に来られた方には、お仕立て代はうちの方でお願いしますと。さらには、その周辺にいろんなものを売っておりまして、結局すごい金額のお金を使わせるということでございます。
 このように、一般の消費者に対して無作為抽せんで当たったかのごとくダイレクトメールで呼び寄せて、プレゼント品である反物の価格以上に仕立ての加工代とか、さらにはプレゼントとは別のものは通常価格でいろんな買い物をさせているということは、今回警告という措置をとっていただいたんですが、こういった商行為は景品表示法上どういうような問題があるのか、一般論で結構でございますのでお答えをいただきたいと思います。

○政府委員(山田昭雄君) 先生御指摘のとおり、「振袖無料プレゼントご当選のお知らせ」というような、いわば当選商法というようなことを言われているわけでございます。
 本件につきましては、株式会社いちこしが一般消費者に郵送したダイレクトメールにおきまして、京都染織振興会主催、あるいは今お話にございましたような「振袖無料プレゼントご当選のお知らせ」、ここにありますように限られた人数の方々に無料プレゼントさせていただきますというようなこと。あるいは、「仕立て加工代は」「特別割引でお承りいたしております。」と記載いたしまして、あたかも着物の振興を図るために設立した権威のある特別な団体が、多数の中から特に選ばれた者だけを対象に、和裁技術保持等を目的に、通常の仕立て代に比べまして特別に安い仕立て代で着物を提供するかのように表示していたわけでございます。
 しかし、実際にはこの株式会社いちこしが主体となっているものでございまして、また先生が御指摘のとおり、特に選ばれた、当選ということで限られた人数の方々にやっていたのではない、そういう企画ではないということでございます。
 それと、仕立て代でございますが、通常の仕立て代に比べまして特別割引と言えるようなものではないということでございまして、当該金額は、企画対象の着物の反物原価あるいは仕立ての経費の合計を上回っていたということでございます。
 こういった表示、これが景品表示法第四条第二号の規定に違反するおそれがあるといたしまして、先ほど御指摘ございましたように、去る二月二十三日、同社に対しまして警告を行ったものでございます。

○福山哲郎君 実は、このいちこしという会社は過去、平成九年ですが、これは無料じゃないんですが、一円セールということをしていまして、振りそで一着に一円の値札をつけ、やはり数万円の仕立て加工代金と組み合わせて販売を行っていました。そして、その平成九年の五月には、全日本帯地連盟というのが、いちこしの商法は不当廉売だということで公正取引委員会に告発を行っているというふうに伺っているんですが、これに対して公正取引委員会はどのように対処をしていただいたのでしょうか。

○政府委員(山田昭雄君) その御指摘の件でございますが、今回の違反行為と類型や内容も異なりますけれども、景品表示法に違反するといたしまして私ども過去に警告をした事例がございます。

○福山哲郎君 その警告はいつのことでしょうか。

○政府委員(山田昭雄君) ちょっと正確な日にちは忘れましたが、一昨年かと思いますけれども、警告という措置を講じております。

○福山哲郎君 一昨年ということは、平成九年の何がしかのときに警告をされたわけですね。

○政府委員(山田昭雄君) 一昨年、平成九年の九月でございます。

○福山哲郎君 警告というのは具体的にはどういう内容というか、どういう法的な措置というのか、表現上わからないんですが、警告というのはどういった性質のものと判断すればいいんでしょうか。

○政府委員(山田昭雄君) 景品表示法違反行為につきましては、景品表示法の第六条で排除措置という、これは法律上の行政処分でございます。しかし、事案の内容あるいは迅速に処理する必要性というようなこともございまして、あるいは相手方が既に私どもが調査していたときにやめるというようなこと、もろもろのことを考えまして、行政処分ではございませんで行政指導といたしまして、相手方の違反行為を取りやめるということも前提といたしまして、そのような指導をしているわけでございます。

○福山哲郎君 行政指導をされているということで、このいちこしさんも御商売をされていますし、この不景気のさなかですから、生活がかかっていると思うので大変だとは思うんですが、実は平成九年の九月、先ほど言われたように警告が出ている。それでまた平成十一年二月二十三日に、先ほど言われたような類型、内容だということで警告が出たわけですね。
 そうすると、平成九年九月から十一年二月というわずか一年半ぐらいの間に、警告が出てから大してたっていないのに、いきなり一円から無料にまた値下げして、同じようなことをしているわけです。
 今回の公正取引委員会の措置がやはりまた警告であったと。先ほど申し上げましたように、一生懸命仕事をされているわけですから、生活もかかっているからなかなかきついとは思うんですけれども、これはどう考えても確信犯というか、警告だと行政指導だということでもう一度同じようなことをやっている。さらには、先ほどまさに言われましたように、染織振興会という非常に信用のある団体のように見せかけをして業務を行っている。
 これに対して今回の措置の警告というものは、なぜさらに強いものにはならなかったのか、理由をお聞かせいただけますでしょうか。

○政府委員(山田昭雄君) 平成九年に私どもが処理いたしました事案というのは、今回の事案とは事実であるとか違反の行為類型というものが異なるわけでございます。過去の事案に厳正に対処していて今回の事件が生じなかったかどうかということは一概に言えないかとも思いますが、しかし、繰り返して同じ者がこのような景表法に違反するような行為を行ったということもございまして、今回は私ども、警告と同時に、先生が御指摘のとおり、全国各地でもやっておりましたものですから、公表いたしました。
 警告しかつ公表いたしまして、今後こういった行為が繰り返し行われないように十分周知徹底しまして、そして消費者の側にも十分これからの買い方について気をつけてもらうように、そういったことも促したわけでございます。今後とも十分監視してまいりたい、このように考えております。

○福山哲郎君 そうすると、警告で公表しないというのは、公表するというのは段階としてはより重いという判断でよろしいわけですね。

○政府委員(山田昭雄君) 事案の性質なり内容によりまして、やはり皆さんそれぞれ御商売をしておりますし、それと消費者をいかに店に引き寄せるか、プルするかということもこれも一つの商売でございます。しかし、消費者を欺罔してそして来させるということは、これはかなり問題、悪質な行為になりますので、私どもとしては景表法上このような措置を講じているわけでございます。
 公表ということは社会的にもかなり影響も与えます。そういうことでありますし、また消費者にも、こういう売り方であり、当選といって限られた者に当選したというように表示しても、実は非常に多くの者に、ダイレクトメールで、若い人には晴れ着であり年寄りにはとめそで、訪問着であるとか、先ほどそのように御指摘ございましたが、販売業者からすべての者に当選だということを出している、こういったものであるということを消費者にもよく訴えるということによって再発が防げる、このように考えているわけでございます。

○福山哲郎君 そのとおりだと思います。
 ただ、実際に、一回目の警告では再発の防止ができなかったという事実があります。そこは、できれば重く受けとめていただきたいと思います。
 確かに、いちこしは商売をしているということを先ほど私も申し上げましたが、その後ろで、実はまともに商売をされて一生懸命働いている方がたくさんいらっしゃる。
 特に中小企業関係の方は、こういった不当な商売がまかり通って、なおかつ確信犯的に、警告程度だからもうかれば得だというような状況で、これは多分こういういちこしの例だけではないと思うんです。家電の安売り販売も最近問題になっております。確かに不景気ですし、景気が悪いですから、安いものに消費者は飛びつくと思います。それは資本主義のあれだと言われればそうかもしれないけれども、そうではない部分でやっぱり公正な商売上の監視というものをしっかりしておいていただきたいと思います。
 本当にこれはひどい話で、実はダイレクトメールを一千百万通送っているんです。二万六千人の女性ががこれに対して応じているということで、大変べらぼうなDMの数でして、DMの経費を回収するだけで多分いちこしは大変だと思うんです。
 そんなレベルでこういう商売が広がっていくと、本当に真っ当な商売をしている方がしんどいというふうに思いますので、ぜひ今後、こういったことに対する監視をより強めていただきたいというふうに思うんですが、一言御答弁をいただければと思います。

○政府委員(根來泰周君) 御指摘の点は一々ごもっともでございまして、私どもの職員あるいは都道府県にもお願いしまして、こういう事案を防圧するように全力を尽くしているところでございます。
 ただ、不公正取引というのは罰則がございませんし、排除命令ということと警告と、この効果というのは警告の方が早手回しというところがございまして、排除命令をやっているとどうしても時間がかかる、その間に被害者もふえるというような痛しかゆしのところがございます。
 そういうところで、安直だという批判を受けるかもわかりませんけれども、早く警告をして、早く世の中の方に知ってもらって、早くやめるということも一つの手段であろう、こういうふうに思いますので、その辺の兼ね合いを考えながら厳正に対処したい、こういうふうに思っております。
 今後ともひとつよろしくお願いいたします。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 同様で、やはり資料でお示しをしたのですが、今度はマルチ商法の話なんです。これは通産省が今回、訪問販売法の改正ということで大変前向きな法案を出していただいていまして、今衆議院でやられているということで、今後審議が参議院にも回ってくるので、その法案の審議についてのひとつ準備ということで、一つ二つだけ質問させていただきたいと思います。
 お手元の資料には、新聞記事が二つ出ています。これは両方とも本年の記事なんですが、先ほどのいちこしの問題もそうですし、今回のマルチ商法もそうなんですが、やはり本質的には不景気で不況でみんながしんどいというのがあるわけです。しんどいから安易にとにかくお金もうけに走るとか、とりあえず何か安いものとかという話の中で、実はマルチの相談件数、苦情というのが、九六年に法改正がされて、実はマルチ商法関連の苦情がその法改正前の約二倍出ている。
 それと私は、大変問題だなと思っているのは、この苦情等が大変低年齢化をしている。例えば大学生であるとか二十代の前半、後半であるとか。例えば、やっと就職をしたけれども、そういうマルチ商法まがいのものにひっかかって、結局会社をやめてしまったとか、学生がお金が定期的に入ってくると言われ、大学へ行きながらそういうものに手を染めて、いつの間にか学生ローンみたいなものに手を出してみたりという形で、低年齢化をしているというのは大変これは問題だというふうに思っています。
 まずは現在、苦情が二倍に達しているということに対して通産省としてはどのように御認識を持っておられるか、お答えをいただきたいというふうに思います。

○政府委員(岩田満泰君) 連鎖販売取引につきましては、平成八年に訪問販売法を改正していただきまして、禁止行為などの行為規制の対象者を統括者あるいは勧誘者に加えまして連鎖販売業を行う者ということで組織全体、マルチと申しましょうか、ピラミッド組織全体に及ぶように拡大をしていただいたわけでございまして、さらにクーリングオフの期間も十四日から二十日に延長するというような強化措置を講じていただきました。これまでその法律の運用に努めてまいりました。いずれにいたしましても、八年改正当時問題となっておりました事案に対して効果的な取り組みができ得るような仕組みを用意していただいたと思います。
 しかしながら、御指摘のように、最近、国民生活センターで発表されました数字等によりますと、俗称ではございますが、マルチあるいはマルチまがいと言われるような商法に関します苦情相談件数が増加しているということでございまして、私ども、国民生活センターあるいは経済企画庁とも連携をとりまして、こうした悪質な商法については厳正な対応をしていきたいと考えますし、同時に、消費者啓発という面につきましても努力をしてまいりたいと考えております。
 今、先生から御指摘でございますが、今国会で改正訪問販売法をお願いいたしておりますけれども、連鎖販売取引に係る罰則の点についても強化措置を盛り込んでおりまして、さらにこの規制の実効性が高まることを期待いたしておる、こういう状況でございます。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 これはひょっとしたら通産省の管轄ではないのかもしれないんで、お答えできない場合はいいんですが、一つだけちょっとお伺いをしたい。
 全国のマルチ商法に対する事件の摘発の数というのが、暦年でいいますと、九〇年から三件、四件、八件、八件、十六件と摘発数があります。ところが、九六、九七、九八というのは三年合わせて三件しかなくて、でも苦情の件数は実は倍に上がっています。これは何か理由があるのでしょうか。お答えできない場合は結構ですが、もし何かお答え、コメントいただければありがたいというふうに思います。

○政府委員(岩田満泰君) 衆議院で法案審議の段階で、警察当局に対してそうした御質問がございました。私、内容的にはお答えできる立場にございませんけれども、今後そうした警察当局としての対応をしっかりやっていくというような御答弁があったというふうに記憶をいたしております。

○福山哲郎君 これは答弁できないかもしれないんですが、やっぱり警察の摘発数がふえていると苦情件数というのは減っているんですか。

○政府委員(岩田満泰君) その関係について、ちょっと今手元にデータ等がございませんので、恐縮でございます。

○福山哲郎君 そうしたら、先ほどの話で低年齢化についてなんですが、これについては通産省として、政府委員の御答弁の後、通産大臣にももしお伺いができればというふうに思いますので、よろしくお願いします。

○国務大臣(与謝野馨君) いわばこういう商法が入ってまいりましたのは、これも刑事事件になりましたが、ネズミ講というところから日本の社会でこういうものが出てきたと私は思っております。
 しかし、最近いろんな事件が起きておりますし、トラブルが起きております。こういう消費者トラブルを防止、解決するためには、消費者の方も自己責任原則に立って、購入時における商品選択やトラブルへの対応を図っていくことが基本と考えておりまして、この点についての自覚を促すことが重要であると思います。世の中にはそんなうまい話はないということだろうと思います。
 このため、通産省としては、テレビ番組、パンフレット、リーフレット等のいろんなメディアを通じまして、契約の知識や悪質なトラブルへの注意喚起など消費者の教育とか啓発とかを行っております。こうした中でマルチ商法をめぐる問題が取り上げられているところでございます。
 特に、先生御指摘になったように、若年層が新種のサービス等をめぐるトラブルに巻き込まれやすいというのは最近の傾向でございまして、私どもとしては、成人式等の機会を利用した全国規模の消費者啓発を自治体の協力のもとに進めているわけでございます。
 今後とも、法律による取引の適正化措置に加えまして、消費者教育、啓発活動、情報提供等に積極的に取り組んでまいりたい。ですから、法的な整備と消費者啓発と教育、この二面からやっていかなければならないことだと思っております。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 では、訪販の問題は今後また審議がありますのでこれぐらいにさせていただきます。
 次に、繊維産業のことでまた少しお伺いをしたいというふうに思います。
 今国会で中小企業経営革新支援法案というのが提出されています。その一方で、繊維産業構造改善臨時措置法というのが平成十一年、ことしの六月末で廃止されることになっています。繊維産業は大変厳しい状況にありますし、京都なんかも呉服業界も含めて大変厳しいわけでございます。その中で、新商品開発への補助とか税制の優遇措置とか、とにかく繊維業界の保護、振興をこれまでこの繊維産業構造改善臨時措置法というのは図ってきたわけですが、通産省の繊維ビジョンの中間報告では、繊維法の利用者というのは業者の一%にすぎない、個別の法律で繊維産業を支援するのは効率的ではないというふうに御指摘をいただいておりまして、三十年続いた繊維産業を振興するこの法律がことしの六月に終了することになるわけです。
 そうすると、その代替策として、十二年度から繊維産地の都道府県に繊維産地活性化基金というのが設立をされるということで、同基金の運営は五年間の期間限定、そして運用益を繊維産地問屋または異業種間の連携による新商品の開発等に使いなさいというような状況でこれが設立をされるわけでございます。この繊維産地活性化基金構想の中身と、それから近年の繊維産業の概況、現状認識について通産省はどのようにお考えをいただいているか、お答えいただけますでしょうか。

○国務大臣(与謝野馨君) 繊維産業は、大変長引いております景気低迷による国内需要の不振の影響を受けておりまして、平成十年の繊維産業全体の生産指数が対前年比一〇・五%減となるなど、大変厳しい状況に今置かれていると私どもは認識しております。
 繊維産業はこれまでも大きな環境変化に直面してまいりましたけれども、通産省としては、過去四十年以上にわたり、その時々の繊維産業をめぐる状況を踏まえまして重点を移しながら、設備調整、構造改善、情報化基盤整備等の施策を実施してまいりました。
 こうした政策につきましては、我が国の繊維産業が二百万人を超える雇用を支えている、また国際的に見ても質の高い製品を今供給している、こういう事実からすれば、私どもとしては一定の役割を果たしてきたものと理解しております。

○政府委員(近藤隆彦君) お尋ねの繊維産地活性化基金の件でございますが、このたび私ども、繊維構造改善措置法を廃止しますと同時に、全体としましては、今回法案の審議をお願いしておりますけれども、基本的には新しい中小企業総合事業団に当面の間その事業を継承したいと思っておりまして、大変こういう厳しい時期でございますので、経過的な措置には十分意を尽くしてまいりたいと思っております。
 お尋ねの繊維産地活性化基金の点でございますけれども、このような大変厳しい景気の状況と、それからかつてからありました後継者不足といったものもございまして、従来繊維産地の中ではいろいろな業種、業態が一定の分業構造を形成しておりまして、全体としてうまくいっておったという状況がございましたけれども、最近は一部企業の廃業等が続いておるものでございますので、産地の分業構造が大変壊れかかってきておる状況にございます。
 こういった繊維産地の機能の低下ということを踏まえまして、複数の産地によってお互いに連携協力し合う、あるいは異業種間の連携をもっともっと強力にする、それから流通の方面あるいは消費者とも一層もっともっと近づくような、そのような構造改善をしようという機運も一方で盛り上がっておりますので、そのような意欲のある産地組合を中心としまして、再編強化と申しましょうか、そういった事業をできるだけ支援したいということでございます。
 組合の中には、従来のような単体の組合ではなくて、組合同士が再編成しようという、そういった動きもあるものでございますので、そういったことにきめ細かくこたえていこう、こういうのがこの産地活性化基金の目的でございまして、都道府県と一緒になってこのような組合の新しい事業を支援してまいりたいということでございます。

○福山哲郎君 具体的には、基金の運用それから運用益を用いた、実際はどのような仕組み、形態で行われるんでしょうか。

○政府委員(近藤隆彦君) 活性化基金でございますけれども、十一年度予算を成立させていただきますと、十一年度にできるだけ各都道府県の公益法人にこういった基金といいますものをつくっていただく。これに対しまして、国と都道府県が一対一、半分ずつ資金の造成をするということでございます。現在のところ、国側では総額二百億程度の中小企業事業団高度化無利子融資を活用しまして準備しております。そういった資金と各都道府県の資金とが一体になりまして、その御要望のある、必要のある都道府県に基金をつくっていただくということにしておりまして、その運用益で先ほど言いましたような連携事業とか新しいタイプのいろいろな再編事業を進めていきたい、こういうことでございます。

○福山哲郎君 国と都道府県で一対一で基金を出し合うわけですね。そうすると、都道府県としては、これだけ地方財政の厳しい折、先ほど二百億というふうにおっしゃられましたが、要は国が二百億用意をした場合に、一対一だとすれば、いろんな都道府県が手を挙げたところが全部合わせて二百億出して初めて基金ができるということになると、都道府県としても地方財政の困難な中かなりしんどいと思うんですが、そこに関してはどのようにお考えでしょうか。

