05/08

2007

第166国会 参議院 環境委員会 2007年5月8日


自動車NOx・PM法案 参考人質疑

○福山哲郎君 民主党・新緑風会の福山哲郎と申します。
 参考人の皆様方におかれましては大変御多用の中、今日は貴重な御意見を賜りまして、心から御礼申し上げる次第でございます。座らせていただきながら質問をさせていただきます。よろしくお願いいたします。
 私も先生方と同様というか、先生方よりかはそれはかかわりは薄いんですけれども、平成十三年の法案の改正にもかかわりましたし、板橋区の大変汚染の厳しい交差点も現場を見に行きましたし、被害者の方にもお話を伺った経緯がございます。
 今回の改正で多少の、何というか、環境基準に達しない局地的汚染地域が若干残っているとはいいながら、全体として改善の方向に見えていることに対しては評価をしたいと思いますが、しかしながら、先ほどお話がありましたように、やはり一番重要な肝であった流入車対策について具体的な規制の枠組みが提示をされなかったということは非常に残念に思っています。特に、猿田参考人や大聖参考人が参加をしていただいているところの中環審の中では、規制の案は六案ぐらい具体的にメニューとしてあったはずだったにもかかわらず努力義務になったということについては非常に残念に思っています。
 そのことに対しては参考人の方々のほぼ共通した御意見だったと認識していますのでもう質問はしませんが、そんな中で、実はこの問題は二十年にも及ぶ問題になっていまして、ずっと国会の中でも、また裁判の中でもいわゆる科学的知見の問題についてちゃんと調査研究をやれと、さらには被害救済の方途を検討することというのが国会の中でもずっと附帯決議で言われてきたわけです。先ほど大江参考人からもありましたPM二・五の環境基準の設定についてもまだ行われていないわけです。
 つまり、因果関係の調査、それから被害者救済の方途、道筋の問題、それからPM二・五の環境基準の問題等について私は政府の不作為をやはり感じざるを得ない状況でございまして、このことについて、各参考人、どのようにお考えなのか、簡単で結構でございますので御陳述をいただければと思います。
○参考人(猿田勝美君) 今までいろいろな対策は講じられてきたわけでございまして、PM一〇から始まって、PM二・五、あるいはナノ粒子等についていろいろな御意見もというか、知見も得られてきておるわけでございます。
 今問題になっております粒子状物質等の問題としては、今後、どのような影響、いろいろな今検討会は設置されまして、あるいは各医学系の研究も進んできているところでございますけれども、最終的なサーベイランス等を見てまいりましても最終的なまだ報告が出されておりませんので、こうすべきである、こういう影響があるということを私自身申し上げる段階にはございませんけれども、ただ、微小粒子であるということは肺の奥まで侵入して何らかの健康に対する影響を及ぼすだろうというようなことを言われているわけでございますから、そういうことを中心にしたいわゆる微小粒子に関する知見を更に深めていくことがまず最優先されるべきだと。その上で、環境基準とか規制基準がそれぞれ整備されなければならないだろうというように私は考えております。
○参考人(除本理史君) 今先生がおっしゃった幾つかのポイントの中で、被害者の救済の問題について若干述べさせていただきたいと思います。これについては、先ほど申し上げたように調査した経験がございますので。
 今私が医療費の助成を行うことによって何らかの対策を取るべきだと申したのは、先ほども意見陳述の中で述べましたように、現在、悪循環と申し上げたようなある種の二次被害というか、健康被害から制度問題が絡み合って新たな被害に移行しつつあるという部分の進行過程を少なくとも止める必要があるのではないかということについては、これはある種の不作為と言われても仕方ないような事態があるんではないかというふうに考えているわけです。
 公害健康被害補償法自体は固定発生源中心の大気汚染の被害者を救済するという制度でしたから、新たに自動車排ガスで被害が出ているということをもし認めるのであれば、それに対して何らかの救済措置を講じるべきであるし、今の因果関係の視点を別にしても、現に今申し上げたような悪循環があるということを例えば福祉的な観点でも止めなくてはいけないと。環境と福祉の両方の観点を入れた制度というのがつくられていいのではないかなというふうに考えております。
