第145国会
参議院 予算委員会 1999年2月26日
○福山哲郎君 民主党・新緑風会の福山哲郎でございます。
きょうは、少しわからないことがたくさんありますので多少失礼なこともあるかと思いますが、質問させていただきたいと思います。
まず、予算委員会の冒頭、我が党の角田委員の方から中村法務大臣に対する適格性について質疑がございました。いろいろな問題について話があったんですが、問題の一月四日の賀詞交換会での話というのは出ていませんでしたので、私はひとつお伺いをしたいと思います。
まず、法務大臣、一月四日の法務省の職員を前にした会で、法務大臣はるるいろいろ述べられた後に、その中で、日本人は連合軍からいただいた、国の交戦権は認めない、自衛もできない、軍隊も持てないような憲法をつくられて、それが改正できないという中でもがいておるという大変な時代に我々は生きているのだと思いますというふうにいろいろ述べられたと報道で言われておりますが、これは間違いないでございますでしょうか。
○国務大臣(中村正三郎君) 御指摘の発言は、そういうことが報道されておりますが、公式の例えばこういう委員会でしゃべるというような場でなかったので一言一句は覚えておりませんが、そういう報道にあるということは、それに近いことを言ったのでないかと思います。
そのことにつきましては、実は申し上げたかったのは、我が国が直面するさまざまな複雑な情勢を、司法制度改革をする、それを強調するためにお話ししたかったというのが真実でありまして、司法制度改革の必要性を強調する余り不適切な点がございましたので、翌日の閣僚懇談会においておわびを申し上げて発言を取り消させていただいた次第でございます。
まことに遺憾に思っておりまして、改めておわびを申し上げます。
○福山哲郎君 自衛権もないと。自衛権はありますよね、外務大臣。自衛権はありますよね、日本には。
○国務大臣(高村正彦君) 自衛権はあると思っております。
○福山哲郎君 自衛権もあります。日本は憲法改正もできるはずです。自衛権があるので自衛隊の方々はPKOも含めて命をかけて頑張られている。それに対してこういう発言をされた法務大臣、どのようにお考えですか。
○国務大臣(中村正三郎君) もちろん、自衛権もございますし、今、外務大臣が言ったように考えております。
○福山哲郎君 改正に対しても憲法九十六条に改正条項がちゃんとあるわけです。これは、ある意味でいうと国民に対する私は冒涜だと思いますが、法務大臣、どう思われますか。
○国務大臣(中村正三郎君) 私がそこで申し上げたかったことは、憲法上の制約があり、いろいろ国際的な貢献ということにも制約があるんだよということを申し上げたくて申し上げたわけでありまして、一言一句記録をとったりするような会でもございませんので、私が申し上げたのはそういう意味でございます。そして、我々は憲法を遵守し擁護していく義務があるという中でお話ししたことでございます。
○福山哲郎君 日本は法治国家であります。そして、その法をつかさどる法務省の大臣が、幾ら賀詞交換会、多少はパーティーのような形なのかもしれませんが、自分たちの仲間にこういうことを言った、その見識というのを大変私は不可思議に思うわけで、この件について、総理はいかがお考えでしょうか。
○国務大臣(小渕恵三君) 一月五日の閣議後の閣僚懇談会におきまして、私から法務大臣に対しましてその発言の真意をただしましたところ、司法制度に関する改革の必要性を強調するために、我が国が直面するさまざまな局面を説明し複雑な世界情勢に言及したかったというのが真意であるが、その改革の必要性を強調する余り表現に適切を欠いた点があったので、おわびして撤回するものであり、小渕内閣の閣僚として、当然のことながら、憲法を尊重、擁護することは当然のことである旨の発言がありましたので、私としてはこれを了承したという経緯でございます。
○福山哲郎君 総理の言われる富国有徳国家は、私も大変賛成です。だからといって、政治家の言葉に対して、撤回をしたから了承したというようなそんなに単純なものでしょうか。政治家の言葉というのは、大変重要な意義もあるし、国民に対する信頼もあるし、そういうことに対して、このような法務大臣を内閣にいていただいていることに対して、総理としてはどうお考えですか。
○国務大臣(小渕恵三君) 政治家のみならず人間の言葉というものは、これは千鈞の重みを持つものだというふうに認識をいたしております。
そういった意味で、言葉が過ぎるというような点があれば、これは反省をして、そうしたことの再びあり得ないようにということを願っておるわけでございます。内容のすべてについて私、逐一速記したものをいただいたわけではありませんが、法務大臣みずから、そういった立場で発言に十分でなかったということであり、かつまたそれを撤回するということでございましたので、私としては、今後のお仕事に最善を尽くしていただきたいという趣旨も込めまして、それを了として今日その責務に当たっていただいておる、こういうことでございます。
○福山哲郎君 最善にお仕事をしていただけるかどうか大変疑義があると思いますが、これでこの質問は終わりたいと思います。
では、次に行きます。
九五年一月、破綻金融機関に対する整理回収業務を担う整理回収銀行というものが設立されました。いわゆる東京協和、安全両信用組合の事業を受け継ぐという形なんです。この整理回収銀行は、四月一日から住専機構と合併をするということになっておりますけれども、九月末現在でのこの整理回収銀行の欠損金は幾らでしょうか、大蔵大臣。
○政府委員(伏屋和彦君) お答え申し上げます。
今、先生が言われました整理回収銀行の昨年九月末の中間決算期における欠損金は、これは既に公表されているところでございますが、約千百億円となっております。
○福山哲郎君 この整理回収銀行も、いわゆる奉加帳形式で千六百億円のお金を民間それから日銀から集めてつくられたものでございます。
今、千百億円欠損金が出ていると言われていますが、では、ことしの三月末では欠損金は幾らの見込みですか。
○政府委員(伏屋和彦君) お答えいたします。
整理回収銀行のことしの三月末の欠損金の見込みにつきましては、現段階ではまだ確たることは申し上げられませんが、今言いました昨年九月時点でのこの整理回収銀行の純資産価格が、これも公表されているわけでございますが、二百八十四億円でございます。先ほどのお話で、この整理回収銀行の資本金は千六百億円でございますから、この純資産価格二百八十四億円を踏まえますと、約千三百億円を超えることになるんではないかと考えております。
○福山哲郎君 欠損金が千三百億円を超えるということですね。三月末で清算をしないと住専機構との合併はできない。この欠損金はどのように埋められるんですか。
○政府委員(伏屋和彦君) 先ほど先生が言われましたのですが、昨年の秋の国会におきまして、与野党の合意の結果、これは法律に定めてございますが、預金保険法の附則と住専法の附則によりまして、まさに住管機構とこの整理回収銀行を合併するということになっているわけでございます。
この法律の合併を実現するためには、今言われました意味で設立される新しい整理回収機構は、実質的に全額国の出資の株式会社とするということでございますので、預金保険機構が日本銀行及び民間金融機関から整理回収銀行の株式を買い取る必要が生じてくるわけでございます。
○福山哲郎君 では、その買い取りの合併の比率はどうなっているんですか。
○政府委員(伏屋和彦君) 両者の合併契約書というのがございまして、四〇対三ということになっております。
○福山哲郎君 つまり、五万円の額面であったものが八千八百七十二円になっているわけですね、整理回収銀行は。それで間違いないですね。
○政府委員(伏屋和彦君) 先生がおっしゃるように、昨年の九月末時点の純資産価格が二百八十四億円でございますので、一株当たりに直しますと、まさに言われた八千八百七十二円となっているところでございます。
○福山哲郎君 実際に資本金は幾ら減るんですか、合併した後。
○政府委員(伏屋和彦君) 先ほど先生の言われました合併比率ともこれは関連があるわけでございますが、結局、昨年の九月末時点の純資産価格二百八十四億円に基づきまして、両者の協議によりまして、この中間決算以後の損益とか資産、負債の変動を見込みまして、新会社の増加資本金は百二十億円ということになります。それが四〇対三の、三の基礎になっていると思います。
○福山哲郎君 ですから、幾らぐらい資本金は減るんですか。大まかでいいです、三月末を迎えていませんから。
○政府委員(伏屋和彦君) 資本金の千六百億円から、九月末では二百八十四億、さらに三月末では百二十億円をベースとしているということでございますので、その差額になるわけでございます。
○福山哲郎君 差額は幾らですか、それは。
○政府委員(伏屋和彦君) 千六百億から百二十億マイナスするわけでございますから……
○福山哲郎君 だから。
○政府委員(伏屋和彦君) 千四百八十億。
○福山哲郎君 千四百八十億円なくなるわけですね。日銀はこれに対して二百億円出資していますが、総裁、日銀は幾らなくなりますか。
