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2017

第193国会 参議院 外交防衛委員会 2017年6月1日


○福山哲郎君 おはようございます。福山でございます。
今日は余り時間がありませんので、行きます。で、穏やかに最初は行きたいと思います。
まず冒頭、昨日、アフガニスタンの首都カブールで大きなテロ事案がありました。少なくとも、今の報道でいえば八十人の方が亡くなって、三百五十人が負傷されて、心からお見舞いを申し上げたいと思いますが、負傷者の中には日本大使館の職員二人も含まれていると聞いております。
私、実はカルザイ大統領の就任式にカブールに行きました。政府の特使として行って、一泊してきました。大使館は合宿のようなところで、それぞれが、余りにも危険なので、大使館員の職員がもう全部そこに集まって、食堂みたいなところで食事もされて、その周りはコンクリートの壁に囲まれているような、非常にある種、環境の悪いところでの勤務でございました。私、そのことを思い出しまして、けがが二名ということで、まあ良かったのか悪かったのか、不幸中の幸いなんですが、しかし、恐らく大使館員の動揺もあると思います。
大臣におかれましては、是非、大使館の職員に対するケア、それから一時帰還も含めて対応いただきたいと思いますが、大臣、よろしくお願いしたいと思うんですが、よろしくお願いします。
○国務大臣(岸田文雄君) 大変重要な御指摘だと受け止めます。
今回の事件発生後、外務省本省には連絡室を立ち上げ、現地には現地対策本部を立ち上げました。情報収集、事態の把握に努めているわけですが、あわせて、委員の御指摘になられました、今後の大使館員を始め在留邦人に対するケアにつきましてもしっかりと対応を考えていきたい、このように考えます。
○福山哲郎君 どうかよろしくお願い申し上げます。
河野統合幕僚長の発言についてお伺いをします。
先週、日本外国特派員協会で、幕僚長が、自衛隊の根拠規定が憲法に明記されることになれば非常に有り難いという発言をされました。非常に私は問題があると思っておりまして、政治的行為を制限した自衛隊法に違反をする可能性もあるし、シビリアンコントロール上も問題があると思いますし、憲法遵守義務に当たっても問題があると私は思っております。更に申し上げれば、まあ少し余計なことですが、一昨年の安保法制の審議で、この統幕長は、審議で法案が通る前に、訪米中に、来年の夏までには成立するという見通しを語っていたことも明らかになって、国会の委員会でも問題になりました。実は、統幕長、二度目です。
自衛隊の国民の信頼がこれだけ高い、自衛隊に対する国民の本当に応援も含めて支持が広がっている中で、統幕長がこういう発言をすることが逆に自衛隊の信頼を失うことになりかねないということも含めて、大臣、これはやっぱり強く注意しなければいけないのではないかと。個人の発言としては問題ないと、そういういつもの安倍政権得意の使い分けではなく、そこで毅然ときちっと注意することが、逆に防衛大臣等の信頼、更に言えば自衛隊の信頼につながると私は思っておりまして。
まずは一つ、この委員会に、今日、私、時間ないので参考人としてはお呼びしませんでしたが、参考人として御出席いただくことを理事会でもう一度協議をいただきたいということと、それから、防衛大臣におかれましては、このことについてのお考えをお伺いしたいと思います。
○委員長(宇都隆史君) ただいまの件につきましては、後刻理事会におきまして協議をいたします。
○国務大臣(稲田朋美君) 今回の統幕長の発言でございますが、記者からの質問を受けて、憲法という非常に高度な政治問題でありますので統幕長という立場から申し上げるのは適当ではないと思いますとまずは明確に述べた上で、個人的な感想を述べたもので、政治的目的を持って発言したものではないことから、この発言が不適切であったとは考えてはいないところでございます。
また、安保法制の成立時期における発言についても、今委員御指摘いただいたわけですけれども、今御指摘の発言は、平成二十七年九月の参議院平和安全法制特別委員会で共産党の議員が提示をした資料の中に記されている統幕長が訪米時にしたとされる発言のことだというふうに承知をいたしておりますが、その資料については、防衛省において、同一のものの存在は確認はできなかったということでございます。