○政府委員(近藤隆彦君) 基金は各都道府県がおのおのつくられるようになっておりますので、全体ができないと基金ができないというものではないわけでございます。おっしゃいましたとおり、今地方自治体は大変厳しいものでございますので、最初から基金という格好で数十億のお金をお願いしまして、それしかだめだというふうに申しますと、厳しい場合が生ずると思っております。
 したがいまして、現在は、都道府県によりましては、運用益相当分をフローの補助金の格好で提供したいというふうな御意見もございますので、そういったことなどを十分踏まえまして、各都道府県が実際に事業のしやすいように、基金造成だけにこだわらないで柔軟にやっていきたいというふうに考えております。

○福山哲郎君 現状まだわからないところもあるかもしれませんが、設立の希望をお出しになる都道府県というのは通産省の方に申し出とかいう形で来ているんでしょうか。

○政府委員(近藤隆彦君) 現在、各都道府県の方でいろいろ御検討いただいていると承知をしております。おっしゃいましたとおり、大変厳しいものでございますので、そういったものを勘案しながらいろいろ検討していきたいというふうに承知しておりますが、まだ具体的に何県ほどが本当にその基金を造成するか十分伺っておりません。
 ただ、最近、二月の末に私どもの方でこの基金につきまして説明会をいたしましたところ、二十七の都道府県が御参加いただきましたので、この程度の都道府県では少なくとも大変な関心を持っていただいているというふうには承知いたしております。

○福山哲郎君 今おっしゃられたみたいに、二十七都道府県が一応説明会に来られたと。先ほど、運用益相当分をフローの形の補助金で出すと言われましたが、このフローの形の補助金の金額等はどういったものをめどに決められるんでしょうか。

○政府委員(近藤隆彦君) これは、各都道府県の産地の事業内容によりましてどういった事業が必要であるかということになると思いますので、一律に幾らということではないと思っております。ただ、従来も、構造改善事業の実績から申しますと、例えば数百万程度の事業から一千万、二千万程度の事業というふうに、金額的には大体そういった幅ではないかというふうに考えておりますので、全体としましては各県によりまして金額の合計額は相当幅があるというふうに考えております。

○福山哲郎君 そうすると、フローの補助金の形でいくと、先ほど言われた一対一の二百億の基金という形ではなくなってきますね。そうすると、ことしの申請は二百億に達して埋まるのか埋まらないのかとか、埋まらなかった場合に次の年は減額されてしまうのかとか、その辺は今どのように想定をされておられますでしょうか。

○政府委員(近藤隆彦君) この事業は一応五年ぐらいをめどというふうに考えておりますものですから、特に関心の深い産地性の大きい県に関しましてはできるだけ基金という格好でお願いしたいと思っております。したがいまして、もし今おっしゃいましたような二百億円に十分満たないという場合は、そのときに、どのような資金需要かといったこととか、産地の状況なども勘案しまして検討したいと思っておりますけれども、現在のところできるだけ十一年度中につくっていただきたいというふうに考えております。

○福山哲郎君 景気低迷の中、本当に厳しい産地が多うございますので、なるべく弾力的に運用していただいて、より産地の活性化につながるように御配慮いただきたいというふうに思いますので、どうかよろしくお願い申し上げます。
 いろいろたくさん質問させていただきまして、次、また完全に別のお話をさせていただこうというふうに思います。
 お手元の資料にグアテマラという国の地図がありまして、グアテマラというのは中米地域の本当に小さい国でございまして、日本でいうと北海道と四国を合わせたぐらいの大きさになります。人口は約一千万人で、御案内の先生方多いと思いますが、このグアテマラのある地域というのは、例のユカタン半島などグアテマラの地域に住んで、三世紀から九世紀、マヤ暦やそれから例の巨大な石像物等をつくり出しまして、私たち人類の文明に大変影響を与えたというマヤ文明の発祥の地でございます。
 余り長々とした説明は省きますけれども、こちらがずっと内戦をしておりまして、一九九六年十二月二十九日に、つい三年ほど前ですが、最終的な和平協定の調印で政府軍とゲリラ軍の三十六年間に及ぶ内戦に終止符が打たれました。しかし、この内戦のさなかに、どこでもそうなんですが、被害を受けるというのは一般の市民でございまして、これはいろんな説があるんですが、特にこの人口一千万弱というこの国の五割とか七割とかを占めるマヤの先住民の人々が大変苦しい思いをしました。
 この和平協定がされまして、とりあえずは軍事対立もなくなりましたし、政府軍の兵力削減も行われまして、和平協定の法制化に向けて具体的な活動もようやく進んだところではございますけれども、実は先月、二月でございますが、国連人権侵害真相究明委員会というものからグアテマラについての報告書というものが提出されました。
 実は、このグアテマラのいわゆる先住民に対する人権侵害、内戦のさなかの人権侵害の様子を国連の真相究明委員会の方で報告をして報告書が出されました。日本というのはこの報告書作成に七十五万ドルもの資金を提供しておりまして、実は現地では大変感謝をされています。だからといって人権侵害がなくなったわけではないのですが、このグアテマラの人権侵害の現状、それからこの国連の真相究明委員会の報告についてどのように把握をされているか。きょうは外務省もお呼びをさせていただいておりますので、御見解をいただければと思います。

○説明員(阿部知之君) 今、福山委員御指摘の人権侵害真相究明委員会の報告書、先月末に公表されたものでございますが、御指摘のようにグアテマラの三十数年間に及ぶ内戦中の人権侵害事例をいろいろ細かく記載してございます。その内容はある意味で信じがたいようなケースも多々記述してございまして、戦争、内戦というものはこういうものなのかということを明らかにしていく上で非常に貴重な報告であろうかというふうに考えております。
 内戦の終了後は人権状況について非常に大きな改善が見られておりまして、国連の人権委員会でも、人権を侵害するような国家政策はもはや存在しないというような結論を出しておりまして、それなりの改善というか、大幅な改善が見られているというふうに思っております。
 ただ、そういう中でも、例えば昨年の後半でございますが、人権関係に非常に大きなNGO活動を行っておりました神父さんが殺害されるとか、若干まだ幾つかの悲劇的な話は時々あるようでございます。そういった点、私どもとしても引き続きいろいろな形で監視を、監視と申しますか注目をしていきたいというふうに思っております。

○福山哲郎君 この国連の真相究明委員会の報告書に対して、外務省として、日本国政府として何かコメントなり意思を表明されたことはないわけですね。

○説明員(阿部知之君) 特段のことはしておりません。報告書を評価するという気持ちは持っておりますけれども。

○福山哲郎君 きょうは経済・産業委員会ということで日本のODAのことについてお伺いをしたいんですが、実は九三年、このグアテマラでセラーノ大統領というのが憲法を停止しました。そのときに我が国は、これは民主化のプロセスに逆行する、ODA大綱の原則にのっとって援助政策の見直しを行うという大変御英断をいただいております。その後も、同国の民主化、経済発展のためにODA大綱の原則にのっとって外務省なり経企庁はODAとして支援をしていただいています。
 先ほど申し上げましたように、この人権侵害真相究明委員会に七十五万ドルを拠出したり、グアテマラの帰還民に対する再定住支援計画に二百四十五万ドルを拠出したりということで、実は日本の援助が大変評価されています。
 私は、きょうはネガティブなことをお話しする気は全くありません。ただ、グアテマラの無償資金の援助の額というのが、九七年が三十四億円、それから九六年が四十二億円、九五年が十四億円ということで、実は日本のODAの一兆円の中で見れば大変少額でございますが、実はグアテマラの国から見ると、世界で一番援助をくれているのが日本なんです。アメリカよりも日本がドナー国としてトップでございまして、日本にとってはこの金額は大して大きくないですから存在感は小さいんですが、グアテマラにとっては、向こうの国にとってみると日本がこれだけくれているということは大変存在感として大きくて、先ほど政府委員の方がその真相究明委員会の報告書は評価をしているというふうなことを言っていただいたことも含めて、これからの人権を守る政策にしても、これからグアテマラの内戦の傷跡をいやしていくためにも大変実は日本の援助というのは期待を受けているということの認識をいただきたい。
 金額的に大変少ないんで、こんなことを言うと怒られるかもしれませんが、実は日本がドナー国として一番だということを質問通告のときに来られた外務省の方も知らなくて、ああ、日本が一番なんですかというふうにおっしゃっておられました。こっちから見れば小さい金額でも、やっぱりそういう各国々にとって、向こうから見れば大変重要だというふうに思われておりまして、近年着実に無償援助の額も増加をしておりますので、ぜひこのグアテマラの援助に対する今の外務省のお考えをお聞かせいただければというふうに思います。

○説明員(阿部知之君) 福山委員御指摘のように、我が国がグアテマラに対する援助をいわゆる民主化が達成されて以降相当なテンポでふやしてきているというのは御指摘のとおりでございまして、その結果として第一位の援助国という立場に立っているということも事実でございます。
 私どもといたしましては、グアテマラという国、最貧国ということではございませんが、やはり非常にいろいろな点でこれから整備をしていかなければならない面の多い国ということを認識しておりまして、教育であるとか保健衛生であるとかあるいは道路等のインフラ、それから国民生活の安全、行政手法の整備、そういった点を具体的に援助対象として重視しながら、グアテマラにおける民生の向上、それから民主化の推進ということに貢献できるように努力していきたいというふうに考えております。
 ちなみに、昨年十一月に大きなハリケーンがグアテマラを襲いましたので、その関係も視野に入れて今後援助を考えていきたいというふうに考えております。

○福山哲郎君 ありがとうございます。大変前向きな御答弁をいただきまして、グアテマラのマヤ文明の先住民もきっと喜ぶと思います。
 さらにODAの件に関して言いますと、さきの予算委員会で私が堺屋長官に質問させていただきました。例の国際協力銀行に今回OECFと輸出入銀行が統合されるということで、大変規模の大きな、世銀に匹敵するようなものができるということです。OECFはいわゆるODAの四原則にのっとった環境ガイドラインというものを持っているけれども、輸出入銀行はあくまでも内規としての環境に対するものしかない、チェックリストしかないということで、片方は資金供与と性質が違うのはわかりますが、お互いが同じ機関になるわけですから、統合を機に、共通の環境ガイドラインをおつくりいただくことを御検討いただけませんかという予算委員会での私の質問に長官が大変前向きに御答弁をいただきまして、また大蔵大臣からも御答弁をいただいたわけです。
 実は各国の取り組みというのも、資金拠出に関して環境ガイドライン等の取り組みがあるわけですが、この辺について、経企庁としてどのように把握をされているかお聞かせをいただきたいと思います。どちらでも結構でございます。

○政府委員(黒田東彦君) 各国の状況を簡単に申し上げますと、委員御承知のように、米国の輸出信用機関、いわゆる輸銀及び海外民間投資公社、OPICといいますけれども、これらは既に環境ガイドラインを持っております。
 それから二番目に、英国、ドイツ、カナダ、ノルウェーなどは環境ガイドラインを作成する方向で検討をしているというふうに聞いております。まだ持っておりません。
 三番目に、フランスは環境配慮のチェックリストというものについて運用を始めたところであるというふうに聞いております。

○福山哲郎君 そういった中で、ぜひ具体的にこの国際協力銀行での環境ガイドラインの統一のものをおつくりいただきたいと思っているんですが、経企庁長官として今見通しとしてはどのようにお考えをいただいているのか、お聞かせいただければと思います。

○国務大臣(堺屋太一君) 基金のやっております公的な援助事業と輸銀のやっております輸出金融事業というのは多少性格も違います。その実態等をよく調べまして、できるだけ環境に優しいような基準をつくりたいとは思っておりますけれども、現実にいつどのような基準にすべきかは事務当局に鋭意研究させて、できればそういうものをつくっていきたい。それによって何らかの事業に重大な支障を来すようなことがあるかどうか、個々のケースでもいろいろございますので、そういうことも含めて、そういう実務的なことを現場で研究していただきたいと思っております。
 私個人としては、なるべくそういう統一基準があった方が世界にも日本国民にも説明しやすいとは思っておりますが、何しろ事が違った性格のものでございます。慎重に検討したいと思っております。

○福山哲郎君 経企庁長官、もう御案内だと思いますが、九七年六月にデンバー・サミットの共同宣言というのがございまして、そこで、「先進国からの民間資金の流れは、世界全体の持続可能な開発に対して重要な影響を有する。各国政府は、インフラ及び設備投資に対する金融上の支援を供与する際、環境要因を考慮することによって、持続可能な慣行の促進を助長しなければならない。」というふうに、実はこの民間資金、輸出入銀行の資金の流れについてもこういう環境要因を配慮する等の宣言が出ています。
 フランスの強硬な反対があって、その後この統一のガイドラインをつくるという作業は世界的におくれているという話なんですが、ぜひ日本としては、この国際協力銀行に統合を機に、まずは国内の整備をしていただく。その後、逆に言うと、今度は、資金供与の際の環境ガイドラインというものがお互いの各国、国際的にばらばらではなくて、それはそれぞれの事情があるから全部が全部というわけにはいかないと思いますが、ある意味での国際的なガイドラインというか、例えば透明性の確保の問題、情報をいつの時点で開示するかという問題、それからこういう点においてこのプロジェクトには資金を供与するという条件の問題等については、ある意味でいうと国際的な標準みたいなもの、ガイドラインみたいなものがあると、それこそ本当にこの資金の流れ、南北問題も含めて第一歩が進むのではないか。
 特に、日本の場合には今回国際協力銀行ができるということですので、ぜひこれを機会に前向きに国際的にも働きかけていただいて、日本のODAの評価を上げていただくような御努力をいただきたいと思うんですが、その辺は、外務省なのか経企庁なのかわかりませんが、いかがでしょうか。

○政府委員(黒田東彦君) 御指摘の点につきましては、確かにOECDでも実は輸出信用の関係につきましては、環境に対する配慮をどういうふうにするのが望ましいかということの議論を始めております。特に御指摘のように、ある意味でいいますと輸出信用というのは各国の輸出の競争でもございますので、ある意味でいうとODAよりむしろ輸出信用こそ国際的なスタンダードがあることが望ましいという面もございます。
 ODAの方は、経済的な面もございますが、やはり人道的な面から主体的に途上国に対する支援を行っているわけでございますので、ある意味でいうとそれぞれの国の考え方というのはあるかと思いますが、輸出信用につきましては御指摘のように競争という面がございますので、今後ともOECDの議論等を十分踏まえて私どもとしてもやっていかなければならないと思いますし、また逆にOECD等でいろいろな議論に積極的に参加してまいりたいと思っております。
 また、ODAそのものにつきましては、むしろ私よりも外務省の方がよろしいかと思いますけれども、ODAにつきましては御承知のような大綱が設けられておりまして、当然環境に対する配慮というものもしております。OECF、基金につきましてもガイドラインができているわけでございますので、先ほど経企庁長官が答弁されましたように、新しい国際協力銀行においては環境配慮のための手続指針としてのガイドライン、これは当然ODAの部分もございますし、非ODAの部分もあるわけですが、それらについてそれぞれ適切なガイドラインを設けていく必要があるというふうに考えております。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 もう大分時間も経過いたしましたので、あと一問か二問で終わらせていただきたいと思います。
 一つ二つだけ、これも二〇〇〇年問題のことについて、また今後の国会の中でも出てくると思いますので、聞かせていただきます。
 通産省は、昨年の十二月一日付で、二十七業種、延べ五千八百三十九社について二〇〇〇年問題の対応状況について調査をしたというふうに伺っていますが、概略で結構でございますのでこの調査結果について教えていただけますでしょうか。

○政府委員(広瀬勝貞君) 対応状況を簡単に御報告させていただきます。
 電力等のエネルギー分野、これは重要五分野の中の一つになっておるわけでございますけれども、これは四半期ごとに調査をやらせていただいておりまして、その結果を集めているところでございますけれども、今のところ計画的に対応を進めているというふうに考えられるのではないかというふうに考えております。
 それから、その他の一般業種につきましては相当跛行性が見られますけれども、これにつきましてもかなり意識は高まっておりまして、作業中等のところもかなり多くなっております。
 それから、コンピューター等のベンダーの対策でございますけれども、これにつきましては、ベンダーとしての責任もありますし、それから情報通信システムを使っているものとしての責任もございますけれども、これはさすがに自分の問題意識が高うございまして、かなり進んでおります。ただ、ここは非常に大事なところでございますので、ことしの一月にさらにベンダー百十二団体に対して情報提供等の指導をしたところでございます。
 それから、中小企業でございますけれども、これは対応済みの企業の割合は着実に増大しておりますけれども、なお依然として三割程度の企業が対応の必要性の有無をまだ確認していないというような状況でございまして、このあたりの対応は急いでやらなければならないというふうに考えておるところでございます。
 いずれにしましても、この二〇〇〇年問題につきましては、既に三百日を切っております。先日も、通産大臣のもとで対応に万全を期するようにという指示をいただいたところでございます。

○福山哲郎君 これは対応済み、未対応という分類でやられていると私は伺っておるんですが、対応済み、未対応で本当にフォローができるのかどうか。聞いたら対応していると言っているけれども、それがどの程度まで対応しているのかというのは甚だ疑問だというふうに思っていまして、ここに対してどのような指導をこれから今後三百日で行うのかということは大変課題だと思いますので、これは今後の審議に譲りたいと思います。
 そしてもう一つだけ、先ほど中小企業の方がまだまだおくれているというお話がありましたが、さらには、特に中小企業が決済機能も含めておつき合いをしている中小の金融機関ではどのような対応がされているのか、その中小の金融機関での二〇〇〇年問題についての最終テストは一体いつぐらいに終了するのか、もしそれが終了するときが、問題が発見されて間に合う時点で終了するのかという点についてお伺いをしたいと思います。

○政府委員(広瀬勝貞君) 金融機関につきましては、重要五分野の一つとして取り上げておりまして、中小の金融機関といえども金融機関としてはかなり私は対応が進んでいくだろうというふうに考えております。むしろ、かつまた万一のことを考えて一定の期間から後は、緊急時にどうするかというようなことで、リスク管理の方にも万全を期していくという必要があるというふうに考えております。
 ただ、問題は、中小企業の皆さんでございまして、これは先ほど申し上げましたような問題がまだ引き続き残ってまいるんではないかというふうに心配をしておるところでございます。

○福山哲郎君 中小金融機関等で最終テストはいつぐらいだというような把握は通産省はされていないわけですか。

○政府委員(広瀬勝貞君) ことしの六月末をめどに最終テストをやろうというふうに聞いております。

○福山哲郎君 もう一つだけ。六月末にテストしてだめな場合、まずいとなったときには間に合うんでしょうか、めどとして。

○政府委員(広瀬勝貞君) 実はそこのところは私どもも大変心配をしておるわけですけれども、六月末に終わるとか十月末に終わるとかいろいろございますけれども、日本の企業の文化かもしれませんけれども、かなり前広にいろいろ事前の調査をし対応して、テストのときには最後の仕上げというような気持ちでやっていただいていると思います。
 そういう意味では、ここで何とかいけるんではないか、六月なら来年の一月までにまだ半年あるわけでございますから、対応できるんではないかと今後期待をしておるところでございます。

○福山哲郎君 二〇〇〇年問題、まだいろいろお伺いしたいこともございますが、きょうは本会議でもありますし、少し早いですがこれで質問を終わらせていただきます。
 長時間ありがとうございました。

 


 

