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2016

第192国会 参議院 外交防衛委員会 2016年10月25日


○福山哲郎君 お疲れさまでございます。福山でございます。よろしくお願いいたします。
ちょっと盛りだくさんですので、もうさくさくと行きたいと思います。
まず、法制局長官、お忙しい中御足労いただきましてありがとうございました。部長でもいいと申し上げたんですけど、わざわざお顔を見せていただいてありがとうございます。
本日の朝刊に、読売新聞でございますが、内閣法制局が九条の解釈集、憲法関係答弁例集、第九条・憲法解釈関係というものを五百四十九ページで作られたというふうに記事が載っております。大変重要な私は答弁例集だと思っておりまして、新聞にもう出ておりますので、この答弁例集の存在について、まず事実かどうか、御確認をいただければと思います。
○政府特別補佐人(横畠裕介君) 御指摘の憲法関係答弁例集、第九条・憲法解釈関係と題する当局における執務資料を作成しております。
○福山哲郎君 実在するということを認めていただきました。
それでは、これはもう情報公開請求で出されているということでございますので、当然外交防衛委員会の委員のメンバーには開示されるべきものだというふうに思っておりますが、それは可能ということでよろしいですか。
○政府特別補佐人(横畠裕介君) 国会からの、委員会からの求めがあれば適切に対応いたします。
○福山哲郎君 基本的には国会で協議すればいいということでございますので、委員長にお願いをします。
この答弁例集について是非各委員に配付をいただけるように理事会で協議をいただければと思います。今、長官の御発言は決して否定的な話ではなかったと思いますので、よろしくお取り計らいをお願いします。
○委員長(宇都隆史君) ただいまの件につきましては、後刻理事会にて協議をいたします。
○福山哲郎君 長官、どうぞ中座いただいて結構でございます。ありがとうございます。
続きまして、午前中も核兵器禁止条約について浜田先生の質疑がありましたが、重複もするかもしれませんが、お伺いをしたいと思います。
現在、国連総会の第一委員会において、核兵器禁止条約をめぐって交渉する会議を来年から立ち上げるという決議が提出、議論されていると聞いております。この決議の内容、今の議論の状況、採決の予定、事実関係について、外務省、お答えください。
○国務大臣(岸田文雄君) 御指摘の決議ですが、国連総会第一委員会において、オーストリアそしてメキシコ等が提出を考えているものであり、二〇一七年に、国連の下で市民社会等の参加を得て、核兵器禁止条約の交渉を開始することを求める内容となると承知をしております。
ただ、文言につきましてはまだ調整中だというふうに認識しておりますし、十月二十七日から十一月三日の間に採択が行われる予定であると承知をしております。
○福山哲郎君 これは、恐らく出席国の過半数で採択をされる案件になるというふうに思うんですが、現状の賛成国の状況というのは、外務大臣、お分かりいただけますか。政府委員でもいいんです。
○国務大臣(岸田文雄君) 現状の賛成国はどうなっているかという御質問ですが、共同提案国としてはオーストリア、メキシコ、ナイジェリア、ブラジル、南アフリカ、アイルランド、この六か国が共同で決議案を提出し、現時点で約四十か国の共同提案国がいると承知をしています。
○福山哲郎君 この時点で四十か国ということですから、過半数で採択されるとなると、採択される可能性もそれなりに高いということだというふうに考えております。
私は、むやみやたらに、この核兵器の問題は難しいので、日本に賛成をしてくれと言いたいわけではありません。もちろん、先生方御案内のとおり、日本は広島、長崎に原爆が投下をされました。世界で唯一の被爆国として非人道性を世界に発信する役割はあります。今年、安倍政権が御苦労いただいたオバマ大統領の広島訪問等もその一環であったと私は思っております。我々の政権のときも、そのことについて、岸田外務大臣にしっかり引き継いでいただいているNPDIの創設も含めて、核軍縮や核の非人道性を世界にしっかり伝えていくという役割があると思います。
しかし、一方で、日本はアメリカの核抑止力に依存している安全保障政策を持っております。直近の北朝鮮の核開発を考えれば、なかなか、核の抑止を考えると、すぐに核兵器の禁止という議論に至るのかどうか非常に難しい局面だと私は思っております。直ちにコミットしにくい。
日本は、実は長期的には核兵器の縮減というか核兵器を減らすことについてコミットするということを国連の場でも何度も表明しておりますし、我々の政権のときもそうでしたし、自民党の政権のときもそうだったと考えております。
