05/10

2007

第166国会 参議院 環境委員会 2007年5月10日


自動車NOx・PM法案、地球温暖化問題

○福山哲郎君 民主党・新緑風会の福山でございます。小林委員に引き続きまして質問をさしていただきます。
 まず、NOx・PM法の改正案についてでございますが、東京大気汚染訴訟の和解協議について、裁判所が異例の和解をして早期な解決を図りたいとしたことに対しまして、東京都やメーカー側は医療費の助成について前向きな姿勢を示しているにもかかわらず、国がこの問題について拒否をしていると。本当に十数年続いたこの状況について、最後の最後まで国が拒否をしているような状況が本当にいいのかどうか、大変悩ましいところでございます。
 そんな折、本会議の質問でもさしていただきましたが、総理が誠意を持って対応しなければいけないと答えられ、また環境大臣も次の日に、金銭的な負担を伴うことも含め和解に向けた追加策を用意する考えを示されています。
 現実問題として、この医療費助成について今どのようにお考えなのか、大臣の率直なお気持ちをいただきたいと思います。
○国務大臣(若林正俊君) 委員がお話がございましたような経過を踏みまして、現在、裁判所側からの話合いによる決着の可能性を求めるという趣旨で和解を勧められたことでございました。
 この和解の話合いでございますけれども、今原告側とどういうような事柄につきまして話をしているかは、いよいよ和解の協議も私自身は大詰めになってきているというふうに認識をいたしておりますので、中身についてお話は申し上げられませんけれども、総理が言われておりますように、この訴訟の解決に向けて原告の方々の意見をよく聞いて、国としてできること、できないことがありますが、できるだけ誠意を持ってできることを織り込んで和解を進めていきたいと、このように考えているところでございます。
 特に、大気汚染に係る健康被害についての助成については、因果関係などの問題ございますけれども、自動車排ガス対策の一層の推進を図るとか、あるいは健康相談など、被害者、原告側のニーズがいろいろございますニーズを踏まえて、それらを充実させて、できるだけ幅広く対応策が取れますように東京都とも協議をいたしておりますが、和解でお互い解決を図ろうという機運が今盛り上がっておりますので、何とかここで決着を付けたいと、こんな思いでございます。
○福山哲郎君 大臣もなかなか難しい答弁の仕方をされておられまして、それだけ和解の中身が厳しい状況なんだろうなというのは推察いたしますが、最後の方におっしゃられました医療相談とかそういう話に持っていくことなく、やはり医療助成制度のことについても前向きに考えていただきたいと思いますし、やっぱり肉体的にぜんそくでしんどいことも含めて、前回の参考人質疑でも被害者の生活の様子、失業、そして転職、そして実はもう動けなくなる、人生後半、非常に厳しい状況になるような例も参考人から披瀝もありまして、長年この問題、時間も掛かっていることも含めて、是非、若林大臣におかれましては安倍総理を説得をして、若林大臣主導で和解に向けて、医療費助成制度創設に向けて御尽力をいただきたいことを重ねてお願いをさしていただきます。
 さらには、これもずっと懸案になっておりますPM二・五の環境基準の設定でございますが、一体いつできるんだと。この間も私、実は参考人の審議で申し上げたんですけれども、私、実は平成十三年の審議もこれかかわっているんですね。そのときも同じ議論をしているんです。あれからもう何年たっているんだ、六年たっているのか、要は、一体いつになったらできるんだと。そして、ようやく環境基準が設定してから、その後、いわゆる規制の政策の議論になるわけでございまして、これはやっぱりスピード感としては遅過ぎると思っておりまして、そのことについて、一体いつをめどにしているのかということについてお答えをいただければと思います。
○国務大臣(若林正俊君) 環境省としてはいつごろまでに結論を出すかというお話でございます。
 確かに、基準の設定に時間が掛かっていることは委員御指摘のとおりでございますけれども、その理由としてあります長期にわたる疫学調査が必要であるというようなことから、検討に着手をいたしましたのは平成十一年の調査研究の開始以来でございます。今までどのような検討で時間が掛かってきたかということについては私からはるる申し上げませんけれども、私は既にその気持ちを明らかにしたところですけれども、このPM二・五の基準設定に関しまして近く検討会を立ち上げるという腹構えでございまして、学識経験者から構成されます検討会を立ち上げまして、その調査結果、さらに諸外国の知見も踏まえながら、微小粒子状物質に係る健康影響についての評価の専門的な検討を進めたいと、このように考えているところでございまして、現時点で直ちに今いつまでに設定するというふうに申し上げる状況ではございませんけれども、まずはPM二・五に係る健康影響評価の検討の作業を急ぎたいと、そのように考えているところでございます。
