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2005

第163国会 参議院 憲法調査会 2005年10月19日


国民投票法制について参考人質疑

○福山哲郎君 民主党・新緑風会の福山哲郎でございます。隅野参考人、只野参考人におかれましては、貴重な御意見をちょうだいいたしましてありがとうございます。慣例によりまして、座らせていただきながら質問させていただきます。よろしくお願いいたします。
 憲法改正の問題は、国会が発議をして国民投票にかけるという面においての国民投票制度に今大変注目が集まっておりまして、その議論も、今日両参考人の先生方からお話を伺いまして、いろいろ考えなければいけないことがあると思うんですが。
 少し考えなければいけないと思っているのは、実は国会法との関係でございまして、隅野参考人の論文にも若干触れられておられましたが、国民投票制度の前に国会法の改正という二段階の構えがあると思っています。特に、国会が発議をするのは両議院の三分の二という文言があるわけですけれども、じゃ実際に国会に憲法改正案を発案をするときの要件をどのようにするのかと。例えば、今我々でいいますと参議院は十人以上の議員が集まれば議案を提出ができるわけですが、じゃ国民にかけるのは両議院の三分の二という議論の中で、国会に憲法改正案を発案するときに一体どのぐらいの数の要件で憲法改正案を国会に提出をするのか、これ非常に問題点で、どのぐらいのハードルにするのかという点が必要だと思います。
 更に申し上げれば、細かいことを言うようですが、例えば国会に提出をされて、委員会で議論をされている憲法改正案が議決をするときに、我々は憲法五十六条の二項による議事の可決ということで、出席議員の過半数で議案は本会議に上程されるわけですね。しかし、国民に発議するのに三分の二以上の数が要るのに、じゃ国会の委員会で議論をするときに過半数の議決で本当にいいのかと。
 こういう実は憲法改正をするときにはまず国会法の改正をきちっと議論をしていかないと、なかなか発議の後の国民投票とのバランス、制度上の設計の問題でなかなかうまくいかないという点があると私は思っておりまして、隅野参考人におかれましては何か御意見や、今私が申し上げた二つの提案の問題と議決の問題について何か御意見があれば賜りたいと思います。
○参考人(隅野隆徳君) 御質問ありがとうございます。
 この点はほかの欧米諸国でも、憲法規定に盛り込まれている場合もあるし、そうでない場合もあるということがあります。
 それともう一つ、国際的な視野で見た一つの問題点は、先ほど、私のレジュメの一ページの下のところにありますように、国民の発案権というのがアメリカの諸州あるいはスイスのカントンなどにはあるわけです。つまり、これも例えば五万人とか十万人の住民、州民の提案がある場合には、そこで一般的な提案の場合もあるし、あるいはちゃんと条文をそろえた成案として発案するという両者もあって、前者の場合には国会でそれを案文化するという手続もあるようです。
 日本の場合にそういうところをどう位置付けるのかということも、実は人民主権という視野からすれば全く視野から外してよいとは言えない、そういうこともどうとらえるのかと、世界から見れば一つの問題点になると思います。
 それから、現在の国会法の関係でいえば、確かに予算案とか予算関係の法案提出とかそれについての発議の、発議というか法案の提案者というところの人数要件があるように思いますが、憲法の場合にそこを具体的にどういう数字が適当かというのはすぐ思い当たりませんが、余り高いレベルで、予算を伴う法案よりも高いレベルでやった場合に、少数意見の、あるいは少数勢力の場合の意見はどうなのかと。つまり、憲法改正問題という場合にはかなり長期的な、将来的な構想が絡んでいるものですから、少数意見必ずしも否定されるべきというふうにはならないと思いますから、そこのところで余り高い人数規制をするということがよいのかどうか。確かに、全く一人でよいというふうにはならないと思いますが、そこの勘案が一つの問題点かと思います。
○福山哲郎君 只野参考人は何か御意見ございますでしょうか。