第145国会  参議院   予算委員会  1999年3月9日

○福山哲郎君 民主党・新緑風会の福山哲郎でございます。
 本日は、御多用のところ、四名の参考人の皆様方にはお越しをいただきましてまことにありがとうございました。
 先ほど林委員との質疑をお伺いしていても、四人の皆様それぞれが当時日本の金融の安定のために心を砕かれて一生懸命やられた結果、残念ながら日債銀は国有化という形になって、大変御苦労されたということをまずねぎらいたいというふうに思います。本当にお疲れさまでございました。
 そして、本日は日債銀の質疑ということで始まるんですが、どういうわけか、たまたまきのう合計七兆四千五百九十二億円もの公的資金の注入を大手銀行十五行が申請をしたというのがございまして、きょう次の日にこういう質疑があると。大変長引く不況の中、国民は毎日の生活の中で大変しんどい思いをしている。きのう申請をされた資本の注入に対して、国民がもろ手を挙げてよかったなと思っているかというと、私はなかなかそうはいかないのではないかというふうに今思っています。逆に言いますと、不況の中、何で銀行だけがという国民の中にはそういう思いもあるでしょうし、日銀が入れた先ほど出た金融安定化の八百億、そして公的資金の六百億も日債銀が破綻をしたことによってパアになったという状況の中で、その政策決定の不明朗さとかを明らかにしていただかないと、逆に国民は、幾ら金融安定だ、信用秩序の維持だと言ってもなかなか納得できないのではないか。
 そして、私も衆議院の予算委員会、参議院の予算委員会等の審議を拝見させていただくと、いろいろ次から次へと新しいことが出てくる、今まで出てこなかった新事実がいろいろ出てくるということではなくて、できればきょうのこの参考人の質疑で、四人の参考人の皆様に本当に当時の御記憶を思い起こしていただいて、お答えをいただきたいというふうに思います。そして、何とかこの予算委員会での質疑を通して、金融の安定化、そして将来のビッグバンに備える日本にとって、景気もよくなる、何とか国民に銀行、金融行政も信頼できるんだというような、そういうふうな委員会の質疑にさせていただきたいと思いますので、どうかよろしくお願い申し上げます。
 少し細かいところからいきます。名原参考人、よろしくお願い申し上げます。
 平成九年の三月の後半にいわゆる増資についての依頼要請が大蔵並びに日債銀からあったというふうに思いますが、日債銀、大蔵のいずれかからいつごろ要請があったか、お答えください。

○参考人(名原剛君) 三月二十四日に中井審議官から要請がございましたのと、四月一日には大蔵省による生損保に対する、劣後をお貸し付けしておる債権会社に対する説明会がございました。並行して日債銀からは四月二日に副頭取から御要請がございました。

○福山哲郎君 三月二十四日、中井審議官、四月二日、日債銀ということだったんですが、そのときに、両日ともで結構でございますが、いわゆる第V分類の額等についてのお話はございましたでしょうか。

○参考人(名原剛君) その段階での具体的な第V分類の額というのは説明がなかったように思います。

○福山哲郎君 そのときに、もし増資を引き受けてくださるなら、いつごろまでに増資をお願いしたいというような期日の指定、目標等はございましたでしょうか。

○参考人(名原剛君) 四月中には回答がほしいという内容であったということでございます。

○福山哲郎君 四月二日に日債銀が来られて、三月二十四日に中井審議官が来られた、四月中には何とかというお話だったというように今承ったんですが、四月九日、御社の宇野郁夫社長がこの増資要請に対して不満の意を表明されました。説明が不十分だ、明確な論拠がないじゃないか、なぜ劣後ローンが増資に変わるんだ等々の会見での御発言がございましたが、こちらの真意というのはどういったことでございましょうか。

○参考人(名原剛君) 私どもは当時、経営判断を行う前提として幾つかの問題認識がございました。例えば日債銀の資本充実ということであれば、劣後ローンもその一部をなすものでございますから、なぜ劣後ローンのままでいけないのか、これを株式に変える必然性というのはどこにあるのか、その結果、こちらの意思といいますか経営の意思に関係なく、一躍筆頭株主になる、そういった点について率直に問題だというふうに申し上げました。
   〔理事竹山裕君退席、委員長着席〕
 それからまた、当時、生保は日産生命の処理といった大きな問題を一方で抱える中で、銀行以上の過大な出資を生保に求められるということについても異論を申し上げた、そういう点がポイントでございます。

○福山哲郎君 経営判断としては大変そういう考えを持たれることはあり得べしことだなというふうに思います。
 そのときに、四月九日、宇野郁夫社長が不満の意を表明されて、その後継続的に日債銀もしくは大蔵省との交渉は続いていたのでしょうか。

○参考人(名原剛君) 私どもの大蔵省、日債銀との交渉は、その後も私どもが合意をする直前まで続いておりました。

○福山哲郎君 先ほど名原参考人は、五月十九日に七千億だという数字をいただいたというお話を御答弁いただいたというふうに思うんですが、東郷参考人が衆議院の予算委員会で、増資要請先機関から検査の中途結果でも構わないから資産内容について情報が欲しいという依頼があったというふうに言われていますが、日本生命として東郷参考人の日債銀の方に資産内容について教えてくれというような依頼はされましたか。

○参考人(名原剛君) 私どもも、経営判断をするために重要でございますので、査定結果等について三月末の数字等は聞いておりましたが、その後の変化があれば教えてほしいというようなことは当然申し上げておりました。

○福山哲郎君 そしたら、三月末では四千七百億円というふうに言われていた第V分類が五月十九日に七千億円という報告を聞かれたわけですが、そのときにどういった思いをされましたか。

○参考人(名原剛君) そのときに、先ほど申し上げましたように、大蔵省の検査の中でおよそそういう数字も確認を、確認といいますか、数字がまとまったということと、関連ノンバンクを中心にした増加であるというようなことも聞きましたので、まあ銀行の役員がおっしゃることでございますから、そうであろうというふうに理解をいたしました。

○福山哲郎君 名原参考人の今の御答弁は実は非常に重要でございまして、先ほど東郷参考人から電話があったというふうにおっしゃいました。そのときに、今内容をおっしゃられたんですが、大蔵の検査の方からまとまったからというお話をいただいた、検査の方がまとまったといっても大蔵の検査が入ったのは四月の五日か六日だと思います。これは五月の十九日でございます。先ほど山口参考人、中川参考人の方からは検査の途中だという議論がたくさん出ているわけでございまして、ここで大蔵の検査の方からまとまったのでというのは、大変これは重要でございますので、そのときの中身をもう一度参考人、御確認させてください。

○参考人(名原剛君) ちょっと私の表現が正確でなかった点はおわびを申し上げます。記憶のことでございますから定かではございませんが、当時のお電話の中では、大蔵省の検査は六月の半ばぐらいまで継続をすると、その途中の段階であるけれども、まあ資産査定についておよそまとまったというのか感触をつかめたというのか、そういう旨のお電話であったというふうに聞いております。

○福山哲郎君 少しニュアンスがお変わりになられたのでちょっと困っているんですが。
 そしたら、その七千億円だというのが来ました。それで、先ほど言われたように、もうそれは東郷参考人が言われていることだし、大蔵もまとまったと言っているんだからもう確認はしなかったとおっしゃいますが、では、それから大蔵省にはその数字についての確認はされていませんね。

○参考人(名原剛君) 先ほども申し上げましたように、大蔵省には、検査の途中の段階ではあるということではございましたが、その中での査定結果、査定のおよその感触ということでもございましたので、大蔵省に確認するということはしておりません。

○福山哲郎君 それでは、ちょっと別の視点でいきます。
 日債銀から七千億円だという話があって、そして並行して大蔵省とはずっと交渉されていた、その交渉の過程で恐らく確認書が出てきたと思うんですが、確認書の議論に入った。先ほどいろんなものを積み上げていって確認書になったとおっしゃいましたが、確認書の議論をされ出したのはいつごろだと御記憶ありますか。

○参考人(名原剛君) 先ほども申し上げましたように、確認書というのは二カ月間ぐらいにわたって私どもがもろもろ主張していた点について、その交渉の中で逐次確認できたことを確認書に落としていただいたということでございまして、確認書がそのためにずっと検討が続いておったということではございません。
 そして、確認書を現実にお願いをしたというのは、経営の最終判断をするに際してそういう書類が、確認が文書で必要であるという弁護士の意見もございましたので、最終ぎりぎりの段階で確認に、文書に落としていただくことをお願いしたということでございます。

○福山哲郎君 確認書を交わされたのは五月三十日でいらっしゃいますよね。

○参考人(名原剛君) そのとおりでございます。

○福山哲郎君 そうすると、十九日に東郷参考人から電話があって、七千億円となったと。それで三十日に確認書を交わされた。そこに大蔵省からのあれで再建は確認できるというようなことが書いてあったわけですね。債務超過ではないということが書かれてあったわけですね。この十日間の間にも、七千億円は本当に正しいんですかという、四千七百億から七千億に上がったけれども、本当にこれ以上ふえないんですか等のやりとりは大蔵省とはなかったんでしょうか。

○参考人(名原剛君) 大蔵省から特段に御連絡をいただいたというようなことはございません。

○福山哲郎君 名原参考人の方から確認をされたことはなかったでしょうか。

○参考人(名原剛君) それもございません。

○福山哲郎君 そこは太っ腹な会社だということであれなんですが、確認書のやりとりをずっとされていたとおっしゃいましたけれども、日生側から、例えば文案とかというものを大蔵省に渡して、これでどうだというようなことはされた御記憶はございますか。

○参考人(名原剛君) 今の表現で、確認書をずっと検討しておったということではなくて、それはもろもろを交渉の中で口頭で確認をすることは一生懸命やったということでございまして、確認書は三十日ぎりぎりの段階でお願いしたというふうに記憶をしております。文案は、お願いすることでございますから、私どもで作成をいたしました。

○福山哲郎君 その確認書のやりとりに対して窓口になられた大蔵省の方はどなたですか。

○参考人(名原剛君) 当時の中井審議官でございます。

○福山哲郎君 それでは、その後、五月三十日に確認書を交わされて、六月二日の取締役会で増資について決定をしたということで結構ですね。

○参考人(名原剛君) そのとおりでございます。

○福山哲郎君 現在、日生には株主代表訴訟の動きもあるようでございますが、日生側としては、増資をした分がロスになったということで行政訴訟をするおつもりは今ございますでしょうか。

○参考人(名原剛君) 現段階で損害賠償といったことにつながるものであるかどうかという判断はできないというのが私どもの顧問弁護士の見解でございます。

○福山哲郎君 では、少し変わりまして、東郷参考人にお伺いをしたいと思います。
 今、増資要請先機関から、五月十九日に東郷参考人が七千億円だというふうにお伝えをされたときに、検査の中途結果でも構わないから資本内容について情報が欲しいという依頼に基づいて伝えたという御答弁をされているんですが、先ほど言われた三十四社の中のどのぐらいの数から教えてくれというような御依頼があったんでしょうか。

○参考人(東郷重興君) 当時、三十四の金融機関に対する増資要請は担当役員が手分けをしてやっておりまして、私は主として損害保険、生命保険の関係のお願いをして回っておりましたので、他の業態で全部でどのぐらいというのはなかなか申し上げられませんけれども、かなり、ほとんど大多数のところから、現実に四月の中旬以降、大蔵検査が入っておりましたので、要するに我々の経営再建策をチェックするために大蔵検査が入っていたわけでございますから、それがどうなっているのか。従来、我々のクラスの大蔵検査ですと二月ぐらいはかかりますし、その後、示達まで数カ月というのが通常でございましたので、そういう要請は大多数のところからあったと記憶しています。

○福山哲郎君 この五月十九日に七千億円、お電話をされたわけですよね。これ、何で五月十九日だったんでしょうか。先ほど山口参考人だと思いますが、検査が終わるまででもいいだろうと思っていたのが五月十九日にされたと。その根拠が、根拠というか理由があればお知らせください。

○参考人(東郷重興君) 大蔵省検査のスケジュールの問題が一つございます。最初に資産査定を現場の部局、支店とやるわけなので、そのラインシートのチェックが、第一ラウンドが終わるのが約一月ぐらいかかるということと。もう一つは、私どもの増資のお願いのスケジュールの関係で、優先株の発行を考えますと、株主総会で議決をしなければならないということで、せめて五月、六月の初めぐらいには大体の御了承を得ておきたいと。両面あったと思います。

○福山哲郎君 いろいろマスコミには出ていたんですが、金融監督庁の日野長官とかは、日債銀さん側の理由が、いろいろ事情があっただろうとおっしゃられたのが今はっきりわかりました。六月二十四日に株主総会があったと。そうすると、いろんな総会の準備をされるに当たっても、やっぱり五月中ぐらいにはある程度の返事を欲しかったということで解釈してよろしいわけですね。

○参考人(東郷重興君) 五月末ないし六月の頭ぐらいにはぜひ全体の大枠は固めたいと思っておりました。

○福山哲郎君 東郷参考人は、というか日債銀側は、その時期、ちょうど五月十九日から五月末ぐらいまでに、大蔵省がほかの増資要請先機関と確認書なり応接録なりを交わしておられた事実は御存じでしたか、その時点で。

○参考人(東郷重興君) その件については全く承知いたしておりません。

○福山哲郎君 ということは、そこで大蔵省が、債務超過ではない、再建は確認できますよということをほかの、例えば日生さんとかにお渡ししていたことについては全く御存じなくて、十九日に七千億を伝えられていたということですね。

○参考人(東郷重興君) おっしゃるとおり、私ども、検査の中途がまとまった一番早いタイミングで数字を足し上げてお願いをしたわけです。

○福山哲郎君 山口参考人、一つだけお伺いしたいんですが、なぜ同じ時期に、これは山口参考人が日債銀のことをおもんぱかって、株主総会があるからこれを早く決めてあげなきゃいけないから確認書をという形で同じ時期に確認書を交わしていたということですか。

○参考人(山口公生君) これは日債銀側の事情というよりは、出資に応じていただける銀行等から、内部でいろいろ意思決定をする際にその説明として応接の内容をメモにしてほしいということがあったので、それで確認書というものあるいは応接のメモか応接録か知りませんが、そういったものを交わしたというふうに思っておりますが。

○福山哲郎君 もう一度東郷参考人、お伺いします。
 現在の全銀協の岸会長がことし二月九日の会見で、日債銀から五月十九日に電話が入った、電話が入ったときに、大蔵からの検査がある程度まとまったので大蔵も承知の上だというような記者会見で御発言をされていますが、それで参考人は間違いないと思われますか。

○参考人(東郷重興君) 私どもは、東京三菱銀行の方に約七千億というところがまとまった数字ですというふうにお伝えをしましたが、東京三菱銀行側がそれを大蔵省に確認したかどうかは存じ上げておりません。

○福山哲郎君 済みません、私の質問の仕方が悪くて。岸会長は大蔵省も承知をしていることを確認したと。それは東郷参考人に確認をされたのではないわけですか。

○参考人(東郷重興君) 私どもは約七千億という数字をお伝えしたわけです。もちろんお伝えするに当たって、こういう数字を要請先にお伝えするということは事前に大蔵省に通知をいたしておりますが、大蔵省に通知した上でこれを申し上げていますということは多分申し上げておりません。

○福山哲郎君 東郷参考人、素朴な疑問なんですが、この数字をほかの増資要請先に伝えます、七千億を伝えますというのを大蔵省に今通知をされたと東郷参考人おっしゃいましたね。そのときに大蔵省側の窓口はどなたでしたか。

○参考人(東郷重興君) 大蔵省銀行局銀行課だと思います。これは事務レベルで常時連絡をとっておりますので、私自身が電話したわけではございません。

○福山哲郎君 そうすると、東郷参考人、本当に素朴な疑問なんですが、そのときに、じゃ七千億円だということを増資要請先に伝えますよといって連絡をしたときに、大蔵省はうんともすんとも否定も肯定もしないで、そうですかという対応だったのでしょうか。

○参考人(東郷重興君) そういう対応であったと理解しております。

○福山哲郎君 その検査をしている最中、確認書をちょうどやりとりしている大蔵省が、七千億という具体的な数字が東郷参考人から大蔵省に通知が行った時点で、今の対応だということはちょっと私は理解ができないんですが、それは追ってお伺いするとして、山口参考人にお伺いをしたいと思います。
 日生との確認書をこの間提示していただきました。ここに中井大臣官房審議官という名前で印がついてありまして、そして確認書が出ていますが、中井氏は当時銀行局担当であったので山口参考人の部下ということでよろしいわけですね。

○参考人(山口公生君) 結構でございます。

○福山哲郎君 そうすると、山口参考人は、中井氏がこういう形の確認書を日生、そしてほかの数社と応接録という形で交わしていたことは御存じでいらっしゃったわけですね。

○参考人(山口公生君) それは大臣談話の趣旨で、そういった自助努力を支援するということでありましたので、それは結構だということで存じておりました。

○福山哲郎君 これは中井審議官の判断で各社と確認書を交わされたのか、逆に上司である山口参考人の命令で中井審議官は動かれたのか、どちらでしょうか。

○参考人(山口公生君) もちろん中井審議官の個人的な判断ではありません。しかし、私が命令してこれを交わしなさいと言ったものではありません。
 どういうものかといいますと、いろいろ問い合わせがあって、それで大臣談話の趣旨、そういうものを織り込んだもの、またその後の状況等で、向こうがぜひ聞きたいあるいは確認したいというようなことがいろいろ問い合わせがあって、それの受け答えをメモあるいは応接あるいは確認書ですか、そういう形で出したということであります。

○福山哲郎君 今、メモとかそういう形で確認されたとおっしゃいますが、一応、大蔵省大臣官房審議官で判こがついてあって、日本生命さんは代表取締役副社長で判こがついてあって、それぞれの会社の個別の事案がこう書いてある。ほかの応接録はわかりませんが、それがメモでありますというのはちょっとよくわからないんですが、どういうことでしょうか。

○参考人(山口公生君) それは、当事者間でそういったものを交わしているわけでございます。それをこの場合は日生さんの中で、例えばほかの上司の方等々に説明するときにそれをお使いになる場合に、こういうきちんとしたやっぱり名前も書いたものというのが必要だったんではないでしょうか。私自身は、どういう事情で判こが押してあるのか、あるいはサインなのかというようなことまでは存じません。

○福山哲郎君 きょうは参考人の質疑なのであれなんですが、局長は先ほど、部下で承知をしていた、こういうことをやっているのは承知をしていたと。今おっしゃったのは、何でこういう状況になったのかお互いのメモ同士でという。そこは一応、中井審議官は先ほど言われたみたいに山口局長の部下で動かれていたわけですから、今の御答弁はちょっとよくわからないのですが。

○参考人(山口公生君) 私は、御質問が、何でこういう判こが押してあって云々というその形態をお聞きになったと思ったのでそう答えたわけでございます。これはあくまで当時の大臣談話の趣旨を踏まえて、全面的にそれは支援をするということのあらわれで、そういった必要な書類であればそれは交わすということは必要なことだと私も考えましたし、これはしたがって個人的にやりとりしたものではありません。

