06/09

2005

第162国会 参議院 環境委員会 2005年6月9日


地球温暖化対策推進法改正案質疑(第2回)

○委員長(郡司彰君) ただいまから環境委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○福山哲郎君 民主党・新緑風会の福山でございます。よろしくお願いを申し上げます。
 午前中の大石委員に引き続きまして、質問させていただきたいと思います。
 おととい、参考人の質疑がありまして、大変いい質疑をさせていただきました。それぞれの参考人から、今の温暖化の状況についての建設的な御意見もいただいたというふうに思っています。
 その四人の参考人のうち、三人の方が実は共通のことを言われました。今日午前中の阿部委員の質問にも共通するんですけれども、要は、日本の国内的な意思の形成がはっきりしていないと。それから、国民に対するシグナルというかメッセージが出ていないと。それから、今日午前中ちょっと議論になりましたが、長期的な目標についての日本の意思が見えてこないと。地球環境部会長をやられている先生からは、要は国際交渉においてマイナスにならないようにしなければいけないというような旨の発言もありました。受け身になってはいけないという旨の発言もありました。
 実は私、前回の質問でこのことを小池大臣にお伺いしたんですが、なかなかはっきりとした答えがいただけませんでした。今日、事前の質問には入っていないんですが、参考人の方のお話がありましたし、今日午前中、阿部先生の御議論もありました。大臣、どうでしょうか、日本の意思というか、環境大臣としての御意思についてもう一度言及をいただきたいと思うんですが、よろしくお願いします。
○国務大臣(小池百合子君) おっしゃいますとおり、この地球環境問題に対して我が国がどのような姿勢を取るのか、そしてまたどのようなメッセージを発していくのかというのは極めて重要なことだと思います。また、明確なメッセージを流布していくことが、すなわち我が国にとりましても、今後我が国のこの課せられております課題をしっかりと実行していく上でも重要な一種のマニフェストにもなると思っておりますし、また、長期的なメルクマールを持つことによって更に国内の取組を促進をさせる、そしてまた海外との協力関係を進めていくという意味では大変重要なことだと思っております。
 今、先ほどからお答えさしていただいておりますように、中長期的な課題については現在様々な観点、また専門的な観点から御議論もいただいております。早急に取りまとめ、また我が国として、全体としてどのようなメッセージが発せられるのか、強力な連携を取りつつ進めてまいりたいと考えております。
○福山哲郎君 前回よりかはちょっと前向きに御発言いただいたんですが、要はこれからメッセージを考えると。サミットもありますし、まさか小泉総理に手ぶらでサミットに出ていただくわけにもいかないでしょうし、今回のサミットのテーマは貧困と気候変動でございますので、小泉総理にどういうメッセージを持っていっていただけるか、正に環境大臣の手腕が問われると思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
 二〇〇二年に温対法が改正されまして、京都議定書を二〇〇二年に我が国が批准しました。これまでの取組がどうであったかという話は午前中も議論出たんですが、現実問題としては、よくあるように、一九九〇年比八・三%の増になっています。目標値に合わせると一四・三%の削減が必要だと。実は、そのときに法案も、それから大綱もあったわけです。その大綱でいわゆるステップ・バイ・ステップのアプローチをし、今回も第一ステップについての評価、見直しがずっと昨年来続けられた上で今回、目標達成計画というのが作られてきました。現実には、目標達成計画が作られるに当たって、なぜ大綱を作ってそれを実現しようと思ってやっていたのに八%増えてしまったのかとか、それに対する評価とか分析がないと具体的な次へのアプローチには行かないと思うんですね。
 それで、現実問題としては、今八%増えていますから一四%減らさなきゃいけないんです、大変です、大変ですという、このままじゃ厳しいですというメッセージは実は環境省からも大臣からもよく伺います。しかし、現実には大綱は動いていたわけです。動いているにもかかわらず八%増加したことに対する評価というか総括というか、そのことに対しての責任というものに関しての言及をいただいていないと私は思っておりまして、その問題について大臣に御答弁をいただければと思います。
○国務大臣(小池百合子君) 九〇年と比べますと、二〇〇三年度の我が国の温室効果ガスの排出量が八・三%の増加ということで、これまで約八・八%と申し上げていたのを、より精査して八・三という数字を出させていただいております。
 その九〇年比のマイナス六%の約束から考えますと、今御指摘ありましたように、なかなかギャップが大きい、これまで大綱もあったのにどうしていたんだということでございますが、プラスの部分ではトップランナー規制というのは効果を出してきているところだと思っております。そしてまた、これまで政府が強化をしてまいってきた対策そのものは一定の成果を上げてきていると思います。思いますじゃなくて、一定の成果を上げてきております。
 一方で、人口、世帯数が増加したり、経済規模が拡大したり、また自動車保有台数そのものの増加といった点など、社会経済の活動量そのものの増加といったこともこの八・三%の増加というところに寄与している。余りいい、寄与というんでしょうか、その中に含まれていると思います。
 もう一方で、細かく分析をいたしますと、二〇〇三年度は一部の原子力発電が停止をしたというような事態が生じたことも思い起こされる点でございまして、この原子力発電所が止まっていた分、それを補う形で火力発電、より分かりやすく言えば石炭をかなりその分で燃やしてきているということで、その部分が二酸化炭素の排出量の約四・九%の増加ということになるわけでございます。単純にお示しいたしますと、約八・三%のプラス分の四・九%が原子力発電の停止ということにかかわってくると、こういう内訳が見えてくるのではないかと思っております。
 昨年一年掛けまして、これまでの対策の効果などについて関係審議会で評価をしてまいりました。そしてまた、それを踏まえて、確実に削減が見込まれる新たな追加対策を検討してきたものでございまして、温室効果ガスの排出抑制対策、吸収源対策、京都メカニズムの活用といったことを盛り込みました目標達成計画を、御承知のとおり四月に策定をさせていただいたところでございます。
 こうやって随時見直しをし、そして正にステップ・バイ・ステップの方式とともに京都議定書が発効したという厳然たる事実を踏まえまして、よりこの効果、六%の削減の約束を確実に達成をしてまいりたいと、このように考えております。
○福山哲郎君 理由として、例えば経済規模が今、拡大されたとか、人口や世帯数が増えたとか、原発が止まったとか一時停止をしたとかとおっしゃいましたが、経済規模は、先ほどの議論もありますように、多分日本は経済成長を目指していくんでしょう、今の政府は。それから、人口、世帯数は、多少人口減になっていきますが、世帯数は増える傾向にあると思いますし、原発はいつ不測の事態が起こるか分かりません。そういう状況の中で、今言われたような原因だったと言われると、非常に何というか、外的な要因があるから駄目でしたという話に聞こえるんですね。
 じゃ、具体的に、一体何が駄目で何が良かったかということをもう少し言っていただかないと、実はこの八%増の評価にならないと。そういう抽象的な議論をしているから実はいつまでたっても増え続けるんだというふうに私は思っていまして、先ほど阿部先生がおっしゃいました、地球が母親だと、地球の任命を大臣が受けているんだというようなお話がありましたが、私実は、前もこの委員会で申し上げたんですけれども、五十年後とか百年後こうなりますよという議論はもちろん重要なんです。子供たちの未来のためにという議論も私は重要だと思っています。
 しかし、現実にはもう温暖化の影響というのはいろんなところで見られていまして、いつも申し上げますが、私はモンゴルに三年前行ってきましたけれども、九六年の八月、モンゴルは初雪が降っていました。初雪が降っていた九六年、私が行った二〇〇二年の夏、実は三十数度でした。御案内のように、羊が数千万頭の被害が出たり、温暖化の状況であちこちで山火事で乾燥したものが起こっていたり、それから去年は秋に、こちらにいらっしゃいます谷理事とも御一緒にいわゆるフィジーの沈みゆく村だと言われているような村のところにも行ってきました。ツバルなどは実は国土の半分ぐらいがもう水に沈んでいる、海水に沈んでいると。実はもう実際に起こっているわけです。