 以上でございます。
○参考人(大聖泰弘君) 一つはPM二・五の関連でありますけれども、これに関しては国内でも幾つかの地点で観測が既に行われておりますし、それとPM一〇との関連も一部で明確になりつつあるというふうに思っております。
 そのPM二・五以下に含まれる成分の中で、ディーゼルからの粒子状物質が多くを占めているということもある程度はっきりしつつあると思っております。また、それに対する健康への影響についてもまだ調査を進めている段階だというふうに思いますので、今すぐ規制という形には少し時期が早いのではないかなというふうに思います。
 その一方で、御案内のとおり、新長期規制あるいはポスト新長期規制になりますと、未規制の当時からもう数十分の一に削減されますので、これはほとんど新車に関しては大気への影響、あるいは健康への影響はもう完全に払拭されるであろうというふうに思っております。したがって、再三申しておりますように、いかに新車への代替をうまく進めるかということが必要なんだろうというふうに確信しております。
 それから、流入車対策でありますけれども、規制の一方で、この地域内に流入する事業者あるいは荷主、そういった者への報告ですとか計画書を作らせて、それを管理するというやり方というのも私は規制を補完する意味で非常にこれからのやり方としては有効なんだろうというふうに思います。
 すべて規制でごりごりやるというよりも、大体、環境基準の達成がもう目前に迫っているわけですから、それを補完するという意味でこういう取組が行われるということも適切ではないかなと思いますし、その過程でやはり業者が、自分が、各社がそれぞれどれだけの汚染物を出しているんだ、それを減らすためにどうしたら、どういう対策を講じたらいいかということを自ら管理していくという立場はこれからは世の中の趨勢ではないかなというふうに思っておりますので、こういう取組が行く行くは二〇一〇年の環境基準の達成を超えて、例えばCO2対策とかそういったものにもつながる、まあ改正省エネ法というのが一方でございますけれども、そういった取組にも整合するものであるというふうに我々思っております。
 以上です。
○参考人(大江京子君) 不作為という点で二点申し上げたいと思います。
 私がかかわっております公害の関係で特に感じますのは、例えば浮遊粒子状物質の環境基準物質として定められたのが七二年、それで、自動車排ガスについてPM規制が始まったのが先ほど申し上げたとおり九三年、その間三十年近い間が空いていると。その点で、やはり今回のPM二・五も同様でございます。
 国は非常に慎重な調査研究を行うということで十年、二十年、ともすれば大変な膨大な調査を行います。今もう、現在も二十二年までのそらプロジェクトを行っておりますが、やはり被害者が現に生まれているということ、あるいは外国などの知見で現に危険性がもう言われているという時点で一〇〇%、一二〇%因果関係が明確になるということはあり得ないと、私、そういう立場で。そこで初めて規制ではなく、やはりかなりの蓋然性があると。事、人の生命、身体にかかわる、健康にかかわることでございますので、一〇〇%明らかになったところで初めて規制をするというスタンスではなく、是非前もった事前の防止策、そういう観点から積極的な作為を講じていただきたいと。その点は、特に規制の点で。
 あるいは、被害者対策についてもそうでございます。いまだに因果関係が明確でないということでなかなか対策、救済策が進まない。現に苦しんでおられる方がたくさん、除本先生がおっしゃったとおり、おられる。やはりそこから出発していただく。その観点が、是非積極的な作為を講じていただきたいと、そこはそういうふうに印象を持っております。
○福山哲郎君 ありがとうございます。
 除本参考人にお伺いをしたいと思います。