○参考人(速水優君) 日本銀行は二百億出資をいたしております。ただいま御説明ございましたように、一株八千八百七十二円を前提として整理回収銀行が時価で買い取ると。いろいろ折衝、交渉もいたしましたけれども、これ以外に方法はないということでございましたので、私どもとしてはこの株を三十五億四千九百万円で売却いたします。売却損は百六十四億五千百万円となります。
この方針は、二月十六日、私どもも政策委員会において議論の結果決定いたしました。預金保険機構に対しては、二月二十二日に本決定に基づいて時価買い取りに応ずる旨を回答いたしました。
○福山哲郎君 つまり、日銀は百六十四億五千何がしかのお金が吹っ飛んだわけですね。これはいわゆる奉加帳方式で、この間、日債銀の八百億円に対して日銀総裁は八百億円毀損したとおっしゃられました。新しい整理回収銀行が合併するに当たりまして、これまた百六十四億飛んでいるわけです。
もう一つお伺いします。
いわゆるほかの各民間金融機関が収益支援契約をしていたと思いますが、その収益支援契約の中で未収金が九末で二百八十三億あったはずですが、この扱いはどうなっていますか。
○政府委員(伏屋和彦君) 今、先生が言われましたように、昨年の国会の与野党の合意、さらには法律に基づいて合併を実現するためには、先ほどからお話しいただいている買い取り等、今言われました収益支援の話がどうしても必要になってくるわけでございまして、今のお話は資産に計上されております。
○福山哲郎君 各民間金融機関は、収益支援をまだこれから合併後も続けると言っているんですか。
○政府委員(伏屋和彦君) 先ほどのように、法律上の整理回収機構を実現するためには、収益支援を継続する必要性は変わるわけではないものでございますので、預金保険機構及び整理回収銀行は民間金融機関に対しまして収益支援の継続の協力を求めているところでございます。
○福山哲郎君 おかしいじゃないですか。東京共同銀行、整理回収銀行の前身が解散をしたときは、民間金融機関はこの契約について解除ができると書いてあるじゃないですか。解除されたら二百八十三億円の未収金は入ってこないんですよ。
○政府委員(伏屋和彦君) 今言われました支援契約書の中にこの条項がございますが、その点についていろいろ考え方がございまして、あくまでもこれは継続をお願いしなければ、資産に計上してあるわけでございますので、そこは継続をお願いしているということでございます。
○福山哲郎君 だって、先ほど言われたじゃないですか。新しい、要は国が出資をした預金保険機構からお金が出ていると。回収銀行は各民間機関が出資しているから収益支援金を出しているわけじゃないですか。預金保険機構が出しているものに対して、何で民間の企業が収益支援を続けなければいけないんですか。合理的な根拠を教えてください。
○政府委員(伏屋和彦君) 繰り返しになって申しわけございませんが、結局与野党の合意のもとで、法律に基づいて全額国の出資の株式会社にして新しく整理回収機構を成り立たせていくためには、既に予定されております収益支援は、これは継続していただかないとその分だけはいわば穴があくという格好になるものですから、これは収益支援の継続をお願いする以外にないと考えております。
○福山哲郎君 これ、拒否されたらどうするんですか。
○政府委員(伏屋和彦君) 先ほどから申し上げておりますように、収益支援の継続は資産項目として計上されているわけでございますから、今、議員が言われますように、仮にそれが打ち切られることになりますと、これは未収金が損失になるわけでございますので、法律に基づいた合併が困難になるという結果になるわけでございます。
○福山哲郎君 十二月に合併契約をするときに入るか入らないかわからない未収金をそのままにしておいて、もし未収金が入らなかったら債務超過じゃないですか。そうしたら、今おっしゃられたように合併できないんですよ。そんな先がわからないことに対して合併契約すること自体おかしいじゃないですか。
○政府委員(伏屋和彦君) 法律に基づいて、これは住管機構と、まさに預金保険法の附則、住専法の附則にもう規定してあるものですから、その合併を実現するためには、合併後の整理回収機構の円滑な運営のためにも、これは民間金融機関に対して収益の支援の継続をお願いする以外にないので、法律を実現するためにこれは必要なお願いでございます。
○福山哲郎君 納得できないんですが、ひとつ日銀総裁にお伺いします。
総裁は、十二月二十二日付で預金保険機構の松田理事長あてに、この回収銀行の出資に対して、信用秩序維持が目的で回収銀行の損失負担を出資者に求めるのは適当ではないという旨の文書を松田理事長に送られましたね。
○参考人(速水優君) 二月二十二日ですか。
○福山哲郎君 十二月二十二日。
○参考人(速水優君) 十二月二十二日。
要請の手紙はいただきましたけれども、それに対していろいろ討議をした結果、これはやむを得ないということで決定しまして、先ほど申し上げたように、二月二十二日に時価買い取りに応ずるということをお答えしました。
○福山哲郎君 総裁は、ではこれは出資者に求めるのは適当ではないけれどもしようがないから渋々認められたんですね。
○参考人(速水優君) 平成六年十二月に経営破綻しました東京協和信用組合それから安全信用組合の受け皿として設立された東京共同銀行、現整理回収銀行に対して、日本銀行及び民間金融機関はそれぞれ二百億円を出資したわけでございます。日本銀行としては、預金保険制度が十分整備されていないもとで信用秩序維持のためにやむを得ない極めて異例の緊急避難措置として出資を行った経緯等を踏まえまして、現在整理回収銀行が抱えている損失について出資者にその負担を求めることは本来必ずしも適当でないと考えております。
こうした考えに基づきまして、預金保険機構に対して、買い取りは時価ではなく額面で行われることが望ましい旨文書により伝達しております。
○福山哲郎君 日銀総裁が適当でないと言われているものに対して、買い取れと無理やり言って、百六十四億も損させたんですか。
大蔵大臣、いかがですか。
○国務大臣(宮澤喜一君) 大変複雑な過去を持っておるケースで、私が十分知っている部分と多少知っておる部分とに分かれますが、結局あのころに御承知のように信用金庫がつぶれましたですね。そのときに、今のようなネットワークがございませんから、東京共同銀行というものをつくって、東京協和、安全及びコスモでしたか、一緒にしました。これはどこからも預金のペイオフを超える制度がございませんから、預金保険機構が面倒を見るわけにいかない。そこで、日銀にも民間からもお金を集めてともかくあの場をしのいで預金者にお金を払った。しかし、それがこの整理回収銀行の負債になってずっと続いておったわけでございますね。
そして、ここから先がちょっと非常に申し上げにくいことになるのですが、いまだに預金保険機構は整理回収銀行を救うという規定が遡及いたしませんから、その救済の方法がない。そうしているうちに、今度整理回収銀行がもう一つのものと一緒になるということに国会の立法で決められたわけでございます。
そして、しかも片方では民間の未収金がある。民間もこれは今さら出すのは本当にたまったものじゃないだろうと私も思うんですけれども、それはアカウントレシーバブルの方にございますから、国会のおっしゃるように合併をいたしまして、そして政府がさっきおっしゃったように五万円ですか、の株を八千幾らとおっしゃいましたね、そういうことで買い取って、しかしやっぱり民間からはそれをいただかないと国会でお決めになりました法律の実行というものができない、そういう立場に政府はあると思います。
これは与野党でいろいろあのときに御承知のように大変複雑な御協議がありまして、大変複雑な御協議でありましたから、本来なら政府が機会を得て、そういう立法をしていただきますと民間からこれをどうしても取らなきゃならないという羽目になりますということを申し上げておくべきだったんだろうと私は今思います。
しかし、それはそういうふうな雰囲気も実際ありませんで、ああいう立法ができてしまいましたから、立法のとおりするとすれば、民間の各行に強く要請をしてひとつお願いできないかと、こう言うしかございませんということを政府委員は丁寧に申し上げようとしているんだと思うんです。非常に困ったことになっております。
○福山哲郎君 よく各大臣の先生方言われるじゃないですか、仮定のことには答えられないと。民間金融機関が支援を続けるかどうか仮定でわからないのに決めちゃったわけでしょう。おかしいじゃないですか。大蔵大臣、おかしいでしょう、これ。
○国務大臣(宮澤喜一君) 決めちゃったというのが、大変申しにくいのですが、政府立法でお願いしたのではなくて、国会の立法でそう決まった経緯ですから、決めちゃったというのは、そうおっしゃいましても、政府委員はなかなかさようでございますと申し上げられないわけで、私、ですからこの程度この場で申し上げますけれども。
○福山哲郎君 とにかくわからないことだらけなんです。いっぱいあるのでちょっと行きます。
日銀総裁にお伺いします。
山一証券に日銀特融を当初一兆二千億円出されたと思いますが、現状どのぐらい日銀に返済が行われていますか。
○参考人(速水優君) 今約五千億残っております。五千億ちょっと割っておりますが、五千億残っております。
○福山哲郎君 残が五千億ですか。