 私は、例えば日本で去年は暑かったと、今年は涼しいから大丈夫なんだとか大丈夫じゃないとか、先ほど大臣が言われたみたいに、温暖化の影響というのは中長期的なものですから余り一過性のもので判断してはいけないんですが、少なくとももう我々の身近なところで起こっていると。日本の国内にしても、環境省がちゃんと出している資料だけでも相当、日本に与える影響について言えば、百年間で東京も二・九度も気温が上昇しています。それから、高山植物や、それから昆虫の生息域や動物の生息域、ウミガメの産卵等についても現実に北上していったり、いろんなところで動いてきているわけです。
 ですから、そのリアルな現実を目の当たりにしたときに、我が国がどういうメッセージを出して実際に温室効果ガスを減らしていくのかということが、私は本当に国民共有の意識の中でやっていかなければいけないと思っておりまして、それで何とかこの問題については積極的に環境省に、大臣にリーダーシップを取っていただきたいなというふうに思っています。
 本当に期待をしているということも含めて、次の質問に移らしていただきたいと思います。
 実は、この京都議定書の目標達成計画の議論、それから大綱に至る議論、それから、これから先、国際社会で日本がどういう交渉ポジションを取っていくかという議論の中で、実は非常に誤解を招いたり偏った印象を持たせてしまうものが内在をしていると。議論の前提として、私はいろんな数字とかいろんな統計とかを日本の役所、特に省庁間で共有して国民にプレゼンテーションをしていただきたいと思っています。それはなぜかというと、我々国会議員に対してもプレゼンテーションの仕方が全然違うということです。
 今日、委員の皆さんにお手元に資料をお配りしました。大変恐縮でございますが、①と書いてあるのを見ていただきますと、これよくあります最終エネルギー消費の推移ですが、今すごくエネルギー消費は増えていますと。これを見ますと、運輸部門が一・二倍、民生部門が一・三倍、産業部門が一・一倍で、いつも議論の中に出てくるのは、産業部門はとにかく自主行動計画で頑張っていると、実は民生部門が増えているから、ここは何とかしなければいけない、家庭を何とかしなければいけないという議論がよく出てきます。多分、委員の先生方もしょっちゅう聞かれていると思います。しかし、私いつも、常に疑問に思っていたんですが、民生部門とは何ぞやと、産業部門とは何ぞやという議論をしていかないと、なかなか説得力がないということをずっと実は言っていました。実は、今年、議論の中で大分改善をされたのであえて今日申し上げるんですが。
 下を見ていただきますと、民生部門というのは実は家庭部門と業務部門に、もう御案内のように、もう先生方皆さんお分かりのように分かれます。この業務部門というのは、いわゆるオフィスビルとか官公庁のビルとか、そういうものが入ります。家庭部門は、いわゆる家庭部門です。しかし、これ一緒くたに実は民生部門と言ってしまうと非常に誤解を招くことになります。実は、業務部門におけるオフィスビルというのは、ほとんどが企業が産業活動の中で使っています。ところが、民生部門だけ増えていて産業部門は変わらないという話になって、この産業部門は何ですかと聞くと、それぞれの工場等におけるエネルギーの消費だということになります。それはつまり、そこの部分を分割をして議論をして本当にいいのだろうかと。これが非常にいろんな議論の中でミスリードされることになります。
 そして、実は私、今日お手元にはお配りをしていないんですが、資源エネルギー庁が出している省エネルギー対策という冊子を見ますと、これ相変わらず運輸と民生と産業部門で実は棒グラフが出ています。その下見ますと、産業部門は「概ね横ばい。」で、「一方、民生・運輸部門は大幅に増加。」という表記が資源エネ庁の資料に出ているわけです。後でもう一回別の議論をしますが、これはちょっと違うんやないかと思っておりまして、それをやっぱりこの場で確認をしておきたいと。そして、できればその表記の仕方を一定にしていただきたいというふうに私は思っています。
 経済産業省に、実は、細かくした資料ないのかといってお願いをしたら、委員の先生、見ていただければお分かりなんですが、何とちゃんと分けておられるんですね。右の上を見ていただきますと、民生家庭部門、それから、家庭でも実は乗用車に乗りますから、運輸の問題での乗用車部門で、実はこれで家計部門がどのぐらい使っているかというのが出てきます。その下見ていただきますと、企業部門として、産業部門、これは先ほど言った工場等です。それから、民生業務部門、これはいわゆる先ほど申し上げたオフィスビル等ですね。それから、もちろん、産業活動で、運輸旅客、貨物、物を運びますから、それから企業は乗用車も使いますので、運輸旅客部門のうちの乗用車、運輸旅客部門のうちの鉄道、航空、それから運輸貨物部門というふうに、こうやって実は分けて出てきたんです。
 そうすると、家計部門を見ていただいたらお分かりなんですが、確かに増えているんですが、先ほど一番最初の左上の、民生部門は一・三倍だとか、産業部門は一・一倍だとかという話じゃなくて、企業部門を見ていただいたら、企業部門もこういう分け方をすると、まあ、ある種横ばいで、なおかつ、けたで言うと企業部門の方がはるかにやっぱり排出の寄与度、エネルギー消費の寄与度がでかいんですね。
 私は、決して今、どっちが悪役だと言いたい話をしているのではありません。それから、これだから企業が悪いんじゃないかとか、いや、家庭はいいんだとかいう話をしたいのでもありません。誤解をしていただきたくないんですが、こういうことをちゃんと国民とそれから少なくとも我々国会議員、それから省庁間で議論をするに当たって、共通にこうやって出しておいていただかないと、先ほど申し上げたように、資源エネ庁は相変わらず三つに分けて、ここに書いてあるように一・二倍だ、一・三倍だ、一・一倍だと書いてあるわけです。
 僕もいろんなシンポジウムや勉強会に出ていくと、例えば経産省関係で出てこられる方、資源エネ庁関係で出てこられる方はこの図を前提に物事を話されるわけです。そうすると、民生部門というのはどういう中身なのかよく分からないから、ああそうか、産業は頑張っているけれども、家庭は頑張っていないんだと。それは、家庭も頑張らなきゃいけないし、私は産業も頑張らなきゃいけないんだと思っていますから、ただここら辺の共通の物差しとか共通の表記の仕方というのは私は絶対に必要だと思っておりまして、是非環境大臣、これ、二〇〇七年に向けて、第一約束期間の手前二〇〇七年に向けてもう一回これ、目標達成計画の見直しをされるはずだと思います。目標達成計画というのは、御案内のようにというか、大臣が、政府で作られたものです。ですから、そこは、それぞれの省庁でこういう使い分けをしないと、ちゃんと家計部門、家庭部門、企業部門というようなちゃんとした分け方を共通にそれぞれの省庁でして、そしてその土台の上に目標達成計画について個別の政策をするというようなことを、是非、次の二年間に向けては前向きに検討というか、実現をしていただきたいと思っておりまして、大臣の御答弁をいただければと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(小池百合子君) それぞれの部門でどれぐらい出ているか、排出されているかというある種のファクトは、これは同じことだと思います。どのようなくくりにするかということ、これが若干違っているという御指摘ではないかと思っております。
 今、より分かりやすく、また事態の本質をつかむ上でそういったカテゴリーをどうするのかというのは極めて重要な問題であると私は感じているところでございます。そういった意味で、各審議会などでもそのくくり方をどうするのか御議論もいただいているところでございます。今御指摘のこと、私はそのとおりだと思っておりまして、さもなければ、全体像が分からないでどういうふうな対応をしていくかというのが、その対応の仕方も、強弱も変わってくるのではないかというふうに感じているところでございます。
 今御指摘の点はよく踏まえて、しっかりと対応してまいりたいと考えております。