今回のこの禁止条約がもし本当に採決をされるに至れば、今のお話ですとほぼ採決されるだろうと思いますが、理屈を言えば日本は四つの道があると。一つは積極的にコミットして賛成をする。二つ目は条件付に賛成をする。例えば、世界の安全保障体制がこれが強化されるとか、核保有国の将来的な参加の動向だとか、会議の運営方法だとか、いろんな条件の中で日本が賛成をするのが二つ目。三つ目としては、なかなか難しいところですが、関与せず、いわゆる棄権をすると。そして、四つ目が反対をするという選択肢だと考えております。
私は、広島、長崎があり、今年、オバマ大統領が広島に歴史的に訪問いただいたこの年の核の禁止条約についての国連の場での採決ですから、私自身は基本的に反対を日本にしていただきたくないと考えております。それは、やっぱり日本は長期的には核兵器禁止条約に関する議論にはコミットするんだと、長期的にはですね。今の足下の安全保障状況は別にして、長期的にはコミットしていくんだということをやはり私は世界に表明していただきたいと思いますし、更に言えば、反対するようなことがあれば、国内外では日本は二枚舌なのかということで理解が得にくいと。
ですから、私としては、条件付の賛成若しくは棄権という選択肢しかないと私は思っておりますが、そのときには当然、核保有国であるアメリカとの緊密なコミュニケーション、日本の立場の理解を求めることが重要だと考えております。
今、どういう形で外務大臣がこの核兵器禁止条約について日本として対応しようと考えておられるのか、率直にお述べをいただければと思います。
○国務大臣(岸田文雄君) まず、核兵器のない世界を実現するためには、核兵器の非人道性に対する正確な認識と、そして厳しい安全保障環境に対する冷静な認識の下に、核兵器国と非核兵器国の協力を得られるような実践的な、そして現実的な対応を行っていかなければならない、これが我が国の基本的な立場です。
そして、今、国連総会の第一委員会に提出されている決議、これは十月の二十七日から十一月の三日までの間の採決を目指して、各国が今それぞれ決議の提出に向けて努力を続けています。
我が国としましては、今申し上げました基本的な認識の下に、我が国の決議を採択に結び付けるべく努力をしなければならないと考えます。より多くの賛成国を得て、そして核兵器国と非核兵器国の協力を訴えているわけですから、多くの核兵器国に我が国の決議に賛成してもらわなければならない、こういった思いで取り組んでいます。そして、その採択を実現した上で、他の国の決議に対して我が国としてどう対応するかということを判断しなければなりません。
その際には、核兵器のない世界を実現するためには、核兵器国と非核兵器国の協力なくして結果に結び付けることはできない、こういったことを訴えているわけですから、こうした核兵器国と非核兵器国の協力を実現するために、その決議に対して我が国としてどう対応するべきかを考えていかなければならないと思います。
その御指摘の決議については、文言まだ調整中だと認識をしていますが、この決議に対しては、今言った観点から我が国として具体的な対応を判断したいと思います。是非、決議を確認した上で、今申し上げた考えに基づき、核兵器国と非核兵器国の協力を実現するためにできるだけ前向きな対応を取っていきたいと考えます。
○福山哲郎君 日本の決議案の中身はどのような案なんでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) これは、我が国の決議ですから、我が国が今日まで訴えてきた様々な要素を盛り込んだわけでありますが、NPT体制の強化、CTBT発効促進、あるいはFMCT早期交渉開始、こうした内容を呼びかける、核兵器廃絶に向けた新たな決意の下での共同行動、こうした題名の決議案を提出させていただいております。
○福山哲郎君 今、賛同国はどのぐらいございますか。
○国務大臣(岸田文雄君) 今確認できている賛同国、約九十だと聞いております。
○福山哲郎君 外務大臣のお話は、僕は一定、理があると考えております。核保有国と非核保有国が共同でやらなければ核の軍縮はあり得ない、もうそのとおりです。大臣が言われたNPT体制の強化等も含めて、私は、当然のことですから賛同国が多いのもごくごく私は自然なことだと思います。しかし、問題は、その核保有国と非核保有国の協働やNPT体制が現実の問題としてなかなか進まないことに多くの非核保有国のいら立ちがあり、その中でこの核兵器禁止条約の動きにつながっているんだと思っております。