○参考人(速水優君) 貸し出し残高が。
○福山哲郎君 これは、山一が自己破産をしたときのこの残りの五千億の残高はどうなりますか、これも仮定の話なんですけれども。
○参考人(速水優君) 御指摘のとおり、山一証券向けの特融を投資者保護基金が承継するということになっておるわけで、同基金の総会の承認が必要とされるところでございますけれども、日本銀行としては、実際に投資者保護基金を活用する必要が生じた場合にも、関係者の理解と政府の責任によって適切な対応が図られるものではないかと考えております。
○福山哲郎君 では、その総会で否決されたらどうなるんですか。
○参考人(速水優君) それはわかりませんけれども、関係者の理解は十分得られるものというふうに考えております。
○福山哲郎君 ここに山一特融を出したときの総裁談話があるんですよ。信用秩序の維持というみずからに課せられた使命を適切に果たしていくため、臨時異例の措置として日銀法第二十五条に基づき、同社の顧客財産の返還、資金を供給することにした、日本銀行資金の回収に懸念が生じるような事態はないと考えていると言っているわけです。
あるかもしれませんよね。総裁、いかがですか。
○参考人(速水優君) 資産処分、その本件の最終処理を含めまして、寄託証券補償基金の法制化、その他財務基盤の充実、機能の強化等を図り、十全の処理体制を整備すべく適切に対処したいということが大蔵大臣談話で平成九年十一月に、同社廃業が決まったときに発表されております。私どもはそれを信じておるわけでございます。
○福山哲郎君 私が何でこんな細かいことを申し上げているかといいますと、いいですか、回収銀行で百六十何億、日銀が出資をしたものが飛んだんです。今回、日債銀で八百億円飛んだんです。日銀特融は出資ではないから性格は違うかもしれないけれども、五千億円飛ぶかもしれないんです。
いいですか。信用秩序という打ち出の小づちがあって、この打ち出の小づちを大蔵省が振ったら、民間金融機関も日銀もみんなお金を出して、それで気がついたらこれだけ飛んでいっているわけです。
私が言っているのは、信用秩序の維持は大事だと思いますが、中央銀行としての日銀の権威とか威信とか、海外マーケットの日本の中央銀行に対する信頼というのはどうなるんですか、総裁。私は、総裁はお気の毒だと実は思っているんです。
○国務大臣(宮澤喜一君) それはむしろ大蔵大臣がお答えすべきことかもしれないと思います。
と申しますのは、昨年の国会でいわゆるセーフティーネットをつくっていただきました。預金保険機構もございますし、政府も六十兆の出資をいたしまして、これでまずこういう場合の仕組みがおかげでできたわけですけれども、その以前には、二つの信用組合のときのように、何ともする方法がない、ペイオフの例の預金保証すらないわけでございますから、そういう預金者に対する手当てと、それから日債銀のときもそうだと思います、山一も業種は違いますが似ていると思いますが、一種の信用恐慌が起こりましたときにそれに対応する方法を欠いておったわけでございます、我が国の経済が。それが護送船団の罪であったろうとおっしゃれば私は否定いたしません。
やっぱり世話しながら何とかそれは済ませていこうと考えていて、いろんな事情がございましたが、それがいろいろ済まなくなってきたところで国会が立法をしていただいたわけですが、その前には、日債銀のときもそうでございますが、日銀がどうしてあそこで八百億円出したと。新しい勘定から政策委員会を開いて出されたわけですが、そうでないとほかの銀行にも協力をしてもらえないということが現実にあったんだと思いますね。それは奉加帳ということでまことにいかぬことでございます、今から考えれば。しかし、それ以外にやる方法がなかった。
ですから、日本銀行も好きでおやりになったんでないことはまことにはっきりしておりまして、日債銀のときは、ですから大蔵大臣がわざわざ談話を出されて日銀に協力を要請したと言っておられますように、日銀は内部手続はきちっとしておられますけれども、しかし大蔵大臣の要請であるとか全体の金融秩序の維持であるとかいうことで、言ってみれば心ならずもなさって、それがうまくいきましたらこういうことになりませんでしたが、不幸にしてうまくいきませんでしたので、一体出した金はどうなるのかということになった。
つまり、セーフティーネットがありませんでしたから、大蔵省がいわば音頭をとって日銀にもお願いをし、民間にもお願いをして金を出してもらって、何とかここは乗り切ろうといたしましたその乗り切りが成功いたしませんでしたので、あちこちに御迷惑をかけるようになった。それはまことに音頭をとった者に私は責任があると思います。過失や故意はなかったと思いますが、しかし結果責任はあると思いますが、それはセーフティーネットができなかった時代における、いわばそれ以外に方法のなかった処置であったのではないか、こういうふうに考えます。
○福山哲郎君 方法がなかった、だから日銀にもお願いをした、民間にもお願いをした、結果として失敗しましたと。そのお金が八百億、百六十億、五千億円です、大蔵大臣。確かにそれは一理あるかもしれない。でも、結果責任として、行政に過失責任があるかどうかわからないけれども、責任がありまして申しわけありませんと、それで済むことですか、大蔵大臣。
○国務大臣(宮澤喜一君) そういう反省のもとに、大蔵省の行政というものは非常に批判をされましたし、また多少同じ関連もあって関係者がいろいろ処罰を受けたりいたしました。
その中で、そういう金融に関する権限を大蔵省が持っているのは適当でないという国会の御判断もいろいろ御議論になっているというようなことで、そのような行政のあり方が批判を受け、罰せられたというふうに私は反省をいたしております。
○福山哲郎君 日銀総裁、これだけ財務内容が悪くなっている状況と中央銀行としての威信、海外のマーケットそして国内のマーケットに対する信用低下に対してどのような見解をお持ちですか。
○参考人(速水優君) 日本銀行は、金融システム問題に対応するために信用秩序の維持という意味で、いわゆるレンダー・オブ・ラスト・リゾートと通常言われておりますが、最後の貸し手としての任務を果たさなきゃならない。これはどこの中央銀行でも持っている責任なんです。
今回の場合も、中央銀行の立場から、いろいろ金融システムの破壊に導かないための手段が何もできていない状況の中で考えられたセーフティーネットの一つの整備のあり方としてこれを受けたものだと思います。しかし、結果としては、御指摘のように、新金融安定化基金を通じた日本債券信用銀行向けの出資とか、整理回収銀行向けの出資とか、いずれも毀損され得る事態となっていったことにつきましては、私どもとしても非常に重く受けとめております。
日本銀行としては、今回の痛みを伴った教訓を今後の対応に十分生かして、我が国金融システムに対する内外の信認を確保していけるよう引き続き努めていく所存でございます。同時に、中央銀行の財務の健全性が全体としてしっかり維持できるよう細心の注意を払ってまいりたいと思います。こうした観点からは、公的資金による資本増強の仕組みを含めてセーフティーネットの整備が進められたもとでは、こうしたリスクキャピタルの供与について今後一段と慎重に対応していくべきものと考えております。
いずれにしましても、今回の一連の教訓を踏まえて、昨年四月から施行されました新日銀法のもとで、我が国金融システムの健全性に役立つ対応を行ってまいりたい。これが新しい日本銀行に課せられた責務であると思います。
本件について外からどう見られるかという御心配を私どもも持っていますし、皆様もお持ちいただいているかと思いますが、中央銀行としてはこういったラストリゾートとしての役割というのは責任の一つでございますから、銀行券発行残高は今五十兆ですけれども、それの一割に相当する資本準備金というものを常に抱えております。そういうものの中で毀損が出てきた場合には払わざるを得ないということでございますから、その辺はそんなに御心配いただくようなことにはならないと思っております。
○福山哲郎君 ありがとうございます。
先ほど大蔵大臣が故意、過失があるわけではないからと、もうやむを得なかったとおっしゃいました。
では、故意、過失がありそうなところに行きたいというふうに思います。日野長官、よろしくお願いします。
あなたは、予算委員会での答弁で何度も、不良債権の第V分類の七千億円という数字がひとり歩きをした、どこかから心証を承って日債銀の方でひとり歩きをさせた数字だというふうにおっしゃっていましたが、きのうの参考人ではっきりと頭取は、大蔵省の検査の方から聞いた数字を積み上げて伝えたとおっしゃっています。
さらに、日野長官は予算委員会で、大蔵省が検査の途中でいろんな形で数字を申し上げるようなことは一切ないはずだということを言われていますが、この答弁の食い違いについてどう思われますか。
○政府委員(日野正晴君) まず、後の方から御答弁申し上げますが、これは検査の途中でございますので、検査官がその検査の結果を検査対象行に対して言うことはありませんし、また言ってはならないことであろうということでございますし、日債銀の場合もそうであっただろうというふうに承知しております。