○福山哲郎君 審議会で議論していただくのは結構なんですが、こんなものは政治判断の話です。必要なものなら政治家が決断すればいい。別に審議会の先生にゆだねる必要は全くないわけです。
 経産省はこういう状況についてはどのように今認識されていますか。
○政府参考人(深野弘行君) 今の点でございますけれども、これまで御指摘のように、産業部門、それから家庭・業務部門から成る民生部門、運輸部門と、こういった区分の仕方をしてきたところでございますけれども、これにつきましては、これまでエネルギーの使われ方に応じた対策というものを取りまして、その結果を評価すると、そういうことをしてきたわけでございますが、そういった点において一定の合理性はあったんではないかというふうに考えております。
 ただ、一方で、御指摘のように、例えば企業、家庭といった主体ごとに着目して対策が取られるものでございまして、例えば今回の目標達成計画の中で申し上げますと、運輸部門の中では荷主とか運送事業者、それから民生部門につきましてもオフィスとか、そういった企業という主体に着目をした対策もございますし、あるいは国民行動の目安をお示しして家庭での省エネルギーに努めていただく、そういった家庭といった主体に着目した対策もあるわけでございます。
 今回の目標達成計画の特徴は、こういったもろもろの対策につきまして事後評価を定量的にできるだけ行っていくということがポイントだというふうに私ども理解をしておりまして、主体ごとの取組状況についても可能な限り定量的な評価に心掛けていくことが必要であるというふうに考えております。
 こういったことを踏まえますと、御指摘いただいたような点も含めまして、一つの断面からだけではなくて様々な角度から国民の方に結果を見ていただけるように、主体に着目をした排出データの整理も含めて、今後、結果の集計、公表の在り方についても環境省始め関係の府省とも協力をして検討を深めていきたいと考えております。
○福山哲郎君 資源エネ庁さんは来ておられます。
 資源エネ庁さんはどうお考えですか。経産省と余り変わらないかもしれませんが、お答えいただけますか。
○政府参考人(岩井良行君) 私どもの省の考え方といたしましては、今、深野審議官がお答えしたことと基本的に同じでございまして、目的に応じて分かりやすい情報の提供ができるように、省内あるいは関係省庁ともよく相談をしてまいりたいと思っております。
○福山哲郎君 一応前向きな答弁をいただきましたが、これ、環境大臣、環境大臣はやっぱり重要なんですよ。家庭部門、企業部門、国民に広く働き掛けしなきゃいけないんです、これから。だれだれが努力をした、だれだれだけが努力をしたからといってこの温室効果ガスはなかなか減らないのは、先ほど大臣が言われたみたいに八%増え続けているわけです。それぞれのファクターがあって、そのときに私は、こっちはいいけれどもこっちが悪いという議論をしている場合ではないと思っていまして、この表記の仕方、それから、例えばこれから二〇〇七年に向けて見直しを進めていく上に当たって、共通の表記で共通の認識で審議会の議論もする、それから国会での議論もする、それから役所が資料を持ってくるときにもちゃんとこういうファクター、セクター別にちゃんと表に出してくると。
 安易にこれで運輸部門が増えているとか民生が増えている、産業は頑張っているみたいな、こういうステレオタイプの議論は是非やめていただきたいと思うんですが、大臣、是非率先して各省庁に働き掛けていただいて、実現に向けて御決意をいただきたいんですが、いかがでしょうか。
○国務大臣(小池百合子君) この分け方でございますが、基本的には排出量の算定方法というのが国際的なガイドラインに基づいたものがございまして、これは気候変動枠組条約に基づいてのガイドラインでございます。そういったことからこれまで産業、運輸、家庭、業務その他、エネルギー転換部門、こういった形で算定をしておりまして、インベントリーを作成するという国際的な義務を果たす上では必要な整理で行ってきたというのが、これが報告の仕方としてのカテゴリー。じゃ国内対策はどうかということでございまして、その意味では、それぞれ産業、そして運輸、業務、家庭ということだけでは、対策を練る上でもまた国民に呼び掛ける上でもより分かりやすい方法が必要なのではないかと考えているところでございます。
 この話ばかりしているじゃないかと思われるかもしれませんが、産業が、例えば工場の省エネ度というのは非常に今よくやっていただいているということはこれは事実でございますが、一方で、オフィスビルに入る業務になりますと、これは三六・九%も伸びてきているというのが最新、これまでも公表している数字でございます。その意味でオフィスビルをどうしていくのかというのは大きな観点でございまして、その意味で夏の軽装を進めていただくというのは一つ極めて分かりやすい入口ではないか、このように考えているところでございます。
 いずれにしましても、目的として、また京都議定書のターゲットをしっかりと確実なものにしていくためには、国民の皆様方にしっかりとその実態、そしてまた何をすべきかということを分かりやすく提示をしていくというのが必要なことであると考えておりますので、これからも各省庁との連携を取りながら、そういった方向で進めてまいりたいと考えております。
○福山哲郎君 そういった方向で進めていくと言われているお言葉を信じて、次に行きたいと思います。
 同様の話なんですが、実は資料にあります右下のグラフは、エネルギーの家計部門と企業部門、先ほどの産業と業務ではない分け方をしたときの実はエネルギーの消費量のグラフです。これを見ていただきますと、やはり全体としては、企業部門の方が全体のエネルギーの消費については寄与度が高いのはこれは当たり前な話でございますから、だから悪いというのではありません、これで我々経済活動成り立っているわけですから、そこは否定しませんが、そういう議論をちゃんと踏まえてやっていただきたいと。
 裏に行っていただきましても同じで、もうこれ以上は説明しませんが、CO2の排出量に関しましても、実は右側の円グラフを見ていただきますと、企業・公共部門関連というのは約七九%に実は全体のCO2の排出量になります。しかし、これが産業、業務、民生という分け方になっちゃうと全然実はその実態が見えなくなっていまして、これでいうと、家庭の寄与度はCO2の排出量でいうと一三%にすぎません。確かに家庭は増えていますから、減らさなければいけませんけれども、全体のマスで考えたときに、やはり企業部門も家庭部門も両方減らしていかないとなかなかおぼつかないというのが現状でございまして、先ほど阿部委員から五〇%減らさなあかんのやというような話もありましたので、そこも含めてまた今のお話をお願いしたいと思います。
 二点目。もう一つ、私は共通の認識でこれから先温暖化対策をするときに議論をしなければいけないことに、いわゆる乾いたぞうきん論の話があると思います。日本は省エネ技術が優れていると。それから、もうこれまで石油ショック以来頑張って技術革新をしてきたから、各国に比べてはなかなか、省エネの技術が発展しているので、もう乾いたぞうきんを絞るようなものだと、もう水はほとんど出ないということを私はこの十年間いろんなところで伺ってきました。そして、産業界がそのことについて御努力をしてきたことも一〇〇%認めている人間だと自分でも思っています。
 しかし、実は、二枚目のプリントを見ていただきますと、「世界のGDP当たり一次エネルギー消費」という実は各国のGDPを、単位当たりのGDPにどのぐらい消費をするかという一覧表が各国のあります。これは実は、省エネセンターに出ているEDMC二〇〇五から抜粋しておりまして、実は二〇〇五年ですから今年のものでございます。
 これ見ていただきますと、石油換算トン・一九九五年価格という単位になっています。実は、これは為替の問題が重要でございまして、その右側を見ていただきますと、九五年というのは日本で一番円高のときでございます。このときには、いわゆる百円を割れて非常に円高が進んだときです。九五年の円高というのは、本当に八十円、九十円の時代でございまして、そして実は十年前の為替の水準です。今もう百六円、八円で動いていますが、ただその間に為替というのは変動しているわけです。