○福山哲郎君 竹本大気環境局長、何かありますか。
○政府参考人(竹本和彦君) 先ほど大臣の方から御答弁申し上げましたとおり、このPM二・五に係る調査につきましては、平成十一年度より開始をしてきたところでございます。とりわけ、福山委員御指摘がありましたとおり、十三年度の、前回のこの法律改正の議論の中でも御指摘があったところでございます。ちょうどこの平成十三年から、また新たに長期疫学調査、五年間の計画で取り組んできておるところでございます。ちょうど十八年度までの継続的に実施をする必要がありまして、この調査結果の早期の取りまとめに向けて鋭意作業を現在行っておるところでございます。
 先ほど大臣の方からも申し上げましたとおり、こういった内外の成果、知見の集約をこの検討会、専門家から成る検討会にも御報告をして、専門的な立場からの検討を進めていただきたいと思っているところでございます。
○福山哲郎君 もう何度もこの間議論がありましたので、もうしつこく申し上げませんが、欧米はもう環境基準作っているわけです。要は、何でできないんだという話なわけですよ。欧米ができて、それに対する措置もできているのに、平成十三年から今年にかけていつまでも調査をやって、環境基準すら設定できないと。措置についてはその次の段階にあると。要は、分からないわけですよね。明確な説明になってないわけです、調査をしている、調査をしていると。いつまでの調査かというのを区切って、それはある種、大臣、政治決断も含めて、ここまでにやれと言ったら私はできるものだというふうに思っておりまして、そこは環境省としては、やっぱり環境省の信頼も含めて、しっかりとやっていただきたいと本当に切にお願いを申し上げたいと思います。
 私、あと実は十分しかないので、次に行きます。
 小林委員からもお話がありました。昨日、新聞報道の、削減目標を二〇五〇年までに半減という話がありまして、これは政府はということが各新聞の主語になっているわけですが、先ほど、大臣の答弁によりますと、政府として方向を固めた事実はありませんと。また、塩崎官房長官もそのような発言をされています。
 ということは、これは一体どこから出て、どういう経路でこういう報道がなされたと大臣はお考えですか。
○国務大臣(若林正俊君) さっぱり分かりません。
○福山哲郎君 では、大臣としてはこの方向性についてはよしとお考えなのかどうか、お答えください。
○国務大臣(若林正俊君) 先ほど小林委員にお答えを申し上げておりますが、基本的には、温暖化をストップするためには、今の排出量を半減をすると、そのことによって吸収量とバランスを取るということがなければストップ掛けられないという認識でおります。そのことをいろいろの場で私は説得に努めてきているわけでございますが、問題は、いつまでにそれを達成するかということに懸かっていると思います。延ばせば延ばすほど温暖化は進んでいくわけでございます。
 どの辺までが耐えられる温度上昇であるのかといったようなことについてはいろいろな考え方がございまして、さきの国連のIPCCの第三委員会における報告も幅広く問題を出しておられるわけですね。ですから、私どもは、アメリカも、そして中国、インドも納得の上で削減に一緒になって努力をするという基盤をつくっていくためには、EUが言うような早い時期での目標達成ということだと、うまく説得ができないおそれもございます。
 そんなことを考慮しながら、中国あるいはアメリカとの関係も、いろいろ意見交換をしている段階でございますので、私ども日本国の政府として、報道されるように、二〇五〇年ということをここで政府として決めることが適当であるのかどうか、効果的であるのかどうか、目的を達成することになるのかどうか、その辺については今慎重に検討しているところでございまして、今私として申し上げる段階にないと、こういうことでございます。
○福山哲郎君 そうすると、この報道は一体どこが、だれがどういう意図で出したか、非常に不可思議な問題でございまして、私は方向性としてはいいというふうに思っております。
 実はもう一点あります。
 今日の新聞でございまして、日本は、日本のエネルギー効率の高いシステムを各国が採用すれば世界じゅうでCO2を年間二十億トン削減できると、このような文書を国連気候変動枠組条約事務局に政府が提出していたことが分かったという報道がありますが、こういった内容の文書を提出していた事実は本当にあったのかなかったのか、お答えいただけますか。
○政府参考人(南川秀樹君) 私、今日の新聞紙は見ておりませんので、今の福山委員の質問にぴったり当てはまるかどうか分かりませんが、私の承知する限りで答えさしていただきます。
 日本は、国連の気候変動枠組条約の中にAWGというグループがございます。これは、具体的に京都議定書による削減の義務をかぶっている国の集まりでございます。その国に対しまして、国連事務局の方から、今後の、何年先とは言わないけれども、今後どんな削減のポテンシャルがあるだろうかと、それについて日本政府としての、各国政府としての見解を出してほしい、そういった依頼がございました。