次に、前段の方のお尋ねでございますが、七千億円という数字は私はどこからも出てこないというふうに考えているわけですが、つまりこれは大蔵省が検査結果を確定して示達したのは平成九年九月で、平成九年五月に日債銀が増資要請を行った時点ではいまだ検査結果は判明していなかったわけでございます。しかし、当時日債銀が増資要請先に対して何らかの形で資産状況を説明する必要に迫られていたという事情がございまして、日債銀が途中段階で大蔵省の検査を受けております。それで、御自分の何か得られたようなそういった心証といいますか、みずから積み上げたその計数を何かの形で説明したということは承知しております。
私は、これまで答弁で申し上げたとおりでございますが、七千億円という数字は私どもといいますか大蔵省の方で最終的に通知した数字でもなければ何でもなくて、これは日債銀自身が積み上げた数字で、当局が積み上げて検査結果を示した数字ではないという趣旨で申し上げてきたわけでございます。
○福山哲郎君 では、東郷頭取がきのうの証言でうそをついていたというわけですか。
○政府委員(日野正晴君) 昨日の東郷頭取の御答弁を要約して申し上げますと、一通りの資産査定を終えたような段階で私どもがとおっしゃっていますね。一人称です、ウイかあるいはアイかわかりませんが。検査の方々からお聞かせいただいた数字を足し上げたものが七千億円でございますと。
それからまた、さらに上田清司委員からの御質問に対しても、私どもが算定しと、こういうふうにおっしゃって、五月十九日に金融機関に伝えました、こういうふうにおっしゃっているわけです。
○福山哲郎君 もうおかしいんですよ、長官。あなたは、二月五日の予算委員会の速記録で、大蔵省の心証と申しますか、検査の途中で知り得たさまざまなことについて、他にそれを申し述べるといったようなことはなかったものと承知しておりますと答弁されているんです。
今あなたは、一人称ですけれども、日債銀が、私たちが大蔵の検査の方から聞いた数字でつくったというわけです。大蔵の検査の方から聞いた数字と今あなたはおっしゃったじゃないですか。じゃ、大蔵の検査の方は数字を言ったわけですね。
○政府委員(日野正晴君) 当時、日債銀が切迫しておりまして、日債銀がみずから積み上げた計数を説明していただろうということは十分にうかがえるところですし、私どももそうだったのかなというふうに思っているわけです。
○福山哲郎君 大蔵省の検査の方々から聞いたって、あなた今おっしゃったじゃないですか。じゃ、東郷前頭取はうそをついているわけですね。
○政府委員(日野正晴君) もちろん、検査でございますから、検査に行って、対象となる金融機関との間でその資産の査定をめぐっていろいろディスカッションしていることは当然にあり得るわけです。それは、ですから日債銀の方としても、大蔵省が一体どういう観点でこういうことを聞かれるかということは十分わかるわけですね。
しかし、大蔵省としては、それを第三者、日債銀以外のところにそういうことを言うということはあってはならないし、そういうことはなかったというふうに承知しております。
○福山哲郎君 だって、あなたは、検査の途中で知り得たさまざまなことについて、他にそれを申し述べるようなことはないと言っているじゃないですか。
○政府委員(日野正晴君) 他にというのは第三者という意味でございます。
○福山哲郎君 でも、きのう頭取は、日債銀の七千億円を大蔵省に報告したとおっしゃっているんですよ、その時点で。
○政府委員(日野正晴君) 報告を受けているかどうかは、とにかくそういうことを言っているという話を大蔵省が聞いていただろうとは私は思っております、そこは。
○福山哲郎君 今のは食い違っているじゃないですか。だって、きのう日債銀は報告をしたとおっしゃっているんですよ、長官。
○政府委員(日野正晴君) 七千億という数字を言っているということを、日債銀が言っているということは私はもうかねてから申し上げていると思います。
○福山哲郎君 わからないな。
では、もう一個行きます。
確認書の問題が出てきました。確認書はいろんなところにお願いをして、そしていろんなところが出してくれという向こうからの意思表示に対してこちらが出したというふうにおっしゃいました。全部ではない、一部だとおっしゃいました。これには大体二項目言われているというふうに日野長官はおっしゃいましたが、もう一度確認をお願いします。
○政府委員(日野正晴君) 確認書は必ずしもチェンジしたところとの間ですべて同じ文言で交換したものではございませんから、複数ございますので、それを全部一つ一つ正確に申し上げれば別々なんですが、これを要約して申し上げますと、一つは、この再建策は全関係金融機関の同意がなければ成立せず、仮に成立しない場合には金融システム全体に大きな影響を及ぼしかねないということです。それから第二点は、当時の見通しとしては再建策が実行されれば日債銀の再建は可能であるということ。それから、さらにつけ加えますと、これは全くの要約になりますのであれなんですが、出資要請先に対しては再建策以上の追加負担を求めることはないという認識を大蔵省が有しているということを文書の中で確認していたということになります。
○福山哲郎君 その確認書を交わした時期はいつですか。
○政府委員(日野正晴君) これは区々でございまして、五月から六月にかけてということになります。
○福山哲郎君 それは出資をしていただければ再建可能だということが書いてあったわけですね。これはまさに検査の途中ですよね。何で検査の途中で、外に、表に出さないときに再建が可能かどうかが言えるんですか。
○政府委員(日野正晴君) この確認書を読みますと、再建可能な理由としては、日債銀は債務超過ではなく、この再建計画の実施によって再建が可能であるというふうに大蔵省としては判断した、こういうふうになっております。
○福山哲郎君 だって、検査の途中なんでしょう。債務超過ではなくと何で言い切れるんですか。
○政府委員(日野正晴君) 再建計画は四月一日につくられたわけですね。それを早急に実行しなければならないというわけです。ところが、確かに今おっしゃるように検査は四月から入りましたが、九月まではまだ終わりません。終わっておりませんが、とにかくその途中で大蔵省としての判断を示さざるを得なくなったということで、大蔵省の判断を確認書という形によって示した、あるいは四月一日に大蔵大臣の談話という形で示したものでございます。
○福山哲郎君 さっき言ったじゃないですか。これは、日債銀については検査の途中で知り得たさまざまなことについて他にそれを申し述べるようなことはなかったものと承知しております、日債銀の間でやりとりがあったとおっしゃいましたよね。今おっしゃったじゃないですか。検査の途中ですが、切迫をしていたので検査のとき知り得たさまざまなことを言っているじゃないですか。
○政府委員(日野正晴君) 検査は検査、それから大蔵省として当時再建が可能であるかどうかということを判断したということはあると思います。
○福山哲郎君 では、何のために検査をしたんですか。
○政府委員(日野正晴君) 検査は、本来の金融機関の財務の内容が健全であるかどうかということを判断するために行ったということでございます。
○福山哲郎君 二千九百億円ものお金を出資してもらうのに、検査は検査、今一応債務超過ではないという判断をして確認書を配っている、検査の途中でですよ。おかしいじゃないですか、こんなの。
○政府委員(日野正晴君) これはたびたびお答え申し上げていることですが、その四月一日に日債銀の関連会社が破産の申し立てをいたしまして、日債銀自体がもし倒れるようなことになった場合には、その当時の金融システムが大変なことになる。しかも、現在のようなセーフティーネットはその当時整備されておりませんでした。
特に、金融債が預金保険の保護の対象となるかどうかについてもいろいろ御議論がございまして、そういった時点でもしも、金融債保護なども含めまして、預金者の保護も含めて、果たして日債銀が倒れるとどうなるかということを考えたときに、その四月一日に出された再建計画に基づいて再建せざるを得ない、そのためには出資先にいろいろお願いしたりあるいは日銀にお願いしたということでありまして、その当時は検査の結果がまだ出ておりませんでしたけれども、四月一日の現在ではやむを得ない措置ではなかったかなというふうに考えます。
○福山哲郎君 百歩譲って、お願いをするのはわかります。
債務超過ではないと言っているということは、これはある意味でいうと、価値をそこに与えているんですよ、長官。何の根拠で債務超過ではないと言ったんですか。
○政府委員(日野正晴君) 大蔵省は大蔵省としての検査とはまた別の独自の、検査は検査部の方でやっているわけですが、銀行局の方では独自の情報の収集を行っているわけでありますし、それから三月末の時点の自己査定については、当時、監査法人、公認会計士が当時の会計基準にのっとった監査をした上で債務超過ではないという結論に達していたわけでございますから、この確認書が出されたことについては何ら当時としてはやむを得なかったものではないかというふうに存ずる次第です。
○福山哲郎君 大蔵大臣も予算委員会の答弁で、詳しいことは存じません、みだりに申すべきことではございませんからと言って、みだりにいろんなことを外へ出すことはおかしいというようなことを大蔵大臣言われているんですが、今のお話を聞いてどのようにお感じになりますか。