なお、統幕長の訪米時の一連の会談はその内容を公表することを前提に行われたものでないことから、相手方との関係もあり、御指摘のような発言の有無も含め、具体的なやり取りの内容はお答えは差し控えさせていただいているところでございます。
また、一般論としては、自衛官……(発言する者あり)
○委員長(宇都隆史君) 御静粛にお願いします。
答弁どうぞ。
○国務大臣(稲田朋美君) はい。
一般論として、自衛官の最高位にある統合幕僚長として、公の場における発言については、様々な配慮が必要であることは委員が御指摘のとおりだと私も思います。
○福山哲郎君 文書が確認できないのは安倍政権の得意技でございますから、その話をしているのではなくて、そんな紙を、書かれたものを読むような質疑をしているわけじゃないんです。だって、御本人ですら統幕長として発言するのは不適切なのでと留保しながら言っているんでしょう。留保するぐらいだったら言わなきゃいいんですよ。そうでしょう。それが責任というものでしょう。だから、不適切だということは、防衛大臣の責任として不適切だと言えばいいんですよ。そのことを今みたいにつらつらつらつらと弁解がましいことを言うから逆に言うと信頼をなくすんだと思いますよ。だから、参考人として呼ばないと決着付かないみたいな話になるわけです。何でそんな、何か書いたもの、弁解べらべらべらべらしゃべって、余り意味のない答弁されるのか、すごく残念です。それは政治家同士なんだから。私だって無理やり何か言えとか言っているわけじゃないじゃないですか。そのことについてはもういいです。
ただ、先ほど委員長が後刻協議いただくということで、この防衛大臣の不誠実な答弁も含めて、参考人としてお呼びしたいと思いますので、よろしくお願いします。
北朝鮮がまたミサイル発射を二十九日しました。三週連続です。余りにも度重なっているわけですが、非常に遺憾でございますが、この北朝鮮の意図、このような状況で三週連続ミサイルを発射する意図について、防衛大臣、どのようにお考えですか。
○国務大臣(稲田朋美君) 北朝鮮のミサイルの発射の意図についてのお尋ねでございますが、我が方として断定的にお答えすることは差し控えさせていただいております。
しかしながら、一般論として、昨年も核実験二回、そしてミサイルは二十発以上、そしてどんどんと技術も発展をさせていっているわけでございます。そういった意味で、弾道ミサイルの開発の一環、すなわち、ここ三週間連続で弾道ミサイル、そのうち二発は新型の可能性があるということで、当方も分析をして、今詳細な分析を専門家の間でやっているところでありますが、そういった意味において、開発の一環、また何らかの訓練、そして国際社会からの圧力への反発など考えられるのではないかというふうに考えております。
○福山哲郎君 前田局長はどう思われますか。
○政府参考人(前田哲君) 今大臣御答弁いただいたとおりであります。開発、訓練、そして圧力への反発、これは一般論としてはいろいろ考えられると思います。
五月に入ってからのミサイルは、大臣もおっしゃったように、二つは新型ということになっていますので、やはり開発の要素というのも無視はできないんじゃないかと思います。意図については断定的に申し上げられませんけれども、分析としてはそのように考えてございます。
○福山哲郎君 その開発がどの程度進んでいるのか、本当に分析を進めていただければと思います、この場で言える言えないかは別に。
防衛大臣と防衛省の方、もう今日は結構でございますので、御退席いただいて結構です。
○委員長(宇都隆史君) 防衛大臣及び防衛省の皆さんは御退席いただいて結構でございます。
○福山哲郎君 それでは、日印の原子力協定について質問いたします。
今日は、すごく僕は複雑な思いでこの場に立っています。なぜなら、私は、この原子力協定、二〇一〇年六月、日印首脳会談で、交渉開始を決めたときの首脳会談に、私はカナダで総理の横に同席をしておりました。ですから、私は、この原子力協定については交渉開始をしたときの一人ですので、責任の一端を感じております。
まず、二〇一〇年のその交渉開始の一月前に、私は国連本部で、NPT運用検討会議の首席代表として、追加議定書を伴った包括的保障措置がIAEA保障措置の基準となるべきと考えますと、NPT未加入国に対し、非核兵器国としてのNPT加入を引き続き求め、NPTの普遍性を実現することが重要ですという日本政府の立場を発表しました。ですから、NPT未加盟のインドと原子力協定の交渉を始めることに抵抗がなかったと言えばうそになります。相当葛藤がありました。