○参考人(只野雅人君) 今の話なんですが、憲法から一義的に決まってくるということでは恐らくないんだろうというふうに思います。
 今のお話にもありましたように、余りハードルを上げ過ぎますと自由な発議ができないという問題が出てまいりますが、他方で、先ほどのお話にもありましたように、最終的に三分の二で議決がなされるということを考えますと、それなりの発議要件といいますか、人数があって発議ができるという仕組みを整える方が合理的かなという感じもいたします。
 委員会については、通常は過半数で議決がなされるということですので、恐らくそういう形にはなるんだろうというふうには思いますが、ただ、もちろん本会議では三分の二ということになりますので、それを配慮した形で議論や議決が行われていくんだろうというふうに考えます。
○福山哲郎君 続いて、フランスのことについてちょっと只野参考人にお伺いしたいんですが、先ほど御説明をいただいた、EU憲法条約の批准に対して否決をされたと。これは先ほど若干御説明いただきましたが、大統領の発議なんですね。別に、かけてもかけなくてもどちらでもよかったわけですよね。十一条でいうと、大統領が国民投票を発議をするという話になると、若干私なんかが懸念するのは、濫用はないのかと。
 先ほど先生は非常にそこは重要視されて、重たいというふうにおっしゃられましたが、我々としては、制度上、濫用の危険性はないのかということと、今回シラク大統領が、別にかけなくてもいいのに国民投票にかけて否決をされたと、こういう何というか政治的なあやみたいなものというのは制度上フランスでよくある話なのか。ここの部分をちょっとお伺いをしたいということと。
 あともう一点は、我々は、前回の憲法調査会でも簗瀬議員から、憲法改正以外の国民的な政策課題についても国民投票制度を導入をしたいというふうに思っているわけですが、そのときの何というか発議の条件というのは憲法改正ぐらい重たいものにするべきなのか、こういうフランスのように大統領が発議をすればという話になるのか。先ほどの話を若干引用して申し上げれば、わざわざ衆議院解散しなくても、そういう制度があれば、小泉総理は国民投票にかけておけば、それで郵政の民営化がどうかという議論はできたわけですね、国民投票的にはと。ですから、その点について只野参考人、もし何か御示唆をいただければと思います。
○参考人(只野雅人君) まず、最初のフランスの話なんですけれども、確かに十一条を使いますと議会の頭越しに国民投票にかけることができるということで、例えば過去やはり憲法改正なんかをめぐって、恐らく濫用という評価をしてよかったと思うんですが、という点があるということは踏まえておく必要があると思うんですね。
 通常の憲法改正の場合には両院の議決が必要ですので、やはりそこでかなりの議論が行われるだろうと。国会の議論はオープンですので、やはり世論を含めた議論というものが提供されるだろうというふうに思います。ですから、やはり議会での審議の重要性ということは改めて強調をされるべきかなと、こういう感じがするわけです。
 ただ、今回のように、EU憲法条約のように非常に重要な問題については、十一条のような規定があるのであればやはり国民投票にかけるというのはそれなりに筋の通った話だったのかなと、こういう感じはいたします。ですから、むしろ世論を説得するプロセスに問題があったのではないかという感じがするわけです。
 それから、日本について、例えば国民投票を導入する場合、発議要件などをどうするかということなんですけれども、実際には恐らく非常に重要な問題に絞って行われることになると思いますので、少なくとも過半数以上ということは必要だろうと思うんですね。三分の二が必要かどうかというのはちょっと議論の余地のあるところだろうと思います。
 ただ、恐らく現行憲法を前提にしますと、これ諮問的な国民投票ということになるんですが、幾つかやはり留意すべき点というのがあるだろうと思っておりまして、一つは、今お話をしたように、やはり議会での審議の場がきちんと確保されているかどうか。いったん、諮問的であっても国民投票で民意が表明されますと、それを覆すということは非常に難しくなりますので、その審議の問題。それからもう一つは、適切な民意の表明ができるような設問を考えるといった点も多分非常に重要だろうと思うんですね。それから、場合によりますと、非常にある意味、議会の責任放棄につながるような利用の仕方というのも懸念されないわけではない。
