06/03

2008

第169国会 参議院 環境委員会 2008年6月3日


地球温暖化対策推進法改正案(参考人質疑)

○福山哲郎君 おはようございます。福山でございます。
本日は、参考人におかれましては、御多用の中大変貴重な御意見を賜りまして、心から御礼を申し上げる次第でございます。
それぞれの参考人のお話を承りまして、大変刺激にもなりましたし、大変審議に関しまして参考になる御意見をいただいたというふうに思っているところでご ざいます。もうたくさん、専門家の方ですので、時間がありませんので駆け足で行かせていただきます。
まず、江守参考人にお伺いをしたいと思います。
一つは、先ほどの先生の御意見ですと、最後の中長期の排出削減目標について、途上国も先進国も今のままでは解がなくなると、でもそうではないことが必要 だというふうなお話をされて、まあ御自身が科学者でいらっしゃいますからということで若干抑制的な御発言でございましたが、先生は若手の学者等を集められ て若手専門家による地球温暖化対策審議会というのをつくっておられまして、将来的に一人当たりの二酸化炭素の排出量をこの程度に全地球でしなければいけな いというような提言も含めて野心的なことを発表されておられますが、この若手審の報告について若干御紹介をいただければというのが一点。
それから二点目でございますが、科学はもう結論を出したと、あとは制度、政策をどうするかというような趣旨の御発言をいただきましたが、いまだに世間に は、環境問題はうそが多いとか、それから二酸化炭素は原因は本当かみたいな話があちこち何か訳知り顔の方がいらっしゃるんですけれども、そういった方々に 対して、もし科学者の立場として何か御意見があればいただければと思います。よろしくお願いします。
○参考人(江守正多君) 御質問ありがとうございます。
まず第一点目につきましてですけれども、本日、私は国立環境研究所の江守ということで参加して、出席させていただいておりますので若干戸惑うところがあ るんですが、私、全く個人的な立場で全く自発的に集まった仲間と地球温暖化の政策をどうしたらいいかということを議論して、そして報告書をまとめたものが インターネットなどで公開しております。
これは、全くその立場で、ちょっとその国立環境研究所の人間という立場から外れて申し上げますけれども、若手と申し上げておりますが、私が三十今八歳な んですけれども、私は最年長のグループでありまして、ほとんどが三十歳前後であるけれども、温暖化の様々な側面に関して専門的な知識を持っている人たちで 相談しました。
その中心メンバーは、実は前回の参議院選挙のときに「京都の約束」という署名運動を行いました。是非、温暖化政策を選挙の争点にしてほしいと、具体的な 政策を掲げてほしい、是非その制度をつくってほしい、温暖化対策をした人が得をするインセンティブになるような制度をつくってほしいというお願いをする署 名活動を行いまして、その後に、実際に自分たちでもどうやったらうまくいくのか考えてみたいということで話し合ったものです。
具体的なことは今日はちょっと申し上げませんけれども、その中で一つメーンメッセージとして書かせていただいておりますのは、最近いろんなところで申し 上げているんですけれども、心技体という、心、技、体ですね。特に、昨今の議論を伺っていて申し上げたいのは、日本は技術はトップであるので、もう技術で は削減の余地はほとんどない。先ほども申し上げましたけれども、それは確かに正しいんだと思います。しかし、その温暖化の削減というのは技術だけでは成す ものではなくて、心、すなわちライフスタイルや価値観ですね、それから体と申し上げておりますのは、社会のシステム、制度やインフラだと思いますけれど も、そういうところを抜本的に変えていくという次の新しい文明を目指した大きなチャレンジなんだろうというふうに、我々の世代が、の一部でありますけれど も、とらえているということを是非参考に申し上げたいと思います。
二点目でありますけれども、温暖化の科学に関しまして現在でもいろいろな意見があると。特に、極端な意見ほど本が売れる傾向にありますので、私もよく質 問されて対応しておりますけれども、これは私は様々なレベルのものがあると考えています。
温暖化の科学はまだこういうところは分かっていないじゃないかといったときに、既にもう済んだ話を繰り返し繰り返し、何といいますか、言っていると。そ ういうものはもう世間でもだんだん相手にしないようになっていっていると思いますし、我々も余り相手にしていません。そういうのはほっておけばいいんだと 思っていますけれども、一部には、まだ確かにそういうところは分かっていないと、科学的に確かに調べる価値があることを指摘する向きもあります。そういう ものは大事だと思って、科学的に是非そういうことはこれから調べていきたいという立場で対応したいと思っております。
特に、後者の意見が出てくる背景には、地球温暖化が余りにも単純化して、余り科学的な細かいことを皆さん理解せずに、何しろよく分からないけど大変だと いうことで語られる傾向があるということに原因があるんじゃないかと考えております。そういったところも配慮していかなければいけないと考えております。
○福山哲郎君 ありがとうございます。座らせていただいたまま質問させていただきます。
加藤参考人にお伺いをいたします。名古屋市の取組に関しては心から敬意を表したいと思いますし、市民を巻き込んでいる活動に対しても本当にすばらしいと 思っておりますが、名古屋市自身としてのグリーン購入やグリーン契約等についてはどの程度進んでおられるのか。それからもう一点は、市民を巻き込むとき に、市民の反応は最初はなかなか積極的ではないというように推察するんですが、この時代というか、こういう時代背景の中でどういう反応が市民からあるの か、お聞かせいただければと思います。
