04/08

2014

第186国会 参議院 外交防衛委員会 2014年4月8日


国家安全保障戦略、防衛大綱、中期防衛力整備計画
参考人質疑

○福山哲郎君 福山でございます。座らせていただきます。
本日は、参考人の先生方におかれましては、貴重な時間をいただきまして大変参考になる御意見を拝聴できましたこと、心からまず感謝申し上げます。それぞれの参考人におかれましては、日本の外交安全保障に本当に長年御尽力をいただき貴重な御示唆をいただいてきた皆々様でいらっしゃいましたので、本当に今日の話も中身の濃い話でございまして、以後の委員会審議につなげていきたいというふうに思います。ありがとうございます。
実は今日、私、お話を承ってから何を質問するか考えようと思っていたんですが、非常に中身が濃くて若干私の頭の整理が至りませんが、お許しをいただきたいと思います。
まず、率直に私自身の今の大綱やNSSについての感想を申し上げます。
我々、二二大綱に関わらせていただきました。その観点でいうと、先ほど神保先生からありました三年というのは本当に意味があったのかどうかということに対しては、若干疑念を持っております。国内政治の大きな影響の中でこういった形になったことというのは、一定、私も政治家ですから理解をしますが、日本の外交安全保障という、特に自衛隊の部隊を動かす中心となるものをこういった形で三年の短期で動かすことが本当にいいのかどうかということについては若干疑問に思っております。北朝鮮のミサイルや中国の海洋進出、災害対応の重要性、複合事態へのシームレスな対応、統合運用等は実は二二にもう十分に表現を入れさせていただいておりました。これは、私の今横にいらっしゃいます北澤防衛大臣を中心にやっていただいたことでございます。
ただ、今日、三年間の短期間の中での大綱の変化について、神保先生から、より警戒監視活動を乗り越えたような状況が起こってきていることについて今回意味があるのではないかとか、それから機動的な、いわゆる我々の言っている動的防衛力以外のもの、統合機動防衛力についても、より意味があるのではないかという御示唆をいただきました。実は私、防衛省や防衛大臣の答弁よりかは、より神保先生の話の方が理解と納得をしましたので、そういった点については改めて考え直して評価をしたいなというふうに思っております。
具体的にちょっと質問に行きます。
まず、香田参考人と神保参考人から共通して出てきたのは、いわゆる海上優勢、航空優勢に対して、このことを強調し過ぎると余り良くない状況が起こるのではないかと。拒否力という言葉を使われましたが、具体的に、この拒否力といった点についてどういうことを今後日本は想定をして準備をしていけばいいのかについて、香田参考人、神保参考人から御示唆をいただければと思います。
それから、神保参考人には、余り今日言及のなかったNSCの体制について、今日それぞれの参考人余り言及がなかったんですけど、現状のNSCの体制並びに評価、並びに今後のNSCの運用について何かお考えがあればお聞かせをいただければと思います。
白石先生におかれましては、白石先生からは、国際ルール、いわゆるルールメーキングに対する日本の重要性ということについて御示唆をいただいたと思っておりまして、私はその点については全く同意なんですが、しかし、私も若干なりとも外交に携わったものでいうと、今の国連における意思決定、ルールづくりの厳しさ、G7、G8に至っては今のウクライナ状況を見ればもうお分かりのとおりでございますし、逆に、今の時代は国際的なルールをどのように担保するかということについて非常に難しい時代になっているのではないかと私自身は考えております。
ですから、我々も外交のときに、首脳会談等では当然国際ルールに沿って、のっとってというのはお題目のように言いますが、そこをどう担保するかについて、実は国際社会が今、次の時代のプラットホームなり何なりをつくることに対して少し模索をしているのではないか、というかそこに非常に苦慮しているのではないかという問題意識がありまして、そのことについて白石参考人から何かお話をいただければ有り難いと思います。
それから、柳澤参考人におかれましては、まさに官邸で外交、安全保障をやられてこられた方でいらっしゃいます。私、今回の防衛大綱等を見ると、より協調的なとか、中国のより活動を活発化させているとか、これまで以上に積極的に寄与していくとか、安全保障環境がより厳しくなったとか、非常に定性的な表現が多いと。更に言えば、先ほど御指摘がありましたように、毅然として対応していくというのは、オペレーションとしては非常に問題だというふうに思っておりまして、これは、一体どういうふうにこのことを整理をしていいのかということをまずお伺いしたいのと、一方で重要なのは、それと並行してガイドラインの話があります。
今、防衛大臣、外務大臣にお話を聞くと、この年末のガイドラインについては、いわゆる安保法制懇の議論と切り離して、現状の我々のできる範囲の中で事務的には準備を始めているという話をされているんですが、安保法制懇のスピード感によっては、秋に例えば、本当に出てくるかどうか分かりませんが、法律の改正等が出てくるときに、年末のこのガイドラインの改定について本当に現場としてはどのように対応可能なのかと。柳澤参考人におかれましては、九七年のガイドラインについて現場で対応されたこともおありだと思いますので、そのようなことについて何らかの形で御指摘をいただければというふうに思います。
私からは以上でございます。よろしくお願いいたします。