我が国がその決議を出されることに対して私は多としますし、そのことに対していたずらに批判をするつもりもありませんが、そのことが動かないからこそ今の動きになっているんだということは、外務大臣も御理解いただいているというふうに考えていいですよね。
○国務大臣(岸田文雄君) おっしゃるように、昨年行われました五年に一度のNPT運用検討会議の議論を振り返りましても、核兵器国と非核兵器国の対立、誠に深刻なものがあると認識をしています。そして、その後もこの対立の構図は続いておりますし、内容も深刻な状況が続いていると認識をしています。だからこそ、この核兵器国と非核兵器国の協力を得るべく、唯一の戦争被爆国である我が国が率先してこの議論をリードし、そうした環境整備に努めなければならない、このように認識をいたします。
そのために、我が国としましても独自の決議をしっかり採択させていきたいと思いますし、他の決議への対応についても、そういった観点から前向きな結果につながるような対応を取っていきたい、このように考えます。
○福山哲郎君 今、他の決議についても前向きな対応になるようなということで、少し外務大臣、踏み込んでいただいたかなと認識をしておりますので……(発言する者あり)ちょっと、まだまだまだ。ちゃんと答弁していただきますから。
少し前向きな答弁をいただいたかなと思って若干私は期待したんですが、実は、その我が国の決議は、申し訳ありませんけど各国賛成するのは当然なんです。そこを超えたところに今回の核兵器禁止条約についての動きがあるんです。だから、我が国の決議について各国がどう動いたかによって、我が国が次の、今の核兵器禁止条約についてどうなのかではなくて、今のこの核兵器禁止条約の動きについて日本がどうコミットするかということが重要で、もちろん、我が国の決議に対して私は先ほどから何度も申し上げているように否定はしませんが、それを超えた上でこの核兵器禁止条約についてどういうポジショニングを取られるつもりなのか、もう一度お答えいただければと思いますし、何か答弁の変更があればお答えください。
○国務大臣(岸田文雄君) まず確認ですが、先ほど前向きな対応と申し上げましたのは、核兵器国と非核兵器国の協力を得るために前向きな対応を取りたいと、他の決議においても取りたい、そのように申し上げました。
そして、我が国の決議、賛同いただけるのは当然ではないかという御指摘ありました。もちろん、そういった内容もありますが、我が国がこれまで取り組んできた様々な取組、被爆地に対する世界のリーダーの訪問など、我が国独自の内容もしっかり盛り込んでいます。いずれにしましても、我が国の決議の採択、大変重要であると認識をしています。
そして、他の決議に対する対応についての御質問でありますが、まずは内容をしっかり確認した上で、先ほど申し上げました基本的な立場に立って、議論を促す上で意味のある対応をしっかりしていきたいと考えます。
○福山哲郎君 私は、きっと、外務大臣は広島でいらっしゃるし、これまでも核兵器の廃絶に向けて御努力をいただいていると思っていますので信頼申し上げておりますが、でき得れば、安全保障環境は厳しい、北朝鮮の問題もある、日米安保条約もある、核の抑止力に我々は依存しているということを理解した上で、アメリカとしっかりコミュニケーションを取っていただいて、私としては、条件付賛成か関与せず、まあ関与せずも非常に難しい選択でございますが、そういう選択を我が国の政府がしていただくことを強く望みたいと思います。
稲田大臣、全く稲田大臣にはこの議論は関係ない議論かもしれません。日本は、実は長期的には核兵器の廃絶についてコミットしています。稲田大臣が雑誌で言われている、長期的には日本独自の核保有を単なる議論や精神論ではなく国家戦略として検討すべきではないでしょうかというのは、今ある核兵器の禁止条約の議論、それから、日本がずっと非人道性と安保条約のはざまの中で、核の抑止のはざまの中で先人が努力をしてきた形とは全く懸け離れた議論が、稲田防衛大臣の、まあ野党時代とはいえ、議論がございます。
この間の国会の中で稲田防衛大臣は、この問題については、今は安倍政権の方向に従うけれども、このことについては撤回をしないと明言をされました。まさに今国連で議論をされていること、岸田外務大臣が非常に難しいお立場の中で御議論いただいていることとは真逆というか正反対の議論を稲田大臣はされています。
稲田大臣はこの核兵器禁止条約についてどういう考えをお持ちなのか、お答えください。
○国務大臣(稲田朋美君) 今御指摘の野党時代の雑誌における私の発言でございますが、この発言は、当時の状況や、また雑誌における、対談における、そして文脈の中における一政治家個人としての意見を述べたもので、予算委員会で撤回しないと申し上げましたのも、そういった文脈の中の過去の一政治家としての当時の状況の下での発言について、撤回する撤回しないということではないのではないかという意味で申し上げたものでございます。