○国務大臣(宮澤喜一君) いろいろの話を聞きましたり、またきのうの参考人の御意見は私は直接伺いませんでしたけれども、私が想像していたようなことであったかなと思って、後で報告を聞きました。
結局、四月一日に、大蔵大臣が呼びかけられて協力を要請されたということがございますね。その中で、大蔵大臣は、言葉として、この資本増強は不良債権の抜本的な処理と相まって日債銀の経営基盤を大きく改善するものと考えており、市場の信用を回復する云々と言っておられるわけですが、この段階において、大蔵大臣初め大蔵省も日銀も、資産超過ではないという恐らく心証を持っておられただろうと想像をいたすわけです。──債務超過です、失礼いたしました。そのゆえに、また大蔵大臣の意を受けて、大蔵省も各行に協力を要請されたと。
多分、そのときに、しかし大丈夫ですかと、そうはおっしゃるが本当に債務超過じゃないんでしょうねと、これは当然そういうやりとりはございますと思いますね。それで大蔵省は、大臣が言われたように、まず債務超過ではないと思っているということを今何々書というようなことで答えているようでございますね。
しかし、各行が、そうはいっても一遍やっぱり検査をしてもらわないとわからぬじゃないかというお話は恐らく当然あって、それで大蔵省の検査が四月十六日に始まっております。
それは、最終的には九月十日までかかるわけですが、その検査の途中で先ほどお話しのいろんな数字があって、それは想像いたしますと、検査部の人間と銀行の当局者は毎日毎日やりとりしておりますから、銀行がどのぐらいの不良債務を、検査官が見ているかということは、これはお互い同士ですから、やりとりするのは、第三者ではございません。そういう心証があって、どうも多分七千億ぐらいだなということを、恐らく上にも当然報告していると思いますね。それで東郷さんは、あちこちから聞かれますから、大丈夫なんだろうねと。いろいろ自分の受けた心証では七千億ぐらいだと思うなということを言っておられるし、日本銀行にもそういう報告をしておられる。
きのうの参考人のお話を聞きますと、そのことは銀行局長の耳にも入っていて、銀行局長は、そういうことは自分は否定も肯定もしないという立場をとり続けられるわけでございます。そういうことの中で、きのうもございましたと思いますが、七千億であっても、あるいは最終的にはこれは一兆一千二百十二億になりますが、それでも債務超過でないということを関係者はみんな思っておりますものですから、したがってどっちの数字であれ債務超過になることはない、こういうことに考えて一切のことが動いておったのではないか。
したがって、東郷頭取もそういう気持ちで、ただ恐らくこの銀行側の七千億という考え方と大蔵省の検査官の一兆一千億との間の差は、御承知のようにこれは銀行がコントロールできる部分である。したがって、銀行は低い方の話をしておられたし、大蔵省の銀行局も債務超過ではないと、こう思っている。
それが、最後に、あの翌年の三月の佐々波委員会まで続いておりまして、大蔵大臣が、佐々波委員会に出席される前に佐々波委員会の方からいろいろラインシートが来ているので大蔵省で子細に調べてもらいたいということがあって、これはもう大変徹夜をして調べたりして、そしてここは想像なんですが、大臣に対しては、やっぱり債務超過というようなことは別に出ておりませんから、ただ非常に査定が甘いのでここのところはよく佐々波委員会に言っていただきたいということを大臣に申し上げた。大臣はそれを言われて、佐々波委員会は再度東郷頭取に大丈夫かねという念を押されたと。
ここまでが全部債務超過じゃないという意識で動いておるというふうに私は思うわけでございます。
○福山哲郎君 大変丁寧にお答えいただき、ありがとうございます。
もう一度日野長官にお伺いします。
根拠は何ですか。いたし方なかったのはいいですが、それでは債務超過ではないと言った根拠は何ですか。
○政府委員(日野正晴君) ただいまの御質問は、佐々波委員会の前の段階……
○福山哲郎君 前です。五月の時点です。確認書の中で。
○政府委員(日野正晴君) 五月の時点でございますね。これは、三月の時点で自己査定をして、そのとき監査法人やあるいは公認会計士に見ていただきまして債務超過ではないということになったわけです。それが三月から五月にかけてのことだと思います。
それからもう一つは、検査が終わった後のこともそうなんですが、これは九月の中間決算に当然反映しなければならないわけですが、このときも監査法人にお願いしてそれを見ていただいたところ、会計原則に従って引当償却をした結果、やはりまだ債務超過にはなっていなかったというところではなかったかと思います。
○福山哲郎君 わかりました。
がらっと変えます。
日野長官、その年の日債銀の株主総会はいつでしたか。
○政府委員(日野正晴君) 株主総会は、六月二十七日に定時株主総会として開かれております。
○福山哲郎君 先ほど日野長官が、日債銀でいろいろな事情があって聞かれたので、債務超過ではない、七千億だということをひとり歩きさせたとおっしゃいましたが、その特別な事情というのは何ですか。
○政府委員(日野正晴君) 確認書と一口に申し上げますが、そのやりとりをした理由も、ちょうど五月から六月にかけてなんですが、それぞれの御要請先、金融機関にはそれぞれの個別の事情がございますので、どういった事情がおありかもよくわかりませんが、株主総会において、これは増資そのもの、出資そのものを別に株主総会で議決していただくわけではありませんけれども、例えば優先株の枠が非常に狭いために優先株引き受けのための枠を広げていただくということなどの関係もありまして、日債銀としていろいろお願いしたということではなかったかなと思います。
○福山哲郎君 もう一つお伺いします。
長官は、衆議院の予算委員会等で示達書の数字について聞かれたときに、一兆一千二百十二億については答えられていますが、もう一つ、両論併記をされたという七千億については全然御答弁をされなかった。これは何で御答弁をされなかったんですか。
○政府委員(日野正晴君) 示達書そのものは、これは大蔵省の官房金融検査部長と銀行局長と国際金融局長の三名の連名で日債銀あてになされておりますが、その中にはその数字は出てまいりません。
今なぜ両論併記という問題が生じてきたかということは、実は示達書の中に、詳しいことはこの示達書の中には書いていないんですが、なお書きといたしまして、検査報告書を参照されたいとあるわけです。
この検査報告書というのは、検査官が検査の結果を自分の直属の上司である検査部長に対して報告するために報告書としてつくられるものなわけです。その検査の過程でいろいろディスカッションをいたしまして、日債銀が自分のコントロールにある関連会社は自分がつぶさない限りは大丈夫なんだという主張をしておりますので、その主張の金額はこのくらいありますよというふうに金額を書いてあるわけです。それが四千幾らです。その数字を一兆一千幾らから引くと六千三百幾らになるわけですね。その六千三百幾らというものを一兆一千の上に小さい字で括弧して書いてあるということなんです。
示達書そのものには全然出てまいりません、その数字は。検査報告書を見ることによって初めて、ああ、検査官が上司に対して報告したときには自分たちの主張をそういう形で上司に報告したんだなということがわかるようになっているわけです。つまりは、日債銀の主張はあくまでもこうでありましたということを上司に報告するために、念のため一兆一千の上に六千三百という数字を書いて、なぜ六千三百になるのかというと、四千三百幾らは自分が倒さない限りは大丈夫な金額だ、こういうふうに書いてあるわけでございます。
○福山哲郎君 ということは、示達書には両論併記はされていないわけですね。
○政府委員(日野正晴君) されておりません。
○福山哲郎君 そこまで詳しく言われるんだったら、この委員会にその示達書を見せていただきたい。出していただけませんか。
○政府委員(日野正晴君) 個別の金融機関のことに関しましては、従来からこれを公表したりあるいは御提出したりすることは差し控えさせていただいておりますので、それにのっとってやりたいと思います。
○福山哲郎君 あれだけ答弁されていて何で出せないんですか。個別の銀行のことじゃないですか。
○政府委員(日野正晴君) 個別の銀行のこととおっしゃいますが、少なくとも私どもは、日債銀が特別公的管理になりまして、いわゆる破綻銀行になった時点で最大限、つまりどうしてこういうふうに破綻したかということは計数でもって検査の結果、金融監督庁の検査のみならず、大蔵省が平成九年に行いました検査の結果も公表していることでおわかりいただけるものと存じます。
○福山哲郎君 先ほども確認書は各社ばらばらだとおっしゃいましたね、それぞればらばらだと。何でばらばらなんですか。
○政府委員(日野正晴君) いろいろそれぞれの会社に御事情があろうかと思います。それで、確認書というタイトルのところもございますし、それから応接録というところもございますし、それから確認メモといったようなところもございますし、本当に区々でございます。
