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2013

第185国会 参議院 外交防衛委員会 2013年11月28日


障害者権利条約 参考人質疑

○福山哲郎君 おはようございます。民主党の福山哲郎でございます。
参考人の皆様におかれましては、本日は建設的かつ本当に思いのこもった御発言をいただきましてありがとうございます。心から御礼を申し上げます。
また、参考人の方々ばかりではなく、障害当事者の皆様、そして御支援をされている皆さん、そしてそれぞれの団体の皆さんの長年の御尽力で権利条約批准に向けてあと一歩というところまで来たことに対して、本当に心から感謝と御礼、敬意を表したいと思います。本当にいろいろありがとうございます。
私も、御案内のように、二〇一〇年六月二十九日の、いわゆる権利条約に向けての障害者制度改革の推進のための基本的な方向、これは民主党政権でございましたが、障害者基本法の改正や差別禁止法の改正、総合支援法の制定等々を決めさせていただいて、三年半で、先ほど久保参考人からお話がありましたような法律の制定が与野党を超えて成立をいたしました。これはもう本当に、民主党政権で地ならしはさせていただきましたけど、その前の歴史、そしてその後の今の自公政権の中でも御協力をいただいた結果だというふうに思っておりまして、今日、四人の参考人の皆さんがいみじくも、これが出発点だとおっしゃったと思いますが、まさにこの権利条約の批准を出発点に、より良い制度改革に向けて、また今後ともお力添えをいただきたいと冒頭申し上げたいというふうに思います。
私も今、地元の京都で、京都府身体障害者団体連合会の会長を仰せ付かっておりまして、多くの障害者の皆さんと接する中で、権利条約どうなっているのという声をたくさん聞きます。何とかこの国会でという思いは変わりませんので、よろしくお願いしたいと思います。
それでは、座らせていただきます。
多くの皆さんから同様の御指摘がありました。個別の話を聞いていくと切りがないので、若干大きな話をさせていただきたいと思うんですけれども、いわゆる三十三条というのは今後の障害者政策を動かしていくために非常に重要な要素だと思っております。
まず、いわゆるフォーカルポインツの問題です。政府内の連絡先というものがありますが、これ、いわゆる条約の実施の関連事項を扱うところですが、一般的には条約のことですから外務省になります。しかし、外務省が受け取ってそのまま厚生労働省の社会・援護局に丸投げをしていれば、多分そのままというような事態もたくさん出てくると思います。
先ほど藤井参考人が言われましたように、内閣による担当部署の強化ということで考えると、このフォーカルポイントは一体どういう機関、在り方として必要だとお考えか、まず藤井参考人、そして川島参考人にお伺いをさせていただきたいと思います。
同様で申し上げれば、実はそのいわゆる監視の機関ですが、これ条約上の三十三条の二項は難しくて、監視の機関と促進する機関が別々に書かれています。これ、促進、保護、監視というものは、これは皆さん方のイメージでいうと同じ組織なのか別々の組織を考えておられるのか。このことについて、これは、済みません、同じか別々かイメージを言っていただければいいと思いますので、四人の皆さん、それぞれお答えをいただければと思います。
それから、重要なのは、更に言えばその監視機関でございます。そしてモニタリング機関でございます。モニタリングは、先ほど障害者政策委員会でというお話がありましたが、実際に、じゃ障害者政策委員会がモニタリングをする手足があるのかというと、それぞれの団体の皆さんは頑張っていただけるかと思いますが、それを集約し、先ほど藤井参考人が言われた調査をし、モニタリングとして適切なものを国連の方に報告する場合に、このモニタリングの仕組みは、私は今全く国内は足りていないと思っておりまして、この整備についてはどうお考えをいただいているのか。これも、もう時間ありませんのでこれでやめますが、四人の皆様にお伺いをすることによって次の審議につなげたいと思います。
最後、これだけ、一個だけお伺いしたいのですが、前文に、障害者の定義の中で、障害が発展する概念であると書いてあります。この発展する概念というのは、非常に我々にとっては目新しい概念で、障害が発展する概念というのはどういうふうにとらえて、これから、例えば一般の、一般のというか普通の、障害者政策にまだ関心を持っていない国民の皆さんに知っていただくために、どういう概念としてこれを伝えればいいのかについて、これは川島参考人に教えていただければと思います。
いろいろ盛りだくさんで申し上げましたが、短く、恐縮ですがお答えいただければ有り難いと思います。よろしくお願いを申し上げます。