その上で、防衛大臣としての私の考えでございますけれども、唯一の戦争被爆国として我が国は非核三原則、これを国是として堅持しております。そして、その考えに揺るぎがあるものではありません。私自身も、安倍内閣の一員として、核兵器のない世界の実現に向けて全力で取り組む所存でございます。
今御指摘の核兵器の法的禁止に関する決議案に関してでございますが、先ほど来御議論がございましたように、国連総会第一委員会には御指摘の決議案も含め様々な種類の決議案が提出され、他国の提出した決議案に対しては、核兵器のない世界を実現するためには、核兵器の非人道性に対する正確な認識と厳しい安全保障環境に対する冷静な認識の下、核兵器国と非核兵器国双方の協力を得て現実的、実践的な措置を積み重ねていくことが不可欠であるという我が国の基本的立場を踏まえて対応していく、先ほど外務大臣が申されたとおりでございます。
○福山哲郎君 全く納得できません。今のは、安倍政権というか我が国の基本的な立場です。
大臣は、国防が全てアメリカ任せという現状ではそれができない、その後に、短中期的にはアメリカの核の傘を頼る、シェアすることで乗り切る、しかし長期的には国家戦略として検討すべきだと。その当時の状況とか言われましたけど、核の状況については北朝鮮の問題も含めて余り大きな変化はありません。逆に言うと、それは悪化はしているかもしれませんけど、全体としては変わりません。
その中で、野党だから、文脈だからと。じゃ、野党時代、私たちが何を言っても、閣僚席に座った瞬間、あのときは野党だから許してくれと言ったら皆さん通してくれるんですね、自民党の皆さん、これから。もう野党時代にあんなこと言っていたという話はなくなるんですね、国会の中で。
私は、一政治家であろうが、一閣僚であろうが、私は言葉というのは重いと思いますよ。撤回しないとあなたは国会で言ったんですよ。撤回しないということは、世間は、あの防衛大臣は中長期的には日本は核を持つべきだと議論している大臣だと国際社会ではあなたは見られるわけです。
しかし、一方で、国連では岸田大臣も含めて我々は唯一の被爆国としての本当に厳しい状況と核の傘にいる中で、外務省も歴代政権も苦労されながらこの国際社会の中で対応されてこられたわけです。このことについて、あなたはどう考えるんですか。日本は、中長期的には核の廃絶についてはコミットするとずっと国連の場で主張しています。そのことについては、中長期的にはまさにあなたの意見とは真っ向からこの国の政府は対立をしています。そのことについてどう思われるか。そして、撤回されるんだったら撤回されるとおっしゃっていただいた方がいいと思いますので、もう一度御答弁をください。
○国務大臣(稲田朋美君) 何度も答弁いたしておりますが、当時の状況の日米関係における危機感の下で一個人として発言したものでございます。そして、先ほど来、防衛大臣としての私の考えは、核兵器のない世界の実現に向け、全力で取り組む所存でございます。
その上で、撤回するかしないか、これは再三委員会で質問されて、そして私は、その過去の、野党時代の、そして当時の私の危機感の下で、雑誌の中の対談、相手があるものの対談の中の文脈の中で申し上げた個人的な発言であるので、防衛大臣として国会の場で撤回するような性格のものではないという意味において撤回はしないということを述べたものでございます。
○福山哲郎君 あなたは、そうしたら、防衛大臣を離職された時点でこの考え方はあなたの中には残るということですね。個人の政治家としてはこの問題を発言した、防衛大臣としては今の安倍政権の政策を踏襲すると。ということは、あなたは、防衛大臣をお辞めになればこの考え方はずっと継続されるとおっしゃっているんですね。
○国務大臣(稲田朋美君) そういうことを申し上げているのではなくて、今御指摘の、個人的な発言をいたしました当時の私の現状の認識、すなわち日米関係に対する、日米同盟に対する大変な危機感の下で一政治家として申し上げたということを予算委員会でも繰り返し述べたところでございます。そして、私は今防衛大臣としてこの場で答弁をいたしております。そして、それを、過去のことについて撤回をする、そういったものではないということを申し上げたということでございます。(発言する者あり)
○委員長(宇都隆史君) 速記を止めてください。
〔速記中止〕
○委員長(宇都隆史君) 速記を起こしてください。
稲田防衛大臣。