その二年前の二〇〇八年、NSGのインド例外化の決定にも当時大きな矛盾を感じていたことも事実です。私の上司であった岡田外務大臣も非常に深く悩まれていました。
今日、お手元に資料をお配りをさせていただきました。実はその二〇一〇年の五月の外交防衛委員会、実は私の横に今お座りいただいている浜田先生、それから山本委員長が当時も質問されて、この日印の原子力協定について質疑をされて、私は実は向こう側に座っておりました。岡田大臣もいらっしゃいました。
実は山本委員長の質疑のやり取りは、実は今日、済みません、資料としては用意していなかったんですけれども、山本委員長も、ひょっとしたらインドとの交渉が始まるかもしれないというので、インドは非常に政治、経済で重要だと、しかしNPTに加盟していない懸念もあると正直に、当時、山本委員が言われていて、そして、最後に、すごいんですよね、やっぱり。モラトリアムの継続を約束させるとか、IAEAの保障措置を条件、一定の施設への条件として締結させるとかいろんな考え方があると思うんですけどと言って岡田大臣に質問されています。山本予算委員長のそのときの定見というか、その方向で今これが進んでいるわけですが。
さらには、山本委員は、当時の委員は、岡田大臣に向かって、インドに原子力発電所を造るという大きな流れの中で、世界中が、日本だけが孤立するのはいかがなものかという前向きな姿勢を示されたと、岡田大臣の姿勢を前向きだと山本委員は言われました。それに対して実は当時の岡田大臣が、私の先般の答弁を前向きというふうにおっしゃっていただいているのですが、果たして前向きと言うべきかどうかということでもあると思いますと正直に、当時の岡田大臣が、これ交渉開始の直前ですけど、前向きかどうかとやっぱり悩まれているんです。
で、浜田先生なんです。浜田先生、NSGに対して、山本委員からは、右側見てください、今後、インドとの原子力協定、日本とも考えるべきじゃないかみたいな、積極的な意見もあったんですが、私はもう少し慎重な意見なんですと浜田先生はおっしゃっているんですね。当時野党ですが、そのNSGの時代は与党でいらっしゃったわけです。それで、やっぱりNPT体制のダブルスタンダードをつくったんじゃないかというNSGに対する批判があるということについて、浜田先生も懸念をされています。
面白いのは、岡田大臣が、いろんな議論があるんだと思います、ただ、この米印原子力協定をNSGで合意したというのは、これは政権交代の前の政権の時代の話でありますと。次です。ですから、それは私がどういうふうに言っても、それは批判に受け止められたり、必ずしも客観的に評価することになりませんので、むしろ委員の方からお聞かせいただいた方がいいぐらいではないかと思っていますと言って、自民党さん、当時の与党がNSGを合意したからといって、批判に取られるから自分は発言を控えたいと言われたんです。済みません、ちょっと皮肉を言うと、今のように、何かあれば民主党政権が悪いんだといって引っ張り出してきているどこかの総理とはえらい違いです。
で、浜田先生が、面白いんです、これ。勝手に外務省がやった、はっきり言って、そういう状況ですよと浜田先生、このいつも冷静な、温厚な浜田先生が大分お怒りなんです。私、そこで聞いていたのでよく覚えているんですね。
当時の佐野参考人が、外務省の方がいろいろ言われたら、浜田先生が、右側ですけど、余りうその答弁しない方がいいですよと、まず、外交部会で、こういうことを承認するなんて、あなた、しゃべらなかったよと。それでその後、佐野さんが何か言ったら、浜田先生が、日本が最後の最後まで頑張れ、これ、NSGについて了解するなということだと思いますが、軽々と乗っちゃったのはあなたじゃないかと、それをもう、そういう事実を変えるような答弁はやめてほしいですねと浜田先生がおっしゃっているんですね。
その後、次、続きがあるんですけど、保障措置の対象の問題についてやっぱり言及されているんです。
実は今回の日印原子力協定って、与野党替わっていますが、NPT非加盟のインドと被爆国である日本が本当に協定を結んでいいかという本質的な問題について言えば、実は状況は余り変わっていないんです。先ほど阿達委員が意義があるかどうかという御質問をされました。それは、インドとの関係でいえば意義があると私も思います。だって私は、交渉のスタートを、悩みながら、仕方がないなと思ったからです。だけど、そのときに阿達先生、NPTの未加盟の問題については余り言及をされませんでした。