 ところが、いまだに、エネルギー、GDP当たりの一次エネルギーの消費のこの表を見ますと、実は九五年の為替で計算をしているわけですね。そうしたら、一ドル当たり八十円とか九十円のときでいえばそれは一番少なくなるに決まっているわけでして、実はずっとこの議論しているんですよ。やっぱり、これはやっぱり本当かなという議論があるわけです。
 そして、私、中環審の今回議事録も全部読みました。実は、GDP当たりのエネルギー消費量について、日本が非常に省エネが進んでいて消費量が少ないんだという議論に対して相当異論が中環審の議事録を読んでも出ています。経産省は相変わらず、お伺いをすると、日本は省エネ大国ですと、アメリカに比べて二倍とか三倍とかの省エネ比率ですという議論が出てくるわけですね。ところが、いろんな業態を見ていくとそうではない部分もありますし、ましてや九五年の為替レートを常にキープをしていればこの議論が本当に成り立つのかと、根拠として、前提としてという議論があるんですね。
 このことについては環境省は今どういう認識をされているのか、お答えをいただけますでしょうか。
○政府参考人(小島敏郎君) あの中環審の御議論を、議事録をお読みいただいたということでございますが、この世界のGDP当たりの一次エネルギー消費というのを、その一定の年、この場合では一九九五年というその為替レートで固定をして比較をしていくというこの手法は、一つの国の経年変化を見る、つまりこの表でいくとアメリカの横の流れを見る、あるいは日本の横の流れを見ていくという場合の経済分析の手法としてはよく行われることだというふうに言われています。ただ、それじゃ縦に、何年のアメリカと日本あるいはEUと比較をするということについては、これは為替が固定されておりますのでその比較をするための表ではないと。この縦に見るということは、この表の作成された目的とは逸脱をするというふうに言われています。
 それでは、それぞれの年の為替水準によるということがその年の貿易の関係では適当なわけでありますが、そうすると、縦に見ていく場合にはその年々の為替レートを当てはめて計算をすると。為替はここにありますように毎年毎年変動しておりますのでこの為替レートを当てはめると、こういうことになります。
 ただ、もう一つ申し上げますと、そのGDPというものには国内で消費されるものがあります。ラーメンの値段が千円のところと百円のところがある。これは等価でありますから、同じラーメンを食べるということでありますので、それは等価として物事を考えると。いわゆるその購買力平価というものを基準にして考えると。
 ただ、その購買力平価を基準としてまた数字が出てくるわけでありますが、貿易財の場合には為替で動いていきますので、同じGDPといっても、貿易をするものについてはその年の為替水準を適用して物事を考えることが適当でしょうし、国内で消費されるそのラーメンの値段が幾らかというような物事が動いていくGDPについては購買力平価で考えていくことが適当だろうと思います。
 ただ、もう一つ更に議論があるのは、貿易財においても、例えば薬でありますとかそういう非常に付加価値の高いものが移動していく、これはつくるときにそんなにたくさんのCO2が出ない。あるいは、自動車とかいうものと鉄鋼の素材というように大きなCO2が出るものがあります。これは、産業の構造がその国によって違ってくるので、直ちにその貿易財についてのGDPの比較をしてどちらの国が優れているというようなことにはなっていかないというようなことで、産構審でもそうですけれども、結局は生産量当たりのCO2の排出量というものが各国の比較においては最も適切ではないかという一つの考え方に至っていると思います。産構審の資料でもそういう観点から、業態も勘案をしながらそういう比較表を作っておられます。
 そういう意味で、今お話がありましたGDP当たりのエネルギー消費量あるいはCO2排出量というのは、そのいろんな事柄に応じて適切に説明をしていかないと、国民に対する正確な情報提供にはならないというふうに思っております。
○福山哲郎君 為替や購買力平価の表は追加をさせていただいた表なので、後で御説明しますが。
 経産省は、先ほどの議論、いわゆる為替が九五年のところで行って、それから日本がアメリカやヨーロッパに比べて省エネが非常に進んでいるという、元々のかねてからある議論とこの数字の取り方については経産省はどのように今判断されているんでしょうか。
○政府参考人(深野弘行君) その国のエネルギー効率をどう比較するかということでございますけれども、私ども、基本的にはやはり個別製品ごとにその生産量、物量単位当たりのエネルギー消費量というものを比較することが最も実態に近いものではないかというふうに考えております。
 それでも、つくる品種によりまして、例えば、同じ半導体とか同じ鉄でも例えば加工度が違うとか、そういったことによりまして一定の違いが出てくるわけでございまして、これとてもそれなりに限界はあるわけでございますが、そういう物量単位のものが一番実態に近いんじゃないかということでございまして、一例を申し上げますと、例えば鉄鋼を例に取りますと、日本を一〇〇といたしますと、EUが一一〇、アメリカが一二〇、中国が一三〇から一五〇ということでございまして、これは一貫製鉄所についての最近の産業、業界の方の調査でございますけれども、そういうことになっております。
 しかしながら、まだ、こういったデータがまだ十分整備されていないというのが現実でございますので、こういったものにつきましてできるだけ整備を図っていきたいと、そのように考えております。
 それから、為替レートの問題でございますけれども、為替レートの取り方によって結果が違ってくるわけでございますが、これを経済全体で比較するということについては、産業構造の違いとかまたそのほかの要因もいろいろございますのでなかなか難しいところがございますけれども、仮に例えば産業部門全体で比較をするということになりますと金額換算でやらざるを得ないわけでございまして、そういう場合にどういう為替レートを取るかということでございますが、貿易財が中心になっている分野につきましては、今、小島局長からも御答弁がありましたように、やはり国際的な価格あるいは現実の為替レートというものをベースにして事業活動が行われておりますので、そういったものを取るということについて合理性があるんじゃないかというふうに考えております。
○福山哲郎君 今、個別生産量当たりに出すのが適当だとおっしゃいましたし、一概に全部言えるわけではないということも言っていただいたと思っていますので、私はそれでいいんですが、これ例えば、先ほどから何度も言っている資源エネ庁のやつでいうとGDP当たりエネルギー消費の各国比較というのがありまして、これ、日本が一に対してアメリカ二・七三、イギリス二・〇五といって、いまだに二・七三だという議論になっているわけですよ。要は、日本は二倍以上、三倍近くアメリカよりも省エネは比率は高いという表になっているわけです。
 ところが、お手元にお配りした、もう行ったり来たりで恐縮なんですが、一枚目の裏っ側の資料を見ると、先ほど正に経産省さんが言われましたように、鉄鋼部門は、実はイギリス、ドイツ、アメリカでいうと、実はエネルギー消費量原単位は余りエネルギー効率が日本が高いとは言えない状況になっていますね。確かに、その下見ていただきますと、紙・パルプに関しては日本はエネルギー効率は高いというふうに見えますが、しかし、少なくともこの表で見る限りは、この五年間アメリカやイギリスやドイツに近づかれることはあっても離している状況ではないんですね。
 つまり、九五年の為替でいつまでも二・何倍だみたいな大ざっぱな議論をいろんなところでするのは、僕はある種国民をミスリードするようになるというふうに思っていまして、その点について改善の余地というのは、経産省さんはどうなんでしょう、あるんでしょうか。
○政府参考人(深野弘行君) 今も申し上げましたように、まだ産業部門別の国際比較のデータというのは十分に整備され尽くしていないということでございまして、そういったデータをできるだけ集めて適切な比較ができるように私どもも努力をしていきたいと考えております。
 それから、今の鉄鋼の点について申し上げますと、確かに御指摘のようなデータもあるわけでございますが、一方で生産プロセスでの省エネルギー設備の普及状況なんかを比較いたしますと、日本は相当にヨーロッパやアメリカに比べて進んでおりまして、これは鉄鋼といったときにどの範囲を鉄鋼業としてとらえるのか、例えばその鉄鋼の企業が運営している火力発電所とか、そういうものまで含んでいるのか含んでいないのかとか、そういった点についても整理が必要だと思っておりまして、そういうことも含めて国際的なデータの整備というのが必要ではないかというふうに考えております。