○福山哲郎君 そうすると、一応大蔵省としてこれは責任がとれる文書でございますね。

○参考人(山口公生君) 四月一日の大臣談話の趣旨にのっとって交わしたものでございます。

○福山哲郎君 いえ、大臣談話の話ではなくて、この確認書に対して大蔵省としては責任がとれる文書ですねということを確認させていただきたいんです。

○参考人(山口公生君) 私的なものではないという意味ではそうだと思いますね。

○福山哲郎君 そして、結果として確認書が、これがこのとおりいかなかったわけですが、先ほどのお話の中で、この確認書は日生さん一社だけだと言われた。ほかは応接録だと言われましたが、この応接録の中身とかその性質というのはこの審議に当たって大変重要だというふうに思いますので、委員長、ぜひ資料請求として理事会で御検討をいただきたいと思いますが、よろしくお願いいたします。

○委員長(倉田寛之君) 福山君の要求につきましては、後刻理事会で協議することといたします。

○福山哲郎君 そうすると、では山口参考人にお伺いしたいんですが、結局これは確認をされましたと、日債銀の債権は確認をされたけれども結局破綻になった。ここに対して大蔵省として、当時の銀行局長として山口参考人はどのように今お考えでしょうか。簡潔にお答えください。

○参考人(山口公生君) 破綻になった結果、この出資等が結局その当初の目的に役に立たなかったということに対しては、大変残念なことだというふうに思っております。
 ただ、当時の、先ほどもるる申し上げましたセーフティーネットのああいう状況のもとでは、こういう一番近しいと言ったら語弊があるかもしれませんが、大株主の金融機関とか、そういったところがやはり力を合わせて何とかこの危機を乗り切るということをやっていただいたことには大変ありがたく思っております。そのために我が国の経済も相当危機を乗り越えることができたのではないかというふうに思うわけでございます。

○福山哲郎君 では、山口参考人にもう一つお伺いしたいんですが、先日、日野長官が当参議院の予算委員会におきまして、確認書で債務超過ではないものを確認したことについて日野長官は、「大蔵省としての検査とはまた別の独自の、検査は検査部の方でやっているわけですが、銀行局では独自の情報の収集を行っているわけでありますし、」というふうに日野長官は答えられているわけです。
 先ほども山口参考人が言われたみたいに、途中で、この確認書の段階で中川参考人は検査部とは接触はないとはっきりおっしゃった。そうすると、この確認書で債務超過ではないということを検査の途中で出しているその根拠というのは、一体何でしょうか。

○参考人(山口公生君) 確認書の中で今、先生が御指摘になっているのは、再建策が実行されれば日債銀の再建は可能であるという部分についての御質問だと。ここに債務超過でないというふうな文章、ちょっと見当たりませんので、そういう前提でちょっとお答えを申し上げることをお許しいただきたいと思います。
 九年四月の日債銀の経営再建策をつくりましたときに、先ほど申し上げましたように、大変重荷になっておりました関連ノンバンクというものを、非常に金融常識からいうと当時は異例でありましたが、公的処理、プロラタ処理ということをやったわけです。そのときも大変な不良債権処理をしたんですが、その前提として、監査法人が問題の債権は全部引き当て・償却をやった後、さらに一千億残るということで再建策ができております。それに海外拠点からの撤退とかリストラとかそういったものを加えて、それで増資を要請しておりますので、そういう判断ができたというふうに思っております。

○福山哲郎君 今、債務超過ではなくて、皆さんが増資をしてくれれば再建できるという旨でお答えいただいたわけですね、確認書についてといってお答えいただいたわけですよね。

○参考人(山口公生君) 確認書についてのお問い合わせであればその部分だというふうに思いましたので、そう答えました。

○福山哲郎君 実は、先ほど言われたあなたの部下であります、参考人の部下でいらっしゃる中井審議官は四月二十一日の「金融財政事情」というところに論文を書かれていまして、「日債銀は債務超過ではない」、「日債銀は厳しい自己査定を積み上げ、さらに公認会計士からも厳格に外部監査された結果の報告を受けている。」と。これではっきりと「日債銀は債務超過ではない」と中井審議官が言われているわけです。これが出ているのが四月二十一日で、これは検査に入っている真っ最中なわけです。そして皆さんが、逆に言うと、増資をするかしないかという話をしているときに、議論しているときに、こういう論文で債務超過ではないということを中井審議官が書いているわけですが、これについて山口参考人はどのようにお考えですか。

○参考人(山口公生君) 四月二十一日の時点でございましょうか。

○福山哲郎君 はい。

○参考人(山口公生君) そうすれば、原稿がいつの時点で出たかということにもよりますでしょう。
 そうしますと恐らく、これは私の推測でございますのでわかりませんが、当時経営再建策をつくったときに公認会計士に、償却・引き当てすべきものを全部した上で再建策をつくっておりますので、そのときは明らかに債務超過ではありません。現実に九年三月末の決算書をごらんいただきますと、これは資産超過であります。そういうことを審議官は書いたんだと私は推測いたします。

○福山哲郎君 では、その前提で書いている中井審議官のこの論文に関しては、山口参考人はそれなりの正当性はあるんだというふうにおっしゃるわけですね。

○参考人(山口公生君) 再建策をつくったときの前提を見ますと、公認会計士と全然相談しないで再建策がつくってあれば別ですけれども、それはそう推定せざるを得ないと私は思うわけでございます。

○福山哲郎君 これ、実は最後にこういう文章が書いてあるんです。「日債銀自身も再建計画のベースとなる計数が次回大蔵省検査で」、これ、真っ最中にやっている大蔵省検査です、「大蔵省検査で大幅に修正されるようなことがあれば、計画自体が立ちゆかなくなることはわかっている。」というふうに書いてあるわけです。
 これは九月の示達のときに第V分類は一兆一千二百十二億円になっているわけです。この時点では、山口参考人が今言われて、先ほどからも議論になっている四千七百億円なわけです。ここで実は約六千五百億円もの差が出ていて、中井審議官が、「大蔵省検査で大幅に修正されるようなことがあれば、計画自体が立ちゆかなくなる」から、そんなことはあり得ないと言われているんですが、現実には九月の示達で大幅に修正が行われたんですが、これについて参考人はどのように思われますか。

○参考人(山口公生君) 今、先生の御指摘になったケースは第V分類の数字だと思います。私も第V分類は一兆一千二百云々と覚えておりますけれども、ただ、分類債権がふえたから引き当て・償却が直ちにふえるわけではありません、それはもうるる申し上げているとおり。しかも、その対象になったV分類でふえた債権も、三月のその計画をつくる時点で全部公認会計士が一回目を通して、必要なものは全部引き当て・償却が済んだものです。
 したがって、例えば、私の説明が悪いかもしれませんが、百なら百という問題の債権があって、五十は必ず回収できるだろうと。残りが、やはり分類でひとつこれは注意して見なきゃいけないよというような債権が五十残っていたとします。そうすると、公認会計士は、そのときに五十だからといって、今直ちに相手が倒産するわけではありませんから、例えば二十を今引き当てる必要があるだろうということで企業会計に沿って二十を引き当てするわけです。そうすると、三十というちょっとこれから気をつけておかなきゃいかぬという部分が残るわけです。それは、残ったからといってすぐまた全部引き当てなきゃいかぬというものではありません。二十を引き当ててあったら、それが例えば三十が、いや三十五じゃないか、四十じゃないかという、物の見方ですから、例えば地価がもうちょっと下がりそうだとか上がりそうだとかいうことで大分変わってきます。また減ることもあります。
 そういうことを見ながら、企業会計的見地から二十でいいと一回判断したもの、それが全部対象となったものだというふうに聞いておりましたから、確かに第V分類がふえましたが、それを受けてどういうふうに公認会計士が判断するかということがポイントです。
 どう判断したかというのは、九月期の示達を受けた後の中間期の決算を見ればわかるわけです。そのときまで四千億強の資産超過になっておりますので、したがって、その時点では既に全部見た債権についての指摘だったということだったというふうに推定されます。

○福山哲郎君 私は引き当てどうのこうの言っているわけじゃなくて、少なくとも第V分類がふえているということについて、査定が変わっている、修正されたというふうにお話ししたんですが、次に行きます。
 中川参考人、大変お待たせしまして済みません。一つお伺いをします。
 平成九年三月五日、「早期是正措置制度導入後の金融検査における資産査定について」、こういう通達を中川金融検査部長のお名前で出されていますね。

○参考人(中川隆進君) 御指摘のとおりでございます。
 平成十年四月から早期是正措置が法律上導入されるということの準備といたしまして、実質的に金融機関に自己査定を早目に準備していただくという趣旨もございまして、私の名前で通達を出しました。
 通達といいますのは、金融検査官向けの通達でございまして、金融検査官にこういうふうに査定をする、何という名前だったか記憶しておりませんが、資産査定についてという名前だったかというふうに承知いたしております。

○福山哲郎君 ここには中川部長名でこういう文章があります。「早期是正措置の導入は平成十年四月からであるが、各金融機関においては、できるだけ早期に自己査定を実施する体制を整備し、自己査定結果を適正に反映させた償却・引当を実施することが望ましい。」と。平成十年からだけれども、前倒しにどんどんやりましょうねというお話をされているんだと思います。
 当時検査部長だった中川参考人は当然、これが三月に出されたわけですから、四月五日から入った日債銀の検査に対してもこれに準拠したわけですね。

○参考人(中川隆進君) まず、事実関係でございますが、四月五日ではなかったと思います。もう少し後、四月十六日からではなかったかと記憶しております。
 今の御質問でございますけれども、先ほど言いましたように、あくまでも平成十年四月からの早期是正措置の導入でございますので、実際の適用はもちろんそのときからでございますけれども、いきなりというわけにいきませんので、各金融機関に準備をしてほしいというより、金融検査官に対する通達でございますから、すべてについて準備してください、こういう趣旨であったかというふうに承知しております。

○福山哲郎君 そうすると、日債銀に検査に四月十六日から入られたことに対しては、これは適用されていないんですか、されていますか。

○参考人(中川隆進君) 正確に御答弁できるかどうかちょっと自信がないんですが、通達で書きましたのはあくまでも十年四月からだというふうに書いたと思います。ただし、今申し上げましたように、なるべく早く準備してくださいという意味でいいますと、特に金融検査官の査定のやり方ということにつきましては従来の場合とそれほど大きく違った中身ではございません。
 したがいまして、そこに書いてあるようなやり方で査定をするという御理解で結構だというふうに思います。

○福山哲郎君 東郷参考人にお伺いしたいんですが、平成九年の三月に自己査定をされていますね。そのときには早目にやるんだということでこれを先行としてやられたというふうに伺っているんですが、それで間違いないでしょうか。

○参考人(東郷重興君) 平成九年三月五日の大蔵省検査部の金融検査における資産査定についてという通牒ですが、そこに書かれてあることは、従来の金融検査の実態とそう大きく変わるものではありません。そこで書いてあることは、例えば第V分類とするものは、「最終の回収又は価値について重大な懸念が存し、従って損失の発生の可能性が高いが、その損失額について合理的な推計が困難な資産」ということで、従来これまで公認会計士等がやってきたものとそう大きく変わっているところではありません。
 ただ、恐らくこういう通牒を出しまして、これに基づいて四月十五日に公認会計士協会の指針が出るんですけれども、この内容自体も従来と主に変わっていない。それを踏まえて徐々にいろんなガイドラインが出てくるというふうに認識したわけです。

○福山哲郎君 そうすると、問題になっている示達の二つの数字があるという話でございますが、いわゆる問題になっている四千億円の差、関連会社の差でございますが、関連会社に対して中川部長はどのような認識のもとで関連会社を見られましたか、四千億円に対して。

○参考人(中川隆進君) お答えをいたします。
 先ほどの御質問にお答えしたわけでございますが、私の検査部長の期間が七月の中旬の途中まででございますので、今の御質問について適当に御答弁をできる立場にはないのではないかというふうに思っております。

○福山哲郎君 そうしたら、端的にお答えください。
 七月五日か六日に検査結果が日債銀から出ていると思いますが、その時点で中川参考人は七千億円と一兆一千二百十二億円という二つの数字があったことは御存じでしたか。

○参考人(中川隆進君) 七月の時点で検査官が銀行に対する立入検査を切り上げまして帰ってまいりました。実は私のちょうどその異動の直前でございましたけれども、検査官から報告を聞いたわけでございます。そのときに全体的な状況、先生今おっしゃったことだけではなくて、あらゆる全体の検査でございますから、あらゆる観点から検査官から検査の印象、検査の状況というのを聞いた記憶がありますけれども、まだあくまでも検査の途中の話でございまして、そうした状況を踏まえて、それから九月に向けて検査、数字の確定、あるいは報告書の作成等が行われていった、そういう状況でございます。

○福山哲郎君 そうすると、いわゆる二つの数字が出てきた、七千億円と一兆何がしのお金に関しては、第V分類に関しては次の原口検査部長のもとで決裁が行われたというふうに判断してよろしいわけですね。

○参考人(中川隆進君) お答えをいたします。
 決裁というのはどういう御趣旨かよくわかりませんが、検査の最後にはいわゆる示達書というのを渡すわけでございますが、これの決裁といいますと、おっしゃるとおり、九月、いつかわかりませんけれども、私の後任のときでございます。

○福山哲郎君 実は、時間がなくなって大変残念なんですが、先ほどから言われているこの中川部長の通達には、いわゆる日債銀が言われている支援をし続ければ倒産をしないというものに対して、自行として消極ないし撤退方針を決定していない債務者であっても、当該債務者の業況等について客観的に判断し、今後経営破綻に陥る可能性が大きいと認められる場合は第V分類にするということが書いてあります。
 そうすると、先ほど言った四千億円の、いわゆるこれまで議論に出ている二十二社の分については第V分類に入れなければいけないんです。それを入れると一兆何がしのお金になる。しかし、東郷参考人を初め日債銀はずっと七千億だ七千億だと言っていたから、それに対しては、これを入れていない。これが私は両論併記の二つの答えではないかなというふうにも思っております。
 その中で、では、融資をし続ければ倒産をしないんだという、存続をし続ければ倒産をしないんだというものに対する二十二社の財務諸表というものが大変重要で、中川参考人がやられている検査で、この二十二社のBS、PL、金利の状況、業務状況等を暦年で、大変これは重要な資料で、私はこの委員会にぜひ提出をしていただきたいというふうに思いますし、先ほどのお話の中で中井審議官の存在というのも大変重要でございますし、さらには今お話がありましたように中川参考人から引き継いだ原口検査部長の存在もこの示達に関しては大変かかわっているので、お二人の証人喚問と今の資料について、委員長、理事会で検討していただくようにお願いいたしたいと思います。

○委員長(倉田寛之君) ただいまの福山君の要求につきましては、その取り扱いを後刻理事会で協議することといたします。

○福山哲郎君 これで質問を終わります。
 どうもありがとうございました。

 


 

第145国会  参議院   予算委員会公聴会  1999年3月4日

○福山哲郎君 青山公述人、中島公述人、お忙しいところをきょうはありがとうございました。
 お二人いらっしゃいますので、余り時間がありませんので、まずは中島先生にお伺いをしたいと思います。
 私は、中島先生の論文を幾つか読ませていただきました。九五年を底に米ドルが上昇したのが、ロシアの金融危機やLTCMの破綻等も含めて、ある程度今現在踊り場に来ている、先ほどもある意味でそういう表現をされたんだというふうに思います。さらに、アメリカというのは強い景気と脆弱な金融部門が両方あって、その中で、ある意味で言うと綱渡りのような状態で今来ているという表現をされた。私は大変そこには共感をしておるんです。さらに言うと、ユーロが誕生して、アメリカが多少弱含みで動いている状況ならば、ユーロに多少流れてもいいのにかかわらず、実はユーロというのは、ユーロができて以来ドルに対しては弱含みで来ている。
 先ほど、ヨーロッパの景気が後退をしているからだというふうに中島先生はおっしゃいましたが、私は、もう一つの要因としては、アジアへのヨーロッパの海外投資が実はかなり九〇年代の前半にありまして、アジアの通貨危機の影響を実はヨーロッパもかなり食っているのではないかというふうな思いもあります。
 そういう面で、ユーロの現実問題として、ヨーロッパ市場の今の経済の状況について、今どういう御認識かをまずはお聞かせいただきたいと思います。

○公述人(中島精也君) ユーロが年初から下がっているのは、いつもディーリングルームに座ってマーケットを見ている者の立場からいいますと、マーケットのディーラーの間で交わされている言葉は、一つには、最初に申し上げた、景気がスローダウンして、いわゆる欧州中央銀行が次に初めてやる政策は金利の引き下げじゃないかということが非常に言われておりますので、それが第一です。
 それともう一つは、ユーロが強くなるという話は昨年からありましたから、日本の投資家もそうですけれども、いわゆる強いユーロに備えるということで、実は昨年の後半、例えばドイツ・マルクとか、そういう欧州通貨を相当もう手当てをしておったんですね。
 それで、ふたをあけてみましたら、例えばドル円で急激に円高が来ちゃったものですから、慌ててそのヘッジのためのユーロ円の売りをしなきゃいけないとか、そういう非常にマーケット特有の動きがかなりあったことは一つ言えると思うんですね。
 それと、アジア通貨危機でヨーロッパの金融機関が逆に傷んでいるんじゃないかとおっしゃっていましたけれども、むしろ非常にもう御専門家でいらっしゃるなと感銘したんですけれども、まさにそのとおりでして、アジア通貨危機が起きましたとき、アメリカの銀行というのは実はいち早くそれを察知して、どこの銀行とは申しませんけれども、九六年ぐらいからもう既に逃げる行動をした銀行はたくさんあります。その中でヨーロッパの銀行は、後発ということもありまして、割とそこからもお金をつぎ込んだ嫌いがあります。
 そういう点で、ヨーロッパの銀行がこういうエマージングマーケットの危機で若干傷んでいることは事実だと思いますけれども、この問題は、ユーロが強くなるか弱くなるかという本質的な問題というよりはちょっと短期的な話じゃないかなと思っていまして、私がユーロが強くなると言うのは、あくまでも長期的な世界全体の本当の大きな資産が変わっていくんじゃないかと、そういうことを申し上げているのでございます。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 そうすると、長期的にはユーロが強くなってくるということを前提でいった場合に、ドルが多少弱含みになる。
 ここで、先ほど円の国際化の話が出たんですが、じゃ円はという話になったときに、私は実は、ドルが安くなるから、多少弱含むからといってイコール円高になるような単純な構図では今はないのではないかというふうに思っています。
 要は、円の国際化という形になったときに、日本には大変不確定要素がたくさんある。景気は御案内のように大変に悪い。株式市場も相も変わらず一万四千円付近でうろうろしている。なおかつ中国には大変な不良債権と、アジアの国には不確定要素がある状況の中で、アジアとか円とかいうものに対する国際的なマーケットの信用というものが、どの程度これから先長期的に見たときに担保できるのかというのが非常に不安だというふうに私は思っています。
 僕は、円が強くなってある程度国際的に通用して、ユーロ、ドル、円というような形でいければいいというのは望んではいるんですが、今の日本のファンダメンタルズは大変そこが脆弱にできていたときにユーロができた、ドルは弱含みとはいいながらやっぱり世界の牽引をしているときに、アジアだけが非常に不安定な要素の中で経済的には置いていかれるという懸念を持っているんですが、そこら辺については中島先生はどのようにお考えでしょうか。