したがいまして、表題のみならず内容もそうでございますし、それから日にちも違います。いろんな意味で違うということでございます。
○福山哲郎君 この確認書もこの委員会に出していただけませんか。
○政府委員(日野正晴君) これは、双方が交換したものでございまして、私どもの方だけで判断するということはできない、それぞれの個別の銀行に何かいろいろ御事情があってこういったものを必要とされたものと思います。それぞれの銀行の実は名前を申し上げることもやはり差し控えなければならないというふうに私どもは考えているところでございます。
○福山哲郎君 これは資料請求をお願いしたいと思います。
○委員長(倉田寛之君) ただいまの福山君の要求につきましては、その取り扱いを後刻理事会で協議することといたします。
○福山哲郎君 もう一度確認させてください。
示達書には両論は併記されていなくて、一兆一千二百十二億円だけだったんですね。
○政府委員(日野正晴君) もう一度繰り返して申し上げます。
日債銀に対する平成九年四月を基準日とし、同年九月に示達した大蔵省検査結果におきましては、第V分類額は一兆一千二百十二億円でございまして、第V分類の数字が両論併記されているわけではございません。
○福山哲郎君 第V分類が両論併記ではなくて、それ以外、もう一個、先ほど四千億円、注みたいな形であるとおっしゃっていたのをもう一度教えてください。
○政府委員(日野正晴君) それも併記されておりません。検査報告書の方には注という形で書かれております。
○福山哲郎君 検査報告書というのは、どこからどこへ出すものですか。
○政府委員(日野正晴君) その検査を担当した検査官、複数いるはずですが、その複数名がその直属の部長である当時の金融検査部長に対してあてた報告書でございます。
○福山哲郎君 検査部長にあてた数字。何か頭が整理できなくなってきましたね。何かごまかされているような気がしているんですけれども。
では、もう一個お伺いします。
そうすると、日債銀の検査から、日野長官、検査部が出てこられたのはいつですか。
○政府委員(日野正晴君) 立ち入り終了という御趣旨だと思いますが、平成九年の七月四日ということになっております。
○福山哲郎君 七月四日から九月十一日の示達書の通達まで、それだけ時間がかかった理由は何ですか。
○政府委員(日野正晴君) 検査が終了いたしましても、やはり帰ってきまして数字を突き合わせる、それから資産の内容に問題がある場合にはそれをどういうふうに分けるかといったこととか、部内でいろいろ検討した上でということになりますので、確かに二カ月ぐらいの余裕、間はございましたけれども、そのぐらいの日数はこのぐらい大きな銀行になりますとあるのかなと思います。
○福山哲郎君 その間に日債銀と大蔵省の間にやりとりがあるわけですね。
○政府委員(五味廣文君) 個々具体の場合にどうであったかはちょっと御遠慮させていただかないといけませんが、一般論として、金融検査に入りまして立ち入りが終了いたしまして、今度バックオフィスの方の審査に入るわけでございます。そこで、検査官が調べてまいりました内容あるいは検査官の見解、こういうものが法令解釈に誤りがないかどうか、あるいは先方の銀行なり監査法人との主張でやりとりがあった場合に、どちらの主張がどういう根拠を持っているか、こういうことをチェックしてまいりますのと、それから数字自体の誤りがないかどうかやってまいります。
その過程で、銀行側の見解をもう一度確認する必要があるとか、あるいは監査法人の意見をもう一度聞く必要があるとか、こういうことは起こり得るわけでございまして、一般論として申しますと、バックオフィスの審査に入りましてから後も銀行と連絡をとり合うことはございます。
○福山哲郎君 その連絡をとり合う議事録というのは用意されているんですか。
○政府委員(五味廣文君) 失礼ですが、議事録と……
○福山哲郎君 そのお互いのやりとりに対しての、何か残っているんですか。
○政府委員(五味廣文君) 内部的な覚えとして、例えばみんなで議論するときに紙に落とした方がわかりやすければそういたしますが、特段一々のやりとりを記録として残さなければいけないという手続は特にございません。
○福山哲郎君 ちょっと僕も頭を整理しなければいけないので、次の集中のときにまたあれですけれども、基本的には三月の時点で四千七百億円だという第V分類だった。それが五月の時点では七千億円になった。ところが、検査部から出てきた数字では一兆一千二百億円。三つがどんどんどんどん上がってきた。これはまずいということで両論併記をしたのではないか。その両論併記のための根拠として、先ほど言われた四千億が検査報告にあったのではないかなというふうに思っておりまして、今後また詰めさせていただきたいというふうに思います。
次に、ダイオキシンの問題に行かせていただきたいというふうに思います。
話が全然変わって恐縮でございますが、まずダイオキシンについて、総理にお伺いします。
二十四日に関係閣僚会議の初会合を開かれて、早速動かれたことに対しては大変評価をしておりますが、実はダイオキシンというのは、八四年に日本でも専門家会議をつくりまして、百ピコグラムというガイドラインを制定しました。でも、この十年間、TDIを何も制定せずに、ある意味で言うとほったらかしだったわけです。この時期に急にダイオキシンという形で関係閣僚会議の初会合を開かれたということで、私は対策としては非常に対応がおくれたという認識があるんですが、総理はどのようにお考えですか。
○国務大臣(小渕恵三君) そうおっしゃられればそういうことかもしれませんが、諸外国におきましていろいろ基準その他につきまして数字が出ておりました。ダイオキシンの問題につきましては、かねて来議論がされ、御指摘もいただいておりましたが、昨今、特にこの問題に対して国民の間に不安感その他大変大きなものになっておりまして、私自身も施政方針演説で安全へのかけ橋ということの中でダイオキシンを改めて取り上げさせていただきました。
そういった意味で、各省庁間におきまして基準のとり方その他が必ずしも一定でないということでありましたので、あえて政府全体としてもう一度お互い確認し合うと。厚生省あるいは環境庁、農水省その他関係の省庁で十分連絡をし、話し合っていかなければならないという、そうした状況にかんがみまして、あえて、おくればせであると言われればそうかもしれませんけれども、こうした閣僚会議を設置して真剣に取り組んでいかなきゃならない、こういったことで閣僚会議を開かせていただきまして、数点の問題につきまして内閣として取り組んでいくということに決定した次第でございます。
○福山哲郎君 国民の不安はピークに達していると思いますので、ぜひ積極的に取り組んでいただきたいと思います。
では、次に環境庁長官と厚生大臣にお伺いします。
九五年と九六年に両官庁からピコグラム、今お手元にお配りしましたように、(図表掲示)五ピコグラムが環境庁、十ピコグラムが厚生省という形の対策の値が出たんですが、これに関して、なぜこの数字のずれがあったのか、御答弁願います。
○国務大臣(宮下創平君) 厚生省の方が先に発表いたしておりますのでちょっと申し上げさせていただきますが、耐容一日摂取量、TDIでございますが、これは委員御承知のとおり、健康影響の観点から、ある物質を一生涯とり続けても許される体重一キログラム当たりの一日の量でございます。
これは、種々安全性の基準として科学的知見、評価をし、解析の上設定さるべきものでございますが、厚生省ではダイオキシンのリスクアセスメントに関する研究班というのを設けまして、そして平成八年六月に、健康影響の観点から、この体重一キログラム当たり一日十ピコグラムと今申しましたTDIを提案申し上げました。この値は、当時の科学的知見等に基づきまして、動物実験等で得られた結果から総合的に判断をして算定したものでございます。
これに対しては、後で環境庁長官の方から御答弁があろうかと思いますけれども、私どもの理解するところでは、環境庁の検討会が報告いたしました健康リスク評価基準五ピコグラム・キログラム当たりは、環境行政におきましてダイオキシン類に関する環境保全対策を講ずるための目安として設置されたものと私どもは承知しております。環境庁の報告によりますと、健康リスク評価指針値は、人の健康を維持するための許容量を意味するものではなく、より積極的に維持されることが望ましい水準として設定されたものと理解をしておりまして、厚生省とのねらいの違いがございます。
一方、昨年の五月にWHOの専門家会合が開催されまして、ダイオキシン類のTDIにつきまして、それまでの十ピコグラム・キログラム当たりを見直しまして、当面の許容量を四ピコグラム・キログラム当たり、究極の目標、これはアルティメットゴールと言っておりますが、究極の目標を一ピコグラム・キログラム当たりとされました。
しかし、この四ピコグラムと一ピコグラムとの相違点につきましては、ちょっと英語の点で恐縮ですが、この四というのはWHOではマキシマル・トレラブル・インテーク・オン・ザ・プロビジョナル・ベーシス、こうなっておるんです。つまり、あるべき最大の耐容許容量というようになっています。そして、一ピコグラムの方はアルティメットゴールですから、これはさっき翻訳の問題ございましたが、我々としては究極の目標、あるべき目標、望ましい目標というように理解をしております。