私は、やっぱりこの問題は本当に難しいと思います。当時は今と違って、原子力ルネサンスとずっと言われていました。原油価格は一バレル百ドルを超えていました。東芝はウェスチングハウスを買収して、世界中に原発を輸出する準備をしていました。我々の政権も、成長戦略に原発輸出を組み入れていました。今思えば至らなかったと思います。日本製の部品をインドに輸出するニーズが出てきていました。具体的には、フランスのアレバがインドに原子炉を造る際に日本のメーカーを使いたいということでした。こういう時代でした。それでもこんなに葛藤があったんです。浜田先生の葛藤も、僕は真っ当な議論だったと思います。山本委員の御意見も、当時でいえば真っ当な議論だったと思います。
でも、今、原子力ルネサンスなどとは全く言われなくなりました。いまだに福島では十万人以上が避難されて、廃炉まで気の遠くなるような歳月を要します。世界各国では脱原発の動きも出ています。世界の設備容量は再生可能エネルギーが原発を抜きました。
この状況で、なぜ今なのか。安全保障上でいえば、北朝鮮の核の開発、朝鮮半島の非核化が日本にとっても最大の今安全保障上の課題だと思います。核の不拡散は日本にとっては至上命題です、被爆国として。そして、イランの問題もあります。そして、韓国や中国は再処理に向けて今非常に関心を強く持っている。NPT体制の堅持、NPT体制が不安定化していると言われている中で、NPT体制を堅持することは日本としてはどうしても引き下がれないライン、それが、こういうアリの一穴を日本がやることが、フランス、アメリカがやるのはそれはそれで結構ですが、そのときと状況も変わってきた。その中で、なぜ今なのか。ましてや、北がミサイルを何発も撃ち込み、核実験をするかもしれないと言われるときに、なぜ今なのか。そして、何でこんなに時間が掛かったのか。
我々のときに交渉は中断しました。外務省は中断というのは言い方嫌みたいなので、それは表現の仕方いろいろありますが、三・一一の後、さすがに原発事故の後にインドとの原子力協定の交渉はできないということで、二〇一〇年の十一月の交渉から二〇一三年、安倍政権まで実は交渉は止まっていました。じゃ、これからこの三年間、それからの三年間、何を交渉して何を担保して、そしてこの環境の変化に対してどういう対応をして、外務大臣、意思決定されたんですか。
そもそもの話をして恐縮ですが、僕は非常にこの日印の原子力協定というのは本質的な問題だと思うので、大臣、お答えいただければと思います。
○国務大臣(岸田文雄君) まず、NPT体制というのは、私自身もこの国際的な核軍縮・不拡散を考える際の基本、礎であると認識をしています。よって、NPTの普遍化を進めていく、追求していく、こういった方針はこれからも変わることはないと思います。
そして、インドに対しては、従来からNPTへの加盟あるいはCTBTへの署名等、これはずっと働きかけていたわけですが、インドは独自の判断でNPTには加盟してこなかった、こうした現実が続きました。その中にあって、このNSGグループにおいて、インドの原子力の平和利用に関してどのように協力をするのか、こういった議論が行われ、我が国もこの四十五か国の一つとしてこの議論に参加をしてきたわけです。
その時点から、そして、この協定の交渉、始まってからも当然でありますが、日本としては、NPTに参加していないインドを実質的にこの国際的な不拡散体制に取り込むためにはどうあるべきなのか、更に言うと、インドが核実験をもし行ったとしたならばこれ確実にこの協力を停止する、これをしっかりと確保しなければならない、こういった点を重視してインドの原子力の平和利用への協力について議論をしてきたわけです。こうした観点を重視しながら二〇〇八年のNSGのコンセンサス合意にも参加したわけですし、二〇一〇年以降、こうした考え方に基づいてインドとの交渉を続けてきた、開始し、そして続けてきた、こういったことであったと思います。