 それにつきまして、我が国としまして、例えばでございますけれども、仮に日本並みのエネルギー効率というものをもし多くの国が採用すれば相当程度の削減ができるということを幾つか試算をしまして、それを付けて提出をしております。恐らくそれが引用されたと思います。
○福山哲郎君 アドホックグループの中でその議論が出たんだというふうに思いますが、この文書、提出されたものをもし出せるんだったら出していただきたいと思います。
 私は、温暖化の議論がいろいろ出てきておるのはいいことだと思っています。こういう政府が削減目標提案へという話が出たのも悪いことではないと思いますが、問題は、例えば選挙向けやサミット向けのプロパガンダであったりパフォーマンスであれば意味がないわけで、現実に削減目標を大きくするなら、二〇五〇年、五〇%削減するんだったら、ちゃんとロードマップを示さなければ説得力がありませんし、現実に、我が国は第一約束期間の約束が守れるかどうかまだ危ういところなわけですね。
 今後、やっぱり国際的な中で主導的な役割を果たしていくために、やはり具体的な政策のメニューの中でこうやって削減をするんだというロードマップを私は示していくべきだというふうに思いますし、大臣が全くあずかり知らないところでこういう報道が出ること自身、環境省としては実は問題意識を持っていただきたいと私は思っておりますし、安倍総理は環境を争点にしたいとおっしゃっておられるみたいですので、そのことも含めて、本当に温暖化については積極的な対応を環境省としては、大臣、頑張っていただいておりますが、若干最近元気もないし、前は排出権取引については前向きに考えていただいていますと言っていただいていたと思ったんですが、最近ちょっと元気もないし、消極的な発言も目立つようなので、よろしくお願いしたいと思います。
 ちなみに、民主党は昨日、脱地球温暖化戦略というのを党でまとめました。これには二〇五〇年に五〇%削減の方向性だということも明記をいたしましたし、更に言えば、木の文化の再評価を含め、脱炭素社会へ向けたライフスタイルの転換を地域や学校やいろんな分野でやっていくということもまとめました。いろんな御批判もあるかもしれませんが、国内排出権取引制度の導入についても早期に導入をするべきだと、そして国際炭素市場に向けて、ルール作りに向けて、日本は主導権を果たすべきだということもまとめさしていただきました。
 我々は残念ながら今野党でございますので、なかなかそこがすぐに実現というわけではありませんが、多分、恐らくですが、温暖化に対して日本が積極的に対応しなければいけないとか、それから地球上の生態系の問題を考えても、温暖化に対応、日本が主導的な役割を果たさなければいけないとか、国際マーケットの中でEU、アメリカに日本が乗り遅れてはいけないし、技術のある日本の企業がちゃんと国際競争力も保つようにしなければいけないというような問題は、恐らくそんなに環境大臣と私は見解が違わないと思っておりますし、そのことも含めて積極的に、大臣、頑張っていただきたいと。
 御感想を、私もエールも送らしていただきましたので、お答えも含めてちょっと御答弁いただいて、私の質問、今日は終わりたいと思います。
○国務大臣(若林正俊君) 今、福山委員から、民主党としてこの法案を策定をされたというお話を伺って……
○福山哲郎君 基本方針です。
○国務大臣(若林正俊君) 基本方針ですか、大変心強く思っておりますので、我々もそのことをよく御説明もまた伺って、参考にできることは参考にしながら、この地球温暖化、気候変動枠組みの安全保障につきまして、日本として世界に貢献できるようにしてまいりたいと思います。
 ただ、私が、先ほど大変腰を引いてきているんではないかという御心配のお話がございました。それは、日本が本当に精一杯汗をかき、国民の皆さんの御理解をいただいて、日本としてこの削減をいたしましても、あるいはまたEUも一緒になってやるといいましても、地球の温暖化を進めていくこの排出量の中で二割程度のものにすぎないわけですから、そういう意味では、日本が用意があるという意味でしっかりとした準備をしていくことは、お互い議論をし、検討して進めなきゃなりませんけれども、それを外に発表して、日本はこれでいくんだということを言うことについては、先ほど来るるお話し申し上げていますけれども、やはり大きな排出国でありますアメリカや中国、インドなどの主要排出国も抱き込んで、巻き込んでいけると、それぞれの国にはそれぞれの国の事情がございますので、それらの国の皆さん方も納得をさせていくための責任もやはり日本はあると、こう考えているわけでございます。
 そういう意味で、いろいろな意見をいただきながら、そういう工夫を凝らして我々も対応をしていきたい、このように考えているところでございます。
○福山哲郎君 終わります。

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