○委員長(末松信介君) それでは、先生方、お一人二分間ぐらいでの御答弁になりますが、よろしくお願いをいたします。
じゃ、香田参考人。

○参考人(香田洋二君) 拒否について申し上げます。
航空優勢、海上優勢というのは、ある意味軍事の基本なんですけれども、これをやるには、例えばですけれども、中国が四世代戦闘機を五百機持っているとやはり我々も五百機要るんですね、極端に言いますと。ところが、将来そうはいかないだろうということと、日本はロシアにも警戒をする必要もありますし、そのときに南西諸島を仮に一つの焦点とした場合に、要するに情報力、C4ISRを非常に高めるという前提で、相手の弱点とか相手の行動をある程度予想をしまして、来るのを払う、払うことによって相手の目的を達成させない、すなわち南西諸島を取られない、あるいは太平洋進出を阻止をすると。それは少ない兵力を効果的に使うことによって達成できるわけですね。
それが中国の目標、目的を阻止するといいますか達成させないわけですから、ある意味それで少なくとも取られないという我が国の目標は達成できると。それで頑張っているうちにアメリカが来るのを待つというふうな、非常に、二分間で言いますと、そういうイメージでございます。

○委員長(末松信介君) ありがとうございます。
それでは、神保参考人、NSCのことですね。

○参考人(神保謙君) まず、拒否力の話はもう香田さんがおっしゃったとおりだと思うんですけど、大事なことは、やはり戦力のバランスがいかに中国に傾いていようとも、中国の作戦遂行能力が阻止されているという状態をつくることが拒否力の大変重要なことでございます。したがって、二〇三〇年の数字を見ると十一倍とか出てきて、もうとてもこれはバランス的には駄目なんじゃないかと思うかもしれませんけれども、例えば海上作戦行動一つを取ってみても、日本から見た太平洋は非常に広いわけですけれども、中国から太平洋に出ていくというのは本当大変なことなわけですね。それは海上交通路が大変限られていることでございまして、その限っているのはまさに日本の国土でございます。その国土を十二分にまさに利用して、活用して、そこに集中的に自衛隊のアセットを投下すればこうした数字のバランスのアンバランスというものは十分オフセットできるというのが、これが大変重要な拒否力の考え方だと思います。
もう一つ、NSCの体制につきましては、現在、六十七名の事務局で運営されていて、まさにトップダウン、迅速な政策決定と、そして省庁間を超えたインターエージェンシーのコーディネーションということが求められるというモデルの理想型は大変すばらしいものだというふうに考えているんですけれども、一つ私が気になりますのは、例えば、中国の台頭に日本がどのような戦略で臨むかといったときに、当然我々が安全保障戦略の中で持っているのは、一方で中国をエンゲージしていく、これは戦略的な互恵関係に基づく経済的な相互依存関係を増やしていくということと、もう一方では力による、力の偏向というものを阻止していくという力の局面があるわけですね。この二つの両輪をNSCが本当に遂行していける体制になっていくかというと、現状の体制というのは極めて対中対抗的な要素、つまりゼロサム的な要素で組織が成り立っているのではないかというふうに考えております。やはりバランスの取れた戦略が遂行できるような、例えば経済産業省であるとか、様々な、金融庁であるとか、こういった方々がNSCの中に積極的に関与すると、より総合的な戦略策定の場になるのではないかというふうに考えております。