○公述人(中島精也君) やっぱりアジアがこういう状況ですから、円の国際化をやるにしても何にしても、まず日本経済のファンダメンタルズを改善する以外にはないわけです。これはもうすべての基本、ファンダメンタルズというのは基本という言葉ですからまさに基本でございまして、日本経済をやって、その次に円の国際化をやらなきゃいけない。
 ただ、日本経済をよくするという点に関しましては、昨今の景気対策並びに金融安定化策とか盛んに策がとられていますから、これは私は遠くない近い将来にこれが実りのあるものと期待しております。ですから、そういう方向が出されておりますので、円の国際化もある程度並行的にそういう施策を進めるべきじゃないのかなということを考えております。

○福山哲郎君 これは、この間あるところで私の友人から聞いたお話なので、私も聞いたことをそのまま先生にお伝えして、ちょっと感想を伺いたいんです。
 その友人というのは投資顧問関係の仕事をやっておりまして、百億とか二百億のファンドを回している。もちろん日本にある企業ではなくて海外に本社を持っているんですが、そのときに私が、今の運用者というのは、例えば百億のファンドで投資をするときに日本の債券なり株式なりというのをポートフォリオの中に入れますかということを聞いたら、冗談半分に言われたんですが、現状の日本では、ポートフォリオの中に日本のものを入れるということはほとんどあり得ないというお言葉を聞きまして、本音としては僕は大変ショックだったんです。これだけ株も安い、土地も安い状況の中で、まだまだ実は買う余地はたくさんあると思っていたにもかかわらず、そういう返事をいただいたということですごくショックだったんですが、時間がないので、簡単にこのことについての感想をお聞かせいただけますでしょうか。

○公述人(中島精也君) それは外資系なので、多分もともとのお金がドルできているんじゃないかと思うんですけれども……

○福山哲郎君 円です。

○公述人(中島精也君) 円ですか。円だとちょっと異論があるんですけれども、方向として今金融政策が緩和になっていますから多分円安になるだろうということ、それと日本経済がまだこういう状況ですから、特に外資系のファンドはそう簡単にいわゆる円資産をふやそうという気は余りないわけです。ですけれども、それはそれこそ日本経済が改善していけば変わるものですから、僕は循環的なものだと見ております。

○福山哲郎君 現状の経済政策、それから金融に対する再生も含めて、海外のマーケットも含めて中島先生はいろいろごらんになられていると思いますが、今の政策をした上で日本のマーケットというのはある意味でいうと信用が上がってくるというふうに、今の海外のマーケットは評価されているんでしょうか。

○公述人(中島精也君) 今、海外が一番見ているのは、日本の政策が見られていることは事実だと思います。ただし、過去、日本は経済政策、財政も金融も使ってきたけれども景気はよくならなかった。その理由は、実は企業がリストラをやらなかったからだという認識なんです。ところが、やっとことしになって日本の企業が思い切ったリストラをやるということが本格的に始まりましたので、アメリカ初め海外の投資家の見方は、要するにこの企業リストラが本当に成功するかどうか、それ次第では日本に投資しようというふうな考え方でいるわけです。

○福山哲郎君 ありがとうございました。
 お聞きしたいことは山ほどあるんですが、青山公述人にお伺いをしたいと思います。
 先ほどもテレビ朝日の報道のいろんな御議論がありました。私は、どちらかというとテレビ朝日の放送については、議論の余地はありますけれども、あれの是非はともかく、それから農業をやられている方に大変迷惑がかかったことはもちろんそうだと思います。しかし、例えば厚生省が十ピコを規定して、その直後に環境庁が五ピコを規定して、そこを踏まえた安全基準なり摂取基準なりというものを全くしないで放置していた日本政府の無策の方に実は本質的な議論があるというふうに私は思っています。
 その中で、民主党も、そして公明党さんも法案を今提出をさせていただいているんですが、例えば現実に今TDIを一ピコに設定したとしたときに、そこから含めて大気、水質、土壌等の安全基準をつくっていくときに、現実に今の日本の社会にこれだけダイオキシンがあふれている状況の中で急にぎゅっと締めたって、現実問題としてそれが可能かどうかということについての青山先生の御見解をお伺いしたいと思います。

○公述人(青山貞一君) 福山先生の今の御質問はよく私も耳にします。しかし、それが今の日本で例えば一にした場合に、先生多分御承知かと思いますけれども、所沢の辺ですと、バックグラウンド、コントロールとも英語で言いますけれども、物を食べる以前に汚染された空気を吸い、汚染された土壌を吸い、水を飲む、それでどのぐらい一日に一人体重一キロ当たり摂取しているか。あの辺ですと多分〇・六から一・幾つのはずです。つまり、うんと汚染されている地域では物を食べなくても一を超えるという現実があります。多分それを指して言われているんだと思います。
 しかし、私に言わせればそれ自身がそもそも異常なんです。何も食べなくて空気、土壌、水から、水を食べ物と言うかどうかわかりませんけれども、食べ物以前が異常ですから、それを何はともあれ早く下げるということをする意味でもなるべく厳しい値、つまり緩くしておけば緩くしたなりにその後、例えば今の東京の窒素酸化物がもう十五年以上環境基準を上回っています。二回にわたって緩めて、その結果、緩めたものも実は全く満たしていないんです。私は、すごいぜんそく患者ですけれども、実はそれと同じように達成が難しい厳しいものを設定してもしようがないという論理になりますと、結局全部の対策が、さっき言いましたけれども、環境庁の仕事も二十何年やってきた私の今までの経験からしますと、それがなかなか前へ進まない。
 ですから、一から四というのがいいか、一というのを明記するのがいいのか、いろいろと言い方はありますが、厳しいと言ってもその厳しさの一番の部分というのは、日本全体というより、さっき言いましたように十キロ、十キロの中に何十も焼却炉があるようなところがやっぱり重要です。ですから、全体としてはこうだと、だけれどもここはとりあえずこうだという、そういう設定の仕方もあるんじゃないかというふうに思います。
 ですけれども、冒頭言いましたように、一が厳しいから一をやってもどっちみちだめだという考えになりますと、何か今までの大気汚染とかそういうときの環境基準の設定と同じような、行政の努力目標だけれども頑張ったけれどもだめだということがもう今から見えてくるような気がいたします。

○福山哲郎君 そうですね。その可能性は国民の皆さんの不安が増大する中で非常に危ない、余りやってはいけないことだと思います。
 二つだけ端的にお答えください。
 調査費用に対して先ほど言及されなかったんですが、大変価格が高いと聞いております。その調査費用の価格が高いことに対する現状の問題を簡単にお答えいただくことと、調査の透明性を担保するためには、例えば住民がその調査の中に入るとか、地域に第三者機関をつくって調査をするとかという、その調査の安定性というか透明性の担保のためにどういうことが必要なのか、二点だけ簡潔にお願いします。

○公述人(青山貞一君) 前者は、昨年のちょうど今ごろ、アメリカ、カナダ、ドイツ、オランダ、イギリスに同じ英文で価格の調査を出してみました。それが私どもの根拠であります。日本に比べれば当時、今もだと思いますけれども、諸外国は非常に安かった。
 その理由は、例えば日本は人件費が高いとか、技術がこれからでなかなか時間がかかるとか、あと試薬を厚生省の外郭団体が売っていて、これはちょっと事実関係をもっと確かめなくちゃいけません、その試薬自身が高い、それを買わされているというのもありました。あと今言った外郭団体に数十社が集まって、これは民主党の岡崎トミ子先生がたしか国土・環境委で問題にされて、国が通達を出してこういう業者を使えというようなことをしていたことがありまして、それをその後公取委が入ったというのがあります。そういう理由から高いというふうに私は思いますから、もっともっと安くできると思います。
 もう一つは、おっしゃるように、市民だけじゃなく専門家も含めてチェック・アンド・バランスといいますか、透明性を高め、クロスチェックとかインターキャリブレーションと言っていますけれども、相互に値を照らし合うようなシステムをつくらなければ今の問題はなかなか解決できないと思っています。

○福山哲郎君 どうもありがとうございました。

 


 

第145国会  参議院  予算委員会  1999年2月26日

○福山哲郎君 民主党・新緑風会の福山哲郎でございます。
 きょうは、少しわからないことがたくさんありますので多少失礼なこともあるかと思いますが、質問させていただきたいと思います。
 まず、予算委員会の冒頭、我が党の角田委員の方から中村法務大臣に対する適格性について質疑がございました。いろいろな問題について話があったんですが、問題の一月四日の賀詞交換会での話というのは出ていませんでしたので、私はひとつお伺いをしたいと思います。
 まず、法務大臣、一月四日の法務省の職員を前にした会で、法務大臣はるるいろいろ述べられた後に、その中で、日本人は連合軍からいただいた、国の交戦権は認めない、自衛もできない、軍隊も持てないような憲法をつくられて、それが改正できないという中でもがいておるという大変な時代に我々は生きているのだと思いますというふうにいろいろ述べられたと報道で言われておりますが、これは間違いないでございますでしょうか。

○国務大臣(中村正三郎君) 御指摘の発言は、そういうことが報道されておりますが、公式の例えばこういう委員会でしゃべるというような場でなかったので一言一句は覚えておりませんが、そういう報道にあるということは、それに近いことを言ったのでないかと思います。
 そのことにつきましては、実は申し上げたかったのは、我が国が直面するさまざまな複雑な情勢を、司法制度改革をする、それを強調するためにお話ししたかったというのが真実でありまして、司法制度改革の必要性を強調する余り不適切な点がございましたので、翌日の閣僚懇談会においておわびを申し上げて発言を取り消させていただいた次第でございます。
 まことに遺憾に思っておりまして、改めておわびを申し上げます。

○福山哲郎君 自衛権もないと。自衛権はありますよね、外務大臣。自衛権はありますよね、日本には。

○国務大臣(高村正彦君) 自衛権はあると思っております。

○福山哲郎君 自衛権もあります。日本は憲法改正もできるはずです。自衛権があるので自衛隊の方々はPKOも含めて命をかけて頑張られている。それに対してこういう発言をされた法務大臣、どのようにお考えですか。

○国務大臣(中村正三郎君) もちろん、自衛権もございますし、今、外務大臣が言ったように考えております。

○福山哲郎君 改正に対しても憲法九十六条に改正条項がちゃんとあるわけです。これは、ある意味でいうと国民に対する私は冒涜だと思いますが、法務大臣、どう思われますか。

○国務大臣(中村正三郎君) 私がそこで申し上げたかったことは、憲法上の制約があり、いろいろ国際的な貢献ということにも制約があるんだよということを申し上げたくて申し上げたわけでありまして、一言一句記録をとったりするような会でもございませんので、私が申し上げたのはそういう意味でございます。そして、我々は憲法を遵守し擁護していく義務があるという中でお話ししたことでございます。

○福山哲郎君 日本は法治国家であります。そして、その法をつかさどる法務省の大臣が、幾ら賀詞交換会、多少はパーティーのような形なのかもしれませんが、自分たちの仲間にこういうことを言った、その見識というのを大変私は不可思議に思うわけで、この件について、総理はいかがお考えでしょうか。

○国務大臣(小渕恵三君) 一月五日の閣議後の閣僚懇談会におきまして、私から法務大臣に対しましてその発言の真意をただしましたところ、司法制度に関する改革の必要性を強調するために、我が国が直面するさまざまな局面を説明し複雑な世界情勢に言及したかったというのが真意であるが、その改革の必要性を強調する余り表現に適切を欠いた点があったので、おわびして撤回するものであり、小渕内閣の閣僚として、当然のことながら、憲法を尊重、擁護することは当然のことである旨の発言がありましたので、私としてはこれを了承したという経緯でございます。

○福山哲郎君 総理の言われる富国有徳国家は、私も大変賛成です。だからといって、政治家の言葉に対して、撤回をしたから了承したというようなそんなに単純なものでしょうか。政治家の言葉というのは、大変重要な意義もあるし、国民に対する信頼もあるし、そういうことに対して、このような法務大臣を内閣にいていただいていることに対して、総理としてはどうお考えですか。

○国務大臣(小渕恵三君) 政治家のみならず人間の言葉というものは、これは千鈞の重みを持つものだというふうに認識をいたしております。
 そういった意味で、言葉が過ぎるというような点があれば、これは反省をして、そうしたことの再びあり得ないようにということを願っておるわけでございます。内容のすべてについて私、逐一速記したものをいただいたわけではありませんが、法務大臣みずから、そういった立場で発言に十分でなかったということであり、かつまたそれを撤回するということでございましたので、私としては、今後のお仕事に最善を尽くしていただきたいという趣旨も込めまして、それを了として今日その責務に当たっていただいておる、こういうことでございます。

○福山哲郎君 最善にお仕事をしていただけるかどうか大変疑義があると思いますが、これでこの質問は終わりたいと思います。
 では、次に行きます。
 九五年一月、破綻金融機関に対する整理回収業務を担う整理回収銀行というものが設立されました。いわゆる東京協和、安全両信用組合の事業を受け継ぐという形なんです。この整理回収銀行は、四月一日から住専機構と合併をするということになっておりますけれども、九月末現在でのこの整理回収銀行の欠損金は幾らでしょうか、大蔵大臣。

○政府委員(伏屋和彦君) お答え申し上げます。
 今、先生が言われました整理回収銀行の昨年九月末の中間決算期における欠損金は、これは既に公表されているところでございますが、約千百億円となっております。

○福山哲郎君 この整理回収銀行も、いわゆる奉加帳形式で千六百億円のお金を民間それから日銀から集めてつくられたものでございます。
 今、千百億円欠損金が出ていると言われていますが、では、ことしの三月末では欠損金は幾らの見込みですか。

○政府委員(伏屋和彦君) お答えいたします。
 整理回収銀行のことしの三月末の欠損金の見込みにつきましては、現段階ではまだ確たることは申し上げられませんが、今言いました昨年九月時点でのこの整理回収銀行の純資産価格が、これも公表されているわけでございますが、二百八十四億円でございます。先ほどのお話で、この整理回収銀行の資本金は千六百億円でございますから、この純資産価格二百八十四億円を踏まえますと、約千三百億円を超えることになるんではないかと考えております。

○福山哲郎君 欠損金が千三百億円を超えるということですね。三月末で清算をしないと住専機構との合併はできない。この欠損金はどのように埋められるんですか。

○政府委員(伏屋和彦君) 先ほど先生が言われましたのですが、昨年の秋の国会におきまして、与野党の合意の結果、これは法律に定めてございますが、預金保険法の附則と住専法の附則によりまして、まさに住管機構とこの整理回収銀行を合併するということになっているわけでございます。

 この法律の合併を実現するためには、今言われました意味で設立される新しい整理回収機構は、実質的に全額国の出資の株式会社とするということでございますので、預金保険機構が日本銀行及び民間金融機関から整理回収銀行の株式を買い取る必要が生じてくるわけでございます。

○福山哲郎君 では、その買い取りの合併の比率はどうなっているんですか。

○政府委員(伏屋和彦君) 両者の合併契約書というのがございまして、四〇対三ということになっております。

○福山哲郎君 つまり、五万円の額面であったものが八千八百七十二円になっているわけですね、整理回収銀行は。それで間違いないですね。

○政府委員(伏屋和彦君) 先生がおっしゃるように、昨年の九月末時点の純資産価格が二百八十四億円でございますので、一株当たりに直しますと、まさに言われた八千八百七十二円となっているところでございます。

○福山哲郎君 実際に資本金は幾ら減るんですか、合併した後。

○政府委員(伏屋和彦君) 先ほど先生の言われました合併比率ともこれは関連があるわけでございますが、結局、昨年の九月末時点の純資産価格二百八十四億円に基づきまして、両者の協議によりまして、この中間決算以後の損益とか資産、負債の変動を見込みまして、新会社の増加資本金は百二十億円ということになります。それが四〇対三の、三の基礎になっていると思います。

○福山哲郎君 ですから、幾らぐらい資本金は減るんですか。大まかでいいです、三月末を迎えていませんから。

○政府委員(伏屋和彦君) 資本金の千六百億円から、九月末では二百八十四億、さらに三月末では百二十億円をベースとしているということでございますので、その差額になるわけでございます。

○福山哲郎君 差額は幾らですか、それは。

○政府委員(伏屋和彦君) 千六百億から百二十億マイナスするわけでございますから……

○福山哲郎君 だから。

○政府委員(伏屋和彦君) 千四百八十億。

○福山哲郎君 千四百八十億円なくなるわけですね。日銀はこれに対して二百億円出資していますが、総裁、日銀は幾らなくなりますか。

○参考人(速水優君) 日本銀行は二百億出資をいたしております。ただいま御説明ございましたように、一株八千八百七十二円を前提として整理回収銀行が時価で買い取ると。いろいろ折衝、交渉もいたしましたけれども、これ以外に方法はないということでございましたので、私どもとしてはこの株を三十五億四千九百万円で売却いたします。売却損は百六十四億五千百万円となります。

 この方針は、二月十六日、私どもも政策委員会において議論の結果決定いたしました。預金保険機構に対しては、二月二十二日に本決定に基づいて時価買い取りに応ずる旨を回答いたしました。

○福山哲郎君 つまり、日銀は百六十四億五千何がしかのお金が吹っ飛んだわけですね。これはいわゆる奉加帳方式で、この間、日債銀の八百億円に対して日銀総裁は八百億円毀損したとおっしゃられました。新しい整理回収銀行が合併するに当たりまして、これまた百六十四億飛んでいるわけです。
 もう一つお伺いします。
 いわゆるほかの各民間金融機関が収益支援契約をしていたと思いますが、その収益支援契約の中で未収金が九末で二百八十三億あったはずですが、この扱いはどうなっていますか。

○政府委員(伏屋和彦君) 今、先生が言われましたように、昨年の国会の与野党の合意、さらには法律に基づいて合併を実現するためには、先ほどからお話しいただいている買い取り等、今言われました収益支援の話がどうしても必要になってくるわけでございまして、今のお話は資産に計上されております。

○福山哲郎君 各民間金融機関は、収益支援をまだこれから合併後も続けると言っているんですか。

○政府委員(伏屋和彦君) 先ほどのように、法律上の整理回収機構を実現するためには、収益支援を継続する必要性は変わるわけではないものでございますので、預金保険機構及び整理回収銀行は民間金融機関に対しまして収益支援の継続の協力を求めているところでございます。

○福山哲郎君 おかしいじゃないですか。東京共同銀行、整理回収銀行の前身が解散をしたときは、民間金融機関はこの契約について解除ができると書いてあるじゃないですか。解除されたら二百八十三億円の未収金は入ってこないんですよ。

○政府委員(伏屋和彦君) 今言われました支援契約書の中にこの条項がございますが、その点についていろいろ考え方がございまして、あくまでもこれは継続をお願いしなければ、資産に計上してあるわけでございますので、そこは継続をお願いしているということでございます。

○福山哲郎君 だって、先ほど言われたじゃないですか。新しい、要は国が出資をした預金保険機構からお金が出ていると。回収銀行は各民間機関が出資しているから収益支援金を出しているわけじゃないですか。預金保険機構が出しているものに対して、何で民間の企業が収益支援を続けなければいけないんですか。合理的な根拠を教えてください。