様々な環境は変化しました。しかし、NPTの普遍化を追求するという我が国の基本的な姿勢は変わりません。もちろんNPTに、本体にこのインドが加入するようこれからも求めていきたいと思いますが、現実の中で実質的にインドを国際的な不拡散体制に少しでも取り込むためにはどうあるべきなのか、こういった観点から本協定についても協議を続け、そして一つの結論を得た、そして今国会にお諮りをさせていただいている、これが今日までの我が国がインドとの原子力の平和利用に対する協力についての取組のありようであったと認識をしております。
○福山哲郎君 なぜ今かということについてはお答え、まあはっきりいただかなかったんですが、大臣のその答弁は、僕はそうおっしゃるしかないと思うので分かりますが、大臣、何回もNPTの普遍化とおっしゃいました。
そもそもNPTは、いわゆるグランドバーゲンです。非核兵器国が核保有を断念することを義務付けて、そして保障措置を受ける見返りとして原子力の平和利用における協力を受ける権利を与えるというのがもうそもそもNPTの大原則です。NPTが無期限延長を決定された一九九五年には、原則と目標において、原子力の平和的利用における協力は包括的保障措置受入れが望ましいということが決議されています。
先ほど、浜田先生の議論にもありました、包括的保障措置というか、今回は全く軍民分離です。NPTに加盟せず、軍民分離で保障措置が部分的なままで協力を受けられる、これは本当に、大臣が言うように、NPT体制、核不拡散にインドを引き入れることなのか、逆に、NPTの理念を覆し、原則を曲げ、NPTに加盟している非核兵器国に著しい不平等感を生じさせることにならないのか。唯一の被爆国であり、NPT体制が重要なものであるという日本だからこそ、そうした原則をゆるがせにしていいのかと私は思います。
ましてや、NSGの参加国の中でインドと原子力の協定を結んでいる国は一体何か国ありますか。
○政府参考人(梨田和也君) お答えを申し上げます。
九か国でございます。
○福山哲郎君 NSGは四十八か国です。全部が全部、もちろん技術を供与できない国はたくさんあります、受けるだけの国もたくさんあるから、四十八か国全部だとは思わないけれども、本当にこの時期に日本が、ましてや東芝の今の状況、ウェスチングハウスの状況、福島で原発事故が起こっている状況の中で、本当に日本はこの時期に原子力協定を結ぶ意味があるんでしょうか。逆に、NPTの弱体化に結び付くんじゃないでしょうか。大臣、いかがですか。
○国務大臣(岸田文雄君) 今、NSGグループ四十五か国のうち九か国だけではないかという御指摘もありましたが、こうした国々は、やはり原子力の平和利用において世界においてトップクラスの技術を持っている国々であります。そして、その協力の大前提は、二〇〇八年のNSG決定、すなわちインドが核実験モラトリアムを始めとする発表した政策をしっかりと遵守するということを前提としています。もし、こうした核実験モラトリアムを始めとする、インドがこうした発表した政策に反することをしたならば、これは結果としてインドは原子力の平和利用における世界最高水準の技術を失うことになります。インドに対して平和利用について責任ある態度を取らせるという意味において、これは大変重い取組、仕組みとなると考えております。
こういった核軍縮・不拡散においても、大変厳しいときだからこそ、実質的にインドを原子力の平和利用における責任ある行動に引き込むためにはどうしたらいいのか。様々な取組を行うこと、これは重要でありますし、それから、前提とされているインドの政策の中にはIAEAの保障措置の受入れもあります。このインドの現状の中で、よりIAEAの保障措置の範囲を広げるということにもつながる、これはまた大きな意味がある、このように考えます。
この厳しい核軍縮・不拡散の状況の中で、少しでもインドという国を国際的な不拡散体制の中に取り込む意味で、こうしたNSGの関係国の取組も意味がありますし、また日本がその取組に参加することの意味は大変大きいのではないか。
今、なぜなのかということについては、今厳しい環境の中で、できるだけ早くこういった取組を進めるべきだ、そのような判断の下に取り組んでいるというのが答えだと考えます。
○福山哲郎君 理解したいと思いますけど、なかなか理解できません。別に日本が今あえて原子力協定に踏み込む必要ないですよ。だって、逆に言えば、ほかの誤解をいっぱい与えますよ、北朝鮮に。
例えば、じゃ、今のところ、外務省、経産省が把握している日本企業のインドへの原子力関連資材、機材の輸出の可能性、見通しについてお答えください。