○参考人(川島聡君) ありがとうございます。
ただいま福山先生からの御質問なんですけれども、まず三十三条一項につきまして、一項は中央連絡先、これを複数形で置いております。そして、一項ではもう一つ、調整のための仕組みというのをこれは書いてあるんですけれども、中央連絡先はこれは必置、必ず置かなくてはいけないものです。そして、調整のための仕組みは一つだけ。これは十分な考慮を払うという形で、必ず置かなくてはいけないというまではいかないわけです。
そこで考えますと、まず中央連絡先は外務省と、場合によっては内閣府も、複数あってもいいということになると思います。そして調整のための仕組みは、これは内閣府に置いて、そして中央連絡先と調整のための仕組みが同じ機関が担当するということも十分あり得るわけですので、諸外国を見ても同じ機関が担当するところがありますので、そのような形で柔軟に、これは非常に難しいと思いますけれども、諸外国の動向を見ながら検討していくということになるかと思います。
そして次に、障害が発展する概念というところですけれども、エボルビングコンセプトという、エボルビングというのは、徐々に発展していくとか、まだ完成したわけじゃなくて形成途上にある概念であるということでして、障害というものがまだ人類においては確実に固まった概念ではないと。そのため、この条約では障害の概念は定義できなかったわけですね。しかし、少なくとも基本的な視点というのがこの条約ではそこまでは明確になったと。つまり、障害のある人が社会に参加できない原因というのは、その人が障害があるからだというのではなくて、障害と社会との関係性の中でその人は社会に参加できなくなってしまう、だからこそ社会の障壁を取り除くべきだと。そういったところまでは少なくとも現時点では合意が得られるということで、そういう意味で、今後更なる概念の発展にも期待できるということで、現時点では定義ではなくて概念という形で条約の前文に置いたというふうに理解しております。
まずは以上を回答とさせていただきます。ありがとうございます。

○参考人(尾上浩二君) 二つ、四人に共通ということで御質問いただいたと思っています。
まず、三十三条の関係で、促進、保護、監視ということで、とりわけ、先ほど差別解消法の中で、今後の課題ということで紛争解決の仕組みの必要性ということを申し上げました。この中でいう保護、障害者の人権の保護ということからすると、この紛争解決の仕組みというのはやはり別途必要と。これを例えば具体的な形態として言えば、例えば差別禁止部会の意見書に出されている案としては、政策委員会の中に一つのそういうチームをつくるということもあり得るのかも分かりませんが、具体的な形態というのは、政策委員会との関係というのはいろいろあり得ると思いますけれども、基本的な機能として、監視やそういった機能とこの保護というのはやはり違うというか、やはりしっかりと紛争解決の仕組み、保護の仕組みが必要だという意見であります。それが一つです。
そしてもう一つ、モニタリングについて、福山先生の御指摘のとおりでして、本当にまだまだ不十分だというふうに思っていますが、ただ、同時に、障害者政策委員会は、今の国のレベルで唯一と言っていいのかも分かりませんが、障害当事者が過半数の委員会なんですね。先ほどから申し上げていますとおり、権利条約策定過程から、ナッシング・アバウト・アス・ウイズアウト・アス、私たち抜きに私たちのことを決めないでということで、その私たち抜きに私たちのことを決めないということを体現した組織として、政策委員会をしっかりと監視の機能ができるようにバージョンアップをしてほしいという思いで先ほど申し上げました。
以上です。

○参考人(久保厚子君) ありがとうございます。
先ほど御質問にありましたように、私の方も、監視機関とそれから実施促進するというところは別の機関だというふうに思っております。どちらかといえば、監視機関の方は内閣府の方に置いていただいて、そして促進の方は厚労省の方でやっていただくというのが適当かというふうに思っております。
あとは、おっしゃいましたように、国の方でモニタリングの機構というか機関というか、その辺のところはまだありませんので、是非、障害者団体も含めまして、そういう機関、機構をつくっていただきたいというふうに思っております。
以上です。

○参考人(藤井克徳君) フォーカルポインツに関しては川島参考人とほぼ同じ意見ですが、一つ考えなくちゃいけないことは、外務省の中央連絡先、加えて内閣府あるいは内閣の方でのそういう調整を含めた強力な体制強化というものがありますけれども、現実的にはやっぱり厚労省の所管する部分が随分多いわけなので、ここも含めた何か工夫が要るのではないかなというふうに考えます。
それから、先生おっしゃるとおり、ここの第三十三条の実は実質化がこの権利条約の実質化をかなり裏打ちをすると。したがって、これはあるべき方向と当座どうするかということを区分けをしないと難しいだろうと思います。例えば保護に関しては、もっと障害を超えた全体の人権に関するやはり保護を重視する、そういう機構が要ると思うんですね。しかし、それはすぐにはできにくい、そういう点でいうと現状の中での活用と。そういう点では、言われていますように、この障害者政策委員会、障害者基本法第三十二条にのっとっていますけれども、今の障害者政策委員会は障害者基本計画の監視しか実は定められていません。したがって、ここの法改正も含めて、当座はここの強化ということが現実的なのかなと。
最後に、この発展する概念に一言付言させてください。
私自身は全く目が見えませんから、恐らく、全盲ですから、前だったら時計は全く分からなかったわけです。でも、今はこうして、(資料提示)このようにして、これがもう普通に販売されています。こういった環境の変化によっては随分と、時報情報という重要な情報、これが私、全く苦にならないと。恐らく、将来、全盲であっても車の運転は可能かも分かりません。その点でいうと、とりわけこの環境要因の中でもこの科学技術の発展あるいは人的なサポートの手厚さ等によっては、相当障害というのはまたとらえ方が変わってくるんじゃないかなと。参考になればと思います。
以上でございます。

○福山哲郎君 ほかにもたくさんお伺いしたいことはあるんですが、時間になりましたので、大変いい御意見をちょうだいいたしましたこと、また今後の審議につなげていきたいと申し上げまして、私の質疑、終わらせていただきます。
どうもありがとうございました。

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