そういうことで、厚生省として、この点は昨年の五月に専門家会合が開催されて提示はされましたけれども、それを裏づける詳細なデータ等が得られませんでした。したがって、ことしの一月にそれが入手できましたので、今環境庁と合同で専門家会議を開催いたしまして、TDI見直しを早急に行うべくワーキンググループをつくっておるところでございます。
そこで、所沢等の問題もこれあり、問題の緊要性にかんがみまして、総理大臣が先ほど仰せられたように、ダイオキシン対策閣僚会議を決めまして、その主要な問題としては、十と五の統一をいたしませんと国民の間に二つのスタンダードがあるというような誤解を与えておりますので、私どもとしてはきちっとしたものをつくろう、こういうことになった次第でございます。
○国務大臣(真鍋賢二君) 今、厚生大臣から環境庁と厚生省の違いにも触れていただいたところであります。環境庁としては、人の健康を確保するために、より積極的に維持されることが望ましい水準として、体重一キログラム当たり五ピコグラムということにいたしたわけでありまして、先ほど厚生大臣からお話がございました許容限度量のTDIとの差異が出たものと思っておるところであります。
先生御案内のように、WHOでも平成二年には十という数字が出ておったわけでありますけれども、昨年五月に一から四という数字が出たわけであります。公明党さんから出ておる数値も一という数字が出ておるようでございますけれども、これからの議論を深めていかなければならないわけであります。
先ほどお話がございましたように、厚生省と環境庁の間で専門家会議を開いて、その数値の的確なものを出していきたいということでございまして、その結論を待って整合性を図っていこうと思っておるところであります。いろいろ問題があろうと思いますけれども、御意見をいただきながら数値を決定させていただきたいと思っておるところです。
○福山哲郎君 ありがとうございます。
実は民主党も先日、法律を出させていただきました。ダイオキシンの問題というのは、大変実はややこしくてわかりにくいんです。国民の皆さんもわかりにくい。中川大臣が言われましたように、ダイオキシンについては食品農作物に対して数値基準がなくて、公表すると風評被害になりかねないというふうに大臣がおっしゃられましたけれども、僕もそのとおりで、要は全然わからないわけです。
これを見ていただいてもわかりますように、五ピコと十ピコで、環境庁と厚生省がばらばら。それで、ピコグラムという数値の単位すらわかりにくいわけです。これは実は一グラムの一兆分の一なんですけれども、要は一体どんなものか僕らの感覚ではわからない。そうすると、安全基準がはっきりないと、大臣言われたとおり、例えば〇・〇一だから安全だとか〇・五だから安全だとか三だから危ないとか言われても、実感としては、ピコグラムという数値自体が国民にはないわけですから、ゼロなら正直言ってみんな安心だと思いますが、それが〇・一であっても二ピコでも不安さは変わらないわけです。そういった意味での安全基準の設定が早く要る。
私ども民主党の法案もすべてこれが一〇〇%というわけではないし、公明党さんからも大変いい法案が出ているわけで、この表を見ていただいても、現在の対策では、まず数値が不統一である、それから環境基準がないですから、一体どこなら安全だということが国民に伝わらない、それから数字がややこしい、それから排出基準も不十分だ、食品に対する基準も全くなくて、ましてや土壌についての法律も全然ないわけです。つまり、国民の不安がそういった点でピークに達していると思っておりまして、こういった面の食品の安全基準等をつくられることに対して、中川大臣はどのようにお考えでしょうか。
○国務大臣(中川昭一君) 私も、ピコという単位が一兆分の一というのがなかなかぴんとこなくて、百メートル掛ける百メートル掛ける百メートルの水槽の中に一グラムのものを垂らしたのが一ピコだというふうに頭の中で今整理をしておるところでありますが、我々も、特に農林水産という食料について、安全性について責任があるわけでございまして、もちろんダイオキシンについて数値が少なければ少ないほどいいわけでありますけれども、食品ごとにどこまでが安全かということを調べることは技術的にも不可能でありますし、多分余り意味のないことではないかというふうに考えます。
農林省は、十一年度から三年間、毎年できるだけ多くの地域で農作物関係のダイオキシンの調査をやることにしておりますし、緊急で現在三省庁で所沢を中心にやっておる最中でありますけれども、その時点でどこどこ地方の何々という農作物のダイオキシン濃度が何ピコだったということと、自分がそのものを食べるときにはまた数字が変わっている可能性もあります。
それから、所沢では誤報によってホウレンソウが大変な被害を受けたわけでありますけれども、あのときでも、ホウレンソウを一日七束ずつ何十年食べないと安全基準を超えないというような数字を厚生省の方から我々は入手していたわけでございまして、何十年間ホウレンソウだけ食べる人というのは多分恐らくいないと思います。
そういう意味で、御飯あるいはいろんな農作物をそれぞれの好みによって食べるわけでございますので、毎年できるだけ綿密な、特定の地域のいつ時点でのどういう農作物についてはこのぐらいの数字でしたと、これが高ければ大変だということになりますし、低ければ低いということがいいとは思いますけれども、それをどういうふうにしていくかということについては余り意味がない。個別に少ないということが確認できればいいわけであります。
それよりも、先ほど厚生大臣、環境庁長官が答弁されたように、耐容一日摂取量、いわゆるTDIの基準を早急につくっていただくことが国民的な安心の前提になると私は考えております。
○福山哲郎君 私も、食品一つ一つに安全基準をやって、魔女狩りのようにこれがだめだ、これがだめだというふうに言っていくのはいいとは思わないし、現実的に可能だとも思っていません。
しかし、何らかの形でこれは安全だというような基準が要るわけでして、TDIを設定しただけではなくて、その次の段階に至らないことには、さらに安全性の確保というか国民に対する安心感を与えられないというふうに思っておりまして、そこら辺で、大気、水質、土壌についての環境基準、例えば環境庁と厚生省さんが今回関係閣僚会議でTDIを定めた後、そこから落ちていく大気、水質、土壌に対する環境基準等の設置については、環境庁長官と厚生大臣はどのようにお考えですか。
○国務大臣(宮下創平君) ダイオキシンにつきましては大体食品から摂取されることが非常に多いわけで、九割方食品から入ってまいりますので、あとは大気中からも若干入りますが、ほとんど食品からでございます。私どもは食品衛生の立場から、国民栄養調査というのがございまして、一日当たりトータルダイエットの量を調査いたしまして、十四のグルーピングをいたしまして、野菜とか魚とか肉とか米、ずっと十四品目に分けまして、それぞれについて、一品一品の食品はもう大変なことになりますから、今、委員のおっしゃったようにできませんが、グルーピングしたものについての、しかも加工して食べることが多いですから、そういう状況を調査いたしまして、そしてそのテーブルをつくって、これは既に平成九年につくりまして発表しております。
それによりますと、詳細は省かせていただきますが、全体として食品の摂取量は二千十七グラムでございます。そして、それをそれぞれの品目別にダイオキシン及びコプラナーPCBも含めましていろいろ調査をするわけですが、今のところ私どもとしては二・四一という数値がございます。したがって、二・四一というのは、今度WHOが指摘されました四以下になっておりますので、例えば所沢の野菜の問題にしても、これを煮沸して私どもが摂取した場合に〇・〇幾つの話になるわけです。したがって、全体として二・四一が若干二・四三になるとか四二になるとかいうレベルの話でございますから、私どもとしては当初から大体安全性には問題ないんじゃないかなというように考えておりました。
なお、この問題のこういうやり方についても、今後さらに調査の種類をふやしたり、そしてより精密なものにしていく検討は必要かと思いますが、そういうアプローチをさせていただいております。ダイオキシンは食品から入るという点が非常に多いということを申し上げさせていただきました。
○国務大臣(真鍋賢二君) コプラナーPCBの問題も含めてでございましょうか。
この問題につきましては、WHOとかアメリカ関係では数値のとり方が違ってまいっておると思うところであります。日本は一以下のものはゼロというような換算をしておるわけでありますから、そういう点ではこのコプラナーPCBをどういうふうに扱っていったらいいのか、それも今検討中でございますけれども、コプラナーPCBもPCBの一種でありますから、ダイオキシン類と類似した毒性を持つ化学物質であるというふうに位置づけて、これからの専門家会議で検討を急いでいただいておるところであります。