 それから、GDPの御指摘につきまして、確かに産業構造の違いとかいろんな要素がございますので、なかなか難しいところはございます。その辺も子細に見ていく必要があると思っておりますが、一方で日本が比較的少ないエネルギーで多くのGDPを稼ぎ出しているということは一つのポイントとして言えるんではないかというふうに考えております。
○福山哲郎君 ありがとうございます。
 それで、実は二枚追加で、理事の先生方に御理解をいただいて配らせていただいたペーパーが、先ほど小島局長が言われた、為替の水準によって実はGDP当たりのエネルギーの消費量を業態別に表している表と、右側が購買力平価の基準で表している表でございますが、実は為替の水準でいっても、実は製造業は二〇〇〇年を見ていただきますと、下のグラフなんですが、実は随分日本は各国に比べると追い付かれている状況でございます。
 日本は貿易財が多いですから、為替で見ることも重要だと思いますが、先ほど小島局長言われたように、購買力平価で見るという指標も出てくるわけですが、右側の購買力平価を見ますと、何と二〇〇〇年は、日本の部門別エネルギー消費量、製造業のところでいくと、もう実はアメリカ、ドイツ、イギリスと互角どころかひょっとすると負けているような状況もあります。
 これは為替か購買力平価かという指標の取り方によって数字が違うので、私は一概には言えないんですが、しかしこういう数字が出てきているという実態を踏まえたら、実は産業界のいわゆるよく聞く絞り切ったぞうきんと、乾いたぞうきんという話はもうそろそろ卒業してもいいのではないかと。逆に、これからやっぱり企業、産業界にも頑張っていただかなければいけないし、自主行動計画で頑張っていただいているのも分かるわけですけれども、そこは絞り切ったぞうきんの議論をちょっと超えたところで、経産省も資源エネ庁も、それから環境省も、どの尺度で、どの基準で実際の省エネ、日本がどのぐらい力があるのかとか、それから先ほど申し上げた民生とか業務とかの区分分けも含めて共通の尺度でこれから議論していかないと、それぞれの省庁が自分らの、何というか、都合のいい数字だけを持ってきて、ここは厳しい、ここはいける、ここは厳しいみたいな議論をしていると、なかなか私はこの温暖化対策は進まないのではないかと思っておりまして、この件についてはどなたに聞きましょうかね、大臣はいかがでしょうか。
○政府参考人(小島敏郎君) それぞれの分野を評価をするのにどのような指標がいいかと、今GDP当たりのエネルギー消費ということで御議論がありましたけれども、経済産業省ともこの一年の間の評価、見直しの過程を通じまして基本的な認識は一致をしているというふうに思っておりますので、今御指摘のように、それぞれの分野に適した、全体は条約事務局に出さなければいけないインベントリーがございますので、それはそれで整理をして出させていただきたいとは思いますけれども、国内の対策を進める上で、それぞれの分野に対して最も適切な指標というものを整理をしてお示しをしていくと、これをそれぞれの役所ばらばらではなくて、政府として調整をしながら一つのものとして提案をしていくということが必要だと思いますので、そういう努力をしていきたいと思っております。
○福山哲郎君 経産省さん、お伺いしたいんですが、先ほど私が申し上げた例えば為替水準や購買力平価によれば、GDP当たりの部門別のエネルギー消費量は状況によっては日本はそんなにトップを断トツで走っているような状況ではないと。先ほど経産省さんも言われたように、鉄鋼等では頑張っているところがあると、これは私も認めています。努力をしているところは認めていますが、全体として、一概に全部をまとめて、日本はエネルギー効率が良くて二・何倍だ、アメリカの二・七倍だみたいな議論は少し乱暴で、もう少しきちっと議論していかなければいけないということは、経産省さん、お認めはいただけますでしょうか。
○政府参考人(深野弘行君) 御指摘のように、対策がどのぐらいあとできるのかとか、どういう効果を上げたのかといったことにつきまして、やはり対策ごとにつぶさに見ていくことが必要であるというふうに考えております。今回の目標達成計画も基本的にはそういう考え方で構成をされているというふうに考えておりまして、それぞれの対策ごとに要因を分析してできるだけ定量的に評価を行っていくと、そういったことを今後やることになっておりますので、そういった中でできるだけ定量的に客観的に評価ができるように私ども努力していきたいと考えております。
○福山哲郎君 ごめんなさい、答えていただいていないので、もう一回お伺いします。
 その日本が圧倒的に省エネ大国だとか、日本がそこはもう乾いたぞうきんで水が出ないというようなことに関して言えば、少しそこはきちっと実態を踏まえて、それぞれの産業別とか部門別とかで議論していかなければいけないということはお認めをいただけますでしょうか。
○政府参考人(深野弘行君) それは御指摘のとおりだと思っておりまして、やはり産業部門、私どもは、個別の例えば鉄鋼にしても紙にしてもセメントにしても、そういうエネルギー多消費分野ではかなり進んでいると思っておりますが、そういった分野につきましても更なる削減努力も、努力の余地もあるんではないかというふうに考えておりまして、そういった余地を私どもとしても追求していきたいと、追求していくべきだというふうに考えております。
○福山哲郎君 資源エネ庁さんも同様でよろしいですか。
○政府参考人(岩井良行君) お答え申し上げます。
 基本的に同じ認識でございまして、今回の国会に省エネルギー法の改正を提案させていただいておりますけれども、その中でも、工場の分野でありますとか、先ほど御指摘がございました業務用のビルあるいは本社ビルといったようなものにつきましても、規制の在り方を見直しをすることによりまして実質的な規制の強化を図るという内容の法案を御提案させていただいているところでございます。このような観点から、引き続きエネルギーの企業分野あるいは産業分野においても更に一層の努力をしていただきたいという考え方で省エネルギー法の提案をさせていただいたところでございます。
○福山哲郎君 きっちりとした答弁をいただきまして、大変ありがとうございます。
 私は、経済活動に支障を来すようなむちゃくちゃな規制をしろとか、そういう議論をしているわけではありません。ただ、実態をちゃんと把握して共通の認識の中で議論していただかないと始まらないということを申し上げているので、今日は環境省さん、それから経産省さん、資源エネ庁さんがそれぞれ指標等についても対策を共有したいということを言っていただいたということは非常に第一歩だと思っておりまして、いわゆる民生部門が増え続けているとか、乾いたぞうきんで何も出てこないとか、あの議論は、僕はもう正直言って、本当に実態に即しているのかなという思いでずっといたもので、今日は非常に私自身は、これからの建設的な温暖化対策に向けてすごい有り難いことだなと思っておりますが。
 大臣、もう一度確認だけ、今の議論聞いていただいて、どうか環境省が中心になって共通の指標で二年間、二〇〇七年の見直しまで議論ができるようにお取り計らいいただきたいんですが、いかがでしょうか。
○国務大臣(小池百合子君) 大きな目的として、まあもちろん長期のもございますけれども、やはり京都議定書をどうやってクリアしていき、そしてまたそれを更にその後につなげていくかというのは我が国にとりましても大きな課題でございます。
 そのためにも、実態をより的確に知る、そしてそれを踏まえた上で的確な対応を行っていくということが必要でございますので、今日御議論いただきましたこと、各省庁しっかりと連携を取りながら進めてまいりたいと考えております。
○福山哲郎君 ありがとうございます。
 それじゃ、ちょっと法案の中身についてお話をさせていただきます。
 いわゆる今回の温室効果ガスの算定・報告・公表制度は僕は評価できるものだというふうに思っておりますが、まあ現実問題としてはこの法律にはこの制度しか盛り込めなかったので、ほかにいろんなことをやっていっていただきたいと思っていますから残念だったんですが、これもう一度確認します。