○国務大臣(稲田朋美君) 繰り返しになりますが、先ほど来申し上げていますとおり、その御指摘の発言は、当時の私自身の認識の下での、当時の一政治家としての発言でございます。現在、私はこの場に防衛大臣として答弁をいたしておりますので、今防衛大臣として申し述べさせていただいたとおりでございます。核なき世界の実現に向けて全力を尽くしてまいる所存でございます。
○福山哲郎君 全く答えていただいていないんですけど、私が質問したのは、防衛大臣を辞められた後は、あなたは一個人の政治家として、この雑誌に言われた考え方を踏襲されるんですねと申し上げているんです。私は、防衛大臣としてのあなたの答弁はもう何十回も聞いています。お答えください。
○国務大臣(稲田朋美君) 私は、ここに防衛大臣として答弁をする立場でおりますので、防衛大臣として答弁をさせていただきます。
その上で、先ほど御指摘になった発言は、当時の状況、当時の状況の私自身の認識であり、今は状況は変わっているということもまた事実でございます。
○福山哲郎君 ということは、状況認識は変わって、今考え方が変わったということですね。
○国務大臣(稲田朋美君) 防衛大臣としての私の考えは、核なき世界を目指して全力を尽くす所存だということでございます。
○福山哲郎君 当時と状況認識は変わったということですね。
○国務大臣(稲田朋美君) 日米同盟に関する、その強さに関する認識は変わっております。
○福山哲郎君 こんなくだらないことを質問したくないんですけど、なぜかというと、もし万が一この核禁止条約について日本政府が反対という立場を取られることもあり得るかもしれない、そのときに、国際社会は、あの防衛大臣がいるからだというふうに見られることもあるということです。そういう冷徹な国際政治の現実の中であなたは防衛大臣を今やられているんです。個人の意見がどうのこうのというレベルを超えているんです。
だから、もしこのときの考え方が間違っているんだったら、間違っていて認識を変えましたと言っていただければすっきりするのに、そこも中途半端だからこそ、あなたは、必ずこの核兵器の禁止条約についての意思決定のときに、意思決定に加わるんです、防衛大臣だから。だから私は聞いているんです。
もう一度お願いします。もう認識は変わったんですね。
○国務大臣(稲田朋美君) 御指摘の発言をした当時の日米同盟の強さに対する状況に関する認識は変わっております。その上で、私は今防衛大臣としてこの場におります。防衛大臣としての考えは、核なき世界の実現に向けて全力を尽くす所存でございます。
○福山哲郎君 質問を適当に変えないでください。日米同盟の認識が変わったか変わってないかなんて聞いていません。
じゃ、明確にお答えください。長期的に日本独自の核保有を単なる議論や精神論ではなく国家戦略として検討すべきという考え方は、今お持ちではないんですね。イエスかノーかでお答えください。
○国務大臣(稲田朋美君) 我が国が核兵器を保有することはあり得ず、保有を検討することもあり得ないと考えております。
○福山哲郎君 ということは、このときの考え方と変わったということですね。イエスかノーかでお答えください。今まさに変わったことをお答えになったんだから。
○国務大臣(稲田朋美君) 防衛大臣としての私の意見は、今述べたとおりでございます。
○福山哲郎君 明確に変わったということで、要は過去の発言については、誤り、間違っていたと、自分としては認識が変わったということを認められたということだというふうに思います。ほかの時間がないので、もう先に行きます。
パリ協定についてお伺いします。
お手元に資料をお配りしております。これ、本会議ではお配りできなかったので、今日あえてお配りしました。
もう皆さん御案内のとおりかもしれませんが、これが実は今年のニュートンという雑誌に載った写真です。一番上が、皆さん御案内のように、フィリピンのハイエンというスーパー台風の後の町の様子です。下が、皆さんも御記憶にあると思いますが、アメリカのハリケーン・カトリーナの後の様子です。そして、衝撃的なのが右でございまして、同じカリフォルニアの同じところの写真です。二〇一一年にはこれだけの水の貯水があったダムが、二〇一四年には同じ橋のところに全く水が残っていないという状況になっています。こういう状況はここだけではありません。世界各地で広がっています。
私も、野党時代からこの問題はずっとやってきて、世界中のいろんな気候変動の異常気象の現場に行ってまいりました。海の底で白化現象が起こっているサンゴ礁、それから沈み行く島々、それからモンゴルで砂漠化している地域、あらゆるところ、いろんなところを見てまいりました。まさに、実は異常気象は将来の問題だと思っていたのが、我々の世代にも目の前に起ころうとしています。これがこのまま温室効果ガスが増加をすれば、二〇五〇年ではなく、もう日を追うごとに全国で、世界中で被害が広がる。だからこそ、パリ協定で二度C以内に抑えるということをコミットするということを世界が決めました。これが異常気象の状況です。