○委員長(末松信介君) ありがとうございます。
じゃ、白石先生、よろしくお願いします。

○参考人(白石隆君) どうもありがとうございます。
まず最初に、動的防衛力と統合機動防衛力について少しだけ申し上げますと、実は私、二〇〇九年から一〇年の安防懇の座長代理をやらせていただきまして、そのときの私の理解からしますと、ほとんど概念的には変わっていないんじゃないかと。ニュアンスがちょっと違うとすれば、それは統合というところをより強調しているということではないかと。ですから、私としてはそれほど大きい変化はないんではないかというふうに理解しております。
それから、ルールメーキングについてでございますが、国連だとかG20だとか全然うまくいっていないじゃないかと。おっしゃるとおりでございます。唯一日本として今できるとすれば、しかもこれが二十一世紀のルールメーキングということで重要だとすれば、私はやはりTPP、それからTTIP、米欧の方でやっておりますけれども、このTPPについては日本としてプロアクティブにやっていくというのが、これ安全保障とは違いますけれども、ルールメーキングということから言うと重要だろうと。
それから、ルールをどう担保するか。これも極めて重要でして、なかなか難しいんですが、例えば既にフィリピンは領土の問題について中国との係争問題を国際仲裁裁判所に訴えるということをやっておりまして、私は日本政府としてこれを大いに支援すべきだと思いますし、それから竹島の問題についても、私は日本としてまさに毅然として国際司法裁判所に訴えてよろしいんではないかと。同時に、尖閣の問題については、ここは今の日本政府の立場とは若干違いますが、日本として幾ら領土問題がないと言っても、中国の方があると言えば第三者から見ればどうもあるように見えるわけですので、それであれば、中国にどうぞ国際司法裁判所で法的に国際法にのっとって対処しましょうということをサジェストするのは、これは私は、日本として国際法にのっとって国際紛争を処理していきますという立場から見ると、極めて重要なことではないだろうかと考えております。

○委員長(末松信介君) ありがとうございます。
それでは、柳澤参考人、よろしくお願いします。

○参考人(柳澤協二君) ありがとうございます。
簡潔に申し上げます。
まず、全体を通して形容詞とか副詞が物すごく多用されている、私に言わせれば、片仮名語も含めてですけれど、私は防衛研究所長もやっておりましたけど、そのときに防衛研究所の研究者からこういう論文が上がってきたら突っ返します。つまり、詰めが甘いことの証明以外の何物でもないということですから、もっと定量的な分析をちゃんとすべきだということだと思います。
それから、九七年の日米防衛協力ガイドラインに私が携わっておりましたときには、もう従来の憲法解釈の変えない範囲内でやるという明確な政治のガイダンスの下にやっておりました。
アメリカという国は、ここのところ自分はどうしても弱いからここを何とかしてくれよということを言わない国、だからまさに軍事大国であるゆえんであるわけですけれど、日本は何ができるんだい、どこまでやってくれるんだいと、こう来るわけですね。それに対して、じゃここまでやりましょうということで、九七年のガイドラインが大変喜ばれたのは、集団的自衛権の行使には踏み込んでいないけれども、日本が何をどこまでやってくれるかがはっきりしたことでアメリカの方の作戦計画準備が立てられるようになったということを大変喜ばれたわけであります。
今そこの前提が非常に難しい中で議論をしていますから、ちょっと年末まで、恐らく私の後輩の防衛官僚は私よりずっと真面目で頭がいいと思いますので、恐らくサイバーの問題とか宇宙空間の問題とか、憲法解釈とは当たり障りのないところの作業はやっていけるんだろうと思いますけれども、実は一番、この種の問題をやるときに一番重要なのは、そこの政治のはっきりしたガイダンスだということだということを申し上げたいと思います。

○福山哲郎君 ありがとうございました。
更に質問を続けたいんですが、残念ながら時間ですので、本当に大変貴重な御意見いただきましたことを感謝申し上げます。
以上で終わります。

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