○参考人(加藤正嗣君) グリーン購入やグリーン契約ですね。済みません、今日データはちょっと持ってきておりませんが、一応率先行動をやりましょうとい う計画を定めまして、グリーン調達の関係にはほぼやるべきことはやっているつもりでございます。それから、グリーン契約の関係では、特に電力購入のも新し く法律でき上がりました。で、この夏から次の期の電力調達の入札を掛けるわけですけれども、その段階から新しい環境に配慮した電力調達の契約を始める予定 で進めております。
それから、市民の反応ですけれども、そうですね、正直言って様々でございます。ごみのときはさんざんもめて、いろんな、まあ二年間ぐらいの間、市民が やっぱり鳥はかわいそうだから埋め立てるのやめた方がいいんじゃないかとか、あるいはやっぱりごみはどこかへ捨てなきゃいけないんだからしようがないよ。 で、同じ、その両方の思いの中で、絶えず日々新聞を見るたび、人の意見を聞くたびに心が揺れていたと思うんですね。そういう時期が二年間ぐらいあった中 で、いよいよ市もとうとうまあ最後の腹をくくって干潟を守るためにごみを減らしてくださいとお願いしたんで、役所に不満はいっぱいあると、だけれども今回 はやらなきゃしようがないというふうに市民自身も腹がくくれた。
ただ、CO2の場合は率直に言ってそこまで参っておりません。ですが、先ほども申しました二十項目ぐらいのいろんなチャレンジメニューをお示しする中 で、一番へえっていう度合いが高いのが、暖房便座にふたをしましょうというやつがございます。
私どもは、これをやるとCO2どれだけ減らせるよ、幾らお金が、電気代もうかるよっていうのを両方お示ししているんですが、暖房便座ふたをするというの は、確かにふたをしないでおくと、いつまでたっても、どんどん冷えていってしまいますから、どんどん電気食うわけですよね。ふたをしておけば、まあ一定程 度暖まればそれ以上電気を食わない。これで年間三千六百円ぐらい得をするよというような話だったかと思いますが、そういったところから少しずつ話をしてい けば、ああ何だ、そんな簡単なことでも結構減らせるんだというところまで参っております。
ただ、先ほど環境モデル都市の御提案をしたときに、御説明したときに、全体で化石燃料の消費五分の一にしたいという目標を掲げたと申し上げましたが、や はりこの中で一番個人生活では車が多いんですね。車によるCO2排出量が個人生活ですと四割ぐらいございます。車で一キロ乗るのに消費するCO2と、エア コン一時間使う、それからテレビを五時間ぐらい見る、それから電灯ですと十時間つけるというのと同じくらいのCO2ですので、電気を十時間節約するよりは 車一キロ節約する方がうんと簡単なんですが、この名古屋の町、車の町名古屋でなかなかこれができません。でも、いよいよ、早晩ガソリンがリッター五百円ぐ らいになってしまうような時代がきっと来ると思うんですね。そうなったときに今の暮らしはできませんよ、それまでに暮らしを変えておかないと大変ですよね というようなお話合いを今進めているところでございます。
なかなか簡単ではございませんが、根気と志といいますか、それでやっております。
○福山哲郎君 ありがとうございます。
大塚参考人にお伺いをさせていただきます。
先生の御主張は、国内排出量取引制度も含めて積極的にというように私は承っておるんですが、国内排出量取引制度については両論あります。ただし、将来の ことを考えると、私は日本の国益になると思いますし、企業にとってもインセンティブが働くと思っています。確かに公平性の担保や削減量をしっかりと確保す る等の制度設計での留意点はたくさんあるとしても、私は導入をちゅうちょするときではもうないと思っておりますが、そのことについて先生の入れるべきだと いう、何というか、御主張を是非ここでお披瀝をいただければと思います。
○参考人(大塚直君) どうもありがとうございます。
今おっしゃっていただきましたように、私も基本的には今おっしゃっていただいたのと同じ意見でございまして、国内排出量取引についてはいろいろな問題点 とか配慮すべき事項は多いわけですけれども、いろいろなことを考えると今制度を検討すべき時期であると思っております。
ただ、先ほど申しましたように、今回の温対法の改正法案の元になっている中央環境審議会と産業構造審議会の合同の会合におきまして、追加対策とそれから 既存の対策で何とかみんなで頑張ればやっていけるという数字が出ていますので、これについてまた進捗管理をするということに、目達計画についてなっており ますので、是非その進捗管理のときにやっぱり無理だということが分かったときには、国内排出量取引を含めた対策を取ることに関して導入を御検討いただきた いと思います。
現在はその準備段階だというふうに考えておりまして、先日、環境省の方でも国内排出量取引の検討会で中間取りまとめを出させていただきましたけれども、 そこで四つのオプションを出させていただきましたが、従来、排出量取引というとEUの排出量取引だけだというふうに思われていたところがございますけれど も、我が国の事情等も考え、かつ公正な考え方として四つのオプションがあるというふうに思われますので、これはたたき台にすぎませんけれども、是非、どう いう方法が適切かということも含めて制度設計について議員の先生方が真剣に御議論いただけることになることを私としても願っております。
ただ、今回の改正法案についてはもう少し様子を見て、結果を見て導入について検討していただきたいということが私の意見でございます。
以上でございます。
○福山哲郎君 ありがとうございます。
早川参考人、済みません。時間がなくなってしまいました。申し訳ありません。
これで終わります。

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