 制度の仕組みとしては、企業としてはトータルのCO2換算分しか出ませんと。まあ企業、事業者として出てくるわけですが、それは当然、個別のサイトごととかガスごとで数字が出てきて合算されるわけですが、元々主管省庁である経済産業省は、事業所としてはトータルで出すけれども現実に経産省の中ではサイトごと、それからガスごとで資料は持っていただけるんですよね。
○政府参考人(深野弘行君) 御指摘のとおりでございまして、当省としては事業者から事業所ごと、ガスごとの、これは当省所管の業種でございますけれども、当省所管部分についてはそういう形で報告を受けることになります。
○福山哲郎君 これ、環境省は経産省に事業所ごと、サイトごと、事業所ごとというかサイトごとで知りたいと、環境省が例えば経産省にこれからの対策を講じたいのでと言った場合には、環境省は見れるんでしょうか。
○政府参考人(小島敏郎君) この制度は、基本的に事業所ごと、ガスごとということで算定・報告をいただきます。
 主務大臣を経由していきますし、エネルギー起源のCO2については省エネ法のプロセスに乗っていくと。そういう意味では、省エネ法もそれぞれ事業所管大臣がございますので、そういう事業所管大臣を通じてそのデータが上がってくるということでございます。経済産業大臣と環境大臣、共管でございますけれども、そのデータは両大臣に上がってまいります。したがいまして、事業ごとのデータ、ガスごとのデータも、環境大臣、経済産業大臣が持っているわけであります。
 ただし、秘密に属する部分はこれはPRTRと同じように主務大臣が判断をいたしますけれども、その点の問題はありますけれども、事柄はありますが、それ以外のデータについてはすべて把握をしているということでございます。
 御指摘ありましたように、公表については、この法律の趣旨が、排出量情報の公表について一般国民、事業者の自主的な取組に向けたインセンティブ、機運を高めると、こういうことでございますので、その範囲内におきましての企業単位で名寄せをした形で企業については公表をしたいと思っております。
 別途、個別事業所のデータに関心があってそれを必要とするという方々に対しては、請求に応じて、開示請求が行われ開示がなされればそのニーズは満たされるということで開示に対応するという仕組みにしております。
○福山哲郎君 そうすると、そこからは行政情報公開法の適用を受けるということですね。
 それで、実は参考人の間でも議論があったんですけれども、これ企業秘密で主務大臣に、特に経産大臣になるんでしょうが、事業者がうちは企業秘密が掛かるからこれは出せませんと、例えば、という条項がこれ二十一条の三項にあるわけですが、これはどういう要件ならばそれが認められるのか、経産省、お答えをいただけますでしょうか。
○政府参考人(深野弘行君) 今回、法案に盛り込まれております規定は、基本的に行政機関の保有する情報の公開に関する法律に基づきます不開示、開示の判断と同じ考え方の条文が入っております。
 これにつきまして、情報公開法の私どもの運用、これ審査基準というのを出しております、公表しておりますけれども、その中で、法人あるいは個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものということでございまして、例えば、製造過程、製造方法あるいは生産管理のプロセスに関する情報を公にすることになってしまってその情報が競争相手に知られる蓋然性が高いと、あるいはその原燃料構成、そういったその製品や生産技術に関する情報でこれが競争相手に知られる蓋然性が高いなど、正当な利益を害するおそれがある情報については一件一件事情を十分しんしゃくしながら判断することになりますけれども、そういったものについて情報保護を行うと、そういうことでございます。
○福山哲郎君 それは理屈としては分かるんですけれども、省エネ法の中でも、例えば、ある業界の中ではある一社だけ例えば非開示であったとか、ある業界でもある一社だけが非開示だったとかという話になって、それは恐らく、その一社が主務大臣との話合いで、これは非開示でいいですねという了解を得たと思うんですが、例えば、同じ業界の中で、あるところは出すけれどもあるところは出さないと。それが非常に恣意的になると、法律の運用として、この法律の目的には大分反してくるのではないかと思っておりまして、その部分の企業秘密はどういう要件に当たるかというのは相当きっちりルール化をしないといけないのではないかと思っているんですが、その点は環境省はどうお考えでしょうか。
○政府参考人(小島敏郎君) この法律におきます秘密の要件というのは、行政情報の一般法と同じでございます。行政手続法におきまして、その審査基準というのはあらかじめ明らかにする、できるだけ具体的に明らかにすると、こういうことになっております。
 多くの事業所管大臣がおられますけれども、環境大臣もそのうちの一人でございまして、この法律におきます、行政情報公開法と同じでございますが、非開示情報についての解釈基準というものは一つの各大臣共通のものでないと、それぞれが区々になってはいけないと思っておりますので、共通のものを作成してまいりたいと思っております。
 その基準に従って、公表すべき情報の範囲が、おっしゃるように、恣意的に緩くなったり厳しくなったりしないと、公平な扱いをするということも一つ重要なことでございますので、統一的な基準に基づいて運用をしてまいりたいと思っております。
 その際に、情報公開に関する判例あるいはPRTR法の、要件は違いますけれども、秘密情報の審査基準というのも一つの参考にございますので、そういうものを参考にしながら具体的に作成していきたいと思っております。
○福山哲郎君 もうこれで終わりますが、経産省さんも今の答弁でよろしいんでしょうか。
○政府参考人(深野弘行君) 同様の考え方でおります。
○福山哲郎君 終わります。ありがとうございました。


06/07

2005

第162国会 参議院 環境委員会 2005年6月7日


地球温暖化対策推進法改正案参考人質疑

○福山哲郎君 民主党・新緑風会の福山でございます。
 本日は、参考人の先生方におかれましては、お忙しい中、貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。座らせていただきます。よろしくお願いいたします。
 先生方のお話を伺っておりまして、ある種共通をしていたことがあると思います。浅野先生は、国内の意思形成を急ぐべきだと、国際交渉の場で受け身の立場にならないようにと。浅岡参考人は、シグナルを送るべきだという、国民に対してというお話をされました。また早川参考人は、長期的な展望をというような話、長期的な目標へという話がありました。
 今年、京都議定書が発効して、サミットがあり、そして冬にはCOPMOP1が始まります。実はそのときには、アメリカ、EU、中国、インド、途上国、諸島連合、いろんなところで激烈な、先行き、COPMOP1以降どうするのかという議論と、今の第一約束期間達成、どのぐらい先進国はするんだというような国益のぶつかり合いの状況がこれから起こるわけですが、その重要な国内の意思形成に対して、浅野参考人、浅岡参考人、早川参考人は、日本はどのような意思を持って国際交渉に臨むべきだと思われているか、この点について一点。
 それから、浅野参考人は中環審の部会長でいらっしゃいますから言いにくいとは思いますが、本当にこれで第一約束期間、六%達成できると浅野参考人はお考えかどうか、その二点について。
 まずお三方、お答えをいただきたいというふうに思います。
○委員長(郡司彰君) それでは、ちょっと浅野参考人は二つございますから、こちらから。早川参考人。
○参考人(早川光俊君) 私は国際交渉を十年間付き合ってきたんですけれども、やはり日本がきちっと自分の意思を示すということが余りなかったと思っています。やはり日本は、温暖化対策をきちっと進めるんだという意思をきちっと踏まえて、そしてまず国際交渉に臨んでほしい。
 日本は一九九〇年に地球温暖化防止行動計画を作って、そのときは非常に評価されたわけでありますけれども、それがうやむやになってしまう過程でやはりきちっとした交渉ができなくなってしまった。私は、自分が削減しないで人に削減しよう、削減する計画を立てようといったってなかなか無理があるので、まず国内対策できちっと削減する方策を立てるのが一つ。先ほど申しましたけれども、やはり長期的に目標を持って日本は削減していくんだという政治的な意思をきちっと示すことだというふうに思っています。その二つを踏まえれば、浅野先生が言われたような国際交渉で後れを取るようなことはなくなるだろうと思っています。