○政府委員(伏屋和彦君) 繰り返しになって申しわけございませんが、結局与野党の合意のもとで、法律に基づいて全額国の出資の株式会社にして新しく整理回収機構を成り立たせていくためには、既に予定されております収益支援は、これは継続していただかないとその分だけはいわば穴があくという格好になるものですから、これは収益支援の継続をお願いする以外にないと考えております。

○福山哲郎君 これ、拒否されたらどうするんですか。

○政府委員(伏屋和彦君) 先ほどから申し上げておりますように、収益支援の継続は資産項目として計上されているわけでございますから、今、議員が言われますように、仮にそれが打ち切られることになりますと、これは未収金が損失になるわけでございますので、法律に基づいた合併が困難になるという結果になるわけでございます。

○福山哲郎君 十二月に合併契約をするときに入るか入らないかわからない未収金をそのままにしておいて、もし未収金が入らなかったら債務超過じゃないですか。そうしたら、今おっしゃられたように合併できないんですよ。そんな先がわからないことに対して合併契約すること自体おかしいじゃないですか。

○政府委員(伏屋和彦君) 法律に基づいて、これは住管機構と、まさに預金保険法の附則、住専法の附則にもう規定してあるものですから、その合併を実現するためには、合併後の整理回収機構の円滑な運営のためにも、これは民間金融機関に対して収益の支援の継続をお願いする以外にないので、法律を実現するためにこれは必要なお願いでございます。

○福山哲郎君 納得できないんですが、ひとつ日銀総裁にお伺いします。
 総裁は、十二月二十二日付で預金保険機構の松田理事長あてに、この回収銀行の出資に対して、信用秩序維持が目的で回収銀行の損失負担を出資者に求めるのは適当ではないという旨の文書を松田理事長に送られましたね。

○参考人(速水優君) 二月二十二日ですか。

○福山哲郎君 十二月二十二日。

○参考人(速水優君) 十二月二十二日。

 要請の手紙はいただきましたけれども、それに対していろいろ討議をした結果、これはやむを得ないということで決定しまして、先ほど申し上げたように、二月二十二日に時価買い取りに応ずるということをお答えしました。

○福山哲郎君 総裁は、ではこれは出資者に求めるのは適当ではないけれどもしようがないから渋々認められたんですね。

○参考人(速水優君) 平成六年十二月に経営破綻しました東京協和信用組合それから安全信用組合の受け皿として設立された東京共同銀行、現整理回収銀行に対して、日本銀行及び民間金融機関はそれぞれ二百億円を出資したわけでございます。日本銀行としては、預金保険制度が十分整備されていないもとで信用秩序維持のためにやむを得ない極めて異例の緊急避難措置として出資を行った経緯等を踏まえまして、現在整理回収銀行が抱えている損失について出資者にその負担を求めることは本来必ずしも適当でないと考えております。
 こうした考えに基づきまして、預金保険機構に対して、買い取りは時価ではなく額面で行われることが望ましい旨文書により伝達しております。

○福山哲郎君 日銀総裁が適当でないと言われているものに対して、買い取れと無理やり言って、百六十四億も損させたんですか。
 大蔵大臣、いかがですか。

○国務大臣(宮澤喜一君) 大変複雑な過去を持っておるケースで、私が十分知っている部分と多少知っておる部分とに分かれますが、結局あのころに御承知のように信用金庫がつぶれましたですね。そのときに、今のようなネットワークがございませんから、東京共同銀行というものをつくって、東京協和、安全及びコスモでしたか、一緒にしました。これはどこからも預金のペイオフを超える制度がございませんから、預金保険機構が面倒を見るわけにいかない。そこで、日銀にも民間からもお金を集めてともかくあの場をしのいで預金者にお金を払った。しかし、それがこの整理回収銀行の負債になってずっと続いておったわけでございますね。
 そして、ここから先がちょっと非常に申し上げにくいことになるのですが、いまだに預金保険機構は整理回収銀行を救うという規定が遡及いたしませんから、その救済の方法がない。そうしているうちに、今度整理回収銀行がもう一つのものと一緒になるということに国会の立法で決められたわけでございます。
 そして、しかも片方では民間の未収金がある。民間もこれは今さら出すのは本当にたまったものじゃないだろうと私も思うんですけれども、それはアカウントレシーバブルの方にございますから、国会のおっしゃるように合併をいたしまして、そして政府がさっきおっしゃったように五万円ですか、の株を八千幾らとおっしゃいましたね、そういうことで買い取って、しかしやっぱり民間からはそれをいただかないと国会でお決めになりました法律の実行というものができない、そういう立場に政府はあると思います。
 これは与野党でいろいろあのときに御承知のように大変複雑な御協議がありまして、大変複雑な御協議でありましたから、本来なら政府が機会を得て、そういう立法をしていただきますと民間からこれをどうしても取らなきゃならないという羽目になりますということを申し上げておくべきだったんだろうと私は今思います。
 しかし、それはそういうふうな雰囲気も実際ありませんで、ああいう立法ができてしまいましたから、立法のとおりするとすれば、民間の各行に強く要請をしてひとつお願いできないかと、こう言うしかございませんということを政府委員は丁寧に申し上げようとしているんだと思うんです。非常に困ったことになっております。

○福山哲郎君 よく各大臣の先生方言われるじゃないですか、仮定のことには答えられないと。民間金融機関が支援を続けるかどうか仮定でわからないのに決めちゃったわけでしょう。おかしいじゃないですか。大蔵大臣、おかしいでしょう、これ。

○国務大臣(宮澤喜一君) 決めちゃったというのが、大変申しにくいのですが、政府立法でお願いしたのではなくて、国会の立法でそう決まった経緯ですから、決めちゃったというのは、そうおっしゃいましても、政府委員はなかなかさようでございますと申し上げられないわけで、私、ですからこの程度この場で申し上げますけれども。

○福山哲郎君 とにかくわからないことだらけなんです。いっぱいあるのでちょっと行きます。
 日銀総裁にお伺いします。
 山一証券に日銀特融を当初一兆二千億円出されたと思いますが、現状どのぐらい日銀に返済が行われていますか。

○参考人(速水優君) 今約五千億残っております。五千億ちょっと割っておりますが、五千億残っております。

○福山哲郎君 残が五千億ですか。

○参考人(速水優君) 貸し出し残高が。

○福山哲郎君 これは、山一が自己破産をしたときのこの残りの五千億の残高はどうなりますか、これも仮定の話なんですけれども。

○参考人(速水優君) 御指摘のとおり、山一証券向けの特融を投資者保護基金が承継するということになっておるわけで、同基金の総会の承認が必要とされるところでございますけれども、日本銀行としては、実際に投資者保護基金を活用する必要が生じた場合にも、関係者の理解と政府の責任によって適切な対応が図られるものではないかと考えております。

○福山哲郎君 では、その総会で否決されたらどうなるんですか。

○参考人(速水優君) それはわかりませんけれども、関係者の理解は十分得られるものというふうに考えております。

○福山哲郎君 ここに山一特融を出したときの総裁談話があるんですよ。信用秩序の維持というみずからに課せられた使命を適切に果たしていくため、臨時異例の措置として日銀法第二十五条に基づき、同社の顧客財産の返還、資金を供給することにした、日本銀行資金の回収に懸念が生じるような事態はないと考えていると言っているわけです。
 あるかもしれませんよね。総裁、いかがですか。

○参考人(速水優君) 資産処分、その本件の最終処理を含めまして、寄託証券補償基金の法制化、その他財務基盤の充実、機能の強化等を図り、十全の処理体制を整備すべく適切に対処したいということが大蔵大臣談話で平成九年十一月に、同社廃業が決まったときに発表されております。私どもはそれを信じておるわけでございます。

○福山哲郎君 私が何でこんな細かいことを申し上げているかといいますと、いいですか、回収銀行で百六十何億、日銀が出資をしたものが飛んだんです。今回、日債銀で八百億円飛んだんです。日銀特融は出資ではないから性格は違うかもしれないけれども、五千億円飛ぶかもしれないんです。
 いいですか。信用秩序という打ち出の小づちがあって、この打ち出の小づちを大蔵省が振ったら、民間金融機関も日銀もみんなお金を出して、それで気がついたらこれだけ飛んでいっているわけです。
 私が言っているのは、信用秩序の維持は大事だと思いますが、中央銀行としての日銀の権威とか威信とか、海外マーケットの日本の中央銀行に対する信頼というのはどうなるんですか、総裁。私は、総裁はお気の毒だと実は思っているんです。

○国務大臣(宮澤喜一君) それはむしろ大蔵大臣がお答えすべきことかもしれないと思います。
 と申しますのは、昨年の国会でいわゆるセーフティーネットをつくっていただきました。預金保険機構もございますし、政府も六十兆の出資をいたしまして、これでまずこういう場合の仕組みがおかげでできたわけですけれども、その以前には、二つの信用組合のときのように、何ともする方法がない、ペイオフの例の預金保証すらないわけでございますから、そういう預金者に対する手当てと、それから日債銀のときもそうだと思います、山一も業種は違いますが似ていると思いますが、一種の信用恐慌が起こりましたときにそれに対応する方法を欠いておったわけでございます、我が国の経済が。それが護送船団の罪であったろうとおっしゃれば私は否定いたしません。
 やっぱり世話しながら何とかそれは済ませていこうと考えていて、いろんな事情がございましたが、それがいろいろ済まなくなってきたところで国会が立法をしていただいたわけですが、その前には、日債銀のときもそうでございますが、日銀がどうしてあそこで八百億円出したと。新しい勘定から政策委員会を開いて出されたわけですが、そうでないとほかの銀行にも協力をしてもらえないということが現実にあったんだと思いますね。それは奉加帳ということでまことにいかぬことでございます、今から考えれば。しかし、それ以外にやる方法がなかった。
 ですから、日本銀行も好きでおやりになったんでないことはまことにはっきりしておりまして、日債銀のときは、ですから大蔵大臣がわざわざ談話を出されて日銀に協力を要請したと言っておられますように、日銀は内部手続はきちっとしておられますけれども、しかし大蔵大臣の要請であるとか全体の金融秩序の維持であるとかいうことで、言ってみれば心ならずもなさって、それがうまくいきましたらこういうことになりませんでしたが、不幸にしてうまくいきませんでしたので、一体出した金はどうなるのかということになった。
 つまり、セーフティーネットがありませんでしたから、大蔵省がいわば音頭をとって日銀にもお願いをし、民間にもお願いをして金を出してもらって、何とかここは乗り切ろうといたしましたその乗り切りが成功いたしませんでしたので、あちこちに御迷惑をかけるようになった。それはまことに音頭をとった者に私は責任があると思います。過失や故意はなかったと思いますが、しかし結果責任はあると思いますが、それはセーフティーネットができなかった時代における、いわばそれ以外に方法のなかった処置であったのではないか、こういうふうに考えます。

○福山哲郎君 方法がなかった、だから日銀にもお願いをした、民間にもお願いをした、結果として失敗しましたと。そのお金が八百億、百六十億、五千億円です、大蔵大臣。確かにそれは一理あるかもしれない。でも、結果責任として、行政に過失責任があるかどうかわからないけれども、責任がありまして申しわけありませんと、それで済むことですか、大蔵大臣。

○国務大臣(宮澤喜一君) そういう反省のもとに、大蔵省の行政というものは非常に批判をされましたし、また多少同じ関連もあって関係者がいろいろ処罰を受けたりいたしました。
 その中で、そういう金融に関する権限を大蔵省が持っているのは適当でないという国会の御判断もいろいろ御議論になっているというようなことで、そのような行政のあり方が批判を受け、罰せられたというふうに私は反省をいたしております。

○福山哲郎君 日銀総裁、これだけ財務内容が悪くなっている状況と中央銀行としての威信、海外のマーケットそして国内のマーケットに対する信用低下に対してどのような見解をお持ちですか。

○参考人(速水優君) 日本銀行は、金融システム問題に対応するために信用秩序の維持という意味で、いわゆるレンダー・オブ・ラスト・リゾートと通常言われておりますが、最後の貸し手としての任務を果たさなきゃならない。これはどこの中央銀行でも持っている責任なんです。
 今回の場合も、中央銀行の立場から、いろいろ金融システムの破壊に導かないための手段が何もできていない状況の中で考えられたセーフティーネットの一つの整備のあり方としてこれを受けたものだと思います。しかし、結果としては、御指摘のように、新金融安定化基金を通じた日本債券信用銀行向けの出資とか、整理回収銀行向けの出資とか、いずれも毀損され得る事態となっていったことにつきましては、私どもとしても非常に重く受けとめております。
 日本銀行としては、今回の痛みを伴った教訓を今後の対応に十分生かして、我が国金融システムに対する内外の信認を確保していけるよう引き続き努めていく所存でございます。同時に、中央銀行の財務の健全性が全体としてしっかり維持できるよう細心の注意を払ってまいりたいと思います。こうした観点からは、公的資金による資本増強の仕組みを含めてセーフティーネットの整備が進められたもとでは、こうしたリスクキャピタルの供与について今後一段と慎重に対応していくべきものと考えております。
 いずれにしましても、今回の一連の教訓を踏まえて、昨年四月から施行されました新日銀法のもとで、我が国金融システムの健全性に役立つ対応を行ってまいりたい。これが新しい日本銀行に課せられた責務であると思います。
 本件について外からどう見られるかという御心配を私どもも持っていますし、皆様もお持ちいただいているかと思いますが、中央銀行としてはこういったラストリゾートとしての役割というのは責任の一つでございますから、銀行券発行残高は今五十兆ですけれども、それの一割に相当する資本準備金というものを常に抱えております。そういうものの中で毀損が出てきた場合には払わざるを得ないということでございますから、その辺はそんなに御心配いただくようなことにはならないと思っております。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 先ほど大蔵大臣が故意、過失があるわけではないからと、もうやむを得なかったとおっしゃいました。
 では、故意、過失がありそうなところに行きたいというふうに思います。日野長官、よろしくお願いします。
 あなたは、予算委員会での答弁で何度も、不良債権の第V分類の七千億円という数字がひとり歩きをした、どこかから心証を承って日債銀の方でひとり歩きをさせた数字だというふうにおっしゃっていましたが、きのうの参考人ではっきりと頭取は、大蔵省の検査の方から聞いた数字を積み上げて伝えたとおっしゃっています。
 さらに、日野長官は予算委員会で、大蔵省が検査の途中でいろんな形で数字を申し上げるようなことは一切ないはずだということを言われていますが、この答弁の食い違いについてどう思われますか。

○政府委員(日野正晴君) まず、後の方から御答弁申し上げますが、これは検査の途中でございますので、検査官がその検査の結果を検査対象行に対して言うことはありませんし、また言ってはならないことであろうということでございますし、日債銀の場合もそうであっただろうというふうに承知しております。
 次に、前段の方のお尋ねでございますが、七千億円という数字は私はどこからも出てこないというふうに考えているわけですが、つまりこれは大蔵省が検査結果を確定して示達したのは平成九年九月で、平成九年五月に日債銀が増資要請を行った時点ではいまだ検査結果は判明していなかったわけでございます。しかし、当時日債銀が増資要請先に対して何らかの形で資産状況を説明する必要に迫られていたという事情がございまして、日債銀が途中段階で大蔵省の検査を受けております。それで、御自分の何か得られたようなそういった心証といいますか、みずから積み上げたその計数を何かの形で説明したということは承知しております。
 私は、これまで答弁で申し上げたとおりでございますが、七千億円という数字は私どもといいますか大蔵省の方で最終的に通知した数字でもなければ何でもなくて、これは日債銀自身が積み上げた数字で、当局が積み上げて検査結果を示した数字ではないという趣旨で申し上げてきたわけでございます。

○福山哲郎君 では、東郷頭取がきのうの証言でうそをついていたというわけですか。

○政府委員(日野正晴君) 昨日の東郷頭取の御答弁を要約して申し上げますと、一通りの資産査定を終えたような段階で私どもがとおっしゃっていますね。一人称です、ウイかあるいはアイかわかりませんが。検査の方々からお聞かせいただいた数字を足し上げたものが七千億円でございますと。
 それからまた、さらに上田清司委員からの御質問に対しても、私どもが算定しと、こういうふうにおっしゃって、五月十九日に金融機関に伝えました、こういうふうにおっしゃっているわけです。

○福山哲郎君 もうおかしいんですよ、長官。あなたは、二月五日の予算委員会の速記録で、大蔵省の心証と申しますか、検査の途中で知り得たさまざまなことについて、他にそれを申し述べるといったようなことはなかったものと承知しておりますと答弁されているんです。
 今あなたは、一人称ですけれども、日債銀が、私たちが大蔵の検査の方から聞いた数字でつくったというわけです。大蔵の検査の方から聞いた数字と今あなたはおっしゃったじゃないですか。じゃ、大蔵の検査の方は数字を言ったわけですね。

○政府委員(日野正晴君) 当時、日債銀が切迫しておりまして、日債銀がみずから積み上げた計数を説明していただろうということは十分にうかがえるところですし、私どももそうだったのかなというふうに思っているわけです。

○福山哲郎君 大蔵省の検査の方々から聞いたって、あなた今おっしゃったじゃないですか。じゃ、東郷前頭取はうそをついているわけですね。

○政府委員(日野正晴君) もちろん、検査でございますから、検査に行って、対象となる金融機関との間でその資産の査定をめぐっていろいろディスカッションしていることは当然にあり得るわけです。それは、ですから日債銀の方としても、大蔵省が一体どういう観点でこういうことを聞かれるかということは十分わかるわけですね。
 しかし、大蔵省としては、それを第三者、日債銀以外のところにそういうことを言うということはあってはならないし、そういうことはなかったというふうに承知しております。

○福山哲郎君 だって、あなたは、検査の途中で知り得たさまざまなことについて、他にそれを申し述べるようなことはないと言っているじゃないですか。

○政府委員(日野正晴君) 他にというのは第三者という意味でございます。

○福山哲郎君 でも、きのう頭取は、日債銀の七千億円を大蔵省に報告したとおっしゃっているんですよ、その時点で。

○政府委員(日野正晴君) 報告を受けているかどうかは、とにかくそういうことを言っているという話を大蔵省が聞いていただろうとは私は思っております、そこは。

○福山哲郎君 今のは食い違っているじゃないですか。だって、きのう日債銀は報告をしたとおっしゃっているんですよ、長官。

○政府委員(日野正晴君) 七千億という数字を言っているということを、日債銀が言っているということは私はもうかねてから申し上げていると思います。

○福山哲郎君 わからないな。
 では、もう一個行きます。
 確認書の問題が出てきました。確認書はいろんなところにお願いをして、そしていろんなところが出してくれという向こうからの意思表示に対してこちらが出したというふうにおっしゃいました。全部ではない、一部だとおっしゃいました。これには大体二項目言われているというふうに日野長官はおっしゃいましたが、もう一度確認をお願いします。