○政府参考人(平井裕秀君) お答え申し上げます。
本日御議論いただいておりますこの協定が締結されてない現時点におきまして、日本が主体となってインドに原発を建設する計画というものはないというふうに伺っております。
○政府参考人(梨田和也君) 現時点におきまして、インドのプロジェクトに対して参加を公表している日本企業はないと承知しております。
○福山哲郎君 じゃ、協定が締結されれば参画をする予定の企業はありますか。
○政府参考人(平井裕秀君) これからの可能性につきましては、あくまで企業の御判断でございますので、政府としてその将来の可能性をコメントできる立場にはないということでございます。
○福山哲郎君 そうすると、政府は、いや、先ほど僕申し上げたはずです。二〇一〇年交渉締結のときにはフランスから相当厳しく、日本の技術を使ってインドに出したいから何とか頼むという話は、フランスからもアメリカからも来ました。
今、政府は把握してないんでしょう。何のために、NPT体制を揺るがしてまで原子力協定を日本が、ましてや、北の問題を抱え、それは国際社会でいえば、大臣よく私なんかより御存じのように、イランの問題も抱え、そして、先ほど申し上げたように、韓国は再処理に非常に今関心を持っている状況の中で、俺らにもやらせろと、NPT未加盟のインドにすら認めたんじゃないかと言われる口実を幾つもつくるようなことをなぜ日本がやらなきゃいけないのか、大臣、お答えください。
○国務大臣(岸田文雄君) インドとのこの原子力の平和利用における協力については、国際社会、NSGグループを始め、国際社会全体として取り組まなければいけない課題であると思います。
このインドの現状において、まずは平和利用におけるしっかりとした責任を担ってもらうということ、あわせて、インドの原子力開発においてより透明性を高めるという点、これも大変重要なポイントであると認識をしています。こういったことによって、この実質的な不拡散体制に取り込んでいこうというのが今行われている取組の本質であると思っています。
原子力の平和利用において責任ある行動を取らせる、それについて様々な条件を付けているわけですが、あわせて、このIAEAの保障措置の下に置かれるインドの原子力施設をより拡大するということにおいて、今回の取組は意味があると思います。
我が国の協力がIAEAの保障措置の下に置かれる、これは当然のことでありますが、国際社会全体としましても……
○委員長(宇都隆史君) 簡潔にお願いいたします。
○国務大臣(岸田文雄君) 様々な取組を行う中で、原子力施設の数が増えている、これはしっかりと指摘しておかなければなりません。一方で、このIAEA保障措置の外にある施設の数が現実に減少している、こういった点も指摘をしておかなければなりません。
このように、この両面におきまして、今インドをこうした取組の中に組み込むということの意味、この核軍縮・不拡散においてこれは大変大きな意義がある、このように考えています。
○福山哲郎君 だって、それは今、日本がインドとの原子力協定を結ばなくても、米印原子力協定でもう既に部分的な保障措置は始まっているわけじゃないですか、同じじゃないですか。
それで、大臣いろいろ言われるんですけど、実はこのNSGの例外措置がとられた後、中国はパキスタンに原発建設に対する協力をしています。パキスタンはNSGガイドラインの例外とされていないので、ガイドラインに従えば、NSG参加国の中国はNPT非加盟国のパキスタンに対して原子力協力は普通提供できないんです。中国は中国の理屈がありますよ。しかし、一つ例外を認めると、こういう例外が広がる可能性が出てくる。先ほど申し上げたように、北もイランも、状況によっては再処理をしたいと思っている韓国も、そういうところに対する隙や議論の場を与えることになるんじゃないですか。大臣、いかがですか。
○国務大臣(岸田文雄君) まず前半の、日本があえて、ほかの国々に加えて日本がこのインドの原子力における平和利用に関する取組に参加する必要がないのではないか、こういった御指摘につきましては、日本はこの原子力の平和利用において最も国際的にも高い水準の技術を持っています。加えて、日本は国際的にも第三の経済大国であります。もし、こうした取組に日本も参加し、そしてインドがその期待に裏切ったならば、その代償は誠に大きいということで、こうした取組を重層的にする意味でこれは意味があるということをまず申し上げます。