 以上です。
○参考人(浅岡美恵君) こうした将来枠組みの交渉におきまして日本のポジションがどこにあるのかということは今大変重要になっていると思います。その重要性が、米国の離脱宣言以降、今後もなかなか変わらないであろうという見通しの中でその重要性が高まっていると思います。
 EUはいろいろな努力をしておりますし、途上国もそれなりにそれぞれが必要だと。非常に被害も直面するような状況にあるという中で理解の基盤はあるわけでありますけれども、この発効要件、議定書の発効要件に、日本又はカナダとEU、ロシアが批准することが発効の要件でありましたように、日本、カナダという国がやはり温暖化のために、脱温暖化へのために持続的、継続的、将来とも京都議定書の基本枠組みを先進国を中心として取っていきつつ、全体の温暖化政策を途上国等についても進めるという姿勢が示されることは国際的な市場に対する大変大きなシグナルになります。
 そのことによって、日本の主たる企業は国際市場の中で動いているわけですし、国内の競争もそうですが、企業の取り組むべき方針というものが、せっかく動き出しています企業の取組がとんざすることなくというか、様子見になることなく、更にしっかりした取組に進んでいくことによって、将来的な国際経済における日本の企業のといいましょうか、日本の経済の将来発展というものもまた得られてくるわけでありますし、そうしたことに併せて国際交渉の中に非常に重要な役割を占めることができると思います。
 ただ、現在の、先ほど早川参考人からお話もありましたように、経済産業省あるいは一部の産業界の皆様から京都議定書の第二約束期間がもうないかのごとく、あるいは非常に、枠組み期間、タイムスパンとか目標の設定も絶対量ではなく、指数化、指標化されたようなものになり、連続性がないかのごとくアナウンスされる面があるわけですね。こうしますと、企業は今せっかく例えばCDMなどをやろうとしていましても、それがどうなるのか分からない、やめようというようなことにもなります。国内での削減もまあ適当でいいかとなるわけですね。この違いは大変、第一約束期間の目標達成にも悪影響を及ぼすと、あらゆる点で悪影響を及ぼすという意味で、早く日本の長期的な目標をしっかりと定めていただきたいと思っています。
○参考人(浅野直人君) お二方の御意見に重ねるような形になりますが、まず御質問は、国内でこれからどうやって論議をまとめていくべきかということだと理解をいたしまして、その点について、やや抽象的で書生っぽい議論だという、自分でも思うんですが、申し上げたいのは、やはり長期的に考えなきゃいけない、地球温暖化の問題というのは大変長いスパンで考えなきゃいけない問題であるわけです。そのことをまずしっかり踏まえた上で、さらに、やっぱり短期的に我が国の国益が重大に損じるようなことはまずいということがあるわけです。この辺りのところが、恐らく中央環境審議会的発想は長期的な視野でいきますし、産業構造審議会的な発想は比較的短期間のところで何とかしなきゃいけないと考えているわけですから、双方決して矛盾をしているわけじゃないのに、マスコミの皆さんはお互いにけんかしているような言い方ばっかりされるわけですね。そうではない、両方足し合わせたところに実はちゃんと正解があるはずだろうと思うわけです。
 つまり、地球益というようなことを仮に言葉に出したとしても、将来的にはそれが完全に国益になるという認識がやや欠けている発言と、それから、ともすれば地球益の方に走り過ぎてしまって、議論して、当面の取りあえずのシナリオのところにはやや目が行き届かないという議論が続いている限りなかなか国内の考え方はまとまっていかない。これは、だからお互いにちゃんとそこは分かって悟ってしまえば、十分にどうすればいいんだという議論はできるはずなんですが、これは恐らくいや応なしにこれからやらざるを得ませんし、できるだろうと思っています。現に、ほかの分野では審議会が合同会議を開いて実質的な議論ができるという雰囲気ができていますから、この問題も必ずそういうふうになっていくだろうと期待をしております。ちょっと抽象的で申し訳ございませんでした。
 それから、六%が達成できるかという御質問でございますけれども、私は今度の目標達成計画に関しては、やはり森林のところと、それから京都メカニズムに頼っているということをはっきり国民あるいはまあ産業界、すべての方々がどこまで認識できるかが勝負だと思っています。
 つまり、絶対にそれ以外のところは確実に達成できない限りひどいことになるよということがもし分かって、言われていることを精一杯やっても、なお森林と京メカで埋めなきゃ六%にはなりませんということが十分に徹底して、そこが十分にできればあとは、京メカに関してはなお努力が要りますし、森林についても努力が要りますが、これは国際交渉事もあるわけで、どこまでをシンク等の中で評価してもらえるかというのは、まだまだ我が国は腰だめみたいなところがあるわけですね。そこは、やれることだけ全部やっておいて交渉するということをやれば可能だと思います。しかし、森林吸収源と京メカ以外のところが全く駄目だという状態が出てしまいますとこれはお手上げでありますので、私は達成できるかと言われたら、それはともかく今言ったところ以外が達成できれば達成できる。この部分は、少なくともこれまでの努力に更に重ねるということを忘れちゃいけないんですよ。
 あれを見ると、大綱でやったことはそのまま実施した上で更にこれだけと言っているんですが、もう忘れっぽいものですから、前のことを忘れてこれだけやりゃいいと思ってしまうと、結局、前の大綱文のところが穴空き部分ができますから困ってしまいます。ここは要は、関係各省、それから特に本部がしっかり国民各層にその辺の数字の意味をPRしていただいて、それが理解が徹底すれば達成できると思っています。
○福山哲郎君 ありがとうございます。
 実は今回の法案、私は企業の公表・報告制度は評価をさせていただいています。しかし、実は、目標達成計画にもありますように、環境税の問題や排出権取引の問題、省エネの更なる普及の問題やサマータイム、それから再生エネルギーの普及と、メニューはたくさんあるわけですが、それをどう担保するかということは今回の法案になくて、どちらかというとこの企業の公表・報告制度にある種特化をしてしまったと。私は、メニューとしては実は非常に物足りなく感じている者の一人でございます。
 そこで、ちょっと山口参考人にお伺いをしたいと思います。
 私は経団連が自主行動計画で頑張っていただいているのは理解をしているつもりでございますが、先ほど言われました省エネの推進の話、一体どうしたら省エネ推進ができるのか、私はもっと実はインセンティブを与えるべきだと思うんです。プリウスが普及したように、国がある種、省エネ技術を使った住宅や、さらにはビルやいろんなものを造れば、これだけの、例えば補助金制度がいいかどうかは別にして、もっとインセンティブをつくるべきですが、実は普及、普及と何か威勢はいいんですが、実態としては、そこはコストが高くなると、消費者、そこ、マーケットできないわけですよね。
 ですから、山口参考人、先ほどやっぱり普及するべきだとおっしゃいましたが、そこをどう考えられているかということと、それから、今回、公表・報告制度が一つ第一歩になった流れの中で、排出権取引の問題です。
 やっぱり企業が、大手の百社辺りがやっぱりCO2の排出量、温室効果ガスの排出量が大きいというこれは実態です。いいとか悪いとかの問題ではありません。実態の中で、排出量取引の導入について企業としてどのようなスタンスで臨まれるのか。そこの二点について、山口参考人、お答えいただけますでしょうか。
○参考人(山口耕二君) まず、二番目の国内におけるということを前提にちょっとお話しさせてもらいたいんですけれども、国内における排出量取引制度、これは自主的な参加ということで環境省さんがおやりでございますけれども、これにつきましては、やはり対費用効果を考えながら、企業や行政の削減努力を促し、また地球規模的に温暖ガスを削減させるという方法でございますので、経済的手法と自主的な手法がうまく融合した一つの方法ではないかなと。したがって、総合的に検討することは必要だとは思っております。
 しかし、具体的に国内で排出量取引をする場合には、例えばそのベースとなる基準量をどうやって決めるんだとかですね、さらにCO2にどうやって値段を付けるんだとか、国際的にはマーケットができております。国内においてはそこら辺をまず検討する必要があるのかなと。