○政府委員(日野正晴君) 確認書は必ずしもチェンジしたところとの間ですべて同じ文言で交換したものではございませんから、複数ございますので、それを全部一つ一つ正確に申し上げれば別々なんですが、これを要約して申し上げますと、一つは、この再建策は全関係金融機関の同意がなければ成立せず、仮に成立しない場合には金融システム全体に大きな影響を及ぼしかねないということです。それから第二点は、当時の見通しとしては再建策が実行されれば日債銀の再建は可能であるということ。それから、さらにつけ加えますと、これは全くの要約になりますのであれなんですが、出資要請先に対しては再建策以上の追加負担を求めることはないという認識を大蔵省が有しているということを文書の中で確認していたということになります。

○福山哲郎君 その確認書を交わした時期はいつですか。

○政府委員(日野正晴君) これは区々でございまして、五月から六月にかけてということになります。

○福山哲郎君 それは出資をしていただければ再建可能だということが書いてあったわけですね。これはまさに検査の途中ですよね。何で検査の途中で、外に、表に出さないときに再建が可能かどうかが言えるんですか。

○政府委員(日野正晴君) この確認書を読みますと、再建可能な理由としては、日債銀は債務超過ではなく、この再建計画の実施によって再建が可能であるというふうに大蔵省としては判断した、こういうふうになっております。

○福山哲郎君 だって、検査の途中なんでしょう。債務超過ではなくと何で言い切れるんですか。

○政府委員(日野正晴君) 再建計画は四月一日につくられたわけですね。それを早急に実行しなければならないというわけです。ところが、確かに今おっしゃるように検査は四月から入りましたが、九月まではまだ終わりません。終わっておりませんが、とにかくその途中で大蔵省としての判断を示さざるを得なくなったということで、大蔵省の判断を確認書という形によって示した、あるいは四月一日に大蔵大臣の談話という形で示したものでございます。

○福山哲郎君 さっき言ったじゃないですか。これは、日債銀については検査の途中で知り得たさまざまなことについて他にそれを申し述べるようなことはなかったものと承知しております、日債銀の間でやりとりがあったとおっしゃいましたよね。今おっしゃったじゃないですか。検査の途中ですが、切迫をしていたので検査のとき知り得たさまざまなことを言っているじゃないですか。

○政府委員(日野正晴君) 検査は検査、それから大蔵省として当時再建が可能であるかどうかということを判断したということはあると思います。

○福山哲郎君 では、何のために検査をしたんですか。

○政府委員(日野正晴君) 検査は、本来の金融機関の財務の内容が健全であるかどうかということを判断するために行ったということでございます。

○福山哲郎君 二千九百億円ものお金を出資してもらうのに、検査は検査、今一応債務超過ではないという判断をして確認書を配っている、検査の途中でですよ。おかしいじゃないですか、こんなの。

○政府委員(日野正晴君) これはたびたびお答え申し上げていることですが、その四月一日に日債銀の関連会社が破産の申し立てをいたしまして、日債銀自体がもし倒れるようなことになった場合には、その当時の金融システムが大変なことになる。しかも、現在のようなセーフティーネットはその当時整備されておりませんでした。
 特に、金融債が預金保険の保護の対象となるかどうかについてもいろいろ御議論がございまして、そういった時点でもしも、金融債保護なども含めまして、預金者の保護も含めて、果たして日債銀が倒れるとどうなるかということを考えたときに、その四月一日に出された再建計画に基づいて再建せざるを得ない、そのためには出資先にいろいろお願いしたりあるいは日銀にお願いしたということでありまして、その当時は検査の結果がまだ出ておりませんでしたけれども、四月一日の現在ではやむを得ない措置ではなかったかなというふうに考えます。

○福山哲郎君 百歩譲って、お願いをするのはわかります。
 債務超過ではないと言っているということは、これはある意味でいうと、価値をそこに与えているんですよ、長官。何の根拠で債務超過ではないと言ったんですか。

○政府委員(日野正晴君) 大蔵省は大蔵省としての検査とはまた別の独自の、検査は検査部の方でやっているわけですが、銀行局の方では独自の情報の収集を行っているわけでありますし、それから三月末の時点の自己査定については、当時、監査法人、公認会計士が当時の会計基準にのっとった監査をした上で債務超過ではないという結論に達していたわけでございますから、この確認書が出されたことについては何ら当時としてはやむを得なかったものではないかというふうに存ずる次第です。

○福山哲郎君 大蔵大臣も予算委員会の答弁で、詳しいことは存じません、みだりに申すべきことではございませんからと言って、みだりにいろんなことを外へ出すことはおかしいというようなことを大蔵大臣言われているんですが、今のお話を聞いてどのようにお感じになりますか。

○国務大臣(宮澤喜一君) いろいろの話を聞きましたり、またきのうの参考人の御意見は私は直接伺いませんでしたけれども、私が想像していたようなことであったかなと思って、後で報告を聞きました。
 結局、四月一日に、大蔵大臣が呼びかけられて協力を要請されたということがございますね。その中で、大蔵大臣は、言葉として、この資本増強は不良債権の抜本的な処理と相まって日債銀の経営基盤を大きく改善するものと考えており、市場の信用を回復する云々と言っておられるわけですが、この段階において、大蔵大臣初め大蔵省も日銀も、資産超過ではないという恐らく心証を持っておられただろうと想像をいたすわけです。──債務超過です、失礼いたしました。そのゆえに、また大蔵大臣の意を受けて、大蔵省も各行に協力を要請されたと。
 多分、そのときに、しかし大丈夫ですかと、そうはおっしゃるが本当に債務超過じゃないんでしょうねと、これは当然そういうやりとりはございますと思いますね。それで大蔵省は、大臣が言われたように、まず債務超過ではないと思っているということを今何々書というようなことで答えているようでございますね。
 しかし、各行が、そうはいっても一遍やっぱり検査をしてもらわないとわからぬじゃないかというお話は恐らく当然あって、それで大蔵省の検査が四月十六日に始まっております。
 それは、最終的には九月十日までかかるわけですが、その検査の途中で先ほどお話しのいろんな数字があって、それは想像いたしますと、検査部の人間と銀行の当局者は毎日毎日やりとりしておりますから、銀行がどのぐらいの不良債務を、検査官が見ているかということは、これはお互い同士ですから、やりとりするのは、第三者ではございません。そういう心証があって、どうも多分七千億ぐらいだなということを、恐らく上にも当然報告していると思いますね。それで東郷さんは、あちこちから聞かれますから、大丈夫なんだろうねと。いろいろ自分の受けた心証では七千億ぐらいだと思うなということを言っておられるし、日本銀行にもそういう報告をしておられる。
 きのうの参考人のお話を聞きますと、そのことは銀行局長の耳にも入っていて、銀行局長は、そういうことは自分は否定も肯定もしないという立場をとり続けられるわけでございます。そういうことの中で、きのうもございましたと思いますが、七千億であっても、あるいは最終的にはこれは一兆一千二百十二億になりますが、それでも債務超過でないということを関係者はみんな思っておりますものですから、したがってどっちの数字であれ債務超過になることはない、こういうことに考えて一切のことが動いておったのではないか。
 したがって、東郷頭取もそういう気持ちで、ただ恐らくこの銀行側の七千億という考え方と大蔵省の検査官の一兆一千億との間の差は、御承知のようにこれは銀行がコントロールできる部分である。したがって、銀行は低い方の話をしておられたし、大蔵省の銀行局も債務超過ではないと、こう思っている。
 それが、最後に、あの翌年の三月の佐々波委員会まで続いておりまして、大蔵大臣が、佐々波委員会に出席される前に佐々波委員会の方からいろいろラインシートが来ているので大蔵省で子細に調べてもらいたいということがあって、これはもう大変徹夜をして調べたりして、そしてここは想像なんですが、大臣に対しては、やっぱり債務超過というようなことは別に出ておりませんから、ただ非常に査定が甘いのでここのところはよく佐々波委員会に言っていただきたいということを大臣に申し上げた。大臣はそれを言われて、佐々波委員会は再度東郷頭取に大丈夫かねという念を押されたと。
 ここまでが全部債務超過じゃないという意識で動いておるというふうに私は思うわけでございます。

○福山哲郎君 大変丁寧にお答えいただき、ありがとうございます。
 もう一度日野長官にお伺いします。
 根拠は何ですか。いたし方なかったのはいいですが、それでは債務超過ではないと言った根拠は何ですか。

○政府委員(日野正晴君) ただいまの御質問は、佐々波委員会の前の段階……

○福山哲郎君 前です。五月の時点です。確認書の中で。

○政府委員(日野正晴君) 五月の時点でございますね。これは、三月の時点で自己査定をして、そのとき監査法人やあるいは公認会計士に見ていただきまして債務超過ではないということになったわけです。それが三月から五月にかけてのことだと思います。
 それからもう一つは、検査が終わった後のこともそうなんですが、これは九月の中間決算に当然反映しなければならないわけですが、このときも監査法人にお願いしてそれを見ていただいたところ、会計原則に従って引当償却をした結果、やはりまだ債務超過にはなっていなかったというところではなかったかと思います。

○福山哲郎君 わかりました。
 がらっと変えます。
 日野長官、その年の日債銀の株主総会はいつでしたか。

○政府委員(日野正晴君) 株主総会は、六月二十七日に定時株主総会として開かれております。

○福山哲郎君 先ほど日野長官が、日債銀でいろいろな事情があって聞かれたので、債務超過ではない、七千億だということをひとり歩きさせたとおっしゃいましたが、その特別な事情というのは何ですか。

○政府委員(日野正晴君) 確認書と一口に申し上げますが、そのやりとりをした理由も、ちょうど五月から六月にかけてなんですが、それぞれの御要請先、金融機関にはそれぞれの個別の事情がございますので、どういった事情がおありかもよくわかりませんが、株主総会において、これは増資そのもの、出資そのものを別に株主総会で議決していただくわけではありませんけれども、例えば優先株の枠が非常に狭いために優先株引き受けのための枠を広げていただくということなどの関係もありまして、日債銀としていろいろお願いしたということではなかったかなと思います。

○福山哲郎君 もう一つお伺いします。
 長官は、衆議院の予算委員会等で示達書の数字について聞かれたときに、一兆一千二百十二億については答えられていますが、もう一つ、両論併記をされたという七千億については全然御答弁をされなかった。これは何で御答弁をされなかったんですか。

○政府委員(日野正晴君) 示達書そのものは、これは大蔵省の官房金融検査部長と銀行局長と国際金融局長の三名の連名で日債銀あてになされておりますが、その中にはその数字は出てまいりません。
 今なぜ両論併記という問題が生じてきたかということは、実は示達書の中に、詳しいことはこの示達書の中には書いていないんですが、なお書きといたしまして、検査報告書を参照されたいとあるわけです。
 この検査報告書というのは、検査官が検査の結果を自分の直属の上司である検査部長に対して報告するために報告書としてつくられるものなわけです。その検査の過程でいろいろディスカッションをいたしまして、日債銀が自分のコントロールにある関連会社は自分がつぶさない限りは大丈夫なんだという主張をしておりますので、その主張の金額はこのくらいありますよというふうに金額を書いてあるわけです。それが四千幾らです。その数字を一兆一千幾らから引くと六千三百幾らになるわけですね。その六千三百幾らというものを一兆一千の上に小さい字で括弧して書いてあるということなんです。
 示達書そのものには全然出てまいりません、その数字は。検査報告書を見ることによって初めて、ああ、検査官が上司に対して報告したときには自分たちの主張をそういう形で上司に報告したんだなということがわかるようになっているわけです。つまりは、日債銀の主張はあくまでもこうでありましたということを上司に報告するために、念のため一兆一千の上に六千三百という数字を書いて、なぜ六千三百になるのかというと、四千三百幾らは自分が倒さない限りは大丈夫な金額だ、こういうふうに書いてあるわけでございます。

○福山哲郎君 ということは、示達書には両論併記はされていないわけですね。

○政府委員(日野正晴君) されておりません。

○福山哲郎君 そこまで詳しく言われるんだったら、この委員会にその示達書を見せていただきたい。出していただけませんか。

○政府委員(日野正晴君) 個別の金融機関のことに関しましては、従来からこれを公表したりあるいは御提出したりすることは差し控えさせていただいておりますので、それにのっとってやりたいと思います。

○福山哲郎君 あれだけ答弁されていて何で出せないんですか。個別の銀行のことじゃないですか。

○政府委員(日野正晴君) 個別の銀行のこととおっしゃいますが、少なくとも私どもは、日債銀が特別公的管理になりまして、いわゆる破綻銀行になった時点で最大限、つまりどうしてこういうふうに破綻したかということは計数でもって検査の結果、金融監督庁の検査のみならず、大蔵省が平成九年に行いました検査の結果も公表していることでおわかりいただけるものと存じます。

○福山哲郎君 先ほども確認書は各社ばらばらだとおっしゃいましたね、それぞればらばらだと。何でばらばらなんですか。

○政府委員(日野正晴君) いろいろそれぞれの会社に御事情があろうかと思います。それで、確認書というタイトルのところもございますし、それから応接録というところもございますし、それから確認メモといったようなところもございますし、本当に区々でございます。
 したがいまして、表題のみならず内容もそうでございますし、それから日にちも違います。いろんな意味で違うということでございます。

○福山哲郎君 この確認書もこの委員会に出していただけませんか。

○政府委員(日野正晴君) これは、双方が交換したものでございまして、私どもの方だけで判断するということはできない、それぞれの個別の銀行に何かいろいろ御事情があってこういったものを必要とされたものと思います。それぞれの銀行の実は名前を申し上げることもやはり差し控えなければならないというふうに私どもは考えているところでございます。

○福山哲郎君 これは資料請求をお願いしたいと思います。

○委員長(倉田寛之君) ただいまの福山君の要求につきましては、その取り扱いを後刻理事会で協議することといたします。

○福山哲郎君 もう一度確認させてください。
 示達書には両論は併記されていなくて、一兆一千二百十二億円だけだったんですね。

○政府委員(日野正晴君) もう一度繰り返して申し上げます。
 日債銀に対する平成九年四月を基準日とし、同年九月に示達した大蔵省検査結果におきましては、第V分類額は一兆一千二百十二億円でございまして、第V分類の数字が両論併記されているわけではございません。

○福山哲郎君 第V分類が両論併記ではなくて、それ以外、もう一個、先ほど四千億円、注みたいな形であるとおっしゃっていたのをもう一度教えてください。

○政府委員(日野正晴君) それも併記されておりません。検査報告書の方には注という形で書かれております。

○福山哲郎君 検査報告書というのは、どこからどこへ出すものですか。

○政府委員(日野正晴君) その検査を担当した検査官、複数いるはずですが、その複数名がその直属の部長である当時の金融検査部長に対してあてた報告書でございます。

○福山哲郎君 検査部長にあてた数字。何か頭が整理できなくなってきましたね。何かごまかされているような気がしているんですけれども。
 では、もう一個お伺いします。
 そうすると、日債銀の検査から、日野長官、検査部が出てこられたのはいつですか。

○政府委員(日野正晴君) 立ち入り終了という御趣旨だと思いますが、平成九年の七月四日ということになっております。

○福山哲郎君 七月四日から九月十一日の示達書の通達まで、それだけ時間がかかった理由は何ですか。

○政府委員(日野正晴君) 検査が終了いたしましても、やはり帰ってきまして数字を突き合わせる、それから資産の内容に問題がある場合にはそれをどういうふうに分けるかといったこととか、部内でいろいろ検討した上でということになりますので、確かに二カ月ぐらいの余裕、間はございましたけれども、そのぐらいの日数はこのぐらい大きな銀行になりますとあるのかなと思います。

○福山哲郎君 その間に日債銀と大蔵省の間にやりとりがあるわけですね。

○政府委員(五味廣文君) 個々具体の場合にどうであったかはちょっと御遠慮させていただかないといけませんが、一般論として、金融検査に入りまして立ち入りが終了いたしまして、今度バックオフィスの方の審査に入るわけでございます。そこで、検査官が調べてまいりました内容あるいは検査官の見解、こういうものが法令解釈に誤りがないかどうか、あるいは先方の銀行なり監査法人との主張でやりとりがあった場合に、どちらの主張がどういう根拠を持っているか、こういうことをチェックしてまいりますのと、それから数字自体の誤りがないかどうかやってまいります。
 その過程で、銀行側の見解をもう一度確認する必要があるとか、あるいは監査法人の意見をもう一度聞く必要があるとか、こういうことは起こり得るわけでございまして、一般論として申しますと、バックオフィスの審査に入りましてから後も銀行と連絡をとり合うことはございます。

○福山哲郎君 その連絡をとり合う議事録というのは用意されているんですか。

○政府委員(五味廣文君) 失礼ですが、議事録と……

○福山哲郎君 そのお互いのやりとりに対しての、何か残っているんですか。

○政府委員(五味廣文君) 内部的な覚えとして、例えばみんなで議論するときに紙に落とした方がわかりやすければそういたしますが、特段一々のやりとりを記録として残さなければいけないという手続は特にございません。

○福山哲郎君 ちょっと僕も頭を整理しなければいけないので、次の集中のときにまたあれですけれども、基本的には三月の時点で四千七百億円だという第V分類だった。それが五月の時点では七千億円になった。ところが、検査部から出てきた数字では一兆一千二百億円。三つがどんどんどんどん上がってきた。これはまずいということで両論併記をしたのではないか。その両論併記のための根拠として、先ほど言われた四千億が検査報告にあったのではないかなというふうに思っておりまして、今後また詰めさせていただきたいというふうに思います。
 次に、ダイオキシンの問題に行かせていただきたいというふうに思います。
 話が全然変わって恐縮でございますが、まずダイオキシンについて、総理にお伺いします。
 二十四日に関係閣僚会議の初会合を開かれて、早速動かれたことに対しては大変評価をしておりますが、実はダイオキシンというのは、八四年に日本でも専門家会議をつくりまして、百ピコグラムというガイドラインを制定しました。でも、この十年間、TDIを何も制定せずに、ある意味で言うとほったらかしだったわけです。この時期に急にダイオキシンという形で関係閣僚会議の初会合を開かれたということで、私は対策としては非常に対応がおくれたという認識があるんですが、総理はどのようにお考えですか。

○国務大臣(小渕恵三君) そうおっしゃられればそういうことかもしれませんが、諸外国におきましていろいろ基準その他につきまして数字が出ておりました。ダイオキシンの問題につきましては、かねて来議論がされ、御指摘もいただいておりましたが、昨今、特にこの問題に対して国民の間に不安感その他大変大きなものになっておりまして、私自身も施政方針演説で安全へのかけ橋ということの中でダイオキシンを改めて取り上げさせていただきました。
 そういった意味で、各省庁間におきまして基準のとり方その他が必ずしも一定でないということでありましたので、あえて政府全体としてもう一度お互い確認し合うと。厚生省あるいは環境庁、農水省その他関係の省庁で十分連絡をし、話し合っていかなければならないという、そうした状況にかんがみまして、あえて、おくればせであると言われればそうかもしれませんけれども、こうした閣僚会議を設置して真剣に取り組んでいかなきゃならない、こういったことで閣僚会議を開かせていただきまして、数点の問題につきまして内閣として取り組んでいくということに決定した次第でございます。