そして、後半の質問についてですが、これは中国もNSGグループに参加をしているわけです。この取決めに反するようなことがあれば、これは当然NSGの中で大きな議論になるわけであります。これ、そうした枠組みの中に中国があり、その枠組みの中で国際社会がしっかりと監視をしながらこの議論を進めていくことの意味、これは大変大きいものがあると思います。中国がもしそれに反することがあったならば、これは当然のことながらこの議論の中で厳しい批判を浴びることになると考えます。
○福山哲郎君 よく余りはっきりとした理由が分かりません。公文の位置付けも法的拘束力の問題もインドと日本の中で解釈が分かれています。核爆発に対する具体的な文言もありません。
もちろん停止する権利は日本は有しますが、そこには、先ほどのお話にありましたように、考慮するという留保条件がたくさん付いているし、特に安全保障上の考慮が必要だと書いてあります。それは、もちろんパキスタンとずっと歴史的に対峙してきたインドが、今パキが核兵器を手放さないのに手放すことはあり得ないと私は思います。
先ほど行動と約束の話もありましたが、この行動と約束には先制不使用の政策を確認していますが、今インド国内では、先制不使用をやめるべきではないかという国内の議論も盛り上がって、この行動と約束自身が現実問題としてもう揺れています。
それは、大臣言われたように、原子力による平和利用は必要、インドにとって必要かもしれないけれども、しかしながら、安全保障上のリスクはもっと多分インドにとっては大きな問題で、私は、非常に核実験なり、それから先ほど議論があった未臨界の実験とかいろんな可能性があると思います。そのときにどれほど本当に日本が協力を停止できるのか、非常に担保できる部分が私は今回緩いと思っています。
さっき梨田さんが答えられたので、済みません、大臣お答えください。
未臨界実験の場合、例えば、相手はパキですから、パキとの安全保障上の関係でいえば、ある種の抑止力も含めて、未臨界実験を行ったとインドが外で声明を発表する可能性は否定できません。どういうわけか、この実験の定義だけは、CTBT、これインド加盟していないので、何で加盟していないCTBTの定義が必要だと衆議院の審議で言われたのか、僕、これも理解に苦しみますが、未臨界の実験で例えばインドが外へ表明をし、若しくは日本に対して、未臨界の実験をした場合でも日本にちゃんと報告するように求め、そのことがあった場合には日本は停止をすると、大臣、まず明確にお答えください。
○国務大臣(岸田文雄君) まず、未臨界については、今、国際社会の現状は、未臨界については定義が定まっていない、あるいは検証方法が確立していないということで、この未臨界実験自体を把握することが現実には大変難しいというのが実情であります。その中にあって、このCTBTの枠組みの中にあっても、未臨界実験については、これは将来の課題という取扱いをされています。
そして、インドも、二〇〇八年の九月五日声明の前提としてCTBTの義務の範囲内で約束を果たすということでありますので、これは、今の国際社会において、未臨界実験ということについて何か枠組みをはめる、コントロールする、そういった枠組みが全くないというのが実情であります。その上に立って、今回の協定においては、この協定十四条の中にあって、いかなる理由においても我が国はこの権利を行使することができる、こういったことを明記しています。
先ほど言いました国際的な状況の中ではありますが、我が国は、こうした協定をインドと結んだ以上、未臨界実験についてもし把握することができたならば、これは当然、この協定の内容に基づいて適切に対応しなければならない、このように考えています。
○福山哲郎君 だから、私、わざわざ条件付けたじゃないですか、パキとの関係でいえば表で言うことがありますよと。表で未臨界実験したと発表した場合には検証なんかする必要ないんですよ、インドがやったと言っているんだから。そのときには自動的に停止でいいんですねと聞いたら、大臣は今、適切にと言って、実は、そうすると、パキとの関係でそういう状況になるということを安全保障上の考慮に入れなきゃいけなくなるんです。そうすると、ぐるぐる回るんです、この議論は。だから聞いたんです。もし明らかに未臨界実験をやったという状況になったら停止をするという、権利を行使するということで、大臣、よろしいんですね。