 先生は、先ほどお話がありましたように、未認定患者の皆様の実態把握をされて、私も論文を幾つか拝見をさせていただきました。具体的な事例を拝見をするとやはり、何というか、リアリティーがありますので、非常に胸にぐっとくることもありまして、先生の論文に出てきた六十歳代から七十歳代の女性の方などは、仕事が終わってこれから五十代、六十代、第二の人生をどう生きようかといったときに実は患者になられて、非常に家族にも気を遣い、お金のことも考え、さらには自分の人生のやりたいことを全部断念をするような状況が幾つか出てきているというふうに考えますが。
 先生、この実態調査でございますが、調査の対象者についてはどのように把握をされて調査をされたのか、お答えをいただけますでしょうか。
○参考人(除本理史君) 調査対象者でありますけれども、残念ながら今、未認定患者というか大気汚染公害の被害者の方を把握しようとすると、例えば認定患者については国が認定していますので把握をされているわけなんですが、それ以外の例えば自動車排ガスで被害を受けた、病気になってしまった方というのはどこにどれだけいるのかというのは恐らくつかまれていないと思います。
 したがいまして、私ども、調査対象をどこに絞るかということで非常に苦労したわけなんですけれども、もう仕方なく次善の策といたしまして、東京大気汚染公害裁判の原告団の中で未認定の方々、四割ぐらいいらっしゃるので、そこの回答可能な方に調査を掛けたということであります。
 先ほど、医療費助成制度なんかをつくって、基礎的な作業として、まず被害実態をきちんと把握するということを是非行政がやっていただきたいというふうに思っています。これがないと議論のそもそもの土台ができないということですので、その点を希望したいと思います。
 以上でございます。
○福山哲郎君 ありがとうございます。
 大聖参考人に簡単にお伺いしたいんですが、大聖参考人は、自動車排出ガス小委員会の委員長であると同時に、交通政策審議会の委員でもいらっしゃいます。
 先ほど温暖化対策の話もされておられましたが、やはり基本的には大気汚染も温暖化対策も、交通需要管理や公共交通機関の整備は僕は非常に重要だと思っておりまして、いわゆる渋滞対策という名目で我が国は道路の拡幅をしたりバイパスを造ったりして、それが逆に大気汚染を助長をしてきたというような歴史的な私は経緯があると思っていますので、環境ロードプライシングとか交通需要管理政策とかいうこと、これからの町づくりに対して非常に重要な要素だと思いますが、それをこの国の政策に当てはめていくときに、やっぱり縦割りの弊害みたいのがたくさん出てくるわけですね。このことを克服することについて、何か先生の御意見があればお聞かせをいただきたいと思います。
○参考人(大聖泰弘君) この対策では、私一つのかぎを握っているのは今後の情報通信技術だと思っています、技術的な観点から申し上げますと。皆さん最近、Suicaでバスも地下鉄も私鉄も乗れるというようなことがありますけれども、ああいう技術を使いますと、そういう交通流の円滑化ですとか渋滞の解消、それから行く行くはロードプライシングのようなものを導入する場合にもそれが不可欠になってまいります。また、それを我々がうまく使いこなすような土壌ができつつあると思いますので、そういう情報通信を使う上で、国土交通省、環境省、それから経産省、警察庁、総務省ですね、そういったところが是非協力していただいて、私、IT交通といいますかITモビリティーのようなやり方を進めていただきたいと思います。
 それから、道路インフラを整備していくということももちろん大事ですし、都市構造の改善というのも必要なんですけれども、これにはかなりの投資と時間が掛かります。そのような長期的な計画ももちろん推進していただきたいわけですけれども、それをサポートする、あるいはそれを克服する上でも、そういった情報通信技術、交通需要マネジメントも含めて、あるいは公共交通機関の利用のしやすさといいますか、そういったものを提供する上でも非常に重要なポイントではないかなと。これは日本の国としても是非推進していただきたい。これは実は大都市の環境対策にもなりますし温暖化対策にもなりますので、一挙両得といいますか、そういう側面があるということを御理解いただいて推進していただければというふうに思っております。
○福山哲郎君 ありがとうございました。
 時間が参りましたので、終わります。

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