○福山哲郎君 国民の不安はピークに達していると思いますので、ぜひ積極的に取り組んでいただきたいと思います。

 では、次に環境庁長官と厚生大臣にお伺いします。

 九五年と九六年に両官庁からピコグラム、今お手元にお配りしましたように、(図表掲示)五ピコグラムが環境庁、十ピコグラムが厚生省という形の対策の値が出たんですが、これに関して、なぜこの数字のずれがあったのか、御答弁願います。

○国務大臣(宮下創平君) 厚生省の方が先に発表いたしておりますのでちょっと申し上げさせていただきますが、耐容一日摂取量、TDIでございますが、これは委員御承知のとおり、健康影響の観点から、ある物質を一生涯とり続けても許される体重一キログラム当たりの一日の量でございます。
 これは、種々安全性の基準として科学的知見、評価をし、解析の上設定さるべきものでございますが、厚生省ではダイオキシンのリスクアセスメントに関する研究班というのを設けまして、そして平成八年六月に、健康影響の観点から、この体重一キログラム当たり一日十ピコグラムと今申しましたTDIを提案申し上げました。この値は、当時の科学的知見等に基づきまして、動物実験等で得られた結果から総合的に判断をして算定したものでございます。
 これに対しては、後で環境庁長官の方から御答弁があろうかと思いますけれども、私どもの理解するところでは、環境庁の検討会が報告いたしました健康リスク評価基準五ピコグラム・キログラム当たりは、環境行政におきましてダイオキシン類に関する環境保全対策を講ずるための目安として設置されたものと私どもは承知しております。環境庁の報告によりますと、健康リスク評価指針値は、人の健康を維持するための許容量を意味するものではなく、より積極的に維持されることが望ましい水準として設定されたものと理解をしておりまして、厚生省とのねらいの違いがございます。
 一方、昨年の五月にWHOの専門家会合が開催されまして、ダイオキシン類のTDIにつきまして、それまでの十ピコグラム・キログラム当たりを見直しまして、当面の許容量を四ピコグラム・キログラム当たり、究極の目標、これはアルティメットゴールと言っておりますが、究極の目標を一ピコグラム・キログラム当たりとされました。
 しかし、この四ピコグラムと一ピコグラムとの相違点につきましては、ちょっと英語の点で恐縮ですが、この四というのはWHOではマキシマル・トレラブル・インテーク・オン・ザ・プロビジョナル・ベーシス、こうなっておるんです。つまり、あるべき最大の耐容許容量というようになっています。そして、一ピコグラムの方はアルティメットゴールですから、これはさっき翻訳の問題ございましたが、我々としては究極の目標、あるべき目標、望ましい目標というように理解をしております。
 そういうことで、厚生省として、この点は昨年の五月に専門家会合が開催されて提示はされましたけれども、それを裏づける詳細なデータ等が得られませんでした。したがって、ことしの一月にそれが入手できましたので、今環境庁と合同で専門家会議を開催いたしまして、TDI見直しを早急に行うべくワーキンググループをつくっておるところでございます。
 そこで、所沢等の問題もこれあり、問題の緊要性にかんがみまして、総理大臣が先ほど仰せられたように、ダイオキシン対策閣僚会議を決めまして、その主要な問題としては、十と五の統一をいたしませんと国民の間に二つのスタンダードがあるというような誤解を与えておりますので、私どもとしてはきちっとしたものをつくろう、こういうことになった次第でございます。

○国務大臣(真鍋賢二君) 今、厚生大臣から環境庁と厚生省の違いにも触れていただいたところであります。環境庁としては、人の健康を確保するために、より積極的に維持されることが望ましい水準として、体重一キログラム当たり五ピコグラムということにいたしたわけでありまして、先ほど厚生大臣からお話がございました許容限度量のTDIとの差異が出たものと思っておるところであります。
 先生御案内のように、WHOでも平成二年には十という数字が出ておったわけでありますけれども、昨年五月に一から四という数字が出たわけであります。公明党さんから出ておる数値も一という数字が出ておるようでございますけれども、これからの議論を深めていかなければならないわけであります。
 先ほどお話がございましたように、厚生省と環境庁の間で専門家会議を開いて、その数値の的確なものを出していきたいということでございまして、その結論を待って整合性を図っていこうと思っておるところであります。いろいろ問題があろうと思いますけれども、御意見をいただきながら数値を決定させていただきたいと思っておるところです。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 実は民主党も先日、法律を出させていただきました。ダイオキシンの問題というのは、大変実はややこしくてわかりにくいんです。国民の皆さんもわかりにくい。中川大臣が言われましたように、ダイオキシンについては食品農作物に対して数値基準がなくて、公表すると風評被害になりかねないというふうに大臣がおっしゃられましたけれども、僕もそのとおりで、要は全然わからないわけです。
 これを見ていただいてもわかりますように、五ピコと十ピコで、環境庁と厚生省がばらばら。それで、ピコグラムという数値の単位すらわかりにくいわけです。これは実は一グラムの一兆分の一なんですけれども、要は一体どんなものか僕らの感覚ではわからない。そうすると、安全基準がはっきりないと、大臣言われたとおり、例えば〇・〇一だから安全だとか〇・五だから安全だとか三だから危ないとか言われても、実感としては、ピコグラムという数値自体が国民にはないわけですから、ゼロなら正直言ってみんな安心だと思いますが、それが〇・一であっても二ピコでも不安さは変わらないわけです。そういった意味での安全基準の設定が早く要る。
 私ども民主党の法案もすべてこれが一〇〇%というわけではないし、公明党さんからも大変いい法案が出ているわけで、この表を見ていただいても、現在の対策では、まず数値が不統一である、それから環境基準がないですから、一体どこなら安全だということが国民に伝わらない、それから数字がややこしい、それから排出基準も不十分だ、食品に対する基準も全くなくて、ましてや土壌についての法律も全然ないわけです。つまり、国民の不安がそういった点でピークに達していると思っておりまして、こういった面の食品の安全基準等をつくられることに対して、中川大臣はどのようにお考えでしょうか。

○国務大臣(中川昭一君) 私も、ピコという単位が一兆分の一というのがなかなかぴんとこなくて、百メートル掛ける百メートル掛ける百メートルの水槽の中に一グラムのものを垂らしたのが一ピコだというふうに頭の中で今整理をしておるところでありますが、我々も、特に農林水産という食料について、安全性について責任があるわけでございまして、もちろんダイオキシンについて数値が少なければ少ないほどいいわけでありますけれども、食品ごとにどこまでが安全かということを調べることは技術的にも不可能でありますし、多分余り意味のないことではないかというふうに考えます。
 農林省は、十一年度から三年間、毎年できるだけ多くの地域で農作物関係のダイオキシンの調査をやることにしておりますし、緊急で現在三省庁で所沢を中心にやっておる最中でありますけれども、その時点でどこどこ地方の何々という農作物のダイオキシン濃度が何ピコだったということと、自分がそのものを食べるときにはまた数字が変わっている可能性もあります。
 それから、所沢では誤報によってホウレンソウが大変な被害を受けたわけでありますけれども、あのときでも、ホウレンソウを一日七束ずつ何十年食べないと安全基準を超えないというような数字を厚生省の方から我々は入手していたわけでございまして、何十年間ホウレンソウだけ食べる人というのは多分恐らくいないと思います。
 そういう意味で、御飯あるいはいろんな農作物をそれぞれの好みによって食べるわけでございますので、毎年できるだけ綿密な、特定の地域のいつ時点でのどういう農作物についてはこのぐらいの数字でしたと、これが高ければ大変だということになりますし、低ければ低いということがいいとは思いますけれども、それをどういうふうにしていくかということについては余り意味がない。個別に少ないということが確認できればいいわけであります。
 それよりも、先ほど厚生大臣、環境庁長官が答弁されたように、耐容一日摂取量、いわゆるTDIの基準を早急につくっていただくことが国民的な安心の前提になると私は考えております。

○福山哲郎君 私も、食品一つ一つに安全基準をやって、魔女狩りのようにこれがだめだ、これがだめだというふうに言っていくのはいいとは思わないし、現実的に可能だとも思っていません。
 しかし、何らかの形でこれは安全だというような基準が要るわけでして、TDIを設定しただけではなくて、その次の段階に至らないことには、さらに安全性の確保というか国民に対する安心感を与えられないというふうに思っておりまして、そこら辺で、大気、水質、土壌についての環境基準、例えば環境庁と厚生省さんが今回関係閣僚会議でTDIを定めた後、そこから落ちていく大気、水質、土壌に対する環境基準等の設置については、環境庁長官と厚生大臣はどのようにお考えですか。

○国務大臣(宮下創平君) ダイオキシンにつきましては大体食品から摂取されることが非常に多いわけで、九割方食品から入ってまいりますので、あとは大気中からも若干入りますが、ほとんど食品からでございます。私どもは食品衛生の立場から、国民栄養調査というのがございまして、一日当たりトータルダイエットの量を調査いたしまして、十四のグルーピングをいたしまして、野菜とか魚とか肉とか米、ずっと十四品目に分けまして、それぞれについて、一品一品の食品はもう大変なことになりますから、今、委員のおっしゃったようにできませんが、グルーピングしたものについての、しかも加工して食べることが多いですから、そういう状況を調査いたしまして、そしてそのテーブルをつくって、これは既に平成九年につくりまして発表しております。
 それによりますと、詳細は省かせていただきますが、全体として食品の摂取量は二千十七グラムでございます。そして、それをそれぞれの品目別にダイオキシン及びコプラナーPCBも含めましていろいろ調査をするわけですが、今のところ私どもとしては二・四一という数値がございます。したがって、二・四一というのは、今度WHOが指摘されました四以下になっておりますので、例えば所沢の野菜の問題にしても、これを煮沸して私どもが摂取した場合に〇・〇幾つの話になるわけです。したがって、全体として二・四一が若干二・四三になるとか四二になるとかいうレベルの話でございますから、私どもとしては当初から大体安全性には問題ないんじゃないかなというように考えておりました。
 なお、この問題のこういうやり方についても、今後さらに調査の種類をふやしたり、そしてより精密なものにしていく検討は必要かと思いますが、そういうアプローチをさせていただいております。ダイオキシンは食品から入るという点が非常に多いということを申し上げさせていただきました。

○国務大臣(真鍋賢二君) コプラナーPCBの問題も含めてでございましょうか。
 この問題につきましては、WHOとかアメリカ関係では数値のとり方が違ってまいっておると思うところであります。日本は一以下のものはゼロというような換算をしておるわけでありますから、そういう点ではこのコプラナーPCBをどういうふうに扱っていったらいいのか、それも今検討中でございますけれども、コプラナーPCBもPCBの一種でありますから、ダイオキシン類と類似した毒性を持つ化学物質であるというふうに位置づけて、これからの専門家会議で検討を急いでいただいておるところであります。

○福山哲郎君 とにかくこの件に関しては一刻も早く対策を講じていただきたいと思いますし、TDIの見直しだけに限らず、環境基準等の問題も含めて実は環境庁長官にそのお答えをいただいていなかったんですが、コプラナーPCBの話をまだ質問していなかったんですけれども前向きに御検討いただくということで、環境基準について今どう考えているか、お答えください。

○国務大臣(真鍋賢二君) 先ほど先生にPCBの件でございませんでしょうかという再質問をさせていただいたわけでありますけれども、これはもう厚生大臣が大方のことをお答えになりましたのでいかがなものかと思って答弁をおくらせていただいたわけであります。
 環境基準の設定については、新しいTDIが設定できれば当然それをもとにして検討すべきものと考えております。環境基準の設定のためには、このTDIに加えて先ほど先生おっしゃいました大気、水及び土壌のそれぞれの媒体からダイオキシン類が人の体内に至る経路、それから生物濃縮度の科学的知見が必要ですが、これはまだ十分ではありません。このために、環境中でのダイオキシン類の実態を把握すべく、現在全国で四百カ所の大気、水質、土壌、底質、水生生物等について調査を進めておるところであります。
 今後、引き続きまして科学的知見の集積に努めて、所要のデータがそろってから順次環境基準の設定について検討を進めてまいろう、こう思っておるところであります。

○福山哲郎君 ぜひ早急によろしくお願い申し上げます。
 さらに環境庁長官にお尋ねをします。
 環境庁長官は御就任以来、環境保全が課題とされている地域を精力的に御視察をされておられますし、私もこの間申し上げましたがアルゼンチンのCOP4で御一緒させていただきましたし、昨年の十月には長官が名古屋の藤前干潟を視察しまして、十二月に、すばらしい干潟であり消滅や破壊には特別厳しく対応したいと保全の姿勢を明確にされまして、それを受けて今月十日、名古屋市は免許申請を取り下げ、干潟は守られることになりました。大変な環境庁長官の御勇断だと思いますが、そのことについての御感想をお願いします。

○国務大臣(真鍋賢二君) 環境庁がどうのこうのというわけではございませんでしたが、たまたま藤前干潟の消滅を考え、そしてまたその地が名古屋市のごみの捨て場になるというふうなことを目の当たりに見まして、ごみの捨て場だったらまだほかにあるんじゃないだろうかということで、干潟は一たん消滅するとなかなかもとに戻るのは不可能であると。代償措置として人工干潟も検討されておりましたけれども、専門家の意見を聞きましても、干潟が消滅するとなかなか人工干潟では代償措置としての役目は果たしませんよというお話であったわけであります。そういうところに焦点を当てながら、地元の御協力をちょうだいしまして、あのような結果が生まれたわけであります。
 まして、環境行政が今大変問われておるところでありまして、特に愛知県におきましては、瀬戸市におきまして二〇〇五年には環境博覧会が、万博が開催されることになっておりまして、あれやこれやのことに思いをいたしながら、環境庁としての意見を、アセスメント前でございましたけれども、出させていただいたわけであります。愛知県や名古屋市の御協力をいただきまして干潟が残されたということは御同慶にたえないと思っておるわけであります。こういうことにつきまして国民的な御理解がいただければありがたいと思っておるところでございます。

○福山哲郎君 さらに今月十五日、長官は、藤前同様貴重な干潟が残る千葉県の三番瀬を視察されたと伺っております。さらには、和歌山県で雑賀崎という場所の沖合を埋め立て、新しい港を建設する計画があります。
 長官は今月二十日にこの和歌山の雑賀崎沖も視察をされたようですが、視察の感想をお聞かせください。

○国務大臣(真鍋賢二君) 私は、かねてから百聞は一見にしかずということで、やはり持論は、その現地の視察によって裏づけされなければならないという哲学を持っておるわけであります。
 その面に沿いまして、三番瀬の干潟が今問題になっておるということで、先般も千葉県の手賀沼の視察をさせていただいたわけでありますけれども、そこで沼田知事さんとお目にかかりまして、干潟の重要性について議論を深めたわけであります。
 三番瀬の問題につきましても、もはや私の前任者の間で随分話も進められておったようでございますけれども、何はともあれ現場を見せていただきたいということで三番瀬や雑賀崎のところを見せていただいたわけでありますけれども、見た感じでは、やはり美しい環境というものはできるだけ保全していかなければならないという気持ちでいっぱいでございました。
 しかしながら、千葉県におきましても、大変いろんな問題に関心を寄せていただきまして、環境庁の意にも沿うような努力をしていただいておるわけでありまして、十分話し合いの上にこの問題の処理に当たっていこうと思っておるところであります。
 雑賀崎地区の灯台や庭園からもあの周囲を見させていただきましたけれども、瀬戸内海の国立公園にふさわしい景勝の地であるという認識を新たにいたしまして、従来から進めておりますこの埋立地の問題につきまして環境庁の意見を申しておりますけれども、なお一層の御協力をいただきたいと思っておるところであります。

○福山哲郎君 ありがとうございます。
 では、最後にあと二、三問させていただいて終わりにしたいと思います。
 このたび、輸銀とOECFが統合され、新たに国際協力銀行が設置されようとしています。これが実現をすると、出融資承認額で約三兆円という巨大な公的金融機関が誕生します。これは、日本がODAも含めて各国に対して資金援助をすることに対して大変国益上重要な機関になるというふうに私は思っておりまして、この存在はこれから先本当に重要だと思っておるんですが、外務大臣に当たり前のようなことをお伺いして恐縮ですが、ODAの基本原則についてお聞かせいただければと思います。

○国務大臣(高村正彦君) 政府は、援助に対する内外の理解を深め、幅広い支持を得るため、平成四年、我が国の援助の基本理念、原則等を示す政府開発援助大綱、ODA大綱を閣議決定いたしました。
 ODA大綱は、援助の基本理念として、人道的配慮、国際社会の相互依存性の認識、環境の保全、自助努力の支援を示しております。また、その原則において、国際連合憲章の諸原則、環境と開発の両立、国際社会の平和と安定、民主主義、市場経済化、基本的人権の保障等を挙げ、二国間関係等とともに総合的に判断の上、援助を行っていくべきとしております。
 政府としては、このようなODA大綱にのっとり、援助を一層効率的、効果的に行ってまいります。

○福山哲郎君 この原則は、基本的にOECFを中心に今まで業務としてやられてこられたわけですが、今回、輸銀と合併をすることになります。輸銀の中ではこういった原則はあるんでしょうか。大蔵大臣になるんでしょうか。経企庁長官ですか。よろしくお願いします。

○国務大臣(堺屋太一君) このたび、輸銀と経済協力基金が合併になりまして国際協力銀行になります。現在、経済協力基金の方では一定の環境基準を持っております。輸銀の方は、内規ではあるようでございますが、その点まだ明確に外部に発表したことにはなっておりません。
 したがいまして、両方が合わさりましたならば共通のガイドラインを作成していきたい、そういうぐあいに考えております。これは、一方はODAで一方は民間の貿易関係ということで、考え方は同じでございますが扱いが少し変わっておりますので、今度合併したときに合わせたいというふうに思っております。

○福山哲郎君 もう御答弁いただいたのでありがたい話なんですが、OECFは環境配慮のためのOECFガイドラインというのをしっかりつくられておられまして、私としては、輸銀が合併をするに当たりまして、別々にガイドラインを持っているのはいかにも合併をしておかしいので、ぜひ統一のガイドラインをおくつりいただきたいということをお願いしようと思ったら、今もう長官にお答えをいただいたので、それは前向きに検討されるということでよろしいわけですね。

○国務大臣(宮澤喜一君) 問題は輸銀の方にあるわけでございますから、なるべく一緒にやるように、片方は信用機関ですし片方は開発援助機関ですから、それは違うところはあるでしょうけれども、一緒のところはなるべく一緒にやるように輸銀の方にも申してございます。

○福山哲郎君 大変前向きな御答弁をいただいてありがとうございます。
 特に、環境と開発という先ほど外務大臣が言われたところに関しては、九七年六月のデンバー・サミットでの共同宣言というのがございまして、先進国からの民間資金の流れは、世界全体の持続的な開発に対して重要な影響を有する。各国政府は、インフラ及び設備投資に対する金融支援の際、環境要因を考慮することによって持続可能な慣行の促進を助長しなければならないというふうにデンバー・サミットでうたわれております。
 これについて、日本としては、環境ガイドラインを今回の合併を中心につくっていただくことによって、新しい国際協力銀行の開発理念、それからODAとしての日本の海外への国益も含めて前向きに御検討いただきたいというふうに思っています。
 時間が余ってしまいました。大変長時間にわたって質問をさせていただきましたけれども、これで終わらせていただきます。
 どうも長い間ありがとうございました。