外務大臣もそのことはよくお分かりだと思いますが、この写真を見て一言御感想なり御決意をいただければと、環境大臣にもいただければと思います。
○国務大臣(岸田文雄君) まず、この資料、写真を拝見いたしまして、改めて気候変動問題の現状に大きな衝撃を受けますし、何よりもこうした変化が急速に進んでいることについて強い危機感を感じますし、それから、将来の世代に対して、我々は今、この今の時代を生きている人間として大きな責任を担っているということを痛感いたします。
私も様々な国際会議等に出る中にあって、国際的にも、環境問題、気候変動問題をライフワークとする多くの政治家に接してきました。アメリカのケリー国務長官もフランスのファビウス外相も、まさに気候変動問題、環境問題こそ自分にとって最大のライフワークであるということを強調しておられました。こうした問題意識を改めて共有し、努力をしていかなければならない、こういったことを強く感じております。
○国務大臣(山本公一君) 改めまして、このフィリピンの台風も、そしてまたニューオーリンズのハリケーンも、そしてカリフォルニアのダムの写真も、のみならず、やっぱり今年は特にこの日本の国内においても、私の立場からいいますと、まさに気候変動じゃないかと思うような状況が続いてまいりました。
いろんなことを言う方がいらっしゃいます。地球温暖化を、気候変動をもたらしているのはCO2ではないという方も中にはいらっしゃいます。それを承知をいたしておりますけれども、私どもは、今の気候変動というのはまさに地球温暖化、CO2によるものだと私は固く信じております。そういう意味において、CO2を削減しようという世界的な、京都会議から十八年掛かりましたけれども、やっとその世界的な潮流ができてきたということを、今これを機にして、この気候変動問題について政治が、各国が取り組んでいくべきだと、かように思っております。
○福山哲郎君 私は、本会議での答弁やこれまでの記者会見の山本大臣の答弁を聞いて、非常に実は心強く思っています。環境省はこれまでの国内調整の中でも非常に弱い立場でした。大臣がやっぱりリーダーシップを取っていただいて、やっぱり外務省、経産省を引っ張っていただくようなことを是非お願いしたいと私は本当に期待をしております。
その中で大臣に申し上げるのは甚だ恐縮なんですが、岸田大臣がパリ協定の年内発効に向けて頑張ってきたと、さらにはサミットの首脳宣言でもまとめてきたと、議長としてとずっと言われているんですが、何と、サミットで安倍総理が早期に批准する、年内発効という目標を言った直後に、丸川当時の環境大臣が、何と、少なくとも次の通常国会中にお願いしたいと発言をしています。先ほどの藤田委員の外務省が年内の発効はありませんよと言っていたというような報道と、実はこの丸川大臣の通常国会にお願いしたいという答弁は、まさに平仄が一致をしております。つまり、環境省も外務省もやっぱり年内の発効を見誤ったと。そして、なおかつ、サミットでは年内発効をコミットして、国内では環境大臣は通常国会だと言って、国内には正直言って別のことを言ったと。
外務大臣は正直にいろんな調整に時間掛かりましたとおっしゃっておられますが、いや、これは、サミットでのコミットと国内での国民への説明が違うというのは、これ非常に問題だと思いますし、結果として環境省も外務省も年内発効を見誤って、第一回締約国会議に出席できなくなっていると。
私は、本当に外交的には問題だと思います。外務大臣は、私の本会議の、アメリカから事前の連絡が中国との批准であったかということについては明言をされませんでした。なかったと外務省も環境省の役人はおっしゃっています。私は、やっぱり官邸ないし安倍政権の消極的な対応がこの結果になったんだと考えています。非常に残念です。
第一回締約国会議は全参加国で参加をするんだというのがさっきプレCOPで議論になったと何かアリバイのように答弁されていましたが、私も国際交渉見てきました。今回は締約国にインド、中国が入ります。そう簡単にオブザーバーに参加をさせたり、オブザーバーの意見を聞きましょうという空気になるかどうか。初めての締約国会議です。空気は分かりません。行ってみなければ分かりません。私はそんな甘いものだとは思っていません。だからこそ、今回のこの批准の遅れは非常に残念だと考えています。もう時間がなかったので、質問にしないでべらべらと話してしまいました。
環境大臣、この丸川大臣の対応、それから年内発効を見誤ったのではないかという指摘についてどのようにお答えになるか、お答えください。