○国務大臣(岸田文雄君) 未臨界実験については、先ほど言いました、今の国際的な枠組みの外側にあるわけです。その中にあっても、この協定を結んだ以上、そして、おっしゃるように未臨界実験を明確に把握するということができたならば、協定に基づいて適切に対応するということを申し上げています。
○福山哲郎君 協力を停止すると言ってください。適切に対応するって、どの辺が適切か分からないじゃないですか。そこに考慮規定の、パキとの安全保障の問題があれば、あれじゃないですか、停止しないこともあり得るということですか、大臣。
○国務大臣(岸田文雄君) 先ほど申しました、今の現状の国際社会においては、未臨界実験についてコントロールするものはないと。その中にあって、その上乗せでこの協定があるわけです。ですから、現状において、上乗せとしてこの協定を活用するということを申し上げているわけです。(発言する者あり)
○委員長(宇都隆史君) 速記を止めてください。
〔速記中止〕
○委員長(宇都隆史君) 速記を起こしてください。
○国務大臣(岸田文雄君) 我が国としては、インドの未臨界実験、確認したならば、協定十四条におけるこの権利を行使いたします。
○福山哲郎君 続いて、もう時間ないんですけど、ちょっと北朝鮮とインドの関係とかについても聞きたかったんですけど、時間ないので、ちょっと具体的なことを申し上げます。
アンマンや、ヨルダンとの合意された協定書では、両国政府は、協定の適用を受ける核物質、資材、設備及び技術の最新の在庫目録を毎年交換することが確認されるとか、生産された核物質を対象とする国内の核物質計量管理制度が確立されており、及びこれが維持されることが確認されるというような具体的な実はお互いの情報共有についての表記があります。
残念ながら、日印の原子力協定では、非常にここは抽象的な話になっております。このアンマンレベル、ヨルダンレベルまでの協定の効果的な実施のための、毎年交換をする等々の、こういう仕組みをつくっていただけるおつもりがあるかどうか、これはできれば前向きに答弁いただきたいと思いますが、大臣、いかがですか。
○政府参考人(梨田和也君) ヨルダン等との協定の中で、若干言葉、表現は違う部分はございますが、この協定でも今おっしゃったような情報交換の規定は既に入っていると認識しております。
○福山哲郎君 いや、情報を交換するとしかここはなくて、実は、アンマン、ヨルダン等は、在庫目録を毎年交換するとか、より具体的なんです。核物質計量管理制度が確立されており、これが維持されることが確認されるとか、具体的なんです。こういう具体的なやり方で、インドとの間で毎年対応いただけるということをお約束いただきたいと思うんですが。
○政府参考人(梨田和也君) おっしゃるとおりでございます。
各個別の核物質、プルトニウム等を含めまして、詳細な情報を把握できるというふうに考えております。
○福山哲郎君 そこは具体的なやり方について、是非インド側と交渉して対応していただきたいと思います。
実はもっとほかに聞きたいことがあったんですけれども、もう時間がないので終わりますが、条約に対しては、政府の専権事項なので、一般的にいえば委員会の附帯決議は付けません。しかし、過去の例でいうと、条約に対する附帯決議とは別に、委員会として、いろんな懸念に対して委員会の単独として決議をすることは過去の例にございます。
例えば今の未臨界の問題、それから今の情報のやり取りについての問題、残念ながら自然成立をすることが見えているので、逆に、この参議院の委員会として、与野党を超えて、先ほど私が山本委員や浜田委員のやり取りを御紹介したのは、与野党共にこの問題については、非常に複雑、かつNPTの運用や被爆国としての責任や福島の原発事故を今抱えている日本として不拡散・核軍縮に取り組むという姿勢も含めて、この委員会の決議として具体的な提案を政府側に求めるような御努力を理事、委員長の御配慮でお願いしたいと思っておりまして、是非そのことについて前向きに御検討いただきますことをお願いして、私の今日の質問を終わります。
ありがとうございました。
○委員長(宇都隆史君) ただいまの福山委員の発言につきましては、後刻理事会におきまして協議をいたします。


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