 具体的には、基準値の設定につきましては、これまでさんざん努力してきた人はもうかなり限界点に近いような省エネ努力をされているわけですね。そこを基準年にする場合と、今までほとんど、言葉は悪うございますけれども余りやってないところに対してその基準年を設けるのと、そういう不公平感も出てまいりますし、やはり基本はやっぱり自主的な努力を認める中で公平感が保てるのかどうか、そういう検討も必要だと思っております。
 それから、そういう二つの方法につきましては、基本的には国際的なリンケージがないとまずいもので、京都メカニズムの理事会等のルールもうまく活用すべきなのかなと。そもそも排出権取引の目的はエネルギーの使用量を減らすことが目的でございますので、制度としても長く続かないと、かつ継続的な効果ができないと、花火のようにぽっと一回やって終わりとか二年間で終わりとか、そういうものでもまずいわけでございます。
 どちらにいたしましても、経理の処理方法等々もいろいろと総合的に検討を進めていく必要はあると思っております。
 ただ、漏れ聞くところによりますと、将来的に国内のキャップ・アンド・トレード、要するにエネルギーの使用に枠を掛けよと、そういうものにつながるような声も聞こえておりますので、これは正に我々の自由経済を国の制度として制約掛かるということでございますので、これは十分に留意していただきたいなと思っております。
 それから、最初の質問の普及策でございますけれども、非常に難しいわけではございますけれども、まずは、まだまだ我々の情報の提供の仕方がまだ分かりにくいのかなと。先ほど早川参考人の方から京都市の例でトリプルA、AAとかありましたけれども、ただ、あれができるのは実は電気製品でも冷蔵庫とエアコンしかできないんです。ほかのものはああいう方式だと評価ができないんですね。というのは、機能が別のところにございますから。そういうことで、もっともっと普及促進させるために、まず我々産業界、企業としては分かりやすい情報をあらゆる手段を使って消費者の方にお伝えするということをやる必要があると思います。
 それから、インセンティブにつきましては、これも継続性の問題ございまして、例えば電気製品ですと大体平均買換え年数が十年以上なんですね。すると、そこにどうやってそのインセンティブを付けるのかなと。また、逆に所得の高い人だけにインセンティブ働いても困りまして、そういう意味では、インセンティブの在り方はもうまだ我々も解がなくて困っておるんですけれども、何かそういうことを議論する国民的な議論の場があるといいなと。
 と申しますのは、我々とお客様というのは非常に言いにくいことも中にはございますし、我々にとってみればお客様は神様でございますし、消費者にとってみれば、我々買っている人よと。そういう利害関係のある人たちではなくて、もっと広い立場で、普及をいかにすべきかということを大いに議論さしていただきたいと思いますし、そういう場があれば我々も積極的に参加していきたいと思っております。
 ただ、間違いなく、お手元のこのパンフレットの中にも、普及すれば必ず民生分野のCO2は削減できます。したがって、大いに知恵を絞って普及策を検討さしていただきたいと思っております。
 以上でございます。
○福山哲郎君 今、山口参考人から、排出量取引についても検討に値するとおっしゃられたのは非常に心強いと思いますが、だからこそ、正におっしゃられたとおり、国際的にリンケージをしていくからこそ、早目にマーケットの主導を握る方が日本の企業としては僕はアドバンテージではないかと思っているわけです。
 そこは、様子を見ていれば、実はヨーロッパで、EUでは御案内のようにマーケットができつつあると。それから、アメリカもシカゴを中心にできつつあると。そこが動いているからこそ、日本の企業もアドバンテージを取るために前に進むことも重要ではないかなというふうにある意味思っておりまして、そこは御検討を更にいただければ有り難いと思います。
 それで、ちょっと細かい話になります。
 先ほど実はこの法律、それぞれの参考人の皆さんは評価をされました。私も評価をしているんですが、二つに分かれたのは、例の公表の在り方の問題でございます。
 二十一条の三項による、その正当な利益が害されるおそれがあるとする場合には公表をある種抑えるみたいな話なんですが、ここは先ほど山口参考人が韓国との半導体の競争の話をされました。
 浅野参考人、例えばそこの要件は一体どうなんでしょうか。要は、これが恣意的に行われるのは私、非常に良くないと思っているんです。
 つまり、ある一定のルールがあって、これは企業機密に値するよというものがあればいいんですが、これ残念ながら経産省と企業との間で決められるわけですね。出されて、そこで決められた時点で、我々としては見たくても、いやそこは経産省とその企業が決めましたよと言ったら、もう我々は入れなくなるわけです。
 しかし、そこの一体どこが企業機密で利益が侵されるのかどうかというところが見えないと、恣意的にこの企業は出さないけれどもこの企業は出したと、そしたらある種出さないという、フリーライドするところがたくさん増えるようなことになると、実はこのせっかくいいと言われている仕組みが、良さが担保できなくなるわけですね。
 そのことについて、例えば、浅野参考人と浅岡参考人と山口参考人、どうお考えなのか。ちょっと、短くていいです、もう終わりなので短く一言ずつお答えいただければと思います。
○参考人(浅野直人君) これは当然、余り広く広げられることは適当ではないというのはおっしゃるとおりだと思います。
 例えば、既に環境報告書で特定の企業が出しているというような場合、同一業種が同じような情報がなぜここで言う権利利益に該当するかということはほとんど説得力がないと思われます。
 ですから、そういったような、過去にある事例の積み重ねのようなものの中から既にガイドラインができつつあると思いますので、それを十分に考えるべきだと思いますし、恐らく産構審、中環審などでもこれについてはしっかりガイドラインの議論やるべきだろうと私は考えております。
○参考人(浅岡美恵君) 法律的には余り判例はありませんが、平成六年の東京地裁の判例によりますと、こうした保護される秘密は、当該情報が事業活動上の機密事項や生産技術上の秘密に属する内容であって、その有している競争上の地位が当該情報の開示によって具体的に侵害されることが客観的に明白な場合に限られると解釈をされております。その立証責任は事業者側にあるわけです。それを逆転するように読めなくもない条項が二十一条の八号でありますので、これはもう少し詰めていただく必要がある、そのようにされないことが必要だと思います。
 代替フロンにつきましても、例えば、私の聞きますところでは、ある除去装置を付けますと九〇%ほど除去が可能であると。付けている事業所と付けていない事業所が個別事業所単位で報告されると明確に出てくると、こういう面もあるわけです。
 そういう意味で、この点につきましては運用をどのようにされるのか、今後の審議の中でも先生方によろしく詰めていただきたいと思います。
○参考人(山口耕二君) 私が先ほど半導体と液晶の事例を出したんですけれども、やはりこれは物によって全然違うと思います。したがって、やはり我々としては、機密があるとするならば、ちゃんと社外に対して説明責任を果たせるようなルールを外部に公表するということだと認識しております。
 したがって、ただ半導体とか液晶がなぜ機密かということは、やはりその事業の中身、競争の状況、国際競争の状況を知っている方でないとなかなか分かりにくいと。そういう意味では、私は、事業所管大臣とルール作りをするということは私は正しいと思っております。ただ、それを公表さえすれば、外の目に触れるようにしておけば、何ら我々やましいところはないと思っております。
 それから、環境報告書でほとんどのメーカーが出しております。ただ出すにも随分と機密が漏れないような状況で出しておりますので、そこら辺の我々の努力、機密は漏らさないけれども情報は公開すると、そこら辺の努力を見ていただければ、確かに機密なんだなということが御理解いただけるのかなと、このように思っております。
○福山哲郎君 ありがとうございます。


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