 ですから、諮問的国民投票って非常に私重要だとは思うんですけれども、そのテーマの選定含めて手続などについては、やはり憲法改正に劣らず慎重な審議や検討は必要だろうというふうに思っております。
○福山哲郎君 今のことに関係してなんですが、そのフランスの場合には十一条でも憲法改正が二度国民投票にかかったとおっしゃられましたけれども、そうすると国民投票にかかる場合に、その憲法改正の場合には議会の同意が要るとしても、そこから先の要件は同じ条件だというふうに考えていいわけですね、国民投票にかけられてからの、何というか要件というか条件は。
○参考人(只野雅人君) 国民投票の場合にはその都度デクレで中身が決まってきますけれども、恐らくは大体共通したものがあるんだろうというふうに思います。今回はEU憲法条約のみ確認しましたので、過去のものをきちんと見ているわけではないんですが、基本的なところは大体同じになってくるだろうというふうに思います。
○福山哲郎君 もう時間がありませんので、両参考人に、済みません、共通の質問を二つだけして、簡単にお答えをいただければと思います。
 一つは、投票する側の年齢の問題ですが、我々は十八歳以上、若しくは義務教育課程修了者にも条件によってはという議論をされていますが、国民投票ができる有権者の年齢をどのようにお二人の参考人の方は考えられているかということと、それから、先ほどお話がありましたように、投票率の問題でございまして、フランスの先ほどの例で見ると七割の方が棄権をしていると。賛成が七〇%といいながら七割が棄権しているということは、実態でいうと国民の五分の一しか賛成をしていないわけですね。その投票率みたいなものに対して何か条件を付けるとか、何%以上とか、条件を付けるような例も漏れ聞きますが、その件についてどのように考えられるか。
 二点について簡単にお二人の参考人にお答えをいただいて、私の質問は終わりたいと思います。
○会長(関谷勝嗣君) それでは、隅野参考人からお願いいたします。
○参考人(隅野隆徳君) 第一点は、やはり十八歳以上というのは最低であるというふうに思います。世界のG8の諸国は一般に普通選挙権が十八歳以上であるということとも関係します。
 第二点は、先ほどもちょっと触れましたが、やはり有権者の過半数を最低の投票率というふうに設定することが日本の憲法状況、将来の憲法の安定のためには不可欠であろうというふうに思っています。
 以上です。
○会長(関谷勝嗣君) 只野参考人、お願いします。
○参考人(只野雅人君) まず、投票年齢なんですけれども、私も国際比較から見まして十八歳というのには十分合理性があるだろうというふうに思います。ただ、憲法では、選挙の際に国民投票を行うということも言及していますので、恐らく併せて選挙権それ自体についても見直しをする必要があるだろうと。できれば両方併せて十八歳という設定をするのが一番合理的ではないかというふうに思います。
 それから、最低得票率ですけれども、やはりこれ国民投票、憲法改正国民投票の重要性ということを考えますと、今、隅野参考人からお話がありましたように、どこかで線を引くとすればやはり過半数というものが考えられていいんではないかと。他の投票ではかなり低めのものが設定される場合もありますけれども、この件に関しては過半数というのが一つの線かなというふうに思っております。(「何の過半数」と呼ぶ者あり)
○会長(関谷勝嗣君) 今質問がございましたが、過半数は何の過半数かという簗瀬さんからの質問ございましたが、有権者ですか、投票者数ですか。
○参考人(只野雅人君) 五〇%の投票率があると、こういうことでございます。
○会長(関谷勝嗣君) おおむねで五〇%だそうです。
○福山哲郎君 会長、ありがとうございました。
○会長(関谷勝嗣君) ありがとうございました。

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