○国務大臣(山本公一君) 福山議員の御懸念は十分に共有できると思っております。その上で申し上げたいと思いますけれども、私は、COP22の舞台において、日本という国は私は存在感は失わないといまだに固く信じております。
いろんなことはございましたけれども、私は胸を張って、もし国会がお許しをいただけるのならば会合に参加をいたしたいな、そして日本の意見を言いたいなと思っています。このことを申し上げますことは、ここのパリ協定に至るまでの過程において、とにかく京都会議以降、全ての国が参加するという、ここまで来るのにすごい時間が掛かったと。いろんな議論があって、やっと全ての国が同じ土俵に上がってくることができたと。その過程において我が国が果たした貢献度というのは、私は、必ずや、いろんな意味において、あの舞台において各国が評価してくれるものだと、そのように思っておりますから、私は、もし国会が許していただけるならば、COPの場に参加して堂々と意見を言ってきたいなと、かように思っております。
○福山哲郎君 半ば大臣はお認めになられたと思います。
日本が貢献してきたことはもちろんですが、その中で、二〇〇九年の我が党が政権を取ってきたときの演説等が、実は、この間本会議で申し上げましたように、コペンハーゲン合意、カンクン合意、そしてパリにつながっているということも事実だということを是非皆様には御理解をいただきたいと思います。
その中で、残念ながら日本の存在感はどんどん落ちています。我が国の約束の二六%削減では、二〇三〇年までの取組で二酸化炭素の排出で約十五ギガトンもギャップがあります。二度目標達成のためにそのぐらいのギャップがあります。国際NGOのクライメート・アクション・トラッカーは、日本の削減目標は不十分という最も低い評価をしています。
是非、日本は、ギャップを埋めるために、二〇一八年には目標の引上げの対話も開かれますので、あと二年しかありません。目標を引き上げ、そしてそのためにどのように準備をするのか、そのことについて環境大臣に決意をいただきたいと思いますし、三年ごとの地球温暖化対策計画も前倒しするべきではないかと考えますが、大臣、お答えください。
○国務大臣(山本公一君) まず、先生御指摘の野心的ではないという評価があるということについて申し上げたいと思いますけれども、私どもは、二六%という数字を検討していく過程において、あらゆるものを積み上げたことによって策定をしたと、かように思っております。その上において、削減率やGDP当たり・一人当たり排出量等を総合的に勘案すると、我が国の削減目標というのはほかの国に比べても遜色のないものだと、さように思っておりますから、野心的ではないという評価は私は当たらないのではないかと、かように思っております。
その上で、先生御指摘のような温対計画に基づく三年ごとの見直し、これは今までのいろんなことを勘案しながら、また検証しながら、三年ごとに目標また施策について検討を行って、必要に応じて計画を見直すという柔軟性を持って対応したいなというふうに思っています。
○福山哲郎君 野心的か野心的でないかは、実は二度C目標に対してどれだけリアリティーがあるかです。今の二六%削減を延長して引っ張っていっても二〇三〇年、二〇五〇年の目標に立たない、到達しないギャップがあるから、逆に言うと野心的ではないという議論です。別に抽象的というか、誰かの評価で野心的かどうかと言っているのではなくて、二度C目標についてどうかということで議論をしているので、そのことについてきちっと日本がギャップをなくしていくような計画を立てたり、目標設定にするための上積みを是非お願いしたいと考えます。
実は、大臣はすばらしいことを言っておられまして、石炭火力はつなぎでも何でもない、石炭は先祖返りのような話だと、この間会見で言われました。大変勇気のある発言だと思います。
その中で、日本は石炭火力発電所が新設をされているんですが、この発電所の効率情報や設備利用率、発電実績、排出量、そういった評価がしっかり環境省に届けられなければ、その発電所が本当に適切かどうかについての判断ができないと考えます。是非、環境省としては、こういった石炭火力発電所の情報をきちっと把握できるような制度を環境省として御努力いただきたい、担保していただきたいと思っておりますが、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(山本公一君) 私の石炭火力に対する発言は、私、いまだに自分では間違ったことを言っていないと信じております。石炭火力というのは、いろいろ、私が知る限りにおいて、幾ら高効率のものであったとしてもCO2を発生することだけは間違いないことでございまして、それを考えていくときに、石炭火力発電所を新増設するということは私は世界の潮流に反するものだというふうに思っておりますから、あのような発言に至ったようなわけでございます。