○福山哲郎君 とにかくこの件に関しては一刻も早く対策を講じていただきたいと思いますし、TDIの見直しだけに限らず、環境基準等の問題も含めて実は環境庁長官にそのお答えをいただいていなかったんですが、コプラナーPCBの話をまだ質問していなかったんですけれども前向きに御検討いただくということで、環境基準について今どう考えているか、お答えください。
○国務大臣(真鍋賢二君) 先ほど先生にPCBの件でございませんでしょうかという再質問をさせていただいたわけでありますけれども、これはもう厚生大臣が大方のことをお答えになりましたのでいかがなものかと思って答弁をおくらせていただいたわけであります。
環境基準の設定については、新しいTDIが設定できれば当然それをもとにして検討すべきものと考えております。環境基準の設定のためには、このTDIに加えて先ほど先生おっしゃいました大気、水及び土壌のそれぞれの媒体からダイオキシン類が人の体内に至る経路、それから生物濃縮度の科学的知見が必要ですが、これはまだ十分ではありません。このために、環境中でのダイオキシン類の実態を把握すべく、現在全国で四百カ所の大気、水質、土壌、底質、水生生物等について調査を進めておるところであります。
今後、引き続きまして科学的知見の集積に努めて、所要のデータがそろってから順次環境基準の設定について検討を進めてまいろう、こう思っておるところであります。
○福山哲郎君 ぜひ早急によろしくお願い申し上げます。
さらに環境庁長官にお尋ねをします。
環境庁長官は御就任以来、環境保全が課題とされている地域を精力的に御視察をされておられますし、私もこの間申し上げましたがアルゼンチンのCOP4で御一緒させていただきましたし、昨年の十月には長官が名古屋の藤前干潟を視察しまして、十二月に、すばらしい干潟であり消滅や破壊には特別厳しく対応したいと保全の姿勢を明確にされまして、それを受けて今月十日、名古屋市は免許申請を取り下げ、干潟は守られることになりました。大変な環境庁長官の御勇断だと思いますが、そのことについての御感想をお願いします。
○国務大臣(真鍋賢二君) 環境庁がどうのこうのというわけではございませんでしたが、たまたま藤前干潟の消滅を考え、そしてまたその地が名古屋市のごみの捨て場になるというふうなことを目の当たりに見まして、ごみの捨て場だったらまだほかにあるんじゃないだろうかということで、干潟は一たん消滅するとなかなかもとに戻るのは不可能であると。代償措置として人工干潟も検討されておりましたけれども、専門家の意見を聞きましても、干潟が消滅するとなかなか人工干潟では代償措置としての役目は果たしませんよというお話であったわけであります。そういうところに焦点を当てながら、地元の御協力をちょうだいしまして、あのような結果が生まれたわけであります。
まして、環境行政が今大変問われておるところでありまして、特に愛知県におきましては、瀬戸市におきまして二〇〇五年には環境博覧会が、万博が開催されることになっておりまして、あれやこれやのことに思いをいたしながら、環境庁としての意見を、アセスメント前でございましたけれども、出させていただいたわけであります。愛知県や名古屋市の御協力をいただきまして干潟が残されたということは御同慶にたえないと思っておるわけであります。こういうことにつきまして国民的な御理解がいただければありがたいと思っておるところでございます。
○福山哲郎君 さらに今月十五日、長官は、藤前同様貴重な干潟が残る千葉県の三番瀬を視察されたと伺っております。さらには、和歌山県で雑賀崎という場所の沖合を埋め立て、新しい港を建設する計画があります。
長官は今月二十日にこの和歌山の雑賀崎沖も視察をされたようですが、視察の感想をお聞かせください。
○国務大臣(真鍋賢二君) 私は、かねてから百聞は一見にしかずということで、やはり持論は、その現地の視察によって裏づけされなければならないという哲学を持っておるわけであります。
その面に沿いまして、三番瀬の干潟が今問題になっておるということで、先般も千葉県の手賀沼の視察をさせていただいたわけでありますけれども、そこで沼田知事さんとお目にかかりまして、干潟の重要性について議論を深めたわけであります。
三番瀬の問題につきましても、もはや私の前任者の間で随分話も進められておったようでございますけれども、何はともあれ現場を見せていただきたいということで三番瀬や雑賀崎のところを見せていただいたわけでありますけれども、見た感じでは、やはり美しい環境というものはできるだけ保全していかなければならないという気持ちでいっぱいでございました。
しかしながら、千葉県におきましても、大変いろんな問題に関心を寄せていただきまして、環境庁の意にも沿うような努力をしていただいておるわけでありまして、十分話し合いの上にこの問題の処理に当たっていこうと思っておるところであります。
雑賀崎地区の灯台や庭園からもあの周囲を見させていただきましたけれども、瀬戸内海の国立公園にふさわしい景勝の地であるという認識を新たにいたしまして、従来から進めておりますこの埋立地の問題につきまして環境庁の意見を申しておりますけれども、なお一層の御協力をいただきたいと思っておるところであります。
○福山哲郎君 ありがとうございます。
では、最後にあと二、三問させていただいて終わりにしたいと思います。
このたび、輸銀とOECFが統合され、新たに国際協力銀行が設置されようとしています。これが実現をすると、出融資承認額で約三兆円という巨大な公的金融機関が誕生します。これは、日本がODAも含めて各国に対して資金援助をすることに対して大変国益上重要な機関になるというふうに私は思っておりまして、この存在はこれから先本当に重要だと思っておるんですが、外務大臣に当たり前のようなことをお伺いして恐縮ですが、ODAの基本原則についてお聞かせいただければと思います。
○国務大臣(高村正彦君) 政府は、援助に対する内外の理解を深め、幅広い支持を得るため、平成四年、我が国の援助の基本理念、原則等を示す政府開発援助大綱、ODA大綱を閣議決定いたしました。
ODA大綱は、援助の基本理念として、人道的配慮、国際社会の相互依存性の認識、環境の保全、自助努力の支援を示しております。また、その原則において、国際連合憲章の諸原則、環境と開発の両立、国際社会の平和と安定、民主主義、市場経済化、基本的人権の保障等を挙げ、二国間関係等とともに総合的に判断の上、援助を行っていくべきとしております。
政府としては、このようなODA大綱にのっとり、援助を一層効率的、効果的に行ってまいります。
○福山哲郎君 この原則は、基本的にOECFを中心に今まで業務としてやられてこられたわけですが、今回、輸銀と合併をすることになります。輸銀の中ではこういった原則はあるんでしょうか。大蔵大臣になるんでしょうか。経企庁長官ですか。よろしくお願いします。
○国務大臣(堺屋太一君) このたび、輸銀と経済協力基金が合併になりまして国際協力銀行になります。現在、経済協力基金の方では一定の環境基準を持っております。輸銀の方は、内規ではあるようでございますが、その点まだ明確に外部に発表したことにはなっておりません。
したがいまして、両方が合わさりましたならば共通のガイドラインを作成していきたい、そういうぐあいに考えております。これは、一方はODAで一方は民間の貿易関係ということで、考え方は同じでございますが扱いが少し変わっておりますので、今度合併したときに合わせたいというふうに思っております。
○福山哲郎君 もう御答弁いただいたのでありがたい話なんですが、OECFは環境配慮のためのOECFガイドラインというのをしっかりつくられておられまして、私としては、輸銀が合併をするに当たりまして、別々にガイドラインを持っているのはいかにも合併をしておかしいので、ぜひ統一のガイドラインをおくつりいただきたいということをお願いしようと思ったら、今もう長官にお答えをいただいたので、それは前向きに検討されるということでよろしいわけですね。
○国務大臣(宮澤喜一君) 問題は輸銀の方にあるわけでございますから、なるべく一緒にやるように、片方は信用機関ですし片方は開発援助機関ですから、それは違うところはあるでしょうけれども、一緒のところはなるべく一緒にやるように輸銀の方にも申してございます。
○福山哲郎君 大変前向きな御答弁をいただいてありがとうございます。
特に、環境と開発という先ほど外務大臣が言われたところに関しては、九七年六月のデンバー・サミットでの共同宣言というのがございまして、先進国からの民間資金の流れは、世界全体の持続的な開発に対して重要な影響を有する。各国政府は、インフラ及び設備投資に対する金融支援の際、環境要因を考慮することによって持続可能な慣行の促進を助長しなければならないというふうにデンバー・サミットでうたわれております。
これについて、日本としては、環境ガイドラインを今回の合併を中心につくっていただくことによって、新しい国際協力銀行の開発理念、それからODAとしての日本の海外への国益も含めて前向きに御検討いただきたいというふうに思っています。
時間が余ってしまいました。大変長時間にわたって質問をさせていただきましたけれども、これで終わらせていただきます。
どうも長い間ありがとうございました。
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