その上で、今御指摘がございました排出量のいわゆるチェックをきっちりしろというお話なんだろうと思うんですけれども、御承知のように、環境と経産両大臣が合意をいたしております。省エネ法やエネルギー供給構造高度化法の基準の設定、運用の強化といった政策的対応等を行うことといたしておるということで、こういうことに対して環境省としては、毎年度こうした取組の進捗状況をレビューすることといたしております。その上で、経産省からの情報を踏まえて取組の進捗状況をしっかりと評価してまいりたいと思っております。
また、経産省から思うように出てこない情報等もあろうかと思いますけれども、各事業者からの、ホームページ等々を通じて各事業体の排出量その他については、取組状況については検証をしていきたいなというふうに思っております。
○福山哲郎君 山本大臣は正直な方だと思います。経産省から出てこないかもしれませんが、それを各事業所のホームページで我々調べたいと。それは駄目でしょう、日本の省庁内できちっとそれを制度的に担保してくださいと私はお願いしているんだから。冒頭申し上げたように、省庁間でそんなことやってたら世界から笑われますよ、大臣。そこを強くしていただくことが私が大臣に期待することだと申し上げました。
経産省からも来ていただいているので、一問だけお伺いします。
再生可能エネルギーですが、二〇三〇年度のエネルギー基本計画の見直しでは、再エネ比率が二二から二四になっています。しかし、今年の五月です。月間ベース、実は自然エネルギーの割合はとうとう二一%に達しました。五月の四日は九州電力管内では太陽光と風力だけで何と六六%です。
つまり、二〇三〇年に二二から二四というのはもうすぐに到達可能です。ですから、今の自然エネルギーの比率は余りにも目標として小さ過ぎる。ですから、少なくとも三〇%以上に引き上げるということも含めて、経産省としてもこの再エネの比率を三〇%、四〇%と引き上げていく、それに合わせて、先ほどから申し上げているように、温室効果ガスの削減目標を引き上げていく、そしてギャップを埋めていくということをしていただきたいと思うんですが、経産副大臣、いかがでしょうか。副大臣から。
○副大臣(松村祥史君) お答えいたします。
経産省でまとめております電力調査統計によりますと、本年五月の再生エネ比率は一六・八%となっております。ただし、これは小規模の発電事業者の電力量などを加えますと、先生御指摘のとおり、約二一%になるとの試算もあると承知をしております。これは、四月から五月は過ごしやすい気温であること、また、電力の消費量が低い一方で、日照量が大きく、太陽光発電を中心とした再エネの発電量が多くなるため、再エネ比率が年間比率よりも相対的に高くなっていることが原因と推測されます。
また、委員御指摘のとおり、九州電力管内では、本年五月四日の十三時時点におきまして、日中の太陽光、風力の出力が電力消費量の六六%を占める結果となったことは認識をしております。これは、五月四日はゴールデンウイーク中でもあり工場なども休みでございまして、また電力消費量が少なかった一方で、この日は晴れておりましたので、太陽光発電の供給量が増大するタイミングに合わせて火力発電の出力を抑制する運用を実施していたためであると、こう推測をしております。
その上で、昨年七月にお示しをいたしましたエネルギーミックスでは、御指摘のとおり、二〇三〇年度における年間を通じた再エネ導入の水準を二二から二四%としておりますけれども、季節によっては再生可能エネルギーの比率の高い時期、低い時期がございますので、足下の二〇一四年度においては一二・八%という水準でございます。これは、導入拡大の余地が大きくない、いわゆる水力を除けば足下は四%程度しかない再エネを二〇三〇年度には四倍程度にも導入拡大するという極めて野心的なものであると考えております。
引き続き、政策を総動員して再エネの導入拡大に取り組んでまいりたいと考えております。
○福山哲郎君 抽象的な決意はいただけるんですが、削減目標を大きくするべきではないかとか再エネを増やすべきではないかとか、経産省と環境省できちっと石炭火力について情報提供する制度が必要じゃないかということについては余り明確なお答えがされなかったこと自身が非常に残念だと思いますが、このパリ協定、大事でございますので、是非御検討いただきますようによろしくお願いします。
ありがとうございました。

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